JP6301864B2 - 評価システム及び運行情報の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、交通機関の運行情報を評価する評価システムに関する。
バス、鉄道などの交通機関は計画されたダイヤ(運行情報)に基づいて運行されている。しかし、輸送障害や災害などによって運行が停止し、ダイヤが乱れた場合、乗客への影響を軽減し、迅速に平常運転へ戻すためにダイヤが変更される。このとき、乗客の流動を考慮して最適なダイヤ案を作成する必要がある。
本技術の背景技術として、国際公開2014/073412号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、乗客流計算部と消費電力量計算部とを有する運行ダイヤ評価装置1であって、乗客流計算部は、各列車の運行ダイヤ情報と、乗客の駅の入場及び出場に関する乗客情報とに基づいて、列車の運輸による乗客流に関する乗客流情報を作成し、消費電力量計算部は、乗客流計算部で作成された乗客流情報と運行ダイヤ情報と各列車の車両情報とに基づいて、各列車の乗客数または乗車率を計算するとともに、当該乗客数または当該乗車率に応じた車両重量を反映させた各列車の単位時間ごとの消費電力量を計算するものが記載されている。
国際公開2014/073412号公報
特許文献1に記載されている方法でダイヤを評価すると、一人一人の乗客について乗車列車を割り当て、各乗客の所要時間を計算し、運行ダイヤを評価するので、乗客数に依存して計算時間が増大する。また、評価するダイヤ案の各々についてダイヤ評価処理を行うため、ダイヤ案の数に依存して計算時間が増大する。異常時には修正ダイヤを早急に決定する必要があり、多くの乗客流動や複数ダイヤ案を高速に評価することが課題となる。
そこで、本発明は乗客数に依存せず、複数のダイヤ案を高速に評価することを目的とする。
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、交通機関の運行情報を評価する評価システムであって、乗客が交通機関を利用した履歴が記録される交通機関利用者情報と、入場駅と出場駅との間の移動ルートが記録される移動パタン情報とを格納する記憶部と、前記交通機関利用者情報及び移動パタン情報を参照し、乗客の列車の乗車位置への到着時刻を推定し、路線、前記到着時刻の時間帯及び入場駅毎に各駅間を利用する乗客数によって表される乗客流マトリクスを生成する乗客流マトリクス生成部と、前記乗客流マトリクス及び前記運行情報を用いて交通機関の乗車人数を推定し、乗客の不効用値を算出する評価部と、を備える。
本発明の代表的な実施の形態によれば、乗客の不効用を考慮してダイヤを高速に評価することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
本発明の実施例に係るダイヤ評価装置の構成を示す図である。 (A)は本実施例に係る交通機関利用者情報の構成例を示す図であり、(B)は本実施例に係る交通機関運行情報の構成例を示す図であり、(C)は本実施例に係る移動パタン情報の構成例を示す図である。 (A)は本実施例に係る乗客流マトリクスの構成例を示す図であり、(B)は本実施例に係る乗客流データの構成例を示す図である。 本実施例に係る数式モデルの概念を示す図である。 本実施例に係る路線の輸送力と迂回旅客との関係を示す図である。 本実施例に係る乗客流マトリクス生成処理のフローチャートである。 本実施例に係るダイヤ評価処理のフローチャートである。 本実施例に係る入力されたダイヤの一例を示す図である。 本実施例に係る乗客乗車パタンの構成例を示す図であり、(A)は列車Aの乗客乗車パタン、(B)は列車Aから列車Bに乗り換える乗客の乗客乗車パタン、(C)は列車Bの乗客乗車パタンを示す。 (A)本実施例に係るダイヤ評価結果(列車)の構成例を示す図であり、(B)は本実施例に係るダイヤ評価結果(全体)の構成例を示す図である。 本実施例に係るメニュー画面の一例を示す図である。 本実施例に係るダイヤ評価画面の一例を示す図である。 本実施例に係る修正ダイヤ評価処理のフローチャートである。 本実施例に係る拡張されたダイヤ評価画面の一例を示す図である。
<実施例1>
以降、本発明の実施例を、図等を参照して説明する。本実施例では、主に鉄道の駅の例として説明するが、本発明の適用範囲は、鉄道の駅に限定されることなく、予め定められた時刻で運行する公共交通機関(例えば、路線バスや、船舶、航空機など)にも適用可能である。
(ダイヤ評価装置)
図1は、本実施例のダイヤ評価装置1の構成を示す図である。
ダイヤ評価装置1は、一般的なコンピュータシステムによって構成され、中央制御装置11、入力装置12、出力装置13、通信装置14、主記憶装置15及び補助記憶装置16を有する。これらの構成は、バスによって相互に接続されている。
中央制御装置11は、主記憶装置15に格納されたプログラムを実行するプロセッサである。入力装置12は、オペレータがダイヤ評価装置1にデータや指示を入力するためのユーザインタフェース(例えば、キーボード、マウスなど)である。出力装置13は、プログラムの実行結果をユーザに提示するためのユーザインタフェース(例えば、ディスプレイ、プリンタなど)である。
主記憶装置15は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、補助記憶装置16に格納されたプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。具体的には、主記憶装置15は、乗客流マトリクス生成部21及びダイヤ評価部22を実現するためのプログラムを格納する。以降、「○○部」を主体とした記述は、中央制御装置11が、補助記憶装置16からプログラムを読み出し、主記憶装置15にロードして実行し、プログラムの機能を実現することを意味する。
補助記憶装置16は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置である。また、補助記憶装置16は、中央制御装置11が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを格納する。具体的には、補助記憶装置16は、交通機関利用者情報31、交通機関運行情報32、移動パタン情報33、乗客流マトリクス34及びダイヤ評価結果35を格納する。
