本発明に係る制御信号生成装置の一実施形態を示す構成図である。
ランダム信号発生器2の一実施形態を示す構成図で、図2(a)は全体構成図、図2(b)はそのうちの1個の確率共振素子の構成図である。
ランダム信号と制御量との関係を示すタイムチャートで、図3(a)(b)は検出信号がない場合のランダム信号と、その制御量とを示し、図3(c)(d)は検出信号が入力された場合のランダム信号と、その制御量とを示している。
ランダム信号制御の高次元化の一例を示す図である。
制御信号生成装置の他の実施形態を示す構成図である。
不感帯付判別器を備えた制御信号生成装置における制御量のタイミングチャートで、図6(a)(b)は、検出器1,4からの信号入力がない場合の制御部3の出力信号及び制御量の変移を示し、図6(c)(d)は、検出器1,4からの信号入力がある場合の制御部3の出力信号及び制御量の変移を示している。
制御信号生成装置10Bの他の実施形態を示す構成図で、2個のランダム信号発生器を設けた場合の構成図である。
図7に示す装置の動作を説明するタイミングチャートで、図8(a)(b)(c)は、検出器1,4からの入信号がない場合における、ランダム信号発生器2a、2bの各出力、論理演算結果、制御量を示し、図8(d)(e)(f)は、検出器1、4の少なくとも一方からの入信号がある場合における、ランダム信号発生器2a、2bの各出力、論理演算結果、制御量を示している。
本制御信号生成装置のより高次の適用例を示す構成図で、フィードバック構造を持つ複合システムの構成図である。
本制御信号生成装置のより高次の適用例を示す構成図で、ネットワーク結合された構成図である。
制御信号生成装置の他の実施形態を示す構成図である。
台車制御システムのブロック図である。
ランダム信号発生器の一例としてのゆらぎ発振器の構成を示す構成図である。
台車制御システムの構成図である。
図14の台車の概略構造図である。
台車の動作を説明する説明図である。
図1は、本発明に係る制御信号生成装置の一実施形態を示す構成図である。制御信号生成装置10は、検出器1、検出器1の検出信号が入力されるランダム信号発生器2、及びランダム信号発生器2の出力信号が入力される制御部3を備えると共に、制御対象100の状態(状況)を検出する検出器4を備えている。検出器4の出力はランダム信号発生器2に入力され、フィードバック系を構成している。
検出器1は、制御対象100に対する制御に必要となる外部乃至は周囲の物理情報等を検出するものである。例えば外部環境に関する情報(信号)としては、温度、気温、湿度、風向、風速、明るさ(昼か夜か、屋内か屋外かなど)、化学物質の濃度、音の強さ、物質への接触や感覚等が想定される。また、制御対象100の状況とは、制御対象物に対する物理情報の変化(例えば位置の変化)などである。ランダム信号発生器2は、例えば検出器1,4からの入力信号を変調してハイレベル、ローレベル(あるいは正極、負極)のバイナリ信号として出力するものである。ランダム信号発生器2は、検出器1,4からの信号入力がない場合、ランダム信号のみが出力される。検出器1,4からの信号入力がない場合におけるランダム信号は、時間平均すると、分散を持ちながら一定値、例えばハイレベル、ローレベル(あるいは正極、負極)の各時間の合計時間の差が0に収束する。そして、検出器1及び検出器4の少なくとも一方から検出信号が入力されると、この入力信号でランダム信号が変調されて、時間平均値が前記一定値からずれる(シフトする)。ランダム信号発生器2の一実施形態は、図2を用いて後述するが、例えば本出願人が先に出願した特願2007−215457に記載した技術を採用することができる。ここに、検出器1,4は、作用信号生成部として機能する。
制御部3は、ランダム信号発生器2から入力されるパルス状信号と制御対象物100の制御信号との関係を設定する、例えば論理演算部で構成される。なお、検出器1,4は1個に限定されず、制御対象、及び制御目的の関係から所要数が採用可能である。また、ランダム信号発生器2は、ランダム信号であれば、アナログノイズの他、デジタル式のランダム信号でもよく、特に発生源のタイプを問わない。
図2は、ランダム信号発生器2の一実施形態を示す構成図である。図2(a)は全体構成図、図2(b)はそのうちの1個の確率共振素子の構成図である。図2(a)に示すように、ランダム信号発生器2は、リング状に接続された所定数、ここでは4個の確率共振素子20を備えている。各確率共振素子20は、矢印で示すように一方向に結合されている。一方向結合とは、信号の流れる方向を一方向とする接続をいう。4個の確率共振素子20の所定の1個(あるいは複数)に外部からの信号入力を受け付ける入力端子が設けられ、他の所定の1個の確率共振素子20には信号取り出し用の出力端子が設けられている。
