以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1に示された車両10はフロントガラス11を有している。また、車両10は、フロントガラス11を払拭するワイパ装置12を有している。ワイパ装置12は、ピボット軸13を中心として揺動するワイパアーム14と、ピボット軸15を中心として揺動するワイパアーム16とを有する。ワイパアーム14の自由端にはワイパブレード17が取り付けられており、ワイパアーム16の自由端にはワイパブレード18が取り付けられている。また、ワイパ装置12は、ワイパアーム14,16を駆動する動力源としてブラシレスモータ19を有している。ブラシレスモータ19の動力は、レバー、リンク等により構成された動力伝達機構20を経由して、ワイパアーム14,16に個別に伝達されるように構成されている。
ブラシレスモータ19は、図2、図3、図4に示すように構成されている。本実施形態におけるブラシレスモータ19は、一例として3相4極形のものが挙げられている。ブラシレスモータ19は、ステータ21及びロータ22を有する。また、ブラシレスモータ19は、有底円筒形状のケース23を有しており、ケース23の内周にステータ21が固定して設けられている。ステータ21は、図4に示すように、3相、具体的には、U相、V相、W相の電機子コイル21a,21b,21cを有する。
この図4では、3相の電機子コイルが、Y結線、つまり、三相の電機子コイルを一端の中性点で接続する結線方法により接続してある。また、ブラシレスモータ19は、各電機子コイルが、正極及び負極の両方として機能するバイポーラ駆動型のモータである。
ロータ22は、ステータ21の内側に設けられており、ロータ22は、ロータ軸22aと、ロータ軸22aに取り付けた4極の永久磁石22bとを有する。ケース23内には複数の軸受(図示せず)が設けられており、ロータ軸22aは、複数の軸受により回転可能に支持されている。
また、ブラシレスモータ19は、中空のフレーム24を有しており、フレーム24及びケース23は、図示しない締結部材により固定されている。ロータ軸22aは、長さ方向の略半分はケース23の内部に配置されており、残りの略半分はフレーム24内に配置されている。ロータ軸22aのうちフレーム24内に配置された部分の外周には、ウォーム22cが形成されている。フレーム24内にはウォームホイール25が設けられている。このウォームホイール25の外周にはギヤ25aが形成されており、ギヤ25aとウォーム22cとが噛合されている。さらに、ロータ軸22aのうちフレーム24内に配置された箇所には、センサマグネット38が取り付けられている。センサマグネット38は、ロータ軸22aと一体回転する。センサマグネット38は、ロータ軸22aの円周方向に沿って、N極とS極とが交互に並ぶように着磁されている。
また、ウォームホイール25は、出力軸26と一体回転するように構成されている。ウォーム22c及びギヤ25aは、本実施形態における減速機構27を構成している。この減速機構27は、ロータ22の動力を出力軸26に伝達する際に、ロータ22の回転数(入力回転数)よりも出力軸26の回転数(出力回転数)を低くする機構である。さらに、図2において、フレーム24の上部には、図示しない軸孔が設けられている。出力軸26におけるウォームホイール25が固定された端部とは反対側の端部は、フレーム24の軸孔を経由して外部に露出している。出力軸26におけるフレーム24の外部に露出した部分には、図1のように動力伝達機構20が連結されている。
フレーム24における軸孔とは反対側の部分には開口部24aが設けられている。この開口部24aは、フレーム24の内部にウォームホイール25等を取り付けるために形成されたものである。また、開口部24aを塞ぐアンダーカバー28が設けられている。アンダーカバー28はトレイ形状を有しており、そのアンダーカバー28とフレーム24とにより取り囲まれた空間に、制御基板29が設けられている。図2においては、制御基板29がアンダーカバー28に取り付けられた例が示されている。
この制御基板29には、ブラシレスモータ19を制御する制御部としての駆動装置33が、図4のように設けられている。駆動装置33は、各電機子コイル21a,21b,21cに対する通電を制御するインバータ回路30を有する。インバータ回路30は、図示しない端子に接続されている。また、フレーム24にはコネクタ(図示せず)が設けられており、外部電源31に接続された電線のソケット(図示せず)をコネクタに装着することにより、外部電源31とインバータ回路30とが接続される。外部電源31は、車両10に搭載されたバッテリまたはキャパシタ等である。
また、インバータ回路30は、外部電源31と電機子コイル21a,21b,21cとを接続及び遮断するスイッチング素子30aを備えている。このスイッチング素子30aは、例えば、FET等の半導体素子により構成されている。より具体的には、U相、V相、W相に対応し、外部電源31の正極に接続される3つの正極側のスイッチング素子と、U相、V相、W相に対応し、外部電源31の負極側に接続される3つの負極側のスイッチング素子とを含む。スイッチング素子は合計で6個設けられている。
スイッチング素子30aが接続(オン)されると、外部電源31から各電機子コイル21a,21b,21cに電流が供給される。これに対して、スイッチング素子30aが遮断(オフ)されると、外部電源31から各電機子コイル21a,21b,21cに電流は供給されない。さらに、インバータ回路30には、スイッチング素子30aのオン及びオフを切り替え制御する機能を有する制御回路(コンロトーラ)32が接続されている。
この制御回路32は、CPU、RAM、ROM等を備えた公知のマイクロコンピュータである。また、駆動装置33は、PWM信号発生回路34を有しており、PWM信号発生回路34の信号は、制御回路32に入力されるように構成されている。この制御回路32は、3つの負極側スイッチング素子を制御する駆動信号を出力し、その駆動信号にPWM信号が重畳される。つまり、3つの負極側スイッチング素子は、PWM制御により駆動されて各電通区間において断続的にオンされる。そして、3つの負極側スイッチング素子が別個にオンされる割合、すなわち、デューティ比を制御することにより、各電機子コイル21a,21b,21cに供給する電流値が制御されるように構成されている。つまり、電機子コイル21a,21b,21cに給電される通電期間を、通電可能な全期間に対して0%〜100%の間で増減することができる。さらに、制御回路32は、ブラシレスモータ19の起動時に実行する制御のデータ、プログラム等を記憶している。ブラシレスモータ19の起動時とは、停止しているブラシレスモータ19を回転させる初期のことである。
