JP6296745B2 - 希土類磁石の着磁方法と希土類磁石 - Google Patents

希土類磁石の着磁方法と希土類磁石 Download PDF

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Description

本発明は、希土類磁石の着磁方法と、希土類磁石に関する。
近年、精密機器の小形化・軽量化の市場動向に伴い、精密機器用永久磁石モータに搭載される磁石には、アルニコやフェライトに替わって希土類磁石が使われるようになってきた。更に最近では、永久磁石モータの市場動向が軽量・高出力化の方向に進んでいる。高出力化に伴い、モータ用コイルの発熱による永久磁石の不可逆減磁が問題になっており、希土類磁石には小形化・多極化に加えて高耐熱性が望まれている。
永久磁石モータに組み込まれるリング状の希土類磁石(以下、リング磁石とする)を多極着磁する方法として、コイル通電方式の着磁装置が用いられている。この着磁装置には、被着磁物であるリング磁石を挿入・抜出可能な穴部が着磁ヨークの中心に設けられると共に、穴部の内壁面に軸方向に延びる溝が着磁の極数に応じて形成されている。更にその溝内には、絶縁性被膜を施した導線が埋設されており、隣り合う導線がつづら折れ状に連続してコイルを形成する。
このような穴部に被着磁物を挿入し、コンデンサに蓄えた電荷を瞬時に放出することでコイルにパルス電流を流し、そのパルス電流によって着磁ヨークに発生した少なくとも24kOe以上の着磁磁場によりリング磁石の着磁を行う。
しかし、前述のように最近のリング磁石では小形化が要求されているため、着磁ピッチ(着磁極間距離)が狭くなっており、着磁ヨークもこれに合わせて小さくする必要がある。このため着磁ヨークの小形化に伴い巻線可能なスペースが減り、配設するコイルの導線径を細くせざるを得なくなることや、十分なターン数の導線を巻き込むことが難しくなることにより、着磁ヨークで発生させられる着磁磁場の強さが制限され、十分な着磁特性が得られないとの問題が生じてきた。
また、希土類磁石の高耐熱性はその保磁力の高さに起因しており、希土類磁石の中でも高耐熱品は保磁力が高められている。しかし高耐熱性を得るために高保磁力の磁石を使用する際には、飽和着磁に必要な着磁磁場が大きくなるため特に注意を要し、十分な着磁磁場が印加されない場合、着磁率が不十分な磁石となってしまう。
着磁率が不十分な希土類磁石では温度上昇による不可逆減磁が、飽和着磁された希土類磁石よりも低い温度で生じることが知られている。特に20mm以下の小形モータに組み込まれる希土類磁石は、コイルの発熱による不可逆減磁を起こさないように、即ちモータの使用上限温度を高くするために、飽和着磁されることが好ましいとされている。
このような着磁不足を改善する技術として、被着磁物を高温に加熱し、飽和着磁に要する着磁磁場の減少を利用して着磁する方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1には、被着磁物である希土類磁石をそのキュリー点以上の温度まで加熱し、キュリー点以上の温度からキュリー点未満の温度まで降温させつつ、その間、着磁磁場を印加し続けるとの着磁方法が開示されている。
更に、着磁部から被着磁物を取り出す際の着磁部温度を、被着磁物が組み込まれるデバイスの使用温度上限値あるいは保証温度よりも高い温度に制御している。従って、希土類磁石が小形・多極着磁の構造であっても、表面磁束密度ピーク値全極の平均値が高く、表面磁束密度ピーク値のばらつきが小さく、しかも不可逆減磁が防止され、表面磁束密度を必要な値に微調整できる、としている。これによって、着磁特性が高く且つ着磁品質が良好な希土類磁石が得られるとしている。
特許4671278号公報
当出願人で前記特許文献1に記載の着磁方法の実施を試みたところ、室温で着磁した場合には30%程度しか得られなかった着磁率が、着磁温度をより高温にすることにより向上することを確認出来た。
