JP6294070B2 - 中空構造板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂製の中空構造板の製造方法に関する。より詳しくは、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が積層され、更に、該表面材の中空凸部成形シートが積層されていない面に、熱接着性を有する表皮材が熱接着された中空構造板の製造技術に関する。
樹脂製の中空構造板は、軽量で、かつ耐薬品性、耐水性、断熱性、遮音性および復元性に優れ、取り扱いも容易であることから、箱材や梱包材などの物流用途、壁や天井用のパネル材などの建築用途、更には、自動車用途などの幅広い分野に使用されている。例えば、特許文献1には、所定の間隔を隔てて平行に配置された合成樹脂素材製の2枚のシートの間に、所定のピッチで凹凸波形が繰り返された合成樹脂素材製の波形部材が挟持された状態の中空構造板が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、2枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部が突き合わされた状態で熱融着された構成の所謂ツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板が開示されている。このツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板は、曲げ性能および圧縮性能に優れると共に、厚さ方向の構造が上下対称のため反りが極めて少ないことから、自動車内装材、物流資材、建材など、様々な分野で使用されている。
このような中空構造板は、一般に、複数の凸部が形成された熱可塑性樹脂シートに、1又は2以上の熱可塑性樹脂シートを積層し、融着することにより製造されている。そして、近年では、中空構造板の製造方法に関する技術の開発も進みつつある。例えば、特許文献3には、第1シートに突起部を形成した後、第1シートの突起部の開口側の面に、融点以上に加熱された第2シートを供給し、第2シートの第1シートに対向する面と反対側の面を、加圧手段に所定時間接触させることにより、シートの融着性を向上させる技術が開示されている。
上記のように、幅広い分野で適用可能な中空構造板は、それぞれの用途に合わせて、表面を様々な表皮材で被覆して用いられることが多い。例えば、特許文献4では、ツインコーン(登録商標)タイプの中空構造板に、表皮材としてポリプロピレン系繊維からなる織布を積層させることにより、高い強度を有するとともに、軽量で機械的特性、リサイクル性、成形性、接着性等の諸性能に優れ、コストアップを抑制する技術が開示されている。
特開2003−170515号公報 特開2008−260309号公報 特開2008−213262号公報 特開2006−001035号公報
従来、中空構造板1’の製造方法は、図26に示すように、中空凸部成形シート2’に表面材3’および表皮材4’を積層させる際、加熱手段が設けられたローラー1100によって、表面材3’および表皮材4’を融点以上に加熱し、溶融または半溶融した状態で、中空凸部成形シート2’に積層していた。
その後、表面材3’および表皮材4’を積層した中空凸部成形シート2’を冷却し、固化することで、中空構造板を製造していた。
しかしながら、従来の方法では、加熱手段が設けられたローラー1100により表皮材4’の表面を溶融させた状態で表面材3’に熱融着させるため、表面材3’と表皮材4’とは十分な接着力を有するものの、中空構造板の外観につき、以下のような問題点があった。
(1)表皮材の風合いが悪化する。
(2)表皮材にシワが入る。
そこで、本発明では、表面材と表皮材とが十分な接着力を有しつつ、外観が優れた中空構造板の製造技術を提供することを主目的とする。
そこで、本願発明者らは、中空構造板の製造工程において、表面材の積層と表皮材の積層とを別々の製造工程とし、また、表皮材の非接着面の温度制御に着目することにより、表面材と表皮材とが十分な接着力を有しつつ、外観の優れた中空構造板を製造することに成功し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明では、まず、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が積層され、更に、該表面材の中空凸部成形シートが積層されていない面に、熱接着性を有する表皮材が熱接着された中空構造板を製造する方法であって、
前記中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、前記表面材を積層する表面材積層工程と、
該表面材積層工程の後に、前記表皮材の熱接着面を非接触加熱により予備加熱する予備加熱工程と、
該予備加熱工程の後に、前記表皮材の熱接着面を接触加熱により予備加熱しつつ、前記表皮材にバックテンションを付与するバックテンション付与工程と、
該バックテンション付与工程の後に、前記表皮材の非接着面を融点未満に温度制御した状態で、前記表面材に前記表皮材を熱接着する表皮材熱接着工程と、
を少なくとも行う中空構造板の製造方法を提供する。
本発明に係る中空構造板の製造方法では、表面材積層工程と表皮材熱接着工程とを別々の製造工程とし、表皮材の表面材と熱接着しない側の面(非接着面)の温度を前記表皮材の融点未満に制御した状態で、表皮材熱接着工程行うことを特徴とする。これにより、表皮材の非接着面の溶融を防ぎ、その結果、表面材と表皮材とが十分な接着力を有しつつ、外観の優れた中空構造板を提供することができる
ここで、本発明で用いる技術用語の定義付けを行う。
本発明において、「接着」とは、その方法に関わらず、少なくともシート同士が接した状態で固着することをいう。したがって、本発明においては「融着」は、「接着」の一態様として用いる。