ダイヤ評価装置1は、ネットワーク4を介して、外部システム2及び外部サーバ3と通信可能に接続されている。
中央制御装置11が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD−ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワーク4を介してダイヤ評価装置1に提供され、非一時的記憶媒体である補助記憶装置16に格納される。このため、ダイヤ評価装置1は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
本実施例のダイヤ評価装置1は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。
(交通機関利用者情報)
図2(A)は、交通機関利用者情報31の構成例を示す図である。
交通機関利用者情報31は、入場時刻欄101、出場時刻欄102、交通機関欄103、入場駅欄104及び出場駅欄105を含む。入場時刻欄101には、利用者が改札口を通過し駅に入場した入場時刻が記録され、出場時刻欄102には、利用者が改札口を通過し駅から出場した出場時刻が記録される。交通機関欄103には、利用者が利用した交通機関の名称が記録される。入場駅欄104には、利用者が入場した駅の名称が記録され、出場駅欄105には、利用者が出場した駅の名称が記憶される。
(交通機関運行情報)
図2(B)は、交通機関運行情報32の構成例を示す図である。
交通機関運行情報32は、輸送機関欄111及び列車到着欄112〜115を含む。輸送機関欄111には、列車番号が記録される。列車到着欄112〜115には、各駅の列車の到着時刻が記憶される。
交通機関運行情報32は、列車の駅毎の出発時刻及び到着情報が記録された情報であり、通常は、ダイヤと称される。なお、交通機関運行情報32には、列車の到着情報が記録されなくても、出発時刻が記録されても、出発時刻及び到着時刻の両方が記録されてもよい。また、交通機関運行情報32は、予め計画された計画ダイヤの情報、計画ダイヤから遅れが生じた実績ダイヤの情報、過去に実施したダイヤの調整の履歴、列車の走行位置から取得したリアルタイムな運行ダイヤの情報、将来のダイヤを予測した予測ダイヤの情報などを含む。特に記述がない場合、交通機関運行情報32は路線単位で記憶されるとよい。
(移動パタン情報)
図2(C)は、移動パタン情報33の構成例を示す図である。
移動パタン情報33は、入場駅欄121、出場駅欄122、交通機関欄123、移動ルート欄124及び基準移動時間欄125を含む。入場駅欄121には、利用者が改札口を通過し入場した駅の名称が記録され、出場駅欄122には、利用者が改札口を通過し出場した駅の名称が記録される。交通機関欄123には、利用者が利用した交通機関名が記録され、移動ルート欄124には、入出場駅のペア(以下、ODと記載する)に対応した利用路線の情報が記録され、基準移動時間欄125には、移動ルート124における基準の乗車時間が記憶される。
移動ルート124は、一つのODに対して、複数の利用路線情報を記憶してもよい。例えば、乗車時間、乗換回数、車両混雑度(座れるか)、運賃などの観点で最適な利用路線情報を記憶してもよい。また、時間帯によって最適な移動ルートが異なる場合、時刻帯毎に異なる移動パタン情報33を記憶してもよい。
基準移動時間125は、平常時のダイヤ(計画ダイヤ)から算出する、又は平常時における交通機関利用者の乗車時間統計値から算出してもよい。移動ルート124に乗り換えを含む場合、乗換時間も乗車時間に含めてもよい。
(乗客流マトリクス)
図3は、乗客流マトリクス34の構成例を示す図である。
図3(A)に示すように、乗客流マトリクス34は、入場駅欄301及びマトリクスID欄302を含む。入場駅欄301には、入場駅が記録され、マトリクスID欄302には、時間帯毎のマトリクスの識別情報が記録される。乗客流マトリクス34は、路線単位で記録されるとよい。
また、図3(B)に示すように、各マトリクスID302における各駅間の乗車人数の数値又は数式モデルが記憶される。例えば、マトリクスID(M1)311は、7時58分に駅A(駅Aにおいて乗車する路線のホーム)に到着した人の乗客流情報であり、駅Aから駅Bまで8人乗車し、駅Bから駅Cまで6人が乗車継続し(2人が駅Bで降車)、駅Cから駅Dまで4人が乗車継続(2人が駅Cで降車)という人数の情報が記憶される。
マトリクスID(M4)312は、7時59分に駅Aに到着した乗客流情報であり、乗車人数が数式でモデル化されている。
図4は、マトリクスID(M4)312の数式モデルの概念を示す図である。図4を参照して数式モデルの各変数について、例を挙げて説明する。
図4に示す路線では、各停列車321と快速列車322が運行しており、各停列車321は、駅Aにおいて快速列車322を待ち合わせる。駅Aの乗車モデル323では、乗換旅客を含む入場旅客324、他路線からの迂回旅客325、他路線への迂回旅客326、快速への乗換旅客327の情報がモデル化されている。乗換旅客を含む入場旅客324は、平常時の乗客流から算出することができ、図示した例では10人(定数)である。また、他路線からの迂回旅客325を説明変数aとし、他路線への迂回旅客326を説明変数bとし、駅Aにおいて各停列車321から快速列車322へ乗り換える乗客数を説明変数cとした。
この数式モデルでは、次駅間の乗客を確率モデルで表しており、駅Aから駅Bに移動した乗客について、駅Aで乗車した82%の乗客が駅Cまで乗車継続し(18%の乗客が駅Bで降車)、駅Aで乗車した65%の乗客が駅Dまで乗車継続(17%の乗客が駅Cで降車)している。
