JP7265291B2 - 3次元肝組織モデル - Google Patents
3次元肝組織モデル Download PDFInfo
- Publication number
- JP7265291B2 JP7265291B2 JP2021551677A JP2021551677A JP7265291B2 JP 7265291 B2 JP7265291 B2 JP 7265291B2 JP 2021551677 A JP2021551677 A JP 2021551677A JP 2021551677 A JP2021551677 A JP 2021551677A JP 7265291 B2 JP7265291 B2 JP 7265291B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cells
- vessel
- liver tissue
- liver
- culture
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K35/00—Medicinal preparations containing materials or reaction products thereof with undetermined constitution
- A61K35/12—Materials from mammals; Compositions comprising non-specified tissues or cells; Compositions comprising non-embryonic stem cells; Genetically modified cells
- A61K35/37—Digestive system
- A61K35/407—Liver; Hepatocytes
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61L—METHODS OR APPARATUS FOR STERILISING MATERIALS OR OBJECTS IN GENERAL; DISINFECTION, STERILISATION OR DEODORISATION OF AIR; CHEMICAL ASPECTS OF BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES; MATERIALS FOR BANDAGES, DRESSINGS, ABSORBENT PADS OR SURGICAL ARTICLES
- A61L27/00—Materials for grafts or prostheses or for coating grafts or prostheses
- A61L27/36—Materials for grafts or prostheses or for coating grafts or prostheses containing ingredients of undetermined constitution or reaction products thereof, e.g. transplant tissue, natural bone, extracellular matrix
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P1/00—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
- A61P1/16—Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system for liver or gallbladder disorders, e.g. hepatoprotective agents, cholagogues, litholytics
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/02—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving viable microorganisms
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Public Health (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Zoology (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Epidemiology (AREA)
- Immunology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Transplantation (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Dermatology (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Oral & Maxillofacial Surgery (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Analytical Chemistry (AREA)