しかし、SmCo系希土類磁石のキュリー温度は約850℃と高温であり、着磁装置の導線の絶縁性被膜の耐熱性を考慮すると、SmCo系希土類磁石に特許文献1の着磁方法を適用することは不可能である。
一方、NdFeB系希土類磁石のキュリー温度は約340℃であるので、高耐熱性の絶縁性の被膜を施された導線を利用することで上記問題は解決できる可能性がある。しかしながらNdFeB系希土類磁石は防錆被膜が必須であり、ニッケルメッキやエポキシ塗装が広く採用されているが、防錆被膜の機能を損ねない範囲での加熱上限温度は、ニッケルメッキで200℃程度、エポキシ塗装で130℃程度である。
そのため市場に出回る殆どのNdFeB系希土類磁石は、キュリー温度340℃以上に加熱すると防錆被膜が劣化してしまい、高温で劣化することの無い特殊な被膜(例.TiN被膜)が施されたNdFeB系希土類磁石でなければ、特許文献1開示の着磁方法を適用することは出来ない。
この問題は、着磁後の希土類磁石に被膜を施すことで解消することは不可能ではないが、着磁後の希土類磁石のハンドリングを考慮すると、希土類磁石どうしが磁気吸着して取り扱いが厄介になるので、被膜の量産工法としては非現実的である。
また、特許文献1を含めて高温で着磁を行う従来技術において、飽和着磁を行うために必要十分な加熱温度について定式化し、その式による最適化に関する技術開示は無い。特に特許文献1のようにキュリー点以上の温度から、キュリー点未満の温度まで着磁磁場を印加し続けることは、コイルの発熱を考慮すると大がかりな冷却構造が必要となり、また消費電力の増加も招いてしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、防錆被膜を劣化させること無く、式に基づく必要最低限の加熱によって着磁率の向上が可能となり、かつ、消費電力を抑制し、短時間で完了する希土類磁石の着磁方法、及び、使用上限温度の高い希土類磁石を提供することを目的とする。
上記目的は、以下の本発明により達成される。即ち、
本発明の希土類磁石の着磁方法は、軽希土類元素RLの少なくとも1種を含有する希土類磁石を、80℃以上200℃以下の範囲の、下記数1から導出される着磁温度T℃まで加熱し、希土類磁石の保磁力の温度係数βに従って希土類磁石の保磁力を減少させ、温度T℃における希土類磁石が呈する保磁力HCの少なくとも2倍の磁場を有する着磁磁場Hextを少なくとも1回以上パルス状に印加した後に、希土類磁石を温度T℃から室温まで冷却することで、極数p(pは4以上の偶数)の多極着磁を行うことを特徴とする(但し、HCJは希土類磁石の室温における保磁力(Oe)、Hext(Oe)、RTは室温(℃)をそれぞれ表す)。
Figure 0006296745
また、本発明の希土類磁石の着磁方法の一実施形態は、温度T℃における着磁ヨークに挿入された希土類磁石の動作点が、B-H曲線の第2象限における減磁曲線の直線領域に存在することが好ましい。
また、本発明の希土類磁石の着磁方法の他の実施形態は、着磁ヨークに挿入された希土類磁石のパーミアンス係数Pcが20以上であることが好ましい。
また、本発明の希土類磁石の着磁方法の他の実施形態は、励磁コイルがそれぞれ巻回された、極数pの着磁ヘッドを備える着磁ヨークの穴部に、希土類磁石が挿入されることが好ましい。
また、本発明の希土類磁石の着磁方法の他の実施形態は、着磁ヨークが水冷構造を備えると共に、励磁コイルがチューブ線で形成され、更にチューブ線に冷媒を流すことが好ましい。
また、本発明の希土類磁石の着磁方法の他の実施形態は、着磁ヨークに挿入された希土類磁石のパーミアンス係数Pcが、希土類磁石が機器に組み込まれる際のパーミアンス係数Pcと同一に設定されることが好ましい。