さらにまた、各電機子コイル21a,21b,21cの非結線端には、誘起電圧検出部35が接続されている。誘起電圧検出部35は、ロータ22の回転に伴い各電機子コイル21a,21b,21cに生じる誘起電圧を検出するセンサであり、誘起電圧検出部35の検出信号は、制御回路32に入力される。制御回路32は、誘起電圧検出部35から入力される検出信号に基づいて、ロータ22の回転位置(回転方向の位相)を推定する処理を行う。
さらに、本実施形態におけるブラシレスモータ19は、スイッチング素子30aのオン及びオフを切り替え制御して、電機子コイル21a,21b,21cに対する通電の向きを反転させることにより、ロータ22を正逆に回転させることが可能である。スイッチング素子30aがオンされると、外部電源31と各電機子コイル21a,21b,21cとが接続され、スイッチング素子30aがオフされると、外部電源31と各電機子コイル21a,21b,21cとが遮断される。
さらに、フレーム24の内部には、出力軸26の回転数または絶対位置の少なくとも一方を検出する出力軸センサ36が設けられている。絶対位置とは、基準位置に対する出力軸26の回転角度を意味する。基準位置は、360度の範囲内のうち、任意の位置に定めればよい。この出力軸センサ36の検出信号は、制御回路32に入力されるようになっている。さらに、制御基板29にはホールIC39が取り付けられている。ホールIC39は、センサマグネット38と非接触で対向して固定されている。ホールICは、ロータ軸22aの回転方向に沿って複数個、例えば3個設けることができる。
ホールIC39は、ロータ22の回転に伴い、センサマグネット38の磁極の変化によりスイッチング動作し、スイッチング信号(オン・オフ信号)を発生する。制御回路32は、ホールIC39のスイッチング信号に基づいて、ロータ22の回転数及び回転速度を検出することができる。さらに、車両10の室内にはワイパスイッチ37が設けられており、ワイパスイッチ37の操作信号が、制御回路32に入力されるように構成されている。さらにまた、車速センサ40が設けられており、車速センサ40の信号が制御回路32に入力される。車速センサ40は、車両10の走行速度を検知するセンサである。
ワイパ装置12においては、降雨量、降雪量等の条件に基づいて、運転者の意思でワイパスイッチ37を操作し、ワイパアーム14,16の払拭速度を切り替えることができる。運転者は、降雨量、降雪量が少ないとき、ワイパスイッチ37を操作して、ワイパアーム14,16を予め定められた低速で動作させる低速払拭モードを選択することができる。これに対して、運転者は、降雨量、降雪量が多いとき、ワイパスイッチ37を操作して、ワイパアーム14,16を、前記低速よりも高速で動作させる高速払拭モードを選択することができる。運転者は、降雨量、降雪量が多い、少ないを自分の主観で判断するのであり、多い、少ないを区別する基準があるわけではない。そして、制御回路32には、低速払拭モード及び高速払拭モードについて、スイッチング素子30aを制御するパターン、データ、演算式等が予め記憶されている。
本実施形態におけるブラシレスモータ19の制御を説明する。ワイパスイッチ37が操作されて低速モードが選択されているとき、誘起電圧検出部35の検出信号は、制御回路32に入力される。制御回路32は、誘起電圧検出部35の検出信号に基づいて、ロータ22の回転位置(回転方向の角度)を推定し、ロータ22の回転位置に基づいた通電制御を行う。つまり、各相の正極側スイッチング素子を、電気角、つまり、通電角で所定の角度、例えば120度ずつ順次オンするとともに、正極側スイッチング素子とは異なる相の負極側スイッチング素子を通電角で120度ずつ順次オンして、各相の電機子コイル21a,21b,21cに対する通電を切り替えて相電流を転流させる。
上記の制御が繰り返されるとステータ21により回転磁界が形成され、ロータ22が回転する。ブラシレスモータ19は、スイッチング素子30aのオン及びオフを切り替え制御して、電機子コイル21a,21b,21cに対する通電の向きを反転させることにより、ロータ軸22aを正回転・停止・逆回転させることができる。ワイパアーム14,16は、ロータ軸22aの動力で所定角度の範囲内で往復動作し、ワイパブレード17,18によりフロントガラス11が払拭される。
また、ブラシレスモータ19は、電流値が高くなることに伴い回転数が上昇する特性を有する。さらに、ブラシレスモータ19は、回転数が上昇することに伴いトルクが低下する特性を有する。低速払拭モードが選択されているときは、弱め界磁制御を行うことなく、デューティ比の制御を行うことにより、ロータ22の実回転数を要求されている回転数に近づけることができる。また、低速払拭モードが選択されているときは、電機子コイル21a,21b,21cへの通電タイミングは、予め定められた固定値が用いられる。
一方、高速払拭モードが選択されたときは、電機子コイル21a,21b,21cに供給する電流値を変えず、弱め界磁制御を行う。弱め界磁制御は、電機子コイル21a,21b,21cに電流を供給することにより形成される磁界を、なるべく弱くする制御である。弱め界磁制御を具体的に説明すると、電機子コイル21a,21b,21cへの通電タイミングを、低速払拭モードが選択されているときに比べて、30度進角(進み位相)とする制御である。すなわち、高速払拭モードが選択されたときに電機子コイル21a,21b,21cで形成される回転磁界は、低速払拭モードが選択されたときに電機子コイル21a,21b,21cで形成される回転磁界よりも弱くなる。この弱め界磁制御を行うと、電機子コイル21a,21b,21cに生じる逆起電力が減少し、ロータ22の回転数が上昇する。前記進角は、ロータ22の回転方向における電機子コイルと永久磁石との相対的な位置関係を通電角で表したものである。
図5は、ブラシレスモータ19の特性を示す線図である。図5においては、縦軸にブラシレスモータ19の回転数が示され、横軸にブラシレスモータ19のトルクが示されている。また、図5に示された破線は、低速払拭モードに対応する低速用特性の一例であり、図5に示された実線は、高速払拭モードに対応する高速用特性の一例である。
