以下、本発明に係る実施の形態について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、以下の実施例では、画像形成装置について、電子写真プロセスを利用したレーザービームプリンタを例に説明する。以降の説明において、このレーザービームプリンタをプリンタ1と呼ぶ。
[画像形成装置]
図1は、本実施例の画像形成装置であるプリンタ1の断面図である。プリンタ1は、画像形成部10において感光ドラム11に形成したトナー画像をシートPに転写して、定着装置40でシートPに画像を定着させて、シートPに画像を形成する画像形成装置である。以下、図1を用いてその構成を詳細に説明する。
図1に示すように、プリンタ1は、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の各色のトナー画像を形成する画像形成部(画像形成ステーション)10を備えている。画像形成部10は図1の左側から順にY、M、C、Bkの各色に対応した4つの感光ドラム11(11Y、11M、11C、11Bk)を備えている。また、各感光ドラム11の周囲には同様の構成として以下が配置されている。帯電器12(12Y、12M、12C、12Bk)。露光装置13(13Y、13M、13C、13Bk)。現像装置14(14Y、14M、14C、14Bk)。一次転写ブレード17(17Y、17M、17C、17Bk)。クリーナ15(15Y、15M、15C、15Bk)。以後、Bk色のトナー画像を形成する構成について代表して説明し、他色に対応した構成については同一の記号を用いて記載してその説明を省略する。したがって、特に区別のない場合には上述した構成を次のように表記する。つまり、単に感光ドラム11、帯電器12、露光装置13、現像装置14、一次転写ブレード17、クリーナ15と称する。
電子写真感光体としての感光ドラム11は駆動源(不図示)によって矢印方向(図1中の反時計回り方向)に回転駆動する。感光ドラム11の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電器12、露光装置13、現像装置14、一次転写ブレード17、クリーナ15が配置されている。
感光ドラム11は、帯電器12によってその表面をあらかじめ帯電される。その後、感光ドラム11は、画像情報に応じてレーザ光を照射する露光装置13によって露光され、静電潜像を形成される。この静電潜像は、現像装置14によってBk色のトナー画像になる。このとき他の色についても同様の工程がおこなわれる。そして、各感光ドラム11上のトナー画像は、一次転写ブレード17によって、中間転写ベルト31に順次一次転写される。一次転写後、感光ドラム11に転写されず残ったトナーは、クリーナ15によって除去される。こうして、感光ドラム11の表面は清浄になり、次の画像形成が可能な状態となる。
一方、給送カセット20又はマルチ給送トレイ25に置かれたシートPは、給送機構(不図示)によって1枚ずつ送り出されてレジストローラ対23に送り込まれる。シートPとは、その表面に画像が形成される部材である。シートPの具体例として、普通紙、厚紙、樹脂製のシート状部材、オーバーヘッドプロジェクター用フィルムなどがある。レジストローラ対23は、シートPを一旦止めて、シートPが搬送方向に対して斜行している場合はその向きを真っ直ぐに直す。そして、レジストローラ対23は、中間転写ベルト31上のトナー画像と同期を取って、シートPを中間転写ベルト31と二次転写ローラ35との間に送り込む。二次転写ローラ35は、中間転写ベルト31上のカラーのトナー画像をシートPに転写する。その後、シートPは定着装置40に向かって送り込まれる。そして、定着装置40は、シートP上のトナー画像Tを加熱、加圧してシートPに定着する。
[定着装置]
次に、プリンタ1に用いられる画像加熱装置である定着装置40について説明する。図2は、本実施例における定着装置40の断面図である。図3は、本実施例における定着装置40の正面図である。図5は、本実施例における画像加熱装置の構成関係を説明する説明図である。
定着装置40は、通電によって発熱する抵抗発熱層102(以下、発熱層102と呼ぶ)を備えた定着ベルト100(以下、ベルト100と呼ぶ)を用いる画像加熱装置である。定着装置40では、ベルト100自体が発熱するため、シートP上の画像に効率よく熱を供給することができ、省エネルギー性に優れている。図2に示すように、ベルト100がニップ形成部材113と加圧ローラ110(以後、ローラ110と呼ぶ)に挟持されるとニップ部Nが形成される。そして、ベルト100は矢印方向(時計回り)に、ローラ110は矢印方向(反時計回り)に回転して、ニップ部Nに給送されたシートPを挟持して搬送する。このとき、給電部材81からの給電によりベルト100が発熱しているため、シートP上の未定着のトナー画像Tは加熱・加圧されてシートPに定着される。本実施例では、上述のようにして定着処理が行われる。以下、定着装置40の構成について図面を用いて詳細に説明する。
図2に示すように、ベルト100は、通電によるジュール熱で発熱し、シート上の画像をニップ部Nにて加熱する円筒状(エンドレス状)のベルト(フィルム)である。本実施例におけるベルト100の外径はφ約30mmであり、長手方向(幅方向、図2中の奥手前方向)の長さは約330mmである。ベルト100の層構成については詳細を後述する。
ニップ形成部材113は、ニップ部Nの幅が所望の幅となるように、ベルト100を内面側からローラ110に向けて押圧する。ニップ形成部材113は図2の奥手前方向を長手方向とする部材であり、パッドホルダ113a(以下ホルダ113aと呼ぶ)とニップパッド113b(以下パッド113bと呼ぶ)で構成される。パッド113bは、ニップ部Nの形状を決定する部材であり、幅(図2の矢印方向の長さ)5〜20mm、長手方向長さ(図2の奥手前方向長さ)約330mm、厚み0.5〜2mmの板状の部材が用いられる。ホルダ113aは、パッド113bをローラ110に向かって押圧した状態で保持する部材である。また、ホルダ113aは、ベルト100の回転軌道を確保するためのガイド機能も備えている。