迂回旅客を示す説明変数a、bについて、二つの路線(路線X、Y)の例を用いて説明する。駅Xから駅Yに移動するための経路として路線Xを利用する経路と路線Yを利用する経路の二つの移動ルートがある。二つの移動ルートの所要時間及び運行本数はほぼ同じであり、乗客は路線Xと路線Yのそれぞれを50%の確率で選択し、乗車している。このとき、駅Xから駅Yに移動するある時間帯の入場者を10人とすると、平常時では5人が路線X、残りの5人が路線Yを利用することになる。このとき、路線Xに輸送障害が発生して運行が完全に停止した場合、目的地まで移動するためには5:5で分散していた乗客の全員が路線Yを利用する。このため、路線Xの利用者は0人、路線Yの利用者は10人となる。これは路線Xの輸送力と路線Yの輸送力とに依存して、乗客が乗車する路線が変動することを意味する。輸送力は、どれだけの乗客を輸送できるかの指標であり、平常時との比較として異常時の輸送力を定義すると、輸送力=(異常時のダイヤにおける単位時間あたりの運行本数×乗車容量)/(平常時のダイヤにおける単位時間あたりの運行本数×乗車容量)で算出することができる。
図5は、前述した路線X及び路線Yの輸送力と迂回旅客との関係を示す図である。
縦軸はY路線への迂回旅客数331であり、横軸はX路線の輸送力332である。図5は、Y路線の輸送力(PY)333が100%の場合と50%の場合との迂回旅客数を示す。X路線の輸送力がY路線の輸送力より低下するとY路線への迂回旅客が増加する。迂回旅客の最小値は0であり、最大値はY路線に迂回経路が存在する総乗客数(定数)となる。
以上のように一つの路線について作成した乗客流マトリクスでも他路線の運行状況を考慮したモデルを作成することによって、状況に合わせて乗客数を変動させることができる。乗客流マトリクスの生成方法については後述する。
(ダイヤ評価結果)
図1に戻り、説明を続ける。ダイヤ評価結果35は、ダイヤ評価部22によるダイヤの評価によって得られた情報であり、その詳細は後述する。
(乗客流マトリクスの生成方法)
図6は、乗客流マトリクス生成部21が乗客流マトリクス34を生成する処理のフローチャートである。
まず、ステップS201において、乗客流マトリクス生成部21は抽出条件の指定を受け付ける。抽出条件は、例えば、日付、路線名である。これは、日々の交通機関利用者履歴に対し、自動的に全路線について前日の乗客流マトリクスを作成しても、又は、ダイヤ評価装置1のオペレータが任意の条件を指定して作成してもよい。具体的には、乗客流マトリクス生成部21は、オペレータの入力装置12の操作による日付及び路線名の入力を受け付ける。このとき、ある1日の乗客流マトリクスを作成する場合は1日分の日付を指定し、統計データを作成する場合は複数日分の日付を指定する。以下に、「2014年1月1日」、「○○路線」が入力された場合について説明する。なお、日付ではなく、1日の中の特定の時間帯や、複数の日を含む週や月であってもよい。さらに、路線の入力に加えて、路線中の区間(特定の駅間)を指定してもよい。
ステップS202において、乗客流マトリクス生成部21は、移動パタンを抽出する。具体的には、入力された「○○路線」を検索キーとして、○○路線が移動ルートに含まれる全てのODを移動パタン情報33から抽出する。
ステップS203において、乗客流マトリクス生成部21は、交通機関利用者情報を抽出する。具体的には、ステップS201で指定された日付「2014年1月1日」及びステップS202で抽出したODのリストを検索キーとして、該当する利用者の情報を交通機関利用者情報31から抽出する。
ステップS204において、乗客流マトリクス生成部21は対象路線への到着時刻を推定する。対象路線への到着時刻とは、例えば、対象路線の列車が到着するプラットホームに利用者(乗客)が到着した時刻であり、改札入場時刻に改札からプラットホームまで徒歩移動時間を加算して算出することができる(例えば、プラットホームまでの移動が1分であれば、1分を加算する)。
複数路線の乗換を含む移動の場合、対象路線への乗換時刻が到着時刻となる。乗換時刻の推定は、入場駅から乗換駅までの区間の基準乗車時間を移動パタン情報33から抽出し、改札入場時刻に改札からプラットホームまで徒歩移動時間と乗換駅までの基準乗車時間を加算することによって、対象路線への到着時刻を推定することができる。しかし、同じODでも、旅客によって移動ルートが異なる場合がある。そこで、旅客の経路推定については拡張機能で後述する。
ステップS205において、乗客流マトリクス生成部21は対象路線の乗車時刻、入場駅毎に各駅間移動人数を集計又はモデル化する。具体的には、同じ時刻帯に対象路線へ到着した旅客が、どの駅まで移動したかを集計し、駅間移動人数又は乗客モデルを求める。
具体例を用いて集計方法を説明する。ステップS201で指定された路線を路線Aとし、ステップS204で路線Aの利用者の到着時刻を推定した結果、8時0分〜8時1分の間に8名の旅客が駅Aに到着した。駅Aからは路線Aを利用し、駅B、駅C、駅Dへ移動することができる。到着した8名のうち、駅Bまで2名が移動し、2名が駅Cまで移動し、4名が駅Dまで移動した。これより、駅間の乗車人数を集計すると、駅Aから駅Bへ移動した乗客は8名、駅Bから駅Cまでが6名、駅Cから駅Dまでが4名となる。
駅A〜B間、駅B〜C間、駅C〜D間の乗車人数を、配列[NABBCCD]で定義すると、A駅に8時0分〜8時1分に到着した旅客群は、配列[NABBCCD]=[8 6 4]で表すことができる。これにより、図3(B)のマトリクスID(M1)311に示すようなデータを作成できる。つまり、乗客流マトリクスは、乗車を継続する確率として算出することもでき、駅Aの到着旅客をN人として[NABBCCD]=N[1 (3/4) (1/2)]と表すことができる。
前述した例では、時間幅を1分で集計したが、時間幅は、より短い又は長い時間幅で集計してもよい。集計する時間幅の設定はオペレータが任意に設定する、又は列車の到着時刻の間隔(時隔)に合わせた分解能をオペレータが設定してもよい。例えば、列車の最小時隔が2分であり、時隔に対する時間分解能を2と設定したとき、2分/2=1分の単位の時間幅で集計すればよい。路線や時刻帯によって最小時隔が異なるため、路線や時刻帯に合わせて集計の時間幅も変更してもよい。集計の時間幅は後述するダイヤ評価処理速度に影響を与える。精度と処理速度とはトレードオフの関係となる。しかし、乗客が増えても乗客流マトリクスの要素数は変わらないため、時間幅を任意に設定することによってユーザが望む評価精度及び評価処理速度を設定することができる。集計の時間幅の最小単位は入場時刻情報の最小単位であり、1秒単位で入場時刻が分かっていれば、最小で1秒単位での集計が可能となる。また、列車の到着時刻の間隔(時隔)に合わせた分解能をシステムが自動的に設定してもよい。さらに、評価精度及び評価処理速度の入力を受け付け、システムが分解能を算出して設定してもよい。
