a.第1実施形態
第1実施形態は、コイル16の温度を測定する第1温度測定手段として、コイル16の温度を直接的に検出するコイル温度センサ21を採用するとともに、コイル16の温度を測定する第2温度測定手段として、音響信号変換器(トランスデューサ)40の熱等価回路に基づく演算の実行によりコイルの温度を測定する測定手段を採用したものである。この第1実施形態においては、第1温度測定手段によって検出されるコイル16の温度をTc1で表すとともに、第2温度測定手段によって検出されるコイル16の温度をTc2で表す。
まず、本発明の第1実施形態に係るピアノについて説明する。このピアノは、鍵盤の打鍵操作及び離鍵操作に応じてアクション機構を介してハンマーを駆動し、ハンマーによる打弦に応じてピアノ音を発生するものであるが、電気信号(オーディオ信号)によりトランスデューサを駆動制御し、トランスデューサにより響板を駆動して弱音を発生する機能も備えている。以降、本発明に直接関係する弱音を発生する部分について詳細に説明する。図1は、弱音のピアノ音又はその他の楽器音を発生するために、ピアノに内蔵されて響板を加振するための電子回路を示す概略ブロック図である。
このピアノは、鍵盤11及びペダル12を備えている。鍵盤11は、複数の白鍵及び黒鍵からなり、演奏者の手によって打鍵及び離鍵される演奏手段である。ペダル12は、ダンパペダル、ソフトペダル、シフトペダル、ソステヌートペダルなどからなり、演奏者の足によって操作される演奏手段である。
また、このピアノは、弱音の楽器音を発生させるために、センサ回路13、音源回路14、増幅回路15及びコイル16を備えている。センサ回路13は、鍵盤11における打鍵位置及び打鍵速度など、鍵盤11の打鍵操作によって駆動される図示しないハンマーの移動位置及び移動速度など、並びにペダル12の操作位置を検出する複数のセンサからなる。
音源回路14は、センサ回路13によって検出された鍵盤11における打鍵位置及び打鍵速度など、ハンマーの移動位置及び移動速度など、並びにペダル12の操作位置に基づいて、ペダル12の操作状態に応じて、鍵盤11にて打鍵された鍵に対応した音高の楽音信号を打鍵速度に応じた音量で出力する。なお、音源回路14から出力される楽音信号は、通常ピアノ音に対応したオーディオ信号であるが、ピアノ音以外の楽器音に対応したオーディオ信号である場合もある。この音源回路14からのオーディオ信号は、増幅回路15を介してコイル16に出力される。なお、図面において、この音源回路14からもう一つのオーディオ信号が出力されるようになっているが、このオーディオ信号は、他のチャンネル用のものであり、以下に説明する回路装置と同様な回路装置に出力されるもので、簡略化のために、この他のチャンネル用のオーディオ信号の出力先については図示省略している。また、音源回路14から出力されるオーディオ信号は、コイル16以外のヘッドフォン、他のオーディオ装置などにも供給され得る。
増幅回路15は、入力したオーディオ信号を予め決められた所定の増幅率Kで増幅して、後述するリレー回路24を介してコイル16の一端に出力する。コイル16はトランスデューサ40内に設けられたもので、コイル16の他端は接地されている。これにより、音源回路14からオーディオ信号が出力されると、コイル16にはオーディオ信号に対応した電流が流れる。
トランスデューサ40は、図2の縦断面図に示すように、底面部41a及び上面部41bを有し、内部に円柱状の空間を形成した筐体41を備えている。筐体41は、底面部41aにてピアノの支柱に固定され、上面部41bの中央に円形の貫通孔を有する。筐体41内には、ヨーク42、磁石43及びヨーク44が収容されている。ヨーク42は、円盤状に形成された円盤部42aと、円盤部42aの中央位置にて上方に突出した円柱状の円柱部42bとを有し、円盤部42aの下面にて筐体41の底面部41a上に固定されている。磁石43は、円筒状に形成されて、底面にてヨーク42の円盤部42a上に固定されるとともに、ヨーク42の円柱部42bを中央部の貫通孔に貫通させている。ヨーク44も円筒状に形成されて、底面にて磁石43上に固定されるとともに、ヨーク42の円柱部42bを中央部の貫通孔に貫通させている。これにより、図示破線で示すように、磁路が形成される。
また、トランスデューサ40は、ボビン45及び前述したコイル16を有する。ボビン45は、円筒状に形成され、その上端には円盤状のキャップ46が固着されている。ボビン45とキャップ46は、ピアノの響板48及び図示しない弦を支持する駒49を振動させるためのもので、キャップ46は、その上面にて、図示しない弦を支持する駒49の直下又は近傍位置にて響板48の下面に接着剤、両面テープなどにより接着されている。ボビン45は、筐体41の上面部41bの貫通孔を通過して、下部をヨーク42の円柱部42bの外周面とヨーク44の内周面との間の空間に侵入させている。コイル16は、ボビン45の外周面上に、図示破線で示す磁路の位置にて巻き回されている。コイル16の外周面とヨーク44の内周面との間には、磁性流体47が介装されている。
このような構造により、コイル16にオーディオ信号に対応した電流が流れると、コイル16及びボビン45が図示上下方向に振動して、響板48及び駒49をオーディオ信号に対応させて振動させるので、響板48の振動によってオーディオ信号に対応した音響信号が発せられる。したがって、トランスデューサ40及び響板48は、オーディオ信号すなわち電気信号を音響信号に変換する音響信号変換器を構成する。
ふたたび、図1の説明に戻ると、このピアノは、コイル16の温度Tc1,Tc2を測定するとともに、コイル16を含むトランスデューサ40及びその周辺装置を保護するために、コイル温度センサ21、雰囲気温度センサ22、A/D変換回路23、リレー回路(リレースイッチ)24及びマイクロコンピュータ30を備えている。
コイル温度センサ21は、サーマルダイオード温度センサ、サーミスタ温度センサなどで構成され、ボビン45に固定されてコイル16の近傍に位置している(図2参照)。このコイル温度センサ21は、コイル16の温度Tc1(すなわち第1測定温度)を直接的に検出して、温度Tc1を表す電圧信号をA/D変換回路23に出力する。雰囲気温度センサ22も、サーマルダイオード温度センサ、サーミスタ温度センサなどで構成され、トランスデューサ40の置かれた空間に配置されている。この雰囲気温度センサ22は、トランスデューサ40の置かれた空間における温度Ta(すなわち雰囲気温度Ta)を直接的に検出して、雰囲気温度Taを表す電圧信号をA/D変換回路23に出力する。
A/D変換回路23は、コイル16への印加電圧V、コイル温度Tc1(第1測定温度)及び雰囲気温度Taを表す検出信号を入力し、それぞれA/D変換してマイクロコンピュータ30に供給する。リレー回路24は、増幅回路15とコイル16との間に接続され、マイクロコンピュータ30によって制御されてオン・オフ動作するリレースイッチであり、コイル16への通電及び非通電を切換え制御する。なお、前記A/D変換回路23に供給されるコイル16への印加電圧Vは、リレー回路24とコイル16との接続点の電圧である。マイクロコンピュータ30は、CPU,ROM,RAMなどからなり、図3A〜図3Cに示すプログラム処理により、A/D変換回路23から入力されたコイル16への印加電圧V、コイル温度Tc1及び雰囲気温度Taを入力して、コイル16の温度Tc2(第2測定温度)の計算、コイル温度Tc1,Tc2の異常判定、及びリレー回路24のオン・オフ制御を実行する。このマイクロコンピュータ30には、表示器31が接続されている。
ここで、コイル温度Tc2(第2測定温度)の測定方法について説明しておく。コイル温度Tc2の測定は、トランスデューサ40の熱等価回路を想定し、熱等価回路に基づく演算により行う。なお、熱等価回路においては、電流の大きさ(アンペア)が電力(ワット)に対応し、電圧の大きさ(ボルト)が温度(℃)に対応し、抵抗の大きさ(オーム)が熱抵抗(℃/ワット)に対応し、かつコンデンサの容量(ファラッド)が熱容量(℃/ジュール)に対応する。図5(A)は、トランスデューサ40におけるコイル温度Tc2を計算するための熱等価回路を示している。
この熱等価回路について説明すると、熱等価回路は、電流源51及び電圧源52を備えている。電流源51は、コイル16の消費電力Pで生じる熱源に対応しており、消費電力Pを計算する演算器53により制御されて、消費電力Pに対応した電流I1を出力する。この場合、コイル16の抵抗値をR
L(Tc2)とするとともに、コイル16に印加される電圧をVとすると、コイル16の消費電力Pは下記数1にように表される。なお、コイル16の抵抗値R
L(Tc2)は、詳しくは後述するように、コイル温度Tc2の関数で表される。したがって、演算器53は、コイル16に印加される電圧V及びコイル温度Tc2を入力して、下記数1に従ってコイル16の消費電力Pを計算する。
電圧源52は、トランスデューサ40の雰囲気温度Taに対応しており、雰囲気温度センサ22によって検出された雰囲気温度Taに対応した電圧V1を出力する。
コイル16で発生された熱は、ボビン45を介して雰囲気中に放熱されるとともに、磁性流体47及びヨーク44を介して雰囲気中に放熱される。そして、Pbはボビン45で放熱される放熱電力を表し、Pyは磁性流体47及びヨーク44を介して放熱される放熱電力を表している。したがって、電流源51と電圧源52との間のボビン45による放熱路に対応した電流路には、コイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55が直列に接続されている。これらのコイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55の抵抗値は、それぞれR1,R2である。また、電流源51と電圧源52との間の磁性流体47及びヨーク44による放熱路に対応した電流路には、磁性流体熱抵抗56と磁性流体熱容量(磁性流体熱コンデンサ)57との並列回路と、ヨーク放熱抵抗58とヨーク熱容量(ヨーク熱コンデンサ)59との並列回路が直列に接続されている。これらの磁性流体熱抵抗56及びヨーク放熱抵抗58の抵抗値は、それぞれR3,R4である。また、磁性流体熱容量57及びヨーク熱容量59の容量値は、それぞれC3,C4である。そして、これらの抵抗値R1,R2,R3,R4及び容量値C3,C4は、予め測定された既知の値である。
したがって、このように構成した熱等価回路においては、電流源51と、コイル−ボビン間熱抵抗54と、磁性流体熱抵抗56と、磁性流体熱容量57との接続点の電圧が、コイル温度Tc2に対応している。コイル−ボビン間熱抵抗54とボビン放熱抵抗55との接続点の電圧が、ボビン45の温度Tbに対応している。磁性流体熱抵抗56と、磁性流体熱容量57と、ヨーク放熱抵抗58と、ヨーク熱容量59との接続点の電圧が、ヨーク温度Tyに対応している。
次に、マイクロコンピュータ30が、この熱等価回路に基づいて、コイル16の温度Taを演算するための演算ブロックについて説明しておく。図6(A)はこの演算ブロック図であり、図6(C)は図6(A)の演算部78,79の詳細演算ブロック図である。図6(A)の演算ブロック図において、加算部71、乗算部72、逆数変換部73、2乗演算部74及び乗算部75は、図5(A)の演算器53及び電流源51に対応する。
ここで、コイル16の抵抗値R
L(Tc2)と、コイル16の温度との関係について説明しておく。従来から知られている抵抗法計算式によれば、下記数2が成立する。
前記数2において、T1は通電前のコイル16の温度であり、R
L1は通電前のコイル16の抵抗値であり、T2は通電後のコイル16の温度であり、R
L2は通電後のコイル16の抵抗値である。
前記数2を変形すると、抵抗値R
L2は下記数3で表される。
ここでコイル16の通電前の温度T1を25.5℃とし、この温度T1(=25.5)でのコイル16の抵抗値R
L1を測定しておく。この抵抗値R
L1を値R25.5とすると、前記数3は下記数4のようになる。
コイル温度Tc2を前記温度T2として、前記数4の演算を実行すれば、コイル温度Tc2におけるコイル16の抵抗値R
L(Tc2)(=R
L2)が計算されることになる。
ふたたび、図6(A)の説明に戻ると、この数4の演算が、加算部71及び乗算部72による演算処理に対応する。逆数変換部73は、前記計算された抵抗値RL(Tc2)を逆数に変換する。また、2乗演算部74は入力したコイル16への印加電圧Vを2乗演算し、乗算部75が逆数変換部73及び2乗演算部74の両出力を乗算して出力する。これらの逆数変換部73、2乗演算部74及び乗算部75の演算処理は上記数1の演算に対応し、その結果、乗算部75からはコイル16の消費電力Pが出力されることになる。