また、本発明の希土類磁石は、上記何れかに記載の希土類磁石の着磁方法で着磁され、70%以上の着磁率を有し、軽希土類元素RLの少なくとも1種を含有することを特徴とする。
本発明に依れば、大きな着磁磁場の発生が難しい多極の希土類磁石であっても、200℃を超えて防錆被膜に支障をきたす様な加熱をすることなく、着磁率を室温にて着磁した場合と比較して大幅に向上させることができる。従って、着磁率が向上するので、希土類磁石の不可逆減磁温度がより高温になり、着磁後の希土類磁石の使用上限温度が向上する。更に、加熱時の防錆被膜の劣化が防止され、希土類磁石表面に特殊な耐熱被膜(例.TiN被膜)を施す必要が無い。
又、着磁に先立って希土類磁石をキュリー点以上の温度まで加熱する必要が無いので、従来の加熱着磁方法に比べて大がかりな加熱・冷却構造が不要となり、また着磁作業を短時間で完了することが可能となる。
更に、着磁磁場Hext (Oe)の大きさを、被着磁物である希土類磁石が着磁温度T℃において呈する保磁力HC(Oe)の少なくとも2倍の磁場に設定することにより、希土類磁石の加熱温度がキュリー点未満であっても飽和多極着磁が可能となる。更に、着磁磁場Hextをパルス状の磁場とすることにより、着磁磁場の印加を短時間で完了させることが出来る。従って、着磁に掛かる消費電力を低減することが可能となる。
本願発明では、被着磁物である希土類磁石の着磁率向上と防錆被膜劣化の防止との効果に加え、着磁を短時間で且つ消費電力を低減して行うことが可能となる。従って、希土類磁石の使用上限温度と量産性および生産効率を向上させることが出来る。
本実施形態に係る希土類磁石の一例を示す斜視図である。 本実施形態に係る希土類磁石の着磁装置の着磁ヨークを示す断面図である。 図2の着磁ヨークに励磁コイルを巻回した着磁ヨークを模式的に示す断面図である。 着磁ヨーク挿入後の希土類磁石の加熱手段を示す模式図である。 本実施形態に係る被着磁物である希土類磁石の減磁曲線及びパーミアンス係数と動作点を模式的に示すグラフである。 本実施例に係る希土類磁石の試験片が示す着磁率%−着磁温度℃特性、及び室温(25℃)で着磁を行った希土類磁石の試験片が示す着磁率%−着磁温度℃特性を表すグラフである。
以下、本発明に係る希土類磁石の着磁方法および希土類磁石を、詳細に説明する。本願発明に係る希土類磁石の着磁方法では、希土類磁石を80℃以上200℃以下の範囲の任意の温度まで加熱して希土類磁石の保磁力を減少させた後に着磁ヨークに挿入し、着磁磁場をパルス状に印加し、引き続きその任意の温度から希土類磁石を冷却して室温まで降温する。本願発明では、希土類磁石の加熱温度の上限は200℃に設定する。
被着磁物である希土類磁石としては、軽希土類元素RLの少なくとも1種を含有する希土類磁石を用意する。軽希土類元素RLの少なくとも1種を含有する希土類磁石であれば、焼結磁石やボンド磁石、又はナノコンポジット磁石であっても良い。また、希土類磁石の配向方法は、極異方配向であっても良いしラジアル配向であっても良い。
被着磁物である希土類磁石の外形形状や大きさは特に制限は無いが、外形形状が円筒状(図1参照)又はリング状の何れかであり、その外径Dが10(mm)以下に設定されることが、小形の永久磁石モータ用途に適するため好ましい。更に、本願発明に係る着磁方法を採用することにより、着磁率の向上だけでなく、希土類磁石の冷却の容易化と防錆被膜劣化の防止に加え、着磁工程を短時間且つ低消費電力で行うことが可能となる。従って、希土類磁石の使用上限温度および量産性と生産効率の向上が図れる。
なお、円弧形等の複数の希土類磁石を組み合わせて、円筒状又はリング状の希土類磁石を構成しても良い。更に、円筒状/リング状磁石の1周を極数で等分に分割した、円弧形等の磁石を極数分貼り合わせて多極の円筒状/リング状磁石とする場合には、個々の円弧形等の磁石として平行配向の磁石を使用しても良い。