ニップ形成部材113は省エネルギーの観点から周囲の部材への熱移動の少ない材料を用いることが望ましく、例えば、耐熱ガラスや、ポリカーボネート、液晶ポリマー等の耐熱樹脂が用いられる。また、ニップ形成部材113はベルト100からの電流が支持ステー112に流れ込まないような絶縁性を備えることが望ましい。本実施例では、住友化学(株)製のスミカスーパーE5204Lを用いた。
なお、ニップ形成部材113は、必ずしもホルダ113aとパッド113bによって構成されていなくてもよい。ニップ形成部材113は、ベルト100をローラ110とともに挟持してニップ部Nを形成可能であればローラ形状の部材であってもよい。
支持ステー112は、ホルダ113aを介してパッド113bを支持する。支持ステー112は高い圧力を掛けられても撓みにくい材質であることが望ましく、本実施例においてはSUS304(ステンレス鋼)を用いている。
図3に示すように、支持ステー112は、その長手方向の両端部において、左右のフランジ111a、111bに支持されている。フランジ111(111a、111b)は、ベルト100の長手方向の移動、および周方向の形状を規制している。本実施例のフランジ111は耐熱樹脂であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)により形成されている。なお、耐熱樹脂としては液晶ポリマー、フェノール樹脂等を用いてもよい。
フランジ111aと加圧アーム114aとの間には加圧バネ115aが縮められた状態で設けられている。フランジ111bと加圧アーム114bとの間には加圧バネ115bが縮められた状態で設けられている。このような構成により、フランジ111、支持ステー112を介して、加圧バネ115(115a、115b)の弾性力がニップ形成部材113に伝わる。そして、ベルト100がローラ110の上面に対して所定の押圧力で加圧され、所定幅のニップ部Nが形成される。本実施例に於ける加圧力は一端側が約156.8N、総加圧力が約313.6N(32kgf)である。
ローラ110は、ベルト100に当接することでベルト100と協働してニップ部Nを形成する。ローラ110には、金属製の芯金110a上に弾性層110bが、弾性層110b上に離型層110cが順に積層された多層構造となっている。芯金110aの材料の例としてはSUS(ステンレス鋼)、SUM(硫黄及び硫黄複合快削鋼鋼材)、Al(アルミニウム)等が挙げられる。弾性層110bの材料の例としては弾性ソリッドゴム層、弾性スポンジゴム層、あるいは弾性気泡ゴム層が挙げられる。離型層110cの材料の例としては次のようなフッ素樹脂材料が挙げられる。フッ素樹脂材とは、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)・PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル)・FEP(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル)である。
本実施例のローラ110は、鉄製の芯金110aと、芯金110a上の発泡シリコーンゴムの弾性層110bと、弾性層110b上のフッ素樹脂チューブの離型層110cとを備えた構成となっている。また、ローラ110の弾性層110b及び離型層110cを有する部分の寸法は、外径φ約25mm、長さ約300mmである。
[定着ベルトの給電]
次に、ベルト100の給電に関わる構成について詳細に説明する。図4はベルト100の層構成を示す部分断面図である。本実施例の定着装置40は、発熱層102に給電することでベルト100を発熱させる構成となっている。発熱層102への給電は、ベルト100端部の外周面側に設けられた電極105a、105bに給電部材81a、81bがそれぞれ当接して、電源回路79の交流電圧を印加することによって行われる。以下、図面を用いて詳細に説明する。
本実施例におけるベルト100は、図4に示すように、ベルト内面側からベルト外面側へ順に、発熱層102、弾性層106、離型層104を備えた3層複合構造である。また、ベルト100の長手方向(ベルト100の回転方向と水平方向において直交する方向)の両端部には、離型層104を設けておらず、電極105a、105bを設けている。以降、特別に区別のない場合は電極105a、105bをまとめて電極105と表記する。
弾性層106は、ベルト100をシートPの凹凸に追従させるための層である。弾性層106には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性及び耐熱性を有する材料を用いることができる。また、弾性層106の厚みは100〜300μm程度が好ましい。本実施例では厚さ約200μmのシリコーンゴムを用いた。
離型層104は、オフセットの防止やシートPの分離性を向上させるための層である。離型層104の材料は、離型性の良好な耐熱樹脂が好ましく、例えば、PTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂やシリコーン樹脂を用いることが出来る。本実施例では厚さ約30μmのPFAチューブを、シリコーン樹脂から成る接着剤により弾性層106上に接着して用いた。
発熱層102は、電極105から給電されてジュール熱を発生する層であり、ベースとなる樹脂材料に導電性フィラーを分散させることにより所望の電気抵抗率となるように調整されている。樹脂材料としてはポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の耐熱樹脂を用いることが望ましい。また、導電性フィラーとしては銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル等の金属や、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンマイクロコイル等のカーボン系材料を単独又は混合して用いることができる。本実施例の発熱層102は、厚さ約100μmのポリイミド樹脂に導電性フィラーを添加したものを用いた。本実施例の発熱層102は、総抵抗値が約10.0[Ω]となるように調整されている。