図2(b)において、確率共振素子20は、ランダムな信号を発生するノイズ発生器21、信号加算器22、閾値判別部23、微分器24、及び出力部25を備えている。ノイズ発生器21は、例えばガウシアンホワイトノイズや熱雑音等の種々のノイズ信号を生成するファンクションジェネレータから構成されている。信号加算器22は、n種類の入力信号と、ノイズ発生器21からのノイズ信号とが入力される端子を有し、入力されたノイズ信号と、n種類の入力信号とを重畳(加算)して、入力信号にゆらぎを与え、閾値判別部23に出力する。n種類の入力信号は、入力端子221〜22nから入力される。確率共振素子20の各入力端子には、前段の確率共振素子20からの出力信号や外部物理量に対応する信号が入力され、また発振動作をトリガするトリガ信号が入力されてもよい。
閾値判別部23は、信号加算器22によりゆらぎの与えられた信号のレベルを所定の閾値と比較し、入力信号のレベルが閾値未満の場合には、出力レベルをローとし、入力信号のレベルが閾値以上の場合には、出力レベルをハイとするものであり、微分器24に出力する。閾値判別部23は、例えばシュミットトリガ回路等のヒステリシス特性を有する回路で構成されており、これによって出力信号の波形をパルス波形に整形している。微分器24は、閾値判別部23から入力される信号を微分し、出力部25に出力する。なお、図2(b)において、右側のマークは、確率共振素子20を表記したものである。この構成によれば、ノイズ発生器21からのノイズ信号は、閾値判別器23で閾値とのレベル比較が行われ、ノイズ信号のレベルが高いと、ハイレベルに変化し、逆にノイズ信号のレベルが低くなると、ハイレベルからローレベルにヒステリシスを加味してレベル変化し、これによって、ノイズ信号のレベルのうち、閾値以上の間、整形されたパルス信号が出力される。出力されたパルス信号は微分器24により部分された後、次段の確率共振素子20に入力され、順次同様に入力されていくことで、微分後のパルス信号がリング内を循環することとなる。このとき、各確率共振素子20は次段となる確率共振素子20との結合定数用として、インピーダンスを調整する回路が設けられていてもよい。これにより、パルス信号はリング内で発振する。
一方、信号加算器22の入力端子221〜22nのうちの少なくともいずれかに信号が入力される(ノイズ信号に重畳される)と、閾値を超えるノイズ信号数、また期間も長くなり、パルス数、パルス幅が増大する傾向を示すこととなる。従って、リングから出力されるパルス信号(図1の制御部3への入力信号)のハイ、ロー期間の時間平均バランスをずらす(シフトさせる)ことができる。
すなわち、確率共振素子20から出力されたパルス信号は、リング状に結合された確率共振素子20を順次伝達されると、確率共振素子20間の協調現象により、各確率共振素子20におけるパルス信号の出力タイミングが同期し、各確率共振素子20は一定周期で自励発振する。つまり、確率共振素子20間で生じるパルス信号の出力タイミングがゆらぐことにより、各確率共振素子20は、同期しやすいタイミングで自立的に周期性信号を生成する。そして、検出器1,4からの検出信号レベルの入力に応じて、また結合定数の増大に応じて、発振周波数が上昇する。
このように、図2に示すランダム信号発生器2によれば、周期的にゆらいだ発振信号は、時間信号としては発振周期にゆらぎを持ち、周波数領域において発振周期の周波数周りにブロードな周波数特性を示す。これらは、ランダムさを含む信号であり、時間平均すると、分散を持ちながら一定値(実質的に一定値)に収束する。かかるランダム信号発生器2を、ここではゆらぎ発振器という。
図3は、ランダム信号と制御量との関係を示すタイムチャートで、図3(a)(b)は検出信号がない場合のランダム信号と、その制御量とを示し、図3(c)(d)は検出信号が入力された場合のランダム信号と、その制御量とを示している。図3では、説明の便宜上、バイナリ信号発生器を例にして説明する。バイナリ信号のVH状態の時間幅をΔtVH、VL状態の時間幅をΔtVLで表すと、検出器1,4からの入力がない場合、ランダム信号のVH状態のトータル時間tVH Total(=ΣΔtVH)と、VL状態のトータル時間tVL Total(=ΣΔtVL)とは等しくなり(tVH Total=tVL Total)、制御量の時間平均変化は実質的に0になる。図3(a)のランダム信号で制御される制御量は、図3(b)のようになり、ある区切られた制御時間幅ΔtCtrlでは制御対象はランダムに動作するが、大きな時間幅では平均0になる。
