JP6302756B2 - 細胞の回収方法及びその方法に用いられる加工骨 - Google Patents

細胞の回収方法及びその方法に用いられる加工骨 Download PDF

Info

Publication number
JP6302756B2
JP6302756B2 JP2014117701A JP2014117701A JP6302756B2 JP 6302756 B2 JP6302756 B2 JP 6302756B2 JP 2014117701 A JP2014117701 A JP 2014117701A JP 2014117701 A JP2014117701 A JP 2014117701A JP 6302756 B2 JP6302756 B2 JP 6302756B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bone
liquid
cells
coating
hole
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014117701A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015228848A5 (ja
JP2015228848A (ja
Inventor
健司 赤間
健司 赤間
信康 堀
信康 堀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sysmex Corp
Original Assignee
Sysmex Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sysmex Corp filed Critical Sysmex Corp
Priority to JP2014117701A priority Critical patent/JP6302756B2/ja
Priority to US14/722,472 priority patent/US9610066B2/en
Priority to CN201510303089.3A priority patent/CN105274052B/zh
Priority to EP15170760.1A priority patent/EP2952580B1/en
Publication of JP2015228848A publication Critical patent/JP2015228848A/ja
Publication of JP2015228848A5 publication Critical patent/JP2015228848A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6302756B2 publication Critical patent/JP6302756B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B10/00Other methods or instruments for diagnosis, e.g. instruments for taking a cell sample, for biopsy, for vaccination diagnosis; Sex determination; Ovulation-period determination; Throat striking implements
    • A61B10/02Instruments for taking cell samples or for biopsy
    • A61B10/0233Pointed or sharp biopsy instruments
    • A61B10/025Pointed or sharp biopsy instruments for taking bone, bone marrow or cartilage samples
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K35/00Medicinal preparations containing materials or reaction products thereof with undetermined constitution
    • A61K35/12Materials from mammals; Compositions comprising non-specified tissues or cells; Compositions comprising non-embryonic stem cells; Genetically modified cells
    • A61K35/28Bone marrow; Haematopoietic stem cells; Mesenchymal stem cells of any origin, e.g. adipose-derived stem cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/0652Cells of skeletal and connective tissues; Mesenchyme
    • C12N5/0662Stem cells
    • C12N5/0663Bone marrow mesenchymal stem cells (BM-MSC)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B10/00Other methods or instruments for diagnosis, e.g. instruments for taking a cell sample, for biopsy, for vaccination diagnosis; Sex determination; Ovulation-period determination; Throat striking implements
    • A61B10/02Instruments for taking cell samples or for biopsy
    • A61B10/0233Pointed or sharp biopsy instruments
    • A61B10/025Pointed or sharp biopsy instruments for taking bone, bone marrow or cartilage samples
    • A61B2010/0258Marrow samples