また、本発明において、「表皮材の非接着面」とは、表皮材の表面材と熱接着しない側の面を指し、「表皮材の熱接着面」とは、表皮材の表面材と熱接着する側の面を指すものとする。
本発明に係る中空構造板の製造方法は、表面材積層工程と表皮材熱接着工程とを別々の製造工程とし、表皮材の非接着面を融点未満に温度制御した状態で、表皮材熱接着工程行うため、表皮材の非接着面の溶融を防ぎ、表面材と表皮材とが十分な接着力を有しつつ、外観の優れた中空構造板を製造することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本発明中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
図中(a)は、本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す断面図であり、図中(b)はその分解斜視図である。 本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第2実施形態の構造を模式的に示す断面図である。 本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第3実施形態の構造を模式的に示す断面図である。 本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の一態様を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。 本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4および図5とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。 本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4から図6とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。 本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の図4から図7とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。 本発明に係る製造方法に用いることができる表皮材を形成する熱可塑性樹脂からなる繊維の一例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る製造方法のフローチャート図である。 本発明に係る製造方法の第1実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第2実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第3実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第4実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第5実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第6実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第7実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第8実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第9実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第10実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第11実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第12実施形態を示す概念図である。 本発明に係る製造方法の第13実施形態を示す概念図である。 (iii)表面材と表皮材との接着力に係る試験における試験片採取の様子を示す模式図である。 (iii)表面材と表皮材との接着力に係る試験における表皮材剥離の様子を示す模式図である。 従来の中空構造板の製造方法の例を示す概念図である。
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<中空構造板1について>
まず、本発明に係る製造方法で製造する中空構造板1について詳細に説明する。
[中空構造板1の全体構成]
図1(a)は、本発明に係る製造方法で製造可能な中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す断面図であり、図1(b)はその分解斜視図である。図1(a)および(b)に示すように、第1実施形態に係る中空構造板1は、中空状の凸部2aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シート2の両面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材31、32を積層し、更にこれら表面材31、32の外側に、表皮材41、42を熱接着した構造である。
