以下、本発明の実施形態例について図面を参照しつつ説明する。ただし、本例で製造される成形体がスパークプラグ用絶縁体の成形体であることから、先ず、これを焼成してなる絶縁体を備えるスパークプラグについて、図1に基づき説明する。なお、図1では、スパークプラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、同図の下側をスパークプラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。このスパークプラグ1は、中空軸状(筒状)をなすスパークプラグ用絶縁体(以下、絶縁体ともいう)2、そして、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されている。以下、その構成について詳述する。
絶縁体2は、周知のようにアルミナ等を主成分とする原料粉末を加圧し、中間体として形成した後、これを研削して成形体とし、その後、この成形体を焼成して形成される。この成形体の製造方法が、本発明の要部であるが、本願では、これを焼成してなるスパークプラグ用絶縁体2、及びこの絶縁体2を備えてなるスパークプラグ1も、本願に係る発明としているので、以下の説明では、この絶縁体2のみならず、スパークプラグ1の全体構成、及びそれらの製法についても詳細に説明する。
すなわち、この絶縁体2は、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、この後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、この大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、この中胴部12よりも先端側においてこれより細径に形成された脚長部13とを備えている。そして、絶縁体2のうち、大径部11、中胴部12、及び、大部分の脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている。また、脚長部13と中胴部12との連接部にはテーパ状の段部14が形成されており、この段部14にて絶縁体2が主体金具3に係止されている。
さらに、絶縁体2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されており、この軸孔4の端側には中心電極5が挿入、固定されている。この中心電極5は、銅又は銅合金からなる内層(軸体)5Aと、ニッケル(Ni)を主成分とするNi合金からなる外層(管体)5Bとにより構成されている。また、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端面が絶縁体2の先端から突出している。さらに、中心電極5の先端部には、貴金属合金(例えば、イリジウム合金)により形成された円柱状の貴金属チップ31が接合されている。
また、軸孔4の後端側には、絶縁体2の後端から突出した状態で、端子金具としての端子電極6が挿入、固定されている。さらに、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状の抵抗体7が配設されている。この抵抗体7の両端部は、導電性のガラスシール層8,9を介して、中心電極5と端子電極6とにそれぞれ電気的に接続されている。
一方、主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面にはスパークプラグ1をエンジンヘッドに取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15の後端側の外周面には座部16が形成され、ねじ部15後端のねじ首17には、図示はしないがリング状のガスケットが嵌め込まれるように構成されている。さらに、主体金具3の後端側には、スパークプラグ1をエンジンヘッドに取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられているとともに、後端部において絶縁体2を保持、固定するための加締め部20が設けられている。
また、主体金具3の内周面には、絶縁体2を係止するためのテーパ状の段部21が設けられている。そして、絶縁体2は、主体金具3の後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部21に係止された状態で、主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定されている。尚、絶縁体2及び主体金具3双方の段部14,21間には、円環状の板パッキン22が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性を保持し、燃焼室内に晒される絶縁体2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料空気が外部に漏れないようになっている。さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁体2との間に環状のリング部材23,24が介在され、リング部材23,24の先後間にはタルク(滑石)25の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン22、リング部材23,24及びタルク25を介して絶縁体2を保持している。