軽希土類元素RLとして、例えばNd、Pr、Smの少なくとも1種を選択すると、被着磁物にはNdFeB系、SmCo系、SmFeN系などの希土類磁石が挙げられるが、これらに限定されない。被着磁物にNdFeB系希土類磁石、SmFeN系希土類磁石、又はSmCo系磁石を用いる場合、本願発明では希土類磁石の冷却の容易性を考慮して、加熱温度の上限を200℃に設定する。
希土類磁石の加熱温度上限が200℃に設定されるので、加熱時に希土類磁石表面の防錆被膜の劣化が防止され、希土類磁石表面に特殊な耐熱被膜(例.TiN被膜)を施す必要が無い。更に、着磁率が向上するので、希土類磁石の不可逆減磁温度がより高温になり、着磁後の希土類磁石の耐熱性が向上する。
又、着磁の際に希土類磁石をキュリー点以上の温度まで加熱する必要が無いので、着磁された希土類磁石を冷却する際に、より短時間で済ませることが出来る。
更に本願発明では、下記数2から導出される着磁温度T℃まで加熱し、この温度T℃で被着磁物である希土類磁石を着磁する。パルス状の着磁磁場の印加は少なくとも1回以上に設定する。最も好ましいのは着磁の短時間化および消費電力の低減の点から、1回のパルス状着磁磁場の印加である。
Figure 0006296745

但し、HCJは被着磁物である希土類磁石の室温における保磁力(Oe)、Hextは着磁磁場(Oe)、βは被着磁物である希土類磁石の保磁力の温度係数、RTは室温(℃)を表す。
一例として、室温RTを25℃とし、室温における保磁力HCJが15(kOe)、保磁力の温度係数βが-0.6(%/℃)のNdFeB系希土類磁石を、発生可能な着磁磁場Hextが15(kOe)の着磁ヨークにて飽和着磁する場合に必要な加熱温度を求める。前記数2に上記の各値を代入するとT≒108℃となり、この温度まで希土類磁石を加熱した後に上記の強さのパルス状磁場Hextを印加し、その後、希土類磁石を室温まで冷却すると飽和着磁が可能となる。
前記数2は、被着磁物の希土類磁石を何℃まで加熱して多極着磁すれば飽和多極着磁が可能であるかを求めるために考案した関係式である。
本願発明では、被着磁物である希土類磁石への着磁磁場Hext (Oe)の大きさを、被着磁物である希土類磁石が各着磁温度T℃において呈する保磁力HC (Oe)の少なくとも2倍の磁場に設定することにより、希土類磁石の加熱温度がキュリー点未満であっても飽和多極着磁が可能となり、希土類磁石を確実に着磁することが出来ることを見出した。更に、着磁磁場Hextをパルス状の磁場とすることにより、着磁磁場の印加を短時間で完了させることが出来る。従って、着磁に掛かる消費電力を低減することが可能となる。
このように本願発明では、大きな着磁磁場の発生が難しい多極の希土類磁石であっても、前記数2に基づく必要最低限の加熱として200℃を超えて加熱することなく、着磁率を室温にて着磁した場合と比較して大幅に向上させることができる。従って、被着磁物である希土類磁石の防錆被膜劣化の防止と冷却の容易化との効果に加え、確実な着磁を短時間で且つ消費電力を低減して行うことが可能となる。これにより、希土類磁石の耐熱性および量産性と生産効率を向上させることが出来る。なお希土類磁石への着磁は、極数p(pは4以上の偶数)の多極着磁として行われる。
(外径D/極数p)の値(mm)が(4/π)mm未満の希土類多極円筒状/リング状磁石で、特に外径Dが10(mm)以下の場合、従来の多極着磁方法では着磁磁場Hext不足により不完全着磁となってしまい、磁石の耐熱性が低下してしまうが、本願発明の多極着磁方法によれば飽和多極着磁され、磁石素材が本来備えている耐熱性を引き出すことが出来る。
また、保磁力が15kOe以上の耐熱性が高い仕様の磁石は、従来の方法では特に不完全着磁になり易く、折角の磁石素材が備える耐熱性を十分に生かすことが出来ないが、本願発明の方法によれば、数2に従って加熱温度を設定することで多極の飽和多極着磁が可能であり、その耐熱性を十分に引き出すことが出来る。
