JP6305303B2 - 回転機器の振動診断装置、方法及びプログラム - Google Patents
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Description
このうち「信号処理」は、測定したデータからノイズを除去し、異常検出の感度を高める処理である。この信号処理の成否により、それ以降の処理が影響を受け、振動診断の精度が大きく左右される。
同期加算法及びアンサンブル平均法は、同一機器に対する振動データの同期を取って複数回測定して平均処理する手法である。
ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等といった各種の周波数フィルタを適用する手法は、目的とする異常事象に対応した低・中・高周波数領域の信号を抽出する手法である。
特に、100rpmを下回る低速回転領域では、回転機器の異常に起因する信号のレベルが急激に減少しノイズレベルと大差なくなるため、異常の検出が困難となる。
この理由として、回転機器を構成するころがり軸受に損傷等が有る場合、回転数の低下に伴って転動体と内外輪の傷との衝突エネルギーが急激に減少し、且つ、衝突の間隔も広がり振動エネルギーの総量が減少することが挙げられる。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態に係る回転機器の振動診断装置10は、回転機器(図示略)の振動を測定した振動データx(t)を取得する取得部11と、互いに独立している複数のノイズデータηq(t)[q=1,2,…Q]を生成する生成部12と、これら複数のノイズデータηq(t)の各々に対し振動データx(t)を合成し複数の合成波形x(t)+ηq(t)を生成する波形合成部13(131,132…13Q)と、これら複数の合成波形x(t)+ηq(t)の各々を閾値θ(θ1, θ2…θQ)により多値化した複数の多値化信号yq(t)[q=1,2,…Q]を生成する閾値処理部14(141,142…14Q)と、これら複数の多値化信号yq(t)を加算させた加算処理信号f(t)を生成する加算処理部15と、この加算処理信号f(t)又はこの加算処理信号f(t)をさらに処理した信号(エンベローブ信号r(t))のスペクトルを解析するスペクトル解析部17と、回転機器の異常に起因する発振の特徴周波数に立つスペクトルのピークの有無を判定する判定部18と、を備えている。
なお、この取得部11は、測定された振動データx(t)をリアルタイムで取得する場合の他に、データ保存手段(図示略)に一時保存させた振動データx(t)を取得する場合もある。
このような、ノイズデータηq(t)の波形は、例えば、0より大きく1以下の一様乱数を正規乱数(正規分布を持つ乱数)に変換するBox-Muller法により生成される。なお、ノイズデータηq(t)の生成方法は特に限定されない。
このように、ノイズデータηq(t)の振幅分布は、正規分布(ガウス分布)に従うものとする。
このように、ノイズデータηq(t)の周波数分布は、一様分布(白色分布)しており、周波数に偏りのない白色ノイズとなっている。
波形合成部13(131,132…13Q)は、生成した複数(Q=100)のノイズデータηq(t)[q=1,2,…Q]の各々に対応して、複数が並列に配置されている。そして、これら複数のノイズデータηq(t)に対して振動データx(t)を合成し、複数(Q=100)の合成波形x(t)+ηq(t)[q=1,2,…Q]を生成する。
実施形態においては、符号22に示すように、合成波形x(t)+ηq(t)の値が、θ以上である場合を1とし、−θ以下である場合を−1とし、それ以外の場合を0とする無次元3値化した場合を示している。
加算処理部15は、複数(Q=100)の多値化信号yq(t)を取得した後に加算してQで除算して平均化し、さらに振動データx(t)の最大振幅値を乗算させて有次元化させた加算処理信号f(t)を生成する。
この確率共鳴処理部20から出力された加算処理信号f(t)は、入力した振動データx(t)に複数の独立したノイズデータηq(t)を加えて確率的に応答する現象(確率共鳴現象)に基づき、この振動データx(t)のS/N比が悪い場合でも回転機器の異常に起因するピーク信号を高感度で検出することを可能とする。
