JP6305281B2 - シリカ焼成体及びシリカ分散液 - Google Patents

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Description

本発明は、シランカッップリング剤で被覆されたシリカ焼成体及びこれを用いたシリカ分散液に関するものである。
シリカ粒子を有機溶剤に分散させたシリカ粒子分散液は、樹脂や樹脂原料等に対する分散性が良好であるため、樹脂の成形性や透明性等を損なうことなく強度や硬度、耐熱性、絶縁性等の特性を向上でき、コーティングやナノコンポジットの用途に有用である。このシリカ粒子分散液の分散性を高めるためには、シリカ粒子表面をシランカップリング剤で表面処理することが有効であることが知られている。例えば、ゾル−ゲル法によってシリカゾル(シリカ微粒子)を得て、焼成させることなくシランカップリング剤と酢酸(触媒)とを添加し、被覆する方法では、親水性であったシリカゾルを疎水性有機溶媒で安定に分散させることが可能となることが知られている(特許文献1)。
しかし、ゾル−ゲル法によって得られたシリカを焼成せずにシランカップリング剤処理した場合、表面の有機物を残す必要があるため焼成できない。そのためこのシランカップリング剤処理シリカ粒子は、シロキサン結合の架橋密度が十分に向上したものでなく、強度などの点で不十分になる場合があった。
特開2005−314197号公報
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、シリカ焼成体粒子を有機溶剤に高濃度に分散させる技術を提供する点にある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、シリカ焼成体の凝集を防止しつつ、その表面を特定のシランカップリング剤で高濃度被覆した有機被覆シリカとすれば、シリカ焼成体を有機溶媒に高濃度に分散できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、上記目的を達成し得た本発明の有機被覆シリカとは、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤で、かつX線光電子分光測定による炭素原子とケイ素原子のモル比(C/Si比)が0.1以上となる範囲でシリカ焼成体の表面が被覆され、累積90体積%粒子径と体積平均粒子径の比(累積90体積%粒子径/体積平均粒子径)が10以下であることを特徴とする。前記有機被覆シリカは、炭素原子を0.1質量%以上の割合で含むことが好ましい。また、本発明のシリカ分散液は、有機溶剤と、この有機溶剤に分散する前記有機被覆シリカとから構成される。さらに、本発明のシリカ分散液の製造方法は、有機被覆シリカと有機溶剤とをメディアミルで粉砕混合することを特徴とする。
本発明によれば、その表面が特定のシランカップリング剤で高濃度被覆された非凝集性のシリカ焼成体を用いているため、有機溶媒に高濃度に分散できる。
(1)シランカップリング剤被覆シリカ焼成体(有機被覆シリカ)
本発明は、シランカップリング剤で被覆されたシリカ焼成体に関する。以下、シランカップリング剤で被覆する前のシリカ焼成体を単にシリカ焼成体(焼成シリカ)と称し、シランカップリング剤で被覆した後のシリカ焼成体を有機被覆シリカという。シリカ焼成体は、シリカを650℃以上、好ましくは750℃、さらに好ましくは800℃以上の焼成温度で焼成したものを意味する。なお、焼成温度の上限は特に限定されないが、焼成時の融着が起こりにくい観点から、1300℃以下が好ましく、より好ましくは1200℃以下である。シリカを焼成することでシラノール基(Si−OH基)が減少し、シロキサン結合(Si−O−Si結合)が増加しているため、強度などの点で有利であるとともに、加熱時にも未反応のシラノール基等に起因した水等の発生を抑制できる。
そして、本発明者らは、有機溶剤中において、このシリカ焼成体(有機被覆シリカ)の分散性を改善する場合、シランカップリング剤の中でも特定のシランカップリング剤が有効であることを見出した。すなわち本発明で用いるシランカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(以下、単に「シランカップリング剤」という場合がある。)である。
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤としては、反応性ケイ素基がアルコキシシリル基であるものが好ましく、例えば、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン等の2官能性(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の3官能性(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。ここで、シランカップリング剤の官能数は、アルコキシシリル基のケイ素原子が有するアルコキシ基の個数を表すものとし、官能数は、3であることが好ましい。また、分散性をさらに高める観点から、メタクリロイル基含有シランカップリング剤が特に好ましい。
本発明では、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤の他に、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤としては、後述するアルコキシシランが挙げられる。この場合、シランカップリング剤の合計100質量%中、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(好ましくはメタクリロイル基含有シランカップリング剤)の割合は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
前記有機被覆シリカのシランカップリング剤による被覆率は、X線光電子分光測定による炭素原子とケイ素原子のモル比(C/Si比)で評価した場合、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.5以上である。前記C/Si比は、例えば5以下であることが好ましい。C/Si比を高くすることによって有機溶剤中での分散性を高めることができる。C/Si比は、X線光電子分光分析(XPS)によりCおよびSi原子の存在率(モル%)の測定を行い、シリカ粒子表面におけるC/Siの比に基づいて評価できる。
また、有機被覆シリカのシランカップリング剤による被覆率は、有機被覆シリカに含まれる炭素原子の質量割合でも評価でき、具体的に、有機被覆シリカは、炭素原子を好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上含む。有機被覆シリカ中、炭素原子は、例えば、10質量%以下であることが好ましい。炭素原子量は、燃焼法による元素分析により測定することができる。
また本発明の有機被覆シリカは、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤で高濃度被覆されているにもかかわらず、凝集しておらず、単分散性を有する。このような単分散性(非凝集性)も、有機溶媒に分散した時の高濃度分散性に貢献する。なお、有機被覆シリカの単分散性(凝集の程度)は、凝集体の大きさを指標として評価することができる。具体的には、累積90体積%粒子径を体積平均粒子径で規格化した累積90体積%粒子径と体積平均粒子径の比(累積90体積%粒子径/体積平均粒子径)によって評価可能である。本発明の有機被覆シリカにおいて、前記比(累積90体積%粒子径/体積平均粒子径)は、10以下であることが好ましく、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下である。前記比(累積90体積%粒子径/体積平均粒子径)は、通常、1以上である。また、累積90体積%粒子径は、例えば10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上である。