電極105(105a、105b)は、ベルト100の幅方向の両端部において、給電部材81と電気的に接続する層である。電極105は、発熱層102に電気的接続しているため、105aと105bの間に電圧を印加することによって発熱層102に給電ができる。ベルト100の幅方向一端側の一部領域には、離型層104及び弾性層106を設けておらず、電極105aを設けている。ベルト100の幅方向他端側の一部領域には、離型層104及び弾性層106を設けておらず、電極105bを設けている。なお、電極105は発熱層102の幅方向一端側の領域に電気的に接続されていればよく、図5に示すように、発熱層102の外周面上に設けられる構成のみには限られない。例えば、電極105は発熱層102の内周面側に設けられてもよい。また、電極105と発熱層102の電気的な接点の位置は、発熱層102の幅方向端部に限られず、発熱層102の幅方向端部から中央側に多少ずれた位置であってもよい。電極105はベルト100の全周にわたって設けられており、ベルト100の回転中においても電極105と給電部材81は電気的に接続している。
電極105には、ニッケル銅やロジウムなどの摩耗耐性と低抵抗を兼ね備えた材料が使用できる。このように発熱層102に比べて電極105の抵抗を十分に小さくすることで、電極105での発熱を抑えることができる。本実施例では、ベルト100の長手方向両端部からそれぞれ約15mmまでの領域に、ニッケル銅を使用した厚さ約30μmの電極105を設けている。
図5に示すように、給電部材81(81a、81b)は、電極105(105a、105b)と接触することで電気的な接続を行う部材である。図3に示すように、給電部材81aはベルト100の長手方向の一端側においてベルト100の外面側から電極105aと接触している。給電部材81bはベルト100の長手方向の他端側において、ベルト100の外面側から電極105bと接触している。
本実施例における給電部材81は、ステンレス製の板バネであり、ベルト100の外周面に向かって押圧された状態で配置されている。そして、回転するベルト100に摺動しながら接触する。なお、給電部材81の形状は板バネには限られない。例えば、摺動しながら接触するブラシであってもよく、また、ベルト100に従動回転するコロであってもよい。
給電手段としての電源回路79は、図5に示すように給電部材81及び電極105を介して発熱層102に電力を供給する回路である。電源回路79は、給電部材81及び電極105を介して発熱層102と電気的に接続されている。そして、電源回路79は、給電状態のときは、ベルト100の長手方向一方の端部側と他方の端部側で電位差が生じるように発熱層102に実効値約100[V]の交流電圧を印加する。このとき、発熱層102の総抵抗は10.0[Ω]であるため、供給電力は約1000[W]である。なお、電源回路79が発熱層102に印加する電圧は一定電圧(直流)でもよいが、発熱層102の発熱効率から、交流電圧を印加することが望ましい。なお、本実施例の説明における絶縁性とは、電源回路79による電圧の印加によって電流を生じない性質を指す。
サーミスタ118は、ベルト100の表面温度を非接触で検知する温度検知手段である。本実施例のサーミスタ118は、ベルト100の幅方向略中央の約10mmの領域の温度を検知するように配置されている。サーミスタ118は、A/Dコンバータ(不図示)を介して制御回路150に接続されており、検知した温度に応じた出力を制御回路150に送信する。
制御回路150は、各種制御に伴う演算を行うCPUと、各種プログラムを記憶したROM等の不揮発媒体を備えた回路である。このROMにはプログラムが記憶されており、CPUがこれを読みだして実行することで、各種制御を実行する。なお、制御回路150としては、同様の機能を果たせばASIC等の集積回路などでもよい。
図5に示すように、制御回路150は、電源回路79の通電内容を制御するように電源回路79と電気的に接続している。また、制御回路150は、サーミスタ118の出力を検知するようにサーミスタ118と電気的に接続している。
制御回路150はサーミスタ118からの出力を所定の周期(本実施例では約100[μs]毎)でサンプリングしており、得られた温度情報を電源回路79の通電制御に反映させている。つまり、制御回路150は、サーミスタ118の出力をもとに、電源回路79を介して発熱層102へ供給する電力を制御している。本実施例では、制御回路150が電源回路79の出力のデューティ比を制御することで、発熱層102の発熱量を調整する。このような制御をおこなうことで、ベルト100は所定温度(160〜190℃)で一定に維持される。
[定着装置の駆動]
次に、定着装置の駆動に関わる構成について詳細に説明する。
図3に示すように、ローラ110の芯金110aは、奥側と手前側の側板41に軸受けを介して回転可能に保持されている。また、芯金110aの軸線方向の一方側の端部にはギアGが設けられており、モータMの駆動力をローラ110の芯金110aに伝達する。図2に示すように、モータMからの駆動力が伝達されたローラ110は矢印方向(時計回り)に回転駆動する。そして、ニップ部Nにてベルト100に駆動力を伝達することで、ベルト100を矢印方向(反時計回り)に従動回転させる。
モータMは、ギアGを介してローラ110を駆動する駆動手段である。図5に示すように、制御回路150はモータMの通電を制御するためにモータMと電気的に接続されている。制御回路150によって通電が行われると、モータMはギアGの駆動を開始する。
制御回路150はモータMの回転制御を行っている。制御回路150は、モータMを介してローラ110とベルト100を所定の速度で回転させる。そして、定着処理の実行にともないニップ部Nにて狭持搬送されるシートPの速度が、所定のプロセススピード(本実施例では約200[mm/sec])となるように調整している。
[定着ベルト破れ検知]