- Botany (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Nutrition Science (AREA)
- Physiology (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Developmental Biology & Embryology (AREA)
- Virology (AREA)
Description
このような状況下において、外部から灌流を行うことが可能な3次元肝組織モデル等の開発が望まれていた。
(2)主血管様構造は灌流可能なものである、前記(1)に記載の3次元肝組織モデル。
(3)主血管様構造は、外部の灌流デバイスに接続されている又は接続可能なものである、前記(1)又は(2)に記載の3次元肝組織モデル。
(5)3次元肝組織は、コラーゲンゲル中に分散した肝細胞、血管系細胞、及び間葉系細胞を培養して作製されたものである、前記(1)~(4)のいずれかに記載の3次元肝組織モデル。
(6)肝細胞が、肝がん由来細胞であるHepG2細胞であり、血管系細胞が、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)であり、間葉系細胞が、間葉系幹細胞(MSC)である、前記(1)~(5)のいずれかに記載の3次元肝組織モデル。
(8)肝機能を改善する若しくは亢進させる物質、又は肝機能障害を予防若しくは治療する物質をスクリーニングするためのものである、前記(1)~(7)のいずれかに記載の3次元肝組織モデル。
(9)肝臓の再生医療に用いられるものである、前記(1)~(7)のいずれかに記載の3次元肝組織モデル。
(A)培養容器の側面に、対向するように、該容器の外部から内部に通じる管状コネクタを設け、一方のコネクタから他方のコネクタの管内に、主血管様構造を形成するための棒状部材を通す工程(A工程)、
(B)A工程後の培養容器内に、肝細胞、血管系細胞、及び間葉系細胞を含むコラーゲンゲルを充填する工程(B工程)、
(C)棒状部材を管状コネクタから抜去する(C工程)、
(D)C工程の前又は後に、培養容器中の前記コラーゲンゲル全体が浸漬するように培地を投入する、又は培養容器中の前記コラーゲンゲル全体を培地中に浸漬させる工程(D工程)、
(E)棒状部材を抜去した管状コネクタから培地を灌流させる工程(E工程)、並びに
(F)D工程及びE工程により、前記コラーゲンゲル中の肝細胞、血管系細胞、及び間葉系細胞を培養する工程(F工程)
を含む、前記作製方法。
(12)管状コネクタは、培養容器の内部側の端にアンカー構造が設けられている、前記(10)又は(11)に記載の作製方法。
(14)前記(1)~(8)のいずれかに記載の3次元肝組織モデルの作製方法である、前記(10)~(13)のいずれかに記載の作製方法。
発明の効果
本発明の3次元肝組織モデルは、実際の肝組織により近い代謝及びタンパク質産生等の機能を有するものとなり得る。そのため、例えば、肝機能を改善する若しくは亢進させる物質、又は肝機能障害を予防若しくは治療する物質をスクリーニングするための創薬試験ツールとして用い得ることや、さらには、肝臓の再生医療用に用い得るといった、有用性・実用性に優れたものである。
図1b:灌流デバイスの一例を示す図である。該デバイスには培養した肝組織を固定するためのアンカーを有する管状コネクタがある。該デバイスは、肝組織の培養容器にもなるものである。
図1c及び1d:主血管様構造及び類洞(毛細血管)様構造を有する管状肝組織モデルの概念図である。図1cは、灌流デバイス内に作製した肝組織モデルを示し、図1dは、該肝組織モデルの長手方向の断面図を示す。該モデルの肝組織は、肝がん由来細胞であるHepG2細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、及び間葉系幹細胞(MSC)を分散させたコラーゲンゲルによって作製されており、類洞様構造とそれが接続した主血管様構造を有する。
図2b:培養肝組織に灌流するためのシステムの一例を示す図である。該システムでは、ペリスタルティックポンプによって灌流を行い、培養中に発生した気泡を除去するためバブルトラップが設けられている。
図2c:培養肝組織への灌流試験の連続写真(0sec,3sec,6sec,9sec)を示す図である。灌流デバイスの一方の管状コネクタから、培養肝組織内に墨汁が注入され、他方の管状コネクタから排出される様子が示されている。
図4:作製した肝組織モデルにおける、肝臓機能に関連するタンパク質の蛍光免疫染色を示す図である。非灌流の肝組織(図4a)、及び灌流した肝組織(図4b)を、それぞれ、アルブミン(緑)及びCYP2D6(マゼンタ)で染色した。