累積90体積%粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
有機被覆シリカは、通常、中実の粒子であり、その形状は、例えば、球状、回転楕円体状等のいずれでもよいが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。粒子径の長径に対する短径の比(短径/長径)は、0.90以上であることが好ましく、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.98以上である。前記比(短径/長径)が大きいほど、有機被覆シリカ表面の曲率が一定となり、シランカップリング剤が均一に被覆されたものとすることができる。なお前記比(短径/長径)の上限は1である。
また、有機被覆シリカ中、粗大粒子の含有量は、0.05質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。粗大粒子の含有量が少ないほど、樹脂や樹脂原料に対する分散性が良好である。また、粗大粒子の含有量の下限は、例えば0.0001質量%である。なお、粗大粒子の含有量は、有機被覆シリカを20μmの篩にかけたとき、篩上に残る有機被覆シリカの質量を測定に供した有機被覆シリカの全質量で割った値とする。
有機溶媒中での有機被覆シリカの高濃度分散化の観点からすると、前記有機被覆シリカの他の物性は特に限定されないが、例えば、体積平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上であり、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。なお、有機被覆シリカの体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
また、有機被覆シリカの体積平均粒子径の変動係数は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。有機被覆シリカの変動係数が小さいほど粒子径が均一となり、シランカップリング剤を均一に被覆することができる。体積平均粒子径の変動係数の下限は特に限定されないが、例えば0.1%である。
体積平均粒子径の変動係数は、体積平均粒子径と粒子径の標準偏差を用い、下記式に基づいて算出することができる。
変動係数(%)=(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)×100
シリカ焼成体は、前記のような有機被覆シリカの基材であり、シリカを焼成したものであるためシラノール基量が少ないものであり、具体的には、シリカ焼成体表面のシラノール基濃度は0.065mmol/m2以下であることが好ましく、より好ましくは0.060mmol/m2以下、さらに好ましくは0.055mmol/m2以下、特に好ましくは0.050mmol/m2以下である。また、シリカ焼成体表面のシラノール基濃度は、例えば0.010mmol/m2以上であることが好ましく、より好ましくは0.020mmol/m2以上、さらに好ましくは0.025mmol/m2以上である。
シリカ焼成体表面のシラノール基濃度は、例えば水素化リチウムアルミニウム法により測定することができる。水素化リチウムアルミニウム法とは、非晶質シリカ粒子を所定の条件(例えば、圧力6.6kPa以下、温度120℃、1時間以上)で十分に乾燥した後、溶媒(例えばジオキサンなど)中で水素化リチウムアルミニウムと反応させ、発生する水素量を測定することにより、シラノール基濃度を定量する方法である。このとき、シリカ焼成体の比表面積は、BET法により測定することができる。
また、シリカ焼成体は、29Si固体NMRスペクトルにおいて、縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積Aと、縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積Bの比率(B/A比)が1.0%未満であることが好ましい。前記(B/A比)は、0.9%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.1%以下、最も好ましくは0%である。
本発明のシリカ焼成体の29Si固体NMRスペクトルは、例えば、テトラメチルシランを内部標準物質とし、29Si固体NMR測定を行うことで得られる。そして、得られたピークをガウス関数を用いてピーク解析・ピーク分離することで、縮合性基が結合していないケイ素原子のピーク面積Aと、縮合性基が2個結合したケイ素原子のピーク面積Bとを求めることができる。
シリカ焼成体も、通常、中実の粒子であり、その形状は、例えば、球状、回転楕円体状等のいずれでもよいが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。粒子径の長径に対する短径の比(短径/長径)は、0.90以上であることが好ましく、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.98以上である。前記比(短径/長径)が大きいほど、シリカ焼成体の曲率が一定となり、シランカップリング剤を均一に被覆できる。なお前記比(短径/長径)の上限は1である。
また、シリカ焼成体中、粗大粒子の含有量は、0.05質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。なお粗大粒子の含有量は、シリカ焼成体を20μmの篩にかけたとき、篩上に残るシリカ焼成体の質量を測定に供したシリカ焼成体の全質量で割った値とする。単分散性に優れた有機被覆シリカを得る観点から、単分散性が高いものであることが好ましく、例えば5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.5%以下、特に好ましくは2.0%以下である。下限は、例えば0.1%であることが好ましい。
シリカ焼成体の体積平均粒子径は、体積平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上であり、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。また、シリカ焼成体の体積平均粒子径の変動係数は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。なお、シリカ焼成体の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
シリカ焼成体と有機被覆シリカの体積平均粒子径の比(有機被覆シリカ/シリカ焼成体)は、例えば、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下であり、よりいっそう好ましくは2.5以下であり、特に好ましくは2.0以下、最も好ましくは1.5以下である。また、前記比(有機被覆シリカ/シリカ焼成体)は1以上であることが好ましい。