次に、ベルト100の異常を検知する方法について説明する。図6は、発熱層102を流れる電流について説明する説明図である。図7は定着装置40の等価回路図である。本実施例のように、給電によって発熱するベルト100を用いる定着装置40には、次のような課題がある。発熱層102が正常な状態のときは、発熱層102の全体にほぼ均等に電流が流れるため、発熱層102全体が均等に発熱する。しかしながら、図6に示すように、発熱層102の一部に破れが生じると、破れ部分において電流が正常に流れることができず、電流は破れ部分を迂回する。この電流を迂回電流と呼ぶ。電流が破れ部分を迂回すると、破れの端部において電流が集中してしまい、局所的にジュール発熱量が大きくなる。これを部分昇温と呼ぶ。部分昇温の温度増加量は、発熱層102の破れの周方向成分が大きいほど大きい。部分昇温を生じた定着ベルト100では、例えば、グロスむらやホットオフセット等の定着不良を招く虞がある。
上述したように、発熱層102に破れが生じると電流が流れ難くなる。つまり、発熱層102は見かけ上の抵抗が増加した状態となる。したがって、発熱層102の抵抗値の変化を検知すれば、ベルト100の破れを検知することができる。そこで、本実施例では、発熱層102の複数の領域の抵抗値を比較することでベルトの破れを検知する。より詳細には、次のようにベルト100の異常を検知している。まず、図5に示すように、発熱層102の長手方向中央付近に中間電極119を当接させる。そして、発熱層102に並列に接続された回路の、抵抗によって中間電極119と等電位に調整された点と中間電極119を導線によって電気的に接続する。こうすることで、発熱層102とこれに並列に接続された回路は、図7に示すブリッジ回路のような構成となる。このような構成では、発熱層102に異常が無い場合は導線に電流は流れない。しかしながら、発熱層102に異常が生じ、発熱層102の長手方向一端側と他端側で抵抗のバランスが崩れた場合、導線に電流が流れるようになる。したがって、この導線を流れる電流を電位差検知回路140によって検知することで、ベルト100の破れを検知することができる。本実施例で説明する破れ検知の方法は、発熱層102に流れる電流の変化に応じて破れ検知を行う従来の検知の方法と比べて検知の感度が良い。これは、発熱層102に給電される電力に対する破れ検知の判定に使用可能な電力の割合が本実施例では従来例よりも大きいからである。
また、発熱層102の長手方向一端側と他端側で抵抗のバランスを見ており、発熱層102の全体の抵抗が変化するようなノイズを除去することができるため、本実施例は検知の精度がよい。 なお、本実施例中におけるベルト100の破れとは、ニップ部Nへの異物の混入やジャム処理時の外力、使用にともなう疲労によって発熱層102の一部が損傷することを意味している。ベルト100の破れは、ベルト100の長手方向においてその端部や中央部等、どの位置でも発生し得る。本実施例では、上述した構成によって発熱層102の長手方向のほぼ全域の破れ検知することが出来る。以下、ベルト100の破れ検知の方法について図面を用いて詳細に説明する。
まず、発熱層102の破れに伴う見かけ上の抵抗値の変化について検証する。そのため、破れがないときの発熱層102の電位状態と、周方向に約40mmの破れがあるときの発熱層102の電位状態とを比較する。検証には、未使用のベルト100と、幅方向一端側から約83mmの位置に周方向に約40mmの破れを生じたベルト100を用いた。図8は、ベルト100の破れに伴う電圧降下を示す図である。図8の約0mmの位置は発熱層102の幅方向一端に相当し電位は約100[V]である。図8の約330mmの位置は発熱層102の幅方向の他端に相当し電位は約0[V]である。
破れのないベルト100における発熱層102の電位状態を図8に実線で示す。破れのあるベルト100において、発熱層102の破れの中心と同位相の領域の電位状態を図8に破線で示す。破れのあるベルト100において、破線の領域と対向する発熱層102の領域(破線の領域から180度位相がずれた領域)の電位状態を図8に一点鎖線で示す。
図8によれば、ベルトの破れ位置に相当する幅方向約83mmの位置の近傍では、破線が大きく変動していることがわかる。つまり、ベルト100の破れによって発熱層102の電位が変動することがわかる。したがって、電位の変化を検出することで、ベルト100の破れを検出することが可能である。
また、ベルト100の破れ位置から離れたベルト100の中央の位置(約165mmの位置)を見てみると破線と実線の間で電位差を生じていることがわかる。したがって、ベルト100の幅方向の一点の電位の変化を監視していれば、破れが生じる位置から幅方向に離れていてもベルト100の破れを検知することができる。
また、一点鎖線も破線と同様に実線の間に電位差を生じている。これは、ベルト100の周方向の位相に関係なく電位差が発生する事を意味している。したがって、ベルト100の周方向の一点の電位の変化を監視すれば、ベルト100の周方向のどの位置が破れてもベルト100の破れを検知することができる。
上述した検証に基づき、本実施例では次のような方法によりベルト100の破れを検知する。本実施例のベルト破れ検知の原理について、まず、等価回路を用いて説明する。図7に示す回路は抵抗R13、抵抗R32、抵抗R01、抵抗R02からなるブリッジ回路である。抵抗R13と抵抗R01の間は接続点P1によって電気的に接続されている。抵抗R32と抵抗R02の間は接続点P2によって電気的に接続されている。抵抗R13と抵抗R32の間は接続点P3によって電気的に接続されている。抵抗R01と抵抗R02の間は接続点P4によって電気的に接続されている。接続点P1とP2の間には電源回路79によって電圧が印加されている。このようなブリッジ回路では、R13に対するR32の抵抗値比(R32:R13)がR01に対するR02の抵抗値比(R02:R01)に等しいとき、P3とP4が等電位となる。つまり、P3とP4の間の電位差P3−P4が0[V]となり、P3とP4の間には電流が流れない状態となる。一方で、R13とR32の抵抗値比がR01とR02の抵抗値比と異なるとき、P3とP4の間に電位差が生じる。つまり、電位差P3−P4が0[V]とは異なり、P3とP4の間には電流が流れる状態となる。したがって、この回路では、R13とR32の抵抗値比とR01とR02の抵抗値比をあらかじめ等しい状態にしておくことで、P3とP4の間に電流が流れたときに、4つの抵抗のいずれかが変動したことを検知することができる。