ランダム信号発生器2に検出器1,4から信号が入力されると、VH状態もしくはVL状態の一方のトータル時間長く(あるいは短く)なり、tVH Total=tVL Totalの関係が破られる。例えば、入力によってVH状態のトータル時間が長くなった場合(図3(c)参照)は、tVH Total>tVL Totalの関係になり、制御量は増大し(図3(d))、平均値は0より大きくなる。入力が長くなると、新たな状態で、再びtVH Total=tVL Totalの関係に落ち着き、新たな平均値でシステムの状態が保持される。
従って、制御量を様々な物理量に対応させることにより、制御対象を制御することが可能となる。例えば、制御量をアクチュエータ(例えばモータ)の前後動作の移動量に対応付けると、制御量が増加すると移動体は前進し、減少すると移動体は後退するといった、移動体の運動制御をランダム信号により行うことができる。複数のランダム信号発生器2を用いた場合、制御パラメータの高次元化が可能となる。例えば、図4に示すように、2つのランダム信号発生器2を用いて二次元の物体移動を制御することが可能となる。
図4は、ランダム信号制御の高次元化の一例を示す図である。例えば移動体をxy空間平面上で実線で示す軌跡に沿って移動させる場合、時間軸方向に、x、y軸の各制御量(x制御量、y制御量)を設定する必要がある。この場合には、図1に示す制御信号生成装置10としては、2個並列(x軸側対応部とy軸側対応部)に備える必要があり、このx制御量、y制御量に対応する信号を外部から、対応する側の検出器1(この実施例では指令信号出力部として機能する)を経て入力することで、移動体を二次元的に移動制御できる。アクチュエータを3個設けて3次元移動させる移動体の場合、図1の装置を3個並列に設けることで対応可能である。
ところで、ランダム信号制御では、制御対象が区切られた制御時間幅(例えば図3(b)のΔtCtrl)でランダムに動作することによって、ゆらぎ(平均値からの分散)を生じる。よりスムーズに制御対象の制御を行うためには、このゆらぎの影響は可及的に小さくすることが望ましい。
図5は、制御信号生成装置の他の実施形態を示す構成図である。図5に示すように、制御信号生成装置10Aは、制御部3の出力側に、不感帯付判別器5を設けたものである。不感帯付判別器5は、制御部3から出力される新たな指令となる制御量が、現状の制御量に対して、所定のレベル範囲(上部閾値及び下部閾値)内である場合、不感帯として、現状の制御量を維持し、一方、新たな指令となる制御量が所定のレベル範囲を超えた場合、超えたレベル分だけ制御量が変化したとして処理される。このようにすることで、ゆらぎに起因する制御量のふらつきに対して、ゆらぎの影響を抑制して制御対象の制御動作を安定させることが可能となる。
図6は、不感帯付判別器を備えた制御信号生成装置における制御量のタイミングチャートである。図6(a)(b)は、検出器1,4からの信号入力がない場合の制御部3の出力信号及び制御量の変移を示し、図6(c)(d)は、検出器1,4からの信号入力がある場合の制御部3の出力信号及び制御量の変移を示している。図6(b)(d)中に示す破線は不感帯の幅を示している。また、実線は、制御部3から出力される制御量を示し、太線は、不感帯付判別器5から出力される実際の制御量を示している。これらの図に示すように、制御部3から出力される制御量が現状の制御量に対して不感帯の幅内であれば(特に図6(b)参照)、不感帯付判別器5からは現状の制御量が(変化されることなく)一定値に維持されている。一方、図6(d)の、例えばt1時点で示すように、制御部3から出力される制御量が現状の制御量に対する不感帯の幅を超えてより高い値になると、超えた分だけ不感帯付判別器5からの制御量が変更される。この結果、図6(b)(d)の太線に示すように、ランダム信号を使用した装置であっても、制御対象、ここでは移動体の動きをよりスムーズにすることができる。