次に、本実施形態に係る希土類磁石の着磁装置に関して、図2から図4を参照して説明する。図2は本実施形態に係る希土類磁石の着磁装置(以下、必要に応じて単に「着磁装置」と記載)の着磁ヨークを示す断面図であり、図3は図2の着磁ヨークに励磁コイルを巻回したことを模式的に示す断面図である。また図4は、希土類磁石の加熱手段を示す模式図である。
図2より本実施形態に係る着磁装置を構成する着磁ヨーク1は、外形が円周状に形成されると共に、その中心部に断面略円形状の穴部2が形成された略円筒形状を有しており、被着磁物の着磁ヨークとして機能する。穴部2の径寸法は被着磁物着磁の際の磁気回路設計上、適切な直径に設定する。
着磁ヨーク1を構成する材料には、例えばPermendur(FeCoV-Alloy)材料を用い、放電加工の繰り抜き加工により、図2に示すように穴部2の外周面から放射状に所望の数の溝3が等角度で設けられ、被着磁物の希土類磁石に形成する所望の極数p(pは4以上の偶数)分だけ着磁ヘッド4が形成される。図2に示す例では8極着磁を想定している。外径D=5(mm)の円筒状の希土類磁石の8極着磁用に着磁ヨークを構成する場合は、各着磁ヘッド4のピッチは約2(mm)となり、着磁ヘッド4の幅は2(mm)以下に設定される。
溝3の断面積は、図2に示すような曲線状に形成され、更に各着磁ヘッド4には図3に示すように、パルス状の着磁磁場を発生されるための励磁コイル5が極数p数分巻回形成されている。励磁コイル5には銅線コイルを用いても良いが、図3に示すような中空のチューブ線を用いることが、被着磁物の冷却の容易性という点からより好ましい。
チューブ線には、一例として銅製の外径1(mm)、内径0.4(mm)、チューブ線の断面積0.66(mm2)以下の物を用い、各着磁ヘッド4に巻き回す。
このような着磁ヨーク1の穴部2に、被着磁物である円筒状の希土類磁石が挿入される。円筒状の希土類磁石の挿入の際は、希土類磁石の中心穴に着磁ヨーク1の芯棒6を通して希土類磁石を保持する。
本実施形態の円筒状の希土類磁石としては、一例として外径D=5(mm)の円筒状のNdFeB系磁石を想定する。穴部2の径が5mm以下の多極着磁ヨークでは15kOe超の着磁磁場の発生が難しい。従って、着磁磁場Hextは15kOeに設定する。
室温における保磁力の異なる3種類のNdFeB系希土類磁石を被着磁物とし、保磁力HCJが15、18、20kOeのものをそれぞれ試験片1、2、3とした。なお、それぞれの保磁力の温度係数βはいずれも-0.6(%/℃)のものを用いた。
上記の磁石の特性値および着磁磁場を前記数2に代入することにより、試験片1、2、3の飽和着磁に必要な加熱温度T℃が算出され、それぞれ108、122、129℃以上の温度で上記の着磁磁場を印加することによって、着磁率が飽和すると見積もられた。従って、着磁ヨークに挿入された試験片1、2、3は、それぞれ108、122、129℃まで加熱するものとする。
加熱手段は特に限定されず、例えば抵抗加熱、高周波加熱、レーザ加熱、高温ガスフロー加熱、高温液中加熱など任意の手段を用いて良い。本実施形態では一例として図4に示すように、被着磁物である円筒状の希土類磁石8の上下に、加熱用コイルを巻回した加熱用プランジャ7を接触させる。この加熱用プランジャ7により希土類磁石8を上下方向から加熱し、希土類磁石8全体を前記任意の温度まで加熱するものとする。
加熱により上記の設定温度まで達したことを確認後、励磁コイル5に電流を流し、パルス状の前記着磁磁場Hextを被着磁物8に印加する。励磁コイル5に流す最大パルス電流値は、励磁コイル5の実効リアクタンス(Effective Reactance)を計算して算出すれば良い。
