JP6300013B2 - 車両用制動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に付与する制動力を制御する車両用制動装置に関する。
車両に付与する制動力を制御する車両用制動装置の一例として、特許文献1に示される車両用制動装置が知られている。この車両用制動装置は、運転者のブレーキペダルの操作によってマスタ室にマスタシリンダ圧を発生させるマスタシリンダ、ホイールシリンダを備えた摩擦制動装置、供給される電流に応じた制御差圧分ホイールシリンダ圧をマスタ圧よりも高い状態に保つ差圧制御弁、ホイールシリンダにブレーキフルードを吐出することによりホイールシリンダ圧を加圧するポンプを有している。
このような車両用制動装置は、回生制動力を発生させる回生制動装置を備えた車両に搭載され、回生協調制御を実現する。回生制動力は車速やバッテリの充電状態によって変化するが、摩擦制動力と回生制動力の合計が目標制動力となるように、差圧制御弁がホイールシリンダ圧を調整することにより、摩擦制動力を調整している。
特許文献1に示される車両用制動装置では、ストロークセンサによって検出されたブレーキペダルのストロークに基づいて目標制動力が演算され、目標制動力からマスタ圧センサによって検出されたマスタ圧による摩擦制動力が差し引かれて制御制動力が演算される。なお、制御制動力とは、車両用制動装置によって制御可能な制動力であり、総制動力のうちマスタ圧による摩擦制動力を除いた制動力、つまり、ポンプ加圧による摩擦制動力と回生制動力の合計である。次に、制御制動力から回生制動装置で発生させることができる回生制動力が差し引かれて、ポンプ加圧による摩擦制動力(加圧量)が演算される。そして、当該演算されたポンプ加圧による摩擦制動力が摩擦制動装置で発生するように、差圧制御弁が制御される。
特開2013−71520号公報
マスタ圧は、運転者によるブレーキペダルの操作によって変動する。特許文献1に示される車両用制動装置では、上述したように、目標制動力からマスタ圧センサによって検出されたマスタ圧による摩擦制動力が差し引かれることによって、制御制動力が演算される。このため、マスタ圧の変化によって、制御制動力が変化し、この結果ポンプ加圧による摩擦制動力(加圧量)もまた変化する。ポンプ加圧による摩擦制動力が変化すると、差圧制御弁の作動によってホイールシリンダとマスタ室間においてブレーキフルードが流通し、この結果マスタ圧が変化する。このため、運転者が急激にブレーキペダルを操作して、マスタ圧が急変した場合に、加圧量もまた急変し、加圧量の急変に伴いマスタ圧が変化し、マスタ圧が増減を繰り返してしまうハンチング現象が発生してしまう可能性があった。このように、マスタ圧が増減を繰り返すと、摩擦制動力も増減を繰り返してしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、摩擦制動力の発生時において、マスタ圧の増減が繰り返されるハンチング現象の発生を防止することができる車両用制動装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するためになされた、請求項1に係る車両用制動装置の発明は、運転者の操作力が入力される入力部材と、前記入力部材の操作量を検出する操作量検出部と、車輪に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置のホイールシリンダと接続されたマスタ室が形成され、前記入力部材に入力された運転者の操作力に応じたマスタ圧を前記マスタ室に発生させるマスタシリンダと、前記マスタ圧を検出するマスタ圧検出部と、前記マスタ室と前記ホイールシリンダの間の流路に設けられ、通電されると電流に応じた制御差圧分前記ホイールシリンダの液圧であるホイールシリンダ圧を前記マスタ圧よりも高い状態に保つ差圧制御弁と、前記ホイールシリンダ圧を前記マスタ圧よりも加圧させる場合に、前記操作量検出部によって検出された前記操作量に基づいて加圧量を演算し、前記差圧制御弁に供給される電流を制御することにより、前記ホイールシリンダ圧を前記マスタ圧に対して前記加圧量分加圧させる液圧制御部と、前記差圧制御弁側から前記マスタ室へのブレーキフルードの流入に伴い、前記マスタ圧検出部によって検出された前記マスタ圧の増加量に基づいて、前記加圧量の補正量を演算し、前記加圧量を補正する加圧量補正部と、を有する。
上記した車両用制動装置の構成によれば、液圧制御部は、操作量検出部によって検出された入力部材の操作量に基づいて加圧量を演算する。このように、マスタ圧によらずに加圧量が演算されるので、マスタ圧の変化によって加圧量が変化することが無く、差圧制御弁による制御差圧も変化することが無く、差圧制御弁とマスタ室間においてブレーキフルードが流通しないので、マスタ圧もまた変化しない。このため、マスタ圧の急変に起因して、マスタ圧が増減を繰り替えしてしまうハンチング現象の発生が防止される。
また、加圧量補正部は、差圧制御弁側からマスタ室へのブレーキフルードの流入に伴い、マスタ圧検出部によって検出されたマスタ圧の増加量に基づいて、加圧量の補正量を演算し、加圧量を補正する。これにより、例えば、差圧制御弁側からマスタ室へのブレーキフルードの流入に伴いマスタ圧が増加した場合に、加圧量補正部が、マスタ圧の増加量に応じて、加圧量を減少させることにより、マスタ圧の増加に伴う摩擦制動力の増加が防止される。
本実施形態の摩擦制動ユニットが搭載されるハイブリッド車両の一実施の形態を示す概要図である。 本実施形態の摩擦制動ユニットの構成を示す部分断面説明図である。 「減圧モード」時のスプールピストン及びスプールシリンダの拡大図である。 ブレーキストロークと制動力との関係の一例を表したグラフである。 「増圧モード」時のスプールピストン及びスプールシリンダの拡大図である。 「保持モード」時のスプールピストン及びスプールシリンダの拡大図である。 ハイドロブースタ後部の詳細図である。 経過時間と、ブレーキストローク、回生制動力、マスタ圧、加圧量との関係を表したタイムチャートである。 制動制御処理のフローチャートである。 加圧量補正処理のフローチャートである。 ブレーキストロークとリファレンス圧との関係を表したリファレンス圧マップを示した図である。 マスタ圧勾配の絶対値とゲインとの関係を表したゲインマップを示した図である。 ブレーキストロークの変化量の絶対値とゲインとの関係を表したゲインマップを示した図である。
(ハイブリッド車両)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の摩擦制動ユニットB(車両用制動装置)が搭載されるハイブリッド車両(以下、単に車両と略す)は、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右前輪Wfl、Wfrが駆動される車両である。車両は、ブレーキECU6、エンジンECU8、ハイブリッドECU9、ハイドロブースタ10、調圧装置53、液圧発生装置60、ブレーキペダル71、ブレーキセンサ72、エンジン501、モータ502、動力分割機構503、動力伝達機構504、インバータ506、バッテリ507を有している。
なお、本実施形態の摩擦制動ユニットBは、主に、ブレーキECU6、ハイドロブースタ10、調圧装置53、液圧発生装置60、ブレーキペダル71、ブレーキセンサ72、から構成されている。なお、ブレーキECU6は、特許請求の範囲に記載の「液圧制御部」及び「加圧量補正部」を構成している。
エンジン501の駆動力は、動力分割機構503及び動力伝達機構504を介して駆動輪Wfl、Wfrに伝達される。モータ502の駆動力は、動力伝達機構504を介して駆動輪Wfl、Wfrに伝達される。
インバータ506は、モータ502及び発電機505と、直流電源としてのバッテリ507との間で電圧を変換するものである。エンジンECU8は、ハイブリッドECU9からの指令に基づいてエンジン501の駆動力を調整する。ハイブリッドECU9は、インバータ506を通してモータ502及び発電機505を制御する。ハイブリッドECU9は、バッテリ507が接続されており、バッテリ507の充電状態、充電電流などを監視している。ハイブリッドECU9は、発電機505によって発生され車輪Wfl、Wfrに付与される回生制動力が、後述の「実行回生制動力」となるように、インバータ506を制御する。上述した発電機505、インバータ506、及びバッテリ507から回生制動装置Aが構成されている。図1に示した実施形態では、モータ502と発電機505は別体であるが、モータと発電機が一体となった、モータジェネレータであっても差し支え無い。
各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrに隣接する位置には、各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrと一体回転するブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrと、ブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrにブレーキパッド(不図示)を押し付けて摩擦制動力を発生させる摩擦制動装置Bfl、Bfr、Brl、Brrが設けられている。摩擦制動装置Bfl、Bfr、Brl、Brrには、後述のハイドロブースタ10(図2示)により生成されるマスタ圧により、上記ブレーキパッドをブレーキディスクDRfl、DRfr、DRrl、DRrrに押し付けるホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrが設けられている。