このように、加算処理信号f(t)をエンベローブ処理することにより、一定の周期で発振する衝撃的な振動をより有効に解析することができる。なお、エンベローブ信号は、加算処理信号f(t)をさらに処理した信号の一例であって、後工程のスペクトル解析を有効化するものであれば、加算処理信号f(t)をさらに処理する方法に限定はない。
実関数で表される加算処理信号f(t)のヒルベルト変換信号g(t)は、数式(1)のように表される。ここで、加算処理信号f(t)とそのヒルベルト変換信号g(t)とは、互いに直交関係にあるために、加算処理信号f(t)を実部としてヒルベルト変換信号g(t)を虚部として、複素数で表される解析信号z(t)を数式(2)のように定義することができる。
図10に示すグラフ(実施例)は、加算処理信号f(t)のエンベローブ信号r(t)を入力させた際に、スペクトル解析部17が出力するスペクトル波形を表している。図11に示すグラフ(比較例)は、振動データx(t)のエンベローブ信号(図示略)を入力させた際に、スペクトル解析部17が出力するスペクトル波形を表している。
なお、スペクトル解析部17は、FFT処理等を実行させる場合の他に、対象機器の種類や対象事象に応じて振動診断で一般的に採用される波形処理(入力信号に周波数帯域フィルタを掛ける等)を実行させることができる。
回転機器を構成するいずれかの部品に損傷がある場合、測定された振動データx(t)には、損傷部品に固有の特徴周波数の振動成分が重畳される。
なお、回転機器の損傷部品に起因する発振の特徴周波数について、ころがり軸受を例示しているが、これに限定されることはなく、その他にすべり軸受、歯車、ポンプ、モータの異常事象に対応した特徴周波数を求めることができる。
図10のスペクトル分布の周波数軸に、図3の特徴周波数の計算結果を重ねると、75.69(Hz)、その倍数151.38(Hz)、及び120.31(Hz)において、ピークが顕著に表れている。
これにより、それぞれのピークに特徴周波数が対応している外輪及び内輪が損傷していると判定される。
なお図10の実施例は、図11の比較例と対比して、S/N比の向上に伴いピークの検出感度が優れているといえる。
回転機器に設置した加速度センサにより測定される振動データx(t)を取得する(S11)。この(S11)に対し順番が前後してよいが、互いに独立している複数(Q個)のノイズデータηq(t)[q=1,2,…Q]を生成する(S12)。
このように、全てのノイズデータηq(t)に対し振動データx(t)を合成して複数の合成波形x(t)+ηq(t) [q=1,2,…Q]を生成し、各々を閾値θにより多値化して複数の多値化信号yq(t)[q=1,2,…Q]を生成する(S17 No/Yes)。
次に図15を参照して本発明における第2実施形態について説明する。なお、図15において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
そして波形合成部13(131,132…13Q)は、差分データε(n)(第1実施形態では測定した振動データx(n)であった)を、複数のノイズデータηq(n)[q=1,2,…Q]の各々に対して合成し、複数の合成波形ε(n)+ηq(n)を生成する。
この振動データx(m)は、スイッチ26の設定により、線形予測係数akの演算部27に送信される。
=−Σakx(m−k) [k=1 to p] (6)´
このようにして演算された線形予測係数ak[k=1,2…p]は、保持部28に保持される。
第1導出部29aは、受信した振動データx(n)と保持部28の線形予測係数akとから、次の数式(7)に基づいて、線形予測値データz(n)を導出する。
さらに第2導出部29bにおいて、この線形予測値データz(n)と受信した振動データx(n)とから、次の数式(8)に基づいて、差分データε(n)を導出する。
ε(n)=x(n)−z(n) (8)
そして波形合成部13(131,132…13Q)は、受信した差分データε(n)を、複数のノイズデータηq(t)[q=1,2,…Q]の各々に対して合成し、複数の合成波形ε(n)+ηq(n)を生成する。