減算部76は、乗算部75の乗算結果から乗算部77からの乗算結果を減算して、演算部78,79にそれぞれ出力する。乗算部77は、加算部80による加算結果に値1/(R1+R2)を乗算する。この乗算部77による演算処理は、コイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55の両端電圧を、コイル−ボビン間熱抵抗54の抵抗値R1とボビン放熱抵抗55の抵抗値R2との和で除算する演算であり、コイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55を流れる電流量を計算する演算処理である。前記熱等価回路では電流は電力に対応するので、乗算部77による演算結果は、ボビン45による放熱電力Pbに対応する。そして、減算部76が、コイル16の消費電力Pからボビン45による放熱電力Pbを減算して出力するので、減算部76の出力が磁性流体47及びヨーク44による放熱電力Pyに対応する。
演算部78は、磁性流体47及びヨーク44による放熱電力Pyに対応した電流を入力して、磁性流体熱抵抗56及び磁性流体熱容量57の両端の電圧、すなわち磁性流体47における温度上昇分ΔTcyを計算するものである。演算部79は、磁性流体47及びヨーク44による放熱電力Pyに対応した電流を入力して、ヨーク放熱抵抗58及びヨーク熱容量59の両端の電圧、すなわちヨーク44における温度上昇分ΔTyaを計算するものである。演算部78,79の詳細演算ブロックについては、図6(C)を用いて後述する。加算部80は、演算部78,79の両出力値を加算するもので、その出力は、磁性流体47における温度上昇分ΔTcyと、ヨーク44における温度上昇分ΔTyaとの合算値ΔTcaを計算すること、言い換えれば、磁性流体熱抵抗56とヨーク放熱抵抗58との直列回路の両端電圧を計算することを意味している。この加算部80の出力は加算部81に供給され、加算部81は、加算部80の出力値に雰囲気温度Taを加算して出力する。したがって、加算部81の出力は、コイル温度Tc2を表すことになる。
演算部78,79は、それぞれ図6(C)に示すように、ゲイン制御部(乗算部)82,84,86,87、遅延部85、減算部83及び加算部88からなる。ゲイン制御部82は、放熱電力PyにゲインGを乗算して減算部83に出力する。減算部83は、ゲイン制御部82からの入力値から、ゲイン制御部84からの入力値を減算して、ゲイン制御部86及び遅延部85にそれぞれ出力する。遅延部85は、減算部83からの入力値を単位遅延して、ゲイン制御部84,87にそれぞれ出力する。ゲイン制御部84は、遅延部85からの入力値にゲインb1を乗算して減算部83に出力する。ゲイン制御部86は減算部83からの入力値にゲインa0を乗算して、加算部88に出力する。ゲイン制御部87は遅延部85からの入力値にゲインa1を乗算して、加算部88に出力する。加算部88は、ゲイン制御部86,87からの両入力値を加算して出力する。
演算部78においては、放熱電力Pyのサンプリング周期をT3とすると、ゲイン制御部82のゲインGはR3・W3/(α3+W3)であり、ゲイン制御部84のゲインb1は(α3−W3)/(α3+W3)であり、ゲイン制御部86のゲインa0は「1」であり、かつゲイン制御部87のゲインa1は「1」である。ただし、値α3は2/T3であり、値W3は1/C3・R3である。また、演算部79においては、放熱電力Pyのサンプリング周期をT4とすると、ゲイン制御部82のゲインGはR4・W4/(α4+W4)であり、ゲイン制御部84のゲインb1は(α4−W4)/(α4+W4)であり、ゲイン制御部86のゲインa0は「1」であり、かつゲイン制御部87のゲインa1は「1」である。ただし、値α4は2/T4であり、値W3は1/C4・R4である。
この場合、図6(A)及び図6(C)の演算ブロックで用いられている抵抗値R1、R2,R3,R4及び容量値C3,C4は前述のように全て既知の値であるので、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを入力すれば、コイル16の温度Tcは、図6(A)及び図6(C)の演算ブロックに従って計算されることになる。
次に、前記のように構成した第1実施形態に係るピアノの動作について説明する。演奏者が鍵盤11及びペダル12を演奏操作すると、この鍵盤11及びペダル12の演奏操作はセンサ回路13により検出され、センサ回路13による演奏を表す検出信号が音源回路14に供給される。音源回路14は、この演奏を表す検出信号に基づいて、ピアノ音を表す電気的な楽音信号(オーディオ信号)を増幅回路15及びリレー回路24を介してコイル16に出力する。リレー回路24は、詳しくは後述するように、コイル温度Tc1が予め決められた上限温度(例えば、120℃)以上であるときオフ状態に制御されるもので、少なくとも初期においてオン状態に設定されている。したがって、オーディオ信号が増幅率Kで増幅された電圧信号がコイル16に流れる。
この電圧信号により、コイル16には、前記電圧信号に比例した大きさの電流が流れる。このコイル16に流れる電流により、トランスデューサ40はボビン45及びキャップ46を図2の上下方向に振動させるので、響板48及び駒49も、このボビン45及びキャップ46の振動に対応して振動する。したがって、この響板48の振動により、オーディオ信号が音響信号に変換され、演奏者及び聴取者は、演奏者の鍵盤11及びペダル12の演奏に対応した演奏音を聞くことができる。なお、このトランスデューサ40を用いた響板48の振動による演奏音は、ハンマーによって弦を振動させた場合の音に比べて小さな音量の楽器音、すなわち弱音の楽器音である。
次に、マイクロコンピュータ30による、コイル温度Tc2(第2測定温度)の計算、コイル温度Tc1,Tc2の異常判定、及びリレー回路24のオン・オフ制御を実行について説明する。前記ピアノの動作状態では、マイクロコンピュータ30は、図3A〜図3Cのプログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行している。このプログラムの実行は図3AのステップS10にて開始され、マイクロコンピュータ30は、ステップS11にて雰囲気温度センサ22によって検出された雰囲気温度TaをA/D変換回路23を介して入力し、ステップS12にてコイル温度センサ21によって検出されたコイル温度Tc1をA/D変換回路23を介して入力し、ステップS13にて、コイル16への印加電圧V(オーディオ信号)をA/D変換回路23を介して入力する。次に、マイクロコンピュータ30は、ステップS14にて、前記入力した雰囲気温度Ta及び印加電圧Vを用いて、コイル温度Tc2を計算する。このコイル温度Tc2の計算は、前述したように、図5(A)のトランスデューサ40の熱等価回路に基づく図6(A)(C)の演算ブロックで示された演算処理に従って行われる。
前記ステップS14の処理後、マイクロコンピュータ30は、ステップS15にて雰囲気温度Taが160℃以上であるかを判定し、ステップS17にて雰囲気温度Taが−20℃未満であるかを判定する。次に、ステップS19にてコイル温度Tc1が160℃以上であるかを判定し、ステップS21にてコイル温度Tc1が−20℃未満であるかを判定する。次に、ステップS23にてコイル温度Tc2が160℃以上であるかを判定する。
この場合、雰囲気温度Taが160℃以上であれば、ステップS15にて「Yes」と判定して、ステップS16にて「雰囲気温度センサがショート故障である」旨を表示器31に表示する。この温度「160℃」は、トランスデューサ40の雰囲気温度としてあり得ない温度であり、雰囲気温度センサがショート故障している場合に起こり得る値であるからである。また、雰囲気温度Taが−20℃未満であれば、ステップS17にて「Yes」と判定して、ステップS18にて「雰囲気温度センサ22がオープン故障である」旨を表示器31に表示する。この温度「−20℃」は、トランスデューサ40の雰囲気温度としてあり得ない温度であり、雰囲気温度センサ22がオープン故障している場合に起こり得る値であるからである。
また、コイル温度Tc1が160℃以上(図4のA参照)であれば、ステップS19にて「Yes」と判定して、ステップS20にて「コイル温度センサがショート故障である」旨を表示器31に表示する。この温度「160℃」も、コイル16の温度としてあり得ない温度であり、コイル温度センサ21がショート故障している場合に起こり得る値であるからである。また、コイル温度Tc1が−20℃未満であれば(図4のB参照)、ステップS21にて「Yes」と判定して、ステップS22にて「コイル温度センサがオープン故障である」旨を表示器31に表示する。この温度「−20℃」も、コイル16の温度としてあり得ない温度であり、コイル温度センサ21がオープン故障している場合に起こり得る値であるからである。
また、コイル温度Tc2が160℃以上であれば(図4のE参照)、ステップS23にて「Yes」と判定して、ステップS24にて「電力測定系が故障である」旨を表示器31に表示する。この温度「160℃」も、コイル16の温度としてあり得ない温度であり、コイル温度Tc2の計算に用いられる電力測定系すなわち印加電圧Vの入力系統の故障である可能性が極めて高いからである。なお、前述した温度「160℃」及び温度「−20度」は例示的な所定の温度であり、雰囲気温度Ta及びコイル温度Tc1,Tc2としてあり得ない程度の温度であれば、他の温度値でもよい。
前記ステップS16,S18,S20,S22,S24の処理後、マイクロコンピュータ30は、図3BのステップS33にてリレー回路24をオフ状態に切換え、ステップS34にてプログラムの終了処理を実行して、ステップS35にてプログラムの実行を終了する。この場合、前記リレー回路24のオフ状態への切換えにより、オーディオ信号のコイル16への供給は停止し、トランスデューサ40による楽器音の発音は停止する。また、この場合には、プログラムの所定の短時間ごとの自動的な繰り返し処理も停止される。
一方、雰囲気温度Taが−20℃以上160℃未満であり、コイル温度Tc1が−20℃以上160℃未満であり、かつコイル温度Tc2が160℃未満であれば、マイクロコンピュータ30は、ステップS15,S17,S19,S21,S23にてそれぞれ「No」と判定して、プログラムを図3BのステップS25以降に進める。
マイクロコンピュータ30は、ステップS25にてコイル温度Tc2が雰囲気温度Ta未満であるかを判定し、ステップS27にてコイル温度Tc1が雰囲気温度Taよりも5℃低い温度値(Ta−5)未満であるかを判定する。次に、ステップS29にてコイル温度Tc1がコイル温度Tc2よりも10℃高い温度値(Tc2+10)以上であるかを判定し、ステップS31にてコイル温度Tc1がコイル温度Tc2よりも20℃低い温度値(Tc2−20)未満であるかを判定する。
この場合、コイル温度Tc2が雰囲気温度Ta未満であれば(図4のF領域参照)、ステップS25にて「Yes」と判定して、ステップS26にて「プログラム処理故障である」旨を表示器31に表示する。これは、コイル温度Tc2は前記演算処理により雰囲気温度Taに加算して求められるもので、雰囲気温度Ta未満になることはあり得ず、プログラム処理の故障である可能性が極めて高いからである。
また、コイル温度Tc1が温度値(Ta−5)未満であれば(図4のG領域参照)、ステップS27にて「Yes」と判定して、ステップS28にて「コイル温度センサ21が断線傾向の故障又は雰囲気温度センサ22がオーミックモード故障(オープン故障とショート故障の中間)である」旨を表示器31に表示する。これは、コイル温度Tc1は本来的には雰囲気温度Ta未満になることはないが、雰囲気温度Taが急に上昇する状況下では、コイル温度センサ21による検出温度であるコイル温度Tc1に時間遅れが生じする可能性があることを考慮して温度値(Ta−5)を採用するものである。そして、この場合の故障原因としては、コイル温度センサ21が断線傾向の故障をしていたり、雰囲気温度センサ22がオーミックモード故障していたりする可能性が高いためである。なお、前記温度値(Ta−5)は、例示的な値であり、雰囲気温度Taよりも多少小さな値であれば、他の温度値も取り得る。
また、コイル温度Tc1が温度値Tc2+10以上であれば(図4のH領域参照)、ステップS29にて「Yes」と判定して、ステップS30にて「磁性流体の減少故障、又はコイル温度センサ若しくはコイルのオーミックモードの故障である」旨を表示器31に表示する。これは、コイル温度Tc1,Tc2は本来的には同じになるはずであるが、両コイル温度Tc1,Tc2の間には多少の誤差があるために、前記誤差として10℃を考慮したものである。そして、この場合の故障原因としては、磁性流体47が減少していたり、コイル温度センサ21がオーミックモード故障していたり、コイル16がオーミックモード故障していたりする可能性が高いためである。なお、前記温度値(Tc2+10)も、例示的な値であり、コイル温度Tc2よりも多少大きな値であれば、他の温度値も取り得る。