各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrに隣接する位置には、車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrが設けられている。車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrは、各車輪Wfl、Wfr、Wrl、Wrrの回転に応じた周波数のパルス信号をブレーキECU6に出力している。ブレーキECU6は、車輪速センサSfl、Sfr、Srl、Srrからの信号に基づいて、車速Vを演算する。
ブレーキセンサ72は、ブレーキペダル71の操作量(以下、ブレーキストロークと略す)を検出して、その検出信号をブレーキECU6に出力する。
(液圧発生装置)
次に、図2を用いて、液圧発生装置60について説明する。液圧発生装置60は、アキュムレータ圧を発生させるものである。液圧発生装置60は、アキュムレータ61、液圧ポンプ62、モータ63、アキュムレータ圧センサ65を有している。
アキュムレータ61は、液圧ポンプ62により発生したブレーキフルードの液圧であるアキュムレータ圧を蓄圧するものである。アキュムレータ61は、流路66により、アキュムレータ圧センサ65、及び液圧ポンプ62と接続されている。液圧ポンプ62は、リザーバ19と接続されている。液圧ポンプ62は、モータ63によって駆動されて、リザーバ19で貯留されたブレーキフルードをアキュムレータ61に供給する。
アキュムレータ圧センサ65は、アキュムレータ61内の液圧であるアキュムレータ圧を検出する。アキュムレータ圧が所定値以下に低下したことがアキュムレータ圧センサ65によって検出されると、ブレーキECU6からの制御信号に基づいてモータ63が駆動される。
(ハイドロブースタ)
以下に、図2を用いて、ハイドロブースタ10について説明する。ハイドロブースタ10は、液圧発生装置60によって発生されたアキュムレータ圧をブレーキペダル71の操作に応じて調圧してサーボ圧を発生させ、当該サーボ圧からマスタ圧Pmを発生させるものである。
ハイドロブースタ10は、マスタシリンダ11、フェイルシリンダ12、第一マスタピストン13、第二マスタピストン14、入力ピストン15、オペロッド16、第一リターンスプリング17、第二リターンスプリング18、リザーバ19、ストッパ部材21、メカニカルリリーフバルブ22、スプールピストン23、スプールシリンダ24、スプールスプリング25、シミュレータスプリング26、ペダルリターンスプリング27、揺動部材28、第一スプリング受け29、第二スプリング受け30、連結部材31、移動部材32、保持ピストン33、シミュレータラバー34、受け部材35、フェイルスプリング36、緩衝部材37、第一スプールスプリング受け38、第二スプールスプリング受け39、押圧部材40、及びシール部材41〜49を有している。
なお、第一マスタピストン13が設けられている側を、ハイドロブースタ10の前方とし、オペロッド16が設けられている側を、ハイドロブースタ10の後方とする。つまり、ハイドロブースタ10(マスタシリンダ11)の軸線方向は、前後方向である。
マスタシリンダ11は、前端に底部11aを有し、後方に開口した有底筒状である。言い換えると、マスタシリンダ11は、前後方向に円柱形状の空間11pを有する。マスタシリンダ11は、車両に取り付けられている。マスタシリンダ11には、前方から後方に向かって順に、空間11p内に連通する、第一ポート11b、第二ポート11c、第三ポート11d、第四ポート11e、第五ポート11f(供給ポート)、第六ポート11g、第七ポート11hが形成されている。第二ポート11c、第四ポート11e、第六ポート11g、第七ポート11hは、ぞれぞれ、ブレーキフルードを貯留するリザーバ19と接続している。つまり、リザーバ19は、マスタシリンダ11の空間11pに接続されている。
マスタシリンダ11の内周面の第二ポート11cが設けられている位置の前後には、それぞれ、後述の第一マスタピストン13の外周面と全周に渡って接触するシール部材41、42が設けられている。また、マスタシリンダ11の内周面の第四ポート11eが設けられている位置の前後には、それぞれ、後述の第二マスタピストン14の外周面と全周に渡って接触する。シール部材43、44が設けられている。
また、マスタシリンダ11の内周面の第五ポート11fが設けられている位置の前後には、それぞれ、後述のフェイルシリンダ12の第一筒部12b及び第二筒部12cと全周に渡って接触するシール部材45、46が設けられている。また、マスタシリンダ11の内周面の第七ポート11hが設けられている位置の前後には、それぞれ、フェイルシリンダ12の第二筒部12cと全周に渡って接触するシール部材48、49が設けられている。
シール部材45の前方には、サポート部材59が設けられている。シール部材45とサポート部材59は、マスタシリンダ11の内部に凹陥形成された同一の保持凹部11j内に保持され、互いに接触している(図3示)。サポート部材59は、割リングである。サポート部材59には、スリットが形成されている。サポート部材59は、樹脂等の弾性を有する材料で構成されている。図3に示すように、サポート部材59の内周面は、後述のフェイルシリンダ12の第一筒部12bの外周面と接触している。
図2に示すように、第五ポート11f(供給ポート)は、マスタシリンダ11の外周面と空間11p内を連通している。第五ポート11fは、流路67によってアキュムレータ61に接続している。つまり、アキュムレータ61は、マスタシリンダ11の空間11pと接続されていて、第五ポート11fには、アキュムレータ圧が供給される。
第五ポート11fと第六ポート11gは、連通流路11kによって連通している。連通流路11kには、メカニカルリリーフバルブ22が設けられている。メカニカルリリーフバルブ22は、第六ポート11gから第五ポート11fへのブレーキフルードの流通を阻止するとともに、第五ポート11fが規定圧力以上となった場合に、第五ポートfから第六ポート11gへのブレーキフルードの流通を許容する。
第一マスタピストン13は、マスタシリンダ11の空間11p内の前方(底部11aの後方)に、前後方向に摺動可能に設けられている。第一マスタピストン13は、円筒形状の筒部13aと、筒部13aの後方に筒部13aを閉塞するように形成された受け部13bとから構成された有底筒状である。筒部13aには、流通穴13cが形成されている。なお、受け部13bの前方側において、マスタシリンダ11の内周面、筒部13a、及び受け部13bによって囲まれる空間によって第一マスタ室10aが形成されている。第一ポート11bは、第一マスタ室10aに連通している。
マスタシリンダ11の底部11aと第一マスタピストン13の受け部13bとの間には、第一リターンスプリング17が設けられている。この第一リターンスプリング17によって、第一マスタピストン13が後方に付勢され、ブレーキペダル71が踏まれていない場合に、第一マスタピストン13が、図2に示す原位置に復帰するようになっている。
第一マスタピストン13が原位置に位置している状態では、第二ポート11cと流通穴13cとが合致し、リザーバ19と第一マスタ室10aが連通している。このため、リザーバ19から第一マスタ室10aにブレーキフルードが供給されるとともに、第一マスタ室10a内にある余剰のブレーキフルードがリザーバ19に戻される。第一マスタピストン13が原位置から前方に移動すると、第二ポート11cが筒部13aによって遮断され、第一マスタ室10aが密閉状態となり、第一マスタ室10aにおいてマスタ圧Pmが発生可能な状態となる。
第二マスタピストン14は、マスタシリンダ11の空間11p内の第一マスタピストン13の後方に、前後方向に摺動可能に設けられている。第二マスタピストン14は、その前部に形成された円筒形状の第一筒部14aと、第一筒部14aの後方に形成された円筒形状の第二筒部14bと、第一筒部14aと第二筒部14bの接続部分において第一筒部14a及び第二筒部14bを閉塞するように形成された受け部14cとから構成されている。第一筒部14aには、流通穴14dが形成されている。
なお、受け部14cの前方において、受け部13b、マスタシリンダ11の内周面、第一筒部14a、及び受け部14cによって囲まれる空間によって第二マスタ室10bが形成されている。第三ポート11dは、第二マスタ室10bに連通している。
第一マスタピストン13の受け部13bと、受け部14cとの間には、第一リターンスプリング17よりセット荷重の大きな第二リターンスプリング18が設けられている。この第二リターンスプリング18によって、第二マスタピストン14が後方に付勢され、ブレーキペダル71が踏まれていない場合に、第二マスタピストン14が、図2に示す原位置に復帰するようになっている。
第二マスタピストン14が原位置に位置している状態では、第四ポート11eと流通穴14dとが合致し、リザーバ19と第二マスタ室10bが連通している。このため、リザーバ19から第二マスタ室10bにブレーキフルードが供給されるとともに、第二マスタ室10b内にある余剰のブレーキフルードがリザーバ19に戻される。第二マスタピストン14が原位置から前方に移動すると、第四ポート11eが筒部14aによって遮断され、第二マスタ室10bが密閉状態となり、第二マスタ室10bにおいてマスタ圧Pmが発生可能な状態となる。