また、主体金具3の先端部26には、自身の略中間において軸線CL1側にL字状に曲げ返された接地電極27が接合されており、その先端寄り部位のうち、中心電極5の先端部と対向する面には、貴金属合金(例えば、白金合金)よりなる円柱状の貴金属チップ32が接合されている。そして、両貴金属チップ31,32の間には、所定の間隙からなる火花放電間隙が形成されており、この火花放電間隙において、軸線CL1にほぼ沿った方向で火花放電が行われるように構成されている。
さらに、本実施形態においては、ねじ部15の外径がM12以下(例えば、M10以下)と比較的小径化されている。そのため、主体金具3に挿設される絶縁体2の外径についても比較的小さくされているが、絶縁体2の肉厚を十分に確保するという観点から、軸孔4の内径が比較的小さなものとされている。従って、軸孔4に配設されるガラスシール層9の最大外径が3.4mm以下となっている。また、絶縁体2は、長尺化されており、具体的には、軸線CL1方向に沿った絶縁体2の長さが65mm以上とされている。
次に、上記構成のスパークプラグ1の製造方法について説明する。主体金具3は、円柱状の金属素材(例えばS17CやS25Cといった鉄系素材やステンレス素材)を冷間鍛造加工により、貫通孔を形成する等してその形状を概略整える。その後、切削加工を施すことで外形をさらに整え、主体金具中間体を得る。
続いて、この主体金具中間体の先端面に、Ni合金等からなる接地電極27を抵抗溶接する。この溶接に際してはいわゆる「ダレ」が生じるので、その「ダレ」を除去した後、主体金具中間体の所定部位にねじ部15を転造によって形成する。これにより、接地電極27の溶接された主体金具3が得られる。また、接地電極27の溶接された主体金具3に、亜鉛メッキ、或いはニッケルメッキを施す。尚、耐食性向上を図るべく、その表面に、さらにクロメート処理が施すこととしてもよい。
次に、絶縁体2の製造方法について、図2のフローチャートを参照しつつ、詳細に説明する。まず、ステップS10の原料粉末調整工程において、焼成後にセラミックとなる無機組成物粉末としてアルミナ(酸化アルミニウム)粉末を主成分とし、焼結助剤を含有して構成される粉状体に対し、所定のバインダー等を用い、これを適量、湿式混合することでスラリーを調整する。そして、調整されたスラリーを噴霧乾燥し、原料粉末を得る。ここに、使用されるバインダーが、ポジ型感光性樹脂、すなわち、所定の光(本例では水銀灯による光)の照射を受けた後に所定の溶剤(本例ではTMAH2.38%)に溶解する性質を有する樹脂(本例では感光性ポリイミド)である。なお、ポジ型感光性樹脂の種類、それに対応する光の種類と溶剤(現像液)の種類との組合としては、次の表1に示したものが例示される。
次いで、ステップS20の充填工程において、得られた原料粉末を図3−A(左図)に示すように、ラバープレス成形機41のキャビティ42に充填する。このラバープレス成形機41は、軸線CL2方向に沿って延びるキャビティ42を有する円筒状の内ゴム型43と、内ゴム型43の外周に設けられる円筒状の外ゴム型44と、外ゴム型44の外周に設けられる成形機本体45と、キャビティ42の下側開口部を塞ぐための底蓋46、及び下ホルダー47とを備えている。また、成形機本体45には、液体流路45aが設けられており、液体流路45aを介して、液圧を外ゴム型44の外周面に対して径方向に付与することで、キャビティ42を径方向に縮小させることができるようになっており、その液圧により、原料粉末を加圧するように構成されている。
充填工程では、前記原料粉末PMが内ゴム型43のキャビティ42に充填され、次いで、図3−B(右図)に示すように、キャビティ42内にプレスピン51が、挿入、配置される。ここで、プレスピン51の基端部側には上ホルダー52が一体化して設けられており、プレスピン51の挿入が終了することで、この上ホルダー52がキャビティ42の上側開口部に嵌め込まれて、キャビティ42を密封状態で塞ぐようになっている(図4−C(左図)参照)。ただし、これとは別の方法として、キャビティ42内にプレスピン51を、先に挿入、配置した状態の下で、その両者の隙間(空隙)に原料粉末PMを充填し、その後、キャビティ42の上側開口部を密封状態で塞ぐようにしてもよい。