また、コイル温度Tc1が温度値(Tc2−20)未満であれば(図4のI領域参照)、ステップS31にて「Yes」と判定して、ステップS32にて「コイル温度センサの剥離故障、又はコイル温度センサ若しくはコイルの断線傾向の故障である」旨を表示器31に表示する。これは、前述のように、コイル温度Tc1,Tc2は本来的には同じになるはずであるが、両コイル温度Tc1,Tc2の間には多少の誤差がある点と、前述のコイル温度Tc2の計算では風速が考慮されていないために、ピアノを屋外で使用した場合においてはコイル温度センサ21で測定したコイル温度Tc1が前記コイル温度Tc2よりも低めになる点とを考慮して、誤差として20℃を採用したものである。そして、この場合の故障原因としては、コイル温度センサ21がボビン45から剥離していたり、又はコイル温度センサ21又はコイル16が断線傾向の故障をしていたりする可能性が高いためである。なお、前記温度値(Tc2−20)も、例示的な値であり、コイル温度Tc2よりも多少小さな値であれば、他の温度値も取り得る。
前記ステップS26,S28,S30,S32の処理後、マイクロコンピュータ30は、前述したステップS33,S34の処理を実行して、ステップS35にてプログラムの実行を終了する。この場合も、オーディオ信号のコイル16への供給は停止して、トランスデューサ40による楽器音の発音は停止し、またプログラムの所定の短時間ごとの自動的な繰り返し処理も停止される。
一方、コイル温度Tc2が雰囲気温度Ta以上であり、コイル温度Tc1が温度値(Ta−5)以上であり、コイル温度Tc1が温度値(Tc2+10)未満であり、かつコイル温度Tc1が温度値(Tc2−20)以上であれば、マイクロコンピュータ30は、ステップS25,S27,S29,S31でそれぞれ「No」と判定して、プログラムを図3CのステップS36以降に進める。
マイクロコンピュータ30は、ステップS36にて現在クールダウン中であるかを判定する。クールダウンとは、リレー回路24をオフ状態に設定することによりコイル16にオーディオ信号を供給していない状態、すなわちオーディオ信号の供給の停止によりコイル16の温度を降下させている状態である。そして、このクールダウン時には、クールダウンフラグはオン(“1”)に設定されており、非クールダウン時すなわちリレー回路24をオン状態に設定してオーディオ信号をコイル16に供給している状態では、クールダウンフラグはオフ(“0”)に設定されている。
現在クールダウン中でなければ、マイクロコンピュータ30は、ステップS36にて「No」と判定して、ステップS37にてコイル温度Tc1が120℃以上であるかを判定する。なお、この温度120℃は、コイル16が過度に上昇してコイル16を保護する必要がある場合の例示的な温度であり、他の温度を採用することもできる。コイル温度Tc1が120℃未満であれば、マイクロコンピュータ30は、ステップS37にて「No」と判定し、後述するステップS43、S44の処理後、ステップS45にてこのプログラムの実行を終了する。そして、このステップS45におけるプログラムの実行終了の場合には、所定の短時間が経過するごとに、マイクロコンピュータ30は、前述したステップS11〜S44からなる処理を繰返し実行し続ける。したがって、この場合には、リレー回路24はオン状態に保たれ続け、コイル16にはオーディオ信号が供給され続けるので、トランスデューサ40により楽器音が発生され続ける。
一方、このような状態で、コイル温度Tc1が120℃以上になると、マイクロコンピュータ30は、ステップS37にて「Yes」と判定し、ステップS38にてリレー回路24をオフ状態に切換えるとともに、クールダウンフラグをオン(“1”)に設定し、ステップS39にて表示器31にクールダウン中であることを表示させ、ステップS43,S44の処理後、ステップS45にてこのプログラムを一旦終了する。この状態では、オーディオ信号のコイル16への供給がリレー回路24によって遮断され、トランスデューサ40による楽器音の発生は停止する。
そして、次にプログラムが実行された場合、クールダウンフラグはオン(“1”)に設定されているので、マイクロコンピュータ30は、ステップS36にて「Yes」と判定し、ステップS40にてコイル温度Tc1が100℃未満であるかを判定する。なお、この温度100℃は、コイル16の温度が充分に下降してコイル16を保護する必要がなくなった場合の例示的な温度であり、前記120℃よりも低い他の温度を採用することもできる。コイル温度Tc1が100℃以上であれば、マイクロコンピュータ30は、ステップS40にて「No」と判定して、ステップS43,S44の処理を経て、ステップS45にてプログラムの実行を一旦終了する。このような状態では、コイル16へのオーディオ信号の供給が停止しているので、コイル16の温度は徐々に下降する。なお、このようなクールダウン中でも、前述したステップS10〜S46からなるプログラムは繰返し実行されており、この場合にステップS18にて入力される印加電圧Vは「0」である。
このようなコイル16へのオーディオ信号の供給停止によってコイル温度Tc1が下降して100℃未満になると、マイクロコンピュータ30は、ステップS40にて「Yes」と判定し、ステップS41にてリレー回路24をオン状態に切換えるとともに、クールダウンフラグをオフ(“0”)に設定し、ステップS42にて表示器31におけるクールダウン中の表示を消し、ステップS43,S44の処理後、ステップS45にてこのプログラムを一旦終了する。この状態では、オーディオ信号がコイル16に供給され始めて、トランスデューサ40による楽器音は発生され始める。そして、マイクロコンピュータ30は、前述したように、ステップS36,S37にてそれぞれ「No」と判定し始める。
次に、ステップS43,S44の処理ついて説明しておく。マイクロコンピュータ30は、ステップS43にて、雰囲気温度Taが40℃以上又は−10℃未満であるかを判定する。雰囲気温度Taが40℃以上又は−10℃未満でなければ、マイクロコンピュータ30は、ステップS43にて「No」と判定して、ステップS44の処理を実行しない。雰囲気温度Taが40℃以上又は−10℃未満であれば、マイクロコンピュータ30は、ステップS43にて「Yes」と判定して、ステップS44にて表示器31に「使用温度範囲外である」旨の警告を表示させる。これは、このような環境下では、トランスデューサ40を用いて上述した楽器音発生を行うべきでないことを使用者に警告するためである。なお、この40℃及び−10℃も例示的な温度値であり、トランスデューサ40の使用に不適切な他の温度値を採用することもできる。
上記のように動作する第1実施形態においては、コイル温度センサ21によりコイル温度Tc1を第1測定温度として検出するとともに、マイクロコンピュータ30によるステップS14の処理により、トランスデューサ40の熱等価回路に基づいて、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを用いてコイル温度Tc2を第2測定温度として計算した。そして、ステップS36〜S38,S40,S41の処理によりコイル温度Tc1が過剰に上昇して所定温度(120℃)以上になると、リレー回路24をオフしてコイル16へのオーディオ信号の供給を停止し、またこのオーディオ信号の供給停止状態においてコイル温度Tc1が所定温度(100℃)未満に下降すると、リレー回路24をオンしてコイル16へのオーディオ信号の供給を再開するようにした。これにより、コイル16の温度は過剰に上昇することなくなり、コイル16及びその周辺装置の保護が図られる。
また、ステップS29〜S33の処理により、両コイル温度Tc1,Tc2の差が所定範囲外にあるときには、コイル温度Tc1,Tc2の測定手段に故障が発生していると判断して、故障の種類を表示器31に表示するとともに、リレー回路24をオフして、コイル16へのオーディオ信号の供給を停止する。さらに、ステップS19〜S24,S33の処理により、両コイル温度Tc1,Tc2がそれぞれ所定範囲外にあるときにも、コイル温度Tc1,Tc2の測定手段に故障が発生していると判断して、故障の種類を表示器31に表示するとともに、リレー回路24をオフして、コイル16へのオーディオ信号の供給を停止する。これにより、測定されたコイル温度Tc1,Tc2の信頼性が増し、コイル16及びその周辺装置の保護がより的確に図られる。また、故障の種類が表示器31に表示されるので、故障発生時にも的確に対応できるようになる。
さらに、雰囲気温度センサ22によりトランスデューサ40すなわちコイル16の雰囲気温度Taも検出して、前記測定した両コイル温度Tc1,Tc2が雰囲気温度Taに対して所定の範囲外にあるときには、ステップS25〜S28,S33の処理により、コイル温度Tc1,Tc2又は雰囲気温度Taの測定手段に故障が発生していると判断して、故障の種類を表示器31に表示するとともに、リレー回路24をオフして、コイル16へのオーディオ信号の供給を停止する。また、ステップS15〜S18,S33の処理により、雰囲気温度Taが所定範囲外にあるときには、雰囲気温度センサ22に故障が発生していると判断して、故障の種類を表示器31に表示するとともに、リレー回路24をオフして、コイル16へのオーディオ信号の供給を停止する。これにより、測定されたコイル温度Tc1,Tc2のより信頼性が増すと同時に、雰囲気温度Taの信頼性も増し、コイル16及びその周辺装置の保護がより的確に図られる。また、この場合も、故障の種類が表示器31に表示されるので、故障発生時にも的確に対応できるようになる。
なお、前記第1実施形態においては、雰囲気温度センサ22がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、雰囲気温度センサ22によって検出された雰囲気温度Taがトランスデューサ40の雰囲気温度であるとして、コイル温度Tc2を計算するようにした。しかし、雰囲気温度センサ22がトランスデューサ40の近傍位置にない場合には、雰囲気温度センサ22によって検出された雰囲気温度Taが、トランスデューサ40の雰囲気温度として扱えない場合がある。すなわち、雰囲気温度センサ22の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。
この場合には、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図5(A)の熱等価回路は図5(B)のように変形される。すなわち、図5(B)の熱等価回路においては、図5(A)の熱等価回路に対して、電流源51と電圧源52との間に、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40の間の空気の熱抵抗52aと、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40の間の空気の熱容量52bとからなるローパスフィルタが追加される。この場合、熱抵抗52aの抵抗値はR5であり、熱容量52bはC5であり、いずれも予め測定された既知の値である。
そして、この図5(B)の熱等価回路に対応した演算ブロック図は、図6(B)に示すようになる。この図6(B)の演算ブロック図においては、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taは演算部52cにより演算されて、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとして加算部81に入力される。他の部分に関しては、前述した図6(A)の演算ブロック図と同じである。演算部52cは、前述した演算部78,79と同様に、図6(C)のように構成される。この場合、図6(C)においては、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taのサンプリング周期をT5とすると、ゲイン制御部82のゲインGはR5・W5/(α5+W5)であり、ゲイン制御部84のゲインb1は(α5−W5)/(α5+W5)であり、ゲイン制御部86のゲインa0は「1」であり、かつゲイン制御部87のゲインa1は「1」である。ただし、値α5は2/T5であり、値W5は1/C5・R5である。そして、この場合も、図6(B)及び図6(C)の演算ブロックで用いられている抵抗値R5及び容量値C5は前述のように既知の値であるので、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを入力すれば、コイル温度Tc2は、図6(B)及び図6(C)の演算ブロックに従って計算されることになる。
