JP6287036B2 - インクの評価方法、機能素子の製造方法、有機el素子の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、基板上に表面処理を行う表面処理工程と、表面処理が施された基板の所定の膜形成領域に、導電性粒子を含有した液体からなる液滴を吐出して膜パターンを形成する膜パターンの形成方法が開示されている。
上記特許文献1の膜パターンの形成方法によれば、表面処理工程において、基板表面の該液体に対する接触角が15°以上45°以下となるように、基板表面に対して撥液性を付与している。したがって、インクジェットヘッドのノズルから吐出され、基板表面に着弾した液滴は、基板表面においてむやみに濡れ拡がらず、界面張力によって盛り上がった状態で配置される。基板表面において先に着弾した液滴に対して部分的に重なるように再び液滴が吐出され配置される。このような液滴の吐出(配置)を繰り返すことで所望の膜パターンを基板上に形成できるとしている。
前記インクが良インクと判定されなかった場合、前記インクにおける、粘度、溶媒の構成、前記液滴の吐出速度のうち少なくとも1つの条件を見直すことを特徴とする。
この方法によれば、液滴吐出法に適したインクの評価方法を提供できる。
この方法によれば、液滴吐出法に適したノズルの目詰まりが生じ難いインクの評価方法を提供できる。
まず、機能素子としての有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を備えた有機EL装置の一例について、図1〜図4を参照して説明する。図1は有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図、図2は有機EL装置の構成を示す概略平面図、図3は有機EL装置の発光画素の構造を示す概略断面図、図4は有機EL装置の発光画素における有機EL素子の構成を示す模式図である。
駆動用トランジスター122のソースまたはドレインのうち一方が有機EL素子130の画素電極131に接続され、ソースまたはドレインのうち他方が電源線114に接続されている。駆動用トランジスター122のゲートと電源線114との間に蓄積容量123が接続されている。
なお、画素回路111の構成は、これに限定されるものではない。例えば、駆動用トランジスター122と画素電極131との間に、駆動用トランジスター122と画素電極131との間の導通を制御する発光制御用トランジスターを備えていてもよい。
以降、異なる発光色の発光画素107R,107G,107Bを総称して発光画素107と呼ぶこともある。また、異なる発光色の発光画素107が配列する方向をX方向、同色の発光画素107が配列する方向をY方向として説明する。
図4に示すように、有機EL装置100は、素子基板101上に設けられた、赤色の発光が得られる有機EL素子130Rと、緑色の発光が得られる有機EL素子130Gと、青色の発光が得られる有機EL素子130Bとを有している。
緑色の発光が得られる有機EL素子130Gは、陽極としての画素電極131Gと、画素電極131Gに対向配置される陰極としての対向電極134と、画素電極131Gと対向電極134との間において、画素電極131G側から順に積層された、正孔注入層132a、正孔輸送層132b、緑(G)の発光層132cG、青(B)の発光層132cB、電子輸送層132d、電子注入層132eを有している。
青色の発光が得られる有機EL素子130Bは、陽極としての画素電極131Bと、画素電極131Bに対向配置される陰極としての対向電極134と、画素電極131Bと対向電極134との間において、画素電極131B側から順に積層された、正孔注入層132a、正孔輸送層132b、青(B)の発光層132cB、電子輸送層132d、電子注入層132eを有している。
対向電極134は、有機EL素子130R,130G,130Bに共通した陰極として、仕事関数が小さい例えばAlなどの電極材料を用いて気相プロセスにより形成されている。
以降、有機EL素子130R,130G,130Bの構成について、より具体的に説明する。
陽極としての画素電極131R,131G,131Bは、正孔注入層132aに正孔を注入する電極である。
この画素電極131R,131G,131Bの構成材料としては、特に限定されないが、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料が好適に用いられ、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In2O3、SnO2、フッ素添加SnO2、Sb添加SnO2、ZnO、Al添加ZnO、Ga添加ZnO等の金属酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような画素電極131R,131G,131Bの膜厚は、特に限定されないが、10nm〜200nmの範囲にあることが好ましく、30nm〜150nmの範囲にあることがより好ましい。
正孔注入層132aは、正孔注入材料を含んだ溶液(インク)を所定の膜形成領域に塗布して、乾燥・加熱することにより形成されている(液相プロセス)。正孔注入材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体にドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸(PSS)を加えた混合物(PEDOT:PSS)や、ポリスチレン、ポリピロール、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリアニリン、オリゴアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを挙げることができる。