図6:作製した肝組織モデルにおける、主血管様構造及び類洞様構造の機能解析の結果を示す図である。図6aは、灌流条件で構築し、固定前に墨汁を注入された肝組織のHE染色。図6bは、墨汁を注入した肝組織の明視野像。図6cは、明視野像から閾値処理によって墨汁を抽出した画像。図6dは、図6bの免疫染色像(シアン:核、緑:CD31、マゼンタ:EpCAM)。図6eは、図6cの画像と図6dの染色像を重ね合わせた像。図6fは、図6eの拡大像であり、墨汁陽性の領域とCD陽性の類洞様構造の共局在を示す。図6jは、灌流条件及び非灌流条件における主血管周辺の細胞密度分布(平均±標準誤差、同一のアルファベットで接続されていない場合、有意差あり)。図6kは、培地中のアルブミン累積量(平均±標準誤差)。
なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2019-184027号明細書(令和1年(2019年)10月4日付け出願)の全体を包含する。本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
本発明においては、3次元肝組織モデル及びその作製方法等を提供する。該3次元肝組織は、灌流可能な主血管様構造及び類洞(肝臓に特異的な毛細血管)様構造を有する。該3次元肝組織は、肝細胞、血管系細胞(血管内皮細胞等)、及び間葉系幹細胞によって構成され、灌流デバイスを用いて作製されている。形成した主血管様構造から組織内への灌流により、主血管様構造の周囲に、類洞様構造及び高密度な細胞凝集体が形成されるとともに、肝特異的な遺伝子の発現の亢進も確認された。これらの結果に基づき、本発明に係る3次元肝組織モデル等は完成された。
本発明の3次元肝組織モデル(以下、単に、本発明の肝組織モデルとも言う。)は、前述のとおり、主血管様構造及び類洞様構造を有するものである。具体的には、例えば、図1cの拡大図(立体図)や図1d(断面図)にあるように、組織内部の中心に主血管(main channel)様構造が通っており、主血管様構造に類洞(sinusoid)様構造がつながって周囲に伸びている、3次元肝組織が挙げられる。類洞様構造は、その全部が主血管様構造に接続されていてもよいし、一部が接続されていてもよい。本発明の肝組織モデルは、主血管様構造の周囲に、類洞様構造を含む肝組織が形成された、管状の組織であるものが好ましく挙げられるが、組織の形状、さらには大きさ等の外形については、特に限定はされない。
本発明の肝組織モデルにおける当該組織の厚みは、限定はされないが、例えば、主血管様構造の血管壁面(血管の外側壁面)から、当該組織の表面までの距離が、5000μm以下であることが好ましく、4000μm以下、3000μm以下、2000μm以下、1000μm以下、750μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、又は200μm以下であることも好ましい。
本発明にかかる、主血管様構造及び類洞様構造を有する3次元肝組織モデルの作製方法(以下、単に、本発明の作製方法と言うことがある。)は、前述した本発明の肝組織モデルを構築できる方法であれば、特に限定はされないが、例えば、以下のA~F工程を含む方法等が好ましく挙げられる。
(B)A工程後の培養容器内に、肝細胞、血管内皮細胞、及び間葉系細胞を含むコラーゲンゲルを充填する工程(B工程)
(C)棒状部材を管状コネクタから抜去する(C工程)
(D)C工程の前又は後に、培養容器中の前記コラーゲンゲル全体が浸漬するように培地を投入する、又は培養容器中の前記コラーゲンゲル全体を培地中に浸漬させる工程(D工程)
(E)棒状部材を抜去した管状コネクタから培地を灌流させる工程(E工程)
(F)D工程及びE工程により、前記コラーゲンゲル中の肝細胞、血管系細胞、及び間葉系細胞を培養する工程(F工程)
培養容器は、形状、大きさ等は特に限定はされず、所望の形状、大きさの3次元肝組織を構築できるように適宜設計することができる(例えば、3Dプリンタ技術により製造することもできる。)。培養容器の材質についても、特に限定はされないが、例えば、アクリル樹脂等のように、動物細胞培養において使用可能であることが周知の材質が好ましく挙げられる。培養容器は、後の工程において、そのまま灌流デバイスとしても用いることができるものであることが好ましい。このような培養容器としては、例えば、図1bに示すような培養容器(図1bの中心部分の長方形のくぼみ部分が培養容器に相当する)等が挙げられる。
培養容器への上記充填後に、棒状部材を管状コネクタから抜去する。当該棒状部材を抜去した後の空間(hollow channel)が、本発明の肝組織モデルにおける主血管様構造のベースとなる。
培養容器内に肝細胞等を含むコラーゲンゲルの充填を行った後、当該コラーゲンゲル全体が浸漬するように培地を投入する、又は当該コラーゲンゲル全体を培地中に浸漬させる。具体的には、例えば、図2aの(ii)のような状態にする。当該コラーゲンゲル全体を培養条件下に置くためである。上記の培地の投入や培地中への浸漬は、前述した棒状部材の抜去前に行っておいてもよいし、抜去後に行ってもよく、限定はされない。
ここで、上述した培地の灌流の条件としては、限定はされないが、例えば、培地の流量を、シアストレスが1×10-8~10Paとなるように調整することが好ましく、1×10-6~5Pa、1×10-4~3Pa、又は1×10-3~1Paとなるように調整することも好ましい。なお、上記シアストレス(τ[Pa])は、以下の計算式で算出することができる。