ステップS206において、乗客流マトリクス生成部21は、乗客流マトリクス34を生成して、そのデータをダイヤ評価装置1内に格納する。具体的には、ステップS205で作成した各配列にIDを割り当て、図3(B)のような、駅と時刻のマトリクスを生成し、補助記憶装置16又は主記憶装置15に格納する。
(ダイヤ評価方法)
図7は、ダイヤ評価部22がダイヤを評価する処理のフローチャートである。
ステップS401において、ダイヤ評価部22は、評価されるダイヤの入力を受け付ける。具体的には、ダイヤ評価部22は、オペレータの入力装置12の操作により、ダイヤを評価する路線及びダイヤを評価する区間の入力又は選択を受け付ける(図11参照)。なお、ダイヤを評価する時間的範囲の指定を受け付けてもよい。ダイヤとは、例えば、交通機関運行情報32であり、過去の実績ダイヤ、リアルタイムな運行ダイヤ、将来の予測ダイヤなどである。ダイヤのデータは通信装置14を介してネットワーク4によって外部サーバから取得してもよい。また、入力されたダイヤの情報を補助記憶装置16に格納してもよい。
ステップS402において、ダイヤ評価部22は、乗客流マトリクス34を抽出する。乗客流マトリクス34はバッチ処理等によって乗客流マトリクス生成部21で生成され、補助記憶装置16に記憶される。具体的には、オペレータの入力装置12の操作によって補助記憶装置16に記憶されている乗客流マトリクス34を選択する、又は最適な乗客流マトリクス34をダイヤ評価装置1が自動的に選択してもよい。ここで、最適な乗客流マトリクス34とは、例えば、過去のダイヤを評価する場合、当該ダイヤを実施した日の乗客流マトリクスである。また、将来のダイヤを評価する場合、曜日、天候、季節、輸送障害の有無、渋滞状況など評価されるダイヤの実施日に最も条件が近い過去の日の乗客流マトリクス又は統計的に作成した乗客流マトリクスである。そのため、乗客流マトリクス34の作成時に付属情報として、曜日、天候、季節、輸送障害の有無、渋滞状況等を付与して、付与された付属情報を参照して最適な乗客流マトリクス34を抽出してもよい。
ステップS403において、ダイヤ評価部22は乗客乗車パタンを作成する。乗客乗車パタンは入力されたダイヤ及び抽出した乗客流マトリクスを用いて作成する。
図8は、入力されたダイヤの一例を示す図である。図8を参照して、ダイヤ情報から得られるデータについて説明する。
図8に示すダイヤは、路線A501の列車運行情報であり、具体的には、列車A502、列車B503、列車C504の運行情報である。各駅での列車到着間隔(例えば、列車A502と列車B503の列車到着間隔)が時隔505である。これらの列車が次駅の到着までにかかる時間が移動時間506である。図8に示すダイヤでは、列車A502は駅Bに到着後、運休となっている。途中駅で列車が運休した場合、運休となった駅で、乗客が次列車へ乗り換える。
図9は、乗客乗車パタンの構成例を示す図である。乗客乗車パタンは1列車ごとに作成する。例えば、図9(A)に示す列車A502の乗客乗車パタン601は、図8に示す列車A502の乗客の乗車パタンである。乗客乗車パタン601は、停車駅611、列車到着時刻612、次駅までの移動時間613、前列車との時隔614、次列車との時隔615、マトリクスID616及び乗客待ち時間617を含む。
マトリクスID616は、列車到着時刻612及び前列車との時隔614を用いて、乗客流マトリクス34から参照する。具体的には、駅Aの列車到着時刻612を7時59分、前列車との時隔614を2分としたとき、7時58分から7時59分までの駅AにおけるマトリクスID302を参照する。図9(A)は、乗客流マトリクス34を集計した時間幅を1分とした場合の例を示しており、A駅の7時58分のマトリクスID(M101)とA駅の7時59分のマトリクスID(M102)の二つを列車A502の駅Aでの乗客乗車データとして参照している。
列車A502は、駅Bで運転を休止したので、駅Bの次の駅Cにおける乗客流マトリクスはN1となる。
図9(B)に示すように、列車A502から列車B503に乗り換える乗客の乗客乗車パタン602は、駅Aから列車Aに乗車する乗客のマトリクスM1、M4について、駅Bよりも先の駅に移動するはずだった乗客と、駅Bから列車Aに乗車するはずだった乗客のマトリクスM5、M8とを合計したマトリクスN1で表すことができる。
図9(C)に示すように、列車A502から乗客が乗り換えた列車B503の乗客乗車パタン603は、駅Aから列車Bに乗車する乗客のマトリクスM7、M10と、駅Bから列車Bに乗車する乗客のマトリクスM11、M14と、駅Bで列車A502から列車B503に乗り換える乗客のマトリクスN1を含む。
乗客待ち時間617は、マトリクスID毎の待ち時間であり、列車到着時刻612を0分として、列車到着時刻612より前の時刻のマトリクスIDに待ち時間を加算する(図9に示す例では、1分単位で乗客流を集計し、1分単位で待ち時間が増加する)。図8に示すように列車Aが運休する場合、同路線内で列車間の乗り換えが発生する。このような乗り換えが発生した場合、前列車との時隔614を乗客待ち時間617として、前列車から乗客データを引き継いでもよい(図9に示す例では、マトリクスID(N1)が列車Aから乗り換える乗客データとなる)。
前述したように、予め作成したマトリクスIDを入力ダイヤに割り当てることによって、乗客乗車パタンを作成することができ、乗客1人1人の乗車列車を計算するより高速に処理を行うことができる。
図7に戻り、説明を続ける。ステップS404において、ダイヤ評価部22は、乗客の不効用値を算出する。具体的には、まず、図10(A)に示すダイヤ評価結果(列車)701を作成し、次に、ダイヤ評価結果(列車)701を集計して、図10(B)に示すダイヤ評価結果(全体)711を算出する。不効用値とは、利用者の視点から列車ダイヤを評価するための指標であって、待ち時間、乗換時間、乗換回数、混雑率などを乗車時間の増加分として換算した値である。このように、不効用値によって乗客の不利益を表すことができる。一般に、不効用値は乗客への影響を表す指標であるが、後述するように、従業員や環境への影響を表す指標を、それぞれ従業員不効用値、環境不効用値として定義してもよい。