Description

本発明は、被覆剤で骨の外表面が被覆された加工骨を用いる細胞の回収方法及びその加工骨に関する。
骨は、一般に、その表面が骨膜で覆われている。骨膜の内側は骨質(緻密質及び海綿質)で構成されており、骨質の内側には髄腔と呼ばれる、骨髄で満たされた内腔がある。骨髄には様々な種類の細胞が存在し、これらの細胞は骨髄細胞と総称されている。
骨髄は造血器官として知られており、骨髄細胞には、成熟及び未成熟の血液細胞、並びに造血幹細胞が含まれる。それゆえ、免疫学的研究あるいは毒性試験などの目的で、実験動物の骨から骨髄を採取することが行われる。イヌ及びサルなどの大動物の場合は、麻酔下で骨髄穿刺針により骨から骨髄を直接採取することができる。一方、ラット及びマウスなどの小動物の場合は、大腿骨を摘出して骨の両端部(骨端)を切除し、注射針を付けたシリンジを用いて切断面から骨内にウシ胎仔血清(FBS)などの液体を注入することにより、骨髄を流し出して採取することができる(例えば、非特許文献1を参照されたい)。
Kakiuchi S.ら, J. Toxicol. Sci., vol.29, No.2, p.101-111, 2004
本発明者らは、骨の内部に液体を注入することにより骨内の細胞を回収する上記方法を、大動物から摘出した骨に応用した。すなわち、本発明者らは、ブタから摘出した大腿骨において長手方向に間隔をあけて2つの穴を開け、一方の穴から生理食塩水を導入して、細胞を含む液体をもう一方の穴から回収することを試みた。すると、驚くべきことに、細胞を含む液体は穴からはあまり回収されず、そのほとんどが骨の表面から漏れ出ていた。このように、本発明者らは、骨内への液体の導入による細胞の回収方法では、液体が骨の表面から漏れ出ることにより、骨内の細胞を高い収率で回収できないことを新たに見出した。
本発明者らは、鋭意研究の結果、骨の内部への液体の導入により骨内の細胞を回収する方法において、骨の外表面を被覆剤で覆うことにより、細胞を含む液体が骨の外表面から漏れ出ることを抑制できることを見出して、本発明を完成した。
よって、本発明は、骨の外表面に密着する被覆剤で骨の外表面が被覆され、且つその被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する第1及び第2の穴を有する加工骨を調製する工程と、上記の第1の穴から加工骨内に液体を導入する工程と、上記の第2の穴から細胞を含む液体を回収する工程とを含む、細胞の回収方法を提供する。
また、本発明は、上記の方法に用いられる加工骨であって、骨の外表面に密着する被覆剤で骨の外表面を被覆され、骨内に液体を導入するための第1の穴と、細胞を含む液体を回収するための第2の穴とを有し、これらの第1及び第2の穴が、被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する、加工骨を提供する。
本発明によれば、骨の内部への液体の導入により骨内の細胞を回収する方法において、細胞を含む液体が骨の表面から漏れ出ることを抑制し、細胞を効率よく回収することを可能にする。
本実施形態の細胞の回収方法に適する灌流システムの模式図である。 実施例1において、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で被覆した加工骨に生理食塩水を導入したときの写真である。 比較例1において、被覆していないブタ大腿骨に生理食塩水を導入したときの写真である。 実施例2において、PDMSで被覆した加工骨に生理食塩水を導入したときの写真である。 比較例2において、被覆していないブタ大腿骨に生理食塩水を導入したときの写真である。 実施例3において、エポキシパテで被覆した加工骨に生理食塩水を導入したときの写真である。
本実施形態の細胞の回収方法(以下、単に「方法」ともいう)は、上記の加工骨の第1の穴から液体を導入し、第2の穴から細胞を含む液体を回収する方法である。本実施形態の方法は、用手法で実施することもできるが、送液ポンプなどを用いる灌流システムにより実施することもできる。本実施形態の方法に適した灌流システムの一例を図1に示した。図1に示される灌流システムは、主に、被覆剤102で被覆された骨101(加工骨)、灌流液ボトル201、送液ポンプ202、回収ボトル301、それらをつなぐチューブ401〜407、並びに三方活栓501及び502から構成されている。図1において、矢印は、灌流液としての液体が流れる方向を示す。
図1に示される灌流システムでは、導入口Aからチューブ404を介して、任意の成分を液体に添加することができる。例えば、細胞を液体に添加して骨内に導入し、回収後の該細胞の変化を観察することなどができる。よって、本実施形態の方法で回収される細胞には、骨髄細胞だけでなく、外部から添加した細胞も含まれる。回収口Bからは、回収ボトル301に回収される細胞を含む液体をサンプリングすることができる。以下、本実施形態の方法の各工程について説明する。
本実施形態の方法では、まず、骨の外表面に密着する被覆剤で骨の外表面が被覆され、且つ被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する第1及び第2の穴を有する加工骨を調製する工程が行われる。
加工骨に調製される骨は、魚類、両生類、は虫類、鳥類及び哺乳類のいずれの動物の骨であってもよいが、それらの中でも、ヒトを除く哺乳類の骨が特に好ましい。そのような哺乳類の動物としては、動物実験に使用される動物又は家畜が好ましく、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスなどが挙げられる。
骨の種類は特に限定されず、硬骨であれば、長骨、短骨、扁平骨及び不規則骨のいずれの種類の骨を用いてもよい。長骨としては、例えば、上腕骨、橈骨、尺骨、中手骨、大腿骨、脛骨、腓骨、中足骨などが挙げられる。短骨としては、例えば、手根骨、足根骨などが挙げられる。扁平骨としては、例えば、頭頂骨、胸骨、肋骨、腸骨などが挙げられる。不規則骨としては、例えば、椎骨、肩甲骨などが挙げられる。
本実施形態の方法では、加工骨に調製される骨は、動物から摘出した直後の骨を用いることが好ましい。骨の摘出直後に本実施形態の方法を実施しない場合は、摘出した骨を冷蔵してもよい。冷蔵温度は、一般的な温度、例えば4℃でよい。摘出からすぐに冷蔵保存した場合、摘出後1日以内に用いることが好ましい。動物から骨を摘出する方法自体は、当該技術において公知である。
加工骨の調製工程は、骨を被覆剤で被覆する工程と、骨に第1及び第2の穴を開ける工程とを含む。本実施形態において、骨を被覆する工程と、骨に第1及び第2の穴を開ける工程とを行う順序は、特に限定されない。例えば、骨を被覆剤で被覆してから、該被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する穴を骨に開けてもよい。あるいは、内部に達する穴を骨に開けてから、その穴をふさぐことなく被覆剤で該骨を被覆してもよい。先に穴を骨に開けた場合は、その骨を被覆剤で被覆する前に、例えば、穴と同じ直径を有する管又は棒、好ましくは注射針を各穴に挿入しておくことにより、被覆剤でふさがれないよう穴を確保することができる。
加工骨の第1及び第2の穴は、被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する穴である。本実施形態では、骨における穴の位置は特に限定されない。例えば、長骨の骨幹など骨膜に覆われた部分に穴を開ける場合、第1及び第2の穴は、被覆剤及び骨の外表面としての骨膜を貫通して骨の内部に達する穴となる。一方で、骨の関節面には骨膜はなく、関節面は関節軟骨に覆われている。よって、骨の関節面に穴を開ける場合、第1及び第2の穴は、被覆剤及び骨の外表面としての関節軟骨を貫通して骨の内部に達する穴となる。なお、骨に穴を開ける手段は特に限定されず、針又はドリルなどの道具を用いればよい。