本実施形態のブラシレスモータ19は、その定格を設定するにあたり、図5の低速用特性に対応する回転数及びトルクを得ることができるように、例えば実線で示す位置に設定特性が存在している。このため、ワイパスイッチ37の操作により低速払拭モードが選択されているときは、設定特性以下の範囲内で、要求されている回転数及びトルクを得ることができる。
これに対して、ワイパスイッチ37の操作により高速払拭モードが選択されて、要求されるトルク及び回転数が設定特性を超えたときは、制御回路32が弱め界磁制御を実行することにより、設定特性を超える回転数及びトルクの範囲を得ることができる。これにより、ブラシレスモータ19の特性は、見かけ上、図5に二点鎖線で示す位置にあることと同等となる。すなわち、ブラシレスモータ19は、設計上、低速払拭モードを基準として定格を決定することができ、ブラシレスモータ19の体格をなるべく小さくすることができる。そして、電流値を変えずにブラシレスモータ19の回転数を上昇させて、トルクを上昇させることができるということは、トルク定数が相対的に大きくなることを意味する。言い換えれば、本実施形態のブラシレスモータ19は、より少ない消費電力でなるべく高トルクを発生することができ、モータ効率が向上する。
また、ブラシレスモータ19の特性を、図5の低速用特性とすればよいから、電機子コイルの抵抗値を大きくすることができ、制御不能時の高速電流を小さくすることにより、減速機構の減速比を大きくしても、同じ容量のスイッチング素子を使用することができる。したがって、スイッチング素子を小型化できる。
図6は、通電タイミングとしての進角と、ブラシレスモータ19の回転数との関係を示す線図である。図6では、横軸に電流が示され、縦軸に回転数が示されている。図6のように、進角30度であるときの回転数の方が、進角0度であるときの回転数よりも高い。進角0度は、低速払拭モードで説明した通電タイミングの固定値である。また、図7は、通電タイミングとしての進角と、ブラシレスモータ19の効率との関係を示す線図である。図7では、横軸に電流が示され、縦軸に効率が示されている。図7のように、進角30度であるときの効率の方が、進角0度であるときの効率よりも高い。
また、一般的に、車両用のワイパ装置は、低速払拭モードの方が高速払拭モードよりも、使用頻度が高い。このため、本実施形態のブラシレスモータ19をワイパ装置12に用いると、低速払拭モードが選択されたときに、消費電力を低減する効果が大きい。
また、本実施形態のブラシレスモータ19は、弱め界磁制御を行うときに、誘起電圧検出部35の検出信号に基づいて、ロータ22の回転位置を推定することができる。さらに、誘起電圧検出部35の検出信号に代えて、出力軸センサ36の検出信号、及び減速機構27の減速比に基づいて、ロータ22の回転位置を推定することもできる。このように、本実施形態のブラシレスモータ19は、予め設けられている誘起電圧検出部35、出力軸センサ36を利用して、ロータ22の回転位置を推定することができる。
つまり、本実施形態のブラシレスモータ19は、ロータ22の回転位置を検出するセンサを専用で設ける必要がない、センサレス構造である。したがって、ブラシレスモータ19の部品点数及び製造コストを低減することができる。
さらに、本実施形態のブラシレスモータ19は、弱め界磁制御を行うことにより、高速用特性に対応する回転数及びトルクを得ることができるとともに、減速機構27が設けられている。したがって、ブラシレスモータ19は、ワイパ装置12のワイパアーム14,16の作動条件に適した特性、つまり、回転数、トルクとなるように、減速機構27の減速比を設定することができる。減速機構27の減速比は、出力軸26の回転数をロータ22の回転数で除算した値であり、減速機構27の減速比を大きくするほど、出力軸26の回転数が低下する。すなわち、減速機構27が設けられていることにより、ロータ22のトルクに対して、出力軸26のトルクを増幅することができる。
さらにまた、本実施形態のブラシレスモータ19は、ロータ22の回転位置の推定結果に基づいて、ブラシレスモータ19の正逆転時における進角制御を最適化することができる。さらにまた、本実施形態のブラシレスモータ19は、ブラシ、コミュテータ(整流子)等が設けられていないため、ブラシとコミュテータとの摺動によるフリクショントルクの発生もなく、モータの効率低下、ブラシの温度上昇を防止し、モータ出力が制限されることを回避できる。さらに、本実施形態のブラシレスモータ19は、ブラシがあることに起因するノイズの発生、作動音の発生を防止でき、静粛性を確保できる。
さらにまた、本実施形態のブラシレスモータ19は、制御基板29及び減速機構27が、共にフレーム24及びアンダーカバー28により取り囲まれた空間内に配置された構造、つまり、機電一体の構造である。したがって、ブラシレスモータ19全体をコンパクトに構成することができ、車体へブラシレスモータ19を取り付ける際のレイアウト性が向上する。
さらにまた、本実施形態のブラシレスモータ19は、高速払拭モードが選択されて弱め界磁制御を行うときに、制御回路32は、ホールIC39のオン・オフ信号に基づいてロータ22の回転数を検出する制御を行うとともに、電機子コイル21a,21b,21cへの通電タイミングを通電角で30度進角させることにより、ロータ22の回転数を制御することができる。
特に、ワイパ装置12においては、ワイパアーム14,16が初期位置から動作を開始した時点から、反転位置を経由して初期位置に戻るまでの所要時間は、一定に保たれることが望ましい。これに対して、車速による風の抵抗、ワイパブレード17,18の払拭抵抗等の条件により、ワイパアーム14,16の実際の払拭速度が変化して、所要時間が変化する可能性がある。そこで、弱め界磁制御と並行して、デューティ比を変化させる制御を行うこともできる。具体的に説明すると、制御回路32は、ホールIC39の信号に基づいて、ワイパアーム14,16の実際の払拭速度を間接的に求める。そして、制御回路32は、ワイパアーム14,16の実際の払拭速度を目標払拭速度に近づけるように、フィードバック制御を行うにあたり、デューティ比を制御する。このようにすると、前回の通電タイミング制御を行ってから次回の通電タイミング制御を行うまでの間、デューティ比の制御を行うことにより、ワイパアーム14,16の払拭速度をきめ細かく制御することができる。