τ=(4μQ)/(πR3)[Pa]
μ:培地の粘性率(Pa・s)
Q:流量(m3/s)
R:主血管半径(m)
(例えば、本願実施例の場合、主血管様構造の直径:500μm、流量:1mL/hourの場合、シアストレス:0.018Paとなる。但し、培地DMEM(37℃)の粘性率は、文献値:0.00078Pa・sを使用。)
細胞培養
肝がん由来細胞であるHepG2細胞は、10%のウシ胎児血清及び1%の100倍濃度ペニシリンストレプトマイシン溶液を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)によって培養した。HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)はキットに含まれる成長因子及び1%の100倍濃度ペニシリンストレプトマイシン溶液を添加した内皮細胞増殖培地(EGM-2)によって培養した。不死化MSC(間葉系幹細胞)は10%のウシ胎児血清、1%の100倍濃度非必須アミノ酸溶液及び1%の100倍濃度ペニシリンストレプトマイシン溶液を添加したDMEMによって培養した。全ての細胞は37℃、5%CO2環境において培養した。
培養容器としても用いられる灌流デバイスは、3Dプリンタによって造型した(アクリル樹脂製)。デバイスは超音波洗浄機によって洗浄後、70%エタノールによって滅菌した。クリーンベンチ内で乾燥させた後、細胞及びコラーゲンゲルの接着性向上のため、デバイスを5分間の大気プラズマで処理し、10μg/mLのウシ由来フィブロネクチンに浸漬して37℃で2時間コーティング処理を行った。デバイスはMg2+,Ca2+を含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れ、最大で1週間4℃で保管した。組織構築の直前に、針(テルモ社製:シリンジ針25G(直径:0.50mm、材質:ステンレス鋼))をコネクタに通した。
HepG2細胞(3×107cells/mL),HUVEC(3×107cells/mL)、MSC(0.5×107cells/mL又は0.05×107cells/mL)を懸濁した3mg/mLの中性化I型コラーゲンを灌流デバイスに充填した。ゲル化のため37℃でインキュベートした後、針(前記シリンジ針25G)を抜去して空洞流路を形成し、デバイスを培地に浸漬した。組織培養用培地として、非灌流条件及び通常密度MSC・灌流条件においては10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリンストレプトマイシンを添加したDMEMと、キットに含まれる成長因子及び1%ペニシリンストレプトマイシンを添加したEGM2を1:1で混合したものを用いた。また低密度MSC・灌流条件においては10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリンストレプトマイシンを添加したDMEMを用いた。空洞流路に100μLのHUVEC懸濁液(4×106cells/mL)をシリンジ及びシリンジポンプを用いて注入した。20分間のインキュベートの後、流路の上面に細胞を接着させるためデバイスを裏返してさらに20分間インキュベートした。その後再び灌流デバイスを元の位置に戻し、80分経過後、ペリスタルティックポンプを用いて1mL/hourの流量で培地を灌流した。組織内での流れは、墨汁とPBSを2:1で混合したものをシリンジポンプによって注入することで可視化した。
培養4日後、組織は4%パラフォルムアルデヒドによって固定し、パラフィンに包埋した。組織は5μmに薄切し、HE染色及び免疫染色に供した。HE染色については、薄切切片を脱パラフィン及び再水和し、マイヤーのヘマトキシリン及びエオシンY・エタノール溶液によって染色した。免疫染色については、再水和後の薄切切片をオートクレーブ装置により121℃、15分間処理し、抗原賦活化を行った。切片を超純水によって洗浄後、4%ブロックエースで20分間ブロッキングした。次に1%ブロックエースで希釈した1次抗体で一晩インキュベートした。本実施例では、1次抗体としてCD31(1:200,BBA7,R&D Systems,Inc.,Minneapolis,MN,USA),EpCAM(1:200,ab71916,Abcam PLC,Cambridge,UK),albumin(1:100,MAB1455,R&D Systems),CYP2D6(1:100,AV41675,Sigma-Aldrich)を用いた。切片をPBSで洗浄した後、2次抗体で1時間インキュベートした。さらにヘキストを用いて対比染色を行った。
培養7日後、Nucleospin RNAを用いてTotal RNAを抽出した。RNA-seq用のライブラリはTruseq stranded mRNAによって調製した。シーケンスはNovaSeq 6000によって行った。取得したデータは、STAR、RSEM、edgeRによって解析した。GOエンリッチメント解析はDAVIDによって行い、clusterProfilerによりグラフ化した。