次に、図4−C(左図)に示した状態において、ステップS30の加圧成形工程(本発明の加圧工程)にはいることになる。すなわち、液体流路45aを介して液圧を印加することで、内ゴム型43及び外ゴム型44の外周側から圧力を印加し、キャビティ42を縮小させる。これにより、原料粉末PMが圧縮・成形され、中間体(成形体)CP1として所望とする形状に成形される。そして、所定時間経過後、液圧の付与を解除することで、内ゴム型43及び外ゴム型44が弾性復帰し、縮小していたキャビティ42が元のサイズに戻る。次いで、図4−D(右図)に示すように、プレスピン51をラバープレス成形機41から軸線CL2方向に引き上げる。これによって、プレスピン51とともに、原料粉末PMが圧縮されて形成された中間体(成形体)CP1がキャビティ42から抜き取られる。その後、プレスピン51を中間体CP1に対して相対回転させることによって、プレスピン51が中間体CP1から抜き取られる。ここで、プレスピン51が抜き取られて形成される中間体CP1の穴部HLが、前記軸孔4を構成することとなる。
なお、前記加圧工程において得られる中間体CP1は、本例では、図5に示すように、その先後長の全体にわたり外径(外周面)が、同径の中空円軸状のものである。ただし、図6に示すように、外径(外周面)が、同径のものでなく、製造されるべき成形体IPより、一回り、又は二回り大きく、取り代をいわば平均化した外径が異径の中空円軸状の中間体CP2としてもよいが、図5に示したように、外径が同径の中空円軸状のものとする場合には、各種の成形体用の中間体として素材の共通化を図りやすい。このため、ラバープレスにおける型を変更することなく、各種の成形体用の中間体を製造できる。ただし、図6に示したような外径が異径の中空円軸状の中間体CP2とする場合には、その中間体CP2から成形体IPに加工する際の加工取り代を小さくできるため、加工時間の短縮が図られる。なお、図5、及び図6中に、2点鎖線で示した部分が、加工後において得られる成形体IPであるが、上記した焼成後の絶縁体2に対応する形状を有することから、各図では参考のために、その各部に、絶縁体2に対応する各部位の符号を付している。
上記したようにしてプレス成形されて得られた中間体CP1は、図2に示した、ステップS50の加工工程に移され、本発明の要部であるところの加工方法が施される。以下、この加工方法のうち、まず、加工対象部位以外をマスクで覆うことによって加工対象部位を選択的に露光することによる実施例について、図7、図8の模式図を参照しながら説明する。本例では、中間体CP1が、図5に示したもので、外径(外周面)が、同径の中空円軸状(円筒状)のものであり、横断面が同軸円形のものであることから、これをその軸線CL1回りに回転させながら、露光、現像等を行うものとする。この回転は、ステップS40の支持ピン挿入工程において得られた中間体CP1の穴部(中空部)HLに、図7に示したように、図示しない回転装置において先端側(図7右側)が小径で径違い状に形成された回転用軸部材100を内挿して固定(保持)し、この回転用軸部材100を回転することによる。なお、この回転用軸部材100は、中間体CP1を、軸振れ(半径方向への振れ)や、軸方向へのズレもなく、容易かつ安定して固定し、回転させ得る寸法とされている。このため、本例で使用している回転用軸部材100のうち、中間体CP1の穴部(中空部)HLに内挿される各部位の外径、及び長さは、ステップS40の支持ピン挿入工程において用いられた支持ピンにおいて対応する前記各部位の寸法と同一(又は略同一)とされている。また、回転用軸部材100は、本例では、水平に配置されており、その先端を、固定部材(抜け止め部材)105で軸方向に締め付けることで、中間体CP1を固定する設定とされており、その固定状態おいて回転用軸部材100を軸線CL1回りに回転させる。なお、回転用軸部材100は、その基端側(図示左側)において、図示しないモータ等の回転駆動手段を用いて回転させる設定されている。
一方、本例では、加工対象部以外、すなわち、中間体CP1の外周面のうち、光を照射して露光する部位以外をマスクで覆うことによって、加工対象部位を選択的に露光し、その露光された部分に現像液を液流状態で浴びせかけて接触させることとしている。このため、本例では、図7−Aに示したように、中間体CP1を正面から見たとき(正投影したとき)、加工後に得られるべき成形体IPの先後にわたり、その成形体IPの外周面の輪郭と同じ形状、寸法のマスク200が、軸線CL1を挟んで対称配置となるようにして設置されている。このマスク200により、中間体CP1を正面から見たとき、加工後に得られるべき成形体IPの輪郭の半径方向における内側(加工対象部位以外)が露光されないようにしている。すなわち、図8に示したように、露光用の光線Rayを正投影状態で(図7の紙面に垂直に)、図7中に2点鎖線で示した矩形の範囲RL内において、多数の平行な光線として照射したとき、回転する中間体CP1のうち、マスク200に対応する部位は遮光され、マスク200の外側、すなわち、図7に示したように加工後に得られるべき成形体IPの外周面の輪郭より半径方向外側に位置する部位が、常時、露光される設定とされている。