フェイルシリンダ12は、マスタシリンダ11の空間11p内の第二マスタピストン14の後方に、前後方向摺動可能に設けられている。フェイルシリンダ12は、前方から後方に向かって、先端筒部12a、第一筒部12b、第二筒部12cが同軸に一体形成されている。先端筒部12a、第一筒部12b、第二筒部12cのいずれも円筒形状である。先端筒部12aの外径a、第一筒部12bの外径b、第二筒部12cの外径cの順に大きくなっている。先端筒部12aと第一筒部12bの間には、段差状となっていて押圧面12iが形成されている。
第二筒部12cの後端には、フランジ状の当接部12hが外側に延出形成されている。当接部12hが後述のストッパ部材21と当接し、フェイルシリンダ12がマスタシリンダ11から脱落しないようになっている。第二筒部12cの後部の内周面は他の部分比べて内径が大きくなっていて、段差面12jが形成されている。
先端筒部12aは、第二マスタピストン14の第二筒部14b内に挿通している。第一筒部12bの後部には、第一筒部12bの外周面から内周面に連通する第一インナーポート12dが形成されている。第二筒部12cの前部には、第二筒部12cの外周面から内周面に連通する、第二インナーポート12e、第三インナーポート12fが形成されている。第二筒部12cの中間部には、第二筒部12cの外周面と内周面を連通し、フェイルシリンダ12内に設けられた入力ピストン15の前方に向けて開口する第四インナーポート12gが形成されている
図3に示すように、第二筒部12cの内周の前部には、ストッパ12mが突出形成されている。ストッパ12mには、前後方向に流路12nが連通形成されている。
図2に示すように、入力ピストン15は、後述のスプールシリンダ24やスプールピストン23の後方において、フェイルシリンダ12の第二筒部12cの後部の内部(マスタシリンダ11の空間11p内)に前後方向摺動可能に設けられている。入力ピストン15は、断面円形状を有する略円柱形状である。入力ピストン15の後端には、底部が円錐状に凹陥したロッド受け部15aが形成されている。入力ピストン15の前部には、スプリング受け部15bが凹陥形成されている。入力ピストン15の後部は他の部分と比べて外径が小さくなっていて、段差面15eが形成されている。
入力ピストン15の外周面には、シール保持凹部15c、15dが凹陥形成されている。シール保持凹部15c、15dには、フェイルシリンダ12の第二筒部12cの内周面と全周に渡って接触するシール部材55、56が取り付けられている。
入力ピストン15は、オペロッド16及び連結部材31を介して、ブレーキペダル71に連結されている。このため、入力ピストン15には、ブレーキペダル71からの操作力が、連結部材31及びオペロッド16を介して伝達される。また、入力ピストン15は、伝達された操作力を、シミュレータスプリング26、移動部材32、シミュレータラバー34、保持ピストン33、緩衝部材37を介して、スプールピストン23に伝達して、スプールピストン23を駆動する。
図7に示すように、受け部材35は、円筒部35aと、円筒部35aの前端から内側に延出するリング状の受け部35bとから構成されている。受け部材35は、受け部35bの前端面が、第二筒部12cの段差面12j及び入力ピストン15の段差面15eと当接して、第二筒部12cの内部の後端部に設けられている。
ストッパ部材21は、マスタシリンダ11の内部の後部に摺動可能に設けられている。ストッパ部材21は、リング状の基部21aと、基部の前面から前方に突出する円筒形状の円筒部21bと、円筒部21bの前端から内側に延出したリング状のストッパ部21cから構成されている。
円筒部21bの内側の基部21aの前面には、受け面21dが形成されている。受け面21dにフェイルシリンダ12の当接部12hが当接している。基部21aの前面の受け面21dよりも内側にはリング状に凹陥した保持凹部21fが形成されている。この保持凹部21fに、受け部材35の円筒部35aの後端が挿通している。基部21aの前面の保持凹部21fよりも内側にはリング状に前方に突出した突出部21gが形成されている。
基部21aの後端面の中心には、球面状に凹陥した形状の受け穴21eが形成されている。マスタシリンダ11の内部の後端、つまり、マスタシリンダ11の開口部には、Cリング86が取り付けられている。このCリング86によって、ストッパ部材21のマスタシリンダ11からの脱落が防止される。
揺動部材28は、リング状である。揺動部材28の前部には、受け穴21eと合致する球面状の押圧面28aが形成されている。押圧面28aが受け穴21eに密接して、揺動部材28がストッパ部材21の後方に設けられている。揺動部材28はストッパ部材21に対して揺動可能である。
フェイルスプリング36は、受け部材35の円筒部35a内において、受け部材35の受け部35bとストッパ部材21の突出部21gの間に設けられている。本実施形態では、フェイルスプリング36は、複数のダイヤフラムスプリングである。このような構成によって、フェイルスプリング36は、フェイルシリンダ12をマスタシリンダ11に対して前方に付勢している。
第一スプリング受け29は、円筒部29aと、円筒部29aの前端に、内側及び外側に延出形成されたフランジ状のフランジ部29bとから構成されている。フランジ部29bが揺動部材28の後端面に密接して、第一スプリング受け29が揺動部材28の後方に設けられている。
オペロッド16の前端には、球状の押圧部16aが形成されている。オペロッド16の後端には、ネジ部16bが形成されている。押圧部16aがロッド受け部15aに挿通して、オペロッド16が入力ピストン15の後端に連結している。なお、オペロッド16の長手方向は、前後方向となっている。オペロッド16は、揺動部材28及び第一スプリング受け29に挿通している。
第二スプリング受け30は、第一スプリング受け29と対向して、第一スプリング受け29の後方に設けられている。第二スプリング受け30は、その後端に形成された底部30aと、底部30aから前方に形成された筒部30bとから構成された有底筒状である。底部30aにはネジ穴30cが形成されている。ネジ穴30cに、オペロッド16のネジ部16bが螺着している。
ペダルリターンスプリング27は、第一スプリング受け29のフランジ部29bと第二スプリング受け30の底部30aとの間に設けられている。ペダルリターンスプリング27は、第一スプリング受け29の円筒部29aと第二スプリング受け30の筒部30bの内側で保持されている。
連結部材31の前端には、ネジ穴31aが形成されている。ネジ穴31aにオペロッド16のネジ部16bが螺着して、連結部材31がオペロッド16の後端に連結されている。第二スプリング受け30の底部30aは、連結部材31の前端と当接している。連結部材31の前後方向中間部分には、軸穴31bが連通形成されている。第二スプリング受け30のネジ穴30cと連結部材31のネジ穴31aがオペロッド16のネジ部16bと螺着している。このような構造により、連結部材31のオペロッド16に対する前後方向位置が調整可能となっている。
ブレーキペダル71は、運転者の踏力(操作力)が伝達されるレーバー状の部材である。ブレーキペダル71の中間部分には、軸穴71aが形成されている。ブレーキペダル71の上端には、取付穴71bが形成されている。取付穴71bにボルト81が挿通して、取付穴71bを揺動中心として、ブレーキペダル71が車両の取付部(図2に示す一点鎖線)に揺動可能に取り付けられている。軸穴71aと、連結部材31の軸穴31bに、連結ピン82が挿通して、ブレーキペダル71が連結部材31に揺動可能に連結されている。ペダルリターンスプリング27の付勢力によって、第二スプリング受け30及び連結部材31が後方に付勢され、ブレーキペダル71が図2に示す原位置に復帰する。
図2に示すように、保持ピストン33は、フェイルシリンダ12の第二筒部12cの内部の前方に(マスタシリンダ11の空間11p内に)前後方向摺動可能に設けられている。保持ピストン33は、その前部に形成された底部33aと、底部33aの後方に形成された筒部33bとから構成された有底筒状である。底部33aの前端面には保持凹部33cが凹陥形成されている。筒部33bの外周面には、シール保持凹部33dが凹陥形成されている。シール保持凹部33dには、フェイルシリンダ12の第二筒部12cの内周面と全周に渡って接触するシール部材75が取り付けられている。図3に示すように、第二筒部12cの内周面には、Cリング85が取り付けられている。保持ピストン33の後端がCリング85に当接して、保持ピストン33の後方への摺動が阻止される。
図2に示すように、移動部材32は、フェイルシリンダ12の第二筒部12c内(マスタシリンダ11の空間11p内)の保持ピストン33(スプールピストン23)の後方に、前後方向摺動可能に設けられている。移動部材32は、その前端部に形成されたフランジ状のフランジ部32aと、フランジ部32aの後方に形成された軸部32bとから構成されている。
フランジ部32aの前端面には、ラバー受け凹部32cが凹陥形成されている。ラバー受け凹部32cには、円柱形状のシミュレータラバー34が取り付けられている。シミュレータラバー34は、フランジ部32aから前方に突出している。原位置では、シミュレータラバー34(移動部材32)は保持ピストン33(スプールピストン23)と離間している。