さらに、シリカ焼成体の比表面積は、1〜100m2/gであることが好ましく、より好ましくは1〜70m2/g、さらに好ましくは20〜50m2/gである。
また、本発明に用いられるシリカ焼成体は、不純物としての金属(Fe等の遷移金属;Na等のアルカリ金属;Ca等のアルカリ土類金属;等)の含有量が低減されていることが好ましく、例えば、不純物金属の含有量は、シリカ焼成体中0.1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以下である。
シリカ焼成体は、例えば、アルコキシシランを加水分解・縮合することで未焼成シリカを得、この未焼成シリカを焼成することで製造できる。これにより、変動係数が小さく、かつ球形度の高いシリカ焼成体を得ることができる。
前記アルコキシシランは、ケイ素原子の置換基としてアルコキシ基を有する化合物であり、ケイ素原子の置換基として、アルコキシ基の他に、炭素数2〜6のアルキル基、又は、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を有していてもよい。また、前記アルキル基の水素原子は、ハロゲン原子、ビニル基、グリシジル基、メルカプト基、アミノ基等で置換されていてもよい。
ケイ素原子の置換基としてアルコキシ基のみを有する4官能性アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられる。また、ケイ素原子の置換基として、アルコキシ基と無置換のアルキル基を有するアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の2官能性アルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等の1官能性アルコキシシラン;等が挙げられる。さらに、ケイ素原子の置換基として、アルコキシ基と置換アルキル基を有するアルコキシシランとしては、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロアルキル基含有アルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有アルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の芳香族基含有アルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;等が挙げられる。
中でも、1〜4官能性アルコキシシランが好ましく、より好ましくは3〜4官能性アルコキシシランであり、さらに好ましくは4官能性アルコキシシランである。アルコキシシランの官能数(アルコキシ基の数)が多いほど、得られるシリカ焼成体中に不純物が混入しにくくなる。焼成シリカに用いられるアルコキシシランのうち、4官能性アルコキシシラン(好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン)が90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、上限は100質量%である。また、反応性の観点から、アルコキシ基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。すなわち、本発明の焼成シリカに特に好ましく用いられるアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランである。
アルコキシシランを加水分解・縮合する反応液中、アルコキシシランの濃度は、0.05mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mol/L以上であり、上限は特に限定されないが、例えば3mol/L以下であることが好ましい。反応液中、アルコキシシランの濃度がこの範囲にあると、反応速度の制御が容易となり、粒子径を均一にすることができる。
また、前記反応液中、水の濃度は、2mol/L〜25mol/Lであることが好ましい。ただし、アルコキシシランの加水分解・縮合により水の量は変化するので、仕込み時(加水分解・縮合の開始前)の量を基準とする。水とアルコキシシランのモル比(水/アルコキシシラン)は、9〜20が好ましく、12〜16がより好ましい。水とアルコキシシランのモル比がこの範囲にあると、焼成シリカの内部に残存するシラノール基が低減されやすくなる。
アルコキシシランを加水分解・縮合する際、触媒を共存させることが好ましい。アルコキシシランは、触媒が存在しない場合でも加水分解・縮合しうるが、触媒を用いることで、反応の制御が容易となり、粒子径やシラノール基の残存量を調整できる。触媒としては、反応速度を高める観点から、塩基性触媒が好ましく、塩基性触媒としては、アンモニア類、アミン類、第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。前記アンモニア類としては、アンモニア;尿素等のアンモニア発生剤;等が挙げられる。また、前記アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン等の芳香族アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;等が挙げられる。また、前記第4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
中でも、粒子径の制御が容易である観点から、アンモニア類、アミン類が好ましい。また、得られるシリカ(湿潤シリカ、乾燥シリカ、焼成シリカ)の純度を高める観点からは、シリカ中から除去が容易な触媒であることが好ましく、具体的には、アンモニア類、アミン類が好ましく、アンモニア、脂肪族アミンがより好ましい。また、触媒効果と除去容易性を兼ね備える観点からは、アンモニア類が好ましく、アンモニアが特に好ましい。
反応液中、触媒の濃度は、0.8mol/L〜9.4mol/Lであることが好ましい。また、触媒と水の合計に対する触媒の質量比(触媒/(触媒+水))は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上であり、0.4以下であることが好ましく、0.32以下であることがより好ましい。
さらに、アルコキシシランを加水分解・縮合する際には、希釈剤を共存させてもよい。希釈剤を含有することで、疎水性のアルコキシシランと水とが混合しやすくなり、反応液中でアルコキシシランの加水分解・縮合の進行度合いを均一にすることができるとともに、得られる未焼成シリカの分散性が向上する。希釈剤としては水溶性有機溶媒が好ましく、水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール類;等が挙げられ、アルコール類が好ましい。
反応液中、希釈剤は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
また、希釈剤は、アルコキシシランと水の合計100質量部に対して、120質量部以上であることが好ましく、より好ましくは180質量部以上、さらに好ましくは220質量部以上であり、500質量部以下であることが好ましく、より好ましくは320質量部以下、さらに好ましくは280質量部以下である。
希釈剤が多いほど、反応の進行度合いを均一にしやすくなり、また、希釈剤が少ないと、反応速度を高めることができる。ただし、アルコキシシランの加水分解・縮合により、アルコールの量が変化するので、前記希釈剤の量は、仕込み時(加水分解・縮合の開始前)の量を基準とする。
