JP6304818B2 - 皮膚由来多能性前駆細胞の作製方法 - Google Patents
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Description
そのため再生医療の現場では、外科的治療や不慮の事故などで失われた細胞、組織、器官の再生のために、SKPsを効率よく大量に入手する方法の開発が求められている。さらに、QOLの向上に資する毛包の再生のためにも、SKPsを効率よく大量に入手する方法が望まれている。
さらに本発明は、前記方法に好適に用いることができる、分化誘導培地及び分化誘導促進剤の提供を課題とする。
また本発明は、ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化させるための分化誘導培地であって、分化誘導促進剤としてWntシグナルのアゴニストを含有する、分化誘導培地に関する。
さらに本発明は、Wntシグナルのアゴニストを有効成分とする、ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化させるための分化誘導促進剤に関する。
さらに、本発明の分化誘導培地及び分化誘導促進剤は、前記方法に好適に用いることができる。
以下、本発明の好ましい実施態様に基づいて本発明を詳細に説明する。しかし、本発明はこれに制限するものではない。
本発明で好ましく用いることができるヒト由来の多能性幹細胞の具体例としては、着床以前の初期胚を培養することによって樹立したヒトES細胞、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を培養することによって樹立したヒトES細胞、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、C-Myc遺伝子及びSox2遺伝子などの未分化状態の維持、誘導に必要な因子を皮膚細胞等の体細胞に導入して得られるヒトiPS細胞、特定の化合物で皮膚細胞等の体細胞を処理することにより得られるヒトiPS細胞等様々な方法で樹立されたヒトiPS細胞が挙げられる。
本発明では、Wntシグナルのアゴニストを含有する分化誘導培地を用いて多能性幹細胞を培養する。ここで本明細書において、「Wntシグナル」とは、β-カテニンの核移行を促し、転写因子としての機能を発揮する一連の作用をいう。ここでいうWntシグナルには、細胞間相互作用に起因し、例えば、ある細胞から分泌されたWnt3Aというタンパク質がさらに別の細胞に作用し、細胞内のβ-カテニンが核移行し、転写因子として作用する一連の流れも含まれる。この一連の流れは、上皮間葉相互作用を例とする器官構築の最初の現象を引き起こす。Wntシグナルはβ-カテニン経路、PCP経路、及びCa2+経路の3つの経路を活性化することにより、細胞の増殖や分化、器官形成や初期発生時の細胞運動など各種細胞機能を制御することが知られる。
分化誘導培地の基礎培地は幹細胞を培養するのに通常用いられる培地から適宜選択することができる。例えば、MEM培地(Minimum Essential Medium)、BME培地(Basal Medium Eagle)、IMDM培地(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、D-MEM培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、ハム培地、RPMI培地(Roswell Park Memorial Institute medium)、Fischer's培地、及びこれらの混合培地が挙げられる。このうち、D-MEM/Ham's F12培地(以下、単に「D-MEM/F12」ともいう)が好ましい。
さらには、必要に応じてフィーダー細胞、ビタミン、緩衝剤、無機塩類、抗生物質(例えば、ペニシリン、カナマイシン、ストレプトマイシン)等、幹細胞の培地に通常用いられる成分を分化誘導培地に含有させてもよい。
ここで「神経堤幹細胞」とは、自己複製能と多分化能を有する多能性の幹細胞であり、脊椎動物の発生過程では神経管の背側から体中に移動し、様々な組織の形成に寄与する細胞をいう。なお、多能性幹細胞から神経堤幹細胞への分化誘導、及び神経堤幹細胞への分化の確認は、常法に従って実施することができる。
前記多能性幹細胞及びSKPsの継代方法及び継代回数は、細胞の種類、培養方法などに応じて通常の継代方法から適宜選択することができる。例えば、接着培養系細胞については酵素等による細胞の剥離後、希釈培養により継代を行い、浮遊培養系細胞については希釈培養により継代を行う。
本発明は、接着培養及び浮遊培養のいずれの方法により実施することができるが、接着培養の条件下で行うのが好ましい。
