JP6294812B2 - 工場建物の換気システムおよび換気方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳物生産等を行なう工場の建物における換気システムに関し、特に自然エネルギーを利用した工場建物の換気システムに関する。
各種産業分野における工場建物では、建物内部の温熱、湿度、粉塵、臭気などを取り除き、作業環境を改善するために、種々の換気手段が採用されている。換気システムとして、電力その他の動力を利用して、空気を強制循環させて換気を行なうものが知られているが、コストが嵩み、特に大型の工場建物に導入することは容易ではなかった。
これに対して、風等の自然エネルギーを利用した工場の換気システムとして特許文献1が提案されている。特許文献1には、建物の側壁の下部に室外の空気を入れるための導入部を有するとともに、屋根に室内の空気を出すための排出部を有する建築物において、側壁の外側に更に側壁を設けることにより導入部に沿った風洞を形成して自然換気を促進した建築物が記載されている。これにより、温度差による換気に加えて、風洞による導入部への空気の押し込み効果を生じさせている。
また、特許文献1のシステムをより簡易構造化したものとして、特許文献2が提案されている。特許文献2には、建物の張間方向にわたる巾を持つ断面を有し、屋上において立ち上がる立上がり壁と、該立上がり壁の頂部に備えた排気装置とからなる排気塔を設け、建物の側壁の部位に給気装置を設け、この給気装置から排気装置への自然換気流を発生させ、建物内の換気を行なう工場建物が記載されている。この発明では、建物の桁行方向の空気流の風洞効果とともに給気装置から排気装置の排気塔への自然換気流が発生することで、建物内の熱、粉塵、臭気等を含む空気を換気できるとしている。また、給気装置から排気装置への自然換気流間に扇風機等の補助換気装置を設けることで、換気性能を強化できるとしている。
特開昭64−21142号公報 特開平07−252894号公報
しかしながら、発熱源や臭気源が多く配置された工場建物や、非常に大規模な工場建物の場合、従来の換気システムではその換気が十分にできるとはいえない。特に、鋳物工場の場合、電気炉、砂再生装置、ミキサー、注湯場、解枠場、焼鈍炉、ショット等の、高熱、臭気、埃等の発生源が多数存在する。鋳物工場では、基本的には、これらの発生源に防塵フードと集塵機を取り付けて除去するが、1500℃の溶けた鉄の移し替え時や移動時等に、熱や臭気が工場建物内部にこもり、作業環境を悪化させる。また、工場建物外に、上記の熱や臭気が漏れる場合には、周囲の他の工場や民家に不快感を与える等のおそれがある。
ここで、特許文献1のように側壁の外側に更に、風洞を形成するための側壁を設ける場合、工場建物全体が大きくなり過ぎ、立地条件等によっては設けることができない。これに対して特許文献2では風洞を取り除くことで、小型化や簡易化が図れる。しかし、十分な換気性能を発揮するためには、建物の桁行方向の自然換気流間を安定して維持する必要があり、建物内における発熱源の配置や、建物自体の構造によっては、該自然換気流の維持が困難となり、換気性能が不十分となるおそれがある。その他、特許文献1や特許文献2のように、建物の側壁に、該建物内に空気を導入する吸気孔を設ける場合でも、その高さにより風の強さは異なり、吸気孔の位置等によっては十分の給気作用を発揮できないおそれがある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、比較的簡易な構造を用い、風等の自然エネルギーを有効に利用して優れた換気性能を発揮でき、工場建物内の熱、臭気、埃等を十分に除去して工場建物内での作業環境を改善でき、周辺環境への悪影響も抑制できる工場建物の換気システムおよび換気方法を提供することを目的とする。