主血管周辺の細胞密度分布の評価のため、固定した組織をOCTコンパウンドに包埋し、7umに薄切した。ヘキストで染色した切片の画像をImageJによって解析した。画像を閾値処理及びwatershed処理によって二値化した。次いで、主血管の上側及び下側の領域の細胞数をanalyze particle pluginによって計数した。
培養上清に含まれるアルブミンの定量のため、培地を4日後及び7日後に採取し、測定まで-80℃に保管した。サンプルは融解後、ヒトアルブミンELISAキットによって定量した。
管状肝組織の構築
ヒトの肝臓は肝動脈、門脈、中心静脈といった大血管及び類洞からなる脈管系を持つ。肝臓及び類洞の正確な構造を模すためには、収縮と血管新生を含む自己組織化プロセスが有力な手法である。そこで、肝がん由来細胞HepG2、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、間葉系幹細胞(MSC)をコラーゲンゲルに分散させた組織を作製することとした。大血管(主血管)様構造の作製及び維持のため、組織の収縮に抗して組織を把持するアンカー付きの管状コネクタを備えた灌流デバイスを用いた。また、このデバイスは大気プラズマ及びフィブロネクチンによってコーティングすることで細胞及びコラーゲンの接着性を向上させた。以上の方針に基づき、ヒト肝に類似した形態を有する管状の肝組織を設計した。この管状肝組織において、類洞様構造は細胞によって自己組織化され、さらに主血管様構造に接続されている。この主血管様構造は灌流デバイスに接続されているため、作製された肝組織は灌流可能である。
肝組織の培養条件を正確に決定するため、以下の三種類の培養条件を試行した:通常密度MSC(0.5×107cells/mL)・非灌流条件、低密度MSC(0.05×107cells/mL)・灌流条件、通常密度MSC(0.5×107cells/mL)・灌流条件。図3a-cに示すように、収縮量は低密度MSC・灌流条件において最小だったが、これはマトリゲル(登録商標)に細胞を播種した場合(前掲の非特許文献1参照)と同様に、コラーゲンに細胞を分散させた組織においてもMSCが収縮に寄与することを示している。また、この結果は、収縮が組織密度の向上と血管新生に重要であると考えられていることから、通常密度MSCが実験条件として好ましいことも示唆している。続いて、組織の構造をより詳細に調べるため、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色を行った。その結果、形態は異なるものの、両灌流条件において主血管周辺に細胞が凝集体を形成したことが観察された。一方、非灌流条件においてはそのような凝集体の形成は見られなかった。
灌流が肝組織のグローバルな遺伝子発現に与える影響を調べるため、培養7日後のサンプルについてRNA-seqを実施した(図5a-d)。その結果、954の発現変動遺伝子(調整後 p-value<0.05かつlog2[fold change]≧1の条件で定義)が検出された(図5a)。これらの発現変動遺伝子のうち、520が非灌流、434が灌流条件においてそれぞれ亢進されていた。特に灌流条件においては、血管新生に関わる遺伝子(VEGFC:血管内皮細胞増殖因子の一種、HGF:ヘパトサイト増殖因子、FGF5:線維芽細胞増殖因子の一種、CD34:血管新生を行う内皮細胞の発現する膜貫通型タンパク質、COL8A1:血管新生部位において発現する細胞外マトリクス)の亢進が見られた。これは灌流条件においてのみ類洞様構造の形成が観察されたという組織学的解析の結果と一致する。また、灌流が肝臓の機能に与える影響を調べるため肝臓関連遺伝子について調査を行った。肝臓関連遺伝子として、第1~3相の薬剤代謝に関わる遺伝子、及び肝機能を制御することが知られている核内レセプターの遺伝子の合計261個を先行文系に基づいて選んだ。その結果、大半の遺伝子(246個)についてはその発現レベルが維持されていることが分かった(図5b)。灌流条件で培養した組織から抽出したtotal RNAの量が非灌流の4.6倍多かったことを合わせて考慮すると、灌流は細胞の生存率だけでなく、代謝機能も維持することが示唆される。
さらに灌流の効果を調べるため、次にGene ontology(GO)エンリッチメント解析を行った(図5c,d)。予想どおり、血管新生に関わる生物学的プロセス((GO:0045766,GO:0001525)が灌流条件において亢進されていた。一方、非灌流条件では免疫反応及び炎症反応に関わるもの(GO:0006955,GO:0006954,GO:0006953)が亢進されていたことから、非灌流条件の組織は何らかの非健康的な状態にあったと考えられる。