さらに、この変形例においても、マイクロコンピュータ30は、前記第1実施形態の場合と同様に、図3A〜図3Cのプログラムを実行する。ただし、この場合には、ステップS14において、コイル温度Tc2は、前記図6(B)及び図6(C)の演算ブロックに従って計算される。したがって、この変形例によれば、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40とが離れていて、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイル温度Tc2の計算に考慮されるので、コイル温度Tc2が精度よく計算されるようになる。
a1.変形例
次に、第2測定温度であるコイル温度Tc2の計算方法を上記第1実施形態とは異ならせた上記第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1変形例においては、第2測定温度であるコイル温度Tc2の計算方法のみが上記第1実施形態の場合と異なる。この第1変形例に係るピアノの電子回路も、上記図1に示した第1実施形態の概略ブロック図と同様に構成されている。また、この第1変形例に係るピアノのトランスデューサ40も、上記図2に示した第1実施形態のトランスデューサと同様に構成されている。そして、この第1変形例は、コイル温度Tc2を計算するための熱等価回路と、この熱等価回路に基づいてコイル温度Tc2を計算する演算ブロックのみが上記第1実施形態の場合と相違し、他の点については上記第1実施形態と同じである。したがって、以降、第1変形例の説明においては、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
この第1変形例においては、コイル温度Tc2の変化によるコイル16の抵抗値R
Lの変化を無視して、抵抗値R
Lは常に一定であるものとしている。したがって、トランスデューサ40の熱等価回路においては、図7(A)に示すように、上記第1実施形態におけるコイル温度Tc2のフィードバック経路を省略し、上記第1実施形態における演算器53に代えて、演算器61を備えている。演算器61は、コイル16に印加される電圧Vのみを入力して、下記数5に従ってコイル16の消費電力Pを計算する。なお、この場合の抵抗値R
Lは、予め測定した既知の値である。他の構成は、上記第1実施形態の場合と同じである。
この熱等価回路に基づくコイル温度Tc2を計算するための演算ブロックは、図8(A)に示すようになる。すなわち、この演算ブロックにおいては、図6(A)に示した第1実施形態の演算ブロックにおける加算部71、乗算部72及び逆数変換部73が省略されるとともに、乗算部75に代えて、図7(A)の演算器61に関係した演算部91を備えている。演算部91は、2乗演算部74からの入力電圧Vの2乗値V2をコイル16の抵抗値RLで除算することによりコイル16の消費電力Pを計算して、減算部76に出力する。演算ブロックの他の部分は、上記第1実施形態の場合と同じである。
このように構成した第1変形例の動作を説明すると、この第1変形例においても、マイクロコンピュータ30は、図3A乃至図3Cに示すプログラムを実行する。そして、ステップS14において、上記第1実施形態の場合とは異なる方法でコイル温度Tc2が計算される。この場合、コイル温度Tc2は、図8(A)の演算ブロックに従って、印加電圧V及び雰囲気温度Taを用いて計算される。図3A乃至図3Cのその他の処理に関しては、上記第1実施形態の場合と同じであるので、その説明を省略する。
この第1変形例においても、マイクロコンピュータ30は、コイル16の印加電圧V及び雰囲気温度センサ22による雰囲気温度Taを入力して、入力した印加電圧V及び雰囲気温度Taを用いてコイル温度Tc2(第2測定温度)を計算する。しかし、前述のように、コイル温度Tc2の計算においては、図8(A)に示す演算ブロックに従って、すなわちコイル16の抵抗値RLを固定値として、コイル16の消費電力Pが計算される。したがって、この第1変形例によれば、温度Tc2の変化によるコイル16の抵抗値RL(Tc2)の変化が無視されるので、コイル温度Tc2の精度が上記第1実施形態の場合に比べて多少悪化するが、コイル温度Tc2の計算が上記第1実施形態に比べて簡単になる。
なお、前記第1変形例においても、雰囲気温度センサ22がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、雰囲気温度センサ22によって検出された空気の温度がトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル温度Tc2を計算するようにした。しかし、この場合も、雰囲気温度センサ22の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、この場合にも、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図7(A)の熱等価回路は図7(B)のように変形されるとともに、前述した図6(A)の演算ブロック図は図8(B)に示すように変形される。前記変形は、上記第1実施形態の変形例における図5(B)の熱等価回路及び図6(B)の演算ブロック図の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に係る図8(B)の演算ブロックに従って、コイル温度Tc2を計算する。したがって、この変形例によっても、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40とが離れていて、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差もコイルTc2の計算に考慮されるので、コイル温度Tc2が精度よく計算されるようになる。
a2.第2変形例
次に、第2測定温度であるコイル温度Tc2の計算方法を上記第1実施形態とはさらに異ならせた上記第1実施形態の第2変形例にについて説明する。この第2変形例に係るピアノの電子回路は、図9に示すように、上記図1に示した第1実施形態の場合に対して、コイル16と接地間に予め決められた小さな抵抗値rを有する電流検出用の抵抗25が接続されている。そして、この抵抗25とコイル16との接続点の電圧Vr(すなわち、抵抗25の端子電圧Vr)がA/D変換回路23に供給されるようになっている。なお、この抵抗25の抵抗値rは小さいので、コイル16に印加される電圧Vには影響しない。A/D変換回路23は、上記第1実施形態の場合のコイル温度センサ21によって検出されたコイル温度Tc1、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度センサ22によって検出された雰囲気温度Taを表す検出信号のA/D変換に加えて、抵抗25の端子電圧VrもA/D変換して、マイクロコンピュータ30に供給する。そして、この電子回路の他の部分については、上記第1実施形態の場合と同様に構成されている。また、この第2変形例に係るピアノのトランスデューサ40も、上記図2に示した第1実施形態のランスデューサと同様に構成されている。したがって、この第2変形例の場合も、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
そして、この第2変形例におけるコイル温度Tc2を計算するためのトランスデューサ40の熱等価回路においては、図10(A)に示すように、上記第1実施形態におけるコイル温度Tc2のフィードバック経路は省略され、上記第1実施形態における演算器53に代えて、乗算器62を備えている。乗算器62は、コイル16に印加される電圧Vと、除算器62aによって計算されるコイル16に流れる電流Iとを入力して、下記数6に従ってコイル16の消費電力Pを計算する。除算器62aは、抵抗25の端子電圧Vrを抵抗25の抵抗値rで除算して、コイル16に流れる電流Iを計算する。なお、抵抗25として、端子電圧Vrを電流Iとみなせる基準単位的な抵抗値rを有する抵抗を用いることができたり、後続の演算処理によって端子電圧Vrを実質的にコイル16に流れる電流Iとみなせたりするような場合には、この除算器62aを省略してもよい。他の構成は、上記第1実施形態の場合と同じである。
この熱等価回路に基づくコイル温度Tc2を計算するための演算ブロックは、図11(A)に示すようになる。すなわち、この演算ブロックにおいては、図6(A)に示した第1実施形態の演算ブロックにおける加算部71、乗算部72及び逆数変換部73が省略されて、2乗演算部74及び乗算部75に代えて、前記図10(A)の乗算器62及び除算器62aにそれぞれ対応した乗算部92及び除算部92aを備えている。除算部92aは、端子電圧Vrを抵抗値rで除算することにより電流値Iを計算する。乗算部92は、電圧値Vに電流値Iを乗算することにより消費電力Pを計算して減算部76に出力する。演算ブロックの他の部分は、上記第1実施形態の場合と同じである。
このように構成した第2変形例の動作を説明すると、この第2変形例においても、マイクロコンピュータ30は、図3A乃至図3Cに示すプログラムを実行する。このプログラムにおいては、上記第1実施形態のステップS13にて印加電圧Vに加えて端子電圧Vr(実質的には、電流値Iを示す)も入力され、ステップS14において、上記第1実施形態に場合とは異なる方法でコイル温度Tc2が計算される。この場合、コイル温度Tc2は、図11(A)の演算ブロックに従って、印加電圧V、端子電圧Vr(実質的には、電流値Iを示す)及び雰囲気温度Taを用いて計算される。図3A乃至図3Cのその他の処理に関しては、上記第1実施形態の場合と同じであるので、その説明を省略する。
この第2変形例においても、マイクロコンピュータ30は、コイル16の印加電圧V、抵抗25の端子電圧Vr(実質的には、コイル16に流れる電流値Iを示す)及び雰囲気温度センサ22による雰囲気温度Taを入力して、入力した印加電圧V、端子電圧Vr(実質的には、コイル16に流れる電流値Iを示す)及び雰囲気温度Taを用いてコイル温度Tc2(第2測定温度)を計算する。ただし、前述のように、図11(A)に示す演算ブロックに従って、印加電圧V、端子電圧Vr(実質的には、コイル16に流れる電流値I)及び雰囲気温度Taを用いてコイル温度Tc2を計算する。したがって、この第2変形例によれば、コイル16に流れる電流値Iを検出する必要があるが、この電流値Iの検出は簡単な構成で可能であるので、コイル温度Tc2の計算が上記第1変形例の場合と同様に簡単になる。
なお、前記第2変形例においても、雰囲気温度センサ22がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、雰囲気温度センサ22によって検出された空気の温度がトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル温度Tc2を計算するようにした。しかし、この場合も、雰囲気温度センサ22の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、この場合にも、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図10(A)の熱等価回路は図10(B)のように変形されるとともに、前述した図11(A)の演算ブロック図は図11(B)に示すように変形される。前記変形は、上記第1実施形態の変形例における図5(B)の熱等価回路及び図6(B)の演算ブロック図の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に係る図11(B)の演算ブロックに従って、コイル温度Tc2を計算する。したがって、この変形例によっても、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40とが離れていて、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイルTc2の計算に考慮されるので、コイル温度Tc2が精度よく計算されるようになる。
d.第3変形例
次に、第2測定温度であるコイル温度Tc2の計算方法を上記第1実施形態とはさらに異ならせた上記第1実施形態の第3変形例について説明する。この第3変形例に係るピアノの電子回路は、図12に示すように、上記図1に示した第1実施形態の場合に対して、コイル16の印加電圧VをA/D変換回路23に入力するための接続線が省略され、それに代えて、ヨーク温度センサ26が設けられている。ヨーク温度センサ26は、サーマルダイオード温度センサ、サーミスタ温度センサなどで構成され、図2に破線で示すように、ヨーク44に組付けられ、ヨーク44の温度Ty(すなわち、ヨーク温度Ty)を検出して、ヨーク温度Tyを表す検出信号をA/D変換回路23に出力する。A/D変換回路23は、上記第1実施形態の場合のコイル16の印加電圧Vに代えて、ヨーク温度Tyを表す検出信号をA/D変換してマイクロコンピュータ30に供給する。そして、この電子回路の他の部分については、上記第1実施形態の場合と同様に構成されている。また、この第3変形例に係るピアノのトランスデューサ40も、上記図2に示した第1実施形態のトランスデューサと同様に構成されている。したがって、この第3変形例の場合も、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