本発明の工場建物の換気システムは、側壁部と、該側壁部で囲まれる空間の天井となる屋根部とを有する建物本体と、該建物本体の内部に配置される発熱源となる複数の工場設備とを備えてなる工場建物において、該建物本体内部の空気を換気するための工場建物の換気システムであり、上記側壁部は、上記建物本体外部の空気を該建物本体内部に導入する吸気部を有し、上記屋根部は、上記建物本体内部の空気を該建物本体外部に排気する排気部を有し、上記屋根部は、その最上部に上記排気部を有する傾斜構造であり、その上記建物本体内部側が上記傾斜に沿った略平面形状であり、上記複数の工場設備のうち、上記建物本体内の床面水平位置で上記排気部の近傍側に配置される工場設備の少なくとも1つが、上記吸気部の近傍側に配置される工場設備よりも発熱量が多く、上記吸気部は、地表面から2m〜5mの高さの範囲に吸気口が配置されるとともに、該吸気口の上端に連結されて該吸気口を開閉可能とし、該吸気口の開口時において上記側壁部外側で地表面側に傾斜して固定されるフラップ板を有することを特徴とする。
上記換気システムにおいて、上記工場建物が、鋳物生産を行なうための工場建物であり、上記工場設備として、少なくとも、材料を溶解する電気炉と、該電気炉で溶解した材料を鋳型に注ぎ込む注湯場とを有し、上記電気炉および上記注湯場が、上記建物本体内の床面水平位置で上記排気部の近傍側に配置されることを特徴とする。
本発明の工場建物の換気方法は、側壁部と、該側壁部で囲まれる空間の天井となる屋根部とを有する建物本体と、該建物本体の内部に配置される発熱源となる複数の工場設備とを備えてなる工場建物において、該建物本体内部の空気を換気するための工場建物の換気方法であり、上記側壁部に、地表面から2m〜5mの高さの範囲に配置される吸気口と、該吸気口の上端に連結されて該吸気口を開閉可能とし、該吸気口の開口時において上記側壁部外側で地表面側に傾斜して固定されるフラップ板とを有する吸気部を設け、上記屋根部を、その最上部に排気部を有する傾斜構造とし、かつ、その上記建物本体内部側を上記傾斜に沿った略平面形状とし、上記建物本体外部の空気を上記吸気部から該建物本体内部に導入し、上記排気部から上記建物本体内部の空気を該建物本体外部に排気する空気の流れを形成するとともに、上記複数の工場設備のうち、上記建物本体内の床面水平位置で上記排気部の近傍側に配置する工場設備の少なくとも1つを、上記吸気部の近傍側に配置する工場設備よりも発熱量が多いものとし、これらの工場設備から発生する熱により上記空気の流れを加速して、該建物本体内部の空気を換気することを特徴とする。
上記換気方法において、上記工場建物が、鋳物生産を行なうための工場建物であり、上記工場設備として、少なくとも、材料を溶解する電気炉と、該電気炉で溶解した材料を鋳型に注ぎ込む注湯場とを有し、上記電気炉および上記注湯場を、上記建物本体内の床面水平位置で上記排気部の近傍側に配置することを特徴とする。
本発明の工場建物の換気システムおよび換気方法は、建物本体外部の空気を該建物本体内部に導入するために、建物本体の側壁部に、地表面から2m〜5mの高さの範囲に吸気口が配置されるとともに、該吸気口の上端に連結されて該吸気口を開閉可能とし、該吸気口の開口時において側壁部外側で地表面側に傾斜して固定されるフラップ板を有する吸気部を有するので、ベルヌーイの法則による吸引力のある風の流れが形成でき、建物本体の側壁部に当たった風を、その風速を維持または上げて工場建物内に導入できる。また、建物本体内部の空気を該建物本体外部に排気するために、傾斜構造を有する屋根部の最上部に排気部を有し、該屋根部の建物本体内部側が上記傾斜に沿った略平面形状であるので、吸気部と排気部との高度差による煙突効果により、吸気部から建物本体内部に導入される空気の流れが安定し、かつ、この流れを滑らかに排気部に誘導できる。さらに、工場設備のうち、建物本体内の床面水平位置で排気部の近傍側に配置される工場設備の少なくとも1つが、吸気部の近傍側に配置される工場設備よりも発熱量が多いので、これらの工場設備から発生する熱により、その上部の空気が加熱されて浮力が付され、上記空気の流れを吸気部から排気部側に向けて加速できる。