正孔注入層132aの膜厚は、特に限定されないが、10nm〜150nmの範囲にあることが好ましい。
正孔輸送層132bは、有機EL素子130R,130G,130Bにおいて、正孔注入層132aと発光層132cR,132cG,132cBとの間に設けられ、発光層132cR、132cG,132cBに対する正孔の輸送性(注入性)を向上させると共に、発光層132cR,132cG,132cBから正孔注入層132aに電子が侵入して、正孔注入層132aの機能が低下することを抑制するために設けられている。すなわち、発光層132cR、132cG,132cBにおける正孔と電子との結合による発光の効率を改善するものである。
正孔輸送材料としては、例えば、トリフェニルジアミン(TPD)などのアミン系化合物のポリマーが好適に用いられる。そのほかポリフルオレン誘導体(PF)やポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)を含むポリシラン系などの高分子有機材料を挙げることができる。
正孔輸送層132bの膜厚は、特に限定されないが、15nm〜25nmの範囲にあることが好ましい。
赤色の発光が得られる発光層132cR及び緑色の発光が得られる発光層132cGは、それぞれ、ホスト材料にゲスト材料としての発光材料がドープされた発光層形成材料を含む溶液(インク)を所定の膜形成領域に塗布して乾燥・加熱すること(液相プロセス)により、有機EL素子130R,130Gの正孔輸送層132bに接し、有機EL素子130R,130Gに対応して選択的に形成されている。
燐光材料としては、Bt2Ir(acac)(Bis(2−phenylbenxothiozolato−N,C2’)Iridium(III)(acetylacetonate))、Btp2Ir(acac)(Bis(2,2’−benzothienyl)−pyridinato−N,C3)Iridium(acetylacetonate))などのイリジウム錯体、PtOEP(2,3,7,8,12,13,17,18−Octaethyl−21H,23H−porphine,platinum(II))などの白金錯体が挙げられ、前述したホスト材料に添加することで赤色の燐光を得ることができる。
また、Ir(ppy)3(Fac−tris(2−phenypyridine)iridium)、Ppy2Ir(acac)(Bis(2−phenyl−pyridinato−N,C2)Iridium(acetylacetone))などのイリジウム錯体が挙げられ、前述したホスト材料に添加することで緑色の燐光を得ることができる。
青色の発光が得られる発光層132cBは、気相プロセスにより上述した電子輸送性を有する低分子のホスト材料にゲスト材料(発光材料)をドープして、有機EL素子130R,130G,130Bに共通して形成されている。
発光層132cBのホスト材料としては、アントラセン誘導体を用いることが好ましい。また、発光層132cBのゲスト材料(発光材料)は、蛍光材料、燐光材料のいずれも使用することができる。蛍光材料としては、アメリカンダイソース社製のADS136BE(青色)が挙げられる。
燐光材料としては、FIrpic(Iridium−bis(4,6−difluorophenyl−pyridinato−N,C2)−picolinate)、Ir(pmb)3(Iridium−tris(1−phenyl−3−methylbenzimidazolin−2−ylidene−C,C(2)’))、FIrN4(Iridium (III)bis(4,6−difluorophenylpyridinato)(5−(pyridin−2−yl)−tetrazolate))、FIrtaz(Iridium(III)bis(4,6−difluorophenylpyridinato)(5−(pyridine−2−yl)−1,2,4−triazolate))などのイリジウム錯体が挙げられ、前述したホスト材料に添加することで青色の燐光を得ることができる。
電子輸送層132dは、気相プロセスを用いて形成され、陰極としての対向電極134から電子輸送層132dに注入された電子を発光層132cBに輸送する機能を有するものである。また、電子輸送層132dは、発光層132cBから電子輸送層132dへ通過しようとする正孔をブロックする機能を有する場合もある。
電子注入層132eは、気相プロセスを用いて形成され、対向電極134から電子輸送層132dへの電子の注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層132eの構成材料(電子注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、あるいはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
陰極としての対向電極134は、電子注入層132eに電子を注入する電極である。