第1実施形態(シングルコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合わせ)に係る中空構造板1は、2枚の表面材31、32で中空凸部成形シート2を挟持し、更にこれらの表面材31、32の外側に、表皮材41、42を熱接着した構造であるが、この構造に特に限定されず、中空凸部成形シート2の少なくとも一面に表面材3(31、32)が積層され、更にその表面材3(31、32)の外側に表皮材4(41、42)が熱接着された構造の中空構造板1であれば、本発明に係る製造方法で製造することが可能である。例えば、図2に示す第2実施形態(コアコーン(登録商標)(シングル)への片面表面材・表皮材貼り合わせ)に係る中空構造板1のように、中空凸部成形シート2の片面に表面材3が積層され、更にその表面材3の外側に表皮材4が熱接着された構造の中空構造板1であっても、本発明に係る製造方法で製造することが可能である。
また、図3に示す第3実施形態(シングルコーン(登録商標)への片面表皮材貼り合わせ)に係る中空構造板1のように、中空凸部成形シート2の両面に表面材31、32が積層され、更にその表面材31または32のいずれか一方の外側に表皮材4が熱接着された構造の中空構造板1であっても、本発明に係る製造方法で製造することが可能である。
なお、中空凸部成形シート2、表面材3(31、32)および表皮材4(41、42)は、同じ材料で形成することもできるが、積層可能な範囲で相互に異なる材料で形成することもできる。中空凸部成形シート2、表面材3(31、32)および表皮材4(41、42)の具体的な材質については、後述する。
[中空凸部成形シート2]
図4は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の一態様を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、中空凸部成形シート2には、中空状の凸部2aが間隔をあけて複数形成されている。中空凸部成形シート2の凸部2aの大きさ、形状、高さなどの形態は、図4に示すような円錐台形に限らず、凸状であれば、自由に設計することができる。例えば、角錐台形、円柱形、多角柱形、多角星柱形、多角星錐台形など、様々な形態に設計することができる。また、凸部の途中に段差を設けたり、凸部の途中にウェーブを設けたりすることも自由である。
更に、中空凸部成形シート2には、単一の形態の凸部2aを複数設けることに限らず、2種以上の形態の凸部2aを自由に組み合わせて形成することも可能である。
図5は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の、図4とは異なる一態様を模式的に示す断面図(コアコーン(登録商標)(ツイン))である。図5に示す中空凸部成形シート2は、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる2枚の中空凸部成形シート21、22を、互いの中空凸部21a、22a同士を突き合わせて熱融着した構造である。このように、本発明に係る製造方法では、複数の中空凸部成形シート21、22を用いて構成した中空凸部成形シート2なども用いることができる。
図6は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の、図4および図5とは異なる一態様を模式的に示す断面図(ツインコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合わせ)である。図6に示す中空構造板1は、2枚の表面材31、32で中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる2枚の中空凸部成形シート21、22を挟持し、更にこれらの表面材31、32の外側に、表皮材41、42を熱接着した構造である。このように、本発明に係る製造方法では、複数の中空凸部成形シート21、22を用いて構成した中空凸部成形シート2に、表面材3(31、32)を積層し、更にその表面材3(31、32)の外側に表皮材4(41、42)が熱接着された構造の中空構造板1を製造することも可能である。
複数の中空凸部成形シート21、22を用いて構成した中空凸部成形シート2の他の例として、図7に示すような態様(コアコーン(登録商標)の積層体:例えば、特開2009−107144)が挙げられる。図7は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の、図4から図6とは異なる一態様を模式的に示す断面図である。図7に示す中空凸部成形シート2は、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる2枚の中空凸部成形シート21、22を、熱可塑性樹脂からなる中間シート23を挟んだ状態で、互いの中空凸部21a、22a同士を突き合わせて熱融着した構造である。
また、図8は、本発明に係る製造方法で用いることが可能な中空凸部成形シート2の、図4から図7とは異なる一態様(コアコーン(登録商標)(ツイン)・亜種:例えば、特開2009−107144)を模式的に示す断面図である。図8に示す中空凸部成形シート2は、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる2枚の中空凸部成形シート21、22を、互いの中空凸部21a、22a同士を、互い違いに向き合わせて熱融着した構造である。即ち、一方の中空凸部成形シート21の中空凸部21aが、他方の中空凸部成形シート22の開口部22bに入り込み、一方の中空凸部成形シート21の開口部21bに、他方の中空凸部成形シート22の中空凸部22aが入り込んだ状態で、中空凸部成形シート21、22を熱融着した構造である。
このように、本発明に係る製造方法に用いることができる中空凸部成形シート2は、その目的の強度や曲げ性能などに応じて、自由に設計することが可能である。