本発明の工場建物の換気システムおよび換気方法は、上記のように、ベルヌーイの法則、煙突効果、浮力等を利用し、自然エネルギーを有効に利用することで、空調装置等による別途の動力手段を用いることなく該自然エネルギーのみで優れた換気性能を発揮できる。これにより、例えば、鋳物生産を行なうための工場建物において、該工場建物内の熱、臭気、埃等を十分に除去して作業環境を改善できる。さらに、工場建物内の熱、臭気、埃等が工場外部に漏れる場合であっても、大量の空気で薄めて希釈されるため、周囲の工場や民家へ不快感を与える等の悪影響を抑制できる。
本発明の工場建物の換気システムを備えた鋳物工場の一例を示す概要図である。 吸気部周囲の拡大参考図と、じょうご前後の流速の関係(ベンチュリの式)を示す図である。 吸気部の態様の一例を示す図である。
本発明の工場建物の換気システムの一例を図1に基づいて説明する。図1は、該システムを備えた鋳物工場の概要図である。図1に示すように、本発明の換気システムは、建物本体1と、建物本体1の内部に配置される発熱源となる複数の工場設備4(4a〜4d)とを備えてなる工場建物において、建物本体1の内部の空気を換気するための換気システム(換気装置)である。ここで、建物本体1は、側壁部2と、側壁部2で囲まれる空間の天井となる屋根部3とを有する。側壁部2は、建物本体外部の空気を内部に導入するための吸気部5を有する。屋根部3は、建物本体1の内部の空気を外部に排気するための排気部6を有する。図1における白抜き矢印が空気(風)の流れを示し、黒塗り矢印が熱および空気の流れを示す。
この換気システムでは上記のような構成を有し、建物本体1の外部の空気を吸気部5から内部に導入し、排気部6から建物本体1の内部の空気を外部に排気する空気の流れを形成することで、建物本体1の内部の空気を換気する。この際に、高い換気効率を実現するため、(1)吸気部からの空気(風)の導入量を多く確保すること、(2)工場内で吸気部から排気部までの空気の流れをスムーズにすること、等が必要となる。
(1)吸気部からの空気(風)の導入量を多く確保すること
(1)を実現すべく、図1に示すように、本発明の換気システムの吸気部5は、地表面7から2m〜5mの高さの範囲に吸気口5aが配置されるとともに、吸気口5aの上端に連結されて吸気口5aを開閉可能とし、吸気口5aの開口時において側壁部2の外側で地表面7側に傾斜して固定されるフラップ板5bを有する。フラップ板5bは、吸気口5aの閉口時における蓋部となる。
吸気部5による空気(風)の導入量向上効果を図2に基づいて説明する。図2(a)は図1における吸気部5の周囲の拡大参考図であり、図2(b)はじょうご前後の流速の関係(ベンチュリの式)を示す図である。本発明者らは、ベルヌーイの法則を利用し、吸引力のある風の流れを作るため、建物本体の側壁部に当たった風を、風速を上げて工場内に導入する手段を検討した。通常のように、側壁部に窓やガラリを設けるだけでは、自然風の風速以下の風しか導入できないため、図2(b)に示すような液体を集めるときに使用する「じょうご」を横向きにしたイメージで、側壁部に風の入り口となる吸気部5を設け、風を集めて風速を上げることを検討した。通常のじょうごは、重力落下とコリオリの渦を利用するが、本発明では水平方向の風を集めるため、地表面付近の風の特性を考慮して形状を決定した。この特性として、地表面近くでは風速0であり、高度が上がると風速も上がり、地表面近くの接地層では風速の鉛直勾配が特に大きいことが公知である。
一方、ベルヌーイの式を書き直すと以下の式となる。
P= ρ(constant - 1/2 v2 - gz)
ここで、Pは圧力、vは風速(風の速度)、ρは密度、gは重力加速度、zは地表面からの高さである。