本実施形態において、第1の穴の深さは、この穴から導入される後述の液体が骨髄と接触することが可能となる深さであることが好ましい。また、第2の穴の深さは、この穴から、後述の細胞を含む液体の回収が可能となる深さであることが好ましい。そのような第1及び第2の穴の深さとしては、例えば、骨質に達する深さであり、好ましくは海綿質に達する深さであり、より好ましくは髄腔に達する深さである。
第1及び第2の穴の大きさは、液体の導入及び細胞を含む液体の回収が可能な大きさであれば特に限定されない。例えば、第1及び第2の穴の直径は、液体の導入及び細胞を含む液体の回収のために用いる管又は注射針と同じ直径であればよく、直径を0.3 mm以上2.1 mm以下の範囲で適宜設定することができる。
本実施形態の方法では、骨の内部に液体を導入して細胞を回収するので、第1の穴と第2の穴との間は一定の距離があることが好ましい。第1の穴と第2の穴との間の距離は、骨の大きさに応じて適宜決定すればよい。例えば、大腿骨などの長骨の場合では、一方の骨端に近い骨幹部分に第1の穴を開け、反対側の骨端に近い骨幹部分に第2の穴を開けることができる。
本実施形態においては、第1及び第2の穴は、それぞれ1つずつであってもよいし、複数であってもよい。第1及び第2の穴の数は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明において、被覆剤は、骨の外表面に密着することにより、第2の穴から回収されるべき液体及び細胞が骨の外表面から漏れ出ることを抑制するために用いられる。よって、被覆剤は、骨の外表面に密着可能であること、及び、骨の外表面からの液体及び細胞の漏出を抑制できることの2つの性質を併せ持つ物質、材料又は製品であれば、特に限定されない。そのような被覆剤としては、当該技術において公知の樹脂、接着剤、高分子膜、ゲル、石膏などが例示される。本発明においては、これらの被覆剤の中から1種又は2種以上を用いることができる。
本実施形態においては、骨内の細胞は、後述の液体とともに回収されることから、被覆剤は水を透過しない性質であることが好ましい。また、骨が乾燥すると、骨内の細胞が損傷する可能性があるので、被覆剤は、骨の外表面が湿った状態であっても骨に密着可能であることが好ましい。
本実施形態においては、被覆剤と骨の外表面とが隙間なく接している限り、被覆剤と骨の外表面とが密着する原理又は形態などは特に限定されない。すなわち、被覆剤と骨の外表面とは、単に密接しているだけでもよいし、機械的結合をしていてもよいし、物理的又は化学的に相互作用していてもよい。機械的結合としては、骨の外表面の微小な凹部に被覆剤が流入して固化することによるアンカー効果が挙げられる。物理的相互作用としては、ファン・デル・ワールス力による結合及び静電的相互作用などが挙げられる。化学的相互作用としては、共有結合又はイオン結合を形成することなどが挙げられる。また、骨の外表面に部分的に肉片などが付着していた場合であっても、骨の外表面からの液体漏出を抑制できるのであれば肉片などを完全に除去せずに被覆剤で被覆してもよい。本明細書では、一部に肉片などが付着した骨の外表面を被覆剤で被覆する場合も、被覆剤が「骨の外表面に密着する」ことに含まれる。
被覆剤としての樹脂は、硬化性樹脂、可塑性樹脂などを用いることができる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが例示される。可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂などが例示される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、メタクリル・スチレン共重合体、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
光硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコンアクリレート、アミノ樹脂アクリレート、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどが挙げられる。
熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の中には、常温で硬化する性質の樹脂がある。そのような常温硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びポリメチルメタクリレートなどが挙げられ、これらの樹脂は本実施形態の方法の被覆剤として特に適している。
被覆剤としての接着剤は、無機系接着剤、天然系接着剤及び合成接着剤から適宜選択できる。無機接着剤としては、ケイ酸ソーダ、セメント、漆喰などが挙げられる。
天然系接着剤としては、天然ゴム接着剤、カゼイン接着剤、耐水性デンプン接着剤、にかわ、アルブミンなどが挙げられる。
合成接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、αオレフィン樹脂系接着剤、ポリエチレン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ポリサルファイド系接着剤、ブチルゴム系接着剤、シリコーンゴム系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリメタクリレート樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリイミド系接着剤、ニトロセルロース接着剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらの合成接着剤は、液体であってもよいし、エマルジョンであってもよい。また、アクリル樹脂系感圧型粘着テープのように、適当な基材に接着剤を塗布したテープを用いてもよい。
被覆剤としての高分子膜は、生体高分子の膜及び合成高分子の膜から適宜選択できる。生体高分子の膜としては、例えば、キトサン、アルギン酸塩及びペクチンなどの多糖類の膜、並びに、再生セルロース及びセルローストリアセテートなどの植物由来のセルロース膜などが挙げられる。また、キトサン及びアルギン酸塩が交互に積層されてなる膜も被覆剤として適している。合成高分子の膜としては、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール共重合体などの膜が挙げられる。高分子膜の形状は特に限定されず、骨の形状に応じて、テープ、フィルム、シートなどの形状から適宜選択できる。
被覆剤としてのゲルは、水を溶媒として包含するゲルから適宜選択することができ、例えば、寒天、ゼラチン、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートゲルなどが挙げられる。
被覆剤としての石膏は、硫酸カルシウムを主成分とする。本実施形態の方法には、半水石膏、二水石膏、無水石膏などを用いることができる。ギプスのように、焼石膏粉末と綿布とを含むものを被覆剤として用いてもよい。
本実施形態の方法では、導入された液体の好ましい回収率は50%以上、さらに好ましい回収率は80%以上である。この回収率であれば、第2の穴から回収された液体に含まれる細胞を免疫学的研究や毒性試験などに好適に用いることができる。したがって、本実施形態で用いられる被覆剤は、この回収率で第2の穴から液体を回収できるよう、骨の外表面からの液体漏出を抑制できることが好ましい。