そして、この第3変形例におけるコイル温度Tc2を計算するためのトランスデューサ40の熱等価回路においては、図13(A)に示すように、上記第1実施形態におけるコイル16の印加電圧Vの入力経路、コイル温度Tc2のフィードバック経路、及び演算器53は省略されている。なお、この場合、コイル温度Tc2を計算するためには、電流源51、コイル−ボビン間熱抵抗54及びボビン放熱抵抗55は不要であるが、トランスデューサ40の構成要素として存在するので、図13(A)においてもこれらの構成要素51,54,55を含めている。そして、この第3変形例に係る熱等価回路においては、磁性流体熱抵抗56とヨーク放熱抵抗58との接続点と接地間に電圧源63を設けている。この電圧源63は、ヨーク温度Tyに対応しており、ヨーク温度センサ26によって検出されたヨーク温度Tyに対応した電圧V2を出力する。他の構成は、上記第1実施形態の場合と同じである。
この熱等価回路に基づくコイル温度Tc2を計算するための演算ブロックは、図14(A)に示すようになる。この場合、磁性流体熱抵抗56とヨーク放熱抵抗58との接続点の電圧はヨーク温度Tyに対応し、ヨーク放熱抵抗58の両端電圧はヨーク温度Tyと雰囲気温度Taとの差Ty−Ta(ヨーク温度上昇分ΔTya)に対応する。この差を計算するために、演算ブロックにおいては、減算部93が設けられている。そして、この差Ty−Taに応じた電流が、磁性流体熱抵抗56と磁性流体熱容量(磁性流体熱コンデンサ)57との並列回路に流れ、この電流によって磁性流体熱抵抗56の両端電圧(磁性流体温度上昇分ΔTcy)が決定され、ヨーク温度上昇分ΔTya(温度差Ty−Ta)と磁性流体温度上昇分ΔTcyとを雰囲気温度Taに加算することにより、コイル温度Tc2が計算される。これらの温度の計算が、減算部93、演算部78,79,94及び加算部80,81により実現される。具体的には、減算部93及び演算部78,94の演算処理により磁性流体温度上昇分ΔTcyが計算され、減算部93及び演算部79,94の演算処理によりヨーク温度上昇分ΔTyaが計算され、加算部80の加算処理により磁性流体温度上昇分ΔTcyとヨーク温度上昇分ΔTyaとが加算される。そして、加算部81の演算処理により、磁性流体温度上昇分ΔTcyとヨーク温度上昇分ΔTyaとの加算値ΔTcaが雰囲気温度Taに加算される。なお、演算部78,79及び加算部80,81の演算内容は、上記第1実施形態の場合と同様である。また、演算部94は、演算部79と同様な演算処理による値を逆数に変換する演算処理である。
このように構成した第3変形例の動作を説明すると、この第3変形例においても、マイクロコンピュータ30は、図3A乃至図3Cに示すプログラムを実行する。このプログラムにおいては、上記第1実施形態のステップS13において、印加電圧Vに代えて、ヨーク温度センサ26によって検出されたヨーク温度Tyが入力され、ステップS14において、上記第1実施形態に場合とは異なる方法でコイル温度Tc2が計算される。この場合、コイル温度Tc2は、図14(A)の演算ブロックに従って、雰囲気温度Ta及びヨーク温度Tyを用いて計算される。図3A乃至図3Cのその他の処理に関しては、上記第1実施形態の場合と同じであるので、その説明を省略する。
この第3変形例においては、マイクロコンピュータ30は、雰囲気温度センサ22による雰囲気温度Ta及びヨーク温度センサ26によるヨーク温度Tyを入力して、入力した雰囲気温度Ta及びヨーク温度Tyを用いてコイル温度Tc2(第2測定温度)を計算する。したがって、この第3変形例によれば、ヨーク温度Tyを検出するためのヨーク温度センサ26は必要であるが、上記第1実施形態、その第1変形例及び第2変形例に比べて演算処理が簡素化されて、コイル温度Tc2の計算がより簡単になる。
なお、前記第3変形例においても、雰囲気温度センサ22がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、雰囲気温度センサ22によって検出された空気の温度がトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル温度Tc2を計算するようにした。しかし、この場合も、雰囲気温度センサ22の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、この場合にも、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図13(A)の熱等価回路は図13(B)のように変形されるとともに、前述した図14(A)の演算ブロック図は図14(B)に示すように変形されるとよい。前記変形は、上記第1実施形態の変形例における図5(B)の熱等価回路及び図6(B)の演算ブロック図の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に係る図14(B)の演算ブロックに従って、コイル温度Tc2を計算する。したがって、この変形例によっても、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40とが離れていて、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイルTc2の計算に考慮されるので、コイル温度Tc2が精度よく計算されるようになる。
a4.第4変形例
次に、コイル16への印加電圧Vの取出し位置に関する上記第1実施形態の第4変形例について説明する。上記第1実施形態、その第1及び第2変形例においては、コイル16の端子電圧をコイル16への印加電圧Vとして、A/D変換回路23を介してマイクロコンピュータ30に入力するようにした。しかし、これに代えて、リレー回路24の入力側の増幅回路15の出力電圧を、A/D変換回路23を介してマイクロコンピュータ30に入力するようにしてもよい。また、増幅回路15の増幅率Kが一定であることを前提として、増幅回路15の入力電圧を、A/D変換回路23を介してマイクロコンピュータ30に入力し、マイクロコンピュータ30は入力電圧をK倍してコイル16への印加電圧Vとして利用するようにしてもよい。
a5.第5変形例
次に、風速を考慮してコイル温度Tc2を計算する上記第1実施形態の第5変形例について説明する。上記第1実施形態及びその各種変形例におけるコイル温度Tc2(第2測定温度)の測定において、トランスデューサ40が配置されている場所における風速を考慮するとよい。トランスデューサ40が配置された雰囲気中の風速が大きくなると、ボビン放熱抵抗55の抵抗値R2及びヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4は小さくなる。したがって、トランスデューサ40が配置された雰囲気中の風速が大きくなるに従って、抵抗値R2,R4を小さくなるように補正するとよい。この補正計算においては、実験による測定結果を基に作成されていて、風速に応じて変化する抵抗値R2,R4を表す変換テーブル、変換関数などを用いるようにすればよい。
具体的には、図1,9,12において、破線で示すように、トランスデューサ40の近傍に配置され、トランスデューサ40の雰囲気中の風速を検出して、検出した風速を表す検出信号を出力する風速センサ27をA/D変換回路23に接続する。A/D変換回路23は、この風速を表す検出信号もA/D変換してマイクロコンピュータ30に供給する。マイクロコンピュータ30は、上記第1実施形態及び各種変形例に係る図3A乃至3CのプログラムにおけるステップS11〜S13の処理に加えて、風速センサ27により検出された風速を入力し、ステップS14において、図5,7,10,13の熱等価回路及び図6,8,11,14の演算ブロックにおける抵抗値R2,R4を、検出された風速が大きくなるに従って小さくなるように補正して、コイル温度Tc2を計算する。
ただし、上記第1実施形態及びその各種変形例における図3BのステップS31の判定処理においては、ピアノの屋外での使用を考慮して、すなわち、コイル温度Tc1がコイル温度Tc2よりも低めになる可能性がある点を考慮して、コイル温度Tc1が温度値Tc2−20未満であるかを判定するようにした。しかし、この第5変形例では、コイル温度Tc2は風速を考慮して計算されているので、誤差20℃よりも小さな誤差10℃を想定して、ステップS31においては、コイル温度Tc1が温度値(Tc2−10)未満であるかを判定するようにする。なお、この誤差10℃も他の値でもよい。
a6.第6変形例
次に、コイル16へのオーディオ信号の供給を制限するリレー回路24に関する上記第1実施形態の第6変形例について説明する。上記第1実施形態及びその各種変形例においては、増幅回路15の後段に、オーディオ信号のコイル16への供給をオン・オフする保護手段(制限手段)としてのリレー回路24すなわちリレースイッチを設けて、コイル16の温度の過剰な上昇を抑えるようにした。しかし、この保護手段としてのリレー回路24に代えて、トランジスタなどによって構成した電子式スイッチ回路を設けてマイクロコンピュータ30により、電子式スイッチ回路のオン・オフを切換え制御するようにしてもよい。また、保護手段としてのリレー回路24又は電子スイッチ回路はコイル16へのオーディオ信号の供給を許容及び停止するものであるので、コイル16へのオーディオ信号の通路であれば、リレー回路24又は電子スイッチ回路をどこに設けてもよく、リレー回路24又は電子スイッチ回路を、音源回路14と増幅回路15との間に設けてもよい。
また、上記第1実施形態及びその各種変形例において、前記リレー回路24又は電子スイッチ回路に代えて、図15に示すように、音源回路14と増幅回路15とを結ぶ接続線と接地間に通常オフ状態にある電子スイッチ回路24−1を設けて、図3B及び図3CのステップS33,S38,S41の処理により、電子スイッチ回路24−1をオン・オフ制御するようにしてもよい。この場合、ステップS15,S17,S19,S21,S23,S25,S27,S29,S31,S37にて「Yes」と判定されたときには、マイクロコンピュータ30は、ステップS33,S38にて電子スイッチ回路24−1をオンしてコイル16へのオーディオ信号の供給を停止する。一方、コイル16へのオーディオ信号の供給が停止している状態で、ステップS40にて「Yes」と判定されたときには、マイクロコンピュータ30は、ステップS41にて電子スイッチ回路24−1をオフしてコイル16へのオーディオ信号の供給を再開する。なお、この第6変形例においては、音源回路14と、電子スイッチ回路24−1の音源回路14側の端子との間に抵抗28を設ける。その他の構成及び動作は、上述した第1実施形態及びその各種変形例と同じである。これによっても、電子スイッチ回路24−1により、コイル16へのオーディオ信号の供給及びその停止が制御されて、コイル16の過度の温度上昇を避けることができる。
また、前記電子スイッチ回路24−1に代えて、上記第1実施形態及びその各種変形例で用いたリレー回路(リレースイッチ)24と同様なリレー回路を用い、マイクロコンピュータ30は、前記電子スイッチ回路24−1の場合と同様に、リレー回路をオン・オフ制御するようにしてもよい。さらに、これらの電子スイッチ回路24−1又はリレー回路を、増幅回路15とコイル16との接続線と接地間に設けてもよい。