中空構造板1を構成する中空凸部成形シート2の材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、通常、中空構造板に用いることができる熱可塑性樹脂を、1種または2種以上自由に組み合わせて用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリカーボネート(PC)などを使用することができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、コスト、成形性および物性の面から、特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンおよびブロック状ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が好ましい。
また、中空凸部成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、タルク、マイカおよび炭酸カルシウムなどのフィラーや、ガラス繊維、アラミド繊維および炭素繊維などのチョップドストランドが添加されていてもよい。これにより、中空構造板1の剛性を向上させることができる。
更に、中空凸部成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、難燃性、導電性および耐候性などを向上させるための改質剤が添加されていてもよい。
[表面材3]
表面材3(31、32)は、前述した中空凸部成形シート2に積層され、この中空凸部成形シート2と共に中空構造板1を構成する。表面材3(31、32)の形態は、少なくとも中空凸部成形シート2に積層される面が平滑であれば、自由に設計することができる。
中空構造板1に用いる表面材3(31、32)の材質は、前述の中空凸部成形シート2と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
[表皮材4]
表皮材4(41、42)は、前述した表面材3(31、32)の中空凸部成形シート2が積層されていない面に熱接着され、中空凸部成形シート2、表面材3(31、32)と共に中空構造板1を構成する。表皮材4(41、42)を備えることで、本発明に係る製造方法で製造される中空構造板1に、意匠性、吸音特性、断熱性などの用途に応じた特性を付与することができる。
中空構造板1に用いる表皮材4の材質は、熱接着性を有すれば特に限定されず、通常、中空構造板の表皮材として用いることができる材料を、目的の用途などに応じて、自由に選択して用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂シート、樹脂製の織布、または不織布などを挙げることができる。また、複数の同種または異種のシートを積層した積層シートを、表皮材4として用いることも可能である。
図9は、本発明に係る製造方法に用いることができる表皮材4を形成する熱可塑性樹脂からなる繊維を模式的に示す断面図である。本発明では、第1の熱可塑性樹脂を芯4a成分とし、該芯成分よりも低い融点をもつ第2の熱可塑性樹脂を鞘4b成分とする鞘芯構造からなる繊維(図9参照)を、一部含んでなる織布または不織布を表皮材4として用いることが好ましい。例えば、芯4a成分にポリエチレンテレフタラート(融点約264℃)を、鞘4b成分にポリプロピレン(融点約165℃)を用いた、鞘芯構造からなる繊維を一部に含む不織布などが挙げられる。
図9に示す鞘芯構造からなる繊維は、鞘4bを構成する第2の熱可塑性樹脂の融点温度以上、芯4aを構成する第1の熱可塑性樹脂の融点未満で加熱(温度制御)することにより、芯4aは固化状態、鞘4bは溶融状態に維持することができる。そのため、この繊維を一部含んでなる織布または不織布を表皮材4として用いた場合、鞘4bを構成する第2の熱可塑性樹脂の融点温度以上、芯4aを構成する第1の熱可塑性樹脂の融点未満に加熱(温度制御)すれば、表皮材4は接着可能な状態を維持できる。
また、上述した繊維を一部含んでなる織布または不織布を表皮材4として用いた場合、表皮材4の非接着面を鞘4bの融点未満に温度制御すれば、表皮材4の外観に対して目視により確認できる程度の損傷を与えることなく、結果として、中空構造板1の外観を良好な状態に保つことができる。
なお、第1実施形態の中空構造板1のように(図1参照)、中空凸部成形シート2の両面に、表面材31、32を積層させる場合、各表面材31、32に熱融着させる表皮材41、42は、同一の材質で形成することが可能であり、また、異なる材質で形成することも可能である。
<製造方法について>
次に、本発明に係る製造方法について説明する。
図10は、本発明に係る製造方法のフローチャート図である。
本発明に係る中空構造板の製造方法は、表面材積層工程Iと表皮材熱接着工程IIとを少なくとも行う方法である。また、必要に応じて、予備加熱工程III、バックテンション付与工程IVなどを、更に行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
[表面材積層工程I]
本発明に係る表面材積層工程Iとは、中空凸部成形シート2の少なくとも一方の面に、表面材3の積層を行う工程である。本発明において、表面材3の中空凸部成形シート2への積層方法は、特に限定されず、熱接着による方法や、中空凸部成形シート2若しくは表面材3に接着剤などを直接塗布した後、中空凸部成形シート2と表面材3とを貼り合わせる方法などを用いることができる。
図11は、本発明に係る製造方法の第1実施形態を示す概念図である。破線で囲まれた表面材積層工程Iは、表面材用ローラー101を用いて表面材3を中空凸部成形シート2に積層固着する方法で示しているが、本発明において、表面材3を中空凸部成形シート2に積層することができれば、特にその方法は限定されない。また、本発明では、更に、表面材用ローラー101に対し、加熱機能、冷却機能または温度調節機能などを備えることも可能である。