前記遺伝子のうち、分化前のiPS細胞に発現し、他の細胞へ分化することにより発現が減少する遺伝子として、Oct-4遺伝子、Nanog遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子の発現量の減少を確認することで、iPS細胞がSKPsに分化したことを確認することができる。さらに、SKPsに発現することが報告されている因子として、Nestin遺伝子、Snail遺伝子、Slug遺伝子、Dermo-1遺伝子、Sox9遺伝子、BMP-4遺伝子、Wnt-5a遺伝子、Versican遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子の発現を確認することでも、iPS細胞がSKPsに分化したことを確認することができる。さらに、神経堤由来及び間葉系由来の毛乳頭細胞のいずれでも発現が報告されている因子として、CD133遺伝子が挙げられる。
また、多能性幹細胞をSKPsに分化させるための非治療的な分化誘導方法のために、Wntシグナルのアゴニストを使用することができる。本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
前記分化誘導培地及び分化誘導促進剤におけるWntシグナルのアゴニストの含有量は、多能性幹細胞の培養条件など、これらの使用形態に応じて適宜設定することができる。
また、目的の細胞への分化の確認も、常法に従い行うことができる。例えば、脂肪細胞に分化させた場合、Oil Red O染色法により細胞内脂質を染色し、染色の有無を確認することで脂肪細胞への分化を確認することができる。また、骨細胞に分化させた場合、アルカリフォスファターゼ染色法により染色し、染色の有無を確認することで骨細胞への分化を確認することができる。また、毛乳頭細胞に分化させた場合、トリコヒアリンなどのマーカータンパク質の発現の有無を免疫組織蛍光染色法により評価することで、上皮細胞との相互作用により上皮細胞における毛包様の角化を誘導できる能力、つまり、毛乳頭細胞としての機能を確認することができる。また、グリア細胞の1種であるシュワン細胞に分化させた場合、抗S100β抗体を用いて細胞を染色し、染色の有無を確認することでシュワン細胞への分化を確認することができる。
SKPsからさらに分化した細胞は、それぞれの細胞の種類に応じて常法に従って分離回収することができる。
<3>前記多能性幹細胞が多能性幹細胞由来神経堤幹細胞である、前記<1>又は<2>項に記載の作製方法。
<4>前記分化誘導培地で3〜5日間、好ましくは4日間、前記多能性幹細胞由来神経堤幹細胞を培養してSKPsに分化させる、前記<3>項に記載の作製方法。
<5>前記Wntシグナルのアゴニストが、CHIR99021、BIO、NSC693868、SB216763、SB415286、及びTWS119からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはCHIR99021、である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の作製方法。
<6>前記分化誘導培地中のCHIR99021の含有量が好ましくは0.5μM以上、より好ましくは2μM以上であり、好ましくは5μM以下、より好ましくは4μM以下であり、あるいは、好ましくは0.5〜5μM、より好ましくは2μM〜4μMであり、特に好ましくは3μM、である、前記<5>項に記載の作製方法。
<7>前記分化誘導培地の基礎培地がD-MEM/F12培地である、前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の作製方法。
<8>前記分化誘導培地がB-27サプリメント、並びにEGF及びbFGFからなる群より選ばれる少なくとも1種の栄養因子、好ましくはB27サプリメント、EGF及びbFGFをさらに含有する、前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の作製方法。
<9>SKPsへの分化を接着培養の条件下で行う、前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の作製方法。
<10>前記分化誘導培地を用いて分化させたSKPsに対して1回又は2回以上の継代培養を行う、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の作製方法。
<11>セルソーターを用いた方法、磁気ビーズを用いた方法等、常法により、SKPsに分化した細胞を分離回収する、前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の作製方法。
<12>目的の細胞を作製する方法であって、前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の作製方法により作製したSKPsを目的の細胞にさらに分化させる、目的の細胞を作製する方法。
<13>前記目的の細胞が、神経細胞、グリア細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、真皮線維芽細胞、及び毛乳頭細胞からなる群より選ばれるいずれかの細胞、好ましくは脂肪細胞、骨細胞、グリア細胞及び毛乳頭細胞からなる群より選ばれるいずれかの細胞、である、前記<12>項に記載の方法。