ここで、図7の接続点P1は定着装置40の電極105aに相当する。図7の接続点P2は定着装置40の電極105bに相当する。図7の接続点P3は定着装置40の中間電極119に相当する。したがって、図7においてP1とP3の間の位置する抵抗R13は、定着装置40の構成では、発熱層102の幅方向一端側から幅方向中央までの領域の抵抗に相当する。図7においてP3とP2の間の位置する抵抗R32は、定着装置40の構成では、発熱層102の幅方向他端側から幅方向中央までの領域の抵抗に相当する。本実施例では、中間電極119がベルト100の幅方向の略中央に配置されているので、R13、R32の抵抗値はそれぞれ約5[Ω]となる。
図5に示すように、ベルト100の幅方向中央には、発熱層102に内周面側から接触する中間電極119が設けられている。
中間電極119は、電極105a(P1)と電極105b(P2)の間において発熱層102の電位(P3)を取得するための部材である。中間電極119は、図2に示すように支持ステー112に支持されており、その先端が発熱層102の内周面に摺動可能に接触している。中間電極119の先端にはカーボンブラシや金属ブラシ等が使用でき、発熱層102に5〜20gf程度の軽圧力で接触することが望ましい。また、発熱層102から中間電極119の接点に迂回する電流を抑えることが好ましく、中間電極119を発熱層102と同抵抗率に調整するか、接触幅(ベルト幅方向に沿った長さ)をできるだけ短くするとよい。本実施例では、ベルト100の幅方向中央において、接触幅が約2mmのカーボンブラシを発熱層102に約5gfの加圧力で接触させた。なお、中間電極119の位置は、ベルト100の幅方向の中央には限られない。R13とR32の抵抗値比に相当する抵抗値となるように抵抗R01とR02を調整可能な範囲において、ベルト100の幅方向における中間電極119の位置を適宜設定可能である。しかしながら、ベルト破れの検知精度の観点から、R13とR32の抵抗値比が1:4から4:1の範囲に収まる位置に中間電極119を設けることが望ましく、R13とR32の抵抗値比が1:1となるように中間電極119を設けることがより望ましい。
図5に示すように、定着装置40には抵抗R01及びR02が配置されている。抵抗R01とR02は回路基板に形成された導電パターン(導線)によって電気的に直列に接続されており、R01とR02を直列抵抗とみたとき、これは発熱層102と電気的に並列に接続されている。
つまり、抵抗R01は、一端が電極105a(P1)と等電位になるように給電部材81aを介して電極105a(P1)と電気的に接続されており、他端が抵抗R02に電気的に接続されている。また、抵抗R02は。一端が電極105b(P2)と等電位となるように給電部材81bを介して電極105a(P2)に電気的に接続されており、他端が抵抗R01に電気的に接続されている。なお、抵抗R01とR02の接続する導線の一点は図7における接続点P4に相当する。
抵抗素子R01及び抵抗素子R02は、抵抗R13と抵抗R32の抵抗値比と等しくなるようにその抵抗値比が決定される。本実施例では、抵抗R13と抵抗R32が1:1であるので、抵抗R01と抵抗R02も1:1である。ここで、本実施例の説明における抵抗値比が等しいとは、抵抗値比が実質的に等しいという意味であり、必ずしも完全に一致していなくてもよい。しかしながら、ベルト破れの検知精度の点から、抵抗R01に対する抵抗R02の抵抗値比(R32:R13)を抵抗R13に対する抵抗R32の抵抗値比(R02:R01)に可能な限り近づけること望ましい。R32:R13に対するR02:R01の誤差は、好ましくは約1%以下であり、より好ましくは約0.1%以下である。
なお、R13とR32の実際の抵抗値比は発熱層102の体積抵抗のバラつきや、中間電極119の取り付け精度によって、理想とする抵抗値比とは若干異なる値となる。そのため、理想とする抵抗値比に合わせた抵抗R01とR02をそのまま用いてしまうと、P3−P4に電位差が生じてしまい、これらの間に電流が意図せず流れてしまう虞がある。そこで、実際のR13とR32の抵抗値比に抵抗R01とR02の抵抗値比を近づけられるように、抵抗R01とR02の少なくとも一方を可変抵抗にすることが望ましい。そして、発熱層102に破れの無い使用前のベルトに対して、電位差P3−P4が0[V]となるように可変抵抗の抵抗値を調整することが望ましい。使用前のベルト100とは、装置に組み付けられてからユーザーによる定着処理が行われていない状態のベルト100を指す。つまり、P3−P4間に電流が流れない状態、つまり、P3−P4間を流れる電流が0[A]となるように、可変抵抗を調節することが望ましい。抵抗のこのような調整は、定着装置40の組み立て時や、定着装置40の出荷前の検査時に行われる。また、プリンタ1のメンテナンスを行うサービスマンによって、定着装置40またはベルト100の交換時に行われる。
本実施例では、抵抗R01に可変抵抗を用いており、必要に応じて抵抗値を調整することが可能である。可変抵抗としては、半固定抵抗やデジタルポテンショメータなどを適宜利用できる。
また、抵抗R01とR02はベルト100の総抵抗値に対して十分に高い抵抗値を有している。そのため、ベルト100と並列に接続されたR01とR02の合成抵抗は十分に高く、R01とR02には電流がほとんど流れない。そのため、R01とR02の発熱量は無視できる程度となる。本実施例ではベルト100の総抵抗値が約10[Ω]であり、R01及びR02の抵抗値は約50[kΩ]である。