なお、本発明に係る製造方法では、表面材積層工程Iを行う際に、表面材積層工程Iの前の供給段階における中空凸部成形シート2および表面材3は、溶融状態であっても非溶融状態であってもよいが、予め固化された中空凸部成形シート2および表面材3を供給することが好ましい。固化されていない、即ち、溶融状態の中空凸部成形シート2および表面材3は、その形態が安定していないため、供給段階において、中空凸部成形シート2や表面材3が変形する恐れがある。一方、予め固化され、形態が安定した状態の中空凸部成形シート2および表面材3を用いることで、供給段階における中空凸部成形シート2や表面材3の変形を防止することができる。
図11および後述する各実施形態を説明する図において、先端にTダイ102が設けられた押出機103から、熱可塑性樹脂を押し出してシート状にして表面材3を形成しているが、これに限定されず、予めシート状に形成された表面材3を用いることも可能である。
[表皮材熱接着工程II]
本発明に係る表皮材熱接着工程IIとは、表面材3の中空凸部成形シート2が積層されていない面に、表皮材4の熱接着を行う工程である。本発明において、表皮材熱接着工程IIは、表面材積層工程Iとは、別個独立した製造工程であり、更に、表皮材4の非接着面を融点未満に温度制御した状態で行われる製造工程であることを特徴とする。
従来の中空構造板の製造方法は、図26に示すように、加熱手段が設けられたローラー1100を用いて表面材3’を中空凸部成形シート2’に積層する工程で、これと同一のローラーを用いることにより表皮材4’を表面材3’に熱融着させていた。同一のローラーを用いるということは、即ち、中空構造板1’の製造工程において表面材3’と表皮材4’の設定温度は同一となることを意味する。したがって、従来の方法を用いた場合、表面材3’を中空凸部成形シート2’に熱接着させるために、表面材3’の中空凸部成形シート2’に積層される面を溶融または半溶融状態とする必要があり、ローラーの設定温度を表皮材4’の融点以上の温度としなければならなかった。その結果、表皮材4’の非接着面までもが、同一のローラーにより加熱されることで、融点以上の温度となり、溶融してしまう。この溶融現象が、中空構造板1’の外観を損なう根本的な原因であった。
一方、本発明では、表面材積層工程Iと表皮材熱接着工程IIとを別々の製造工程とすることで、製造工程における、表面材3と表皮材4を異なる温度に設定することが可能となる。したがって、表皮材熱接着工程IIにおいて、表皮材4の非接着面の温度を、表皮材4の融点未満に温度制御すれば、表皮材4の非接着面の溶融現象が起きず、結果として、外観の優れた中空構造板1の製造が可能となる。
より具体的には、図11の第1実施形態に示すように、表皮材用ローラー104により、表面材3の中空凸部成形シート2が積層されていない面に、表皮材4の非接着面を融点未満に温度制御した状態で、表皮材4を熱接着する方法などが挙げられる。本発明では、更に、表皮材用ローラー104に対し、加熱機能、冷却機能または温度調節機能などを備えることが可能である。
表皮材熱接着工程IIにおける温度調節の方法は、特に限定されず、表皮材4の非接着面が融点未満であれば、自由な方法で温度調節することが可能である。例えば、図11の第1実施形態に示すように、温度調節機能が備えられた表皮材用ローラー104を用いる方法や、図12の第2実施形態や図16の第6実施形態に示すように、熱風または温風発生装置、あるいは熱線ヒーターなどからなる加熱部105を用いて温度調節する方法などが挙げられる。
図12の第2実施形態や図16の第6実施形態に示すように、表皮材熱接着工程IIにおいて、加熱部105を用いて温度調節する方法を用いる場合、表皮材用ローラー104内に、例えば、冷却媒体流路などを形成して冷却可能に設計することも可能である。しかし、表皮材用ローラー104の材質上、表皮材用ローラー104に接触するだけで表皮材4の非接着面を融点未満に温度調節可能であれば、特に積極的に冷却手段を設けなくてもよい。
表皮材熱接着工程IIにおいて調節される設定温度は、表皮材4の非接着面が融点未満となれば特に限定されず、表皮材4を形成する樹脂の種類に応じて、適宜設定することができる。例えば、表皮材4をポリエチレンテレフタラートおよびポリプロピレンを用いて形成した場合は、温度を100℃以上200℃以下の範囲に設定することが好ましい。
なお、本発明に係る製造方法では、表皮材熱接着工程IIを行う際、表皮材4の非接着面を融点未満に温度制御することができれば、表皮材熱接着工程IIの前の供給段階における表皮材4は、溶融状態であっても非溶融状態であってもよいが、予め固化された表皮材4を供給することが好ましい。固化されていない、即ち、溶融状態の表皮材4は、その形態が安定していないため、供給段階において、表皮材4が変形する恐れがある。一方、予め固化され、形態が安定した状態の表皮材4を用いることで、供給段階における表皮材4の変形を防止することができる。
上述したように、本発明において、表面材積層工程Iと表皮材熱接着工程IIとは、別個独立した製造工程であるが、加熱機能または温度調節機能が備えられた表面材用ローラー101および表皮材用ローラー104を用いて製造する場合、表面材積層工程Iの後、間隔を空けることなく表皮材熱接着工程IIを行うことが好ましい。表面材積層工程Iの後、間隔を空けて表皮材熱接着工程IIを行った場合、表面材3は既に冷却・固化された状態にあり、表皮材4との接着力が低下する場合があるからである。
表面材積層工程Iの後、「間隔を空けることなく」表皮材熱接着工程IIを行う方法とは、速度的、距離的なアプローチによる方法などが挙げられる。具体的には、製品のライン速度を上げる方法や、図13の第3実施形態に示すように、表面材用ローラー101と表皮材用ローラー104との直径に差異を設け、一方のローラーの下に他方のローラーが潜り込むように設計することで両ローラーの中心間の距離を短くする方法などが挙げられる。後者の方法による場合、より具体的には、表面材用ローラー101の直径を約300mm、表皮材用ローラー104の直径を約80mmとし、両者のローラー間の距離を約185mmに設定することで、表面材用ローラー101の下に表皮材用ローラー104が潜り込むような形となり、両ローラーの中心間の距離が短くなるように設計することが考えられる。
図14は、本発明に係る製造方法の第4実施形態(シングルコーン(登録商標)への片面表皮材貼り合わせ)を示す概念図である。第4実施形態に係る製造方法は、表面に凸状のピンが複数突設された成形ローラー201を用いて中空凸部成形シート2を形成する製造工程と同時に、中空凸部成形シート2の一方の面に表面材32を表面が平坦な平ローラー301により積層させ、その後、本発明に係る表面材積層工程Iと表皮材熱接着工程IIを行うことにより、中空凸部成形シート2の他方の面に表面材31及び表皮材4を熱接着する例である。
なお、第4実施形態においては、中空凸部成形シート2を形成する製造工程も示しているが、本発明においては、必須の製造工程ではない。したがって、予め中空凸部が形成された、中空凸部成形シート2を用いることも可能であるが、本発明に係る製造工程内において、中空凸部成形シート2を形成する製造工程も加えることで中空凸部成形シート2も同時に形成する方法を行ってもよい。
更には、第4実施形態に係る製造方法では、中空凸部成形シート2を、表面に凸状のピンが複数突設された成形ローラー201と、表面が平坦な平ローラー301とが、その回転軸が相互に平行になるように配置された真空形成装置によって製造を行っている。成形ローラー201と平ローラー301とは、それぞれ減圧チャンバー202a、202b内に設置されており、例えば、中空凸部成形シート2や表面材32を形成する樹脂の融点未満で加熱させる構成とすることが可能である。また、減圧チャンバー202a、202bには、中空凸部成形シート2および表面材32を吸引保持するための吸引孔203a、203bを設けることもできる。
図15は、本発明に係る製造方法の第5実施形態(コアコーン(登録商標)(ツイン)への片面表面材・表皮材貼り合わせ)を示す概念図である。第5実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート2として、中空状の凸部21a、22aが間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂からなる中空凸部成形シート21、22が、互いの中空凸部21a、22a同士を突き合わせて熱融着されたシートを用いた例である。
図16は、本発明に係る製造方法の第6実施形態(ツインコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合わせ)を示す概念図である。第6実施形態に係る製造方法は、中空凸部成形シート2の両側に、表面材31、32を積層し、その表面材31、32の両外側に、表皮材41、42を熱接着する例である。なお、第6実施形態では、中空凸部成形シート2の両側に、表面材31、32および表皮材41、42を同時に積層しているが、これに限定されず、図示しないが、中空凸部成形シート2の片側ずつ、各々を積層させることも可能である。
図17は、本発明に係る製造方法の第7実施形態(ツインコーン(登録商標)への両面表皮材貼り合わせ)を示す概念図である。第7実施形態に係る製造方法は、成形ローラー201a、201bを用いてコアコーン(登録商標)(ツイン)を形成した後、コアコーン(登録商標)(ツイン)の両面に、表面材31、32を積層させるとともに、更に、該表面材31、32に表皮材41、42を熱接着する方法である。また、第7実施形態に係る製造方法では、中空凸部成形シート2の形成において、真空形成装置によって、コアコーン(登録商標)(ツイン)を形成しているが、真空形成装置は、前述した第4実施形態(図14)と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
[予備加熱工程III]
本発明に係る予備加熱工程IIIとは、表皮材熱接着工程IIの前に行われる工程であって、表皮材4の熱接着面の予備加熱を行う工程である。本発明において、予備加熱工程IIIを更に行うことで、表面材3と表皮材4との接着力を向上させることができる。
予備加熱工程IIIは、非接触加熱または接触加熱による方法を用いて行うことができ、更には、非接触加熱および接触加熱による両方の方法を用いて行うこともできる。
非接触加熱による予備加熱工程IIIとは、図18の第8実施形態に示すように、熱風または温風発生装置、あるいは熱線ヒーターなどからなる非接触予備加熱部106などにより、直接表皮材4に接触しない方法で表皮材4の熱接着面を加熱する工程である。非接触加熱による予備加熱工程IIIを行うことで、表皮材4の非接着面を融点未満に温度制御しつつ、表皮材4の熱接着面を予備加熱することが可能となり、表面材3と表皮材4との接着力を向上させることができる。
接触加熱による予備加熱工程IIIとは、図19の第9実施形態に示すように、加熱機能または温度調節機能を備えた接触予備加熱部107などにより、直接表皮材4に接触する方法で表皮材4の熱接着面を加熱する工程である。接触加熱による予備加熱工程IIIを行うことで、表皮材4の熱接着面の温度を任意の温度に一時的に素早く上昇させることが可能となり、表面材3と表皮材4との接着力を向上させることができる。一方で、接触加熱による予備加熱工程IIIを長時間行うと、表皮材4の外観を損なう原因となる場合がある。したがって、本発明においては、表皮材4の材質に合わせ、接触加熱を行う時間を適宜調節して接触加熱による予備加熱工程IIIを行う。
また、本発明に係る予備加熱工程IIIにおいて、非接触加熱および接触加熱による両方の方法を用いる場合、図20の第10実施形態に示すように、非接触加熱による予備加熱工程IIIの後に、接触加熱による予備加熱工程IIIを行うことが可能であり、逆に、図示しないが、接触加熱による予備加熱工程IIIの後に、非接触加熱による予備加熱工程IIIを行うことも可能である。
[バックテンション付与工程IV]
本発明に係るバックテンション付与工程IVとは、表皮材熱接着工程IIの前に行われる工程であって、表皮材4に対してバックテンションの付与を行う工程である。本発明において、バックテンション付与工程IVを更に行うことで、表皮材4の進行方向とは逆方向に一定の張力がかかり、中空構造板1のシワの発生が抑制され、外観が向上する。
表皮材4に対してバックテンションを付与する方法は、特に限定されないが、例えば、図21の第11実施形態に示すように、バックテンション付与ローラー108を設置し、バックテンション付与ローラー108と表皮材用ローラー104とを同じ方向(図21のローラー内部の矢印方向)に回転させ、バックテンションを付与する方法や、図22の第12実施形態に示すように、表面材用ローラー101上部にバー109を設置し、表面材用ローラー101に表皮材4が接触することにより、バックテンションを付与する方法などが挙げられる。
本発明において、予備加熱工程IIIとバックテンション付与工程IVとは、どちらの工程を先に行ってもよい。更には、バックテンション付与工程IVにおいて、接触加熱による予備加熱工程IIIを同時に行うことも可能である。
より具体的には、図21の第11実施形態に示す方法でバックテンションを付与する場合であれば、バックテンション付与ローラー108に対して加熱機能または温度調節機能を備える方法などが挙げられる。また、図22の第12実施形態に示す方法でバックテンションを付与する場合であれば、表面材用ローラー101に対して加熱機能または温度調節機能を備える方法などが挙げられる。
加えて、図23の第13実施形態に示すように、非接触加熱部106を用いて非接触方法による予備加熱工程IIIを行った後、表面材用ローラー101上部にバー109を設置し、加熱機能または温度調節機能を備えた表面材用ローラー101に表皮材4が直接接触することにより、接触加熱による予備加熱工程IIIおよびバックテンション付与工程IVを同時に行う方法なども挙げられる。
以下、本発明の実施例および比較例に基づいて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、以下に示す条件で、図6に示す構造の中空構造板1または1’を製造し、評価を行った。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
参考例1>
参考例1では、図13に示す方法を用いて、図6に示す構造の中空構造板1を作製した。より具体的には、温度調節機能を備えた表皮材用ローラー104を、温度調節機能を備えた表面材用ローラー101の後ろ(両ローラーの中心間の距離約200mm)に設置し、表皮材用ローラー104の設定温度を表皮材4の融点未満である約160℃に、表面材用ローラー101の設定温度を約200℃とし、表面材積層工程Iおよび表皮材熱接着工程IIを行って、中空構造板1を作製した。
参考例2>
参考例2では、図18に示す方法を用いて、図6に示す構造の中空構造板1を作製した。より具体的には、温度調節機能を備えた表皮材用ローラー104を、温度調節機能を備えた表面材用ローラー101の後ろ(両ローラーの中心間の距離約200mm)に設置し、表皮材用ローラー104の設定温度を表皮材4の融点未満である約160℃に、表面材用ローラー101の設定温度を約200℃とし、表面材積層工程Iおよび表皮材熱接着工程IIを行った。また、熱風発生装置である非接触加熱部106(設定温度:約150℃)を中空構造板1からの距離約600mm、表皮材からの距離約50mmの位置に設置し、非接触方法による予備加熱工程IIIも行って、中空構造板1を作製した。
<実施例3>
例3では、図23に示す方法を用いて、図6に示す構造の中空構造板1を作製した。より具体的には、温度調節機能を備えた表皮材用ローラー104を、温度調節機能を備えた表面材用ローラー101の後ろ(両ローラーの中心間の距離約200mm)に設置し、表皮材用ローラー104の設定温度を表皮材4の融点未満である約160℃に、表面材用ローラー101の設定温度を約200℃とし、表面材積層工程Iおよび表皮材熱接着工程IIを行った。また、熱風発生装置である非接触加熱部106(設定温度:約150℃)を中空構造板1からの距離約600mm、表皮材4からの距離約50mmの位置に設置し、非接触方法による予備加熱工程IIIも行った。更に、表皮材用ローラー101上にバー109を設け、バー109の高さを調整することにより、表皮材4の熱接着面を、温度調節機能を備えた表面材用ローラー101(設定温度:約200℃)に約2秒間接触させ、表皮材4の熱接着面に対して接触方法による予備加熱する予備加熱工程IIIを行うとともに、表皮材4にバックテンションを付与するバックテンション付与工程IVも行って、中空構造板1を作製した。
<比較例>
比較例では、図26に示す方法を用いて、図6に示す構造の中空構造板1’を作製した。より具体的には、溶融状態または半溶融状態の表面材3’および表皮材4’を、加熱手段が設けられたローラー1100(設定温度:約200℃)にて熱融着させ、中空凸部シート2’上に積層し、中空構造板1’を作製した。
(1)実験方法
(i)風合い評価試験
電灯光(約20lux)の中、目視により中空構造板の風合いの評価を行った。表面材に熱接着される前の表皮材の外観と表皮材が熱接着された中空構造板とを、任意に1枚ずつ選択した。なお、評価を行った中空構造板の表面の大きさは、1250mm×924mmである。評価は5人で行い、5人全員が風合いに大きな差がないと判定したものを○、風合いに大きな差がないと判定した人数が2人以下の場合は×とした。
(ii)シワ評価試験
電灯光(約20lux)の中、目視、かつ、素手で直接触れることにより、中空構造板のシワの評価を行った。表面材に熱接着される前の表皮材の外観と表皮材が熱接着された中空構造板とを、任意に1枚ずつ選択した。なお、評価を行った中空構造板の表面の大きさは、1250mm×924mmである。
(iii)表面材と表皮材との接着力に係る試験
任意に1250mm×924mmの大きさの中空構造板を1枚選択した。更に、図24に示すように、1250mm×924mmの大きさの中空構造板から、25mm×180mmの大きさの試験片を、MDサンプル9箇所、TDサンプル3箇所の、合計12箇所から採取し、ZP−500N(株式会社イマダ製)を用いて表面材と表皮材との接着力を測定した。測定は、図25に示すように、採取した試験片25mm幅方向を端部から50mm手で剥がし、チャックした後、200mm/minの速度で剥離させて、表面材と表皮材との接着力を測定し、その平均値を求めた。
(2)結果
上述した(i)〜(iii)の試験方法に基づき、試験を行った結果を以下の表に示す。
(3)考察
(i)風合い評価試験
表1に示すように、実施例3、並びに参考例1および2の全てにおいて、中空構造板1の風合いの悪化を回避することができた。実施例3、並びに参考例1および2の全てにおいて、表面材3との貼り合わせを行う際に、表皮材4の非接触面を融点未満に温度調節しつつ、貼り合わせを行ったことから、表皮材4の非接触面の溶融現象が起こらず、貼り合わせ前の外観を保持することができ、結果として、中空構造板1の風合いの悪化を回避することができた。一方で、比較例では、表面材3'に熱接着される前の表皮材4'の外観と表皮材4'が熱接着された中空構造板1'とを比較して、風合いに大きな差がないと判定した者は一人もいなかった。比較例において、表皮材4'の非接触面の溶融現象が起きたため、中空構造板1'の風合いが悪化した。
(ii)シワ評価試験
表2に示すように、参考例1および2においては、中空構造板1にシワがほぼない状態であり、実施例3においては、シワが全くなく、中空構造版1のシワの発生を完全に抑制した。実施例3、並びに参考例1および2の全てにおいて、表面材3との貼り合わせを行う際に、表皮材4の非接触面を融点未満に温度調節して行ったことから、表皮材4に対して余分な熱がかかることなく、シワの発生が抑制された。更に、実施例3においては、バックテンション付与工程IVも踏んでいるため、表皮材4の進行方向とは逆方向に一定の張力がかかり、結果として、表皮材4の幅方向の弛みが解消され、参考例1および2と比較して、よりシワの発生が抑制された。一方で、比較例においては、表皮材4'の非接触面に余分な熱がかかり、かつ、表皮材4'にバックテンションがかかっていない状態で貼り合わせが行われているため、シワが中空構造板1'の全面に発生した。
(iii)表面材と表皮材との接着力に係る試験
表3に示すように、参考例1および2においては、比較例と比較して表面材3と表皮材4との接着力が低下しているものの、合格基準を大幅に上回った。なお、本試験における合格基準は、一般的な中空構造板の市場における流通過程において、安定した形状を維持することが可能となる、十分な接着力を示す数値を基準とした。また、参考例1よりも参考例2の方が、より接着力が向上している。これは、参考例2において、非接触加熱による予備加熱工程IIIを踏んでいるため、表皮材4の熱接着面が予備加熱され、接着力が向上したことによるものである。

更には、表3に示すように、実施例3においては、比較例よりも接着力が向上した。これは、実施例3においては、非接触加熱による予備加熱工程IIIおよび接触加熱による予備加熱工程IIIを踏んでいるため、表皮材4の熱接着面が予備加熱され、かつ、貼り合わせの直前には表皮材4の熱接着面の温度が一時的に素早く上昇し、接着力が向上したことによるものである。
本発明に係る製造方法を用いて製造した中空構造板は、安定した形状を有し、かつ、表面が優れた外観を有するので、例えば、箱材や梱包材などの物流用途、壁や天井用のパネル材などの建築用途、自動車の内装など、広い分野において好適に用いることが可能である。
1 中空構造板
2、21、22 中空凸部成形シート
3、31、32 表面材
2a、21a、22a 中空凸部
21b、22b 開口部
23 中間シート
4、41、42 表皮材
101 表面材用ローラー
102 Tダイ
103 押出機
104 表皮材用ローラー
105 加熱部
106 非接触予備加熱部
107 接触予備加熱部
108 バックテンション付与ローラー
109 バー
201、201a、201b 成形ローラー
202a、202b 減圧チャンバー
203a、203b 吸引孔
301 平ローラー
1100 加熱手段が設けられたローラー
I 表面材積層工程
II 表皮材熱接着工程
III 予備加熱工程
IV バックテンション付与工程

Claims (1)

  1. 中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が積層され、更に、該表面材の中空凸部成形シートが積層されていない面に、熱接着性を有する表皮材が熱接着された中空構造板を製造する方法であって、
    前記中空凸部成形シートの少なくとも一方の面に、前記表面材を積層する表面材積層工程と、
    該表面材積層工程の後に、前記表皮材の熱接着面を非接触加熱により予備加熱する予備加熱工程と、
    該予備加熱工程の後に、前記表皮材の熱接着面を接触加熱により予備加熱しつつ、前記表皮材にバックテンションを付与するバックテンション付与工程と、
    該バックテンション付与工程の後に、前記表皮材の非接着面を融点未満に温度制御した状態で、前記表面材に前記表皮材を熱接着する表皮材熱接着工程と、
    を少なくとも行う中空構造板の製造方法。
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