上記式より、風が地表面から離れるにつれて風速vが急速に増加し、かつ位置エネルギーgzも増加することになるので、密度ρが同じであれば、圧力Pは急速に低下していくことになる。さらに、直射日光で加熱された舗装道路の地表面や側壁部で温められた空気が上昇しようとするため、舗装道路の上を流れている風や側壁部周囲の風には上昇する力が働いていることになる。
以上から、地表面近くでは、建物に当たった風は気圧の低い上方向に曲がり、建物と垂直に水平方向からきた風は建物に当たった後、進路を変え、壁に沿って上昇する。直射日光に厳しい時期ほど、強い上昇気流が発生する。すなわち、図2(a)に示すように、地表面7から高さH(m)に吸気部5を設けることで、高さH(m)以下から上昇してくる風をフラップ板5bで集積して吸気口5aに取り込むことができる。吸気口5aから取り込まれる風の量をF(h)とすると、F(h)=∫v(h)dhとなり、安定した風があれば高さ方向に累積することが予想できる。
風が地表面7から離れるほど風速が上がることから、極力高い場所に吸気部5(吸気口5a)を設けることが好ましいが、高すぎる場合、人力での開閉が危険または困難となるおそれがある。また、工場の中には電気、エアー、水の配管配線、部品棚など障害物が多数存在する。さらに、工場内において風が余りにも高い場所を流れると、作業者からの距離が遠くなり過ぎ、吸引力不足になる可能性がある。このため、通常の窓やガラリ(2m未満)よりも高い位置とし、かつ、人力による開閉等が可能な高さとして、本発明では地表面7から2m〜5mの高さの範囲に吸気口5aを配置していることに特徴を有する。この範囲は、より好ましくは2.5m〜4mであり、さらに好ましくは3m〜4mである。
また、吸気口5aの開口時における、フラップ板5bの側壁部2からの開閉角度は90°(地表面に対して水平)以下であれば特に限定されない。屋根部の最上部にある排気部への滑らかな風を形成するため、水平から傾けることが好ましい。具体的には、屋根部の最上部にある排気部を指向するように、上記開閉角度を45°前後(30°〜60°)とすることが好ましい。
実施例として、猛暑日に風向きを考慮して、上記吸気部による効果の検証を行なった。吸気口の高さHを3.3mとし、吸気口の寸法を(1m×3.7m)とした。また、フラップ板の側壁部からの開閉角度は、90°から地表側に傾けた角度(45°)とした。図2(b)に示すベンチュリの式より、地表付近の風の速度v1を仮に5m/sとすると、該理論上、工場内に導入される風の速度v2は16.5m/sとなる。これに対して、実際の風速を測定した結果、地表付近(地表面からフラップ板までの間)の風の速度が1〜5m/sのとき、工場内に導入される風の速度は1〜5m/sであった。なお、フラップ板を設けない通常の窓(地表面からの高さは上記吸気口と同じ)から工場内に導入される風の速度は0〜1m/sであった。
この結果より、実際には工場建物の側壁部に垂直方向から風があたるのではなく、また、側壁部にあたった後、他方向に流れる成分もあるため、理論値のようにはならないが、該フラップ板を設けることで、設けない場合と比較して、側壁部に当たった風について、その風速を十分に維持でき、工場内への空気(風)の導入量を顕著に増加させ得ることが分かる。
なお、吸気部5の数は特に限定されず、図3に示すように、側壁部の長手方向に一定間隔で複数個設けることができる。また、吸気部5を設ける側壁部は、その工場立地等を考慮して適宜決定される。さらに、工場内で空気が滞留する場所を排除するため、対向する側壁面に吸気部をそれぞれ多数取り付けることで、工場内全体に一様な空気の流れを形成できる。
(2)工場内で吸気部から排気部までの空気の流れをスムーズにすること
ベルヌーイの法則の条件は層流であり、乱流を工場建物内に発生させないことが好ましい。このため、図1に示すように、側壁部2の吸気部5から屋根部3の排気部6まで適切な空気(風)の流れを作ることが重要である。自然の風のみを利用する場合、空気の流れが不安定になるので、本発明では、吸気部5と排気部6との位置関係に高低差を付けて煙突効果を利用して空気の流れを安定させ、さらに、発熱源となる複数の工場設備4を適切に配置して浮力を用いて風を加速するようにしている。