電位差検知回路140(以下、検知回路140と呼ぶ)は、電位差P3−P4を検知する検知手段である。詳細には、検知回路140は、抵抗R01とR02の接続する導線の一点(P4)と中間電極119(P3)を、抵抗R01や抵抗R02を介さずに検知回路140自らを介して電気的に接続している。そして、P3−P4間に電流が流れたか否かを検知している。検知回路140としては検流計や電圧計、各種電流検出アンプ等を用いることができる。検知回路140は信号を制御回路150に送信可能となるように制御回路150に電気的に接続しており、P3−P4間に電位差が生じた場合に制御回路150に信号を出力する。なお、検知回路140は、意図しない電気ノイズによる影響を除去するために、コンデンサー等を用いたローパスフィルター備えていてもよい。本実施例では、前述した可変抵抗の調整を検知回路140の出力を確認しておこなっている。具体的には、使用前のベルト100における発熱層102に給電回路79によって給電を施した状態で、検知回路140の出力を監視している。そして、検知回路140が、P3―P4間の電流値がゼロである状態の出力を行うように抵抗R01の抵抗値を調整している。なお、P3―P4間の電流値がゼロである状態とは、電流値が0[A]である状態に限られない。抵抗値比R32:R13に対するR02:R01の誤差を許容する範囲で生じる微小な電流値は同様にゼロであるみなしてもよい。また、可変抵抗の調整をする際は、検知回路140以外の方法でP3―P4間の電流値を監視してもよく、例えば別途、電流計を接続して用いてもよい。また、可変抵抗を調整する際は、給電回路79以外の給電方法で給電しても構わない。しかしながら、装置の実際の使用条件で可変抵抗を調整するほうが調整の精度を高めるためには有効であるため、検知回路140と給電回路79を用いて可変抵抗を調整することが望ましい。
次に、上述した破れ検知の構成を用いて電位差P3−P4とベルト100の破れる位置の関係について検証を行った。図9は、定着ベルトの破れ箇所に応じた電位差P3−P4を示す図である。検証は、中間電極119を発熱層102の幅方向の一端から約165mmの位置に設け、0mm〜165mmの各位置でベルト100が破れた場合に電位差P3−P4を計測することによって行う。なお、ベルト破れは先ほどの検証と同様に周方向に約40mmとした。
図8の検証で行った破れ位置と同様に、一端から約83mmの位置に破れを生じた場合、電位差P3−P4は約4.5[V]である。そのため、P3−P4間には約180[μA]の電流が流れ、ベルト100の破れを感度よく検知可能であることがわかる。なお、ここでは、周方向に約40mmの破れが生じた場合を例に挙げたが、周方向に約10mm程度の破れであっても電位差P3−P4は約0.5[V]となる。そして、P3−P4間には約20[μA]の電流が流れるため、ベルト100の破れを十分に検知可能である。また、図9において、一端から約165mmの近傍位置に破れを生じた場合、電位差P3−P4の値が小さくなる傾向にある。これは、ベルト100の破れによる見かけ上の抵抗の増加が、破れを中心に幅方向に対称に広がるためであると考えられる。そのため、R13とR32の抵抗が同量だけ増加して抵抗値比が変化せずにP3−P4に電位差が生じ難い。そのため、中間電極119のある位置ではベルト破れ検知の感度が低下する虞がある。
しかしながら、ベルト100の破れの発生位置の傾向を検証したところ、本実施例の構成で十分に実用的であることがわかった。なぜならば、ベルト破れのほとんどは、ベルト100の幅方向端部から発生するものと、シートPの幅サイズの端部に応じた位置で発生するに分類されるからである。これは、ベルト100の幅方向端部ではフランジ111による応力を受け、シートPの幅サイズの端部に応じた位置ではシートPがある部分とない部分の段差によって応力を受けるためであると考えられる。そのため、ベルト100の端部から離れており、また、シートPの端部に応じた位置とも離れた中央位置では、ベルト破れが発生し難いといえる。また、ベルト100が曲率を有しているため、ベルト100上に発生したベルト破れはベルト100の幅方向に拡大しやすい。そのため、仮に一端から165mmの位置にベルト破れが発生したとしても、ベルト破れはベルト100の幅方向に拡大するため、電位差P3−P4が大きな値を示し、検知回路140による検知が容易となる。したがって本実施例の構成によればベルト破れの検知をベルト100の幅方向の全域において実施することができる。
(定着装置の制御)
次に、ベルト100の破れが検知された際の定着装置40の動作の制御について説明する。図10は定着処理の制御手順を示すフロー図である。制御手段としての制御回路150は、検知回路140によってベルト100の破れが検知された場合に、発熱層102への給電を停止(禁止)する制御をおこなっている。ベルト100が破れた状態で発熱層102への給電を続けると、破れ位置の近傍においての部分的な昇温を招く。したがって、本実施例では上述した制御を行うことで、前述した部分的な昇温の発生を防止している。また、制御回路150は、検知回路140によってベルト100の破れが検知された場合に、モータMへの給電を停止する制御をおこなっている。ベルト100に破れを生じたまま画像の定着を行うと、上述した部分昇温によって、適切な定着が行われずに不良画像の発生を招く。したがって、本実施例では上述した制御を行うことで、定着処理を停止して不良画像の出力を防止している。なお、本実施例では、シートP上のトナーの画像Tを加熱・加圧することでシートPに画像Tを定着させる処理を定着処理と呼ぶ。また、定着処理は未定着のトナー画像TをシートPに定着する処理のみには限られない。例えば、半定着済みの画像をシートPに定着させる処理や、定着済みの画像に対して加熱処理を施す処理であってもよい。本実施例では、上述した定着処理を禁止するため、発熱層102への通電と、モータMへの通電を停止している。以下、図面を用いて詳細に説明する。
図5に示すように、制御回路150は、検知回路140の出力を検知できるように検知回路140に電気的に接続されている。また、制御回路150はモータM及び発熱層102の通電を制御するようにモータMおよび電源回路79に電気的に接続されている。
制御回路150は、検知回路140からの出力を所定の周期(本実施例では約100[μs]毎)でサンプリングしており、得られた出力に基づき発熱層102及びモータMへの通電を制御している。本実施例では、検知回路140がP3−P4間の電流の存在を検知した場合、言い換えると、電位差P3−P4が約0[V]でない場合、制御回路150はベルト破れありと判定して定着処理を禁止する。つまり、制御回路150は、ジョブの実行中であれば発熱層102及びモータMへの通電を中断する制御を行い、ジョブの実行中でなければその後のジョブを実行しない制御を行う。
なお、定着装置40の構成と仕様によっては、ベルト100の破れの有無によらずにP3−P4に電位差が生じる場合がある。このような電位差の発生は、例えば、中間電極119と発熱層102の摺動によるスパイクノイズが原因として挙げられる、また、定着処理の実行に伴うベルト100の温度分布の偏りが原因として挙げられる。