他方、現像液DLは、図8に示したように、同図中、左下に配置されたノズル(以下、現像液ノズル)300から液流(噴射流)として、回転する中間体CP1の表面に吹き付ける(浴びせかける)ことで接触させる(接触工程を行う)設定とされている。そして、この現像液DLにより、中間体CP1の表面において露光されて可溶化されたポジ型感光性樹脂とともに、このポジ型感光性樹脂以外の原料粉末が洗い流されて除去される設定とされている。また、本例では図8中、左上に配置したノズル(以下、空気ノズル)400から空気(圧縮空気)Airが吹き付けられ、現像に供されていた現像液DLのうち、滴下せずに付着している現像液が、この後に続く露光の前に除去される現像液除去工程が行われる設定とされている。なお、現像液ノズル300、及び空気ノズル400とも、中間体CP1の先後長にわたって、現像液DL、空気Airが吐出し、ともにカーテン流となって中間体CP1に吹き付けられるように設けられている。なお、本例では、上記したように、ポジ型感光性樹脂がポリイミド化合物であるため、露光には高圧水銀灯を光源とする光(broad band)を照射し、使用する溶剤(現像液)は、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)溶液(2.38%)である。
このような本例では、中間体CP1を、その軸線CL1を回転軸として適度の周速が得られる回転数で回転させながら、露光工程と、現像液の吹付による接触工程と、空気の吹付による現像液除去工程とを行う。これにより、この露光工程と接触工程とを継続することにより、中間体CP1の表面において可溶化されたポジ型感光性樹脂は、吹き付けられる現像液による表面の膨潤や現像液による流動作用によって流され、その可溶化、流されによって粉末粒子間の結合力が、低下し、なくなったポジ型感光性樹脂以外の原料粉末は、中間体CP1の回転に伴い周方向において、樹脂と同時に連続して洗い流されるようにして除去される。これらの工程の進行により、中間体CP1の外周面は、先後長の全体にわたり、次第に削り取られる、いわば円筒研削が行われるようになり、中間体CP1は、図7−B,Cに示したように細くなる。そして、マスク200の形状、大きさとなるまで、これらの工程を継続することによって、最終的には、図7−Dに示したような異径円筒状の成形体IPが得られる。
このように本例の加工方法は、砥石による研削法とは全く異なる加工法によるから、砥石に起因する諸問題や加工上の制約が全くない。しかも、本例では、中間体CP1が回転させられ、現像のために吹き付けられた現像液のうち、表面に付着しているものが、次の露光の前に、空気ノズル400から吹き付けられる空気によって吹き飛ばされる。このため、中間体CP1の周方向において連続して行われる露光が、付着、残存する現像液によって阻害されるのが防止される。なお、吹き飛ばしに変えて、バキュームポンプにより吸引するようにしてもよい。このように、本例では、露光、現像等により、中間体CP1の表面である加工対象部位はその周方向に連続的に加工される。そして、その加工の進行過程では、中間体CP1における表面、及びその近傍のみにおける粉体粒子相互の結合力の低下となるから、型崩れの発生を招くこともない。
本例では、このようにマスク200を用い、露光工程において、加工対象部位以外を覆うことによって、加工対象部位を選択的に露光することとしているため、マスク200の部位を含む加工対象部位の全体に、光を照射して露光することができる上に、加工範囲の制御ないし、過剰な範囲の加工の防止が容易である。なお、マスク200は、図8では、平板状のものとし、中間体CP1の外周面から離間して配置したが、近接させて配置してもよい。また、マスクは、平板状のものに限られず、円形の外周面に沿う円弧断面形状のものとしてもよい。すなわち、マスクは、最終的に所望とする形状、寸法の成形体が得られるものであればよく、本例では、光線を多数の平行な光線束として照射するものとしたために、マスク200を成形体IPと同寸、同形状のものとしたが、照射する光線が拡散状のものであれば、それに応じたものとすればよい。
また、図7、図8の上記例におけるように、中間体CP1を、その軸線CL1を回転軸として回転させながら、マスクを用いて光を照射する露光工程と、接触工程等を行う場合においては、図9に示したように、光の照射を中間体CP1の軸線CL1より上方においてのみ行って、その照射範囲内においてのみ露光を確保するここととしてもよい。そして、この場合におけるマスク200のうち、中間体CP1の軸線CL1の下半部はマスクとして機能させるものでないから、その下側の輪郭は適宜のものとしておけばよい。すなわち、上記のような中間体CP1では、マスクは、軸線CL1より上側半分あれば足りる。
