JP6302208B2 - 高ビーライトセメント含有セメント組成物、および高ビーライトセメント含有セメント組成物の製造方法 - Google Patents

Description

本発明は、ビーライトを多く含むセメント（以下「高ビーライトセメント」という。）を含有するセメント組成物（以下「高ビーライトセメント含有セメント組成物」という。）であって、短期および中期の材齢（以下「短・中期材齢」という。）においても強度発現性に優れたセメント組成物に関する。なお、本発明においてセメント組成物は、コンクリートおよびモルタルを含むものである。

高ビーライトセメントは、水和熱の低いセメント鉱物であるビーライト（Ｃ_２Ｓ）を４０質量％以上と多く含むため、中庸熱ポルトランドセメントよりも水和発熱が少なく流動性に優れ、長期材齢において強度発現性が高いという特徴を有する。そして、現在、高ビーライトセメントは、低熱ポルトランドセメントや高ビーライト系セメント等として市販されている。
かかる特徴により、高ビーライトセメント含有セメント組成物は、セメントの水和熱により躯体の内部と表面の温度差が大きいために、内部拘束による温度ひび割れが発生しやすいダムや橋梁等のマスコンクリートに多用されている。
しかし、高ビーライトセメントはビーライトが多い分、短・中期材齢の強度発現に寄与するエーライト（Ｃ_３Ｓ）が少なく、高ビーライトセメントの該材齢における強度発現性は、中庸熱ポルトランドセメントよりも低いという短所がある。このため、早期の強度を必要とする桁、床版、および建築躯体等の構造物には適さないとされていた。したがって、短・中期材齢においても強度が高ければ、前記利点を備える高ビーライトセメント含有セメント組成物の用途は拡大すると期待される。

そこで、短・中期材齢における強度を向上させる手段として、例えば、特許文献１では、４０質量％以上のＣ_２Ｓと、６質量％以下のＣ_３Ｓとを含有する高ビーライトセメント、および硬化促進剤であるギ酸カルシウムとを含む低熱セメント組成物が提案されている。この組成物は、高ビーライトセメント単独と比べ、材齢７日における圧縮強さが１．５倍程度に向上するとされている（表２の実施例３〜５）。
しかし、一般に、初期強度発現性が高い場合には、水和の促進によりセメントの水和発熱が上昇するから、材齢７日における強度増進率がこれ程までに高いと、この強度増進に相応して該セメント組成物の水和熱は高くなり、水和熱が低いという高ビーライトセメント本来の利点が損なわれるおそれがある。

特開平１１−３４３１６３号公報

したがって、本発明は、短・中期材齢においても強度発現性に優れた高ビ−ライトセメント含有セメント組成物を提供することを目的とする。

本発明者らは前記目的にかなうセメント組成物を検討したところ、閃緑岩を細骨材として含む高ビーライトセメント含有セメント組成物は、短・中期材齢における強度発現性が向上することを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の構成を有するセメント組成物である。
［１］閃緑岩細骨材の単位量が７００〜１０００ｋｇ／ｍ ^３ 、ビーライト（Ｃ _２ Ｓ）を４０質量％以上含有する高ビーライトセメントの単位量が２００〜５００ｋｇ／ｍ ^３ 、および水を含む高ビーライトセメント含有セメント組成物。
［２］５〜２０℃の温度環境下で混練して施工する、前記［１］に記載の高ビーライトセメント含有セメント組成物の製造方法。

本発明の高ビーライトセメント含有セメント組成物は、短・中期材齢においても強度発現性が高い。

以下、本発明の高ビーライトセメント含有セメント組成物について、閃緑岩骨材、高ビーライトセメント、および水等に分けて説明する。
１．閃緑岩骨材
本発明で用いる骨材は閃緑岩である。閃緑岩は深成岩の１種であり、一般に、主成分として斜長石を７０質量％程度と、輝石、角閃石等の有色鉱物を３０質量％程度含むものである。
閃緑岩は、本発明において細骨材および／または粗骨材として用いられ、セメント組成物の強度を高めることができる。
また、前記閃緑岩は、好ましくはＳｉＯ_２の含有率が４５〜７０質量％、より好ましくは５０〜６５質量％、さらに好ましくは５２〜６３質量％である。該値が４５〜７０質量％であれば、セメント組成物の強度を向上させる効果が高い。

本発明において閃緑岩細骨材（細骨材としての閃緑岩）の単位量は、好ましくは７００〜１０００ｋｇ／ｍ^３、より好ましくは７５０〜９５０ｋｇ／ｍ^３である。該値が７００ｋｇ／ｍ^３未満ではセメント組成物のワーカビリティーが低下するおそれがあり、１０００ｋｇ／ｍ^３を超えるとセメント組成物の単位水量が増加するおそれがある。
また、本発明において閃緑岩粗骨材（粗骨材としての閃緑岩）の単位量は、好ましくは８００〜１１００ｋｇ／ｍ^３、より好ましくは８５０〜１０５０ｋｇ／ｍ^３である。該値が８００ｋｇ／ｍ^３未満ではセメント組成物の強度が低下するおそれがあり、１１００ｋｇ／ｍ^３を超えるとセメント組成物のワーカビリティーが低下するおそれがある。