上記の被覆剤を骨の外表面に密着させる方法は、被覆剤の種類又は形態に応じて適宜選択できる。例えば、液体の状態から硬化して固体の状態になる被覆剤を用いる場合は、液体の状態にある被覆剤に骨を浸すか又は液体の状態にある被覆剤を骨の外表面に塗布するなどして、骨全体を被覆剤で覆い、その状態で被覆剤を硬化させることが挙げられる。パテなどの可塑性のある状態から硬化する被覆剤を用いる場合は、可塑性のある状態の被覆剤で骨全体を覆い、その状態で被覆剤を硬化させることが挙げられる。薄膜状の形態をした被覆剤を用いる場合は、その被覆剤を骨の外表面に貼付するか又は被覆剤で骨を包むことより、骨全体を覆うことが挙げられる。
本実施形態の方法では、加工骨の調製工程の後、第1の穴から加工骨内に液体を導入する工程が行われる。この工程では、導入した液体を、骨の骨膜又は関節軟骨よりも内側の部分と接触させることを意図している。例えば、液体を、骨質、好ましくは海綿質、より好ましくは骨髄と接触させることが挙げられる。本実施形態において、液体を導入する手段は特に限定されず、注射針を付けたシリンジなどにより用手法で液体を導入してもよいし、送液ポンプを用いる灌流システムにより液体を導入してもよい。
液体の流速は、細胞を含む液体が第2の穴から回収可能な流速であれば、特に限定されない。そのような流速としては、臓器などの灌流実験において一般的に設定される流速であればよく、例えば0.01 mL/min以上100 mL/min以下、好ましくは0.1 mL/min以上20 mL/min以下の範囲から適宜設定すればよい。液体の量は特に限定されないが、例えば0.01 mL以上6000 mL以下の範囲から適宜決定すればよい。
導入する液体の種類は、細胞の生存に影響を与えない液体であれば特に限定されないが、例えば、細胞培養に通常用いられる液体培地(例えば、RPMI培地(Roswell Park Memorial Institute medium)、MEM培地(Minimum Essential Media)、DMEM培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium)、Ham's F-12培地など)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、臓器保存液(UW液(University of Wisconsin solution)、ET-Kyoto液など)、血漿、血清又はそれらの混合物などが挙げられる。導入する液体の温度は、特に限定されないが、例えば4℃以上50℃以下、好ましくは20℃以上42℃以下、より好ましくは35℃以上38℃以下である。
液体には、任意の成分、例えば、薬剤、細胞、核酸、タンパク質、これらの混合物などを添加してもよい。これらは、液体にあらかじめ添加してもよいし、液体の導入の途中から添加してもよい。例えば、図1に示される灌流システムでは、これらの成分を導入口Aから液体に添加することができる。
薬剤の種類は特に限定されず、例えば、細胞の生存又は維持に有用な薬剤、細胞の挙動、活性又は性質などに変化をもたらす薬剤などが挙げられる。細胞の生存又は維持に有用な薬剤としては、例えば、ビタミン、アミノ酸、抗生物質、抗真菌剤などが挙げられる。細胞の挙動、活性又は性質などに変化をもたらす薬剤としては、例えば、脱メチル化剤及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤などの細胞の後成的(エピジェネティック)状態を変化させる薬剤、塩化リチウムなどの細胞のシグナル伝達に関与する薬剤などが挙げられる。また、薬剤は、後述の核酸を細胞に導入するためのトランスフェクション用試薬であってもよい。
核酸の種類は特に限定されず、DNA、RNA及びそれらのハイブリッドのいずれであってもよい。核酸は、二本鎖及び一本鎖のいずれであってもよい。核酸は、色素、酵素及び放射性物質などの当該技術において公知の物質で修飾されていてもよい。核酸としては、例えば、興味対象の遺伝子、並びにその遺伝子を標的とするプローブ、siRNA、shRNA及びモルフォリノオリゴなどが挙げられる。
タンパク質の種類は特に限定されず、例えば、細胞の挙動、活性又は性質などに変化をもたらすタンパク質などが挙げられる。そのようなタンパク質としては、例えば、サイトカイン、ケモカイン、細胞増殖因子、抗体及びそれらの混合物などが挙げられる。
細胞の種類は特に限定されず、未分化細胞、前駆細胞、及び分化した細胞のいずれであってもよい。未分化の細胞は、生体内の発生学的な細胞系譜上で最終分化に至っていない細胞であれば特に制限されない。そのような未分化細胞としては、例えば、幹細胞及び前駆細胞が挙げられる。幹細胞としては、ES細胞(Embryonic Stem cells)、クローンES細胞、iPS細胞(induced Pluripotent Stem cells)、MUSE細胞(Multiliniage-differentiating Stress Enduring cells)、間葉系幹細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞、肝幹細胞、生殖幹細胞、造血幹細胞、骨格筋幹細胞などが挙げられる。
前駆細胞としては、血小板前駆細胞、肝臓前駆細胞、心臓前駆細胞、神経前駆細胞などが挙げられる。血小板前駆細胞としては、巨核球前駆細胞、巨核芽球、前巨核球などが挙げられる。肝臓前駆細胞としては、肝芽細胞、肝前駆細胞、肝星細胞前駆細胞、肝幹前駆細胞、肝臓の血管内皮前駆細胞、肝臓の中皮細胞前駆細胞などが挙げられる。心臓前駆細胞としては、心筋前駆細胞、心臓の血管内皮前駆細胞などが挙げられる。神経前駆細胞としては、ニューロン前駆細胞、グリア前駆細胞、脳神経系の血管内皮前駆細胞などが挙げられる。
分化した細胞は、生体内の発生学的な細胞系譜上で最終分化に至った細胞であれば特に限定されない。そのような分化した細胞としては、例えば、成熟巨核球、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞、肝中皮細胞、胆管上皮細胞、肝星細胞、肝類洞内皮細胞、クッパー細胞、ピット細胞、血管内皮細胞、膵管上皮細胞、膵導管細胞、腺房中心細胞、腺房細胞、ランゲルハンス島、心筋細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、1型肺胞上皮細胞、2型肺胞上皮細胞、クララ細胞、線毛上皮細胞、基底細胞、杯細胞、神経内分泌細胞、クルチッキー細胞、尿細管上皮細胞、尿路上皮細胞、円柱上皮細胞、糸球体上皮細胞、糸球体内皮細胞、蛸足細胞、メサンギウム細胞、神経細胞、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトなどが挙げられる。
本実施形態の方法では、第2の穴から細胞を含む液体を回収する工程が行われる。本実施形態において、液体を回収する手段は特に限定されず、注射針を付けたシリンジなどにより用手法で、細胞を含む液体を回収してもよいし、図1に示されるような灌流システムにより、細胞を含む液体を回収してもよい。
本実施形態においては、一定量の液体を導入した後に、細胞を含む液体を回収することを一連のサイクルとして、このサイクルを繰り返してもよい。図1に示すような灌流システムを用いる場合では、液体の導入後、細胞を含む液体の回収が一旦始まれば、導入工程及び回収工程を同時に行うことができる。
本実施形態においては、回収した液体に含まれる細胞は、骨髄細胞に限らない。すなわち、導入する液体に上記の細胞を添加していた場合は、この添加された細胞が回収の対象となる。また、このような添加した細胞が未分化細胞又は前駆細胞である場合、この細胞に由来する細胞(例えば、加工骨内部を通過することによって分化した細胞など)も回収の対象である。
本実施形態において、上記の加工骨の調製工程、液体の導入工程及び細胞を含む液体の回収工程はいずれも4℃以上50℃以下の温度範囲の環境下で行うことが好ましい。より好ましい温度範囲は15℃以上42℃以下であり、さらに好ましい温度範囲は20℃以上38℃以下である。この温度範囲であれば、回収される細胞が受ける損傷を最小限に抑制することができる。したがって、被覆剤は、上記の温度範囲で骨に密着するものであることが好ましい。