第1のダイヤ評価結果(列車)701は、ステップS403で作成した乗客乗車パタンを用いて、輸送機関702、駅間703、乗車人数704、車両混雑度705、総待ち時間706、次駅までの総増加乗車時間707及び乗換人数708などを含む。
輸送機関702は、例えば列車番号である。駅間703は、列車が運行する隣接した二つの駅間の情報である。乗車人数704は、列車に関連付けられた全てのマトリクスIDについて、図3(B)に示すテーブルの乗車人数を各駅間で集計した結果である。
車両混雑度705は、車両の乗車容量に対する乗車人数である。例えば、1200人の乗車容量がある列車に120人の乗客が乗車している場合、車両混雑度705は10%である。
総待ち時間706は、路線が発着するプラットホームに乗客が到着してから列車に乗車するまでのプラットホーム内での待ち時間の合計値である。例えば、駅Aから駅Bの移動であれば、駅Aで入場者した乗客について入場時間帯ごとの乗客待ち時間607と入場者数とを乗じ、合計値を算出する。
次駅までの総増加乗車時間707は、乗客の移動時間の基準移動時間125からの増加量を合計した値である。具体的には、駅Aから駅Bまでの基準移動時間が2分、実際の移動時間が3分、乗車人数が60人である場合、駅Aから駅Bまでの総増加乗車時間707は、(3分−2分)×60=60分(1時間)となる。
乗換人数708は、例えば、図8に示す列車A502のように、列車が途中で運休した場合、運休した列車を降車し、次の列車に乗り換える乗客数である。具体的には、図8に示す列車A502において、駅Bから駅Cに移動する乗客が360人であり、列車A502が駅Bで運休した場合、駅Bから駅Cに移動する乗客360人が乗換人数として集計される。その他、快速への乗換や、乗客数が乗車容量を超えた場合に次列車を待つことについても乗換として扱ってもよい。
第2のダイヤ評価結果(全体)711は、例えば、車両混雑区間712、総待ち時間713、総増加乗車時間714、乗換人数715及びこれらを総合した総合不効用値716などを含み、ダイヤ評価結果(列車)701を集計した結果である。
車両混雑区間712は、ある路線のすべての運行区間(隣接する駅間)において、一つの列車の通過を1区間として、その通過した列車が混雑していた区間数である。具体的には、ダイヤ評価結果(列車)701に記録した車両混雑度705から、各区間を通過したときに混雑しているかを判定する。例えば、混雑率が100%以上であれば混雑していると判定し、混雑率が100%以上の区関の数を集計する。
総待ち時間713は、ダイヤ評価結果(列車)701において列車ごとかつ区間ごとに算出した総待ち時間706を全ての列車及び区間で集計した結果である。
総増加乗車時間714は、ダイヤ評価結果(列車)701で列車ごとかつ区間ごとに算出した次駅までの総増加乗車時間707を全ての列車及び区間で集計した結果である。
乗換人数715は、ダイヤ評価結果(列車)701で列車ごとかつ区間ごとに算出した乗換人数708を全ての列車及び区間で集計した結果である。
総合不効用値716は、前述した各不効用値を一つの指標として集計したものである。混雑区間、乗換人数などに所定の係数を乗じて時間換算し、全ての不効用値を時間の指標として集計した結果である。具体的には、混雑区間の1区間を1分の増加乗車時間とする、乗換1回について5分の増加乗車時間とするなど、所定の係数を乗じて時間に換算する。
前述したダイヤ評価結果(列車)701及びダイヤ評価結果(全体)711は、ダイヤ評価結果35として補助記憶装置16に格納される。
図7に戻り、説明を続ける。ステップS405において、ダイヤ評価部22は、評価結果を画面に表示する。画面の内容は以下に詳しく説明することとし、ダイヤ評価処理の説明はここで終了する。
(システム画面)
ダイヤ評価装置1は、オペレータが乗客流マトリクス作成及びダイヤ評価を行う条件を入力する画面、及びダイヤ評価結果を表示する画面などを出力する。これらの画面は、乗客流マトリクス生成部21及びダイヤ評価部22が生成する。以下に、具体的な画面の一例を説明する。
(システム画面1:メニュー画面)
図11は、メニュー画面61の一例を示す図である。
メニュー画面61は、オフラインメニュー801の項目及びリアルタイムダイヤ評価806の項目を含む。
オフラインメニュー801は、乗客流データ作成ボタン802、ダイヤ登録ボタン803、登録ダイヤ評価ボタン804及び評価結果確認ボタン805を含む。オペレータは、各ボタンを操作することによって、各処理を選択することができる。
乗客流データ作成ボタン802は、前述した乗客流マトリクス34を作成するために操作するボタンである。オペレータが乗客流データ作成ボタン802を操作すると、日付や路線などを選択する画面(図示省略)を表示する。乗客流マトリクス34は、交通機関利用者の履歴から作成されるため、選択画面で選択できる日付は交通機関の利用者履歴がある過去のものである。日付及び路線を選択するとバッチ処理によって乗客流マトリクス34が作成され、補助記憶装置16に記憶される。
ダイヤ登録ボタン803は、ダイヤを登録するために操作されるボタンである。ダイヤ登録ボタン803が操作されると、ダイヤデータ入力画面(図示省略)を表示する。ダイヤデータ入力画面では、ダイヤ情報を所定の形式(例えば、csv形式、テキスト形式など)のデータで入力する、又は通信装置14を介してネットワーク4によって接続された外部サーバ3が格納するダイヤ情報を選択し、取得してもよい。ダイヤ登録を実行するとダイヤ(交通機関運行情報)が補助記憶装置16に格納される。
登録ダイヤ評価ボタン804は、ダイヤ登録ボタン803の操作によって登録されたダイヤを評価するために操作されるボタンである。登録ダイヤ評価ボタン804が操作されると、ダイヤ評価画面を表示する。ダイヤ評価画面については後述する。
評価結果確認ボタン805は、過去に評価したダイヤを表示するために操作されるボタンである。評価結果確認ボタン805が操作されると、補助記憶装置16に格納されたダイヤ評価結果35を選択する画面(図示省略)を表示する。ダイヤ評価結果35が選択されると、ダイヤ評価画面を表示する。ダイヤ評価画面については後述する。