類洞様構造の機能を試験するため、まず主血管に墨汁を注入し、組織への浸透を検証した(図6a-f)。図6aに示すように、注入した墨汁は主血管だけでなく、その周辺においても確認された。組織中での墨汁の局在をより詳細に解析するため、墨汁陽性の領域を明視野画像から閾値処理によって抽出し(図6b,c)、免疫染色像と重ね合わせた(図6d-f)。この結果、得られた重ね合わせ像によると、墨汁陽性の領域は主血管の端から160μmの距離まで到達していた。加えて、墨汁陽性の領域は、CD31陽性の類洞様構造と共局在していたことから、類洞様構造が主血管に接続していることが示唆された。さらに、主血管周辺の細胞密度分布を解析した(図6j)。解析対象領域の細胞数は灌流条件において22.9個だったが、これは非灌流条件の2.3倍であった。特に、細胞密度は主血管から200μm以内の領域において、非灌流のものと比較して有意に高かった。この細胞密度分布の違いから、灌流によって酸素及び栄養分が供給され、またその勾配が形成されたことが示唆される。最後に、培養4日後及び7日後において、ELISA法を用いて培養液に分泌されたアルブミンの濃度及び累積量を計測・算出した。図6kに示すように、培養7日後において、灌流条件のアルブミン量は非灌流の場合の5.5倍であった。以上のことから、物質交換(組織への物質流入及び組織からの物質流出)が主血管及び類洞様構造を通じた灌流によって達成されたと判断される。
本実施例においては、灌流デバイスと細胞株を分散したコラーゲンゲルとを組み合わせることで灌流可能な主血管様構造及び類洞様構造を有する管状肝組織を作製できることが示された。組織学的解析及び遺伝子発現解析により、主血管様構造を通じた灌流が類洞様構造の血管形成を促進すること、及び肝組織の生存率及び機能を維持することが示された。肝臓関連遺伝子の多くは、大きくは亢進されなかったが、灌流した組織から抽出されたtotal RNA量が、非灌流のものと比較して多かったことから、組織全体として考えれば、灌流条件の肝組織は非灌流のものに比べて高い機能を有すると認められた。遺伝子発現解析により、非灌流条件では炎症に関するGOターム(生物学的プロセス)が亢進されることが分かった。この結果は、非灌流の組織においては、酸素及び栄養の欠乏している深部の死細胞の刺激によって、生細胞が炎症状態になっている可能性を示唆している。また、物質交換の機能が細胞密度の計測及びアルブミン量の計測によって示された。なお、非灌流と灌流条件の比較しか行っていないものの、非灌流が流量ゼロの極限であることを考慮すれば、物質交換の効率は灌流の流量によって制御されると考えられる。さらに、本実施例では、肝組織を作製するための細胞としてHepG2細胞、HUVEC、MSCを使用したが、これらの細胞は容易に他種の実質細胞、内皮細胞、間葉系幹細胞に置換可能であることを考慮すれば、本実施例の手法は、一般的な主血管様構造及び毛細血管様構造を有する各種臓器・組織等の3次元組織モデルの構築に適用可能であると考えられる。また、使用する細胞として、株化細胞のほかに、初代細胞やiPS細胞由来の細胞を用いることでより生体に近い組織が構築できる可能性がある。さらには、細胞の密度及び比率、ECMゲルの濃度、灌流の流量、培地組成といった培養に関するパラメータを、目的の各種臓器・組織により適宜設定することも上記可能性を高める要因になると考えられる。
Claims (7)
- 主血管様構造及び類洞様構造を有する3次元肝組織モデルの作製方法であって、
(A)培養容器の側面に、対向するように、該容器の外部から内部に通じる管状コネクタを設け、一方のコネクタから他方のコネクタの管内に、主血管様構造を形成するための棒状部材を通す工程(A工程)、
(B)A工程後の培養容器内に、肝細胞、血管系細胞、及び間葉系細胞を含むコラーゲンゲルを充填する工程(B工程)、
(C)棒状部材を管状コネクタから抜去する(C工程)、
(D)C工程の前又は後に、培養容器中の前記コラーゲンゲル全体が浸漬するように培地を投入する、又は培養容器中の前記コラーゲンゲル全体を培地中に浸漬させる工程(D工程)、
(E)棒状部材を抜去した管状コネクタから培地を灌流させる工程(E工程)、並びに
(F)D工程及びE工程により、前記コラーゲンゲル中の肝細胞、血管系細胞、及び間葉系細胞を培養する工程(F工程)
を含む、前記作製方法。 - A工程において、管状コネクタを設けた培養容器の表面に、大気プラズマ処理、及び/又はフィブロネクチンによるコーティング処理を行う、請求項1に記載の作製方法。
- 管状コネクタは、培養容器の内部側の端にアンカー構造が設けられている、請求項1又は2に記載の作製方法。
- 肝細胞が、肝がん由来細胞であるHepG2細胞であり、血管系細胞が、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)であり、間葉系細胞が、間葉系幹細胞(MSC)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の作製方法。
- 前記3次元肝組織モデルが、下記(a)~(d)のうちの少なくとも1つの特徴を有するものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の作製方法。
(a)前記主血管様構造が、灌流可能なものである、及び/又は、外部の灌流デバイスに接続されている又は接続可能なものである;
(b)前記類洞様構造の一部が、主血管様構造に接続されている;
(c)コラーゲンゲル中に分散した肝細胞、血管系細胞、及び間葉系細胞を培養して作製されたものである;並びに