本実施形態において、液体の導入開始から回収の終了までの時間は、流速及び液体の量に依存するが、例えば30秒以上3000分以下、好ましくは1分以上1500分以下の範囲から適宜設定すればよい。
本発明の範囲には、上記の方法に用いられる加工骨も含まれる。この加工骨は、骨の外表面に密着する被覆剤で骨の外表面が被覆され、骨内に液体を導入するための第1の穴と、細胞を含む液体を回収するための第2の穴とを有する。この第1及び第2の穴は、上記の被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する。
本実施形態の加工骨に用いられる骨及び被覆剤などの材料、並びに加工骨の調製方法及び使用方法などは、本実施形態の細胞の回収方法について述べたことと同じである。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
この実施例では、被覆剤で被覆したブタ大腿骨を、図1に示す灌流システムを用いて生理食塩水を灌流し、導入した液体の回収効率を確認した。
1.加工骨の調製
(1-1)大腿骨の摘出及び穴の形成
ケタラールで麻酔したブタ(LWD系、体重30 kg程度)から大腿骨を摘出し、得られた大腿骨を4℃にて保管した。大腿骨に電動ドリルで直径1.2 mmの穴を2カ所開け、それらの穴に注射針(18G x 1 1/2”、テルモ株式会社製)を挿入した。
(1-2)骨の被覆
被覆剤として、シリコーン樹脂のポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いた。SILPOT184(東レダウコーニング社)とCATALYST SILPOT184(東レダウコーニング社)とを10:1の割合で混合し、5分間撹拌した。撹拌後、得られた混合液(PDMS溶液)を真空装置にて15分間脱気処理をした。2つの穴に注射針を挿入した状態の大腿骨をプラスチックケースに入れ、脱気処理したPDMS溶液(600 mL)をプラスチックケースの中に流し込んだ。これをオーブンに入れ、40℃で5時間加熱してPDMSを硬化させて、加工骨を得た。
2.細胞の回収
(2-1)灌流システムの構築
本発明者らは、上記の加工骨に液体を導入して細胞を回収するために、図1に示される灌流システムを構築した。この灌流培養システムは、加工骨を備えた灌流部100、液体を灌流部100に導入するための送液部200、灌流部100から排出された灌流培養液を回収するための回収部300、各構成要素をつなぐチューブ401〜407、並びに、外部から任意成分を導入するための三方活栓501及びサンプリングのための三方活栓502から構成される。以下、灌流部100、送液部200及び回収部300について説明する。
a)灌流部100
図1において、加工骨は、被覆剤102で被覆された骨101として図示されている。加工骨の各穴に挿入された2本の注射針にそれぞれチューブ403及び405(サフィード延長チューブ、テルモ株式会社製)をつなげた。チューブ403をつなげた注射針が挿入された穴を、液体を導入するための第1の穴とした。チューブ405をつなげた注射針が挿入された穴を、細胞を含む液体を回収導入するための第2の穴とした。
b)送液部200
灌流液ボトル201(2002-5000SD、5L、アズワン株式会社製)と、送液ポンプ202(マスターフレックス送液ポンプ07528-10、ヤマト科学製)とを、チューブ401(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-25、ヤマト科学製)を介して連結した。送液ポンプ202にチューブ402(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-25、ヤマト科学製)をつなげた。チューブ402及び403を三方活栓501(タイプR型、コック仕様360°、TS−TR2K、テルモ株式会社製)につなげた。さらに、三方活栓501にチューブ404(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-25、ヤマト科学製)をつなげた。本実施例では、灌流液ボトル201に入っている液体(生理食塩水)が、送液ポンプ202により加工骨の第1の穴から骨内へ導入される。
c)回収部300
回収ボトル301(2250-0020、Thermo Scientific社製)と、三方活栓502(タイプR型、コック仕様360°、TS−TR2K、テルモ株式会社製)とを、チューブ406(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-25、ヤマト科学製)を介して連結した。この三方活栓502にチューブ405をつなぎ、さらにチューブ407(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-25、ヤマト科学製)をつなげた。
(2-2)灌流
生理食塩水(100 mL)を10 mL/minの流速で、加工骨の第1の穴から骨内へ導入した。生理食塩水を導入したときの写真を、図2に示す。導入した生理食塩水は骨髄中を流れ、第2の穴から細胞を含む液体を回収できた。回収した液体の量は99 mLであり、回収率(回収した液体量/導入した液体量)は99%であった。
3.考察
導入した液体のほとんど全てを第2の穴から回収できたことから、骨の表面からの液体の漏出はほとんど無かったと考えられる。よって、PDMSで骨を被覆することにより、骨の表面から液体が漏れ出ることを抑制し、灌流システムを用いた細胞回収が可能だと考えられる。
<比較例1>
この比較例では、ブタ大腿骨を被覆剤で被覆せずに、実施例1と同様の灌流実験を行った。
1.大腿骨の摘出及び穴の形成
実施例1と同様にして、ブタ(LWD系、体重30 kg程度)から摘出した大腿骨に直径1.2 mmの穴を2カ所開け、それらの穴に注射針(18G x 1 1/2”、テルモ株式会社製)を挿入した。各穴に注射針を挿入した状態の大腿骨を、ペーパータオルを敷いたトレーに載せた。
2.細胞の回収
(2-1)灌流システムの構築
大腿骨の各穴に挿入された注射針にチューブをつなぎ、実施例1と同様の灌流システムを構築した。この灌流システムは、実施例1の灌流部100の加工骨に替えて、本比較例の大腿骨を用いたこと以外は、実施例1の灌流システムと同じである。
(2-2)灌流
生理食塩水(100 mL)を10 mL/minの流速で、加工骨の第1の穴から骨内へ導入した。生理食塩水を導入した後、大腿骨表面の様々な箇所から液漏れが生じた。液漏れが生じたときの写真を、図3に示す。図3に示されるように、漏れ出た液体は、大腿骨の下に敷いたペーパータオルに吸収されていた。第2の穴から回収した液体の量は9mLであり、回収率は9%であった。
3.考察
骨に液体を灌流すると、導入した液体は骨の表面から漏れ出ることがわかった。実施例1の結果と比較すると、被覆していない骨を用いる灌流システムでは、導入した液体の回収率は著しく低下し、灌流システムを用いた細胞回収が困難だと考えられる。
<実施例2>
この実施例では、被覆剤で骨を被覆した後に穴を開けて加工骨を調製し、骨に穴を開ける工程及び骨を被覆する工程の順序が、液体の回収効率に与える影響の有無を確認したまた、液体の導入及び細胞の回収を、シリンジによる用手法で行い、液体の回収効率を確認した。
1.加工骨の調製
ケタラールで麻酔したブタ(LWD系、体重30 kg程度)から大腿骨を摘出し、得られた大腿骨を4℃にて保管した。実施例1と同様にして、SILPOT184(東レダウコーニング社)及びCATALYST SILPOT184(東レダウコーニング社)から、脱気処理したPDMS溶液(600 mL)を調製した。大腿骨をプラスチックケースに入れ、PDMS溶液を流し込んだ。これを室温で静置してPDMSを硬化させた。これにより、ブタ大腿骨をPDMSで被覆した加工骨を得た。PDMSで被覆した大腿骨に電動ドリルで直径1.2 mmの穴を2カ所開け、それらの穴に注射針(18G x 1 1/2”、テルモ株式会社製)を挿入した。