また、ワイパ装置は、フロントガラスに限らずリヤガラスを払拭するものであってもよい。また、ワイパ装置は、出力軸を支点としてワイパアームが揺動する構造でもよい。さらにまた、電機子コイルの数、永久磁石の数は任意に変更可能である。さらに、ワイパ装置は、2本のワイパアームを、それぞれ別個のブラシレスモータにより駆動する構成であってもよい。また、本実施形態のブラシレスモータは、永久磁石を鉄心に埋め込んだ構造のIPM(Interior Permanent Magnet )型モータであってもよい。
さらに、ワイパスイッチにより選択されるモードは、低速払拭モード及び高速払拭モードの2種類に限らず、3種類以上あってもよい。例えば、ロータの回転数を制御するモードは、低速払拭モード、中速払拭モード、高速払拭モードの3種類あってもよい。ここで、中速払拭モードにおけるロータの回転数は、低速払拭モードにおけるロータの回転数よりも高く、高速払拭モードにおけるロータの回転数よりも低い。
そして、回転数制御部は、3種類の払拭モードのうち、低速払拭モードが選択されたときに、電機子コイルへ予め定められた通電タイミングで電流を供給し、かつ、スイッチング素子のオン割合であるデューティ比を制御してロータの回転数を制御する一方、中速払拭制御モードが選択されたときには、低速払拭制御モードが選択されたときの通電タイミングよりも進角させた通電タイミングで電機子コイルに電流を供給することにより、電機子コイルにより形成される回転磁界を、低速払拭制御モードが選択されたときよりも弱くする弱め界磁制御を行ってロータの回転数を制御することができる。このように、低速払拭モードと中速払拭モードとで、ロータの回転数を異ならせる場合は、低速払拭モードが、本発明における第1の制御モードに相当し、中速払拭モードが、本発明における第2の制御モードに相当する。
一方、回転数制御部は、3種類の払拭モードのうち、中速払拭モードが選択されたときに、電機子コイルへ予め定められた通電タイミングで電流を供給し、かつ、スイッチング素子のオン割合であるデューティ比を制御してロータの回転数を制御する一方、高速払拭制御モードが選択されたときには、中速払拭制御モードが選択されたときの通電タイミングよりも進角させた通電タイミングで電機子コイルに電流を供給することにより、電機子コイルにより形成される回転磁界を、中速払拭制御モードが選択されたときよりも弱くする弱め界磁制御を行ってロータの回転数を制御することもできる。このように、中速払拭モードと高速払拭モードとで、ロータの回転数を異ならせる場合は、中速払拭モードが、本発明における第1の制御モードに相当し、高速払拭モードが、本発明における第2の制御モードに相当する。
さらに、本実施形態のブラシレスモータ19は、ロータ軸22aの出力、すなわち、回転数及びトルクを制御するにあたり、第1の制御と第2の制御とを切り替えることができる。
第1の制御及び第2の制御の例を図8により説明する。図8に示された0°〜360°の角度は、電気信号の1周期内における通電期間を表す通電角である。正は正極からの通電を表し、負は負極からの通電を表す。図8(A)は、第1の制御の一例である。U相では、0°を基準位置として、30°で正極から通電が開始され、通電角で120°の範囲で通電が維持された後に正極からの通電が終了する。また、正極からの通電が終了してから所定の通電角を空けて、負極からの通電が開始され、通電角で120°の範囲で通電が維持された後に通電が終了する。
一方、V相では、U相の正極からの通電が終了した時点から、正極からの通電が開始され、通電角120°の範囲で通電が維持された後に、通電が終了する。また、V相では、U相の負極からの通電が終了した時点から、負極からの通電が開始され、通電角120°の範囲で負極からの通電が維持された後、負極からの通電が終了する。さらに、W相では、V相の正極からの通電が終了した時点から、正極からの通電が開始され、通電角120°の範囲で正極からの通電が維持された後に、正極からの通電が終了する。また、W相では、V相の負極からの通電が終了した時点から、負極からの通電が開始され、通電角120°の範囲で負極からの通電が維持された後に、負極からの通電が終了する。このように、第1の制御では、正極からの通電及び負極からの通電が維持される範囲、つまり、通電角は、いずれも120°である。
つぎに、第2の制御の一例を示す図8(B)に基づいて説明する。U相では、0°で正極からの通電が開始され、正極からの通電は通電角で120°+αの範囲で維持された後、正極からの通電が終了する。また、正極からの通電が終了した後、負極からの通電が開始され、負極からの通電が通電角で120°+αの範囲で維持された後、負極からの通電が終了する。
V相では、U相の正極から通電されている間に、正極からの通電が開始される。また、正極からの通電は通電角で120°+αの範囲で維持された後、正極からの通電が終了する。さらに、正極からの通電が終了した後、かつ、U相の負極からの通電が維持されている時点で、負極からの通電が開始されている。負極からの通電は、通電角で120°+αの範囲で維持された後、負極からの通電が終了する。
W相では、U相の負極から通電され、かつ、V相の正極から通電されている間に、正極からの通電が開始される。また、正極からの通電は通電角で120°+αの範囲で維持された後、正極からの通電が終了する。さらに、正極からの通電が終了した後、かつ、U相の正極からの通電が維持され、かつ、V相の負極からの通電が維持されている間に、負極からの通電が開始されている。負極からの通電は、通電角で120°+αの範囲で維持された後、負極からの通電が終了する。図8(B)では、U相とV相、V相とW相、W相とV相とで、正極の通電のそれぞれが重なる部分はαの範囲となり、負極の通電についても同様である。
さらに、第2の制御の他の例を、図8(C)に基づいて説明する。U相では、0°を超え、かつ、30°未満の通電角から正極からの通電が開始され、正極からの通電は通電角で120°+αの範囲で維持された後、正極からの通電が終了する。なお、U相の負極における通電制御、V相の正極及び負極における通電制御、W相の正極及び負極における通電制御は、図8(B)と同じである。また、通電角120°+αは、通電角が120°を超える値であることを意味する。本実施形態では、ブラシレスモータ19の通電角を、120°以上であり、かつ、180°以下の範囲で制御する。