ランダム信号発生器2は、ノイズを利用することから、tVH Total=tVL Totalの関係を実現することが困難な場合が考えられ、この場合には、複数のランダム信号発生器2を並設し、全体として、tVH Total=tVL Totalの関係を実現することができる。
図7は、制御信号生成装置10Bの他の実施形態を示す構成図で、2個のランダム信号発生器を設けた場合の構成図である。図8は、図7に示す装置の動作を説明するタイミングチャートで、図8(a)(b)(c)は、検出器1,4からの信号入力がない場合における、ランダム信号発生器2a、2bの各出力、論理演算結果、制御量を示し、図8(d)(e)(f)は、検出器1、4の少なくとも一方からの信号入力がある場合における、ランダム信号発生器2a、2bの各出力、論理演算結果、制御量を示している。
図7において、制御信号生成装置10Bは、並列に検出器1a、1b、ランダム信号発生器2a、2b、検出器4a、4bを備えると共に、ランダム信号発生器2a、2bの出力信号のレベルに対して所定の論理演算を施す論理演算部6を備える。(表1)は、この論理演算の内容を示す表である。
図8(a)に示すように、検出器1a、1b、4a、4bから信号が入力されていない場合、ランダム信号発生器2aの「信号1」、及びランダム信号発生器2bからの「信号2」はいずれも、tVH1 Total≠tVL1 Total、tVH2 Total≠tVL2 Totalであるとする。また、ランダム信号発生器2a、2bは、同一回路構成であり、ノイズ源として同一構成乃至は共通とすることで、出力されるランダム信号の時間平均スイッチング頻度を等しくすることが可能となる。この状態で、ランダム信号発生器2a、2bの出力信号のレベルに対して、(表1)に示す論理処理を施すと、図8(b)に示すように、H(正極)、0、L(負極)という、3種類の状態信号が時系列方向に出力される。このとき、ランダム信号発生器2a、2bでは、ランダム信号のスイッチング頻度が等しいため、論理演算部6で論理処理された出力信号に対して、tH Total=tL Totalの関係を実現することができ、図8(c)に示すように、制御部13から出力される制御量の時間変化を平均0とすることができる。
一方、検出器1a、1b、4a、4bの少なくともいずれかから、例えば検出器1b、4bの少なくとも一方からランダム信号発生器2bに入力がある場合(図8(d)の「信号2」参照)、2個のランダム信号発生器2a、2b間にスイッチング頻度のずれが発生する。このため、論理演算部6からの出力信号は、H状態又はL状態の一方のトータル時間が長くなり、論理演算後の出力では、tH Total=tL Totalの関係が破られる(図8(e);tH Total>tL Totalの関係)。従って、制御量は一方側(図8(f)では上昇側)にシフトする。
以上のように、本制御信号生成装置を適用すれば、ランダム信号の持つ不確定性が制御対象に対して寛容性を与えるため、制御対象がノイズ等の想定外の信号から引き起こされるエラーに耐性を持ち、ノイズ対策のための信号の受け渡しが不要となり、システム設計が簡単になるというメリットがある。
図9、図10は、本制御信号生成装置のより高次の適用例を示す構成図である。図9は、フィードバック構造を持つ複合システムの構成図であり、図10は、ネットワーク結合された構成図である。
図9において、ランダム信号制御システムRCS1,2,3は制御対象であり、それぞれ本制御信号生成装置10(10A又は10B)を内蔵している。ランダム信号制御システムRCS1は、外部より信号入力を受ける構成であり、ランダム信号制御システムRCS2,3は、それぞれ前段のランダム信号制御システムRCS1,2の出力信号(又は指令信号)を入力信号とするように構成されている。また、ランダム信号制御システムRCS2の出力信号は前段のランダム信号制御システムRCS1にフィードバックされている。この構成によれば、ランダム信号制御システムRCS1,2,3がそれぞれ、検出部として前方を指向する光センサを備えた移動体を想定した場合、ランダム信号制御システムRCS1への入力は、移動指標となる光源(図略)であり、ランダム信号制御システムRCS1,2,3の出力は移動体の後部に設けられた後照灯であって、後続の移動体を順次追従させるための指標光源として機能するものである。