2.細胞の回収
加工骨の各穴に挿入された2本の注射針のそれぞれにチューブ(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-13、ヤマト科学製)及びシリンジ(20 mL用、テルモ株式会社製)をつないだ。一方のシリンジから生理食塩水(25 mL)を骨内へ導入した。生理食塩水を導入したときの写真を、図4に示す。導入された液体を、もう一方のシリンジに回収した。この導入と回収の操作をさらに3回繰り返して、計100 mLの生理食塩水を骨内へ導入した。回収した液体の量は、メスシリンダーで測定した。回収した液体の量は99 mLであり、回収率(回収した液体量/導入した液体量)は99%であった。
3.考察
導入した液体のほとんど全てを第2の穴から回収できたことから、骨を被覆する工程及び骨に穴を開ける工程を行う順序は、回収の効率に影響がないことがわかった。また、PDMSで骨を被覆することにより、用手法での細胞回収が可能だと考えられる。
<比較例2>
この比較例では、ブタ大腿骨を被覆剤で被覆せずに、実施例2と同様の実験を行った。
1.大腿骨の摘出及び穴の形成
実施例1と同様にして、ブタ(LWD系、体重30 kg程度)から摘出した大腿骨に直径1.2 mmの穴を2カ所開け、それらの穴に注射針(18G x 1 1/2”、テルモ株式会社製)を挿入した。各穴に注射針を挿入した状態の大腿骨を、ペーパータオルを敷いたトレーに載せた。
2.細胞の回収
大腿骨の各穴に挿入された2本の注射針のそれぞれにチューブ(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-13、ヤマト科学製)及びシリンジ(20 mL用、テルモ株式会社製)をつないだ。一方のシリンジから生理食塩水(25 mL)を骨内へ導入した。生理食塩水を導入した後、大腿骨表面の様々な箇所から液漏れが生じた。液漏れが生じたときの写真を、図5に示す。図5に示されるように、漏れ出た液体はトレーの中にたまっていた。導入された液体を、第2の穴から、もう一方のシリンジに回収した。この操作をさらに3回繰り返して、計100 mLの生理食塩水を骨内へ導入した。回収した液体の量は20 mLであり、回収率(回収した液体量/導入した液体量)は20%であった。なお、漏れ出た液体の量は、約74 mLであった。
3.考察
比較例1と同様、骨に液体を導入すると、導入した液体は骨の表面から漏れ出ることがわかった。実施例2の結果と比較すると、被覆していない骨では導入した液体の回収率は著しく低下し、用手法での細胞回収が困難だと考えられる。
<実施例3>
この実施例では、実施例2とは異なる種類の被覆剤で骨を被覆した後に穴を開けて、加工骨を調製し、被覆材の種類を検討した。また、液体の導入及び細胞の回収を、シリンジによる用手法で行い、液体の回収効率を確認した。
1.加工骨の調製
(1-1)大腿骨の摘出
ケタラールで麻酔したブタ(LWD系、体重30 kg程度)から大腿骨を摘出し、得られた大腿骨を4℃にて保管した。
(1-2)骨の被覆
被覆剤として、エポキシ樹脂系接着剤のエポキシパテ水中用(セメダイン株式会社製)を用いた。エポキシパテ(60 g)を、色のむらがなくなり白色になるまで練って混合した。混合したエポキシパテで大腿骨を覆い、これを室温で静置してエポキシパテを硬化させた。これにより、ブタ大腿骨をエポキシパテで被覆した加工骨を得た。エポキシパテで被覆した大腿骨に電動ドリルで直径1.2 mmの穴を2カ所開け、それらの穴に注射針(18G x 1 1/2”、テルモ株式会社製)を挿入した。
2.細胞の回収
加工骨の各穴に挿入された2本の注射針のそれぞれにチューブ(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-13、ヤマト科学製)及びシリンジ(20 mL用、テルモ株式会社製)をつないだ。一方のシリンジから生理食塩水(25 mL)を骨内へ導入した。生理食塩水を導入したときの写真を、図6に示す。導入された液体を、もう一方のシリンジに回収した。この導入と回収の操作をさらに3回繰り返して、計100 mLの生理食塩水を骨内へ導入した。回収した液体の量は、メスシリンダーで測定した。回収した液体の量は98.5 mLであり、回収率(回収した液体量/導入した液体量)は98.5%であった。
3.考察
導入した液体のほとんど全てを第2の穴から回収できたことから、骨の表面からの液体の漏出はほとんど無かったと考えられる。よって、エポキシパテで骨を被覆することにより、骨の表面から液体が漏れ出ることを抑制できるので、細胞回収が可能だと考えらえる。
<実施例4>
この実施例では、実施例2の方法で調製した加工骨に液体を導入し、回収された液体に含まれる細胞の数を測定した。対照として、被覆していない骨を用いた。
1.加工骨の調製
実施例2と同様にして、ブタ大腿骨をPDMSで被覆した加工骨を得た。PDMSで被覆した大腿骨に電動ドリルで直径1.2 mmの穴を2カ所開け、それらの穴に注射針(18G x 1 1/2”、テルモ株式会社製)を挿入した。対照として、ブタ(LWD系、体重30 kg程度)から摘出した大腿骨に直径1.2 mmの穴を2カ所開け、それらの穴に注射針(18G x 1 1/2”、テルモ株式会社製)を挿入した。
2.細胞の回収
(2-1)加工骨からの細胞の回収
加工骨の各穴に挿入された2本の注射針のそれぞれにチューブ(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-13、ヤマト科学製)及びシリンジ(20 mL用、テルモ株式会社製)をつないだ。一方のシリンジから生理食塩水(10 mL)を骨内へ導入した。そして、導入された液体を、もう一方のシリンジに回収した。回収した液体の量は10 mLであり、回収率は100%であった。
(2-2)被覆していない大腿骨からの細胞の回収
大腿骨の各穴に挿入された2本の注射針のそれぞれにチューブ(C-フレックス ポンプチューブ、製品番号6424-13、ヤマト科学製)及びシリンジ(20 mL用、テルモ株式会社製)をつないだ。一方のシリンジから生理食塩水(120 mL)を骨内へ導入した。そして、導入された液体を、もう一方のシリンジに回収した。回収した液体の量は10 mLであり、回収率は8.3%であった。
3.細胞数の測定
加工骨及び被覆していない大腿骨のそれぞれから回収された液体を、動物用血球分析装置XT-2000iv(シスメックス株式会社製)で分析して、細胞数を測定した。その結果、有核細胞として測定された細胞量は、加工骨から回収された液体では32,335 cells/μLであり、被覆していない大腿骨から回収された液体では4,080 cells/μLであった。
4.考察
加工骨では、10 mLの生理食塩水を導入すると、10 mLの液体が回収できた。これに対して、被覆していない骨では、10 mLの液体を回収するためには、12倍の120 mLの生理食塩水を導入する必要があった。同量の回収液に含まれる細胞の数については、加工骨からは、被覆していない骨の場合の約8倍の細胞が回収できた。すなわち、加工骨を用いた場合の回収効率は、被覆していない骨を用いた場合の回収効率の約96倍であった。以上より、加工骨を用いる本実施形態の方法では、被覆剤により、細胞を含む液体の漏出が抑制されているので、細胞を効率よく回収できることがわかった。
100:灌流部
101:骨
102:被覆剤
200:送液部
201:灌流液ボトル
202:送液ポンプ
300:回収部
301:回収ボトル
401〜407:チューブ
501及び502:三方活栓
A:導入口
B:回収口
矢印:灌流液の流れ