このように、第2の制御例における通電角は、第1の制御例における通電角よりも大きい。すなわち、第1の制御と第2の制御とは、互いに通電角が異なる。図8(C)では、U相とV相、V相とW相、W相とV相とで、正極の通電のそれぞれが重なる部分はαの範囲となり、負極の通電についても同様である。
そして、第1の制御または第2の制御と併せて、前述したデューティ比の制御が行われて、ロータ軸22aの回転数が制御される。図9は、ブラシレスモータ19の特性を示す線図であり、ブラシレスモータ19の単体特性は実線で示されている。そして、ブラシレスモータ19の通電角を制御することで、見掛け上の特性を一点鎖線で示す位置とすることができる。単体特性は、車両10の実車速が基準車速以下であるときの目標出力、つまり、低速用特性を満足する特性である。見掛け上の特性は、車両10の実車速が基準車速を超えたときの目標出力、つまり、高速用特性を満足する特性である。目標出力は、ロータ軸22aの回転数及びトルクで表される。目標出力を決定する条件は、ワイパスイッチ37の操作信号、車両10の走行速度、ワイパアーム14,16の動作位置等を含む。
本実施形態のブラシレスモータ19では、目標出力が単体特性以下の特性である場合は、第1の制御を実行し、かつ、デューティ比を制御することによりロータ軸22aの回転数を低下させ、低速用特性を得ることができる。これに対して、目標出力が単体特性を超える特性である場合は、第2の制御を実行してロータ軸22aの回転数を上昇させ、かつ、デューティ比を制御することにより、高速用特性を得ることができる。このため、ブラシレスモータ19を設計上、単体特性を基準として定格を決定することができ、ブラシレスモータ19の体格をなるべく小さくすることができる。ブラシレスモータ19の電流値を変えずに通電角を広くすることで、ロータ軸22aの回転数を上昇させて、トルクを上昇させることができるということは、トルク定数が相対的に大きくなることを意味する。言い換えれば、本実施形態のブラシレスモータ19は、より少ない消費電力でなるべく高トルクを発生することができ、モータ効率が向上する。さらに、ブラシレスモータ19の出力が一定であると仮定すれば、消費電力を低く設定できる。
また、ブラシレスモータ19の定格をなるべく小さくすることができるということは、電機子コイル21a,21b,21cの太さをなるべく細くすることを意味する。その結果、ステータ21に巻き掛けられる電機子コイル21a,21b,21cのターン数が増え、ブラシレスモータ19としての電気抵抗が相対的に大きくなる。このため、例えば、駆動装置33が故障したときにスイッチング素子30aに流れる電流、即ち、許容電流を、相対的に小さくすることができる。スイッチング素子30aにおける許容電流が相対的に小さくなるということは、駆動装置33の小型化に寄与する。よって、ブラシレスモータ19の小型化に寄与し、車両10のエンジンルーム内にブラシレスモータ19を配置するにあたり、レイアウト性が向上するメリットがある。
ここで、ブラシレスモータ19の特性と通電角との関係の一例を、図10に基づいて説明する。ブラシレスモータ19の特性は回転数及びトルクで表されている。図10では、通電角として120°、135°、150°、165°が示されている。図10に示すように、ブラシレスモータ19は、トルクが同じであるとすれば、通電角が大きいほど、回転数が高くなる特性を有する。
さらに、本実施形態のブラシレスモータ19は、ロータ軸22aの出力、すなわち、回転数及びトルクを制御するにあたり、第1の制御または第2の制御を実行中に、進角や通電角の値を切り替えることができる。第1の制御または第2の制御の実行中に進角や通電角の値を切り替える条件には、例えば、車両10の走行速度が含まれる。
制御回路32には、第1の制御または第2の制御の実行中、進角や通電角の値を走行速度に基づいて切り替えるために、しきい値となる基準車速が、予め記憶されている。そして、車速センサ40の信号により検知される実車速が、基準車速以下となった場合、もしくは基準車速を超えた場合、第1の制御または第2の制御の実行中に、進角や通電角の値の切り替えが行われる。
次に、第1の制御及び第2の制御を実行するために用いるマップの一例を、図11(A)により説明する。ここでは、第1制御例が実行されると、1分間あたりにおけるワイパアーム14,16の払拭回数を40回とする。第2制御例が実行されると、1分間あたりにおけるワイパアーム14,16の払拭回数を60回とする。ワイパアーム14,16が作動を開始してから、停止するまでの所要時間は、往路及び復路共に、第1の制御が0.75秒であり、第2の制御が0.5秒である。
第1の制御では、時刻t2以前で出力軸回転数が上昇され、時刻t2から時刻t4の間、出力軸回転数が一定に制御され、時刻t4から0.75秒までの間、出力軸回転数を低下される。
第2の制御では、時刻t1以前で出力軸回転数が上昇され、時刻t1から時刻t3の間、出力軸回転数が一定に制御され、時刻t3から0.5秒までの間、出力軸回転数を低下される。第2の制御が実行されて、時刻t2から時刻t4の間における出力軸回転数は、第1の制御が実行されて、時刻t1から時刻t3の間における出力軸回転数よりも高い。なお、時刻t3と時刻t4との間に0.5秒があり、0.5秒と0.75秒との間に、時刻t4がある。
さらに、第1の制御及び第2の制御を実行するために用いるマップの一例を、図11(B)により説明する。図11(B)は、出力軸回転数とワイパアーム14,16の作動角との関係を示す。
第1の制御では、作動角θ1未満で出力軸回転数が上昇される。また、第1の制御では、作動角θ1以上、かつ、作動角θ未満では、出力軸回転数が一定に制御される。さらに、第1の制御では、作動角θ2以上で出力軸回転数が低下される。
第2の制御では、作動角θ1未満で出力軸回転数が上昇される。また、第2の制御では、作動角θ1以上、かつ、作動角θ未満では、出力軸回転数が一定に制御される。さらに、第2の制御では、作動角θ2以上で出力軸回転数が低下される。なお、作動角θ1は作動角θ2よりも小さい。
第2の制御が実行されるときの出力軸回転数は、ワイパアーム14,16の作動角に関わりなく、第1の制御が実行されるときの出力軸回転数よりも高い。、
次に、第1の制御または第2の制御の実行中に、進角や通電角の値の切り替えを実行する条件の例を順次説明する。