すなわち、ランダム信号制御システムRCS1が指標光源を光センサで検出しつつ追尾し、その後照灯をランダム信号制御システムRCS2が光センサで検出しつつ追尾し、さらにその後照灯をランダム信号制御システムRCS3が光センサで検出しつつ追尾することとなる。この結果、複数台を、いわば数珠つなぎ的に移動制御することが可能となる。また、ランダム信号制御システムRCS1,2間にフィードバックループを備える結果、ランダム信号制御システムRCS1,2間で、順番の入れ替え処理なども可能となり、汎用性を高めることができる。
図10において、制御信号生成装置を複数個、ここでは3個の制御信号生成装置10a、10b、10cを並設し、かつそれぞれの検出器1a、1b、1cの出力を、各ランダム信号発生器2a、2b、2cに導くものである。ここに、制御信号生成装置10aは、検出器1a、ランダム信号発生器2a及び制御部3aで構成され、制御信号生成装置10bは、検出器1b、ランダム信号発生器2b及び制御部3bで構成され、制御信号生成装置10cは、検出器1c、ランダム信号発生器2c及び制御部3cで構成されている。このように構成することで、3個の検出器からの信号をそれぞれで共有することで、ランダム信号発生器毎に3個ずつ持たせる場合に比して検出器の個数を低減することができる。また、各制御信号生成装置10a,10b,10cは、各検出器1a,1b,1cからの信号を互いに入力し合うことで、制御対象に対して関連する乃至は連携した制御が可能となる。
図11は、制御信号生成装置の他の実施形態を示す構成図である。図11において、制御信号生成装置10Cは、複数の検出器4a〜4n(複合センサ群)を備えたものである。この構成によれば、制御対象であるシステムの状態について種々の状況を検出して、ランダム信号発生器2の各入力端子(図2(b)参照)に導いて、総合的に制御量を生成するようにしているので、きめ細かい制御が可能となる。また、ランダム信号を用いていることから、ランダム信号を変調するための信号として厳密な検出信号は必ずしも必要ではなく、複合センサ群への各入力信号を厳密に信号処理することなく、ランダム信号発生器2に導くことができるので、その分、設計が容易となり、かつ構成が簡易となる。なお、図2に示すゆらぎ発振器を用いた場合、検出信号の強度(レベル)、ノイズの強度、閾値、結合定数の各パラメータで発振周期を変化させることができ、例えばノイズ信号を制御のための信号として利用することも可能である。
以上によれば、本発明に係る制御信号生成装置は、制御対象内外での受け渡し信号が曖昧でもよく、また、回路を構成する部品に対しても精度を求めないため、安価な部品を利用でき、生産コストの廉価が図れる。また、生産過程で製品の性能ばらつきが生じても動作への影響はほとんどないため、生産ラインにおける歩留まりを高めることが可能となる。さらに、検出器を構成する部品のパラメータ(定数)にばらつきがあっても、略同一の動作が期待できる。このため、装置のパラメータを厳密に調整しなくても利用でき、装置が過大に複雑化し、制御パラメータが増大して、それらの調整が困難乃至はできなくなるといった設計上の不具合さを解消できる。また、CPUなどのソフトウエアを用いないので、回路設計が容易となり、特に制御対象に対する制御信号が多数になるような場合、CPU処理による場合に比して構造的にも簡素化が図れる。
次に、本発明に係る制御信号生成装置を移動体(台車)の移動制御(移動体駆動制御装置)に適用した例について、図12〜図16を用いて説明する。図12は、台車制御システムのブロック図であり、図13は、ランダム信号発生器の一例としてのゆらぎ発振器の構成を示す構成図であり、図14は、台車制御システムの構成図、図15は、図14の台車の概略構造図、図16は、台車の動作を説明する説明図である。
図14,図15において、制御対象システムとしての台車100は、左右のモータ101,102と、モータ101,102の駆動力が伝達される多段の減速ギアから構成される伝達部1031,1032及びそれらの出力軸に取り付けられた左右の車輪1033,1034からなる駆動系103とを備えている。なお、図では示していないが、台車100はその機能を果たすための構造、例えば部品運搬用であれば部品の搭載部等を備えている。
台車100の適所には、4個の光センサ141〜144が取り付けられている。光センサ142,144が正面に向けられ、光センサ141,143が斜め前方に向けられている。各光センサ141〜144は、例えばCdSセンサであり、本実施形態では、それぞれ一対で構成されている。一対で構成された光センサは、指標となる光源L(図16参照)からの光を同一条件で受光し得るように配置されている。