<15>前記Wntシグナルのアゴニストが、CHIR99021、BIO、NSC693868、SB216763、SB415286、及びTWS119からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはCHIR99021、である、前記<14>に記載の分化誘導培地。
<16>前記分化誘導培地の基礎培地がD-MEM/F12培地である、前記<14>又は<15>項に記載の分化誘導培地。
<17>B-27サプリメント、並びにEGF及びbFGFからなる群より選ばれる少なくとも1種の栄養因子、好ましくはB27サプリメント、EGF及びbFGFをさらに含有する、前記<14>〜<16>のいずれか1項に記載の分化誘導培地。
<18>抗生物質、好ましくはペニシリン、カナマイシン及びストレプトマイシン少なくとも1種の抗生物質、より好ましくはペニシリン及びストレプトマイシン、をさらに含有する、前記<14>〜<17>のいずれか1項に記載の分化誘導培地。
<20>ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化させるための分化誘導促進剤としての、Wntシグナルのアゴニストの使用。
<21>ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化させるための分化誘導促進剤の製造のための、Wntシグナルのアゴニストの使用。
<22>Wntシグナルのアゴニストを、ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化させるための分化誘導促進剤として使用する方法。
<23>ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化させるための分化誘導方法のために用いる、Wntシグナルのアゴニスト。
<24>ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化させるための非治療的な分化誘導方法のための、Wntシグナルのアゴニストの使用。
<25>Wntシグナルのアゴニストを使用する、ヒト由来の多能性幹細胞をSKPsに分化誘導する方法。
<26>前記Wntシグナルのアゴニストが、CHIR99021、BIO、NSC693868、SB216763、SB415286、及びTWS119からなる群より選ばれる少なくとも1種、好ましくはCHIR99021、である、前記<19>〜<25>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<27>前記多能性幹細胞がES細胞又はiPS細胞、好ましくはiPS細胞、である、前記<19>〜<26>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
(1)ヒトiPS細胞
多能性幹細胞として、ヒト由来のiPS細胞(商品名:クローン201B7、継代数:24、iPSアカデミアジャパン社より購入)を用いた。なお、前記iPS細胞は、レトロウイルスベクターを用い、4種の遺伝子(Oct3/4遺伝子、Sox2遺伝子、Klf4遺伝子、c-Myc遺伝子)をヒト皮膚線維芽細胞に導入して得られたiPS細胞である。
前記iPS細胞の培養に用いるフィーダー細胞として、下記方法により作製したSNL76/7細胞(マウス胚由来線維芽細胞株、CELL BIOLABS社製)を用いた。
7質量%ウシ胎児血清(HyClone社製、カタログ番号:SH30070.03E)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140-122、50U、50μg/mL)を含むD-MEM培地(Life technologies社製、カタログ番号:11965-092)でSNL76/7細胞を培養した。その後、コンフルエントの細胞をマイトマイシンC(商品名、協和発酵キリン社製、濃度:0.012mg/mL)で2時間処理し、0.25%トリプシン/エチレンジアミン四酢酸で回収した。0.1%ゼラチン(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:G1890)でコートした細胞培養皿上に1×106cells/100mm dishとなるように、回収した細胞を播種した。24時間後、細胞培養皿に接着した細胞をフィーダー細胞として使用した。
ヒトiPS細胞用培地(hES培地)として、血清代替物(Life technologies社製、カタログ番号:10828-028、20質量%)、L-グルタミン(Life technologies社製、カタログ番号:25030-081、2mM)、非必須アミノ酸(SIGMA社製、カタログ番号:M7145、0.1mM)、2-メルカプトエタノール(Life technologies社製、カタログ番号:21985-023、0.1mM)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140-122、50U、50μg/mL)、bFGF(Wako社製、カタログ番号:064-04541、4ng/mL)を含むD-MEM/F12培地(SIGMA社製:D6421)を調製した。この培地を用いて、37℃、5%CO2のインキュベーターでCell,131,p.861-872(2007)に記載の方法に従ってヒトiPS細胞を培養した。なお、培地交換は毎日実施した。