図12は、ホールIC39の検知信号から求めたロータ軸22aの作動角に基づいて、第1の制御または第2の制御の実行中における進角や通電角の値の切り替えを実行する例を示す。図12では、縦軸にロータ軸22aの回転数が示され、横軸に作動角が示されている。ロータ軸22aの回転数は実線で示されている。作動角は、ワイパアーム14,16の動作位置に対応するロータ軸22aの作動角を含む。
具体的に説明すると、ロータ軸22aの作動角は、図1に示すワイパアーム14,16が、ブラシレスモータ19に最も近い初期位置、つまり、所定位置から動作したときの回転角度である。ロータ軸22aの作動角の最大値は、ワイパアーム14,16が反転する位置に対応する。つまり、ワイパアーム14,16の動作位置がブラシレスモータ19から遠いほど、ロータ軸22aの作動角が大きくなる。ここで、ワイパアーム14,16が初期位置から動作を開始すると、ロータ軸22aの作動角が増加することに伴い回転数が上昇し、作動角θ1から作動角θ2の間では、ロータ軸22aの回転数がほぼ一定となっている。そして、作動角θ2から最大値となる間では、ロータ軸22aの回転数は徐々に低下する。
これとは逆に、ワイパアーム14,16が反転するときは、最大値から作動角θ2の間でロータ軸22aの回転数が上昇する。また、作動角θ2から作動角θ1の間では、ロータ軸22aの回転数がほぼ一定となっている。そして、作動角θ1から初期位置となる間では、ロータ軸22aの回転数は徐々に低下する。そして、第1の制御または第2の制御の実行中における進角や通電角の値の切り替えは、作動角θ1および作動角θ2で実行することができる。
ここで、作動角θ2は作動角θ1よりも大きい。また、ワイパアーム14,16の動作角度に基づいて、第1の制御または第2の制御の実行中における進角や通電角の値の切り替えを実行するにあたり、ワイパアーム14,16の作動角を、出力軸センサ36の検知信号に基づいて求めることも可能である。なお、図12に示す作動角θ1及び作動角θ2と、図11(B)に示す作動角θ1及び作動角θ2とに対応関係はない。
さらに、第1の制御または第2の制御の実行中に、ホールIC39の検知信号から求めたロータ軸22aの回転数に基づいて、進角や通電角の値の切り替える例を、図13に基づいて説明する。図13では、縦軸に回転数が示され、横軸に時間が示されている。回転数は実線で示されている。図13に示す時間は、ワイパアーム14,16が、初期位置から動作して反転位置に到達するまでの経過時間を意味する。そして、進角や通電角の値の切り替えは、ロータ軸22aの実回転数が回転数N1およびN2で実行する。ここで、回転数N2は回転数N1よりも高い。
図13に示す回転数として、出力軸26の回転数を用いることもできる。すなわち、出力軸センサ36の信号から出力軸26の回転数を求めて、第1の制御または第2の制御の実行中に、進角や通電角の値を切り替えることができる。この制御を行うと、ワイパアーム14,16の動作速度に基づいて、進角や通電角の値を切り替えることになる。
なお、ワイパアーム14,16の初期位置に対応する位置からロータ軸22aが回転を開始すると、時間の経過に伴いロータ軸22aの回転数は上昇する。その後、ロータ軸22aの回転数が所定時間の間一定に維持され、ロータ軸22aの回転数が徐々に低下している。ワイパアーム14,16が反転位置から戻るときは、上記とは逆の回転数の変化特性となる。
さらに、第1の制御または第2の制御の実行中に、進角や通電角の値を切り替える条件の他の例を、図14に基づいて説明する。図14は、ホールIC39で検知したロータ軸22aの回転数に基づいて、進角や通電角の値を切り替える例である。図14では、縦軸にロータ軸22aの回転数が示され、横軸に時間が示されている。図14に示す時間の意味は、図13に示す時間の意味と同じである。そして、ワイパアーム14,16が初期位置から動作を開始した時点から、所定時間が経過した時刻t1で、第1の制御及び第2の制御の最中における進角や通電角の値の切り替えが実行される。また、時刻t1から、さらに所定時間が経過した時刻t2で、第1の制御及び第2の制御の最中における進角や通電角の値の切り替えが実行される。なお、図14の回転数として、出力軸センサ36で検知した出力軸26の回転数を用いることも可能である。つまり、ワイパアーム14,16の動作速度に基づいて、進角や通電角の値を切り替えることができる。
さらに、第1の制御または第2の制御の実行中に、進角や通電角の値を切り替える条件の他の例を、図15に基づいて説明する。図15(A)は、高速払拭に対応する第2の制御を示し、図15(B)は、低速払拭に対応する第1の制御を示す。ここで、図15(A)、(B)には、いずれの車速においても、作動角θが変わると、進角及び通電角を変更する制御が示されている。また、作動角θの変化量に対する進角、通電角の変化量は、全ての車速で同一にしてもよいし、車速毎に変えてもよい。
さらに、図16(A)、(B)は、出力軸回転数Nに基づいて、進角や通電角の値を切り替える例である。図15(A)は、高速払拭に対応する第2の制御を示し、図15(B)は、低速払拭に対応する第1の制御を示す。ここで、図15(A)、(B)には、いずれの車速においても、出力軸回転数Nが変わると、進角及び通電角を変更する制御が示されている。また、出力軸回転数Nの変化量に対する進角、通電角の変化量は、全ての車速で同一にしてもよいし、車速毎に変えてもよい。
さらに、第1の制御または第2の制御の実行中に、進角や通電角の値を切り替える条件の他の例を、図17に基づいて説明する。ここで、図17(A)、(B)には、いずれの車速においても、時間tが変わると、進角及び通電角を変更する制御が示されている。また、時間tの変化量に対する進角、通電角の変化量は、全ての車速で同一にしてもよいし、車速毎に変えてもよい。なお、時間tは、ワイパアーム14,16が初期位置から動作を開始した時点からの経過時間である。