光センサ141は、光センサ141−1,141−2からなり、台車100の前方左方向(例えば左45°)に向けられ、かつ所要の指向範囲を有している。光センサ142は、光センサ142−1,142−2からなり、台車100の正面前方に向けられ、かつ所要の指向範囲を有している。光センサ144は、光センサ144−1,144−2からなり、台車100の正面前方に向けられ、かつ所要の指向範囲を有している。光センサ143は、光センサ143−1,143−2からなり、台車100の前方右方向(例えば右45°)に向けられ、かつ所要の指向範囲を有している。光センサ141,142は左側の車輪1033を回転させるモータ101の回転制御のためのものであり、光センサ143,144は右側の車輪1034を回転させるモータ102の回転制御のためのものである。
図12において、移動体駆動制御装置の主体を構成する制御信号生成装置10Dは、台車100に搭載されている。制御信号生成装置10Dは、ランダム信号発生器の一例としてのゆらぎ発振器12と、論理演算部、制御部及びモータ駆動信号を生成する部を一体で構成されたモータドライバ13とを備えている。なお、論理演算部、制御部及びモータ駆動信号生成部は別体であってもよい。ゆらぎ発振器12は、モータ101を制御するためのゆらぎ発振器121,122と、モータ102を制御するためのゆらぎ発振器123,124とを備えている。ゆらぎ発振器121〜124は同一構成を有している。モータドライバ13は、モータ101を制御するためのモータドライバ131と、モータ102を制御するためのモータドライバ132とを備えている。
光センサ141の出力側は、ゆらぎ発振器121の入力側に接続され、光センサ142の出力側は、ゆらぎ発振器122の入力側に接続され、センサ143の出力側は、ゆらぎ発振器123の入力側に接続され、センサ144の出力側は、ゆらぎ発振器124の入力側に接続されている。モータドライバ131は、「入力1」にゆらぎ発振器121が接続され、「入力2」にゆらぎ発振器122が接続され、「出力1」、「出力2」がモータ101の正、負の各極に接続されている。モータドライバ132は、「入力3」にゆらぎ発振器123が接続され、「入力4」にゆらぎ発振器124が接続され、「出力3」、「出力4」がモータ102の正、負の各極に接続されている。
図13において、ゆらぎ発振器121を代表として説明すると、ゆらぎ発振器121は、2個の確率共振素子121−1,121−2が、図2に示すように、互いにリング状に接続され、一方、それらの間に光センサ141−1,141−2が介設されている。すなわち、ゆらぎ発振器121−1の入力側に光センサ141−1が接続され、ゆらぎ発振器121−2の入力側に光センサ141−2が接続されている。この構成によれば、受光した光強度に応じて光センサ141−1の抵抗値を変化させることで、ゆらぎ発振器121−2、121−1間の結合定数を変化させるようにしている。同様に、受光した光強度に応じて光センサ141−2の抵抗値を変化させることで、ゆらぎ発振器121−1、121−2間の結合定数を変化させるようにしている。図2で説明したように、ゆらぎ発振器121は、リング内の全ての、すなわち確率共振素子121−1,121−2の結合定数が変化すると、発振周波数が変化するもので、結合定数が上昇するに応じて、発信周波数が高くなる。以上のようにして、図14に示すような台車制御システムが構築される。
(表2)は、モータドライバ131(モータドライバ132も同一)にハードウエア的に組み込まれた、論理演算符号表と動作モードの内容を示す表である。
(表2)によれば、各車輪1033,1034に対して、ブレーク(空回り状態)、前進、後退、及びストップ(ロック状態)を指示することが可能となる。
図16を用いて、台車100の動きを説明する。図16(a)は、台車100の正面前方に指標となる光源Lが置かれた状態(台車100の移動開始前)の図、図16(b)は、台車100が光源Lに向かって移動する途中状態を示す図、図16(c)は、光源Lの位置が変更された場合の図である。
図16(a)では、光源Lが台車100の真正面にあるとして、光センサ141,143はいずれも受光強度が低レベルであり、また光センサ142,144はいずれも受光強度がかなり高レベルである。すると、ゆらぎ発振器121,123の結合定数はほとんど変化せず、一方、ゆらぎ発振器122,124の結合定数は増大する。従って、ゆらぎ発振器121,123の出力はVLとなり、ゆらぎ発振器122,124の出力レベルはVHとなる。この結果、車輪1033,1034は、(表2)から、いずれも前進駆動制御される。