リアルタイムダイヤ評価806は、評価される路線とダイヤを評価するための乗客流データとを選択するために操作されるボタンである。評価路線の選択欄807において評価される路線を選択する。また、評価区間の選択欄808において選択された路線中で評価する区間(二つの駅)を選択する。なお、路線の全区間を評価対象とする場合、評価区間の選択欄808を設けなくてもよい。
また、乗客流データの選択欄809において、乗客流データを選択する。乗客流データは、指定日(ある1日のデータ)、統計値、自動選択などの項目から選択することができる。乗客流データの自動選択を設定すると、例えば、1週間前の乗客流データなど、ダイヤ評価に最適な乗客流データをシステムが自動的に選択する。なお、ダイヤ評価画面62(図12参照)で選択されるダイヤ評価範囲812の入力欄をリアルタイムダイヤ評価806に設けてもよい。
評価画面を表示ボタン810は、リアルタイムにダイヤを評価するためのボタンであり、ボタンを押すと選択した路線のダイヤ情報と乗客流データを読み込み、ダイヤ評価画面を表示する。ダイヤ評価画面については後述する。
(システム画面2:ダイヤ評価画面)
図12は、ダイヤ評価画面の一例を示す図である。
ダイヤ評価画面62は、リアルタイムにダイヤを評価するときに表示される画面の例である。ダイヤ評価画面62に設けられたダイヤ入力ボタン811を操作し、評価するダイヤを入力したり、変更することができる。ダイヤ評価画面62には入力されたダイヤ(ダイヤすじ)815が表示されており、ダイヤ評価範囲812を指定することによって、任意の時間範囲のダイヤを評価することができる。なお、ダイヤ評価範囲812をダイヤ評価画面62で指定せずに、ダイヤ評価範囲812(評価開始時刻、評価終了時刻)の入力欄をメニュー画面61に設けてもよい。
ダイヤ評価結果813は、ダイヤ評価範囲812におけるダイヤの評価結果であり、ダイヤ評価範囲812を変更すると、ダイヤ評価結果が算出され、ダイヤ評価結果813が更新される。また、ダイヤ評価結果813の各項目について、駅又は駅間(区間)毎に時系列変化を表示してもよい。このため、駅毎及び駅間毎に乗客の不効用値を集計する。ダイヤ評価画面62では、表示項目入力欄814で総待ち時間が選択されており、駅A、B、C、Dの各々の総待ち時間の時系列変化815を表示する。
以上、リアルタイムにダイヤを評価した結果を表示する画面について説明したが、オフラインで登録されたダイヤを評価する場合も同じ画面で評価結果を表示することができる。
(拡張機能1:ダイヤ修正時の処理)
前述した実施例では、一つのダイヤを評価するための処理フローについて説明した。しかし、実際にダイヤを修正する場合、複数のダイヤ案を比較したり、刻々と変化する状況に合わせてダイヤを再修正する必要が生じたりする。すなわち、軽微な修正や更新されたダイヤについて、乗客の不効用を考慮したダイヤ評価を高速に行うことが重要となる。
図13は、修正ダイヤ評価処理のフローチャートである。図13を用いて、修正ダイヤの評価手順41を説明する。図13において、ステップS601及びS608は、図7のフローチャートのステップS401及びS405と同じ処理であるため、それらの説明は省略し、図7のフローチャートとの差分のみを説明する。
ステップS602では、基準ダイヤを選択する。基準ダイヤとは、既に評価されているダイヤである。本例では、既に評価されている「ダイヤ1」が基準ダイヤとして選択され、「ダイヤ1」を微修正した「ダイヤ2」を入力ダイヤとして説明する。新たに評価される際やダイヤは「ダイヤ2」である。
ステップS603では、基準ダイヤと評価される入力ダイヤを比較する。具体的には、基準ダイヤと入力ダイヤとの差分がなければ、評価を行わず修正ダイヤ評価処理を終了し、差分があればステップS604へと進む。
ステップS604では、ダイヤの差分を算出する。ダイヤの差分とは、二つのダイヤの各列車について、各停車駅(図9の611)における、列車到着時刻612、次駅までの移動時間613、前列車との時隔614、次列車との時隔615などの差分であり、二つのダイヤで差分のある列車及び停車駅を算出する。例えば、ダイヤ2の列車Aがダイヤ1の列車Aより駅Aにおいて1分遅延している場合、列車Aの駅Aの到着時間と列車Bの駅Aでの前列車との時隔に差分が生じるため、列車Aと列車Bの駅Aでのダイヤ情報をダイヤ差分として算出する。
ステップS605では、入力ダイヤと基準ダイヤとの差分がある列車及び停車駅についてのみ乗客乗車パタンを作成する。乗客乗車パタンの作成については、図7のステップS403で説明しているため、ここでの説明は省略する。
ステップS606では、乗客の不効用値の差分を算出する。基準ダイヤである「ダイヤ1」の評価結果は既に記憶されているため、記憶された結果を参照する。入力ダイヤにおいては、図7のステップS404と同様の処理によって、乗客の不効用値を算出する。そして、これら二つの不効用値の差分を算出する。
ステップS607では、不効用値の差分を用いてダイヤを評価する。ダイヤ評価とは、入力ダイヤ(ダイヤ2)の不効用値の、基準ダイヤ(ダイヤ1)の不効用値に対する増減である。すなわち、ダイヤ修正によって乗客にとってダイヤが良くなったか(又は、悪くなったか)の程度を評価することができる。
前述したように、過去に評価したダイヤを基準とした差分のみを評価することによってダイヤ評価を高速に行うことができる。特に、ダイヤを何度も修正する場合、ダイヤ評価を行うごとに最新のダイヤを基準ダイヤとして使用することによって、評価すべきダイヤと基準ダイヤとの差分情報から高速にダイヤを評価することができる。
(拡張機能2:ダイヤ評価指標の追加)
前述した実施例では、乗客の不効用を用いたダイヤ評価について説明した。しかし、ダイヤを評価指標には乗客の不効用以外にも、運行のための電力、CO2排出量、乗務員の労働時間など、企業収益に関連する評価指標もある。ダイヤ評価装置1は列車の運行本数から消費電力を推定してもよい。また、ネットワーク4によって接続された外部システム2から取得したデータを用いて、従業員や環境に関する不効用値を算出し(又は、ネットワーク4によって接続された外部システム2から乗務員や環境に関する不効用を取得し)、乗客の不効用とともに表示してもよい。これによって、より多様な視点でダイヤを評価することができる。
(拡張したダイヤ評価画面)