Claims (14)

  1. 骨の外表面に密着する被覆剤で骨の外表面が被覆され、且つ前記被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する第1及び第2の穴を有する加工骨を調製する工程と、
    前記第1の穴から加工骨内に液体を導入する工程と、
    前記第2の穴から細胞を含む液体を回収する工程と
    を含む、細胞の回収方法。
  2. 第1及び第2の穴が、被覆剤と骨膜又は関節軟骨とを貫通して骨の内部に達する穴である請求項1に記載の方法。
  3. 加工骨内に導入する液体が、液体培地、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、臓器保存液、血漿、血清又はそれらの混合物である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 加工骨内に導入する液体が、薬剤、細胞、核酸及びタンパク質から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 調製工程、導入工程及び回収工程が、4℃以上50℃以下の温度範囲で行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 被覆剤が、樹脂、接着剤、高分子膜、ゲル及び石膏から選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 樹脂が、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂である請求項6に記載の方法。
  8. 樹脂が、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びポリメチルメタクリレートから選択される少なくとも1種である請求項7に記載の方法。
  9. 高分子膜が、生体高分子の膜及び合成高分子の膜から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の方法。
  10. 生体高分子の膜が、キトサン、アルギン酸塩及びペクチンから選択される少なくとも1種の多糖類を含む請求項9に記載の方法。
  11. 接着剤が、無機系接着剤、天然系接着剤又は合成接着剤である請求項6に記載の方法。
  12. 被覆剤が、4℃以上50℃以下で前記骨に密着する請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. の外表面に密着する被覆剤で骨の外表面が被覆され、
    骨内に液体を導入するための第1の穴と、骨内から前記液体を回収するための第2の穴とを有し、
    前記第1及び第2の穴が、前記被覆剤及び骨の外表面を貫通して骨の内部に達する、加工骨。
  14. 被覆剤が、樹脂、接着剤、高分子膜、ゲル及び石膏から選択される少なくとも1種である請求項13に記載の加工骨。
JP2014117701A 2014-06-06 2014-06-06 細胞の回収方法及びその方法に用いられる加工骨 Active JP6302756B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014117701A JP6302756B2 (ja) 2014-06-06 2014-06-06 細胞の回収方法及びその方法に用いられる加工骨
US14/722,472 US9610066B2 (en) 2014-06-06 2015-05-27 Method of collecting cells
CN201510303089.3A CN105274052B (zh) 2014-06-06 2015-06-05 细胞的回收方法及用于该方法的加工骨
EP15170760.1A EP2952580B1 (en) 2014-06-06 2015-06-05 Method of collecting cells and processed-bone used for the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014117701A JP6302756B2 (ja) 2014-06-06 2014-06-06 細胞の回収方法及びその方法に用いられる加工骨