一方、光センサ142,144の受光強度は常に一定とは限らず、同様に、光センサ141,143も受光強度が常に低い状態にあるとは限らない。更に、ゆらぎ発振器121,123、及びゆらぎ発振器122,124の発振周波数も、ゆらぎを持っている結果、常に一致しているわけでもない。このため、台車100は、(表2)の各状況に応じて、蛇行しながら(ゆらぎながら)、全体としては、光源Lに向かうことになる。なお、蛇行の程度は、光センサの数、図5に示した不感帯付判別器5を採用する等して調整することが可能である。
次いで、図16(c)のように、光源Lが、図中、右方に移動されると、光センサ143の受光強度が最大となり、光センサ142,144は受光強度が低くなり、光センサ141では受光できない。従って、ゆらぎ発振器12からの信号は、ゆらぎ発振器121の出力はVLとなり、ゆらぎ発振器122の出力はVLとなり、ゆらぎ発振器123の出力はVHとなり、ゆらぎ発振器124の出力はVLとなる。そうすると、(表2)から、モータ101はストップ、モータ102は後退となる。すなわち、図16(b)の状態において、モータ101がストップし、モータ102が後退すると、台車100は、図16(c)に示すように右方に方向転換する。従って、台車100は移動される光源Lを追尾するようになる。なお、指標は光源Lである必要はなく、近接センサが採用可能な種々の物理要素が採用可能である。例えば磁石などでもよく、この場合センサは磁気センサを使用すればよい。
また、本発明は、以下の態様が採用可能である。
(1)台車移動システムにおいて、ランダム信号発生器として、図13に示すゆらぎ発振器を採用し、結合定数の変化で周波数を変化するようにしたが、検出信号をゆらぎ発振器に入力する態様でもよい。
(2)本発明は、制御対象として移動体の移動制御を主に説明したが、制御対象はこれに限定されず、種々のものが採用可能である。例えば、環境変化への対応処理として、空調器における温度設定を制御対象とすることが可能である。この場合、ランダム信号発生器2は、検出器4である温度センサから、外部環境に関する情報である温度検出信号が入力されると、検出温度に応じて周波数の変化した信号を出力し、制御部3はこの周波数の増減に応じて、温度変化を逆方向、すなわち設定温度に向けて制御する信号を出力するようにすればよい。なお、ここに、外部環境に関する情報(信号)としては、温度の他、気温、湿度、風向、風速、明るさ、昼か夜か、屋内か屋外か等が想定される。
(3)また、本実施形態では、検出器1,4,14を採用しているが、これに限定されず、予め情報を記憶しておき、この情報をランダム信号発生器2に出力することで所要の情報処理を実現することも可能である。情報を記憶する手段としては、一般の記憶媒体でもよいし、あるいは図2に示すような、ゆらぎ発振器であって、結合定数を大きくして共振動作を長期乃至は所要の時間だけ持続させることで、情報を記憶する態様でもよい。
以上のとおり、本発明は、時間平均が所定値に収束するランダム信号を生成するランダム信号生成部と、前記時間平均が所定値に収束するランダム信号に作用させるべく、外部環境及び制御対象の状況の少なくとも一方に関する信号を前記ランダム信号生成部に入力する作用信号生成部と、前記ランダム信号生成部から出力されるランダム信号を、前記制御対象の制御を行う制御信号に変換する制御部とを備えてなる制御信号生成装置である。
また、本発明は、時間平均が所定値に収束するランダム信号に、外部環境及び制御対象の状況の少なくとも一方に関する信号を作用させて前記所定値をシフトさせ、このシフトされたランダム信号を、前記制御対象を制御する制御信号に変換して前記制御対象に出力する制御信号生成方法である。
これらの発明によれば、ランダム信号生成部によって、時間平均が所定値、例えば値0に収束するランダム信号が生成される。そして、作用信号生成部によって、外部環境及び制御対象の状況の少なくとも一方に関する信号が得られ、この信号がランダム信号生成部に入力されることでランダム信号に作用する。この作用によって、前記所定値はシフトされ、このシフトされたランダム信号が前記制御対象を制御する制御信号に変換されて前記制御対象に出力される。そして、この制御信号によって制御対象が制御される。従って、ノイズや周期性のゆらぎを持つランダム信号を活用することでシステム等の制御対象を制御するための所要の制御信号が、簡便な構成かつ低消費エネルギーで、しかも耐ノイズ性の高い方法や装置で生成される。