(1)ヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞の調製
Nature protocols,5,p.688-701(2010)やCell reports,3,p.1140-1152(2013)に記載の方法に基づいて、試験例1で継代培養したiPS細胞をnoggin(R&D systems社製、カタログ番号:6057-NG-100/CF、500ng/mL)及び/又はSB431542(TOCRIS社製、カタログ番号:1614、10μM)をhES培地(-)bFGFに添加して調製した培地で5日間〜2週間培養することにより、ヒトiPS細胞から神経堤幹細胞への分化を誘導した。
B-27サプリメント(Life technologies社製、カタログ番号:17504-044、2質量%)、EGF(R&D systems社製、カタログ番号:336-EG-200、20ng/mL)、bFGF(Wako社製、カタログ番号:064-04541、40ng/mL)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140-122、50U、50μg/mL)、及びCHIR99021(cayman社製、カタログ番号:13122)を0〜5μMの濃度で含むD-MEM/F12培地(Life technologies社製、カタログ番号:10565-018)で前記iPS細胞由来神経堤幹細胞を培養した。3〜5日間培養してヒトiPS細胞由来神経堤幹細胞からSKPsへの分化を誘導し、SKPsへ分化した細胞を培養細胞分離/分散溶液(商品名:Accutase、BD Biosciences社製、カタログ番号:561527)を用いて継代培養し、B27 supplement(2質量%)、EGF(20ng/mL)、bFGF(40ng/mL)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140-122、50U、50μg/mL)を含むD-MEM/F12培地でさらに培養した。
図1(A)に示すように、ヒトiPS細胞はコロニー状に増殖し、核の存在割合が高く細胞質が小さい。これに対し、図1(D)に示すように、継代培養後のSKPsはコロニー状ではなく、個別の細胞の状態で培養され、明瞭な細胞質の存在が認められる。従って、前記方法によりSKPsへ分化した細胞を継代培養することで、SKPsが増殖したことが確認された。
なお、継代培養前の段階では未だ、SKPsに誘導された細胞以外の細胞も含まれている。そこで、SKPsの継代培養を選択的に行ったところ、CHIR99021を0.5〜5μM濃度で添加した場合に、SKPsへ分化した細胞が選択的により多く増殖している様子が観察された。
従って、多能性幹細胞をWntシグナルのアゴニストを含有する分化誘導培地で培養することで、SKPsを効率よく大量に作製することができることが確認された。
前記試験例2で得られた分化誘導前のiPS細胞(以下、「iPS」ともいう)、iPS細胞由来神経堤幹細胞(以下、「iPS-NC」ともいう)、継代培養前のiPS細胞由来SKPs(以下、「iPS-SKPs-P0」ともいう)、及び継代培養後のiPS細胞由来SKPs(以下、「iPS-SKPs-P1」ともいう)について、下記表1に示す遺伝子の発現状況を下記表1に示す塩基配列のプライマーを用いてRT-PCR法に従って下記の方法により解析し、得られたSKPsの同定を行った。
その後反応液5μLについて1.5%アガロースゲル(タカラバイオ社製、カタログ番号:50071)/TBEバッファー(関東化学社製、カタログ番号:46510-78)を用いて100Vで電気泳動した。GAPDHは実験全体のコントロールとして用いた。
図3(A)に示すように、SKPsへの分化誘導に伴い、SKPsへ分化していない未分化な細胞に発現するマーカーの発現が減少した。さらに、図3(B)に示すように、SKPsへの分化誘導により、SKPsに特有の因子の発現が検出された。従って、前記方法により分化誘導した細胞がSKPsであることが確認された。さらに、iPS-SKPs-P0とiPS-SKPs-P1との間でSKPsに特有な因子の発現を比較したところ、Snail遺伝子、Slug遺伝子、Dermo-1遺伝子、Sox9遺伝子、及びCD133遺伝子について、iPS-SKPs-P0よりもiPS-SKPs-P1で発現が高い傾向が認められた(図3(B)参照)。ここで、図3(B)に示すように、内部標準であるGAPDH遺伝子の発現はiPS-SKPs-P0とiPS-SKPs-P1との間で一定であることから、SKPsへ分化した細胞について継代培養を行うことで、SKPsに特有な因子を発現する細胞の割合が増加し、より純度の高い細胞集団としてSKPsが得られることを示している。
前記試験例2で得られた継代培養後のSKPsについて、下記表2に示す抗体を用いて免疫組織蛍光染色を行い、ネスチン、αSMA及びフィブロネクチンの発現状況を解析し、得られたSKPsの同定を行った。
図4に示すように、ほぼ全ての細胞でSKPsに特有のマーカータンパク質の発現が認められた。これらの結果から前記試験例2で得られた細胞がSKPsであることが確認された。
前記試験例2で得られた継代培養後のSKPsについて、フローサイトメトリー解析を行った。その結果を図5に示す。
前記試験例2で得られた継代培養後のSKPsをD-PBS(-)で洗浄した後、培養細胞分離/分散溶液(商品名:Accutase、BD Biosciences社製、カタログ番号:561527)で回収した。回収した細胞を1×106cells/100μLのサンプルバッファー(商品名:BD Cytofix Buffer、BD Biosciences社製、カタログ番号:554655)で室温、20分固定した。細胞浸透洗浄溶液(商品名:BD Phosflow Perm/Wash buffer I、BD Biosciences社製、カタログ番号:557885)で洗浄後、同バッファーで室温、10分間細胞を処理した。その後、抗ネスチン抗体(BD Pharmingen社製、カタログ番号:561231)、抗フィブロネクチン抗体(BD Pharmingen社製、カタログ番号:563100)及びアイソタイプコントロール(BD Biosciences社製、カタログ番号:347202、カタログ番号:557782)を1:20の比率で添加し、室温で30分間反応させた。細胞浸透洗浄溶液で2回洗浄し、500μLのPBSで懸濁し、懸濁液のフローサイトメトリー解析をBD FACSVerse(BD Biosciences社製)を用いて行った。
図5(A)は個々の細胞のSSCとFSCから、iPS細胞由来SKPsの細胞集団を検出し、解析する細胞集団(生細胞群)を選択した図を示す。図5(B)は、図5(A)で選択した細胞集団について抗ネスチン抗体及び抗フィブロネクチン抗体での染色結果を示す。縦軸はネスチンの発現強度(蛍光染色した蛍光強度)を示し、横軸はフィブロネクチンの発現強度(蛍光染色した蛍光強度)を示す。
従って、前記方法により分化誘導した細胞のうち、ほぼ全ての細胞がネスチン及びフィブロネクチンを発現するSKPsであることが確認された。また、前記方法により得られた細胞の継代培養を行うことで、純度の高い細胞集団としてSKPsが得られることが確認された。
前記試験例2で得られた継代培養後のSKPsを3×105cells/35mm dishで播種した。24時間培養後、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:I7018、0.45nM)、インスリン(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:I3536、2.07μM)、デキサメタゾン(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:D4902、100nM)、ウサギ血清(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:R4505、15%)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140-122、100U、100μg/mL)を含むMEM培地(Life technologies社製、カタログ番号:42360-032)で2週間培養した。
その後、Oil Red O staining Kit(ScienCell research laboratories社製、カタログ番号:0843)を用い添付のプロトコールに従って、得られた細胞のOil Red O染色を行った。その結果を図6(A)に示す(倍率:200倍)。
前記試験例2で得られた継代培養後のSKPsを3×105cells/35mm dishで播種した。24時間培養後、デキサメタゾン(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:D4902、100nM)、β-glycerophosphate(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:G9422、10mM)、L-Ascorbic acid-2-phosphate(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:A8960、50μM)、ウシ血清(Hyclone社製、カタログ番号:SH30070.03、10質量%)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140-122、100U、100μg/mL)を含むMEM培地(Life technologies社製、カタログ番号:42360-032)で2週間培養した。
その後、Blue Alkaline Phosphatase substrate Kit(Vector laboratories社製、カタログ番号:SK5300)を用い添付のプロトコールに従って、得られた細胞のアルカリフォスファターゼ染色を行った。その結果を図6(B)に示す(倍率:200倍)。