(d)前記肝組織モデルを貫通する主血管様構造の周囲に、類洞様構造を含む肝組織が形成された、管状の組織である。 - B工程において、前記コラーゲンゲルに含まれる細胞の密度は、肝細胞の密度が3×10 5 ~3×10 8 cells/mLであり、血管系細胞の密度が3×10 8 cells/mL以下であり、及び/又は、間葉系細胞の密度が0.5×10 8 cells/mL以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の作製方法。
- E工程において、前記培地の灌流は、培地の流量を、シアストレスが1×10 -8 ~10 Paとなるように調整して行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の作製方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019184027 | 2019-10-04 | ||
JP2019184027 | 2019-10-04 | ||
PCT/JP2020/037931 WO2021066196A1 (ja) | 2019-10-04 | 2020-09-30 | 3次元肝組織モデル |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2021066196A1 JPWO2021066196A1 (ja) | 2021-04-08 |
JPWO2021066196A5 JPWO2021066196A5 (ja) | 2022-06-14 |
JP7265291B2 true JP7265291B2 (ja) | 2023-04-26 |
Family
ID=75338233
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021551677A Active JP7265291B2 (ja) | 2019-10-04 | 2020-09-30 | 3次元肝組織モデル |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7265291B2 (ja) |
WO (1) | WO2021066196A1 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20220411750A1 (en) * | 2019-11-19 | 2022-12-29 | Toppan Inc. | Cell structure, production method thereof, and method for evaluating hepatotoxicity of substance to be tested |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014223061A (ja) | 2013-04-24 | 2014-12-04 | 株式会社Lsiメディエンス | 肝細胞培養方法 |
JP2017522009A (ja) | 2014-06-03 | 2017-08-10 | ユーシーエル ビジネス ピーエルシー | ヒト肝臓スキャフォールド |
CN108753686A (zh) | 2018-06-22 | 2018-11-06 | 北京达博威迎医药技术有限公司 | 组织工程肝脏模型、其构建方法及其应用 |
WO2019054288A1 (ja) | 2017-09-13 | 2019-03-21 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 細胞培養装置および細胞培養方法 |
-
2020
- 2020-09-30 JP JP2021551677A patent/JP7265291B2/ja active Active
- 2020-09-30 WO PCT/JP2020/037931 patent/WO2021066196A1/ja active Application Filing
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014223061A (ja) | 2013-04-24 | 2014-12-04 | 株式会社Lsiメディエンス | 肝細胞培養方法 |
JP2017522009A (ja) | 2014-06-03 | 2017-08-10 | ユーシーエル ビジネス ピーエルシー | ヒト肝臓スキャフォールド |
WO2019054288A1 (ja) | 2017-09-13 | 2019-03-21 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 細胞培養装置および細胞培養方法 |
CN108753686A (zh) | 2018-06-22 | 2018-11-06 | 北京达博威迎医药技术有限公司 | 组织工程肝脏模型、其构建方法及其应用 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2021066196A1 (ja) | 2021-04-08 |