次に、ブラシレスモータ19に用いるロータ22の構造例を、図18に基づいて説明する。ブラシレスモータ19のロータ22の構造にはIPM(Interior Permanent Magnet)構造と、SPM(Surface Permanent Magnet)構造とがある。IPM構造は、図18(A)のように、ロータコア22dの内部に永久磁石22bを埋め込んだロータ22の構造である。SPM構造は、図18(B)のように、ロータコア22dの表面に永久磁石22bを固定するロータ22の構造である。つまり、IPM構造のロータ22は、ロータ22の表面には鉄系の磁性材料で成形されたロータコア22dが配置される。これに対して、SPM構造のロータ22は、ロータ22の表面には永久磁石22bが配置される。そして、鉄系の磁性材料の透磁率は、空気に対して103 オーダーで大きいのに対して、永久磁石の透磁率は空気の値に近い。したがって、SPM構造のロータ22の方が、IPM構造のロータ22よりもインダクタンスが小さくなる。
本実施形態のブラシレスモータ19の制御では、通電角を一般の120°よりも拡大するので、各相の無通電区間が狭くなる。そのため電流の切替えを早くするために、インダクタンスによるスイッチング素子オフ時の電流の遅れ区間を小さくしたい。よって、ロータ22の構造としては、IPM構造よりもSPM構造の方が好ましい。
また、ロータ22がSPM構造であっても、永久磁石22bとしてフェライト磁石を使うと、形成される磁気回路の軸長が大きくなる。一般に、電機子コイルにおけるインダクタンスは磁気回路の軸長に比例するので、永久磁石22bとしてフェライト磁石を使うと、電機子コイル21a,21b,21cにおけるインダクタンスが大きくなる。これに対して、永久磁石22bとして希土類焼結磁石を使ったSPM構造のロータ22とすれば、形成される磁気回路の軸長が小さくなり、かつ、電機子コイルにおけるインダクタンスを低減できる。しかしながら、希土類焼結磁石には高価な重希土類元素(Dy、Tb)が含まれるため、ブラシレスモータ19が高価なものになってしまう。
そこで、永久磁石22bとして、形成される磁気回路の軸長を小さくでき、かつ、重希土類元素を含まない希土類ボンド磁石のリングマグネットを使用し、SPM構造のロータ22とすることが好ましい。ここで、希土類ボンド磁石は、ネオジムボンド、SmFeNボンドを含む。また、ネオジムボンド、SmFeNボンドは、両方とも等方性、異方性を含む。
次に、ロータに取り付けられる永久磁石の数、つまり極数、及び電機子コイルを巻くステータのスロット数について説明する。極数とスロット数との比を極数:スロット数で表すと、大きく分類して、2n:3n、4n:3n、8n:9n、10n:9n、10n:12n、14n:12nの関係のものがある。ここで、nは1以上の整数である。8n:9n、10n:9n、10n:12n、14n:12nの構成は、同じ相における電機子コイルと永久磁石との位置関係が異なるため、通電タイミングに進角を付けたり、通電角を拡大することにより、ベースの値に対してより通電の位相が進んでしまう。そのため、永久磁石が減磁しやすくなる。
図19は、6極9スロットに対応するロータ22及びステータ21の一例を示す模式図、図20は、8極9スロットに対応するロータ22及びステータ21の一例を示す模式図である。つまり、図19は、前記2n:3nであり、かつ、nが3である場合の例である。図19、図20に示すステータ21は、環状のステータコア50を有し、ステータコア50の内周に、複数のティース50aが円周方向に沿って設けられている。図19、図20に示すステータコア50は、ティース50aを9個有する。複数のティース50aは間隔をおいて配置され、かつ、内側に向けて突出している。
複数のティース50aには、それぞれ電機子コイルが巻かれている。VはV相の電機子コイル、UはU相の電機子コイル、WはW相の電機子コイルを表す。また、各相における「−」の符号は、電機子コイルが逆向きに巻かれていることを表す。また、図20は、前記8n:9nであり、かつ、nが1である場合の例である。図20では、円周方向で、同じ相の電機子コイルU1,U2,U3と、永久磁石22bとの位置関係が等しい。このため、通電タイミングの進角設定値を通電角θ1とすると、各電機子コイルの進角は、
U1:θ1=U2:θ1=U3:θ1
で表される。
一方、図20では、円周方向で、同じ相の電機子コイルU1,U2,U3と永久磁石22bとの位置関係が異なる。このため、通電タイミングの進角設定値を通電角θ1とすると、各電機子コイルの進角は、
U1:θ1−20°=U2:θ1=U3:θ1+20°
で表される。なお、ロータ22の回転方向は、ウォームホイール25側の軸端から見て時計方向、つまり、CWであるものとする。このように、U3に対向した永久磁石22bは進角大のため減磁しやすくなる。
よって、第1の制御及び第2の制御を行なうには、同じ相の電機子コイルと永久磁石との位置関係が等しい2n:3nまたは4n:3nの構造を有するブラシレスモータが望ましい。さらに永久磁石の数が多くなると、機械的な回転角に対する通電角の影響が大きくなる、つまり、電流の遅れの影響が大となる。このため、同じスロット数であれば、永久磁石の数を少なくできる2n:3nの構成が好ましい。なお、駆動装置33とステータ21とは一体構造でも別体構造でもよい。しかしながら、駆動装置33から電機子コイルへの配線が短かく、配線抵抗が小さくすることができるように、駆動装置33とステータ21とが一体構造である方が望ましい。
さらに、ブラシレスモータ19のデューティ比を制御すると、モータ特性の一例であるモータ効率は、デューティ比が高いほど、駆動装置33も含めたモータ効率が高くなる。これは、デューティ比が低くなるほど、駆動装置33による損失が大きくなるためである。デューティ比と、モータ特性との関係の一例を図21に示す。図21においては、縦軸にロータ軸の回転数、モータ効率が示され、横軸にロータ軸のトルクが示されている。また、図21において、Dutyはデューティ比を表す。なお、図21において、実線はトルクと回転数との関係を示し、破線はトルクと効率との関係を示す。
本実施形態のブラシレスモータ19は、第1の制御と第2の制御とを切り替える条件として、ワイパスイッチ37の操作を用いることができる。運転者は、降雨量または降雪量が少ないとき、ワイパスイッチ37を操作して、ワイパアーム14,16を予め定められた低速で動作させる低速払拭モードを選択することができる。
これに対して、運転者は、降雨量また降雪量が多いとき、ワイパスイッチ37を操作して、ワイパアーム14,16を、前記低速よりも高速で動作させる高速払拭モードを選択することができる。運転者は、降雨量または降雪量が多い、少ないを自分の主観で判断するのであり、降雨量または降雪量が多い、少ないを区別する客観的な基準があるわけではない。ワイパスイッチ37により、高速払拭モードと低速払拭モードとの切り替えができることを前提として、低速払拭モードが選択された場合に第1の制御を実行し、高速払拭モードが選択された場合に第2の制御を実行することが可能である。