市販のヒト正常表皮細胞(NHEK)(Life technologies社製)をEpiLife(商品名、Life technologies社製)で、市販のヒト正常毛乳頭細胞(Cell Applications社製)を毛乳頭増殖培地(TOYOBO社製)で37℃、5%CO2条件下で継代培養した。また、市販の正常ヒト成人皮膚線維芽細胞(KURABO社製)を5質量%ウシ胎児血清(HyClone社製、カタログ番号:SH30070.03E)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140-122、50U、50μg/mL)を含むD-MEM培地(Life technologies社製、カタログ番号:11965-092)で継代培養した。また、SKPsとしては前記試験例2で得られた継代培養後のiPS細胞由来SKPs(iPS-SKPs-P1)を用いた。
作製した凍結切片を4%パラホルムアルデヒドで15分間細胞を固定し、D-PBS(-)で洗浄後、10%ヤギ血清(ニチレイ社製、カタログ番号:426041)にて室温で1時間ブロッキングした。その後、抗トリコヒアリン抗体(Santa cruz社製 カタログ番号:sc-80607)を室温で2時間処理し、D-PBS(-)で洗浄後、2次抗体(Alexa Fluor 488 goat anti-mouse IgG(H+L)、Life technologies社製、カタログ番号:A11029)を室温で、1時間処理した。D-PBS(-)で洗浄後、4',6-ジアミジノ-2-フェニリンドール(DAPI、DOJINDO社製、カタログ番号:FK045)で核を染色後、包埋し、トリコヒアリンの染色性を蛍光顕微鏡下で観察した。
図7(A)及び(B)に示すように、表皮細胞のみ又は表皮細胞と線維芽細胞の混合培養ではトリコヒアリンの発現は誘導されない。これに対し、図7(C)及び(D)に示すように、表皮細胞と、毛乳頭細胞又はiPS細胞由来SKPsとの混合培養ではトリコヒアリンの発現が誘導されたことが確認された。
したがって、前記試験例2で得られた細胞は毛乳頭細胞と同様に毛包誘導能を有することが確認された。
前記試験例2で得られた継代培養後のSKPsをSKPs培養用培地(2% B27 supplement(Life technologies社製、カタログ番号:17504-044)、20ng/mL EGF(R&D systems社製、カタログ番号:336-EG-200)、40ng/mL bFGF(Wako社製、カタログ番号:064-04541)、50Uペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140−122)を含むDMEM/F12培地(Life technologies社製、カタログ番号:10565-018))を用いて、事前に25倍希釈Laminin(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:P4707)及び0.1mg/mL Poly-L-lysine(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:L4544)でコーティングした培養皿に4.8×104cells/35mm dishで播種した。24時間培養後、5μM Forskoline(Sigma Aldrich社製、カタログ番号:F3917)、50ng/mL Heregulin-1β(Peprotech社製、カタログ番号:100-03)、2% N2 supplement(Life technologies社製、カタログ番号:17502-048)、1%ウシ血清(Hyclone社製、カタログ番号:SH30070.03E)を含むDMEM:F12培地(Life technologies社製、カタログ番号:10565-018)で2〜3週間培養した。なお、培地交換は2〜3日に1回行った。
得られた細胞をD-PBS(-)で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。固定した細胞をD-PBS(-)で洗浄後、0.5% Triton X-100のPBS溶液で5分間処理し、再びD-PBS(-)で洗浄後、10%ヤギ血清(ニチレイ社製、カタログ番号:426041)にて室温で1時間ブロッキングした。その後、1次抗体(抗S100β抗体、Sigma Aldrich社製、カタログ番号:S2532、室温、2時間)、2次抗体(Alexa Fluor 488 goat anti-mouse IgG(H+L)、Life technologies社製、カタログ番号:A11029、室温、1時間)処理した。その後、DAPI(DOJINDO社製、カタログ番号:FK045)で核を染色後、包埋し、シュワン細胞に特有のマーカータンパク質(S100β)の発現を蛍光顕微鏡下で観察した。
図8に示すように、S100β陽性細胞が認められ、iPS細胞由来SKPsがシュワン細胞に分化したことが確認できた。従って、前記試験例2で得られた細胞がシュワン細胞などのグリア細胞に分化可能なSKPsであることが確認された。