２．高ビーライトセメント
本発明で用いる高ビーライトセメントは、ビーライト（Ｃ_２Ｓ）を４０質量％以上含むセメントであり、例えば、ＪＩＳ Ｒ ５２１０に規定する低熱ポルトランドセメント、および、水和熱が高いセメント鉱物であるアルミネート相（Ｃ_３Ａ）を極力減らし、ビーライトが主成分になるように調整した高ビーライト系セメント等から選ばれる１種以上である。
本発明において、高ビーライトセメントの単位量は、好ましくは２００〜５００ｋｇ／ｍ^３である。該単位量が２００ｋｇ／ｍ^３未満では強度発現性が低い場合があり、５００ｋｇ／ｍ^３を超えると水和熱が高く、コスト高になる。なお、該単位量は、より好ましくは２５０〜４５０ｋｇ／ｍ^３、さらに好ましくは３００〜４００ｋｇ／ｍ^３である。

３．水
本発明で用いる水は、セメント組成物の強度や流動性等の物性に悪影響を与えないものであれば用いることができ、例えば、水道水、下水処理水、および生コンクリートの上澄水等から選ばれる１種以上が挙げられる。

４．その他
本発明の高ビーライトセメント含有セメント組成物は、流動性の向上や水／セメント比の低減による強度の向上のため減水剤を含んでもよい。該減水剤は、高性能ＡＥ減水剤、高性能減水剤、ＡＥ減水剤等から選ばれる１種以上の減水剤が挙げられる。また、該減水剤の種類は、ポリカルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、およびこれらのナトリウム塩やカルシウム塩等から選ばれる１種以上が挙げられる。
また、本発明の高ビーライトセメント含有セメント組成物は、前記減水剤以外に、収縮低減剤、膨張材、ＡＥ剤、水和熱抑制剤、白華防止剤、遅延剤、および硬化促進剤等のコンクリート用混和剤や、フライアッシュ、石炭灰、シリカフューム、石灰石粉末、およびシリカ質粉末等のコンクリート用混和材を含むことができる。

本発明の高ビーライトセメント含有セメント組成物の製造において、混練装置や混練方法は特に限定されず、慣用の装置や方法を用いることができる。また、養生方法も特に限定されず、湿空養生、水中養生、および常圧蒸気養生等を用いることができる。
また、後掲の表２に示すように、本発明の高ビーライトセメント含有セメント組成物は、５℃の低温でも強度発現性が高いため、好ましくは５〜２０℃、より好ましくは５〜１５℃、さらに好ましくは５〜１０℃の温度環境下で混練して施工するためのセメント組成物として用いることができる。

以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
１．使用材料
（１）セメント：低熱ポルトランドセメント（太平洋セメント社製）
（２）粗骨材、細骨材：これらの産地と物性は表１に示す。
（３）水：水道水

２．セメント組成物の圧縮強度
５℃の試験室内で、ＪＩＳ Ｒ ５２０１「セメントの物理試験方法」に準拠して、表２の配合に従い、水、低熱ポルトランドセメント、および細骨材をホバートミキサーに投入して混練し、成形してモルタル供試体を調製し、その圧縮強度を測定した。その結果を表２に示す。

表２に示すように、細骨材として閃緑岩を用いた実施例１の圧縮強度は、材齢７日で１１．６Ｎ／ｍｍ^２、材齢２８日で２５．９Ｎ／ｍｍ^２であるのに対し、細骨材として山砂を用いた比較例１の圧縮強度は、材齢７日で６．３Ｎ／ｍｍ^２、材齢２８日で１０．０Ｎ／ｍｍ^２、また、細骨材として安山岩を用いた比較例２の圧縮強度は、材齢７日で６．０Ｎ／ｍｍ^２、材齢２８日で１１．３Ｎ／ｍｍ^２である。したがって、実施例は比較例と比べ、材齢７日で約２倍、材齢２８日で約２．５倍も高くなっている。
よって、本発明の高ビーライトセメント含有セメント組成物は、短・中期材齢においても強度発現性が高いことが分かる。

Claims (2)

1. 閃緑岩細骨材の単位量が７００〜１０００ｋｇ／ｍ ^３ 、ビーライト（Ｃ _２ Ｓ）を４０質量％以上含有する高ビーライトセメントの単位量が２００〜５００ｋｇ／ｍ ^３ 、および水を含む高ビーライトセメント含有セメント組成物。
2. ５〜２０℃の温度環境下で混練して施工する、請求項１に記載の高ビーライトセメント含有セメント組成物の製造方法。