同様に第2実施形態における確率共鳴処理部20から出力された加算処理信号f(n)の処理も第1実施形態における場合と同じなので、説明を省略する。
第2実施形態によれば、第1実施形態よりもさらにS/N比が向上させて損傷に起因する異常信号を高感度に検出することが可能となる。
導入初期の損傷が無い状態における回転機器から振動データx(m)を事前に取得する(S31)。取得した振動データx(m)から線形予測係数ak[k=1,2…p]を演算し保持する(S32)。
第1番目(q=1)のノイズデータη1(n)を取得して(S37,S38)、差分データε(n)に合成する(S39)。そして、この合成波形ε(n)+η1(t)を閾値θにより多値化して、多値化信号y1(t)を生成する(S40)。
このように、全てのノイズデータηq(t)に対し差分データε(n)を合成して複数の合成波形ε(n)+ηq(t) [q=1,2,…Q]を生成し、各々を閾値θにより多値化して複数の多値化信号yq(t)[q=1,2,…Q]を生成する(S41)。
また、回転機器の振動診断装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、回転機器の振動診断プログラムにより動作させることが可能である。
Claims (4)
- 回転機器の振動を測定した振動データを取得する取得部と、
互いに独立している複数のノイズデータを生成する生成部と、
前記複数のノイズデータの各々に対し前記振動データを合成し複数の合成波形を生成する波形合成部と、
前記複数の合成波形の各々を閾値により多値化した複数の多値化信号を生成する閾値処理部と、
前記複数の合成波形の多値化信号を加算平均し、振幅データの最大振幅値を乗算させた加算処理信号を生成する加算処理部と、
前記加算処理信号又はこの加算処理信号をさらに処理した信号のスペクトルを解析するスペクトル解析部と、
前記回転機器の異常に起因する発振の特徴周波数に立つ前記スペクトルのピークの有無を判定する判定部と、を備えることを特徴とする回転機器の振動診断装置。 - 事前に取得された振動データから演算された線形予測係数を保持する保持部と、
前記測定した振動データと前記線形予測係数とから線形予測値データを導出する第1導出部と、
この線形予測値データと前記測定した振動データとから差分データを導出する第2導出部と、をさらに備え、
前記波形合成部は、前記振動データに替えて前記差分データを、前記複数のノイズデータの各々に対して合成し、複数の合成波形を生成することを特徴とする請求項1に記載の回転機器の振動診断装置。 - 回転機器の振動を測定した振動データを取得するステップと、
互いに独立している複数のノイズデータを生成するステップと、
前記複数のノイズデータの各々に対し前記振動データを合成し複数の合成波形を生成するステップと、
前記複数の合成波形の各々を閾値により多値化した複数の多値化信号を生成するステップと、
前記複数の合成波形の多値化信号を加算平均し、振幅データの最大振幅値を乗算させた加算処理信号を生成するステップと、
前記加算処理信号又はこの加算処理信号をさらに処理した信号のスペクトルを解析するステップと、
前記回転機器の異常に起因する発振の特徴周波数に立つ前記スペクトルのピークの有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする回転機器の振動診断方法。 - コンピュータに、
回転機器の振動を測定した振動データを取得するステップ、
互いに独立している複数のノイズデータを生成するステップ、
前記複数のノイズデータの各々に対し前記振動データを合成し複数の合成波形を生成するステップ、
前記複数の合成波形の各々を閾値により多値化した複数の多値化信号を生成するステップ、
前記複数の合成波形の多値化信号を加算平均し、振幅データの最大振幅値を乗算させた加算処理信号を生成するステップ、
前記加算処理信号又はこの加算処理信号をさらに処理した信号のスペクトルを解析するステップ、
前記回転機器の異常に起因する発振の特徴周波数に立つ前記スペクトルのピークの有無を判定するステップ、を実行させることを特徴とする回転機器の振動診断プログラム。
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