以下、図1を参照しつつ詳細に説明する。屋根部3は、排気部6が最上部に位置するような中高の傾斜構造である。フラップ板5bと吸気口5aとからなる吸気部5から取り込んだ空気(風)を加速するために、排気部6を屋根部3の最も高い位置に設けている。煙突効果(p=g・ρ・h)により、吸気部5と排気部6の高度差から発生する気圧差を利用して、吸気部5における風の導入を補助するとともに、工場建物内の空気の流れを安定させている。また、排気部6は、それぞれの吸気口5aからの風を干渉させないために、工場の全長にわたって設けることが好ましい。
また、屋根部3の建物本体内部側3aの形状が、極力段差等のない、屋根部の傾斜に沿ったシンプルな略平面形状とされている。この形状は、図1に示す工場断面でみると、傾斜直線形状である。これにより、屋根部の凹凸等により風の流れが乱されることを防止できる。
吸気部から取り込んだ空気(風)をさらに加速するように、電気炉などの発熱源となる工場設備4(4a〜4d)を配置している。工場設備から発生する熱により流体粒子が加熱されて浮力(ρ∝1/T)が生じる。このため、作業場の上を流れる風が、途中で加熱され浮力を付して加速される。特に、本発明では、複数の工場設備4のうち、建物本体1内の床面水平位置で排気部6の近傍側に配置される工場設備の少なくとも1つを、吸気部5の近傍側に配置される工場設備よりも発熱量が多いものとしている。これにより、排気部6側で、吸気部5側よりも強い浮力が得られ、吸気部5から排気部6までの空気の流れをスムーズにできる。
図1における工場設備4は、詳細には、注湯場4a(1400℃)、電気炉4b(1500℃)、解枠フード4c(200℃)、造型場4d(50℃)である。なお、図示は省略するが、これら以外の通常必要となる工場設備も備えている。鋳物工場では、材料を溶解する電気炉4bと、電気炉4bで溶解した材料を鋳型に注ぎ込む注湯場4aが特に高熱源となる。注湯場4a(1400℃)、電気炉4b(1500℃)、解枠フード4c(200℃)、造型場4d(50℃)を図1に示すように配置することで、工場内の空気の流れを、吸気部5から排気部6に向けて次第に加速させることができる。また、各発熱源からの上昇気流を屋根部3の最上部の排気部6へ滑らかに誘導するために、また、反対側の側壁部からの風と干渉を避けるために、工場内に壁部8を適宜設けてもよい。
作業場の上を通過する空気(風)が加熱され、浮力が付き加速することにより、風の気圧が低下して、熱、臭気、埃等を効果的に吸い込んだ結果、灼熱の鋳物工場作業場の熱、臭気、埃等を自然エネルギーだけで除去できる。
本発明の工場建物の換気方法は、上記した換気システムを利用した換気方法である。すなわち、側壁部に、地表面から2m〜5mの高さの範囲に配置される吸気口と、該吸気口の上端に連結されて該吸気口を開閉可能とし、該吸気口の開口時において側壁部外側で地表面側に傾斜して固定されるフラップ板とを有する吸気部を設け、屋根部を、その最上部に排気部を有する傾斜構造とし、かつ、その建物本体内部側を上記傾斜に沿った略平面形状とし、建物本体外部の空気を吸気部から建物本体内部に導入し、排気部から建物本体内部の空気を建物本体外部に排気する空気の流れを形成するとともに、複数の工場設備のうち、建物本体内の床面水平位置で排気部の近傍側に配置する工場設備の少なくとも1つを、吸気部の近傍側に配置する工場設備よりも発熱量が多いものとし、これらの工場設備から発生する熱により上記空気の流れを加速して、建物本体内部の空気を換気する方法である。
以上のように、本発明の工場建物の換気システムおよび換気方法は、ベルヌーイの法則、煙突効果、浮力等を利用し、自然エネルギーを有効に利用して、非常に優れた換気性能を発揮できる。