さらに、前述した電子スイッチ回路24−1又はリレー回路に代えて、電子ボリュームを用いることもできる。この場合、例えば、図15に破線で示すように、電子ボリューム24−2を、音源回路14と増幅回路15との接続線と接地間に設ければよい。この場合も、音源回路14と、電子ボリューム24−2の音源回路14側の端子との間に抵抗28を設ける。この電子ボリューム24−2は、マイクロコンピュータ30により制御されて、通常時には、最大ボリュームに保たれている。そして、コイル温度Tc1が120℃以上になった場合に、マイクロコンピュータ30は、ステップS37にて「Yes」と判定し、ステップS38にて電子ボリューム24−2のボリューム値を下げてコイル16へのオーディオ信号の供給量を減少させる。一方、コイル16へのオーディオ信号の供給量が減少している状態で、コイル温度Tc1が100℃未満になると、マイクロコンピュータ30は、ステップS40にて「Yes」と判定し、ステップS41にて電子ボリューム24−2のボリューム値を最大にしてコイル16へのオーディオ信号の供給量を増加させる。また、この場合には、測定手段の故障により雰囲気温度Ta又はコイル温度Tc1,Tc2が異常値になって、ステップS15、S17,S19,S21,S23,S25,S27,S29,S31にて「Yes」と判定されたときには、マイクロコンピュータ30は、ステップS33の処理により、電子ボリューム24−2の出力レベルをゼロにして、オーディオ信号のコイル16への供給を停止する。なお、この場合も、電子ボリューム24−2のボリューム値をゼロにするのではなく、前記ステップS38の処理と同様に、電子ボリューム24−2のボリューム値を下げるようにしてもよい。その他の構成及び動作は、上述した第1実施形態及びその各種変形例と同じである。これによっても、電子ボリューム24−2により、コイル16へのオーディオ信号の供給量が制御される。また、この場合も、電子ボリューム24−2を、増幅回路15とコイル16との接続線と接地間に設けてもよい。
a7.第7変形例
次に、コイル温度Tc2によってコイル16へのオーディオ信号の供給を制御するようにした上記第1実施形態の第7変形例について説明する。この第7変形例においては、マイクロコンピュータ30は、図3CのステップS37において、コイル温度Tc1に代えて、コイル温度Tc2が120℃以上であるかを判定する。そして、コイル温度Tc2が120℃以上であれば、ステップS38にてリレー回路24をオフして、コイル16へのオーディオ信号の供給を停止する。また、コイル16へのオーディオ信号の供給停止後(すなわち、クールダウン状態)においては、ステップS40にて、コイル温度Tc1に代えて、コイル温度Tc2が100℃未満であるかを判定する。そして、コイル温度Tc2が100℃未満であれば、ステップS41にてリレー回路24をオンして、コイル16へのオーディオ信号の供給を再開する。
なお、上記第6変形例で説明したように、オーディオ信号のコイル16の供給の制限手段として電子ボリューム24−2(図15参照)を利用する場合、すなわちコイル16の温度が過剰に上昇したときに電子ボリューム24−2によってコイル16に供給されるオーディオ信号のレベルを下げる場合には、ステップS38において、リレー回路24をオフするのに代えて、電子ボリューム24−2のボリューム値を「0」にするか、又は下げる。また、ステップS41においては、電子ボリューム24−2を最大ボリュームに復帰させるようにする。これによれば、この第7変形例の場合にも、上記第1実施形態の場合と同様に、コイル温度Tc2の下降時にコイル16へのオーディオ信号の供給を自動的に再開させることができる。
a8.第8変形例
次に、トランスデューサ40の変形に関する上記第1実施形態の第8変形例について説明する。上記第1実施形態及びその各種変形例においては、トランスデューサ40内に磁性流体47を設けるようにしたが、磁性流体47を設けないトランスデューサにも、熱等価回路に基づくコイル10の温度測定は適用され得る。この場合、図5,7,10,13の熱等価回路においては、磁性流体熱抵抗56及び磁性流体熱容量(磁性流体熱コンデンサ)57は、空気熱抵抗と空気熱容量に変更される。そして、空気熱抵抗の抵抗値は磁性流体熱抵抗56に比べて極めて大きく、図5,7,10,13の熱等価回路内の抵抗値R3は上記第1実施形態及び各種変形例の場合に極めて大きくなる。そのために、コイル16の消費電力P(発生熱)の大部分がボビン45で放熱されることになり、この場合には、コイル温度Tc2は上記第1実施形態及びその各種変形例の場合に比べて高くなる。
また、上記第1実施形態及びその各種変形例において、ヨーク44に放熱板を設けたトランスデューサにも、熱等価回路に基づくコイル10の温度測定は適用され得る。この場合、図5(A)の熱等価回路は、図16(A)に示すように、ヨーク放熱抵抗58とヨーク熱容量(ヨーク熱コンデンサ)59に並列に、放熱板熱抵抗64及び放熱板熱容量(放熱板熱コンデンサ)65が接続されることになる。なお、図7(A)、図10(A)及び図13(A)の熱等価回路においても同様である。したがって、図5(A)、図7(A)、図10(A)及び図13(A)のヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4が実質的に小さくなることになり、この場合には、コイル16の温度Tcは上記第1実施形態及びその各種変形例の場合に比べて低くなる。
また、上記第1実施形態において、ボビン45の近傍に放熱ファンを設けたトランスデューサにも、熱等価回路に基づくコイル10の温度測定は適用され得る。この場合、図5(A)の熱等価回路は、図17(A)に示すように、ボビン放熱抵抗55に並列に、放熱ファン抵抗66が接続されることになる。なお、図7(A)、図10(A)及び図13(A)の熱等価回路においても同様である。したがって、図5(A)、図7(A)、図10(A)及び図13(A)のボビン放熱抵抗55の抵抗値R2が実質的に小さくなることになり、この場合には、コイル16の温度Tcは上記第1実施形態及びその各種変形例の場合に比べて低くなる。また、前記放熱ファンを設けることで、ヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4も併せて低くなる。
さらには、上記第1実施形態及びその各種変形例において、ヨーク44にヒートパイプを設けてヨーク44の熱をピアノのフレームに逃がすようにしたトランスデューサにも、熱等価回路に基づくコイル10の温度測定は適用され得る。この場合、図5(A)の熱等価回路は、図18(A)に示すように、ヨーク放熱抵抗58とヨーク熱容量(ヨーク熱コンデンサ)59に並列に、ヒートパイプ放熱抵抗67及びフレーム放熱抵抗68が接続されるとともに、フレーム放熱抵抗68に並列にフレーム熱容量(フレーム熱コンデンサ)69が接続されることになる。なお、図18(A)においては、ヒートパイプ放熱抵抗67の抵抗値をR6と表し、フレーム放熱抵抗68の抵抗値をR7と表し、フレーム熱容量69の容量値をC7と表している。また、図7(A)、図10(A)及び図13(A)の熱等価回路においても同様である。したがって、図5(A)、図7(A)、図10(A)及び図13(A)のヨーク放熱抵抗58の抵抗値R4が実質的に小さくなることになり、この場合には、コイル16の温度Tcは上記第1実施形態及びその各種変形例の場合に比べて低くなる。
なお、前記変形例に係る図16(A),図17(A)及び図18(A)の熱等価回路においても、雰囲気温度センサ22がトランスデューサ40の近傍位置に配置されていることを前提として、雰囲気温度センサ22によって検出された室内の温度Taがトランスデューサ40の雰囲気温度Taであるとして、コイル温度Tcを計算するようにした。しかし、これらの場合も、雰囲気温度センサ22の位置とトランスデューサ40の位置とが離れており、雰囲気温度センサ22の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間には多少の温度差が生じる場合がある。したがって、これらの場合にも、雰囲気温度センサ22とトランスデューサ40の間の空間を考慮して、前述した図16(A),図17(A)及び図18(A)の熱等価回路は、それぞれ図16(B),図17(B)及び図18(B)のように変形される。また、前記変形は、上記第1実施形態の変形例における図5(B)熱等価回路の場合と同じであるので、同一符号を付してその説明を省略する。
そして、マイクロコンピュータ30は、前記変形例に係る演算ブロックに従って、コイル温度Tcを計算する。したがって、この変形例によっても、室温センサ21とトランスデューサ40とが離れていて、室温センサ21の位置の空気温度Taと、トランスデューサ40の位置の空気温度Trとの間に差があっても、この空気温度の差はコイル温度Tcの計算に考慮されるので、コイル16の温度Tcが精度よく計算されるようになる。
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係るピアノについて説明する。この第2実施形態は、上記第1実施形態におけるコイル温度センサ21によるコイル温度Tc1(第1測定温度)の測定に代えて、コイル16の抵抗値RLを検出することにより、この抵抗値RLとコイル16の温度との関係に基づいて、コイル温度Tc1を測定するものである。この第2実施形態に係り、ピアノに内蔵されている響板を加振するための電子回路の概略ブロック図を図19に示す。なお、この第2実施形態において、上記第1実施形態と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
この第2実施形態においては、音源回路14と増幅回路15との間に、抵抗101、リレー回路24(上記第1実施形態の場合と同じ)、ハイパスフィルタ回路102及び加算回路103が直列に接続されているとともに、加算回路103には定電圧源回路104が接続されている。なお、増幅回路15の増幅率Kは、予め決められた固定値である。
定電圧源回路104は、コイル16の抵抗値を検出するために、オーディオ信号に重畳させる予め決められた大きさの直流電圧Voを出力する。この直流電圧Voは、オーディオ信号の再生に影響を与えないとともに、消費電力を少なく抑えることができる小さな電圧値であり、例えば、コイル16に10mA乃至100mAの電流が流れる程度の電圧値の範囲内にあることが好ましい。なお、この定電圧源回路104は、出力される直流電圧Voが温度の影響を受けて変動しないように、熱源であるコイル16からなるべく遠い位置に配置されるとよい。ハイパスフィルタ回路102は、音源回路14の出力に接続されて、コイル16に流れる直流電圧が定電圧源回路104からの直流電圧Voのみに依存するようにするために、音源回路14から出力されるオーディオ信号から直流成分を確実に除去するものである。加算回路103は、音源回路14からのオーディオ信号に、定電圧源回路104からの直流電圧Voをオフセット電圧として加算して増幅回路15に出力する。
また、コイル16は抵抗105を介して接地され、コイル16と抵抗105の接続点はローパスフィルタ回路106を介してA/D変換回路23に接続されている。抵抗105は、コイル16に流れる直流電流iの値を検出するための電流検出用抵抗(シャント抵抗)である。この抵抗105の抵抗値Rは、コイル16の抵抗値RLに比べて無視できるほど極めて小さな、予め決められた値である。ローパスフィルタ回路106は、抵抗105に印加されている電圧信号から交流信号成分すなわちオーディオ信号を除去して、直流電圧成分のみをA/D変換回路23に出力する。A/D変換回路23には、増幅回路15の出力電圧Vすなわちコイル16への印加電圧V、雰囲気温度センサ22からの雰囲気温度Taを表す検出信号、及びローパスフィルタ回路106の出力電圧(前記直流電圧成分)が供給される。A/D変換回路23は、これらの入力信号をA/D変換してマイクロコンピュータ30に出力する。なお、この直流電圧成分の大きさを、図19において、抵抗105のコイル16側の端子位置に電圧値Vrとして示している。
マイクロコンピュータ30は、図3A乃至図3CのプログラムにおけるステップS12の処理を図20に示すステップS101、S102に変更したプログラムを実行する。
このように構成した第2実施形態に係るピアノの動作について説明する。この第2実施形態においても、上記第1実施形態の場合と同様に、演奏者が鍵盤11及びペダル12を演奏操作すると、音源回路14は、この演奏に応じたピアノ音を表す電気的な楽音信号(オーディオ信号)を出力する。このオーディオ信号は、抵抗101及び通常オン状態にあるリレー回路24を介してハイパスフィルタ回路102に供給され、ハイパスフィルタ回路102はオーディオ信号に含まれる直流成分を除去して交流成分のみを加算回路103の一方の入力に供給する。加算回路103の他方の入力には、定電圧源回路104から予め決められた直流電圧Voが供給されており、加算回路103は前記オーディオ信号に直流電圧Voを重畳した電気信号を増幅回路15に供給する。増幅回路15は、供給された信号を増幅率Kで増幅した電圧信号をコイル16及び抵抗105に供給する。
この電圧信号により、コイル16及び抵抗105には、前記電圧信号に比例した大きさの電流が流れる。このコイル16に流れる電流により、トランスデューサ40はボビン45を振動させるので、響板48及び駒49も、このボビン45の振動に対応して振動する。この場合、直流電圧Voはオーディオ信号の再生に影響を及ぼさない程度の小さい電圧に設定されているので、響板48及び駒49は、音源回路14から出力されてハイパスフィルタ回路102を通過したオーディオ信号に対応して振動する。したがって、この第2実施形態においても、演奏者及び聴取者は、上記第1実施形態と同様な演奏音を聴くことができる。