フランジ部32aには、フランジ部32a前方と保持ピストン33間に形成される空間と後述のシミュレータ室10fとを連通する流路32hが形成されている。このため、移動部材32が保持ピストン33に対して摺動した場合に、前記空間とシミュレータ室10f間においてブレーキフルードが相互に流通し、移動部材32の保持ピストン33に対する摺動が阻害されない。
フェイルシリンダ12の第二筒部12c、保持ピストン33、入力ピストン15により囲まれる空間によってシミュレータ室10fが形成されている。シミュレータ室10f内には、ブレーキフルードが満たされている。
シミュレータスプリング26は、シミュレータ室10f内において、移動部材32のフランジ部32aと入力ピストン15のスプリング受け部15bとの間に設けられている。つまり、シミュレータスプリング26は、フェイルシリンダ12の第二筒部12c内(マスタシリンダ11の空間11p内)において、入力ピストン15の前方に設けられている。シミュレータスプリング26内に移動部材32の軸部32bが挿通し、シミュレータスプリング26が軸部32bで保持されている。本実施形態では、シミュレータスプリング26の前部は、移動部材32の軸部32bに圧入されている。このような構成により、シミュレータラバー34(移動部材32)が保持ピストン33に当接した状態から更に入力ピストン15が前方に移動した場合に、シミュレータスプリング26によって入力ピストン15を後方に付勢される。移動部材32には、ブレーキペダル71、連結部材31、オペロッド16、入力ピストン15、及びシミュレータスプリング26を介して、運転者の操作力が入力される。
第一インナーポート12dは、フェイルシリンダ12の第一筒部12bの外周面に向けて開口している。上述したように、第二筒部12cの外径cは第一筒部12bの外径bよりも大きい。このため、第五ポート11fにアキュムレータ圧が作用すると、当該アキュムレータ圧及び第一筒部12bと第二筒部12cとの断面積差により、フェイルシリンダ12には後方への力が作用してストッパ部材21に押し付けられ、フェイルシリンダ12がその摺動範囲の最後端の原位置に位置される。
フェイルシリンダ12が原位置にある状態では、第四インナーポート12gは、マスタシリンダ11の第七ポート11hと連通している。このように、シミュレータ室10fとリザーバ19は、第四インナーポート12gと第七ポート11hとからなる「リザーバ流路」によって連通し、入力ピストン15の前後方向の摺動に伴い、シミュレータ室10fの容積が変化した場合には、シミュレータ室10f内のブレーキフルードがリザーバ19に戻され、又は、リザーバ19からブレーキフルードがシミュレータ室10fに供給される。このため、入力ピストン15の前後方向の摺動が阻害されない。
図3に示すように、スプールシリンダ24は、フェイルシリンダ12の第一筒部12b内(マスタシリンダ11の空間11p内)の第二マスタピストン14の後方に固定されている。スプールシリンダ24は、円筒形状である。スプールシリンダ24の外周面には、シール保持凹部24a、24bが凹陥形成されている。シール保持凹部24a、24bには、第一筒部12bの内周面と全周に渡って接触するシール部材57、58が保持されている。これらシール部材57、58と第一筒部12bの内周面との摩擦力により、スプールシリンダ24の第一筒部12bに対する前方への移動が阻止される。スプールシリンダ24の後端がストッパ12mに当接して、スプールシリンダ24の後方への移動が阻止される。
スプールシリンダ24には、スプールシリンダ24の外周面と内周面を連通するスプールポート24cが形成されている。スプールポート24cは、第一インナーポート12dと連通している。スプールポート24cよりも後方のスプールシリンダ24の内周面には、第一スプール凹部24dが全周に渡って凹陥形成されている。第一スプール凹部24dよりも後方のスプールシリンダ24の内周面には、第二スプール凹部24fが全周に渡って凹陥形成されている。
シール保持凹部24bよりも後方のスプールシリンダ24の外周面には、流通凹部24eが全周に渡って凹陥形成されている。第三インナーポート12fは、流通凹部24eに向けて開口している。従って、流通凹部24eは、第三インナーポート12f及び第六ポート11gを介して、リザーバ19に連通している。
スプールピストン23は、断面円形状を有する円柱形状である。スプールピストン23は、スプールシリンダ24内に前後方向摺動可能に挿通している。スプールピストン23の後端部23aが保持ピストン33の保持凹部33cに挿通して、スプールピストン23が保持ピストン33に保持されている。
保持凹部33cの底部とスプールピストン23の後端面との間には、緩衝部材37が設けられている。緩衝部材37は、本実施形態では、弾性を有する円柱形状のゴムで構成されているが、コイルスプリングやダイヤフラムスプリング等の付勢部材であっても差し支え無い。
スプールピストン23の外周面の前後方向中間位置には、全周に渡って第三スプール凹部23bが凹陥形成されている。第三スプール凹部23bの後方位置のスプールピストン23の外周面には、全周に渡って第四スプール凹部23cが凹陥形成されている。スプールピストン23には、その前端から中間よりもやや後方位置まで、流通穴23eが形成されている。スプールピストン23には、第四スプール凹部23cと流通穴23eを連通する第一流通ポート23d、第二流通ポート23fが形成されている。
図2に示すように、第二マスタピストン14の受け部14cの後方のマスタシリンダ11の空間11p内において、第二マスタピストン14、マスタシリンダ11の空間11p、スプールピストン23の前端、スプールシリンダ24の前端で囲まれる空間が、サーボ室10cである。
図2に示すように、第一スプールスプリング受け38は、受け部38a、取付部38b、とから構成されている。受け部38aは、円板状である。受け部38aは、フェイルシリンダ12の先端筒部12aの開口部を閉塞するように、先端筒部12a内の前方に取り付けられている。取付部38bは、円筒形状であり、受け部38aの前面の中心から前方に突出形成されている。取付部38bの内周面には、ネジ溝が形成されている。受け部38aの後面の中心には後方に当接部38cが突出形成されている。受け部38aには、前後方向に連通する流通穴38dが形成されている。
押圧部材40は、棒状である。押圧部材40の後部は、取付部38bのネジ溝に螺着している。
図3に示すように、第二スプールスプリング受け39は、その前端に底部39cを有する有底筒状の本体部39aと、本体部39aの後端に外側に延出形成されたリング状の受け部39bとから構成されている。本体部39aの内周面にスプールピストン23の前端が嵌合して、第二スプールスプリング受け39がスプールピストン23の先端に取り付けられている。底部39cには連通穴39dが形成されている。図2に示すように、第二スプールスプリング受け39は、第一スプールスプリング受け38の当接部38cと所定距離離間して対向している。
図2や図3に示すように、スプールスプリング25は、第一スプールスプリング受け38の受け部38aと、第二スプールスプリング受け39の受け部39bの間に設けられている。スプールスプリング25によって、スプールピストン23はフェイルシリンダ12(マスタシリンダ11)やスプールシリンダ24に対して後方に付勢されている。
シミュレータスプリング26のバネ定数は、スプールスプリング25のバネ定数よりも大きく設定されている。また、シミュレータスプリング26のバネ定数は、ペダルリターンスプリング27のバネ定数よりも大きく設定されている。
(シミュレータ)
以下に、シミュレータスプリング26、ペダルリターンスプリング27、及びシミュレータラバー34から構成される「シミュレータ」について説明する。「シミュレータ」は、ブレーキペダル71のストロークに応じて、ブレーキペダル71に荷重(反力)を発生させ、通常のブレーキ装置の操作感(踏力感)を再現する機構である。
ブレーキペダル71が踏まれると、まず、ペダルリターンスプリング27が縮む。この際に、ブレーキペダル71に作用する反力は、ペダルリターンスプリング27のセット荷重に、ペダルリターンスプリング27のバネ定数にブレーキペダル71(連結部材31)のストロークを乗算した値を加えた値となる。
更にブレーキペダル71が踏み込まれ、シミュレータラバー34が保持ピストン33に当接すると、ペダルリターンスプリング27及びシミュレータスプリング26が縮む。この際にブレーキペダル71に作用する反力は、シミュレータスプリング26及びペダルリターンスプリング27の発生荷重の合成値となる。このため、シミュレータラバー34が保持ピストン33に当接する前と比較して、ブレーキペダル71のストロークあたりのブレーキペダル71に作用する反力の増加量が大きくなる。
なお、シミュレータラバー34が存在する為、実際にはシミュレータラバー34が保持ピストン33に当接してから、更にブレーキペダル71が踏まれると、シミュレータラバー34が圧縮される。シミュレータラバー34は、その性質から、圧縮されるに従って徐々にバネ定数が上昇する。このため、シミュレータラバー34が保持ピストン33に当接する前後において、ブレーキペダル71のストローク当たりのブレーキペダル71に作用する反力が徐変し、前記反力の急変に伴う運転者の違和感が抑制される。