図14は、拡張したダイヤ評価画面63の一例を示す図である。図14に示す拡張したダイヤ評価画面63は、図12に示すダイヤ評価画面62と同一の部分は、ダイヤ評価画面62と同じ符号を付して説明を省略し、拡張したダイヤ評価画面63とダイヤ評価画面62との異なる部分について説明する。
拡張したダイヤ評価画面63では、基準ダイヤ821及び評価ダイヤ822の運行情報(ダイヤすじ)826が表示されており、評価ダイヤ822についてのダイヤ評価結果が表示される。
乗客の不効用値の評価結果823は、基準ダイヤ821に対する評価ダイヤ822の乗客の不効用値の増減が表示する。
乗務員不効用の評価結果824は、駅構内での人員不足情報や労働時間などの従業員に関する不効用値について、基準ダイヤ821と評価ダイヤ822での差分を表示する。
環境不効用の評価結果825は、消費電力やCO2排出量などの環境要因に関する不効用について、基準ダイヤ821と評価ダイヤ822での差分を表示する。
(拡張機能3:ダイヤ評価精度の向上)
前述した乗客流マトリクス34は、移動パタン情報33を参照して交通機関利用者情報31に移動ルートを割り当て、利用路路線を推定して作成される。このとき、移動ルート割り当ての正確さがダイヤ評価の精度に影響する。すなわち、ダイヤ評価の精度を向上するためには、移動ルート推定の精度の向上が課題となる。以下、その課題の解決方法について説明する。
(拡張機能3−1:交通機関利用者の移動ルート推定)
駅間に複数の移動ルートの候補がある場合に、交通機関利用者情報31に移動パタン情報33から移動ルートを割り当てる方法について説明する。
乗客は、乗車時間、乗換回数、車両混雑度(座れるか)、運賃など複数の条件から自分の優先順位に合わせて移動ルートを決定している。例えば、乗車時間が5分長くても乗換の少ない移動ルートを選ぶ乗客もいる。そのため、交通機関の利用者が利用すると予想される全ての移動ルートの候補を移動パタン情報33に予め登録し、登録された移動ルートを適切に選択することによって、移動ルートを精度よく推定することができる。このとき、各移動ルートの所要時間の情報も登録しておく。そして、登録された移動ルートの所要時間と交通機関の利用者の実際の所要時間とを比較し、所要時間の差が最も小さい移動ルートを割り当てる。
また、割り当てられた移動ルート(路線)における出場駅の列車の到着時刻と交通機関の利用者の出場時刻とを比較して、列車の到着時刻と出場時刻との差が小さい移動ルートを割り当てることによって、推定の確度をさらに向上することができる。
しかし、移動ルート候補の中には、所要時間がほぼ同じ移動ルートも複数存在する場合がある。この課題の解決については後述する。
(拡張機能3−2:重み係数付き交通機関利用者情報の作成)
駅間に複数の移動ルートの候補があり、かつ交通機関利用者の所要時間から移動ルートを推定することが困難な場合に、交通機関利用者情報31に移動パタン情報33から移動ルートを割り当てる方法について説明する。
前述した拡張機能3−1を用いて移動ルートが選択できなかった場合、候補となる移動ルートの選択確率を算出する。移動ルートの選択確率とは、複数の移動ルートにおいて、乗客が移動ルートを選択する確率である。例えば、同じ所要時間でも路線Aを利用した移動ルートは1時間あたりの運行本数が30本、路線Bを利用した移動ルートは1時間あたりの運行本数が20本の場合、路線Aの選択確率は30/50=0.6であり、路線Bの選択確率は20/50=0.4であると算出できる。
そして、算出した移動ルートの選択確率を用いて、ある1人の移動履歴から異なる移動ルート情報を持った複数の重み係数付き交通利用者情報を作成する。
前述した例では、0.6人が路線Aを利用し(重み係数0.6)、0.4人が路線Bを利用する(重み係数0.4)と推定する。このため、移動ルートが特定できない場合でも、乗客の移動ルートを一部の移動ルートに偏ることなく割り当てることができ、マクロな視点で、実態に合致した乗客流を作成することができる。
(拡張機能3−3:交通機関利用者の迂回モデル作成)
図3、図4で示す他路線からの迂回旅客や他路線への迂回旅客のモデルを作成する方法について説明する。
迂回ルートの有無は移動パタン情報33に予め登録する。例えば、所要時間が最短の移動ルートに対し、所要時間の増加が30分以内で別の路線を使った移動ルートを迂回ルートとして登録する。乗換を含む移動の場合、利用する路線毎に迂回ルートを登録する。
迂回ルートとは、ある路線が輸送障害又は災害によって運行を休止した場合、乗客が元の移動ルートの代替として利用するルートである。そのため、迂回ルートを利用するかは、図5に示すように、元の利用路線の輸送力と迂回先路線の輸送力とで決まるモデルとして作成することができる。
乗客流マトリクス生成部21は、ステップS205において、各駅間の乗客数を集計する際に、迂回ルートの有無を判定し、迂回ルートがある乗客については輸送力に依存して迂回ルート(他路線)に迂回する乗客としてモデル化する。また、迂回先の路線について、他路線から迂回してきた乗客として同様にモデル化する。
(実施例の効果)
(1)本実施例のダイヤ評価装置1は、乗客の列車の乗車位置への到着時刻を推定し、路線、時間帯及び入場駅毎に各駅間を利用する乗客数によって表される乗客流マトリクスを生成し、前記乗客流マトリクス及びダイヤを用いて交通機関の乗車人数を推定し、乗客の不効用値を算出するので、乗客の不効用を考慮してダイヤを高速に評価することができる。よって、輸送障害や災害が発生した際に乗客への影響が少ないダイヤを迅速に作成することができる。
(2)本実施例のダイヤ評価装置1は、ある駅間の乗客数を当該駅間の前の駅間の乗客数と乗客が次駅間まで継続して乗車する確率からなる確率モデルを用いて表すので、ダイヤの修正によって、ある駅で乗車する乗客数が変動した場合においても、乗客の不効用値を高速に算出することができる。
(3)本実施例のダイヤ評価装置1は、各路線の輸送力を評価し、各路線間での相対的な輸送力に対する旅客の迂回を乗客流マトリクスの要素内にモデル化することによって、迂回路を考慮して、より正確な乗客流マトリクスを作成することができる。よって、高精度にダイヤ評価を行うことができる。
(4)本実施例のダイヤ評価装置1は、変更前ダイヤと変更後ダイヤとの差分を用いて変更後のダイヤにおける乗客の不効用値を算出し、変更後のダイヤを評価するので、より高速にダイヤを評価することができる。