このようなノイズの影響を受ける場合、ベルト100の破れに基づき適切に定着処理を禁止できるように、制御回路150によるベルト破れの判定にノイズを考慮した閾値を設けることが望ましい。例えば、制御回路150は、閾値Xを0.5[V]に設定して、電位差P3−P4が0.5[V]以上となる電流が検知回路140を流れた場合に定着処理を禁止する。このように構成することで、ノイズを原因とする0.5[V]未満の電位差P3−P4によって検知回路140に電流が流れた場合に制御回路150が誤って定着処理を停止してしまう問題を解消することができる。
したがって、本発明においては、「P3とP4の間に電流が流れた」ということは、二通りの意味を持つ。一つ目は、P3とP4の間に全く電流が流れていない状態から電流が流れる状態に変化した、という意味である。二つ目は、P3とP4の間に微弱な電流が流れている状態から所定値以上の電流が流れる状態に変化した。という意味である。
また、本発明においては、「検知回路140が電流を検知したか否か」ということは、二通りの意味を持つ。一つ目は、P3とP4の間に電流が流れたか、それとも流れていないか、という意味である。二つ目は、P3とP4の間に微弱な電流が流れているか、それとも所定値以上の電流が流れているか、という意味である。ここで、微弱な電流とは例えば、電位差P3−P4が0.5[V]未満のときに流れる電流のことである。また、所定値以上の電流とは例えば、電位差P3−P4は0.5[V]以上のときに流れる電流である。そして、P3とP4の間に電流が流れたことを検知回路140が検知した場合、制御回路150は電源回路79を制御して発熱層102への給電を停止する。また、制御回路150はモータMを制御してその駆動を停止させる。
制御回路150が備えるROMには図10に記載のフローチャートに対応したプログラムが記憶されており、CPUがこれを読みだして実行することで、定着装置40の定着処理の制御を行う。定着装置40は、制御回路150が図10に記載のフローチャートに対応したプログラムを実行することで次のように動作する。
図10に示すように、制御回路150は、まず、ジョブの実行指示を受信する(STEP1、以下、S1のようにSTEPをSと省略)。次に、制御回路150は、定着装置40のウォームアップ動作を行う(S2)。ウォームアップ動作では、サーミスタ118の検知温度が所定の目標温度T1(本実施例では約160℃)に達するまで発熱層102に通電が行われるように制御回路150が制御を行う。サーミスタ118の検知温度が目標温度T1に到達すると、制御回路150はモータMに通電してこれを駆動させる。モータMの駆動によりローラ110が回転駆動され、ベルト100はローラ110に従動回転する。
上記したウォームアップ動作の開始に伴い、制御回路150は、検知回路140の出力のサンプリングを開始する(S3)。検知温度が目標温度T1に到達する前では、ベルト100は回転しない状態である。このとき、制御回路150は検知回路140の出力をサンプリングする。そして、制御回路150は、検知回路140の出力に基づき判定を行う(S4)。制御回路150は、検知回路140が電流を検知した場合(電位差P3−P4が0[V]ではない場合)、ベルト100に破れが生じていると判定してS7へ進む。つまり、定着装置40の立ち上げ時に、ベルト100のほぼ全域において破れを即座に検知することができる。これは、例えば、停止中の定着装置40にジャム処理を施したときに生じた発熱層102の破れを検知するのに有効である。
また、制御回路150は検知回路140によってベルト100の破れが検知されない場合(電位差P3−P4が0[V])、ベルト100が正常であると判定してS5へ進む。
制御回路150は、ベルト100に破れがあると判定した場合、定着装置40の定着処理を禁止するため、ジョブの実行中であれば発熱層102とモータMへの通電を中断する(S7)。そして、制御回路150は、プリンタ1の操作部(不図示)にエラーを表示する(S8)。エラーの表示は、プリンタ1本体の操作部によって行われるものに限られず、プリンタ1に接続された情報端末(不図示)のプリンタドライバの表示画面にて行われてもよい。
制御回路150は、一度のエラー表示をすると、定着装置40の交換が行われるか、サービスマンによる修理が行われるまで、ジョブの実行を禁止する制御を行う。
制御回路150は、ベルト100に破れが無いと判定した場合、サーミスタ118の検知温度がT2(本実施例では約165℃)になるように発熱層102に通電を行い、受信したジョブの実行指示の終了条件に達するまで定着処理を行う(S5、S6)。そして、ジョブを実行している間、制御回路150は検知回路140の出力のサンプリングを引き続き行う(S3)。このような制御を行うことで、ジョブの実行中に発生するベルト100の破れを検知することができる。受信したジョブの実行指示の終了条件に達すると、制御回路150は発熱層102とモータMへの通電を停止して、定着装置40を正常に停止させる(S9)。
上述したように、検知回路140は発熱層102に給電が行われているときに動作する。したがって、定着処理の実行時や、定着処理の実行前のウォーミングアップ時などのタイミングでベルト100の破れを検知して発熱層102への通電を停止できる。
上述したように本実施例では、ベルト100を用いてシート上の画像を加熱する定着装置40において、検知回路140を設けている。そして、検知回路140は、ベルト100の破れ状態を従来の方式に比べて感度良く検知することができる。そのため、本実施例によれば、ベルト100の破れの発生を速やかに検知できる。
本実施例によれば、ベルト100の破れが検知された際に、発熱層102への給電を停止することでベルト100の部分昇温を防止することができる。
本実施例によれば、ベルト100の破れが検知された際に、定着処理を禁止することで不良画像の出力を防止することができる。