このように、シミュレータラバー34が保持ピストン33に当接するまで、ブレーキペダル71のストロークあたりのブレーキペダル71に作用する反力の増加量が小さく、シミュレータラバー34が保持ピストン33に当接した後は、ブレーキペダル71のストロークあたりのブレーキペダル71に作用する反力の増加量が大きくなり、通常のブレーキ装置の操作感が再現されるようになっている。
(調圧装置)
調圧装置53は、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrrにおいて発生するホイールシリンダ圧を増圧又は減圧するのであり、周知のアンチロックブレーキ制御や横滑り防止制御を実現するものである。第一マスタ室10aに連通する第一ポート11bには、主流路52及び調圧装置53を介してホイールシリンダWCfr、WCflが接続されている。また、第二マスタ室10bに連通する第三ポート11dには、主流路51及び調圧装置53を介してホイールシリンダWCrr、WCrlが接続されている。
ここで、調圧装置53について、4つのホイールシリンダのうち1つ(WCfr)にホイールシリンダ圧を供給する構成について説明し、他の構成については同様であるため説明を省略する。図2に示すように、調圧装置53は、保持弁531、減圧弁532、調圧リザーバ533、ポンプ534、モータ535、差圧制御弁536、マスタ圧センサ539を備えている。保持弁531は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。保持弁531は、一方が差圧制御弁536に接続され、他方がホイールシリンダWCfr及び減圧弁532に接続されている。
減圧弁532は、常閉型の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。減圧弁532は、一方がホイールシリンダWCfr及び保持弁531に接続され、他方が減圧流路157によって調圧リザーバ533の貯留室533eに接続されている。減圧弁532が開状態となると、ホイールシリンダWCfrと調圧リザーバ533の貯留室533eが連通し、ホイールシリンダWCfrのホイールシリンダ圧が低下する。
差圧制御弁536は、常開型の電磁弁であり、ブレーキECU6により制御される。差圧制御弁536は、一方が第一マスタ室10aに連通する第一ポート11bに接続され、他方が保持弁531に接続されている。つまり、差圧制御弁536は、第一マスタ室10aとホイールシリンダWCfrの間の主流路52に設けられている。差圧制御弁536が通電されると、差圧制御弁536は差圧状態となり、ホイールシリンダ圧がマスタ圧Pmよりも制御差圧以上高くなった場合にのみ、ホイールシリンダWCfr側から第一マスタ室10a側へのブレーキフルードの流通が許容される。
差圧制御弁536が差圧状態となると、後述のポンプ534によって加圧されたブレーキフルードによって、ホイールシリンダ圧はマスタ圧Pmよりも制御差圧分だけ高い状態に保たれる。つまり、マスタ圧Pmが0の場合には、ホイールシリンダ圧は制御差圧となる。なお、上記制御差圧は、差圧制御弁536に供給される電流量に比例して大きくなる。差圧制御弁536に供給される電流量は、ブレーキECU6によってリニア電流制御される。なお、ここでいうリニア電流制御とは、差圧制御弁536を駆動する電圧DUTY比を変更し、実効電流を除変させるPWM制御が含まれる。
調圧リザーバ533は、シリンダ533a、ピストン533b、スプリング533c、流路調整弁533dとから構成されている。シリンダ533a内には、ピストン533bが摺動可能に設けられている。シリンダ533aとピストン533bによって囲まれた空間によって貯留室533eが形成されている。ピストン533bが摺動することにより、貯留室533eの容積が変化する。貯留室533e内にはブレーキフルードが貯留されている。スプリング533cは、シリンダ533aの底部とピストン533bの間の空間に設けられていて、貯留室533eの容積を減少させる方向にピストン533bを付勢している。
主流路52の差圧制御弁536よりも第一マスタ室10a側は、第一吸入流路158及び流路調整弁533dを介して貯留室533eに接続している。貯留室533e内の圧力が高まるに従って、つまり貯留室533eの容積が増大する方向にピストン533bが摺動するに従って、流路調整弁533dによって貯留室533eと第一吸入流路158の間の流路が絞られる。
ポンプ534は、ブレーキECU6の指令に応じたモータ535の作動によって駆動される。ポンプ534の吸込口は、第二吸入流路159を介して貯留室533eに接続されている。ポンプ534の吐出口は、ポンプ加圧流路156を介して、差圧制御弁536と保持弁531の間の主流路52に接続されている。ポンプ加圧流路156には、逆止弁zが設けられている。ここでの逆止弁zは、ポンプ534から主流路52(第一マスタ室10a)への流れを許容し、その逆方向の流れを規制する。なお、ポンプ534が吐出したブレーキフルードの脈動を緩和するために、ポンプ534の上流側にはダンパ(図示せず)が設けられていてもよい。
第一吸入流路158には、第一吸入流路158内の液圧を検出することにより、マスタ圧Pmを検出し、その検出値をブレーキECU6に出力するマスタ圧センサ539が設けられている。
第一マスタ室10aにおいてマスタ圧Pmが発生していない状態では、第一吸入流路158を介して第一マスタ室10aと接続している貯留室533e内の圧力が高くないので、流路調整弁533dによって第一吸入流路158と貯留室533e間の流路が絞られていない。このため、ポンプ534は第一マスタ室10aから第一吸入流路158及び貯留室533eを介してブレーキフルードを吸入することができる。
一方で、第一マスタ室10aにおいてマスタ圧Pmが上昇すると、当該マスタ圧Pmが第一吸入流路158を介してピストン533bに作用する力によって、流路調整弁533dが作動して、流路調整弁533dによって貯留室533eと第一吸入流路158の間の流路が絞られて閉塞される。
この状態で、ポンプ534が駆動されると、貯留室533e内のブレーキフルードがポンプ534によって吐出される。そして、所定量以上のブレーキフルードが貯留室533eからポンプ534に供給されると、流路調整弁533dによって閉塞されている貯留室533eと第一吸入流路158の間の流路が微少に開き、ブレーキフルードが第一マスタ室10aから第一吸入流路158を介して貯留室533eに供給され、次いで、ポンプ534に供給される。
調圧装置53の減圧モード時においては、減圧弁532が開状態とされ、ホイールシリンダWCfrのホイールシリンダ圧が低下する。そして、差圧制御弁536が開状態とされ、ポンプ534はホイールシリンダWCfr内のブレーキフルード又は貯留室533e内に貯留されているブレーキフルードを吸い込んで第一マスタ室10aに戻す。
調圧装置53の増圧モード時においては、減圧弁532が閉状態、保持弁531が開状態、差圧制御弁536が差圧状態とされ、ポンプ534によって加圧されたブレーキフルードがホイールシリンダWCfrに供給されることにより、ホイールシリンダWCfrにおいてマスタ圧Pmよりも制御差圧分だけ高いホイールシリンダ圧が発生する。なお、以下の説明において、ポンプ534及び差圧制御弁536によるホイールシリンダ圧の加圧量、つまり、マスタ圧Pmに対するホイールシリンダ圧の加圧量を、加圧量Ppと表す。つまり、加圧量Ppは制御差圧と同値である。
調圧装置53の保持モード時においては、減圧弁532が閉状態、保持弁531が閉状態とされ、ホイールシリンダWCfrのホイールシリンダ圧が保持される。
このように、調圧装置53は、ブレーキペダル71の操作に関わらず、ホイールシリンダ圧を調整する。
(ハイドロブースタの動作)
以下に、ハイドロブースタ10の動作について説明する。ブレーキペダル71に入力される操作力(ペダル荷重)に応じて、スプールシリンダ24及びスプールピストン23からなる「調圧部」が駆動され、ハイドロブースタ10が「減圧モード」、「増圧モード」、「保持モード」のいずれかに切り替えられる。
[減圧モード]
ブレーキペダル71が踏まれていない状態や、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1(図4示)以下の場合には、「減圧モード」となる。図2に示すように、ブレーキペダル71が踏まれていない状態では、つまり、「減圧モード」では、シミュレータラバー34(移動部材32)と保持ピストン33の底部33aは離間している。
シミュレータラバー34と保持ピストン33の底部33aは離間している状態では、スプールピストン23は、スプールスプリング25の付勢力により、スプールピストン23の摺動範囲の最後部の「減圧位置」(図3示)に位置している。この状態では、図3に示すように、スプールポート24cが、スプールピストン23の外周面によって閉塞されている。つまり、アキュムレータ61からのアキュムレータ圧が、サーボ室10cに作用しない。
また、図3に示すように、スプールピストン23の第四スプール凹部23cはスプールシリンダ24の第二スプール凹部24fと連通している。つまり、サーボ室10cは、流通穴23e、第一流通ポート23d、第四スプール凹部23c、第二スプール凹部24f、流路12n、流通凹部24e、第三インナーポート12f、及び第六ポート11gからなる「減圧流路」を介してリザーバ19に連通している。このため、「減圧モード」では、サーボ室10cは大気圧と同一であり、第一マスタ室10a及び第二マスタ室10bにおいてマスタ圧Pmは発生しない。