また、反応液には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等のパラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル、等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;等の疎水性有機溶媒が含まれていてもよい。これらの疎水性有機溶媒を用いる場合、分散性を向上させるため界面活性剤を添加してもよい。
上記各成分は、適当な順で混合してもよいが、例えば、少なくとも上記各成分の一部(例えば、水、触媒、希釈剤等)を予め混合した予備混合液を調製した後、アルコキシシランと混合してもよい。また、予備混合物にアルコキシシランを添加することが好ましく、添加方法としては一括添加、逐次添加(連続添加、断続的添加)のいずれでもよいが、逐次添加することが好ましい。アルコキシシランは、予め希釈剤と混合した後、予備混合物と混合してもよい。
アルコキシシランを加水分解・縮合する際、反応温度は、0〜100℃が好ましく、20〜70℃がより好ましく、20〜50℃がさらに好ましい。また、加水分解・縮合継続時間は、30分〜100時間であることが好ましく、1〜20時間がより好ましく、2〜10時間がさらに好ましい。
アルコキシシランの加水分解・縮合により未焼成シリカを含む反応液が得られるが、未焼成シリカは、合一して粗大粒子を形成している場合や、凝集して凝集粒子を形成している場合がある。このような場合には、乾燥・焼成に先立って反応液をフィルターで濾過することで、これらの粗大粒子や凝集粒子を除去できる。フィルターの孔径は、反応液中のシリカの体積平均粒子径よりも大きければよく、未焼成シリカの体積平均粒子径との差(孔径−未焼成シリカの体積平均粒子径)が1〜3μmの範囲にあるものが好ましい。前記フィルターは、適宜設定した空隙や空隙直径を有するメッシュであってもよい。
得られた未焼成シリカを焼成するのに先立って、未焼成シリカを乾燥させておくことが好ましい。以下、乾燥前の未焼成シリカを湿潤シリカとし、乾燥後の未焼成シリカを乾燥シリカとして乾燥工程を説明する場合がある。湿潤シリカは、乾燥時の凝集・固着を抑制する観点から、濾過、遠心分離、溶媒蒸発(濃縮)等により反応液から分離しておいてもよく、特に、溶媒蒸発(濃縮)により分離しておくことが好ましい。
乾燥方法としては、未焼成シリカの凝集・固着を抑制する観点から、気流乾燥方式、噴霧乾燥方式を好ましく採用できる。気流乾燥方式では、乾燥中の未焼成シリカが、気流により分散され、或いは、乾燥装置の内壁と衝突するため、凝集が抑制される。気流乾燥方式で反応液を乾燥する場合、直接加熱方式(加熱した気流を用いる方法)、間接加熱方式(乾燥装置の内壁を加熱)のいずれを選択してもよい。直接加熱方式を採用すると、熱風発生炉等から発生した高温気流が反応液と接触することで溶媒を蒸発させることができ、同時に、高温気流により、未焼成シリカの凝集を抑制することができる。また、間接加熱方式を採用すると、内壁を介して反応液が加熱されることで溶媒が蒸発し、同時に、外部から導入された気流または内部で循環している気流により、凝集が抑制される。
乾燥方式として、噴霧乾燥方式を採用した場合、反応液が噴霧されることで、乾燥中の未焼成シリカの凝集が抑制される。反応液中の溶媒蒸発に伴い、反応液が濃縮される事により未焼成シリカ同士が接触する頻度が上昇することによって凝集しやすくなるため、減圧下(大気圧未満)で噴霧乾燥することが好ましく、真空下(100Pa以下)で噴霧乾燥することがより好ましい。減圧下で噴霧乾燥することにより、溶媒を瞬時に蒸発させることが可能となり、反応液が濃縮されて凝集しやすい状態におかれる時間が短くなることから凝集が抑制される。
さらに、凝集を抑制する観点からは、乾燥装置の内壁を管状とすることが好ましく、この乾燥管を直線部と屈曲部とで構成することがより好ましい。特に、乾燥管は、1つの直線部と1つの屈曲部で構成されたものであることが好ましく、直線部側(入口側)から分散体を供給しつつ、屈曲部側(出口側)から真空排気できるものであることがより好ましい。これにより、未焼成シリカが凝集した場合であっても、出口側の屈曲部で乾燥管壁に衝突して解砕されるため、得られる乾燥シリカの凝集が抑制される。
未焼成シリカ(好ましくは、乾燥シリカ)を上記した焼成温度(650℃以上)で焼成することで、シリカ焼成体を得ることができる。焼成温度まで昇温する際の昇温速度は、シロキサン結合を増やす観点から、0.5〜10℃/分であることが好ましく、より好ましくは1〜5℃/分である。また、焼成時間(焼成温度に保持する時間)は、0.5〜20時間であることが好ましく、より好ましくは1〜12時間、さらに好ましくは2〜6時間である。また、焼成後の冷却速度は、例えば、0.5〜10℃/分であることが好ましく、より好ましくは1〜5℃/分である。
焼成時の雰囲気は、例えば、空気、窒素−酸素混合ガスなどの酸化性雰囲気;窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性雰囲気;等が挙げられ、酸化性雰囲気であることが好ましい。これにより、未焼成シリカ中に残存する未反応のシラノール基やアルコキシ基等を効率的に燃焼除去することができ、シロキサン結合の量を増加させることができる。
シリカ焼成体の凝集や融着、固着を抑制するため、焼成前(乾燥後)、或いは焼成後に解砕や分級を行ってもよい。解砕(粉砕)により凝集、融着、固着等している粒子を個々の粒子にほぐすことができ、分級により、解砕(粉砕)後にも残留する粗大粒子を除去することができる。
解砕と分級は、解砕機(粉砕機)と分級機のように別々の装置で行ってもよいし、解砕と分級を同時に行う解砕分級機(粉砕分級機)のようにこれらが合わさった単一の装置で行ってもよい。解砕処理は、ジェットミルやボールミルを用いて行うことが好ましい。これにより粒子径の小さいシリカ(未焼成シリカ、シリカ焼成体)も良好に解砕できる。また、分級処理としては、気流式分級処理が好ましい。解砕(粉砕)と分級を同時に行う装置としては、例えば、ジェット粉砕分級機(日本ニューマ製IDS−2型)を使用できる。分級処理は、解砕(粉砕)処理後にも残留する粗大粒子を除去するのに有効である。
(2)シランカップリング剤被覆シリカ焼成体の製造方法
上記シリカ焼成体に対して、その凝集を防ぎながらシランカップリング剤を高濃度で被覆して有機被覆シリカを得るためには、シランカップリング剤及び水の存在下、かつ、水の沸点未満でシリカ焼成体を加熱する第1加熱工程(前工程)と、引き続き水の沸点以上で加熱する第2加熱工程(本工程)とを実施すればよい。
シリカ焼成体の表面は、大部分がシロキサン結合でありシラノール基の割合が少ないため、これをシランカップリング剤で高濃度被覆するには、水を共存させることでシリカ焼成体上のシロキサン結合(Si−O−Si)を加水分解して、シラノール基(Si−OH)を発生しつつシランカップリング剤で処理するのが効率的である。ただし焼成シリカ上のシロキサン結合を加水分解すると、生じたシラノール基同士のカップリング(脱水縮合)も進行しやすくなり、このカップリング(脱水縮合)が異なるシリカ焼成体間で起こると、凝集が発生してしまう。具体的には、本発明者らは、前記第1加熱工程(前工程)を実施することなく、第2加熱工程(本工程)のみを実施するとシリカ焼成体同士の凝集が発生することを確認している。このような凝集体を用いると、たとえ上記特定のシランカップリング剤で表面を高濃度被覆しても、有機被覆シリカを有機溶媒に高濃度に分散させることはできない。本発明は、シランカップリング剤でシリカ焼成体表面を高濃度被覆しつつ、その凝集が抑制されている点にも特徴がある。
水の沸点以上(沸点とは標準沸点を意味する。以下、標準沸点を「沸点」と称する。水の場合、沸点は100℃である。)で加熱する第2加熱工程(本工程)に先立って、水の沸点未満で加熱する第1加熱工程(前工程)を実施しておくことでシリカ焼成体の凝集を防止できるようになる原理については、以下の通りではないかと推察している。すなわち、第2加熱工程(本工程)で水を共存させ加水分解によりシリカ焼成体表面にシラノール基を発生させると、シリカ焼成体上のシラノール基同士が互いに接触しやすいため、シランカップリング剤上のシラノール基とではなく、シリカ焼成体上のシラノール基同士で結合する確率が高くなり、これが凝集に結びついたのではないかと考えられる。そこで、まず、水を共存させ、水の沸点未満でのマイルドな条件で前もって加熱しておくと(第1加熱工程(前工程))、水と最も接触しやすい部分(シリカ焼成体の最外側)での加水分解を進行させつつ、ここに生じたシラノール基がシランカップリング剤で水素結合的に予備被覆されるものと考えられる。そして、このように最表面を予備被覆したシリカ焼成体を水の沸点以上で加熱すると(第2加熱工程(本工程))、予備被覆しているシランカップリング剤とシリカ焼成体との結合が促進されると同時に、シリカ焼成体上のシラノール基同士のカップリング(脱水縮合)が阻害され、結果として、シリカ焼成体の凝集を抑制しつつ、シランカップリング剤を高濃度被覆することが可能になるものと推察される。
第1加熱工程(前工程)でシリカ焼成体を被覆するために用いられる(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤の量は、シリカ焼成体の表面を覆うのに十分な量であることが好ましい。具体的には、シリカ焼成体の表面を覆うのに必要十分な量を基準量として、シランカップリング剤は、該基準量の0.7倍以上であることが好ましく、より好ましくは0.8倍、さらに好ましくは0.9倍であり、5倍以下であることが好ましく、より好ましくは3倍以下、さらに好ましくは2倍以下である。シランカップリング剤の量が多いほどシリカ焼成体の高濃度被覆が可能であり、シランカップリング剤の量が少ないとシリカ焼成体の凝集を抑制することができる。前記基準量は、下記式で求めることができる。
基準量(g)={シリカ焼成体の重量(g)×シリカ焼成体の比表面積(m2/g)}/シランカップリング剤の理論最小被覆面積(m2/g)
また、シランカップリング剤の理論最小被覆面積は、下記式で表される。
理論最小被覆面積(m2/g)={アボガドロ数NA(mol-1)×13×10-20(m2)}/シランカップリング剤の分子量(g/mol)
また、シランカップリング剤の量は、シリカ焼成体100質量部に対して0.05質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.08質量部以上、さらに好ましくは0.09質量部以上である。シランカップリング剤の量が多いほどシリカ焼成体の高濃度被覆が可能であり、シランカップリング剤の量が少ないとシリカ焼成体の凝集を抑制することができる。
第1加熱工程(前工程)での水の量は、シランカップリング剤1質量部に対して0.15質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.18質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上である。水の量が多いほど、シランカップリング剤のアルコキシシリル基やシリカ焼成体のシロキサン結合の加水分解が促進される。また、水の量は、シランカップリング剤1質量部に対して0.35質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.32質量部以下、さらに好ましくは0.27質量部以下である。水の量が少ないと、シリカ焼成体の凝集が抑制されやすくなる。
また、第1加熱工程(前工程)では、さらに希釈剤(アルコール類、ジオール類等)を用いてもよい。希釈剤を用いることで、シランカップリング剤をより均一に被覆することができ、シリカ焼成体の凝集も抑制することができる。前記アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール等が挙げられ、ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。中でもアルコール類が好ましく、シランカップリング剤のアルコキシ基に相当するアルコール(アルコキシ基に水素原子を結合させたアルコール)であることが特に好ましい。
希釈剤の量は、水とシランカップリング剤の合計100質量部に対して、70質量部以上であることが好ましく、より好ましくは80質量部以上、さらに好ましくは90質量部以上であり、200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下である。希釈剤が多いほど、シランカップリング剤を均一に被覆しやすくなり、また希釈剤が少ないほど、被覆速度が向上する。
上記各成分は、適当な順でシリカ焼成体と混合してもよいが、少なくともその一部(例えば、水、シランカップリング剤、希釈剤など)、好ましくは全部をあらかじめ混合した予備混合物を調製した後、シリカ焼成体と混合してもよい。混合に際しては、シリカ焼成体に予備混合物を加えてもよく、予備混合物にシリカ焼成体を加えてもよい。好ましくはシリカ焼成体に、予備混合物を加える。加え方は、添加(一括添加、逐次添加)、滴下、噴霧等が挙げられ、噴霧が好ましい。混合には、羽根式混合機を好ましく使用できる。
第1加熱工程及び第2加熱工程のいずれにおいても、混合を継続しながら加熱して反応を進行させるのが好ましい。また、第1加熱工程、第2加熱工程とも大気圧下で実施することができる。
第1加熱工程(前工程)において、加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。また加熱温度は、水の沸点(大気圧下で100℃)未満であり、95℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。この加熱温度は、希釈剤の沸点以上であってもよい。加熱温度を希釈剤の沸点以上とすることで、前処理と同時に希釈剤を除去でき、効率的である。希釈剤の沸点以上とする場合、加熱温度と希釈剤の沸点の差(加熱温度−希釈剤の沸点)が例えば、5℃以上であることが好ましく、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは12℃以上である。前記加熱温度と希釈剤の沸点の差(加熱温度−希釈剤の沸点)は、25℃以下であることが好ましく、20℃以下であることが好ましい。加熱温度は、一定でも変動していてもよく、変動する場合、昇温しても、降温してもよい。
第1加熱工程の加熱時間は、例えば、20分〜5時間であることが好ましく、40分〜3時間であることがより好ましい。希釈剤を用いている場合は、希釈剤の留出が終わった時点を第1加熱工程の終点としてもよい。なお、第1加熱工程において、加熱時間は、加熱温度が上記範囲にある時間を意味するものとする。
第2加熱工程(本工程)において、加熱温度は、水の沸点(大気圧下で100℃)以上であり、105℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。第2加熱工程(本工程)での加熱温度が高いほど、シランカップリング剤とシリカ焼成体の結合が強固に形成されやすくなる。また、第2加熱工程(本工程)での加熱温度は140℃以下であることが好ましく、より好ましくは130℃以下である。加熱温度は、一定でも変動していてもよい。さらに、第2加熱工程(本工程)の加熱時間は、例えば、2〜10時間であることが好ましく、4〜8時間である事が更に好ましい。なお、第2加熱工程において、加熱時間は、加熱温度が上記範囲にある時間を意味するものとする。
(3)分散液
前記のようにしてシランカップリング剤を被覆したシリカ焼成体(有機被覆シリカ)を有機溶剤に分散させることで本発明の分散液が得られる。
有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤;ハロゲン化炭化水素系溶剤;アルコール系溶剤;フェノール等のフェノール系溶剤;エーテル系溶剤;ケトン系溶剤;エステル系溶剤;等の中から選択でき、本発明の有機被覆シリカは、これらの有機溶剤への分散性が良好である。有機溶剤は、単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。
前記炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、メチルペンタン、ジメチルブタン、ヘプタン、メチルヘキサン、ジメチルペンタン、オクタン、トリメチルペンタン、イソオクタン、ノナン、トリメチルヘキサン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、ナフタレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、ビフェニル等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキシル、デカヒドロナフタレン等の飽和脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン等の塩素化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等の塩素化芳香族炭化水素系溶媒;フルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロベンゼン等のフッ素化炭化水素系溶媒;1−ブロモ−2−クロロエタン;トリクロロトリフルオロエタン;等が挙げられる。
前記アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、メチルブタノール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、α−テルピネオール、アビエチノール等のモノオール系溶媒;エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、メチルペンタンジオール、エチルペンタンジオール等のジオール系溶媒;グリセリン、ヘキサントリオール等のトリオール系溶媒;メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシメトキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、イソペンチルオキシエタノール、ヘキシルオキシエタノール、フェノキシエタノール、ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール等のエーテルアルコール系溶媒;クロロエタノール、クロロプロパンジオール、トリフルオロエタノール等のハロゲン化アルコール系溶媒;ヒドロキシプロピオニトリル;アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール系溶媒;等が挙げられる。
前記エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等の脂肪族炭化水素エーテル系溶剤;アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ベラトロール、o−ニトロアニソール等の芳香族炭化水素エーテル系溶剤;プロピレンオキシド、1、2−エポキシブタン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シネオール等の環状エーテル系溶剤;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1、2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、クラウンエーテル等のポリエーテル系溶剤;メチラール、アセタール等のアセタール系溶剤;フルフラール;ビス(2−クロロエチル)エーテル;エピクロロヒドリン;モルホリン、N−エチルモルリン、N−フェニルモルホリン等のモルホリン系溶剤;等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ヘキサフルオロアセトン水和物、ジクロロテトラフルオロアセトン水和物等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル等のギ酸エステル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、酢酸sec−ヘキシル、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の酢酸エステル系溶剤;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル等のプロピンオン酸エステル系溶剤;酪酸エステル;イソ酪酸エステル;イソ吉草酸エステル;ステアリン酸エステル;安息香酸エステル;ケイ皮酸エチル;アビエチン酸エステル;アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル);γ−ブチロラクトン:シュウ酸エステル;マロン酸ジエチル;マレイン酸エステル;酒石酸ジブチル;クエン酸トリブチル;セバシン酸エステル;フタル酸エステル;エチレングリコールモノアセテート;二酢酸エチレン;エチレングリコールエステル;ジエチレングリコールモノアセテート;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン系溶剤;モノブチリン;炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸エステル;ホウ酸エステル;リン酸エステル;乳酸エステル;サリチル酸メチル;等が挙げられる。
中でも、ケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトン等は、特に樹脂や樹脂原料と混合する際に好適である。
分散液中、有機被覆シリカの濃度は、例えば、20質量%以上であり、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。また、本発明の有機被覆シリカは、シランカップリング剤による被覆率が高いため(高濃度被覆されているため)、分散性が著しく高められており、例えば60質量%の高濃度分散液も調製可能である。
本発明の分散液の粘度は、例えば、30Pa・s以下であり、20Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは15Pa・s以下、さらに好ましくは12Pa・s以下である。分散液の粘度が低いほど、有機被覆シリカの分散性が良好であることを表す。分散液の粘度の下限は特に限定されないが、例えば0.1Pa・s、好ましくは1Pa・sである。特に本発明の分散液は、有機被覆シリカの濃度が高い場合でも、粘度の上昇が抑制されており分散性が良好である点は注目される。
なお粘度は、B型回転粘度計で測定することができ、例えば、東機産業社製「B形粘度計」(ローターNo.1、回転数10rpm、室温(25℃))の条件で測定できる。なお本発明の分散液は、チクソトロピー性が低く、粘度測定に際しヒステリシスの影響を排除する操作を行う必要はない。
分散液において、有機被覆シリカは、通常、集合体を形成しており、この集合体の長径を測定することでも分散性を評価できる。集合体の平均長径は、有機被覆シリカの粒子径の5倍以下であることが好ましく、より好ましくは4.5倍以下、さらに好ましくは4倍以下である。また、下限は特に限定されないが、例えば、有機被覆シリカの粒子径の2倍である。具体的に、集合体の平均長径は、0.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.45μm以下である。集合体の平均長径は、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。
また、本発明の分散液では、有機被覆シリカの集合体が粗大化せずに存在していることも特徴的であり、具体的には、集合体の単分散性を長径の最大値(最大長径)と、体積平均長径の比(最大長径/平均長径)で評価すると、前記比(最大長径/平均長径)が10以下であることが好ましく、より好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下であり、通常1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上である。
さらに、集合体の最大長径は、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、例えば0.2μm以上であることが好ましい。
集合体の長径は光散乱法により測定でき、例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−920」)を用いて測定することができる。また、集合体の平均長径は、体積基準のメジアン径を意味するものとする。
(4)分散液の製造方法
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤を被覆した有機被覆シリカと、前記有機溶剤とを適当な方法で混合することで本発明の分散液を調製できる。混合方法としては、例えば、撹拌混合、粉砕混合等が挙げられる。中でも、粉砕機を用いて粉砕混合するのが好ましい。この際用いられる粉砕機としては、例えば、ビーズミル、ジェットミル、ハンマーミル、遊星型ボールミル等のメディアミルが挙げられ、メディアミルが好ましく、ビーズミルがより好ましい。
特に好ましい粉砕混合方法は、有機被覆シリカを有機溶剤と共に予備混合してスラリーを調製した後、得られたスラリーを加圧し、吹き出し口からメディアに向けて噴出して衝突させる方法である。
前記予備混合の際、スラリー中の有機被覆シリカは、10〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜65質量%である。有機被覆シリカの割合がこの範囲であると、スラリーの加圧が容易である。
噴出する際、前記スラリーは、好ましくは100MPa以上、より好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは130MPa以上、特に好ましくは140MPa以上に加圧する。圧力の上限は、例えば300MPa、好ましくは280MPaである。
また、吹き出し口は通常円形であり、その直径は、0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下である。また、吹き出し口直径の下限は、例えば0.05mmであることが好ましい。吹き出し口の直径が小さいほど、スラリーを噴出する際の勢いを高めることができる。
さらに、スラリーを衝突させる対象となるメディアは、不純物混入を抑制する観点からセラミックスであることが好ましい。このセラミックスのビッカース硬度は、例えば、8GPa以上であることが好ましく、より好ましくは10GPa以上、さらに好ましくは12GPa以上である。セラミックスのビッカース硬度の上限は、例えば30GPaであることが好ましい。ビッカース硬度は、JIS R 1610:2003に準拠した方法で測定できる。また、メディアの形状は、球状であることが好ましい。その直径は、吹き出し口より十分大きければよく、例えば1cm以上が好ましく、より好ましくは2cm以上である。上限は、例えば10cmであることが好ましい。
以上のようにして得られた有機被覆シリカや分散液は、樹脂との親和性が良好であり、樹脂と混合すると、樹脂中でシリカ焼成体(有機被覆シリカ)が良好に分散したものとなる。このような用途としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等の各種フィルムのアンチブロッキング剤や滑り性付与剤;液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックスやプラスチック等の各種基板間の隙間保持剤等のスペーサー;半導体用封止材、液晶用シール材、LED発光素子用封止材等の各種電子部品用封止材;光拡散フィルム、光拡散板、導光板、防眩フィルム等の光拡散剤;白色体質顔料等の化粧品用添加剤;歯科材料等が挙げられ、シリカの公知の用途への適用が可能である。特に、樹脂との親和性が良好となるよう表面特性が改善された有機被覆シリカを用いることから、半導体用封止材、液晶用シール剤、LED発光素子用封止材等の各種電子部品用封止材用のフィラーとして有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
以下、本発明の実施例で用いた測定方法について説明する。
(シリカ焼成体、有機被覆シリカの粒子径)
シリカ焼成体または有機被覆シリカ1gとメタノール9gを混合した後、10分間超音波分散し、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−920」)を用いて粒子径分布を測定し、体積平均粒子径、累積90体積%粒子径を算出した。
また、体積平均粒子径と、粒子径の標準偏差から、下記式を用いて変動係数を計算した。
変動係数(%)=(粒子径の標準偏差/体積平均粒子径)×100
(X線光電子分光測定(XPS))
シリカ粒子について以下の条件でX線光電子分光分析(XPS)によりCおよびSi原子の存在率(モル%)の測定を行い、シリカ粒子表面におけるC/Siの比を算出した。
<測定条件>
機種名 :ULVAC−PHI社製「Quantera SXM」
試験片 :直径2mm×厚み0.4mm
光源 :Al Kα 、 ビーム径100μm 、ビーム出力 25W−15kV
計測 :範囲0-1100eV、積算回数14回
(元素分析)
燃焼法により、試料中の水素、炭素、窒素の含量を測定した。
(分散体の粘度)
有機溶媒分散体をB型粘度計(東機産業社製「B形粘度計」、ローターNo.1、回転数10pm)を用い、室温(25℃)で測定を行った。
(分散体中の集合体の長径)
分散された有機溶媒を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−920」フローセル仕様)にて粒子径分布を測定し、集合体の平均長径を算出した。
(製造例1:シリカ焼成体の製造)
撹拌機、滴下装置および温度計を備えた容量200Lの反応器に、メチルアルコール67.54kgと、28質量%アンモニア水(水および触媒)24.30kgとを仕込み、撹拌しながら液温を40±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、テトラメトキシシラン10.76kgをメチルアルコール4.61kgに溶解させた溶液を仕込んだ。反応器中の液温を40±0.5℃に保持しながら、滴下装置から前記溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間、液温を前記温度に保持しながら撹拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解および縮合を行い、湿潤シリカ粒子を含有する反応液を得た。
前記分散液を、瞬間真空蒸発装置により気流乾燥させることにより、乾燥シリカ粒子を得た。瞬間真空蒸発装置としては、クラックス・システム8B型(ホソカワミクロン株式会社製)を使用した。乾燥条件として、加熱管温度175℃、減圧度200torr(27kPa)を採用した。瞬間真空蒸発装置は、加熱水蒸気が供給されるジャケットで覆われた内径8mm、長さ9mのステンレス鋼管と、前記鋼管の一端部に湿潤シリカ粒子を含有する反応液を供給する供給部と、鋼管の他端部に接続された、粉体と蒸気とを分離するバグフィルタが設けられた減圧状態の粉体捕集室とを備えているものを使用した。鋼管内では、供給部から供給された湿潤シリカ粒子を含有する反応液を間接加熱し、溶媒を蒸発させるとともに、粉体捕集側を減圧して気流を発生させ、湿潤シリカ粒子を含有する分散液の分散と湿潤シリカ粒子の解砕を促進した。湿潤シリカ粒子を、気流により鋼管内を移送しながら乾燥し、バグフィルタにより捕集した。鋼管内の蒸気は、バグフィルタ通過後、凝縮して、装置外に排出した。
得られた乾燥シリカ粒子をルツボに入れ、昇温速度5〜10℃/分で焼成温度まで昇温し、電気炉を用いて1050℃で1時間焼成した。その後、冷却速度5〜10℃/分で冷却して、粉砕機を用いて粉砕することにより、焼成シリカ粒子を得た。なお、焼成温度は、電気炉内の雰囲気温度を計測した値である。
(実施例1−1:有機被覆シリカの製造)
製造例1で得られた焼成シリカ粒子3kgを、加熱ジャケットを備えた容量20Lのヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製「FM20J」)に仕込んだ。前記ヘンシェルミキサは、被混合物を入れる容器と、撹拌羽根が付いた回転軸が容器底部に備わっているとともに、壁面付着物の掻き落とし装置として、壁面に沿うように設置された板状の羽根が付いた回転軸が容器上面に設置されていた。焼成シリカ粒子を撹拌しているところに、メタクリロイル基含有シランカップリング剤としての3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBM−503、最小被覆面積315m2/g)288gを、イオン交換水86g及びメタノール429gに溶解させた溶液を滴下して混合した。その後、焼成シリカ粒子とシランカップリング剤の混合物を20℃/時間の昇温速度で昇温し、80℃とした。なお、80℃の温度数値は、焼成シリカとシランカップリング剤の混合物中の温度を計測した値である。加熱処理は、焼成シリカ粒子とケイ素化合物の混合物を混合撹拌しながら行った。
80〜100℃の温度範囲に1時間保持して第1加熱工程を行った。その後、メタノールの留出が完了したことを確認して、20℃/時間の昇温速度で120℃まで昇温し、120℃となった時点で第2加熱工程を開始した。120〜140℃の温度範囲で5時間保持して、第2加熱工程を行った。その後冷却し、ジェット粉砕分級機(日本ニューマチック工業製「IDS−2」)を用いて解砕および分級を行い、有機被覆シリカNo.1を得た。
得られた有機被覆シリカのX線光電子分光測定による炭素原子とケイ素原子のモル比(C/Si比)、元素分析による炭素原子の割合、体積平均粒子径、累積90体積%粒子径と体積平均粒子径の比(累積90体積%粒子径/体積平均粒子径)、変動係数、比表面積は表1に示す通りであった。
(実施例2−1:分散液の調製)
実施例1−1で得られた有機被覆シリカを30%の濃度となるようにメチルエチルケトンと混合・撹拌することで予備分散してスラリーを得た。次いでこのスラリーを粉砕混合機(スギノマシン社製「スターバースト」)を用いて粉砕混合し、33%の有機被覆シリカ濃度の分散液を調製した。この際、スラリーは150MPaの圧力で加圧し、直径0.1mmの吹き出し口から噴出させてセラミックスボールに衝突させて粉砕混合した。得られた分散液の粘度、分散液中の集合体の平均長径は表1に示す通りであった。
(実施例2−2〜2−3:分散液の調製)
実施例1−1で得られた有機被覆シリカの濃度を表1に示す通りとした以外は実施例2−1と同様にして、有機被覆シリカの分散液を調製した。
(比較例2−1〜2−3)
実施例1−1で得られた有機被覆シリカの代わりに、製造例1で得られた焼成シリカ粒子を用い、その濃度を表1に示す通りとした以外は実施例2−1と同様にして、焼成シリカの分散液を調製した。
Figure 0006305281
実施例2−1〜2−3の有機被覆シリカは、シリカ焼成体の表面に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで高濃度被覆されたものであるため、メチルエチルケトン中にも高濃度で分散することが可能であった。
本発明の有機被覆シリカやその分散液は、樹脂との親和性が良好であり、樹脂と混合すると、樹脂中での分散性が良好となる。その用途としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等の各種フィルムのアンチブロッキング剤や滑り性付与剤;液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックスやプラスチック等の各種基板間の隙間保持剤等のスペーサー;半導体用封止材、液晶用シール材、LED発光素子用封止材等の各種電子部品用封止材;光拡散フィルム、光拡散板、導光板、防眩フィルム等の光拡散剤;白色体質顔料等の化粧品用添加剤;歯科材料等が挙げられ、シリカの公知の用途への適用が可能である。特に、樹脂との親和性が良好となるよう表面特性が改善された有機被覆シリカを用いることから、半導体用封止材、液晶用シール剤、LED発光素子用封止材等の各種電子部品用封止材用のフィラーとして有用である。

Claims (5)

  1. (メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤で、かつX線光電子分光測定による炭素原子とケイ素原子のモル比(C/Si比)が0.1以上となる範囲でシリカ焼成体の表面が被覆され、累積90体積%粒子径と体積平均粒子径の比(累積90体積%粒子径/体積平均粒子径)が10以下である有機被覆シリカ。
  2. 炭素原子の割合が0.1質量%以上である請求項1に記載の有機被覆シリカ。
  3. 炭素原子の割合が0.8質量%以上であり、前記シリカ焼成体表面のシラノール基濃度が0.065mmol/m 2 以下である請求項1に記載の有機被覆シリカ。
  4. 有機溶剤と、この有機溶剤に分散する請求項1〜3のいずれかに記載の有機被覆シリカとから構成されるシリカ分散液。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の有機被覆シリカと有機溶剤とをメディアミルで粉砕混合するシリカ分散液の製造方法。
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