さらにまた、本実施形態のブラシレスモータ19は、ブラシ、コミュテータ(整流子)等が設けられていないため、ブラシとコミュテータとの摺動によるフリクショントルクの発生もなく、モータの効率低下、ブラシの温度上昇を防止し、モータ出力が制限されることを回避できる。さらに、本実施形態のブラシレスモータ19は、ブラシがあることに起因するノイズの発生、作動音の発生を防止でき、静粛性を確保できる。なお、上記の実施形態では、ロータ軸22aの回転数、トルク、作動角に基づいて、第1の制御と第2の制御とを切り替える説明となっているが、ロータ軸22aはロータ22の一部を構成する要素であるから、上記実施形態で記載されているロータ軸22aを、ロータ22と置き換えても、技術的意味は同じである。
(実施の形態2)
次に、ブラシレスモータの他の例を、図22〜図29を参照して説明する。なお、図22〜図29において、図1〜図3、図18〜図20に示す構成と同じ構成については、同じ符号を付してある。ステータコア50は、複数、具体的には6個のティース50aが円周方向に設けられている。6個のティース50aには、それぞれ電機子コイルが巻かれている。ステータコア50は、円周方向に6個に分割されている。
図27において、V1,V2はV相の電機子コイル、U1,U2はU相の電機子コイル、W1,W2はW相の電機子コイルを表す。そして、図27においては、ステータ21の時計回りに、電機子コイルU1、電機子コイルV1、電機子コイルW1、電機子コイルU2、電機子コイルV2、電機子コイルW2の順序で設けられている。
さらに、図28及び図29のように、電機子コイルU1の端部Uaと、電機子コイルW2の端部Ubとを、端子51により結線している。また、電機子コイルU2の端部Vbと、電機子コイルV1の端部Vaとを、端子52により結線している。さらに、電機子コイルW1の端部Waと、電機子コイルV2の端部Wbとを、端子53により結線している。このように、実施の形態2のブラシレスモータ19は、電機子コイルの結線構造として、Δ結線を採用している。
一方、ケース23及びフレーム24の内部に亘り、カプラ54が設けられている。カプラ54は樹脂により成形されており、カプラ54に端子51,52,53が取り付けられている。カプラ54は回転しないように,ステータ21により保持されている。
なお、ケース23内には軸受55が設けられており、フレーム24により軸受56が支持されている。ロータ軸22aは、軸受55,56により回転可能に支持されている。また、実施の形態2におけるブラシレスモータ19は、図4に示す制御系統を有する。実施の形態2のブラシレスモータ19は、実施の形態1のブラシレスモータ19と同じ構成については、実施の形態1と同様の動作、作用が生じる。実施の形態2のブラシレスモータ19は、実施の形態1のブラシレスモータ19と同様の制御を実行でき、同様の効果を得られる。また、実施の形態2のブラシレスモータ19は、電機子コイルをΔ結線してあり、3個の端子51,52,53を用いることで、電機子コイルを接続でき、部品点数を低減できる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、ワイパ装置は、ブラシレスモータのロータ軸が一方向にのみ回転して、ワイパアームがピボット軸を中心として揺動する構成を含む。また、ワイパスイッチは運転者の操作により操作されるものに限らず、降雨量、降雪量等を検出する機能を有する検出スイッチであってもよい。このように構成されていれば、降雨量、降雪量等に基づいて、回転数制御部がワイパ装置を自動的に起動させ、かつ、低速払拭モード、高速モードを自動的に切り替える制御を実行する。この場合、回転数制御部には、低速モード、高速モードを切り替える基準となる降雨量、降雪量等のデータが予め記憶されている。
さらにまた、車両の走行速度を検知する車速センサは、車両の走行速度を直接検知せずに、抵抗や払拭面の状態など、ワイパブレードからワイパ装置に伝えられる情報や、ブラシレスモータに間接的に伝えられる情報により検知するようにしてもよい。ここで、抵抗とは走行風によりワイパブレードが受ける抵抗や払拭面を払拭する際の抵抗であり、ワイパ装置は、抵抗や払拭面の状態等を、ワイパブレードから出力軸を介して検知する。また、ブラシレスモータに間接的に伝えられる情報は、抵抗や払拭面の状態等により得られた情報を車両の走行速度として認識するためのものであり、またその情報は駆動装置にて車両の走行速度として検出されるよう変換されることで検知される。さらにまた、電機子コイルの数、永久磁石の数は任意に変更可能である。
また、ブラシレスモータは、2n:3nの組み合わせの中で最小の極数である2極3スロットは、機械的に対向した位置に、同じ相の電機子コイルが巻かれたティースがない。このため、ロータ軸の開店中に軸を振れ回す加振力が加わり、振動や作動音を招く可能性がある。このため、極数を少なくするという観点では、4極6スロットがよい。また、コントローラとしての駆動装置と、ブラシレスモータとは別体でもよいが、駆動装置と、ブラシレスモータとを一体化すると、駆動装置からブラシレスモータへの配線が短くなり、かつ、配線抵抗が小さくすることができる。
また、本発明のワイパ装置は、ワイパブレードがリヤガラスを払拭するものを含む。即ち、本発明のワイパ装置におけるウィンドガラスは、フロントガラス及びリヤガラスを含む。また、本発明のワイパ装置は、ウォームホイールと同軸に設けられた出力軸が、ピボット軸を兼ねている構成を含む。さらに、本発明のワイパ装置は、2本のワイパアームを、それぞれ別個のブラシレスモータにより単独で駆動する構成を含む。
さらにまた、本発明のブラシレスモータは、ステータの内側にロータが配置されたインナロータ形のブラシレスモータ、またはステータの外側にロータが配置されたアウタロータ形のブラシレスモータを含む。さらに、本実施形態のブラシレスモータは、ワイパ装置を動作させるワイパモータの他、車両に設けられる利便快適系装置、例えば、パワースライドドア装置、サンルーフ装置、パワーウィンド装置等において、ドア、ルーフ、ガラス等の動作部材を動作させるために設けられるブラシレスモータを含む。