なお、現像液を接触させる手段は、図9中に2点鎖線で示したように、回転する中間体CP1の下方に設けられた槽500中に現像液DLを収容しておき、この現像液DL中に、中間体CP1の下方部位が浸漬するようにしておいてもよい。なお、その場合には、中間体CP1の回転により、相対的に現像液DLに流動作用が得られるため、この現像工程において現像されて可溶化したポジ型感光性樹脂は、その現像液DL中に溶解ないし分散し、それと共に、結合が解かれたポジ型感光性樹脂以外の原料粉末も洗い流される形で除去される。ただし、それらの除去を積極的に行わせるためには、槽500中の現像液DLを回転するスクリュー等の攪拌手段で攪拌するか、槽500又は現像液に超音波等による振動を加えることで、その液に流動作用を付与してもよいし、現像液DLを適宜に循環させることによってもよい。また、現像液を接触させる手段は、スプレーにより接触させるようにしてもよい。この場合、その接触法で、ポジ型感光性樹脂及びポジ型感光性樹脂以外の原料粉末が除去されない場合には、その接触工程の後において、別途、圧縮空気を吹付けるなどして吹き飛ばすことで、それらの除去をすることとしてもよい。なお、現像液を接触させる手段としては、上記した現像液ノズル300から液流(噴射流)として、回転する中間体CP1の表面に吹き付けること、又は、前記したような槽500中の現像液DL中に、回転する中間体CP1の下方部位を浸漬させることのいずれか一方のみの実施としてもよいし、或いは、その両方を同時に実施(併用)してもよい。
前記各例では、外周面(外径)が同径の中空円軸状の中間体CP1を出発素材としたが、加工時間の短縮化のためには、例えば、図6に示したような、成形体IP形状により近い形状の中間体CP2を出発素材として、その加工を開始してもよい。図10は、図7において、図6に示した中間体CP2とした場合の説明図であるが、中間体CP2の形状のみが異なるだけであるから、同一部位には同一の符号を付すに止め、その説明は省略する。このものでは、全長にわたり加工取り代が相対的に小さいから、その分、成形体IPを得るまでの時間短縮が図られる。
さて次に、マスクを用いずに直接、光を照射することで露光する実施例の加工方法について、まず、図11、図12の模式図を参照しながら説明する。ただし、本例でも中間体CP1は図7、図8に示した例と同じものであることから、これを、その軸線CL1を回転軸として回転させながら、露光工程と、接触工程等を行うものとする。また、本例においても、現像液を接触させる接触工程、及び原料粉末除去工程、さらには現像液除去工程とも、上記例において説明したのと同じである。すなわち、本例の加工法における上記例との相違点は、加工対象部位の露光のための光の照射の仕方が、マスクを用いずに直接光を照射することとした点のみであるから、その相違点を中心として説明し、同一の部位については、同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。以下、同様とする。
すなわち、本例では、露光においてマスクを用いることなく、所定のスポット径で円形の例えばレーザー(エキシマレーザー)光線(横断面一定の平行な光線)Rayを、回転する中間体CP1の表面に直接照射することで、その加工対象部位を選択的に露光する加工法である。ただし本例では、図11、図12に示したように、回転する中間体CP1に対し、その軸線CL1に垂直(図11の紙面に垂直)な方向から、所定のスポット径で、レーザー光線Rayを照射して露光するものとしている。そして、その照射状態のまま、その光源600(図12参照)を、例えば、図11において、所定範囲内において縦横、自在に移動制御させ得るようにした照射装置(図示せず)を用いることとしている。すなわち、その照射装置は、中間体CP1を正面視した図11−Aにおいて、その紙面に垂直に、所定のスポット径で、レーザー光線(横断面一定の平行な光線)Rayを照射し、かつ、その照射位置が、軸線CL1に平行な方向(X軸方向)と、その軸線CL1に直角方向(Y軸方向)とに、自在に移動可能なものであり、そのスポット径が、設定した任意の軌跡上を、所定の速度で走査させ得る制御手段を有するものである。
しかして、本例では、回転する中間体CP1に対し、図11中に示したように、例えば、レーザー光線Rayによる照射スポット(図11中に示した重なる多数の小円)Rayが、加工後に得られるべき成形体IPにおける輪郭(外周面)に沿い、かつ倣うように、所定の速度で、その中間体CP1の例えば図示左端側から走査するように数値制御される。そして、この走査の例えば往復動の繰り返しが適数回なされるように設定しておく。この条件の下で、中間体CP1を、上記したようにして回転装置における回転用軸部材100に固定して、これをその軸線CL1回りに回転させる。そして、その回転中において、レーザー光線Rayを照射して露光し、かつその走査を行いながら、前記例におけるのと同様にして、現像液DLの吹付による接触工程と、空気の吹付による原料粉末の除去を行う。これにより、中間体CP1は、外周面が、周方向において、そして、その走査に応じて、先後方向に沿って連続して露光され、かつ現像液DLとの接触によって、ポジ型感光性樹脂が可溶化されて洗い流されるとともに、結合が解かれたポジ型感光性樹脂以外の原料粉末が除去される。これにより、その加工の進行に伴い、図11−Bに示したように、次第に成形体IPの形状に近づく。そして、これらの工程を継続することによって、最終的には、図11−Cに示したような異径円筒状の成形体IPが得られる。なお、スポット径や走査速度は、仕上げ面の精度(面粗度精度)に応じて適宜に設定すればよい。
このような本例では、マスクを用いないため、当然のことながらマスクが不要となる。しかも、本例では、光源600の駆動、制御装置を要するものの、光線Rayの走査軌跡のデータ入力を、成形体の種類ごとの形状、寸法、すなわち、先後長に対応した各部位の外径に応じて事前に行うことで、その加工終了までの制御ができるから、それぞれに応じたプログラミングが必要となるものの、多品種の加工に好適である。そして、このように、スポット径が、成形体IPにおける輪郭(外周面)に沿い、かつ倣うように走査が行われるようにする場合には、加工のし過ぎが確実に防止されるという効果が得られる。本例では、光(光源、又は、照射スポット)を移動するものとしたが、相対的な移動が得られれば良いから、中間体CP1を移動するようにしてもよいし、その両者を移動するようにしてもよい。なお、本例では上記したようにマスクが不要となるが、光源から漏れた光を完全に遮蔽したい要請があるような場合、すなわち、露光すべき部位以外が露光されることを確実に防止したい場合等においては、マスクを用い、露光すべき部位以外をマスクで覆った上で、本例における上記照射や走査を行うこととしてもよい。このように、マスクが不要となるとしても、マスクを併用してもよい。
なお、本例における加工手順としては、中間体CP2の軸線CL1方向に沿う各部位において、所定の外径、すなわち、溝の底が、成形体IPにおける所定の外径となる凹溝となるまで照射を続けて、その後、照射する部位を移動して同様の加工をして、最終的に所望とする異径の成形体IPを得ることとしてもよい。すなわち、このように所定のスポット径での照射において、軸線CL1方向への走査を止めて照射をし続ける場合には、所定位置での加工深さを大きくすることができることから、加工取り代に応じて、走査の速度を適宜変えることとすることで、効率的な加工ができる。
一方、上記したような照射装置を用いる場合でも、加工して除去すべき原料粉末の取り代が大きい場合などでは、中間体CP1を正面視したとき、図11において、その軸線CL1、又はこの軸線と得られるべき成形体IPにおける輪郭(外周面)との中間の部位において、あるいは、図13中に示した光線Ray(重なる多数の小円)のように、その軸線CL1上において、スポット径の中心を位置させて照射し、その軸線CL1に沿って走査させてもよい。このような場合には、照射方向の加工深さの制御で、所定の外径が得られるようにすることになる。これにより、例えば、中間体CP1の回転状態において、軸線CL1方向の所定の位置で、所定のスポット径で光線Rayを照射し、露光、現像等をし続けることで、その位置における加工深さを大きくできるから、これを軸線CL1方向において、間隔をおいて繰り返すことで、軸線CL1に沿って、外周面に凹凸を設けるなどの加工もできるし、走査速度の変更によっても、その加工深さ、すなわち、外径に変化をつけることや、テーパ加工もできる。
また、前記例では、所定のスポット径(円形のスポット)で、照射する場合を例示したが、これは、図14に示したように、中間体CP1を正面視したときにおいて、その軸線CL1を横断する方向に、図中、2点鎖線で示したように、細長い矩形ライン状の投影状態となるように光線(光)Rayを照射するものとしてもよい。このようにすれば、図14、図15に示したように、その照射による露光の範囲が、中間体CP1の径方向に広い範囲となるから、その分、現像により可溶化して除去できる樹脂の時間当たりの領域(径方向の範囲)を広くできる。これにより、例えば、軸線CL1方向に沿う一部(一箇所)において、所定の外径が得られるまでの加工時間の短縮が容易に図られる。径方向の加工取り代が大きい場合に好適である。このように、スポット状又はライン状に光を照射するかどうかは、加工されるべき加工対象部位に応じて、適宜に設定すればよい。
このようにマスクを用いず、加工対象部位に、スポット状又はライン状に光を照射することによって、加工対象部位を選択的に露光する方法としては、上記各例の他、平行な光線を照射する光源を、縦又は横(軸線CL1方向、又は軸線CL1に直角方向)に多数配置しておき、露光させたい部位又は範囲に応じた光源を選択的に用い、それらを同時に、又は、加工取り代に応じて時間差をおくなどして変則的に、加工対象部位を照射するようにしてもよい。例えば、図16に示したように、軸線CL1方向に沿って、横方向に多数の光源(図中の多数の小円)600を一列に並べて配置しておく場合である。この場合には、回転させながらの加工において、中間体CP1のうち、例えば、加工取り代の大きい先端寄り部位S1に対応して並ぶ多数の光源600を発光させて、その光源群600からの照射により、その先端寄り部位S1を集中して露光、現像等して加工することができる。なお、図16における光源600は、中間体CP1における照射位置と同じとする。軸線CL1方向に沿う、加工取り代に応じ、特定部位を選択的又は集中して加工するのに好適である。
また、他の例としては、図17に示したように、縦横(軸線CL1方向、及びそれに直角方向)に、多数の光線が平行に、それぞれスポットで照射されるように、多数の光源(図中の多数の小円)600を配置しておき、これらの光源群600から適宜のものを選択して、同時、又は時間差を設けるなどして照射するようにしてもよい。例えば、図18は、図17に示した光源群600中、軸線CL1方向(横方向)の各位置における加工取り代の大小等に応じて、中間体CP1の径方向の露光範囲(軸線CL1に直角方向の露光範囲)が比例するように、軸線CL1方向の各位置において、縦方向に並ぶ光源600の数を設定し、照射させる光源600を示したものである。このようにすることで、軸線CL1方向(横方向)の各位置において、加工取り代が異なる、あるいは変化がある場合でも、それらに応じた露光を得ることができる。このように、光源600を縦横(軸線CL1方向、及びそれに直角方向)に、多数配置しておくことで、それらのうちの適宜のものの照射のオン(又は点燈)、オフの制御をすることで、軸線CL1方向の各位置における加工深さ(外径寸法)の制御が容易にできる。光源の配置数、ピッチ等にもよるが、いわゆる荒加工に好適である。
さて、上記のような露光、現像等による各加工法によって、中間体CP1に加工を施すことにより、図7−Dに示したように、穴部HLが貫通されてなる軸孔4を有し、絶縁体2と同一形状をなす成形体IPが形成される。ただし、成形体IPは焼成収縮代分、大きいものとされている。その後、この成形体IPは、ステップS60の焼成工程に送られる。そして、この焼成工程においては、得られた成形体IPが焼成炉へ投入、焼成されることになり、絶縁体2すなわち、スパークプラグ用絶縁体が得られる。
なお、本例では、中心電極5は、中央部に放熱性向上を図るための銅合金を配置したNi合金を鍛造加工して、別途、作製される。そして、上記のようにして得られた絶縁体2、及びこの中心電極5と、抵抗体7と、端子電極6とが、ガラスシール層8,9によって封着固定される。なお、ガラスシール層8,9としては、一般的にホウ珪酸ガラスと金属粉末とが混合されて調製されており、この調製されたものが抵抗体7を挟むようにして絶縁体2の軸孔4内に注入された後、後方から前記端子電極6で押圧しつつ、焼成炉内にて加熱することにより焼き固められる。尚、このとき、絶縁体2の後端側胴部10表面には釉薬層が同時に焼成されることとしてもよいし、事前に釉薬層が形成されることとしてもよい。
その後、上記のように、それぞれ作製された中心電極5及び端子電極6を備える絶縁体2と、接地電極27を備える主体金具3とが組付けられる。より詳しくは、比較的薄肉に形成された主体金具3の後端側の開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定される。そして最後に、接地電極27を屈曲させることで、中心電極5の先端部及び接地電極27の先端部間の前記火花放電間隙を調整する加工が実施されることで、図1に示したスパークプラグ1が得られる。
以上、詳述したように、本実施形態によれば、加圧工程において成形された中間体CP1は、上記したような加工工程を経ることで製造されて成形体IPとなる。そして、その加工法は砥石による研削ではないから、特殊形状の砥石や、その目詰り、ドレッシングを要することもないし、上記したような露光、現像等の工程を経ることによるものであるから、型崩れの発生も防止できる。結果、効率的に成形体を得られるので、かかる製造過程を経て製造された絶縁体を含むスパークプラグの製造効率が高められるので、そのコストの低減も期待される。
上記例では、中間体CP1、及びその加工後の成形体IPを、スパークプラグ用絶縁体2を形成するものとした場合で説明したが、本発明は、このような中空軸状をなすセラミック部品や、その形状に限られずに適用できる。すなわち、焼成後においてセラミックとなる無機組成物粉末を主成分とする原料粉末を加圧してなる中間体を、所定形状に加工することで得られる成形体の製造方法に広く適用できる。このため、それらの形状にかかわらず、露光、現像等ができるものに広く適用できる。そして、その加工の形態は、横断面が円である部分を有する成形体となる中間体であり、これをその円の軸線回りに回転させながら、露光工程と接触工程とを、原料粉末除去工程とを行うことに限られないし、加工対象部位をなす表面が平面をなす平面加工においても適用できる。
図19は、マスク200を用いて、平板状をなす中間体CP3の平坦な表面をパターン加工する(平面加工)一例を示したものである。すなわち、ベース(テーブル状のジグ)700の上面に、平板状をなす中間体CP3を、図示しないクランプ手段で固定し、この中間体CP3の上面を、所定のパターンとなるように、例えば、加工対象部位以外をマスク200で覆って、光線Rayを照射し、露光する。そして、図19中、2点鎖線で示す露光された部分を含む中間体CP3に、図示はしないが現像液を浴びせかけるなどして接触させ、その流動作用等によって、樹脂による粉末粒子間の結合力が解かれたその樹脂以外の原料粉末を除去する。本例では、このように工程を成形体IP3の加工対象部位において所定の深さが得られるまで繰り返せばよい。なお、各露光、現像工程の後には、残存する現像液を空気の吹付等によって除去するのがよいのは、上記した中間体CP1の場合と同じである。
図20は、図19においてマスクを用いずに、中間体CP3の平坦な表面を一定深さで平面研削するような加工(平面加工)例を示したものである。このものでは、スポット状又はライン状に光Rayを照射し、光側又は中間体CP3を相対的に移動(例えば、往復動、又は前後動)させることで、必要な加工対象部位を露光する場合である。露光させた部位には、続いて現像液ノズル300から現像液DLの吹付や、空気ノズル400から空気Airの吹付を行うように、光Rayを照射する装置に付帯するように配置してユニット化しておくとよい。そして、これらの工程を成形体IP3が得られるまで、繰り返せばよい。なお、このような中間体CP3の加工面(上面)が円であり、これを一定深さ、削り取る加工をする場合には、その上面の中心を回転中心として回転させながら、照射する光を半径方向に一定速度で往復動させ、現像液及び空気の吹付も、これと同様にしておこなえばよい。なお、平面加工においても、特定部位を深く削るように加工したい場合には、その部位における露光、現像等を所望とする成形体形状が得られるまで実施すればよい。これらのことから明らかであるが、本発明の製造方法は、例えば平板形状の中間体の外周を削り取るような加工(輪郭加工)にも適用できることは言うまでもない。このように本発明の成形体の製造方法は、中間体の形状、又はその中間体を回転させたり、固定したりして加工する加工の形態に制限されることなく、広く適用できる。
尚、本願発明の製造方法における中間体CP1、及びこれを加工してなる成形体が、スパークプラグ用絶縁体をなすものであり、そして、これを用いたスパークプラグにおいては、以下において例示するものや、その他の応用例、変更例としても具体化できる。
(a)上記実施形態では、例えば、ねじ部15の外径がM12以下とされるが、ねじ部15の外径は特に限定されるものではない。また、上記実施形態では、ガラスシール層9の最大外径が3.4mm以下とされるが、ガラスシール層9の最大外径、すなわち、軸孔4の内径についても特に限定されるものではない。さらに、上記実施形態では、軸線CL1方向に沿った絶縁体2の長さが65mm以上とされるが、これについても限定されるものではない。なお、ねじ部15の外径がM12以下、特にM10以下のスパークプラグに用いられる絶縁体には特に高い寸法精度が要求されるところ、砥石の砥粒のサイズに加工精度が依存される従来技術では、それに応えることが容易でないか、できないことがある。これに対し、砥石によらない本願発明の製造方法による場合には、そのような問題がなく、したがって、かかる小さいネジ径のスパークプラグに用いられる絶縁体へのその適用は極めて有効である。
(b)上記実施形態では、成形体IPの加工時において、これを長手方向に水平に配置して加工した場合としたが、鉛直にして加工を行うこととしてもよい。すなわち、本発明は、被加工体である中間体CP1に対し、露光、現像等が行うことができればよいためである。
(c)上記実施形態では、中心電極5及び接地電極27に貴金属チップ31,32が設けられているが、貴金属チップ31,32の双方、或いは、いずれか一方を省略することとしてもよい。
(d)上記実施形態では、主体金具3の先端部26に、接地電極27が接合される場合について具体化しているが、主体金具の一部(又は、主体金具に予め溶接してある先端金具の一部)を削り出すようにして接地電極を形成する場合についても適用可能である(例えば、特開2006−236906号公報等)。
(e)上記実施形態では、工具係合部19は例えば、断面六角形状とされているが、工具係合部19の形状に関しては、このような形状に限定されるものではない。例えば、Bi−HEX(変形12角)形状〔ISO22977:2005(E)〕等とされていてもよい。