このような状態で、マイクロコンピュータ30は、所定の短時間ごとにプログラムを繰り返し実行している。このプログラムの実行においては、図20のステップS11にて、上記第1実施形態の場合と同様に、雰囲気温度センサ22から雰囲気温度TaをA/D変換回路23を介して入力する。そして、この第2実施形態においては、マイクロコンピュータ30は、ステップS101にて、抵抗105の端子電圧Vr(直流電圧成分)をローパスフィルタ回路106及びA/D変換回路23を介して入力し、ステップS102にてこの端子電圧Vrを用いてコイル温度Tc1(第1測定温度)を計算する。
このコイル温度Tc1の具体的な計算処理の前に、端子電圧Vrを用いたコイル温度Tc1の計算方法について説明しておく。まず、コイル16の抵抗値R
Lの検出原理について説明する。前述のように、抵抗105の抵抗値Rはコイル16の抵抗値R
Lに比べて極めて小さく無視でき、オーディオ信号(交流成分)を除いて、直流電圧Voによってコイル16に流れる電流値をiとすると、直流電圧Voは増幅率Kで増幅されているので、コイル16の抵抗値R
Lは下記数7のように表される。
一方、この電流値iは、抵抗105の両端の電圧Vr(交流成分を除いた電圧)と電流iによって下記数8のように表される。この意味で、抵抗105は電流検出用の抵抗である。
この式数8によって表された電流値iを前記数7に代入すると、コイル16の抵抗値R
Lは、下記数9のように表される。
次に、コイル16の抵抗値R
Lを用いて、コイル16の温度T
Lを計算する方法について説明する。ここで、前述した抵抗法計算式によれば、コイル16への通電前の温度をT1とし、コイル16への通電前の抵抗値をR1とし、コイル16への通電後の温度をT2とし、コイル16への通電後の抵抗値をR2とすれば、下記数10が成立する。
前記数10を変形すると、温度T2は下記数11で表される。
ここでコイル16の通電前の温度T1を25.5℃とし、この温度T1(=25.5)でのコイル16の抵抗値R1を測定しておく。この抵抗値R1を値R25.5とすると、前記式数11は下記数12のようになる。
したがって、前記数9で示されたコイル16の抵抗値R
Lを前記数12の抵抗値R2に代入すれば、前記数12の計算をもって、コイル16の温度T
Lが温度T2として計算されることになる。
ふたたび、図20のプログラム処理の説明に戻ると、ステップS102のコイル温度Tc1の計算においては、前記入力した電圧値Vrを用いて前記数9の演算に従ってコイル16の抵抗値RLを計算する。なお、前述のように、数9中の増幅率K、電圧値Vo及び抵抗値Rは既知である。次に、前記計算したコイル16の抵抗値RLを前記数12の抵抗値R2に代入することにより、コイル温度Tc1(前記数12中の温度T2に対応)を計算する。なお、前述のように、数12中の抵抗値R25.5は既知である。
前記ステップS102の処理後、マイクロコンピュータ30は、上記第1実施形態の場合と同様に、ステップS13にてコイル16への印加電圧Vを入力し、ステップS14にて雰囲気温度Ta及び印加電圧Vを用いてコイル温度Tc2(第2測定温度)を計算する。プログラムにおける他の処理に関しては、上記第1実施形態の場合と同様である。ただし、上記図3AのステップS20,S22及び図3BのステップS28,S30,S32におけるコイル温度センサ21の故障原因の表示に関しては、定電圧源回路104、抵抗105、ローパスフィルタ回路106などの電圧値Vrを発生及び検出するめの回路の故障、又はコイル温度Tc1の計算処理のエラーに関する故障である旨を表示する。
上記のように動作する第2実施形態においては、ステップS102の処理により、抵抗105の端子電圧Vrを用いてコイル16の抵抗値RLを計算し、コイル16の抵抗値RLと温度との関係に基づいて前記計算した抵抗値RLを用いてコイル温度Tc1を第1測定温度として計算するとともに、ステップS14の処理により、トランスデューサ40の熱等価回路に基づいて、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを用いてコイル温度Tc2を第2測定温度として計算した。そして、これらの計算したコイル温度Tc1,Tc2及び雰囲気温度Taを用いて、上記第1実施形態の場合と同様に、コイル16へのオーディオ信号の供給の制御、並びに種々の故障の判定及び表示を行うので、コイル16及びその周辺装置の保護が図られるとともに、故障発生時にも的確に対応できるようになる。
b1.第1変形例
次に、第1測定温度であるコイル温度Tc1の計算方法を上記第2実施形態とは異ならせた上記第2実施形態の第1変形例について説明する。図21は、この第1変形例に係るピアノに内蔵されて響板を加振するための電子回路を示す概略ブロック図である。
この第1変形例においては、上記第2実施形態の抵抗101、ハイパスフィルタ回路102、加算回路103及び定電圧源回路104は省略されて、音源回路14の出力側に直接に増幅回路15が接続されるとともに、増幅回路15とコイル16との間にリレー回路24が接続されている。そして、リレー回路24の出力がコイル16への印加電圧VとしてA/D変換回路23に供給されている。なお、この場合も、増幅回路15の増幅率Kは、予め決められた固定値である。
また、この第1変形例においては、コイル16の抵抗値RL及び温度Tc1を検出するために、コンデンサ107及び定電流源回路108を備えている。コンデンサ107は、音源回路14から増幅回路15及びリレー回路24を介してコイル16に供給されるオーディオ信号中の直流成分を除去するとともに、定電流源回路108からの直流電流がリレー回路24側に流れ込むことを防止する。すなわち、コンデンサ107は、ハイパスフィルタ回路であり、上記第2実施形態のハイパスフィルタ回路102とほぼ同一機能を有する。定電流源回路108は、コイル16に並列に接続されて、オーディオ信号に重畳させる予め決められた直流電流Iを出力する。この直流電流Iも、オーディオ信号の再生に影響を与えないとともに、消費電力を少なく抑えることができる小さなものであり、例えば、10mA乃至100mAの範囲内にあることが好ましい。なお、この定電流源回路108は、出力される定電流Iが温度の影響を受けて変動しないように、熱源であるコイル16からなるべく遠い位置に配置されるとよい。
マイクロコンピュータ30は、図3Aの一部の処理を図20に示した処理に変更した図3A乃至図3Cに示す、上記第2実施形態と同様なプログラムを実行する。ただし、図20のステップS102のコイル温度Tc1(第1測定温度)の計算方法は上記第2実施形態の場合と異なる。その他の構成については、上記第2実施形態と同じであり、上記第2実施形態の場合と同一符号を付してそれらの説明を省略する。
このように構成した上記第2実施形態の第1変形例の動作を説明すると、この第2変形例においても、鍵盤11及びペダル12の演奏に従った音源回路14からのオーディオ信号は、コンデンサ107を介してコイル16に流れて、響板48がこのオーディオ信号によって振動する。この場合、定電流源回路108からは直流電流Iが出力されるためにオーディオ信号の再生には影響せず、かつ消費電力を少なく抑えるために小さな電流であるので、この直流電流Iは響板48の振動には何も影響せず、響板48の振動による良好な演奏音が弱音で発せられる。
一方、定電流源回路108からの直流電流Iもコイル16に流れ、ローパスフィルタ回路106は交流成分(オーディオ信号)を除去して、コイル16の両端電圧の直流成分すなわち定電流源回路108から直流電流Iのみに関係したコイル16の両端の直流電圧VrをA/D変換回路23に供給する。
次に、マイクロコンピュータ30のプログラム処理について説明する。このプログラムの実行においては、上記第2実施形態の場合と同様に、図20のステップS11にて雰囲気温度センサ22から雰囲気温度TaをA/D変換回路23を介して入力し、ステップS101にてコイル16の端子電圧Vr(直流電圧成分)をローパスフィルタ回路106及びA/D変換回路23を介して入力し、ステップS102にてこの端子電圧Vrを用いてコイル温度Tc1(第1測定温度)を計算する。
この場合、コイル16の抵抗値R
L、定電流源回路108から出力されてコイル16に流れる直流電流I及びコイル16の前記直流電流Iによる端子電圧Vrは、下記数13の関係にある。
この場合、直流電流Iは既知であるので、まず、入力した端子電圧Vrを前記数13に代入してコイル16の抵抗値R
Lを計算する。
次に、前記計算されたコイル16の抵抗値R
Lを用いて、上記第2実施形態の場合と同様に、下記数14に従って、前記計算されたコイル16の抵抗値R
L(前記数12の抵抗値R2と同じ)を用いて、コイル温度Tc1(前記数12のT2と同じ)を計算する。
前記ステップS102の処理後、マイクロコンピュータ30は、上記第2実施形態の場合と同様に、ステップS13にてコイル16への印加電圧Vを入力し、ステップS14にて雰囲気温度Ta及び印加電圧Vを用いてコイル温度Tc2(第2測定温度)を計算する。プログラムにおける他の処理に関しては、上記第2実施形態の場合と同様である。ただし、上記図3AのステップS20,S22及び図3BのステップS28,S30,S32におけるコイル温度センサ21の故障原因の表示に関しては、定電流源回路108、ローパスフィルタ回路106などの電圧値Vrを発生及び検出するめの回路の故障、又はコイル温度Tc1の計算処理のエラーに関する故障である旨を表示する。
上記のように動作する第1変形例においても、ステップS102の処理により、抵抗105の端子電圧Vrを用いてコイル16の抵抗値RLを計算し、コイル16の抵抗値RLと温度との関係に基づいて前記計算した抵抗値RLを用いてコイル温度Tc1を第1測定温度として計算するとともに、ステップS14の処理により、トランスデューサ40の熱等価回路に基づいて、コイル16への印加電圧V及び雰囲気温度Taを用いてコイル温度Tc2を第2測定温度として計算した。そして、これらの計算したコイル温度Tc1,Tc2及び雰囲気温度Taを用いて、上記第2実施形態の場合と同様に、コイル16へのオーディオ信号の供給の制御、並びに種々の故障の判定及び表示を行うので、この第1変形例においても、コイル16及びその周辺装置の保護が図られるとともに、故障発生時にも的確に対応できるようになる。
b2.第2変形例
上記第2実施形態においては、上記数12の演算の実行により、コイル16の抵抗値RL(R2)を用いた演算の実行によりコイル温度Tc1(T2)を計算した。また、上記第2実施形態の第1変形例においては、上記数14の演算の実行により、コイル16の抵抗値RLを用いた演算の実行によりコイル温度Tc1を計算した。しかし、これらに代えて、図22に示すコイル16の抵抗値RLと温度TLの関係を表す変換テーブルを用意しておいて、前記用意した変換テーブルを用いて前記計算した抵抗値R2(RL)を温度TL(Tc1)に変換して、コイル温度Tc1を導出するようにしてもよい。また、電圧値Vrから抵抗値RLを計算することに関しても、電圧値Vrから抵抗値RLへの変換テーブルを用意しておいて、変換テーブルを用いて電圧値Vrから抵抗値RLを計算するようにしてもよい。
b3.その他の変形例
さらに、上記a1〜a3の項で説明した上記第1実施形態の第1〜第3変形例である、コイル温度Tc2(第2測定温度)の計算方法は、上記第2実施形態及びその各種変形例に対しても適用され得る。また、上記a4の項で説明した上記第1実施形態の第4変形例である、コイル16への印加電圧Vの取出し位置に関しても、上記第2実施形態及びその各種変形例に対しても適され得る。また、上記a5の項で説明した第5変形例である、風速を考慮したコイル温度Tc2(第2測定温度)の計算方法も、上記第2実施形態及びその各種変形例に対しても適用され得る。また、上記a6の項で説明した上記第1実施形態の第6変形例である、電子スイッチ回路24−1及び電子ボリューム24−2を用いたコイル16へのオーディオ信号の供給制限も、上記第2実施形態及びその各種変形例に対しても適用され得る。また、上記a7の項で説明した、上記第1実施形態の第7変形例である、コイル温度Tc2によってコイル16へのオーディオ信号の供給を制御することも、上記第2実施形態及びその各種変形例に対しても適用され得る。また、上記a8の項で説明した、上記第1実施形態の第8変形例であるトランスデューサ40の変形に関することも、上記第2実施形態及びその各種変形例に対しても適用され得る。