前記試験例2で得られた継代培養後のSKPs 1×106cellsをセルバンカーI(LSIメディエンス社製、カタログ番号:248085)1mLに懸濁し、−80℃で凍結した。2〜3日経過後、緩慢法にて、凍結した細胞を液体窒素中に保存した。
保存した細胞を融解し、iPS細胞由来SKPs培養用培地(2% B27 supplement(Life technologies社製、カタログ番号:17504-044)、20ng/mL EGF(R&D systems社製、カタログ番号:336-EG-200)、40ng/mL bFGF(Wako社製、カタログ番号:064-04541)、50Uペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン(Life technologies社製、カタログ番号:15140−122)を含むDMEM/F12培地(Life technologies社製、カタログ番号:10565-018))で培養した。
図9に示すように、SKPsは凍結融解を行っても、細胞増殖し、培養が継続できることが確認された。したがって、本発明で得られるSKPsは凍結保存、継代培養が可能であることが示された。
試験例10で得られた、図9(A)に示す凍結保存前のSKPs及び図9(C)に示す凍結融解後のiPS細胞由来SKPsそれぞれに対して、試験例6と同様の方法で脂肪細胞への分化の誘導を行った。その結果を図10に示す。ここで、図10(A)は凍結保存前のSKPsをさらに脂肪細胞へ2週間分化誘導した細胞に対し、Oil Red O染色を行った脂肪細胞の顕微鏡写真を示し、図10(B)は凍結融解後のSKPsを培養し、さらに脂肪細胞へ2週間分化誘導した細胞に対し、Oil Red O染色を行った脂肪細胞の顕微鏡写真を示す。
図10に示すように、凍結保存前のSKPsと同様に凍結融解増殖培養後のSKPsも脂質が赤色に染色され、脂肪細胞に分化したことが確認できた。従って、前記試験例2で得られた細胞は継代、凍結保存をしても脂肪細胞への分化誘導能を保持していることが示された。
試験例10で得られた、図9(A)に示す凍結保存前のSKPs及び図9(C)に示す凍結融解後のiPS細胞由来SKPsそれぞれに対して、試験例7と同様の方法で骨細胞への分化の誘導を行った。その結果を図11に示す。ここで、図11(A)は凍結保存前のSKPsをさらに骨細胞へ2週間分化誘導した細胞に対し、アルカリフォスファターゼ染色を行った骨細胞の顕微鏡写真を示し、図11(B)は凍結融解後のSKPsを培養し、さらに骨細胞へ2週間分化誘導した細胞に対し、アルカリフォスファターゼ染色を行った骨細胞の顕微鏡写真を示す。
図11に示すように、凍結保存前のSKPsと同様に凍結融解増殖培養後のSKPsもアルカリフォスファターゼ陽性細胞が認められ、骨細胞に分化したことが確認できた。従って、前記試験例2で得られた細胞は継代、凍結保存をしても骨細胞への分化誘導能を保持していることが示された。
Claims (5)
- ヒト由来の多能性幹細胞に由来する神経堤幹細胞を、CHIR99021(商品名)、ビス-インドロ(インジルビン)化合物、NSC693868(商品名)、SB216763(商品名)、SB415286(商品名)、及びTWS119(商品名)からなる群より選ばれる少なくとも1種のWntシグナルのアゴニストを含有する分化誘導培地で培養して、前記多能性幹細胞を、ネスチン及びフィブロネクチンを共に発現する皮膚由来多能性前駆細胞に分化させる、皮膚由来多能性前駆細胞の作製方法であって、
前記分化誘導培地の基礎培地がD-MEM/Ham's F12培地であり、
前記分化誘導培地が、B-27(登録商標)サプリメント、並びにEGF及びbFGFからなる群より選ばれる少なくとも1種の栄養因子をさらに含有する、皮膚由来多能性前駆細胞の作製方法。 - 前記多能性幹細胞が人工多能性幹細胞である、請求項1に記載の作製方法。
- 前記分化誘導培地を用いて分化させた皮膚由来多能性前駆細胞に対して1回又は2回以上の継代培養を行う、請求項1又は2に記載の作製方法。
- ヒト由来の多能性幹細胞に由来する神経堤幹細胞を、ネスチン及びフィブロネクチンを共に発現する皮膚由来多能性前駆細胞に分化させるための分化誘導培地であって、
分化誘導促進剤として、CHIR99021(商品名)、ビス-インドロ(インジルビン)化合物、NSC693868(商品名)、SB216763(商品名)、SB415286(商品名)、及びTWS119(商品名)からなる群より選ばれる少なくとも1種のWntシグナルのアゴニストを含有し、
B27(登録商標)サプリメント、EGF及びbFGFを含有し、
基礎培地がD-MEM/Ham's F12培地である、分化誘導培地。 - CHIR99021(商品名)、ビス-インドロ(インジルビン)化合物、NSC693868(商品名)、SB216763(商品名)、SB415286(商品名)、及びTWS119(商品名)からなる群より選ばれる少なくとも1種のWntシグナルのアゴニストを有効成分とする、ヒト由来の多能性幹細胞に由来する神経堤幹細胞を、ネスチン及びフィブロネクチンを共に発現する皮膚由来多能性前駆細胞に分化させるための分化誘導促進剤。
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