次に、被着磁物の冷却工程について説明する。任意の温度T℃まで希土類磁石の加熱温度が達したことを確認し、着磁磁場Hextが印加された後、被着磁物が冷却される。冷却手段としては特に限定されず、自然放冷の他、水冷、空冷、ガス吹き付けなどの強制冷却、加熱温度調整など任意の方法で行うことが可能である。本実施形態では一例として、前記着磁ヨーク1を水冷で冷却すると共に、励磁コイル5のチューブ線内に冷媒を流すことにより、被着磁物8を冷却するものとする。このような方法を採用することにより、大掛かりな冷却構造が不要となり、被着磁物の冷却が容易となる。
着磁ヨーク1の水冷構造としては、一例として着磁ヨーク1外周に銅製のチューブ線を銀ロー付けしてチューブ線内に水循環させるか、着磁ヨーク1外周に穴部2と平行に上下方向の貫通穴を形成し、水冷パイプガイドとすれば良い。一方、励磁コイル5のチューブ線内に流す冷媒としては、液体窒素などが一例として挙げられる。
被着磁物が室温(25℃)まで冷却されたことを確認後、被着磁物である希土類磁石8を着磁ヨーク1の穴部2から取り出し、新たな被着磁物を穴部2に挿入し、一連の加熱、着磁、冷却工程を繰り返し行う。このような着磁方法により、被着磁物である希土類永久磁石の外周面には、着磁ヘッド4に対応した極数pの磁極が高い着磁率でもって現れる。
着磁が完了し室温(25℃)まで冷却された、円筒状/リング状磁石の磁極中央部付近を切り取って試験片とし、磁化曲線をVSM(Vibrating Sample Magnetometer:振動試料型磁力計)で測定し着磁率の評価を行ったところ、図5の動作点P’で示されるようなパーミアンス係数1.5の希土類磁石においては着磁率70%以上が確認された。以上により、本願発明に係る着磁方法により希土類磁石の着磁率を少なくとも70%まで上昇させられることが判明した。
なお量産時には、複数の着磁ヨーク1をタレット状に配置し、被着磁物の挿入、上下加熱プランジャの被着磁物への接触、加温、着磁、冷却、及びタクト時間を数秒程度に設定して回転させながら並列処理を行うことにより、工数時間を短縮することが出来る。
なお、本願発明は本実施形態に特に限定されるものでは無く、例えば着磁ヘッド4は8極以外にも設定可能であり、例えば被着磁物の希土類磁石の外径Dが3(mm)以下の場合は磁極数を4極に変更しても良い。
更に、より好ましい着磁方法の形態として、図5に示すように、着磁ヨークに挿入された希土類磁石の動作点Pを、B-H曲線の第2象限における減磁曲線の直線領域に存在させて、前述のような着磁を行うことを提案する。加熱された後に着磁ヨーク1に挿入された任意の温度における希土類磁石の動作点Pが、図5に示すようにB-H曲線の第2象限の直線領域に存在する場合には、室温(25℃)まで冷却された希土類磁石の着磁率を95%以上に上昇させることが可能となることが確認された。
また、着磁ヨークに挿入された希土類磁石のパーミアンス係数Pcを20以上に設定することにより、着磁温度から室温(25℃)までの冷却過程において希土類磁石に生じる反磁場が600Oe以下になり、着磁中の熱減磁が生じにくくなるため、希土類磁石の着磁率を95%以上にすることが出来る。
なお、T℃まで加熱された後に着磁ヨーク1に挿入された希土類磁石のパーミアンス係数Pcが、モータ等の機器に組み込まれる際のパーミアンス係数Pc(10程度)と同一なるように設定し、且つ、着磁温度T(℃)を永久磁石モータの使用上限温度よりも高く設定することにより、モータに組み込んだ後に行われる、いわゆる熱からし(磁石の経時変化を抑制するため、使用前に安定化減磁を行うこと)を不要にすることが可能となり、より好ましい。
なお、着磁ヨーク1の構造などは、被着磁物である希土類磁石の寸法や材質、着着磁ヘッド数などに応じて適宜変更して良い。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
本実施例における被着磁物には、外形形状が図1に示すような円筒状で、外径Dが5(mm)、内径が3(mm)、及び長さが11(mm)に設定されたNdFeB系希土類磁石を用いた。これに外周8極着磁を行うにあたり、着磁ヨークに挿入された際の各磁極部分のパーミアンス係数が10となる様に着磁ヨークを設計した。