ブレーキペダル71が踏まれて、シミュレータラバー34が保持ピストン33の底部33aに当接し、保持ピストン33を介してスプールピストン23に前方への入力荷重が作用しても、当該入力荷重が、スプールスプリング25の付勢力よりも小さい場合には、スプールピストン23は、前方に移動することなく「減圧位置」に位置している。なお、上記入力荷重は、ブレーキペダル71の操作により、連結部材31に入力される荷重から、当該操作力によりペダルリターンスプリング27が圧縮されるのに必要な荷重を減算した力である。ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1以下の状態では、ハイドロブースタ10は「増圧モード」とならず、サーボ圧及び「マスタ」が発生することなく、摩擦制動装置Bfl、Bfr、Brl、Brrにおいて「摩擦制動力」が発生しないように設定されている。
[増圧モード]
ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1より大きくなると、ハイドロブースタ10は「増圧モード」となる。つまり、ブレーキペダル71に入力される操作力により、保持ピストン33がシミュレータラバー34(移動部材32)によって押圧され、スプールピストン23に前方への荷重が作用すると、スプールピストン23がスプールスプリング25の付勢力に抗して、スプールピストン23の摺動範囲の前方の「増圧位置」に移動する(図5の状態)。
図5に示すように、スプールピストン23が「増圧位置」に位置している状態では、第一流通ポート23dはスプールシリンダ24の内周面によって閉塞され、第一流通ポート23dと第二スプール凹部24fは遮断される。このため、サーボ室10cとリザーバ19は遮断される。
また、スプールピストン23が「増圧位置」に位置している状態では、スプールポート24cは、第三スプール凹部23bに連通している。また、第三スプール凹部23b、第一スプール凹部24d、及び第四スプール凹部23cは相互に連通している。このため、アキュムレータ61からのアキュムレータ圧が、第一インナーポート12d、スプールポート24c、第三スプール凹部23b、第一スプール凹部24d、第四スプール凹部23c、第二流通ポート23f、流通穴23e、連通穴39dからなる「増圧流路」を介して、サーボ室10cに供給され、サーボ圧が上昇する。
サーボ圧が上昇すると、サーボ圧によって第二マスタピストン14が前方に移動し、第二リターンスプリング18によって押圧された第一マスタピストン13も前方に移動する。すると、第二マスタ室10b及び第一マスタ室10aにマスタ圧Pmが発生する。サーボ圧の上昇に従って、マスタ圧Pmが上昇する。本実施形態では、第二マスタピストン14の前後両側のシール径、及び第一マスタピストン13の前後両側のシール径は同一となっている。従って、サーボ圧と第二マスタ室10b及び第一マスタ室10aで発生するマスタ圧Pmは同一となる。
第二マスタ室10b及び第一マスタ室10aでマスタ圧Pmが発生すると、第二マスタ室10b及び第一マスタ室10aから主流路51、52、調圧装置53を介してホイールシリンダWCfr、WCfl、WCrr、WCrlにブレーキフルードが供給され、ホイールシリンダWCfr、WCfl、WCrr、WCrlにおいてホイールシリンダ圧が発生し、摩擦制動力が発生する。なお、ホイールシリンダ圧は、マスタ圧Pmと加圧量Ppの合計圧となる。
[保持モード]
スプールピストン23が「増圧位置」に位置している状態では、サーボ室10cにアキュムレータ圧が作用しサーボ圧が上昇する。すると、スプールピストン23には、サーボ圧にスプールピストン23の断面積(シール面積)を乗じた復帰力が後方に作用する。復帰力及びスプールスプリング25の付勢力の合力がスプールピストン23に作用する入力荷重よりも大きくなると、スプールピストン23は、後方に移動し、「減圧位置」と「増圧位置」の間の位置である「保持位置」に位置される(図6の状態)。
図6に示すように、スプールピストン23が「保持位置」に位置している状態では、スプールポート24cは、スプールピストン23の外周面によって閉塞される。また、第四スプール凹部23cは、スプールシリンダ24の内周面によって閉塞される。このため、スプールポート24cと第二流通ポート23fは遮断され、サーボ室10cとアキュムレータ61は遮断され、サーボ室10cにアキュムレータ圧が作用しない。
また、第四スプール凹部23cは、スプールシリンダ24の内周面によって閉塞されているので、第一流通ポート23dと第二スプール凹部24fは遮断され、サーボ室10cとリザーバ19が遮断される。すると、サーボ室10c密閉状態となり、「増圧モード」から「保持モード」に切り替わる際のサーボ圧が維持される。
スプールピストン23に作用する復帰力及びスプールスプリング25の付勢力の合力が、スプールピストン23に作用する入力荷重がつり合うと、「保持モード」が維持される。一方で、ブレーキペダル71への操作力が減少して、スプールピストン23に作用する入力荷重が減少し、スプールピストン23に作用する復帰力及びスプールスプリング25の付勢力の合力が、スプールピストン23に作用する入力荷重よりも大きくなると、スプールピストン23が後方に移動して「減圧位置」(図3示)に位置し「減圧モード」となり、サーボ室10cのサーボ圧が減少する。
一方で、スプールピストン23が「保持位置」に位置している状態で、ブレーキペダル71に入力される操作力が増大して、スプールピストン23に作用する操作力が増大し、スプールピストン23に作用する入力荷重が、スプールピストン23に作用する復帰力及びスプールスプリング25の付勢力の合力よりも大きくなると、スプールピストン23が前方に移動して「増圧位置」(図5示)に位置し「増圧モード」となり、サーボ室10cのサーボ圧が増大する。
なお、スプールピストン23の外周面とスプールシリンダ24の内周面との摺動抵抗等の抵抗により、スプールピストン23の移動にはヒステリシスが発生し、当該ヒステリシスによってスプールピストン23の前後方向の移動が阻害される。このため、「保持モード」から「減圧モード」、或いは「保持モード」から「増圧モード」に頻繁に切り替わらないようになっている。
(回生制動力と摩擦制動力の関係)
以下に、図4を用いて、回生制動力と摩擦制動力の関係について説明する。図4に示すように、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1以下では、ハイドロブースタ10は「減圧モード」から「増圧モード」切り替わらず、「減圧モード」のままであり、マスタ圧Pmによる摩擦制動力は発生しない。
図4に示すように、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1以下の場合には、ブレーキECU6は、回生制動力と、ポンプ534によって発生するポンプ加圧による摩擦制動力の合計値が「制御制動力」となるように、調圧装置53を制御する。なお、「制御制動力」は、ブレーキECU6によって、ブレーキセンサ72によって検出されたブレーキストロークに基づいて演算される。つまり、ブレーキストロークが大きくなるに従って、大きい値の「制御制動力」が演算される。
ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1より大きい場合には、ハイドロブースタ10は「減圧モード」から「増圧モード」切り替わり、マスタ圧Pmによる摩擦制動力が発生する。そして、ブレーキECU6は、「制御制動力」として、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1である時の「制御制動力」を演算する。つまり、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1より大きくなったとしても、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1である時の「制御制動力」が維持され、「制御制動力」が増大しない。そして、ブレーキECU6は、回生制動力と、調圧装置53のポンプ534によって発生する液圧であるポンプ加圧による摩擦制動力の合計値が「制御制動力」となるように、調圧装置53を制御する。この結果、車両に付与される総制動力は、「制御制動力」とマスタ圧Pmによって発生する摩擦制動力の合計となる。
(制動制御処理)
以下に、図9に示すフローチャートを用いて、「制動制御処理」について説明する。車両が走行可能な状態となると、「制動制御処理」が開始し、プログラムはS10に進む。S10において、ブレーキECU6が、ブレーキセンサ72からの検出信号に基づいて、ブレーキペダル71が操作されたと判断した場合には(S10:YES)、プログラムをS11に進め、ブレーキペダル71が操作されていないと判断した場合には(S10:NO)、S10の処理を繰り返す。
S11において、ブレーキECU6は、ブレーキセンサ72によって検出されたブレーキストロークに基づいて、「制御制動力」を演算する。S11が終了すると、プログラムはS12に進む。
S12において、ブレーキECU6は、「制御制動力」をハイブリッドECU9に送信する。S12が終了すると、プログラムはS13に進む。
なお、ハイブリッドECU9は、車速V、バッテリ507の充電状態、及び「制御制動力」に基づいて、回生制動装置Aにおいて実際に発生させることができる回生制動力である「実行回生制動力」を演算する。なお、「実行回生制動力」は、「制御制動力」を越えないように演算される。そして、ハイブリッドECU9は、「実行回生制動力」をブレーキECU6に送信する。