c.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態に係るピアノについて説明する。この第3実施形態は、コイル温度センサ21によるコイル温度Tc1を第1測定温度として測定し、コイル16の抵抗値RLを検出することにより、この抵抗値RLとコイル16の温度との関係に基づいて、コイル温度Tc1を第2測定温度として測定するものである。この第3実施形態に係り、ピアノに内蔵されている響板を加振するための電子回路の概略ブロック図を図23に示す。図23の概略ブロック図においては、上記第2実施形態に係る図19の概略ブロック図において、コイル16への印加電圧Vの経路を省略して、上記第1実施形態のコイル温度センサ21をA/D変換回路23に接続したものである。他の部分は、上記第2実施形態と同一であるので、同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
また、第3実施形態においては、マイクロコンピュータ30は、図3A乃至図3CのプログラムにおけるステップS13,S14の処理を図24に示すステップS101、S103に変更したプログラムを実行する。
このように構成した第3実施形態に係るピアノの動作について説明する。この第3実施形態においても、上記第2実施形態の場合と同様に、演奏者が鍵盤11及びペダル12を演奏操作すると、音源回路14は、この演奏に応じたピアノ音を表す電気的な楽音信号(オーディオ信号)を出力する。また、この第3実施形態においても、オーディオ信号に定電圧源回路104から予め決められた直流電圧Voを重畳した電気信号が増幅回路15を介して、コイル16及び抵抗105に供給される。そして、この電圧信号は響板48及び駒49を振動させて、上記第2実施形態と同様な演奏音が発生される。
このような状態で、マイクロコンピュータ30は、所定の短時間ごとにプログラムを繰り返し実行している。このプログラムの実行においては、図24のステップS11にて、上記第1及び第2実施形態の場合と同様に、雰囲気温度センサ22から雰囲気温度TaをA/D変換回路23を介して入力し、ステップS12にて、上記第1実施形態の場合と同様にコイル温度センサ21からのコイル温度Tc1を第1測定温度として入力する。次に、ステップS101にて、上記第2実施形態の場合と同様に、抵抗105の端子電圧Vr(直流電圧成分)をローパスフィルタ回路106及びA/D変換回路23を介して入力し、ステップS103にてこの端子電圧Vrを用いてコイル温度Tc2を第2測定温度として計算する。このステップS103のコイル温度Tc2の演算処理は、上記第2実施形態の図20のステップS102におけるコイル温度Tc1の演算処理と全く同じである。異なる点は、コイル温度Tc2(第2測定温度)として計算される点のみであるので、その処理方法に関する説明は省略する。
前記ステップS103の処理後、マイクロコンピュータ30は、上記第1及び第2実施形態の場合と同様なステップS15以降の処理を実行する。ただし、上記第3実施形態においては、コイル温度Tc2は、上記第1及び第2実施形態のように雰囲気温度Taを加算して求めるわけではなく、コイル16の抵抗値RLと温度との関係を用いて雰囲気温度Taとは独立に計算される。したがって、図3BのステップS25の判定処理においては、ステップS27の判定処理と同様に、コイル温度Tc2が温度値(Ta−5)未満であるかを判定する。また、上記図3AのステップS24及び図3BのステップS26,S30,S32においては、定電圧源回路104、抵抗105、ローパスフィルタ回路106などの電圧値Vrを発生及び検出するめの回路の故障、又はコイル温度Tc2の計算処理のエラーに関する故障である旨も表示する。
上記のように動作する第3実施形態においては、ステップS12の処理により、コイル温度センサ21によって検出されたコイル温度Tc1を第1測定温度として入力するとともに、ステップS103の処理により、抵抗105の端子電圧Vrを用いてコイル16の抵抗値RLを計算し、コイル16の抵抗値RLと温度との関係に基づいて前記計算した抵抗値RLを用いてコイル温度Tc2を第2測定温度として計算した。そして、これらの計算したコイル温度Tc1,Tc2及び雰囲気温度Taを用いて、上記第1及び第2実施形態の場合と同様に、コイル16へのオーディオ信号の供給の制御、並びに種々の故障の判定及び表示を行うので、コイル16及びその周辺装置の保護が図られるとともに、故障発生時にも的確に対応できるようになる。
c1.第1変形例
次に、第2測定温度であるコイル温度Tc2の計算方法を上記第3実施形態とは異ならせた上記第3実施形態の第1変形例にについて説明する。この第1変形例は、上記第3実施形態のコイル温度Tc2を、上記第2実施形態の第1変形例のコイル温度Tc1と同様なコイル16の抵抗値RLを用いた方法により測定するようにしたものである。この第3実施形態の第1変形例に係り、ピアノに内蔵されている響板を加振するための電子回路の概略ブロック図を図25に示す。図25の概略ブロック図においては、上記第2実施形態の第1変形例に係る図21の概略ブロック図において、コイル16への印加電圧Vの経路を省略して、上記第1実施形態のコイル温度センサ21をA/D変換回路23に接続したものである。他の部分は、上記第2実施形態の第1変形例と同一であるので、同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
また、この第3実施形態の第1変形例においては、マイクロコンピュータ30は、上記第3実施形態の場合と同様な、図3A乃至図3CのプログラムにおけるステップS12,S13の処理を図24に示すステップS101、S103に変更したプログラムを実行する。
このように構成した第3実施形態の第1変形例に係るピアノの動作について説明する。この第3実施形態の第1変形例においても、上記第2実施形態の第1変形例の場合と同様に、演奏者が鍵盤11及びペダル12を演奏操作すると、鍵盤11及びペダル12の演奏に従った音源回路14からのオーディオ信号は、コンデンサ107を介してコイル16に流れて、響板48がこのオーディオ信号によって振動する。
このような状態で、マイクロコンピュータ30は、所定の短時間ごとにプログラムを繰り返し実行している。このプログラムの実行においては、上記第3実施形態の場合と同様に、図24のステップS11,S12,S101,S103の処理により、雰囲気温度Ta、コイル温度Tc1及び端子電圧Vrが入力されるとともに、コイル温度Tc2が計算される。ただし、ステップS103によるコイル温度Tc2の演算処理は、上記第3実施形態による方法とは異なり、上記第2実施形態の第1変形例の図20のステップS102におけるコイル温度Tc1の演算処理と全く同じである。異なる点は、コイル温度Tc2(第2測定温度)として計算される点のみであるので、その処理方法に関する説明は省略する。
前記ステップS103の処理後、マイクロコンピュータ30は、上記第3実施形態の場合と同様なステップS15以降の処理を実行する。そして、この場合も、コイル温度Tc2は、上記第1及び第2実施形態のように雰囲気温度Taを加算して求めるわけではなく、コイル16の抵抗値RLと温度との関係を用いて雰囲気温度Taとは独立に計算される。したがって、図3BのステップS25の判定処理においては、ステップS27の判定処理と同様に、コイル温度Tc2が温度値(Ta−5)未満であるかを判定する。また、上記図3AのステップS24及び図3BのステップS26,S30,S32においては、上記第3実施形態とは若干異なり、定電流源回路108、ローパスフィルタ回路106などの電圧値Vrを発生及び検出するめの回路の故障、又はコイル温度Tc2の計算処理のエラーに関する故障である旨も表示する。
上記のように動作する第3実施形態の第1変形例においても、ステップS12の処理により、コイル温度センサ21によって検出されたコイル温度Tc1を第1測定温度として入力するとともに、ステップS103の処理により、コイル16の端子電圧Vrを用いてコイル16の抵抗値RLを計算し、コイル16の抵抗値RLと温度との関係に基づいて前記計算した抵抗値RLを用いてコイル温度Tc2を第2測定温度として計算する。そして、これらの計算したコイル温度Tc1,Tc2及び雰囲気温度Taを用いて、上記第3実施形態の場合と同様に、コイル16へのオーディオ信号の供給の制御、並びに種々の故障の判定及び表示を行うので、この第3実施形態の第1変形例においても、コイル16及びその周辺装置の保護が図られるとともに、故障発生時にも的確に対応できるようになる。
c2.第2変形例
上記第3実施形態においては、上記数12の演算の実行により、コイル16の抵抗値RL(R2)を用いた演算の実行によりコイル温度Tc2を計算した。また、上記第3実施形態の第1変形例においては、上記数14の演算の実行により、コイル16の抵抗値RLを用いた演算の実行によりコイル温度Tc2を計算した。しかし、これらに代えて、上記第2実施形態の第2変形例の場合と同様に、図22に示すコイル16の抵抗値RLと温度TLの関係を表す変換テーブルを用意しておいて、前記用意した変換テーブルを用いて前記計算した抵抗値R2(RL)を温度TL(Tc1)に変換して、コイル温度Tc2を導出するようにしてもよい。また、電圧値Vrから抵抗値RLを計算することに関しても、電圧値Vrから抵抗値RLへの変換テーブルを用意しておいて、変換テーブルを用いて電圧値Vrから抵抗値RLを計算するようにしてもよい。
c3.その他の変形例
さらに、上記a6の項で説明した上記第1実施形態の第6変形例である、電子スイッチ回路24−1及び電子ボリューム24−2を用いたコイル16へのオーディオ信号の供給制限も、上記第3実施形態及びその各種変形例に対しても適用され得る。また、上記a7の項で説明した上記第1実施形態の第7変形例である、コイル温度Tc2によってコイル16へのオーディオ信号の供給を制御することも、上記第3実施形態及びその各種変形例に対しても適用され得る。
d.その他の実施形態
上記第1実施形態及びその各種変形例においては、2種類のコイル温度Tc1,Tc2を、コイル温度センサ21による直接的な検出と、トランスデューサ40の熱等価回路に基づく計算とによりそれぞれ取得するようにした。また、上記第2実施形態及びその各種変形例においては、2種類のコイル温度Tc1,Tc2を、コイル16の抵抗値RLを温度に変換する計算と、トランスデューサ40の熱等価回路に基づく計算とによりそれぞれ取得するようにした。また、上記第3実施形態及びその各種変形例においては、2種類のコイル温度Tc1,Tc2を、コイル温度センサ21による直接的な検出と、コイル16の抵抗値RLを温度に変換する計算とによりそれぞれ取得するようにした。
しかし、これらの2種類のコイル温度Tc1,Tc2の取得方法については、2つのコイル温度センサによる直接的な検出と、上記第1及び第2実施形態並びにそれらの変形例で説明したトランスデューサ40の熱等価回路を用いた各種計算処理と、上記第2及び第3実施形態並びにそれらの変形例で説明したコイル16の抵抗値RLを温度に変換する計算処理とによりそれぞれ取得される各種方法のうちのいずれか2つを組み合わせるようにしてもよい。
また、上記第1乃至第3実施形態及びそれらの各種変形例においては、音源回路14から出力された一つのオーディオ信号を一つのトランスデューサ40のコイル16に導いて、一つのトランスデューサ40により響板48を振動させるようにした。しかし、これに代えて、音源回路14から出力された一つのオーディオ信号を複数のトランスデューサのコイルにそれぞれ導いて、複数のトランスデューサにより響板48を振動させるようにしてもよい。
また、上記第1乃至第3実施形態及びそれらの各種変形例においては、本発明をピアノに適用した。しかし、本発明は、通常、響板を有さない電子楽器において、オーディオ信号により振動される響板を新たに設けて、新たに設けた響板をトランスデューサ40により振動させるようにした電子楽器にも適用できる。また、本発明は、響板を振動させるのに代えて、ボイスコイルへの通電によりコーン紙などの振動部材を振動させるスピーカにより、オーディオ信号を音響信号に変換する音響信号変換器にも適用できる。この場合、上記第1実施形態及びその各種変形例のコイル16を、スピーカのボイスコイルとして採用すればよい。
また、上記第1乃至第3実施形態及びそれらの各種変形例においては、鍵盤11及びペダル12の演奏操作に応じて音源回路14からオーディオ信号を発生させるようにした。しかし、これに代えて、鍵盤11及びペダル12以外の演奏操作子の演奏操作に応じてオーディオ信号を音源回路14から発生させるようにしてもよい。また、事前に記憶しておいた演奏データに応じて音源回路14からオーディオ信号を発生させるようにしてもよい。さらには、本発明は、楽器に限らず、トランスデューサ、スピーカなどを用いてオーディオ信号を音響信号に変換する音響信号変換器であれば、種々の音響信号変換器にも適用でき、音源回路14を有さなくても、録音しておいたオーディオ信号をトランスデューサ、スピーカなどに直接導いて音響信号に変換するようにしてもよい。