(5)本実施例のダイヤ評価装置1は、車両の混雑区間数、乗客の総待ち時間、総乗車時間の増加値、及び乗換人数の少なくとも一つを用いて乗客の不効用値を算出するので、多様な観点から乗客への影響を評価することができる。
(6)本実施例のダイヤ評価装置1は、乗客流マトリクスを作成時に乗客数を集計する時間幅を列車の時隔などの条件に合わせて可変とすることによって、ダイヤ評価の精度を維持したまま、より高速にダイヤを評価することができる。
(7)本実施例のダイヤ評価装置1は、一つのODに複数の移動ルートがある場合、乗客流マトリクスの作成時に、交通機関利用者の入場駅、入場時刻、出場駅、出場時刻、所要時間の少なくとも一つを用いて利用路線を推定することによって、より正確な乗客流マトリクスを作成することができる。よって、高精度にダイヤを評価することができる。
(8)本実施例のダイヤ評価装置1は、一つのODに複数の移動ルートがある場合、一人の乗客の移動データにルート選択確率を乗じることによって複数移動ルートの各々の乗客移動データを生成するので、より正確な乗客流マトリクスを作成することができる。よって、高精度にダイヤを評価することができる。
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
1 ダイヤ評価装置
2 外部システム
3 外部サーバ
4 ネットワーク
11 中央制御装置(制御部)
12 入力装置
13 出力装置
14 通信装置
15 主記憶装置(記憶部)
16 補助記憶装置(記憶部)
21 乗客流マトリクス生成部
22 ダイヤ評価部
31 交通機関利用者情報
32 交通機関運行情報
33 移動パタン情報
34 乗客流マトリクス
35 ダイヤ評価結果

Claims (13)

  1. 交通機関の運行情報を評価する評価システムであって、
    乗客が交通機関を利用した履歴が記録される交通機関利用者情報と、入場駅と出場駅との間の移動ルートが記録される移動パタン情報とを格納する記憶部と、
    前記交通機関利用者情報及び移動パタン情報を参照し、乗客の列車の乗車位置への到着時刻を推定し、路線、前記到着時刻の時間帯及び入場駅毎に各駅間を利用する乗客数によって表される乗客流マトリクスを生成する乗客流マトリクス生成部と、
    前記乗客流マトリクス及び前記運行情報を用いて交通機関の乗車人数を推定し、乗客の不効用値を算出する評価部と、を備えることを特徴とする評価システム。
  2. 請求項1に記載の評価システムであって、
    前記評価部は、変更前後の運行情報の差分及び前記乗客流マトリクスを用いて、変更後の運行情報における乗客の不効用値を算出することを特徴とする評価システム。
  3. 請求項1に記載の評価システムであって、
    ある駅間の乗客数は、当該駅間の前の駅間の乗客数と乗客が次駅間まで継続して乗車する確率からなる確率モデルを用いて表されることを特徴とする評価システム。
  4. 請求項1に記載の評価システムであって、
    ある駅間の乗客数は、自路線輸送力、他路線輸送力、及び他列車へ乗り換える乗客数の少なくとも一つを説明変数としたモデルを用いて表されることを特徴とする評価システム。
  5. 請求項1に記載の評価システムであって、
    前記評価部は、車両の混雑区間数、乗客の総待ち時間、総乗車時間の増加値、及び乗換人数の少なくとも一つを用いて、乗客の不効用値を算出することを特徴とする評価システム。
  6. 請求項1から5のいずれか一つに記載の評価システムであって、
    前記乗客流マトリクスを集計する時間幅が可変であることを特徴とする評価システム。
  7. 請求項1から5のいずれか一つに記載の評価システムであって、
    入場駅と出場駅との間に複数の移動ルートがある場合、乗客の入場駅、入場時刻、出場駅、出場時刻及び所要時間を用いて、当該乗客が利用した路線を推定することを特徴とする評価システム。
  8. 請求項1から5のいずれか一つに記載の評価システムであって、
    入場駅と出場駅との間に複数の移動ルートがある場合、一人の乗客の移動データにルート選択確率を乗じることによって、前記複数の移動ルートの各々の乗客移動データを生成することを特徴とする評価システム。
  9. コンピュータを用いて交通機関の運行情報を評価する方法であって、
    前記コンピュータは、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを格納するメモリとを有し、
    前記メモリは、乗客が交通機関を利用した履歴が記録される交通機関利用者情報と、入場駅と出場駅との間の移動ルートが記録される移動パタン情報とを格納し、
    前記方法は、
    前記プロセッサが、前記交通機関利用者情報及び移動パタン情報を参照し、乗客の列車の乗車位置への到着時刻を推定し、路線、前記到着時刻の時間帯及び入場駅毎に各駅間を利用する乗客数によって表される乗客流マトリクスを生成し、前記メモリに格納する乗客流マトリクス生成ステップと、
    前記プロセッサが、前記乗客流マトリクス及び前記運行情報を用いて交通機関の乗車人数を推定し、乗客の不効用値を算出する評価ステップと、を含むことを特徴とする運行情報の評価方法。
  10. 請求項9に記載の評価方法であって、
    前記評価ステップでは、前記プロセッサは、変更前後の運行情報の差分及び前記乗客流マトリクスを用いて、変更後の運行情報における乗客の不効用値を算出することを特徴とする評価方法。
  11. 請求項9に記載の評価方法であって、
    ある駅間の乗客数は、当該駅間の前の駅間の乗客数と乗客が次駅間まで継続して乗車する確率からなる確率モデルを用いて表されることを特徴とする評価方法。
  12. 請求項9に記載の評価方法であって、
    ある駅間の乗客数は、自路線輸送力、他路線輸送力、及び他列車へ乗り換える乗客数の少なくとも一つを説明変数としたモデルを用いて表されることを特徴とする評価方法。
  13. 請求項9に記載の評価方法であって、
    前記評価ステップでは、車両の混雑区間数、乗客の総待ち時間、総乗車時間の増加値、及び乗換人数の少なくとも一つを用いて、乗客の不効用値を算出することを特徴とする評価方法。
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