S13において、ブレーキECU6は、「実行回生制動力」を受信する。S13が終了すると、プログラムはS14に進む。
S14において、ブレーキECU6は、「制御制動力」から「実行回生制動力」を減算することにより、ポンプ加圧による摩擦制動力を演算する。次に、ブレーキECU6は、調圧装置53において上記演算したポンプ加圧による摩擦制動力が発生する加圧量Ppを演算する。S14が終了すると、プログラムはS15に進む。
S15において、ブレーキECU6は、「加圧量補正処理」を実行する。この「加圧量補正処理」について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。「加圧量補正処理」が開始されると、S151において、ブレーキECU6は、図11に示す「リファレンス圧マップ」を参照して、ブレーキセンサ72によって検出されたブレーキストロークに基づいて、リファレンス圧Prを演算する。なお、リファレンス圧Prとは、差圧制御弁536側からマスタ室10a、10bへのブレーキフルードの流入による影響、つまり、マスタ室10a、10b内の圧力変化を無視し、スプールピストン23の移動による摺動抵抗(ヒステリシス)が無視できる場合における、ブレーキストロークに対する理想的なマスタ圧Pmのことである。また、図11に示すように、「リファレンス圧マップ」は、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1以下である場合には、リファレンス圧Prは0であり、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1より大きい場合には、ブレーキストロークが大きくなるに従ってリファレンス圧Prが大きくなるように設定されている。S151が終了すると、プログラムはS152に進む。
S152において、ブレーキECU6は、マスタ圧センサ539によって検出されたマスタ圧Pmに基づいて、マスタ圧Pmを時間微分することにより、マスタ圧Pmの単位時間当たりの変化量であるマスタ圧勾配を演算する。次に、ブレーキECU6は、マスタ圧勾配の絶対値に基づいて、図12に示す「ゲインマップ」を参照して、ゲインGを演算する。なお、ゲインGは1以下の値である。また、「ゲインマップ」は、マスタ圧勾配の絶対値が大きくなるに従ってゲインGが小さくなるように設定されている。S152が終了すると、プログラムはS153に進む。
S153において、ブレーキECU6は、下式(1)に基づいて、補正量Cを演算する。
C=(Pr−Pm)×G…(1)
C:補正量
Pr:リファレンス圧
Pm:マスタ圧センサ539によって検出されたマスタ圧
G:ゲイン
S153が終了すると、プログラムはS154に進む。
S154において、ブレーキECU6は、下式(2)に基づいて、補正加圧量Ppcを演算する。
Ppc=Pp+C…(2)
Ppc:補正加圧量
Pp:加圧量
C:補正量
S154が終了すると、「加圧量補正処理」が終了し、プログラムは図9のS16に進む。
S16において、ブレーキECU6は、調圧装置53を「増圧モード」として、差圧制御弁536で発生される制御差圧が補正加圧量Ppcとなるように、差圧制御弁536を制御し、モータ535を駆動する。S16が終了すると、プログラムはS10に戻る。
(タイムチャート)
以下に、図8に示すタイムチャートを用いて、マスタ圧Pm及び補正加圧量Ppcの変化について説明する。ブレーキペダル71が操作されて、制動が開始されると(図8のT1)、回生制動装置Aにおいて回生制動力が発生し(図8の1)、差圧制御弁536が差圧状態となって、ポンプ加圧による摩擦制動力が発生する(図8の2)。ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1以下である場合には、マスタ圧Pmは発生していなので、マスタ圧Pmによる摩擦制動力は発生しない。
ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1より大きくなると(図8のT2)、マスタ圧Pmが発生する(図8の3)。マスタ圧Pmの発生初期では、スプールピストン23の移動のヒステリシスによって、スプールピストン23の摺動が阻害され、マスタ圧Pmがリファレンス圧Prよりも低くなり(図8の3)、マスタ圧による摩擦制動力の増大が阻害される。しかし、上述した図10に示す「加圧量補正処理」によって、加圧量Ppがより大きな値の補正加圧量Ppcに補正されることにより(図8の4)、ポンプ加圧による摩擦制動力が増加し、車両の減速度の低下が抑制される。
車速Vの低下等によって、実行回生制動力が増加する場合がある(図8の5)。この場合には、上述の図9のS11〜S14の処理によって、加圧量Ppが減少する(図8の6)。そして、加圧量Ppの減少に伴い、差圧制御弁536を介して、ホイールシリンダWCfl、WCfr、WCrl、WCrr側からマスタ室10a、10b側に、ブレーキフルードが流入する。すると、図8の7に示すように、マスタ圧Pmが上昇し、マスタ圧Pmがリファレンス圧Prに対して上昇する。しかし、上述した図10に示す「加圧量補正処理」によって、加圧量Ppがより小さな値の補正加圧量Ppcに補正されることにより(図8の8)、車両の減速度の増大が抑制される。
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、ブレーキECU6(液圧制御部)は、図9のS11において、ブレーキセンサ72によって検出されたブレーキストロークに基づいて、「制御制動力」を演算する。そして、ブレーキECU6は、S14において、「制御制動力」から「実行回生制動力」を減算することにより、ポンプ加圧による摩擦制動力を演算し、次いで、加圧量Ppを演算する。このように、マスタ圧Pmによらずに加圧量Ppが演算されるので、マスタ圧Pmの変化によって加圧量Ppが変化することが無く、差圧制御弁536による制御差圧も変化することが無く、差圧制御弁536とマスタ室10a、10b間においてブレーキフルードが流通しないので、マスタ圧Pmもまた変化しない。このため、マスタ圧Pmの急変に起因して、マスタ圧Pmが増減を繰り替えしてしまうハンチング現象の発生が防止される。
ブレーキECU6(加圧量補正部)は、図10に示す「加圧量補正処理」において、マスタ圧センサ539によって検出されたマスタ圧Pmに基づいて、加圧量Ppを補正する。例えば、加圧量Ppの減少に伴い、差圧制御弁536側からマスタ室10a、10bへのブレーキフルードの流入に伴いマスタ圧が増加した場合には(図8の7)、ブレーキECU6は、上述した図10のS151〜S154において、マスタ圧Pmの増加量に応じて、加圧量Ppを減少させて補正加圧量Ppcを演算する(図8の8)。このため、マスタ圧Pmの増加に伴う摩擦制動力の増加が防止され、車両の減速度の増加が防止される。
ブレーキECU6(加圧量補正部)は、図10のS151において、「リファレンス圧マップ」(図11示)を参照して、ブレーキセンサ72によって検出されたブレーキストロークに基づいて、リファレンス圧Prを演算する。そして、ブレーキECU6は、図10のS153において、上式(1)を用いて、リファレンス圧Pr及びマスタ圧Pmに基づいて、加圧量Ppの補正量Cを演算する。これにより、差圧制御弁536側からマスタ室10a、10bへのブレーキフルードの流入に伴い、マスタ圧Pmがリファレンス圧Prに対して増大した場合に(図8の7)、実際のマスタ圧Pmのリファレンス圧Prからの乖離量に応じた減少量で、加圧量Ppが減少されて補正加圧量Ppcに補正されるので(図8の8)、摩擦制動力の増大が防止される。
一方で、マスタ圧Pmの発生初期において、スプールピストン23の移動のヒステリシスによって、スプールピストン23の摺動が阻害され、マスタ圧Pmがリファレンス圧Prよりも低くなった場合に(図8の3)、実際のマスタ圧Pmのリファレンス圧Prからの乖離量に応じた増加量で、加圧量Ppが増加されて補正加圧量Ppcに補正されるので(図8の4)、摩擦制動力の減少が防止される。
ブレーキECU6(加圧量補正部)は、図10のS153において、上式(1)を用いて、リファレンス圧Prからマスタ圧Pmを減算した値に1以下のゲインGを乗算して加圧量Ppの補正量Cを演算している。このように、実際のマスタ圧Pmのリファレンス圧Prからの乖離量をそのまま補正量Cとするのでは無く、前記乖離量に1以下のゲインGを乗算して補正量Cとしているので、加圧量Ppの過剰な補正に起因する加圧量Ppやマスタ圧Pmの増減が繰り返されてしまうハンチングの発生が防止される。特に、ブレーキペダル71が繰り返し踏まれる所謂ポンピングブレーキが実行され、マスタ圧の増減が繰り返され、上述のハンチングが発生し易い状況においても、ハッチングの発生が防止される。
ブレーキECU6は、図10のS152において、図12に示す「ゲインマップ」を参照して、マスタ圧Pmの変化量が大きい程小さい値のゲインGを設定する。これにより、マスタ圧Pmの変化量が大きい場合には、小さい値のゲインGが設定され、加圧量Ppの補正量Cが小さい値に抑えられ、加圧量Ppの急激な変化が防止される。このため、加圧量Ppの急激な変化に起因して、加圧量Ppやマスタ圧Pmの増減が繰り返されてしまうハンチングの発生が防止される。