本発明の工場建物の換気システムは、比較的簡易な構造を用い、風等の自然エネルギーを有効に利用して優れた換気性能を発揮でき、工場建物内の熱、臭気、埃等を十分に除去して工場建物内での作業環境を改善でき、周辺環境への悪影響も抑制できるので、各種産業分野における工場建物における換気システムとして好適に利用できる。また、同原理を利用して、工場以外の他の建築物(例えばトンネル等)の換気システムにも応用できる。
1 建物本体
2 側壁部
3 屋根部
4 工場設備
5 吸気部
6 排気部
7 地表面
8 壁部

Claims (4)

  1. 側壁部と、該側壁部で囲まれる空間の天井となる屋根部とを有する建物本体と、該建物本体の内部に配置される発熱源となる複数の工場設備とを備えてなる工場建物において、該建物本体内部の空気を換気するための工場建物の換気システムであって、
    前記換気システムは、別途の動力手段を用いることなく自然エネルギーのみで換気するものであり、
    前記側壁部は、前記建物本体外部の空気を該建物本体内部に導入する吸気部を有し、前記屋根部は、前記建物本体内部の空気を該建物本体外部に排気する排気部を有し、
    前記屋根部は、その最上部に前記排気部を有する傾斜構造であり、その前記建物本体内部側が前記傾斜に沿った略平面形状であり、該形状は、前記工場建物の断面が傾斜直線形状であり、
    前記複数の工場設備のうち、前記建物本体内の床面水平位置で前記排気部の近傍側に配置される工場設備の少なくとも1つが、前記吸気部の近傍側に配置される工場設備よりも発熱量が多く、
    前記吸気部は、地表面から2m〜5mの高さの範囲に吸気口が配置されるとともに、該吸気口の上端に連結されて該吸気口を開閉可能とし、該吸気口の開口時において前記側壁部外側で地表面側に傾斜して固定されるフラップ板を有することを特徴とする工場建物の換気システム。
  2. 前記工場建物が、鋳物生産を行なうための工場建物であり、
    前記工場設備として、少なくとも、材料を溶解する電気炉と、該電気炉で溶解した材料を鋳型に注ぎ込む注湯場とを有し、
    前記電気炉および前記注湯場が、前記建物本体内の床面水平位置で前記排気部の近傍側に配置されることを特徴とする請求項1記載の工場建物の換気システム。
  3. 側壁部と、該側壁部で囲まれる空間の天井となる屋根部とを有する建物本体と、該建物本体の内部に配置される発熱源となる複数の工場設備とを備えてなる工場建物において、該建物本体内部の空気を換気するための工場建物の換気方法であって、
    前記換気方法は、別途の動力手段を用いることなく自然エネルギーのみで換気する方法であり、
    前記側壁部に、地表面から2m〜5mの高さの範囲に配置される吸気口と、該吸気口の上端に連結されて該吸気口を開閉可能とし、該吸気口の開口時において前記側壁部外側で地表面側に傾斜して固定されるフラップ板とを有する吸気部を設け、
    前記屋根部を、その最上部に排気部を有する傾斜構造とし、かつ、その前記建物本体内部側を前記傾斜に沿った、前記工場建物の断面が傾斜直線形状である略平面形状とし、
    前記建物本体外部の空気を前記吸気部から該建物本体内部に導入し、前記排気部から前記建物本体内部の空気を該建物本体外部に排気する空気の流れを形成するとともに、
    前記複数の工場設備のうち、前記建物本体内の床面水平位置で前記排気部の近傍側に配置する工場設備の少なくとも1つを、前記吸気部の近傍側に配置する工場設備よりも発熱量が多いものとし、これらの工場設備から発生する熱により前記空気の流れを加速して、該建物本体内部の空気を換気することを特徴とする工場建物の換気方法。
  4. 前記工場建物が、鋳物生産を行なうための工場建物であり、
    前記工場設備として、少なくとも、材料を溶解する電気炉と、該電気炉で溶解した材料を鋳型に注ぎ込む注湯場とを有し、
    前記電気炉および前記注湯場を、前記建物本体内の床面水平位置で前記排気部の近傍側に配置することを特徴とする請求項3記載の工場建物の換気方法。
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