また、前記ランダム信号生成部は、ランダム信号を用いて時間平均が所定値に収束するパルス状の信号を生成する発振器からなり、前記発振器は、入力される前記ランダム信号にノイズを加え、前記ノイズが加えられたランダム信号のレベルを所定の閾値と比較し、比較結果から得られるパルス信号を微分し、出力する確率共振素子を少なくとも2個以上リング結合してなるゆらぎ発振器であることが好ましい。この構成によれば、確率共振素子からの出力されるランダム信号が順次次段の確率共振素子に入力されることで、ランダム信号にノイズが加えられ、閾値との比較及び微分処理されて新たに生成されたランダム信号が、リング結合された内部を循環し、確率共振素子間の強調現象により発振する。そして、所定の確率共振素子からの出力を制御部に出力することで、制御信号が生成される。この態様では、所定値をシフトさせるべく制御対象の状況に関する信号は確率共振素子の入力端等に入力されるようにしてもよい。
また、前記作用信号生成部は複数設けられ、それぞれが、前記確率共振素子の入力部か閾値を変化させる部分に接続され、又はリング結合された確率共振素子間に介設されてなることが好ましい。この構成によれば、所定値をシフトさせる制御対象の状況に関する信号は、前記確率共振素子の入力部か閾値を変化させる部分に入力され、又はリング結合された確率共振素子間に入力される。例えば、作用信号生成部自身をリング結合された確率共振素子間に介設し、制御対象の状況に関する信号等によって確率共振素子間の結合定数を変化させるようにしてもよい。これによって、ランダム信号生成部からシフトした信号を出力することができる。
また、第1、第2の入力部に入力される信号に所定の論理演算処理を施して出力する論理演算部を備え、前記ランダム信号生成部は、第1、第2のランダム信号生成部からなり、前記作用信号生成部は、前記制御対象の状況に関する第1、第2の信号を、第1、第2のランダム信号生成部に対応させて導く第1、第2の作用信号生成部からなり、前記論理演算部は、第1、第2のランダム信号生成部からのパルス状の信号を入力され、出力信号を前記制御部に出力することが好ましい。この構成によれば、ランダム信号生成部から出力されるランダム信号の時間平均が本来の所定値に収束しないような回路である場合、第1、第2のランダム信号生成部から出力されるパルス状の信号に所定の倫理演算処理を施すことで、時間平均が所定値に収束するパルス状の信号を生成することが可能となる。
また、前記制御信号に対してレベル方向の不感帯を設定する不感帯設定部を備えることが好ましい。この構成によれば、制御部からの出力はふらつきながら時間平均が所定値になるように収束していくが、これは制御対象のふらつきの原因となり得る。そこで、不感帯を設定することで、制御対象に対するふらつきを極力抑制する。
また、複数の車輪に対応する駆動部を備えた移動体に搭載され、前記各駆動部に対応して請求項1〜5のいずれかに記載の制御信号生成装置を有する移動体駆動制御装置であって、前記作用信号生成部は、前記移動体に対する移動指示用の指標を検出する複数のセンサであり、前記複数のセンサは、対応する前記制御信号生成装置の前記各車輪に対応して少なくとも1個以上が対応付けられており、検出した信号を対応する前記制御信号生成装置の前記ランダム信号生成部に導き、前記制御部は前記制御信号を対応する駆動部に出力することが好ましい。この構成によれば、移動指示用の指標を検出するセンサからの検出信号が、対応する前記制御信号生成装置の前記ランダム信号生成部に導かれると、前記制御部によって前記制御信号が得られ、かつ対応する駆動部に出力されるので、移動体が指標を追尾することとなる。
また、前記センサが光センサであることが好ましい。この構成によれば、移動体は指標を遠隔的に追尾することが可能となる。
また、それぞれランダム信号を用いて第1、第2のゆらぎ発振器にて生成されたパルス状の信号を論理演算部を介して、時間平均が前記所定値に収束するパルス状の信号として生成することが好ましい。この構成によれば、ランダム信号を用いて生成されるパルス状の信号の時間平均が所定値に収束しない回路である場合、第1、第2のゆらぎ発振器から出力されるパルス状の信号に所定の論理処理を施すことで、時間平均が所定値に収束するパルス状の信号を生成することが可能となる。