更に室温RTを25℃、また磁石素材の諸特性から、室温における保磁力HCJを18(kOe)、保磁力の温度係数βを-0.6(%/℃)と設定し、発生可能な着磁磁場Hextが15(kOe)の着磁ヨークにて飽和着磁する場合に必要な加熱温度を前記数2から求め、T=122℃と算出した。従って、着磁ヨークに挿入する被着磁物を、122℃まで加熱する。
また、本実施例で使用する着磁装置を構成する着磁ヨークは、図2に示す構成とし、8極着磁を行うものとする。
加熱により122℃まで達したことを確認後、励磁コイルに電流を流し、パルス状の着磁磁場Hextを被着磁物に3回印加した。
着磁後、被着磁物である希土類磁石は着磁ヨークに挿入されたまま自然放冷で冷却し、被着磁物が室温(25℃)まで冷却されたことを確認後、希土類磁石外周の磁極中央部付近の表面磁束密度をガウスメータにて測定し、着磁率の評価を行った。
室温(25℃)で着磁を行ったNdFeB系希土類磁石の試験片を評価したところ、着磁率は約44%となった。一方、本実施例に係る円筒状の希土類磁石を評価したところ、数2で導出した通り着磁温度122℃で着磁率を100%まで上昇させることが出来、飽和着磁が可能になることが確認された。その結果を着磁率%−着磁温度℃のグラフとして、図6に示す。
1 着磁ヨーク
2 穴部
3 溝
4 着磁ヘッド
5 励磁コイル
6 芯棒
7 加熱用プランジャ
8 被着磁物(希土類磁石)

Claims (7)

  1. 軽希土類元素RLの少なくとも1種を含有する希土類磁石を、80℃以上200℃以下の範囲の、下記数1から導出される着磁温度T℃まで加熱し、希土類磁石の保磁力の温度係数βに従って希土類磁石の保磁力を減少させ、温度T℃における希土類磁石が呈する保磁力HCの少なくとも2倍の磁場を有する着磁磁場Hextを少なくとも1回以上パルス状に印加した後に、希土類磁石を温度T℃から室温まで冷却することで、極数p(pは4以上の偶数)の多極着磁を行うことを特徴とする希土類磁石の着磁方法(但し、HCJは希土類磁石の室温における保磁力(Oe)、Hext(Oe)、RTは室温(℃)をそれぞれ表す)。
    Figure 0006296745
  2. 前記温度T℃における着磁ヨークに挿入された前記希土類磁石の動作点が、B-H曲線の第2象限における減磁曲線の直線領域に存在することを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石の着磁方法。
  3. 着磁ヨークに挿入された前記希土類磁石のパーミアンス係数Pcが20以上であることを特徴とする請求項2に記載の希土類磁石の着磁方法。
  4. 励磁コイルがそれぞれ巻回された、極数pの着磁ヘッドを備える着磁ヨークの穴部に、前記希土類磁石が挿入されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の希土類磁石の着磁方法。
  5. 前記着磁ヨークが水冷構造を備えると共に、前記励磁コイルがチューブ線で形成され、更にチューブ線に冷媒を流すことを特徴とする請求項4に記載の希土類磁石の着磁方法。
  6. 前記着磁ヨークに挿入された前記希土類磁石のパーミアンス係数Pcが、前記希土類磁石が機器に組み込まれる際のパーミアンス係数Pcと同一に設定されることを特徴とする請求項2、3、4、5の何れか1項に記載の希土類磁石の着磁方法。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の希土類磁石の着磁方法で着磁され、70%以上の着磁率を有し、軽希土類元素RLの少なくとも1種を含有することを特徴とする希土類磁石。
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