JPWO2021066196A1 (ja) | 2021-04-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Paish et al. | A bioreactor technology for modeling fibrosis in human and rodent precision‐cut liver slices | |
Miserocchi et al. | Management and potentialities of primary cancer cultures in preclinical and translational studies | |
JP6775157B2 (ja) | 三次元組織体及びその製造方法、並びに、三次元組織体の形成剤 | |
Kunz-Schughart et al. | Potential of fibroblasts to regulate the formation of three-dimensional vessel-like structures from endothelial cells in vitro | |
US9107910B2 (en) | Isolated liver stem cells | |
US20200199541A1 (en) | Blood vessel organoid, methods of producing and using said organoids | |
Mori et al. | Fabrication of perfusable vascular channels and capillaries in 3D liver-like tissue | |
Hess et al. | 3D versus 2D cell culture: implications for electron microscopy | |
CN108753686B (zh) | 组织工程肝脏模型、其构建方法及其应用 | |
CN108753687B (zh) | 微肝组织培养模型、其构建方法及其应用 | |
CN111417716A (zh) | 由多潜能干细胞进行的立体器官的构建 | |
JP7265291B2 (ja) | 3次元肝組織モデル | |
AU2018279738B2 (en) | Methods of enhancing development of renal organoids and methods of using the same | |
CN113631034A (zh) | 基质组合物 | |
WO2021221179A1 (ja) | ヒト膵癌オルガノイドを用いたマウスモデルの樹立 | |
EP4163364A1 (en) | Cell culture method | |
Sämfors et al. | Design and biofabrication of a leaf-inspired vascularized cell-delivery device | |
JP7228269B2 (ja) | 細胞塊融合法 | |
US20240026261A1 (en) | Engineering of organoid culture for enhanced organogenesis in a dish | |
Ogoke | Bioengineered 3D Models of Hepatic Cell Migration for Applications in Liver Regenerative Medicine | |
Takahashi et al. | Novel methods to study angiogenesis using tissue explants | |
CN115747164A (zh) | 一种肾癌类器官的培养方法、培养装置及其应用 | |
Riemenschneider | Development of Pre-Vascularized Tissues Containing Aligned and Perfusable Microvessels | |
JP2017085945A (ja) | 3次元培養による肝臓組織の構築方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20220406 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20220406 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20220425 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20230404 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20230407 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7265291 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |