JP6288164B2 - 車両の二次電池加温装置 - Google Patents

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Description

ここに開示する技術は、車両の二次電池加温装置に関する。
特許文献1には、モーター駆動用のバッテリを搭載した電気自動車において、バッテリを覆う蓄熱体と、蓄熱体を覆う断熱材と、蓄熱体の中に配設された電気ヒーターとを備えるシステムが記載されている。このシステムは、寒冷時にバッテリの温度が低下してバッテリの起電力が低下することにより、走行性能が低下してしまうことを防止する。
特開平10−32021号公報
車両の減速走行時に回生電力をバッテリに充電する場合、バッテリの温度を所定の温度帯に維持しなれば、バッテリの充電を行うことができない。低温環境下において、バッテリの温度を速やかに所定の温度帯にまで高めると、回生充電を早期に開始することが可能になり、燃費の向上に有利になる。
特許文献1に記載されたシステムは、バッテリの電力を用いて電気ヒーターによりバッテリの温度を高める。このため、バッテリのSOC(State Of Charge)が低いときには、電気ヒーターに十分な電力を供給することができず、その結果、バッテリの昇温が遅れてしまう。この場合は、回生充電の開始が遅れて、燃費が低下する。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二次電池のSOCに関わらず、二次電池の温度を速やかに高めることにある。
ここに開示する技術は、車両の二次電池加温装置に係る。この装置は、車両に搭載した二次電池と、前記二次電池の温度を高めるよう構成された昇温手段と、を備え、前記昇温手段は、前記二次電池を覆いかつ、前記二次電池に熱を供給するよう構成された潜熱蓄熱材と、前記潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられると共に、水を吸着することによって吸着熱を発生するよう構成された吸着蓄熱材を収容する吸着蓄熱材反応槽と、前記吸着蓄熱材が吸着した水を脱離させるよう構成された吸着水脱離部と、を有している。
ここで、車両は、二次電池の電力によってモーターが駆動することにより走行する、電気自動車(Electric Vehicle:EV)としてもよい。また、モーターと、内燃機関であるエンジンとの双方を搭載した、いわゆる、ハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)としてもよい。ハイブリッド自動車のうちでも、外部電源によって二次電池を充電することが可能な、いわゆるプラグインハイブリッド自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:PHEV)としてもよい。尚、車両は、四輪自動車に限定されるものではない。
前記の構成によると、二次電池の温度を高める昇温手段は、吸着蓄熱材を収容する吸着蓄熱材反応槽を有している。吸着蓄熱材は、具体的には、ゼオライト、シリカゲル、塩化カルシウム等とすればよい。吸着蓄熱材は、水を吸着することによって吸着熱を発生する。二次電池の温度を高めるための熱の発生に、二次電池の電力は、基本的には、不要である。
吸着蓄熱材反応槽は、潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられている。吸着蓄熱材の吸着熱は、潜熱蓄熱材を昇温すると共に、潜熱蓄熱材を通じて、二次電池を昇温する。
吸着蓄熱材を利用することによって、二次電池のSOCに関わらず、二次電池の温度を、所望の温度帯にまで速やかに高めることが可能になる。この「所望の温度帯」は、二次電池の充電が可能になる温度帯としてもよく、潜熱蓄熱材は、その所望の温度帯で凝固するとしてもよい。二次電池の充電が可能になる温度帯は、二次電池がリチウムイオン電池である場合は、30℃付近の温度帯である。潜熱蓄熱材は、凝固温度においては温度が略一定になるため、二次電池を加熱し過ぎることが回避される。
二次電池の温度を、充電可能になる温度帯にまで昇温することによって、二次電池の充電を速やかに開始することが可能になる。低温環境下において回生充電を早期に開始すれば、燃費が向上する。
また、二次電池の温度が所望の温度帯にまで高まれば、吸着蓄熱材の発熱を中止してもよい。二次電池は潜熱蓄熱材に覆われているため、潜熱蓄熱材の蓄熱を利用することによって、二次電池の温度を所定の温度帯に、長い期間に亘って、維持することができる。
さらに、前記の構成は、吸着水脱離部を有している。吸着水脱離部は、吸着蓄熱材が吸着した水を脱離して、吸着蓄熱材を再生する。吸着蓄熱材は、二次電池の昇温を繰り返し行うことが可能になる。
前記車両は、内燃機関を搭載しており、前記吸着水脱離部は、前記吸着蓄熱材反応槽に対し熱伝達するよう設けられると共に、前記内燃機関の冷却水が供給される冷却水貯留槽である。
この構成は、HEVやPHEVに適している。内燃機関の冷却水の熱を利用して、吸着水脱離部を再生することにより、燃費の向上に有利になる。
前記昇温手段は、前記内燃機関の排気系に取り付けられかつ、排気ガスの熱によって水蒸気を生成するよう構成された排熱回収部を有し、前記昇温手段は、前記排熱回収部が生成した水蒸気を、前記吸着蓄熱材反応槽に供給する、としてもよい。
こうすることで、吸着蓄熱材の吸着熱の発生に必要な水蒸気は、排熱を利用して生成される。燃費の向上に、さらに有利になる。ここで、「排気系」は、内燃機関が排出する排気ガスが通過する経路を意味する。排気系において、排熱回収部の具体的な位置は、特に制限されない。
ここに開示する二次電池加温装置は、車両に搭載した二次電池と、前記車両に搭載した内燃機関と、前記二次電池の温度を高めるよう構成された昇温手段と、を備える。
そして、前記昇温手段は、前記二次電池を覆いかつ、前記二次電池に熱を供給するよう構成された潜熱蓄熱材と、前記潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられると共に、前記内燃機関の冷却水が貯留するよう構成された冷却水貯留槽と、水を吸着することによって吸着熱を発生するよう構成された吸着蓄熱材を収容する吸着蓄熱材反応槽と、前記吸着蓄熱材の吸着熱によって前記冷却水を昇温するよう構成された熱交換器と、を有している。
この構成は、HEVやPHEVにおいて、二次電池を昇温すると同時に、内燃機関の暖機の促進に有利になる。つまり、昇温手段は、吸着蓄熱材の吸着熱によって、内燃機関の冷却水を昇温する。これにより、内燃機関の暖機が促進される。
冷却水貯留槽は、潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられている。昇温された冷却水の熱が、冷却水貯留槽から潜熱蓄熱材に伝わる。これにより、潜熱蓄熱材が昇温すると共に、二次電池が昇温する。
二次電池の温度を、所望の温度帯(例えば充電可能となる温度帯)にまで昇温することによって、回生充電を早期に開始することが可能になる。この構成もまた、吸着蓄熱材の吸着熱を利用しているため、二次電池の昇温に、二次電池の電力は、基本的には不要である。二次電池のSOCに関わらず、二次電池を速やかに昇温することが可能になる。従って、燃費が向上する。
前記吸着蓄熱材は、前記内燃機関の排気系に取り付けられており、前記昇温手段は、前記内燃機関の排気系に取り付けられかつ、排気ガスの熱によって水蒸気を生成するよう構成された排熱回収部を有し、前記昇温手段は、前記排熱回収部が生成した水蒸気を、前記吸着蓄熱材反応槽に供給する、としてもよい。
吸着蓄熱材反応槽に供給する水蒸気を、内燃機関の排熱を利用して生成することで、燃費の向上に有利になる。また、排気ガスの熱によって高温になった水蒸気を、排気系に取り付けられた吸着蓄熱材反応槽に供給することにより、吸着蓄熱材反応槽において発生する熱量がさらに増えて、冷却水を急速に昇温することが可能になる。これは、内燃機関の暖機を促進する上で有利になると同時に、二次電池を急速に昇温して、回生充電を早期に開始する上でも有利になる。
ここに開示する二次電池加温装置は、車両に搭載した二次電池と、前記二次電池の温度を、所定の温度帯まで高めるよう構成された昇温手段と、を備える。
そして、前記昇温手段は、前記二次電池を覆いかつ、前記二次電池に熱を供給するよう構成された潜熱蓄熱材と、前記潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられると共に、水と化学反応することによって反応熱を発生するよう構成された化学蓄熱材を収容する化学蓄熱材反応槽と、前記潜熱蓄熱材と前記化学蓄熱材反応槽との間に介在しかつ、前記化学蓄熱材反応槽の反応熱により、供給した液体が、前記所定の温度帯において蒸発するよう構成された蒸発槽と、を有している。
この構成によると、化学蓄熱材は、水と化学反応することによって反応熱を発生する。化学蓄熱材は、具体的には、酸化カルシウムや、酸化マグネシウム等とすればよい。化学蓄熱材の反応熱の温度帯は、例えば300℃以上になるため、二次電池の加温には温度が高すぎる。二次電池の温度は、前述したように、30℃付近の温度帯になればよい。
そこで、前記の構成では、化学蓄熱材反応槽と潜熱蓄熱材との間に、蒸発槽を介在させる。蒸発槽は、所定の温度帯(例えば30℃付近の温度帯)において液体(例えば水)が蒸発するように構成されている。蒸発槽内を、所定の温度帯において水が蒸発するような圧力にしてもよい。蒸発槽内に供給した液体を、反応熱を利用して蒸発させることにより、蒸発槽内の温度を所定の温度帯で略一定に維持することが可能になるから、潜熱蓄熱材及び二次電池の温度を、所定の温度帯に昇温することが可能になる。また、蒸発槽は、沸騰凝縮型の熱移送により、一度に大きな熱量を移動可能である。蒸発槽を利用することによって、潜熱蓄熱材及び二次電池の温度を、速やかに高めることが可能になる。
このような蒸発槽を介在することによって、化学蓄熱反応槽が発生する高温の反応熱を利用して、二次電池の電力を使わずに、潜熱蓄熱材及び二次電池の温度を、所望の温度帯まで急速に高めることが可能になる。その結果、二次電池の回生充電を、より一層、速やかに開始することが可能になる。
前記二次電池は、電気的に互いに接続された複数の電池セルを有し、前記潜熱蓄熱材は、前記複数の電池セルにおいて、電気的に互いに接続された部分を除いた部位を覆い、前記昇温手段は、前記潜熱蓄熱材を覆う断熱筐体と、前記複数の電池セルにおける電気的に互いに接続された部分を、前記断熱筐体と共に覆う断熱蓋と、を有している、としてもよい。
こうすることで、潜熱蓄熱材及び電池セルと、外部環境とは、断熱筐体及び断熱蓋によって断熱される。これにより、二次電池の加温を停止した後に、電池セルの温度を長い期間に亘って、所定の温度帯に維持することが可能になる。
以上説明したように、前記の車両の二次電池加温装置によると、二次電池のSOCに関わらず、二次電池の温度を速やかに高めることができる。
図1は、二次電池加温装置を搭載した車両システムの構成を示す図である。 図2は、昇温デバイスの構成を概念的に示す図である。 図3は、低温環境下でのエンジン始動時のエンジン及び電池の昇温制御を示すフローチャートである。 図4は、図3のフローのステップS34における処理手順を示すフローチャートである。 図5は、二次電池加温装置を搭載した、図1とは異なる車両システムの構成を示す図である。 図6は、昇温デバイスの構成を概念的に示す図である。 図7は、図3のフローのステップS34における処理手順を示すフローチャートである。 図8は、二次電池加温装置を搭載した、図1及び図5とは異なる車両システムの構成を示す図である。 図9は、電池昇温デバイスの構成を概念的に示す図である。 図10は、冷却水昇温デバイスの構成を概念的に示す図である。 図11は、図3のフローのステップS34における処理手順を示すフローチャートである。 図12は、二次電池加温装置を搭載した、図1、図5及び図8とは異なる車両システムの構成を示す図である。 図13は、昇温デバイスの構成を概念的に示す図である。 図14は、電池の昇温制御を示すフローチャートである。
以下、ここに開示する車両の二次電池加温装置について、図面を参照しながら詳細に説明をする。尚、以下の説明は例示である。図1は、二次電池加温装置を搭載した車両システム1の構成を示している。この車両は、例えば四輪のHEV又はPHEVである。尚、ここに開示する二次電池加温装置が搭載可能な車両は、四輪自動車に限定されない。
車両システム1は、エンジン11と、モータージェネレータ2と、二次電池であるリチウムイオン電池3と、を備えている。エンジン11は、例えば多気筒の内燃機関である。エンジン11は、変速機12を介して駆動輪21に連結されている。リチウムイオン電池3は、モータージェネレータ2に接続されている。
モータージェネレータ2は、エンジン11に連結されている。具体的にモータージェネレータ2は、この構成例では、エンジン11のクランク軸に、例えばベルトを介して連結されたISG(Integrated Starter Generator)である。この車両は、いわゆる、マイクロ又はマイルドハイブリッド自動車である。リチウムイオン電池3の容量は、比較的小さい。エンジン11及び/又はモータージェネレータ2が駆動輪21を駆動することによって、車両は走行する。
モータージェネレータ2は、リチウムイオン電池3からの電力の供給を受けて原動機として機能する。モータージェネレータ2は、エンジン11の始動時には、エンジン11のクランキングを行う。また、モータージェネレータ2は、エンジン11の運転中には、エンジン11のアシストを行う。さらに、モータージェネレータ2は、発電機としても機能する。モータージェネレータ2は、車両の減速走行時に発電を行う。リチウムイオン電池3は、モータージェネレータ2の発電電力によって回生充電される。
モータージェネレータ2と、リチウムイオン電池3との間には、インバータ22が介設している。インバータ22は、モータージェネレータ2の駆動及び発電を制御する。
リチウムイオン電池3とインバータ22との間には、切替スイッチ52が介設している。切替スイッチ52は、リチウムイオン電池3からの電力を、モータージェネレータ2と、後述する昇温デバイス6との間で切り替えるよう構成されている。
昇温デバイス6は、リチウムイオン電池3の温度が低いときに、リチウムイオン電池3の温度を高めるように構成されている。昇温デバイス6は、詳細は後述するが、例えば、−30℃といった低温環境下において、リチウムイオン電池3の温度を高める。
図2は、昇温デバイス6の構成を示している。図2において符号31は、リチウムイオン電池3を構成する、複数の電池セルを示している。複数の電池セル31は、電気的に、互いに接続されている。昇温デバイス6は、電池セル31を覆うように設けられた断熱筐体61及び断熱蓋611と、断熱筐体61内に充填され、それによって電池セル31を覆うように設けられた潜熱蓄熱材62と、エンジン11の冷却水が貯留するよう構成された冷却水貯留槽670と、冷却水貯留槽670と潜熱蓄熱材62との間に介設された吸着蓄熱材反応槽640とを有している。
各電池セル31は、電気的に互いに接続される部分を除くほぼ全体が、断熱筐体61及び潜熱蓄熱材62に覆われている。各電池セル31の電気的に互いに接続されている部分は、断熱蓋611と断熱筐体61とに覆われている。こうすることにより、各電池セル31と潜熱蓄熱材62との間の熱伝達が良好になると共に、各電池セル31と、断熱筐体61及び断熱蓋611の外部との断熱性も良好になる。尚、図2は、昇温デバイス6の構成を概念的に示すものであり、昇温デバイス6の具体構成は、図2に示す構成に限定されるものではない。
潜熱蓄熱材62は、所定の温度帯において凝固するように構成されている。所定の温度帯は、30℃前後において設定された温度帯である。この温度帯は、リチウムイオン電池3の充電が可能となる温度帯である。30℃前後の温度帯で凝固する潜熱蓄熱材62は、例えば、パラフィン系潜熱蓄熱材とすることが可能である。潜熱蓄熱材62は、30℃前後の温度帯において蓄熱をする。
冷却水貯留槽670は、エンジン11の冷却水が流れる冷却水通路67に接続されている。この冷却水通路67は、図1に図示しないラジエータを含む冷却水循環通路とは独立して設けられている。冷却水通路67は、エンジン11から冷却水貯留槽670に至る往路671と、冷却水貯留槽670からエンジン11に至る復路672と、を有している。往路671には、開閉バルブ673と、ポンプ674とが介設している。開閉バルブ673を開けかつ、ポンプ674を駆動することによって、エンジン11と冷却水貯留槽670との間で、冷却水が循環する。
吸着蓄熱材反応槽640は、吸着蓄熱材641を収容している。吸着蓄熱材641は、水を吸着して吸着熱を発生する。吸着熱は、50〜60℃程度の温度である。こうした吸着蓄熱材641としては、例えばゼオライト、シリカゲル、塩化カルシウム等とすればよい。吸着蓄熱材反応槽640は、断熱筐体61内において、潜熱蓄熱材62に対して熱伝達可能に設けられていると共に、冷却水貯留槽670に対して熱伝達可能に設けられている。
吸着蓄熱材反応槽640に対しては、循環経路64が設けられている。循環経路64は、吸着蓄熱材反応槽640に水蒸気を供給するよう構成されている。具体的に、循環経路64における供給側には、水を貯留する貯水槽642と、貯水槽642と吸着蓄熱材反応槽640との間に介在する開閉バルブ644と、を有している。貯水槽642内には、小型の電気ヒーター643が配設されている。貯水槽642から吸着蓄熱材反応槽640を経て、後述するコンデンサ646までの系は、水が、所定の温度帯(前述したように30℃前後の温度帯)で蒸発をするように、低圧に保たれている。電気ヒーター643は、貯水槽642内の水を、30℃程度にまで温める。これにより、水が蒸発し、水蒸気が開閉バルブ644を介して、吸着蓄熱材反応槽640に供給される。
吸着蓄熱材反応槽640に水蒸気を供給することによって、吸着蓄熱材641の吸着熱が効率的に発生する。潜熱蓄熱材62及びリチウムイオン電池3、並びに、エンジン11の冷却水が速やかに昇温する。
吸着蓄熱材641が吸着した水は、後述するように、エンジン11が暖機完了に至った後、高温の冷却水によって離脱される。つまり、高温の冷却水を、冷却水貯留槽670に供給することにより、その熱によって、吸着蓄熱材641の水が脱離する。こうして、吸着蓄熱材641は再生する。吸着蓄熱材641から脱離した水は、開閉バルブ645を介して、コンデンサ646に流入する。
コンデンサ646は、例えば車室内に配設された(正確には、車室内と同温の環境下に配設された)熱交換器によって構成されている。コンデンサ646は、吸着蓄熱材641から脱離した水蒸気を凝縮して水にする。コンデンサ646と貯水槽642とは、逆止弁647を介して互いに連通している。コンデンサ646で凝縮した水は、貯水槽642に戻る。
昇温デバイス6は、このように、吸着蓄熱材641の吸着熱を利用して、潜熱蓄熱材62を通じて、電池セル31の温度を高める。昇温デバイス6は、リチウムイオン電池3の昇温と同時に、エンジン11の冷却水の温度を高める。
電池セル31の温度は、潜熱蓄熱材62の凝固温度に一定に保たれる。この状態で、吸着蓄熱材641による昇温を停止すると、潜熱蓄熱材62及び電池セル31と、外部環境とは、断熱筐体61及び断熱蓋611によって断熱されているため、電池セル31の温度低下が抑制される。また、電池セル31の温度が下がろうとしても、潜熱蓄熱材62の放熱により、電池セル31の温度が、潜熱蓄熱材62の凝固温度に保たれる。こうして、昇温デバイス6は、リチウムイオン電池3の温度を、所定の温度帯に、長時間維持する。
図1に戻り、車両システム1は、コントローラ7を備えている。コントローラ7は、エンジン11及びインバータ22の制御を通じて車両の走行制御を行う。
リチウムイオン電池3には、電池の温度を検知する温度センサ71が設けられている。温度センサ71は、検知信号をコントローラ7に出力する。また、昇温デバイス6には、潜熱蓄熱材62の温度を検知する温度センサ72が設けられている。温度センサ72も、検知信号をコントローラ7に出力する。また、車両システム1は、エンジン11の冷却水温を検知する水温センサ73を備えている。水温センサ73は、検知信号をコントローラ7に出力する。
コントローラ7は、これらのセンサ信号に基づいて、切替スイッチ52、冷却水通路67の開閉バルブ673及びポンプ674、循環経路64の、電気ヒーター643、開閉バルブ644、645をそれぞれ制御し、リチウムイオン電池3の温度調整を行う。尚、電気ヒーター643に対しては、リチウムイオン電池3が電力を供給する。
図3は、エンジン11の低温始動時におけるリチウムイオン電池3の温度調整の制御手順を示すフローチャートである。先ずスタート後のステップS31で、コントローラ7は、エンジン11が始動したか否かを判定する。ステップS31の判定がNOのときには、ステップS31を繰り返す。ステップS31の判定がYESのときには、ステップS32に移行する。
ステップS32で、コントローラ7は、エンジン11及び昇温デバイス6間で、冷却水を循環させる。具体的に、コントローラ7は、冷却水通路67の開閉バルブ673を開けると共に、ポンプ674を駆動する。
ステップS33で、コントローラ7は、エンジン11を冷却水昇温モードで運転する。具体的にコントローラ7は、冷却損失が増えるよう、例えばエンジン11の燃料噴射量を増量すると共に、点火時期を遅角することによって燃焼時期を遅らせる。
ステップS34で、コントローラ7は、発熱材の発熱を行う。具体的にコントローラ7は、図4に示すフローに従って、発熱材、ここでは吸着蓄熱材641の吸着熱を発生する。つまり、ステップS41において、貯水槽642内の小型の電気ヒーター643に通電する。これにより、貯水槽642内の水を温め、水蒸気にする。前述したように、30℃程度の温度で蒸発するように、貯水槽642内は、低圧に維持されている。電気ヒーター643は小型でありかつ、水を30℃程度にまで加熱するだけであるため、電気ヒーター643の消費電力は、比較的少ない。
続くステップS42で、開閉バルブ644を開ける。これにより、水蒸気が、貯水槽642から吸着蓄熱材反応槽640内に供給される。吸着蓄熱材641が水蒸気を吸着して、吸着熱が発生する。吸着蓄熱材反応槽640から潜熱蓄熱材62及び冷却水貯留槽670に熱が伝わり、潜熱蓄熱材62及び冷却水がそれぞれ昇温する。潜熱蓄熱材62を通じて、リチウムイオン電池3の温度も上昇する。冷却水が、冷却水通路67を循環することにより、エンジン11の暖機も促進される。
図3のフローに戻り、ステップS35で、コントローラ7は、潜熱蓄熱材62の温度が所定温度を超えたか否かを判定する。所定温度は、潜熱蓄熱材62が溶融する温度(30℃程度)であり、リチウムイオン電池3の充電が可能となる温度である。
ステップS35の判定がNOのときには、ステップS32に戻り、コントローラ7は、エンジン11の冷却水の昇温、及び、潜熱蓄熱材62を通じてリチウムイオン電池3の昇温を継続する。ステップS35の判定がYESのときには、ステップS36に移行する。
ステップS36で、コントローラ7は、冷却水の循環を停止する。具体的に、コントローラ7は、開閉バルブ673を閉じると共に、ポンプ674を停止する。また、ステップS37で、コントローラ7は、発熱材の発熱も停止する。具体的には、小型の電気ヒーター643への通電を停止すると共に、開閉バルブ644を閉じて、吸着蓄熱材反応槽640への水蒸気の供給を停止する。こうして、リチウムイオン電池3の昇温を中止する。
潜熱蓄熱材62及び電池セル31と、外部環境とは、断熱筐体61及び断熱蓋611によって断熱されているため、電池セル31の温度低下が抑制される。また、電池セル31の温度が下がろうとしても、潜熱蓄熱材62の放熱により、電池セル31の温度が、潜熱蓄熱材62の凝固温度に保たれる。こうして、昇温デバイス6は、リチウムイオン電池3の温度を、所定の温度帯に、長時間維持する。
リチウムイオン電池3の昇温を停止した後のステップS38で、コントローラ7は、エンジン11を、継続して、冷却水昇温モードで運転する。続くステップS39で、コントローラ7は、冷却水の温度が、目標温度TE以上になったか否かを判定する。目標温度TE以上でないとき、コントローラ7は、エンジン11の冷却水昇温モードを継続する。
ステップS39の判定がYESになれば、フローは、ステップS310に移行する。エンジン11の冷却水が、目標温度TEに到達したため、コントローラ7は、エンジン11を通常モードで運転させる。
その後、ステップS311で、コントローラ7は、発熱材(つまり、吸着蓄熱材641)の再生を行う。具体的には、冷却水通路67の開閉バルブ673を開けると共に、ポンプ674を駆動することによって、エンジン11の暖機が完了して高温になった冷却水を、冷却水貯留槽670に供給する。冷却水によって、吸着蓄熱材641が加熱され、吸着蓄熱材641に吸着されていた水が離脱する。離脱した水(水蒸気)は、開いている開閉バルブ645を通って、コンデンサ646に導入される。コンデンサ646は水蒸気を凝縮し、凝縮した水は、再び、貯水槽642に貯留される。
この車両システム1では、エンジン11の低温始動時に、吸着蓄熱材641を用いてリチウムイオン電池3の昇温が行われる。熱の発生に電気エネルギが、実質的に不要であるため、リチウムイオン電池3のSOCに関わらず、リチウムイオン電池3の温度を速やかに高めることが可能になる。リチウムイオン電池3の温度が所定の温度帯に到達すれば、リチウムイオン電池3の充電が可能になるため、回生充電が可能になる。この構成の車両システム1は、低温環境下において回生充電を早期に可能にすることで、燃費の向上が図られる。
尚、リチウムイオン電池3の温度が低くて充電ができない間、及び、リチウムイオン電池3の充電が可能になった後、減速走行時の回生電力の少なくとも一部を、他の電気デバイスに供給してもよい(例えば、図示を省略するが、エンジン11の触媒装置がEHC(Electrically Heated Catalyst)を備えていれば、回生電力をEHCに供給してもよい)。
また、この車両システム1では、リチウムイオン電池3の昇温と同時に、エンジン11の冷却水の昇温も行われる。エンジン11を速やかに暖機することができ、このこともまた、燃費の向上に有利になる。
さらに、吸着蓄熱材641による発熱を停止した後に、吸着蓄熱材641の再生を行うため、リチウムイオン電池3の昇温、及び、冷却水の昇温を繰り返し行うことが可能になる。また、吸着蓄熱材641の再生は、エンジン11の冷却水を利用するため、燃費が向上する。
リチウムイオン電池3の昇温に際しては、潜熱蓄熱材62を通じてリチウムイオン電池3を昇温する。このことによって、リチウムイオン電池3を加熱し過ぎることが回避される。
また、リチウムイオン電池3の温度が高くなった後は、吸着蓄熱材641による発熱を中止しても、リチウムイオン電池3は潜熱蓄熱材62に覆われているため、潜熱蓄熱材62の蓄熱を利用することによって、リチウムイオン電池3の温度を所定の温度帯に、長い期間に亘って、維持することができる。従って、低温環境下においても、回生充電を十分に行うことが可能になる。
エンジン11の始動時に限らず、車両の走行中や停止中においても、リチウムイオン電池3の温度が低下するときには、前述したように、昇温デバイス6によるリチウムイオン電池3の昇温が行われる。つまり、コントローラ7は、貯水槽642内の小型の電気ヒーター643に通電をして、水蒸気を吸着蓄熱材反応槽640に供給する。このときに、エンジン11の冷却水の昇温が不要であれば、冷却水の循環は行われない。このときも、リチウムイオン電池3の昇温に、電気エネルギは、実質的に不要である。
図5は、二次電池加温装置を搭載した、別の車両システム10の構成を示している。この車両システム10と図1の車両システム1とを比較して異なる点は、車両システム10が排熱回収を行う点である。以下、車両システム10の構成について、車両システム1と相違する点を中心に、詳細に説明する。
図6は、車両システム10の昇温デバイス6の構成を示している。この昇温デバイス6では、吸着蓄熱材641に供給する水蒸気を、排気ガスの熱によって生成する。この昇温デバイス6は、貯水槽642に電気ヒーターを配設していない。一方、図5及び図6に示すように、昇温デバイス6は、エンジン11の排気管13の途中に取り付けられた、蒸発器15を備えている。蒸発器15は、エンジン11の触媒装置14の下流に配設されている。
蒸発器15は、循環経路64においては、貯水槽642と吸着蓄熱材反応槽640との間に介設している。蒸発器15は、排気ガスと、貯水槽642からポンプ648によって供給される水との間で熱交換を行うことにより、水を蒸発させる。この構成においても、循環経路64において、貯水槽642から吸着蓄熱材反応槽640を経て、コンデンサ646に至る系は低圧に維持されており、30℃程度の温度で、水が蒸発するように構成されている。
蒸発器15において生成された水蒸気は、開閉バルブ644を通じて、吸着蓄熱材反応槽640に供給される。吸着蓄熱材641が水蒸気を吸着することにより吸着熱が発生して、前述したように、潜熱蓄熱材62及び冷却水が昇温される。
この循環経路64において、開閉バルブ644と吸着蓄熱材反応槽640との間には、切換バルブ649が介設している。切換バルブ649は、水蒸気を、吸着蓄熱材反応槽640に供給するか、吸着蓄熱材反応槽640をバイパスして、コンデンサ646に供給するか、を切り換えるよう構成されている。
コントローラ7は、昇温デバイス6における、開閉バルブ644、ポンプ648及び切換バルブ649をそれぞれ制御する。
この車両システム10における、リチウムイオン電池3の加温制御は、図3のフローに従って行われる。但し、図3のフローにおけるステップS34における、発熱材の発熱は、図7のフローに従って行われる。
つまり、ステップS71で、コントローラ7は、開閉バルブ644を開け、ステップS72で、コントローラ7は、切換バルブ649を、吸着蓄熱材反応槽640側に切り換える。そして、ステップS73で、コントローラ7は、ポンプ648を駆動する。これにより、貯水槽642内の水が、蒸発器15に供給されると共に、蒸発器15において生成された水蒸気が、吸着蓄熱材641に供給される。
図3のフローにおけるステップS37において発熱材の発熱を停止するときには、コントローラ7は、ポンプ648の駆動を停止すると共に、切換バルブ649をコンデンサ646側に切り換える。そうして、蒸発器15内の水分を、吸着蓄熱材反応槽640をバイパスして、コンデンサ646に送り、貯水槽642へと戻す。蒸発器15内の水分が無くなれば、ポンプ648を停止すると共に、開閉バルブ644を閉じる。
さらに、図3のフローにおけるステップS311において、発熱材の再生を行うときに、高温になった冷却水を、冷却水貯留槽670に供給することは、前記と同じである。
この車両システム10では、吸着熱を発生するために必要な水蒸気を、エンジン11の排熱を利用して生成するため、電気エネルギがさらに不要になる。よって、燃費をさらに向上させることが可能になる。また、リチウムイオン電池3のSOCに関わらず、リチウムイオン電池3の温度を速やかに高めることが可能である。低温環境下において回生充電を早期に可能にすることで、燃費の向上が図られる。
図8は、二次電池加温装置を搭載した、さらに別の車両システム100の構成を示している。この車両システム100は、排熱回収を行う点は、図5に示す車両システム10と同じである。車両システム100の昇温デバイス6は、吸着蓄熱材641の吸着熱によって、潜熱蓄熱材62を直接、温めるのではなく、吸着蓄熱材641の吸着熱によってエンジン11の冷却水を温め、温まった冷却水によって、潜熱蓄熱材62及びリチウムイオン電池3を温める。以下、車両システム100の構成について、車両システム10と相違する点を中心に、詳細に説明する。
車両システム100の昇温デバイス6は、リチウムイオン電池3の昇温を行う電池昇温デバイス601と、冷却水の昇温を行う冷却水昇温デバイス602との2つの部分から構成されている。図9は、昇温デバイスのうち、電池昇温デバイス601の構成を示している。図10は、昇温デバイスのうち、冷却水昇温デバイス602の構成を示している。吸着蓄熱材反応槽640は、冷却水昇温デバイス602に含まれている。
電池昇温デバイス601は、図9に示すように、電池セル31を覆う断熱筐体61及び断熱蓋611と、断熱筐体61内に充填され、それによって電池セル31を覆うように設けられた潜熱蓄熱材62と、エンジン11の冷却水が貯留するよう構成された冷却水貯留槽670とを有している。冷却水貯留槽670は、潜熱蓄熱材62に対して熱伝達可能に構成されている。冷却水貯留槽670は、前述の通り、冷却水通路67に連通している。
冷却水昇温デバイス602は、図8に示すように、排気管13における触媒装置14よりも下流側に取り付けられている。冷却水昇温デバイス602は、図10に示すように、吸着蓄熱材641を収容する吸着蓄熱材反応槽640と、吸着蓄熱材641に供給する水蒸気を生成する蒸発器15と、吸着蓄熱材反応槽640において高温にされた水蒸気とエンジン11の冷却水との間で熱交換を行う熱交換器6411と、吸着蓄熱材反応槽640、熱交換器6411及び蒸発器15の間で水を循環させる循環経路64と、を有している。
吸着蓄熱材反応槽640は、エンジン11の排気管13に取り付けられている。蒸発器15もまた、排気管13に取り付けられている。蒸発器15は、貯水槽642から、開閉バルブ644を通じて送られてきた水を、排気ガスの熱によって蒸発させるよう構成されている。吸着蓄熱材反応槽640と蒸発器15とは隣接しており、蒸発器15において生成した水蒸気が吸着蓄熱材641に供給される。吸着蓄熱材反応槽640においては、吸着蓄熱材641の吸着熱と、排気ガスの排熱とによって、水蒸気の温度がさらに高温になる。
吸着蓄熱材反応槽640は、切換バルブ6410を介して、前記熱交換器6411に接続されている。熱交換器6411は、図8にも示すように、第2冷却水通路675に介設している。第2冷却水通路675は、エンジン11と電池昇温デバイス601との間をつなぐ冷却水通路67とは別に設けられている。第2冷却水通路675はまた、図8では図示しないラジエータを含む冷却水通路に対し、冷却水切換バルブ676を介して分岐している。熱交換器6411は、エンジン11の冷却水と吸着蓄熱材反応槽640から排出された高温の水蒸気との間で熱交換を行う。これによって、エンジン11の冷却水は、急速に加熱される。
こうして加熱された冷却水は、冷却水通路67を通じて電池昇温デバイス601の冷却水貯留槽670に送られる。冷却水貯留槽670から潜熱蓄熱材62に熱が伝わり、潜熱蓄熱材を通じて、リチウムイオン電池3が昇温する。
熱交換器6411の下流側は、貯水槽642に接続されている。熱交換器6411において熱交換が行われた後の水は、貯水槽642に溜まる。
切換バルブ6410は、熱交換器6411に至る経路と、熱交換器6411をバイパスして貯水槽642に至る経路との切り換えを行う。バイパス経路の上には、コンデンサ646及び逆止弁647が介設している。コンデンサ646は水蒸気を凝縮する。
この車両システム100における、リチウムイオン電池3の加温制御は、図3のフローに従って行われる。但し、図3のフローにおけるステップS34における、発熱材の発熱は、図11のフローに従って行われる。
つまり、ステップS111で、コントローラ7は、第2冷却水通路675の冷却水切換バルブ676を冷却水昇温デバイス602側に切り換える。これにより、エンジン11の冷却水は、エンジン11、冷却水通路67及び第2冷却水通路675を通って循環する。また、ステップS112で、コントローラ7は、循環経路64の開閉バルブ644を開弁すると共に、続くステップS113で、コントローラ7は、切換バルブ6410を、熱交換器6411側に切り換える。これにより、前述したように、貯水槽642内の水が蒸発器15に供給されると共に、蒸発器15において生成された水蒸気が、吸着蓄熱材反応槽640に供給される。そうして、吸着蓄熱材反応槽640において高温になった水蒸気が、熱交換器6411に供給され、エンジン11の冷却水が速やかに昇温する。また、昇温した冷却水により、電池昇温デバイス601において潜熱蓄熱材62及びリチウムイオン電池3が昇温する。
図3のフローにおけるステップS37において発熱材の発熱を停止するときには、コントローラ7は、冷却水切換バルブ676をラジエータ側に切り換える。また、開閉バルブ644を閉弁すると共に、切換バルブ6410をコンデンサ646側に切り換える。これにより、蒸発器15内の水分を、熱交換器6411をバイパスして、コンデンサ646に送り、貯水槽642へと戻す。
さらに、図3のフローにおけるステップS311における発熱材の再生は、吸着蓄熱材反応槽640を、排気管13を流れる排気ガスによって加熱することで行われる。
この車両システム100でも、吸着熱を発生するために必要な水蒸気を、エンジン11の排熱を利用して生成するため、電気エネルギが不要である。よって、燃費をさらに向上させることが可能になる。また、リチウムイオン電池3のSOCに関わらず、リチウムイオン電池3の温度を速やかに高めることが可能である。低温環境下において回生充電を早期に可能にすることで、燃費の向上が図られる。
また、排気ガスの熱によって高温になった水蒸気を吸着蓄熱材641に供給することにより、吸着蓄熱材641において発生する熱量がさらに増えて、冷却水を急速に昇温することが可能になる。これは、エンジン11を速やかに暖機する上で有利になると同時に、リチウムイオン電池3を急速に昇温して、回生充電を早期に開始する上でも有利になる。
図12は、二次電池加温装置を搭載した、別の車両システム1000の構成を示している。この車両は、例えば四輪の電気自動車(EV)である。尚、ここに開示する二次電池加温装置が搭載可能な車両は四輪に限らない。車両システム1000において、図1に示す車両システム1と同じ構成は、その説明を省略する場合がある。
車両システム1000は、モータージェネレータ2と、二次電池であるリチウムイオン電池3と、を備えている。モータージェネレータ2は、駆動輪21に連結されている。リチウムイオン電池3は、モータージェネレータ2に電力を供給する。リチウムイオン電池3の容量は比較的大きい。リチウムイオン電池3の電力供給を受けたモータージェネレータ2は、原動機として機能する。モータージェネレータ2が駆動輪21を駆動することによって、車両は走行する。モータージェネレータ2はまた、発電機としても機能する。モータージェネレータ2は、車両の減速走行時に発電を行う。リチウムイオン電池3は、モータージェネレータ2の発電電力によって回生充電される。
リチウムイオン電池3は、図示を省略する外部電源の電力によって外部充電が可能に構成されている。図示は省略するが、当該車両に、充電プラグが差し込まれるインレットを設けてもよい。また、非接触方式の充電システムを採用してもよい。
外部電源とリチウムイオン電池3との間には、交流−直流変換を行う電力変換器51と、切替スイッチ52とが介設している。切替スイッチ52は、外部電源の電力の供給先を、リチウムイオン電池3と、後述する昇温デバイス6との間で切り替えるよう構成されている。
図13は、昇温デバイス6の構成を例示している。昇温デバイス6は、電池セル31を覆うように設けられた断熱筐体61及び断熱蓋611と、断熱筐体61内に充填され、それによって電池セル31を覆うように設けられた潜熱蓄熱材62と、を備えている。また、断熱筐体61内には、化学蓄熱材反応槽690と、潜熱蓄熱材62と化学蓄熱材反応槽690との間に介設した蒸発槽650と、が設けられている。
化学蓄熱材反応槽690は、水と化学反応をして反応熱を発生する化学蓄熱材691を収容している。化学蓄熱材691は、例えば酸化カルシウムや、酸化マグネシウムとすればよい。この構成により、化学蓄熱材反応槽690は、300〜350℃程度の反応熱を発生する。
化学蓄熱材反応槽690には、水を供給するための循環経路69が接続されている。循環経路69には、水を貯留する貯水槽692、貯水槽692内の水を化学蓄熱材反応槽690に供給するためのポンプ693、及び、後述するように化学蓄熱材反応槽690から排出された水蒸気を凝縮するコンデンサ694が介設している。
化学蓄熱材反応槽690の中には、電気ヒーター695が配設されている。この電気ヒーター695は、化学蓄熱材691の再生に利用される。つまり、電気ヒーター695に通電することによって、化学蓄熱材691を、例えば400℃程度に加熱し、水を蒸発させて化学蓄熱材反応槽690から排出させる。電気ヒーター695に供給される電力は、例えば減速走行時の回生電力とすればよい。こうすることで、燃費が向上する。また、リチウムイオン電池3を外部電源によって充電する外部充電時に、外部電源の外部電力を、電気ヒーター695に供給することによって、化学蓄熱材691の再生を行うようにしてもよい。
前述したように、潜熱蓄熱材62及びリチウムイオン電池3の所望の温度帯は30℃程度である。化学蓄熱材反応槽690が発生する300〜350℃程度の反応熱は、潜熱蓄熱材62及びリチウムイオン電池3の加熱には温度が高すぎる。蒸発槽650は、化学蓄熱材反応槽690の反応熱によって水を蒸発させることによって、潜熱蓄熱材62の加熱温度を調整する機能を有している。
蒸発槽650は、潜熱蓄熱材62に隣接している。蒸発槽650と潜熱蓄熱材62とは、互いに熱伝達可能に接している。また、蒸発槽650は、化学蓄熱材反応槽690に対しても熱伝達可能に接している。
蒸発槽650内は、水が、所定の温度帯(つまり、30℃前後の温度帯)で蒸発をするように、低圧に保たれている。蒸発槽650内に供給された水は、前述の通り、化学蓄熱材反応槽690の反応熱によって加熱されて蒸発する。蒸発槽650は、その温度が、所定の温度帯に保たれる。蒸発槽650には、水を供給するための循環経路65が接続されている。循環経路65の構成は、前述した循環経路69の構成とほぼ同じである。循環経路65は、蒸発槽650に水を供給すると共に、蒸発槽650から水蒸気を排出するように構成されている。循環経路65における水の供給側には、水を貯留する貯水槽651と、貯水槽651から蒸発槽650への水の供給を制御するポンプ652とが介設している。一方、循環経路65における水蒸気の排出側には、開閉バルブ653と、蒸発槽650から排出された水蒸気を凝縮して水にするコンデンサ654とが介設している。コンデンサ654と貯水槽651とは互いに連通しており、コンデンサ654で凝縮した水は、貯水槽651に貯留される。蒸発槽650内で水が蒸発して圧力が高くなると、水が蒸発する温度が高くなる。そのため、コントローラ7は、ポンプ652及び開閉バルブ653をそれぞれ制御する。それによって、蒸発槽650が所定の温度帯を維持するように、水の供給及び水蒸気の排出を調整する。
この車両システム1000における、リチウムイオン電池3の加温制御は、図14のフローに従って行われる。つまり、スタート後のステップS141で、コントローラ7は、
リチウムイオン電池3の温度が所定温度TSを下回ったか否かを判定する。低温環境下においては、車両の走行中や停車中に、リチウムイオン電池3の温度が低下する場合がある。所定温度TSは、例えばリチウムイオン電池3の充電ができなくなる温度として、適宜設定してもよい。ステップS141のフローがNOのときには、ステップS141を繰り返す。
ステップS141の判定がYESになれば、フローは、ステップS142に移行する。ステップS142で、コントローラ7は、循環経路69のポンプ693を駆動して、化学蓄熱材反応槽690内に水を供給する。化学蓄熱材691の反応熱によって、化学蓄熱材反応槽690が高温になる。
ステップS143で、コントローラ7は、蒸発槽650の温度調整を行う。前述の通り、コントローラ7は、ポンプ652及び開閉バルブ653をそれぞれ制御する。それによって、蒸発槽650が所定の温度帯を維持するように、水の供給及び水蒸気の排出を調整する。蒸発槽650は、沸騰凝縮型の熱移送により、一度に大きな熱量を移動可能である。これによって、潜熱蓄熱材62及びリチウムイオン電池3を急速に昇温することが可能になる。
また、蒸発槽650は温度が略一定になるため、急速昇温であっても、潜熱蓄熱材62を過昇温することが防止される。
ステップS144で、コントローラ7は、潜熱蓄熱材62の温度が所定温度を超えたか否かを判定する。所定温度は、潜熱蓄熱材62が溶融する温度(30℃程度)であり、リチウムイオン電池3の充電が可能となる温度である。
ステップS144の判定がNOのときには、ステップS142に戻り、コントローラ7は、潜熱蓄熱材62を通じてリチウムイオン電池3の昇温を継続する。ステップS144の判定がYESのときには、ステップS145に移行する。
ステップS145で、コントローラ7は、循環経路69のポンプ693を停止する。また、ステップS146で、コントローラ7は、蒸発槽650の温度調整を終了する。具体的には、ポンプ652を停止すると共に、開閉バルブ653を開けて、蒸発槽650内の水蒸気を排出し、コンデンサ654に導入する。コンデンサ654で凝縮した水は、貯水槽651に溜まる。こうして、リチウムイオン電池3の昇温を中止する。
リチウムイオン電池3の昇温を停止した後は、断熱筐体61、断熱蓋611及び潜熱蓄熱材62によってリチウムイオン電池3の温度が高く保たれる点は、前記と同様である。
ステップS147で、コントローラ7は、化学蓄熱材反応槽690内の電気ヒーター695に通電をし、化学蓄熱材691を再生させる。電気ヒーター695に供給する電力は、前述したように、回生電力又は外部電力とすればよい。
この車両システム1000では、化学蓄熱材691によって、潜熱蓄熱材62及びリチウムイオン電池3を昇温するため、リチウムイオン電池3のSOCに関わらず、リチウムイオン電池3の温度を速やかに高めることが可能である。低温環境下において回生充電を可能にすることで、燃費の向上が図られる。
尚、図13に示す昇温デバイス6は、電気自動車に搭載することに限らない。HEVや、PHEVに搭載してもよい。また、ここに開示する二次電池加温装置は、四輪自動車への適用に限定されない。
1、10、100、1000 車両システム
11 エンジン(内燃機関)
13 排気管(吸着水脱離部)
15 蒸発器(排熱回収部)
3 リチウムイオン電池(二次電池)
31 電池セル
6 昇温デバイス(昇温手段)
61 断熱筐体
611 断熱蓋
62 潜熱蓄熱材
601 電池昇温デバイス
602 冷却水昇温デバイス
640 吸着蓄熱材反応槽
641 吸着蓄熱材
6411 熱交換器
650 蒸発槽
670 冷却水貯留槽(吸着水脱離部)
690 化学蓄熱材反応槽
691 化学蓄熱材

Claims (6)

  1. 車両に搭載した二次電池と、
    前記二次電池の温度を高めるよう構成された昇温手段と、を備え、
    前記昇温手段は、前記二次電池を覆いかつ、前記二次電池に熱を供給するよう構成された潜熱蓄熱材と、前記潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられると共に、水を吸着することによって吸着熱を発生するよう構成された吸着蓄熱材を収容する吸着蓄熱材反応槽と、前記吸着蓄熱材が吸着した水を脱離させるよう構成された吸着水脱離部と、を有し
    前記車両は、内燃機関を搭載しており、
    前記吸着水脱離部は、前記吸着蓄熱材反応槽に対し熱伝達するよう設けられると共に、前記内燃機関の冷却水が供給される冷却水貯留槽である車両の二次電池加温装置。
  2. 請求項に記載の車両の二次電池加温装置において、
    前記昇温手段は、前記内燃機関の排気系に取り付けられかつ、排気ガスの熱によって水蒸気を生成するよう構成された排熱回収部を有し、
    前記昇温手段は、前記排熱回収部が生成した水蒸気を、前記吸着蓄熱材反応槽に供給する車両の二次電池加温装置。
  3. 車両に搭載した二次電池と、
    前記車両に搭載した内燃機関と、
    前記二次電池の温度を高めるよう構成された昇温手段と、を備え、
    前記昇温手段は、
    前記二次電池を覆いかつ、前記二次電池に熱を供給するよう構成された潜熱蓄熱材と、
    前記潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられると共に、前記内燃機関の冷却水が貯留するよう構成された冷却水貯留槽と、
    水を吸着することによって吸着熱を発生するよう構成された吸着蓄熱材を収容する吸着蓄熱材反応槽と、
    前記吸着蓄熱材の吸着熱によって前記冷却水を昇温するよう構成された熱交換器と、を有している車両の二次電池加温装置。
  4. 請求項に記載の車両の二次電池加温装置において、
    前記吸着蓄熱材反応槽は、前記内燃機関の排気系に取り付けられており、
    前記昇温手段は、前記内燃機関の排気系に取り付けられかつ、排気ガスの熱によって水蒸気を生成するよう構成された排熱回収部を有し、前記昇温手段は、前記排熱回収部が生成した水蒸気を、前記吸着蓄熱材反応槽に供給する車両の二次電池加温装置。
  5. 車両に搭載した二次電池と、
    前記二次電池の温度を、所定の温度帯まで高めるよう構成された昇温手段と、を備え、
    前記昇温手段は、
    前記二次電池を覆いかつ、前記二次電池に熱を供給するよう構成された潜熱蓄熱材と、
    前記潜熱蓄熱材に対し熱伝達するよう設けられると共に、水と化学反応することによって反応熱を発生するよう構成された化学蓄熱材を収容する化学蓄熱材反応槽と、
    前記潜熱蓄熱材と前記化学蓄熱材反応槽との間に介在しかつ、前記化学蓄熱材反応槽の反応熱により、供給した液体が、前記所定の温度帯において蒸発するよう構成された蒸発槽と、を有している車両の二次電池加温装置。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の車両の二次電池加温装置において、
    前記二次電池は、電気的に互いに接続された複数の電池セルを有し、
    前記潜熱蓄熱材は、前記複数の電池セルにおいて、電気的に互いに接続された部分を除いた部位を覆い、
    前記昇温手段は、前記潜熱蓄熱材を覆う断熱筐体と、前記複数の電池セルにおける電気的に互いに接続された部分を、前記断熱筐体と共に覆う断熱蓋と、を有している二次電池加温装置。
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