本実施形態の摩擦制動ユニットBでは、ブレーキペダル71に入力された運転者の操作力によって、スプールピストン23が前後方向に摺動することにより、運転者の操作力に応じたマスタ圧Pmが発生する。一方で、ブレーキペダルがマスタピストンに機械的に接続され、ブレーキペダルに入力された運転者の操作力が直接マスタピストンに作用してマスタ圧が発生する摩擦制動ユニットでは、以下のような問題が生じる。つまり、加圧量Ppが増加している状況では、ポンプによってマスタ室からのブレーキフルードが吸い出されて、マスタピストンが前方に摺動して、ブレーキペダルが前方に移動してしまい、ブレーキペダルを操作している運転者が違和感を覚えてしまう。しかし、本実施形態の摩擦制動ユニットBでは、加圧量Ppの増加に伴い、ポンプ535によってマスタ室10a、10bからブレーキフルードが吸い出され、マスタピストン13、14が前方に摺動したとしても、ブレーキペダル71がマスタピストン13、14に機械的に接続されていないので、ブレーキペダル71が前方に移動することが無く、ブレーキペダル71を操作している運転者が違和感を覚えない。
移動部材32はスプールピストン23を保持している保持ピストン33と離間している。このため、ブレーキペダル71が踏まれても、移動部材32に取り付けられているシミュレータラバー34が保持ピストン33に当接するまでは、ブレーキペダル71からの操作力がスプールピストン23に伝達されず、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1(図4示)に達するまで、マスタ圧Pmは発生していなので、マスタ圧Pmによる摩擦制動力は発生しない。このように、図4に示すように、ブレーキストロークがマスタ圧発生ストロークS1に達するまで、マスタ圧Pmによる摩擦制動力が発生しないので、摩擦制動装置Bfl、Bfr、Brl、Brrにおいて車両の運動エネルギーが熱エネルギーとして消散してしまうことが防止され、車両の運動エネルギーをより多く回生制動装置Aにおいて電力として回収させることができる。
また、ブレーキペダル71からの操作力によって駆動されるスプールピストン23のスプールシリンダ24に対する前後方向の位置によって、「減圧モード」、「増圧モード」、「保持モード」が切り替わり、「摩擦制動力」が可変とされる。このように、スプールピストン23及びスプールシリンダ24から構成される機械的構成要素である「スプール弁」によって、「摩擦制動力」が可変とされるので、電磁弁を用いて「摩擦制動力」を可変とする構造と比べて、「摩擦制動力」をリニアに可変とさせることができる。
つまり、電磁弁では、弁体が弁座から離れる開弁時に、ブレーキフルードの流れによって弁体を弁座から離す力が発生し、ブレーキフルードが過剰に流出し、圧力の調整が困難であり、この結果「摩擦制動力」の増減をリニアに制御することが困難である。一方で、本実施形態では、運転者の操作力がスプールピストン23に作用し、この操作力の増減によって、「減圧モード」、「増圧モード」、及び「保持モード」が切り替わり、「摩擦制動力」が増減するので、運転者の意図に沿った「摩擦制動力」を発生させることができる。
(別の実施形態)
S152において、ブレーキECU6は、ブレーキセンサ72によって検出されたブレーキストロークを時間微分することにより、ブレーキストローク変化量を演算し、ブレーキストローク変化量の絶対値に基づいて、図13に示す「ゲインマップ」を参照して、ゲインGを演算する実施形態であっても差し支え無い。なお、ゲインGは1以下である。図13に示す「ゲインマップ」では、ブレーキストローク変化量の絶対値が大きくなるに従ってゲインGが小さくなるように設定されている。このような実施形態であっても、ブレーキストローク変化量が大きい程小さい値のゲインGが設定される。これにより、加圧量Ppの補正量Cが小さい値に抑えられ、加圧量Ppの急激な変化が防止される。このため、加圧量Ppの急激な変化に起因して、加圧量Ppやマスタ圧Pmの増減が繰り返されてしまうハンチングの発生が防止される。
以上説明した実施形態では、ブレーキペダル71に入力される操作量を検出するブレーキセンサ72は、ブレーキペダル71のストロークを検出している。しかし、ブレーキセンサ72は、入力ピストン15や、連結部材31、オペロッド16等の入力部材のストロークを検出するストロークセンサであっても差し支え無い。或いは、ブレーキセンサ72は、ブレーキペダル71や入力ピストン15や、連結部材31、オペロッド16に作用する運転者の操作力を検出する荷重センサであっても差し支え無い。
マスタ圧を検出するマスタ圧センサ539は、主流路52に設けられていても差し支え無い。
以上説明では、回生制動装置Aが搭載されているハイブリッド車両について本発明を説明した。しかし、回生制動装置Aが搭載されていない車両にも本発明の技術的思想が適用可能なことは言うまでもない。
また、以上説明した実施形態では、運転者の操作力が入力される入力部材は、ブレーキペダル71である。しかし、入力部材は、ブレーキペダル71に限定されず、例えば、ブレーキレバーやブレーキハンドルであっても差し支え無い。
6…ブレーキECU(液圧制御部、加圧量補正部)、10a…第一マスタ室、10b…第二マスタ室、11…マスタシリンダ、13…第一マスタピストン、14…第二マスタピストン、19…リザーバ、23…スプールピストン(スプール弁)、24…スプールシリンダ(スプール弁)、32…移動部材、61…アキュムレータ、71…ブレーキペダル(入力部材)、72…ブレーキセンサ(操作量検出部)、536…差圧制御弁、539…マスタ圧センサ(マスタ圧検出部)、A…回生制動装置、B…摩擦制動ユニット(車両用制動装置)、Bfl、Bfr、Brl、Brr…摩擦制動装置、WCfl、WCfr、WCrl、WCrr…ホイールシリンダ

Claims (7)

  1. 運転者の操作力が入力される入力部材(71)と、
    前記入力部材の操作量を検出する操作量検出部(72)と、
    車輪に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置(Bfl、Bfr、Brl、Brr)のホイールシリンダ(WCfl、WCfr、WCrl、WCrr)と接続されたマスタ室(10a、10b)が形成され、前記入力部材に入力された運転者の操作力に応じたマスタ圧を前記マスタ室に発生させるマスタシリンダ(11)と、
    前記マスタ圧を検出するマスタ圧検出部(539)と、
    前記マスタ室と前記ホイールシリンダの間の流路に設けられ、通電されると電流に応じた制御差圧分前記ホイールシリンダの液圧であるホイールシリンダ圧を前記マスタ圧よりも高い状態に保つ差圧制御弁(536)と、
    前記ホイールシリンダ圧を前記マスタ圧よりも加圧させる場合に、前記操作量検出部によって検出された前記操作量に基づいて加圧量を演算し、前記差圧制御弁に供給される電流を制御することにより、前記ホイールシリンダ圧を前記マスタ圧に対して前記加圧量分加圧させる液圧制御部(6)と、
    前記差圧制御弁側から前記マスタ室へのブレーキフルードの流入に伴い、前記マスタ圧検出部によって検出された前記マスタ圧の増加量に基づいて、前記加圧量の補正量を演算し、前記加圧量を補正する加圧量補正部(6)と、を有する車両用制動装置。
  2. 前記加圧量補正部は、前記差圧制御弁側から前記マスタ室へのブレーキフルードの流入の影響を無視した前記マスタ室の圧力であるリファレンス圧と前記操作量との関係を表したリファレンス圧マップを参照して、前記操作量検出部によって検出された前記操作量に基づいて前記リファレンス圧を演算し、前記マスタ圧検出部によって検出された前記マスタ圧の前記リファレンス圧からの乖離量に基づいて、前記加圧量の補正量を演算する請求項1に記載の車両用制動装置。
  3. 前記加圧量補正部は、前記リファレンス圧から前記マスタ圧検出部によって検出された前記マスタ圧を減算した値に1以下のゲインを乗算して前記加圧量の補正量を演算する請求項2に記載の車両用制動装置。
  4. 前記ゲインは、前記マスタ圧の変化量が大きい程、小さい値に設定される請求項3に記載の車両用制動装置。
  5. 前記ゲインは、前記操作量の変化量が大きい程、小さい値に設定される請求項3に記載の車両用制動装置。
  6. 前記マスタシリンダには、前後方向に柱形状の空間(11p)が形成され、
    ブレーキフルードの液圧を蓄圧するアキュムレータ(61)と、
    ブレーキフルードを貯留するリザーバ(19)と、
    前記マスタシリンダの空間内に前後方向摺動可能に設けられ、前記マスタ室を前方において前記マスタシリンダとの間で形成し、サーボ室(10c)を後方において前記マスタシリンダとの間で形成するマスタピストン(13、14)と、
    前記マスタシリンダの空間内の前記マスタピストンの後方に設けられ、前記入力部材に入力された運転者の操作力によって前後方向に摺動することにより、前記サーボ室と前記リザーバが連通する減圧モード、前記サーボ室と前記アキュムレータが連通する増圧モード、前記サーボ室が密閉される保持モードを切り替えるスプール弁(23、24)と、を有する請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の車両用制動装置。
  7. 前記スプール弁の後方側に前記スプール弁と離間して、前記マスタシリンダの空間内に前後方向摺動可能に設けられ、前記入力部材を介して運転者の操作力が入力される移動部材(32)を有する請求項6に記載の車両用制動装置。
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