次に、実施例3の画像加熱装置について説明する。図11は実施例3における画像加熱装置の構成関係を説明する説明図である。実施例1では、1つの検知回路140によってベルト破れの検知を行っているが、実施例3では、2つの検知回路140a、140bによってベルト破れの検知を行っている。詳細には、実施例3では、検知回路140aによる検知が困難なベルト100の中央付近のベルト破れを検知回路140bによって検知している。そのため、実施例1のベルト破れ検知は十分に実用的であったが、実施例2ではより確実にベルト100の破れを検知することができる。以下、図面を用いて詳細に説明する。なお、実施例2の定着装置40の構成は、検知回路140a、140bに関する構成以外は実施例1の基本構成と同様である。そのため、実施例1と同様の構成については同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。
中間電極119aは、電極105aと電極105bの間において発熱層102の電位(P3)を取得するための部材である。本実施例では、中間電極119aはベルト100の幅方向中央に設けられている。
中間電極119bは、電極105aと電極105bの間において発熱層102の電位(P5)を取得するための部材である。本実施例では、中間電極119bはベルト100の幅方向の一端からの距離と他端からの距離が3:1となる位置に設けられている。
抵抗R01及びR02の抵抗値は約50[kΩ]であり、抵抗R01に対する抵抗R02の抵抗値比はR32:R13に対応している。抵抗R03の抵抗値は約75[kΩ]、抵抗R03の抵抗値は約25[kΩ]であり、その抵抗R03に対する抵抗R04の抵抗値比はR52:R12に対応している。また、抵抗R01とR03は可変抵抗であり、必要に応じて抵抗値を調整することが可能である。
検知回路140aは、電位差P3−P4を検知する検知手段である。詳細には、検知回路140は、抵抗R01とR02の接続する導線の一点(P4)と中間電極119a(P3)を、抵抗R01や抵抗R02を介さずに検知回路140a自らを介して電気的に接続している。そして、P3−P4間に電流が流れたか否かを検知している。検知回路140としては検流計や電圧計、各種電流検出アンプ等を用いることができる。検知回路140aは信号を制御回路150に送信可能となるように制御回路150に電気的に接続しており、P3−P4間に電位差が生じた場合に制御回路150に信号を出力する。
検知回路140bは、電位差P5−P6を検知する検知手段である。詳細には、検知回路140は、抵抗R01とR02の接続する導線の一点(P6)と中間電極119b(P5)を、抵抗R01や抵抗R02を介さずに検知回路140b自らを介して電気的に接続している。そして、P5−P6間に電流が流れたか否かを検知している。検知回路140bとしては検流計や電圧計、各種電流検出アンプ等を用いることができる。検知回路140bは信号を制御回路150に送信可能となるように制御回路150に電気的に接続しており、P5−P6間に電位差が生じた場合に制御回路150に信号を出力する。
制御回路150は、検知回路140a、140bの出力をもとにベルト破れの判定を行う。このとき、検知回路140aによって検知が困難な、ベルト100の幅方向中央の破れは検知回路140bによって精度よく検知することができる。また、検知回路140bによって検知が困難な、ベルト100の幅方向の一端からの距離と他端からの距離が3:1となる位置の破れは、検知回路140aによって精度よく検知することができる。そして、検知回路140a、検知回路140bのそれぞれにおいて、実施例1で図10を用いて説明した制御を行う。したがって、検知回路140a、140bによってベルト100の破れを全域において検知することができる。
本実施例では、中間電極119と検知回路140を2つ併用する構成を例に説明したが、これらを3つ以上併用する構成であってもよい。
本実施例によれば、ベルト100を用いてシート上の画像を加熱する定着装置40において、検知回路140aと140bを設けている。検知回路140aと140bがそれぞれ電流を検知することで、ベルト100の破れの発生をその幅方向の全域において精度よく検知することができる。
本実施例によれば、ベルト100の破れが検知された際に、発熱層102への給電を停止することでベルト100の部分昇温を防止することができる。
本実施例によれば、ベルト100の破れが検知された際に、定着処理を禁止することで不良画像の出力を防止することができる。
(その他の実施例)
以上、本発明を適用することができる実施例について説明したが、各実施例で例示した寸法等の数値は一例であって、この数値に限定されるものではない。発明を適用できる範囲において、数値は適宜選択できる。また、発明を適用できる範囲において実施例に記載の構成を適宜変更してもよい。
ベルト100は、ニップ形成部材113のみによってその内面を支持される構成に限られない。例えば、複数のローラに架け渡されるベルトユニット方式であってもよい。その際、ベルト100はこれらの複数のローラによって回転駆動されてもよい。しかしながら、低熱容量化の観点から実施例のような構成が望ましい。
ニップ形成部材は、ホルダ113aとパッド113bとから構成されるものには限られない。例えば、ベルト100の内周に挿入されたローラ部材であってもよい。ニップ形成部材113にローラ部材を用いる場合、中間電極119の代わりに、ローラ部材の幅方向の一部の離型層と弾性層に導電性を持たせるとよい。そして、ローラ部材の芯金を介して実施例のP3に相当する電位を取得できるように工夫すればよい。
ベルト100とニップ部Nを形成するものは、ローラ110のようなローラ部材には限られない。例えば、複数のローラにベルトを架け渡した加圧ベルトユニットを用いてもよい。
プリンタ1を例に説明した画像形成装置は、フルカラーの画像を形成する画像形成装置に限られず、モノクロの画像を形成する画像形成装置でもよい。また画像形成装置は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、複写機、FAX、及び、これらの機能を複数備えた複合機等、種々の用途で実施できる。
以上の説明における画像加熱装置は、未定着のトナー画像をシートPに定着する装置のみには限られない。例えば、半定着済みのトナー画像をシートPに定着させる装置や、定着済みの画像に対して加熱処理を施す装置であってもよい。したがって、画像加熱装置としての定着装置40は、例えば、画像の光沢や表面性を調節する表面加熱装置であってもよい。