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2015228848A JP2015228848A (ja) 2015-12-21
JP2015228848A5 JP2015228848A5 (ja) 2017-04-20
JP6302756B2 true JP6302756B2 (ja) 2018-03-28

Family

ID=53365872

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014117701A Active JP6302756B2 (ja) 2014-06-06 2014-06-06 細胞の回収方法及びその方法に用いられる加工骨

Country Status (4)

Country Link
US (1) US9610066B2 (ja)
EP (1) EP2952580B1 (ja)
JP (1) JP6302756B2 (ja)
CN (1) CN105274052B (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018159661A1 (ja) * 2017-02-28 2018-09-07 シスメックス株式会社 灌流装置及び灌流方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001172188A (ja) * 1999-12-15 2001-06-26 Kansai Tlo Kk 免疫寛容誘導剤
JP4058614B2 (ja) * 2001-08-09 2008-03-12 株式会社Jimro 骨髄針
JP2004256444A (ja) * 2003-02-26 2004-09-16 Kansai Tlo Kk 悪性腫瘍の治療方法
CN102100568A (zh) * 2005-03-29 2011-06-22 Hi-Lex株式会社 医疗用的双重针、骨穿刺针以及骨髓采集设备
US7977313B2 (en) * 2007-04-27 2011-07-12 Affinergy, Inc. Methods and compositions for promoting localization of pharmaceutically active agents to bone
CN101423820B (zh) * 2008-11-28 2012-02-01 浙江大学 基于骨髓间充质干细胞的骨组织分阶段灌流培养方法
WO2012005760A1 (en) 2010-06-30 2012-01-12 Miromatrix Medical Inc. Use of perfusion decellularized organs for matched recellularization
CN103251988B (zh) * 2012-02-15 2016-09-14 上海交通大学医学院附属第九人民医院 一种用于干细胞在体灌注筛选富集的治疗系统
US9290738B2 (en) * 2012-06-13 2016-03-22 Miromatrix Medical Inc. Methods of decellularizing bone

Also Published As

Publication number Publication date
CN105274052A (zh) 2016-01-27
EP2952580A1 (en) 2015-12-09
EP2952580B1 (en) 2017-03-01
US9610066B2 (en) 2017-04-04
CN105274052B (zh) 2021-03-16
US20150353892A1 (en) 2015-12-10
JP2015228848A (ja) 2015-12-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11946028B2 (en) Fibrosis model on a chip
JP7186977B2 (ja) バイオミメティック流体処理のためのシステム及び方法
Aparicio-Vergara et al. Isolation of Kupffer cells and hepatocytes from a single mouse liver
JP6560199B2 (ja) 培養方法及び細胞塊
Tandon et al. Generation of tissue constructs for cardiovascular regenerative medicine: From cell procurement to scaffold design
WO2016021498A1 (ja) 繊維状タンパク質材料の作製方法、および細胞培養方法
WO2017038562A1 (ja) 多能性幹細胞を減少させる方法、多能性幹細胞を減少させた細胞集団の製造方法
Meier et al. Microencapsulation of hepatocytes and mesenchymal stem cells for therapeutic applications
CN108753687B (zh) 微肝组织培养模型、其构建方法及其应用
Tadevosyan et al. Engineering and assessing cardiac tissue complexity
JP6302756B2 (ja) 細胞の回収方法及びその方法に用いられる加工骨
Palakkan et al. Evaluation of polypropylene hollow-fiber prototype bioreactor for bioartificial liver
US20190380329A1 (en) Perfusion device and perfusion method
JP7265291B2 (ja) 3次元肝組織モデル
JP6989828B2 (ja) 細胞塊を集合させる方法及び細胞塊を集合させる装置
Mohammadalipour et al. Ex vivo modeling of hematopoietic stem cell homing to the fetal liver
Kamiya et al. Enrichment and clonal culture of hepatic stem/progenitor cells during mouse liver development
Kashani et al. Cell-imprinted-based integrated microfluidic device for biomedical applications: Computational and experimental studies
Ciucurel et al. The modular approach
CN115715318A (zh) 微生态生物支架及其应用
KR20200086091A (ko) 샘플 유실 방지용 피펫 팁
Delaney In vitro modeling of interstitial fluid flow relating to pulmonary hypertension
Ciucurel et al. Biofabrication: Chapter 7. The Modular Approach
IT201900002193A1 (it) Metodo di caratterizzazione di un costrutto vascolare ingegnerizzato
Natarajan A microfluidic method for selecting chemotactic stem cells

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170314

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170314

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180124

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180206

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180305

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6302756

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250