この対向電極134の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。また、蒸着法などの気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb、Auまたはこれらを含む合金等が用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
ボトムエミッション構造における対向電極134の膜厚は、特に限定されないが、50nm〜1000nmの範囲にあることが好ましく、100nm〜500nmの範囲にあることがより好ましい。
トップエミッション構造における対向電極134の膜厚は、特に限定されないが、1nm〜50nmの範囲にあることが好ましく、5nm〜20nmの範囲にあることがより好ましい。
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法について、図5〜図6を参照して説明する。図5(a)〜(e)及び図6(f)〜(h)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。本実施形態の有機EL素子の製造方法は、本発明のインクの評価方法が適用されたものである。したがって、機能層132のうち正孔注入層132a、正孔輸送層132b、発光層132cRが液相プロセスによって形成される有機EL素子130Rを例に挙げて説明する。すなわち、図5及び図6は有機EL素子130Rの製造方法を示すものである。
隔壁133の具体的な形成方法としては、画素電極131Rが設けられた素子基板101の表面を覆って、例えば多官能アクリル系樹脂が含まれた溶液をスピンコート法などの方法により塗布して乾燥し、感光性樹脂層を形成する。その後、フォトリソグラフィ法により感光性樹脂層をパターニングして隔壁133を形成する方法が挙げられる。
表面処理の方法としては、まず酸素を処理ガスとしてプラズマ処理し、画素電極131Rの表面と隔壁133の表面(壁面を含む)を活性化させ親液化する。続いて、CF4などのフッ素系処理ガスを用いてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁133の表面のみにフッ素系処理ガスが反応して、隔壁133の表面を選択的に撥液化する方法が挙げられる。
なお、表面が撥液性を有する隔壁133の形成方法は、これに限定されず、例えば、フッ素系の撥液性材料を含んだ多官能アクリル系樹脂を用いて隔壁133を形成する方法を採用してもよい。
溶液(インク)60は、例えば溶媒としての3−フェノキシトルエンに正孔注入材料であるポリビニルカルバゾール(PVK)を2.0wt%程度の濃度で溶解させたものである。正孔注入層形成工程における被吐出物は、画素電極131Rである。
次に、本実施形態のインクの評価方法について、図7〜図9を参照して説明する。図7(a)は試験用基板における膜形成領域の構成を示す概略平面図、図7(b)は図7(a)のA−A’線に沿った試験用基板の構造を示す概略断面図である。図8は膜形成領域に着弾した液滴の様子を示す概略平面図、図9は静滴法による接触角の測定方法を示す図である。
導電膜F1は、有機EL素子130における画素電極131と同じ材料が用いられている。また、隔壁Paも有機EL装置100における隔壁133と同じ材料が用いられている。さらに、前述した隔壁形成工程と同様にして、隔壁Paがフォトリソグラフィ法により形成され、膜形成領域Faにおける導電膜F1に対するインクの接触角が5度以下、隔壁Paに対するインクの接触角が60度以上となるように表面処理が施されている。
被吐出物上におけるインクの接触角θは、以下の数式で与えられる。
θ=2tan−1h/r (hは液滴の高さ、rは被吐出物上における液滴の半径)
例えば、光学的に被吐出物上の液滴(つまり前述したドットD)を撮像して、液滴の高さhと半径rとを計測すれば、接触角θを求めることができる。あるいは、被吐出物と液滴との接点Pと頂点Tとを結ぶ線分PTと被吐出物の表面とがなす角度を求めれば、その角度がθ/2であることから接触角θを求めることができる。
図10は実施例及び比較例における被吐出物とインク構成とを示す表、図11は実施例及び比較例における評価結果を示す表である。実施例及び比較例はいずれも上述した試験用基板TPを用いて、隔壁Paにより区画された膜形成領域Faにインクを液滴として吐出し、被吐出物に着弾した上記液滴の着弾半径を計測した。また、隔壁Paにインクを液滴として吐出し、隔壁Paに着弾した上記液滴の着弾半径を計測した。さらに、実際に、有機EL素子130を形成して発光状態(発光ムラ)を評価した。
実施例1は、試験用基板TPの導電膜F1をITO膜(陽極を想定)で形成して被吐出物とした。そして、隔壁Paによって区画された膜形成領域Faに固形分としての正孔注入材料を2.1wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、正孔注入層(HIL)を形成した。正孔注入材料は、ポリビニルカルバゾール(PVK)である。機能層132のうち正孔注入層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、実施例1のインクの粘度は、およそ5mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに31個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は6.9m/s(メーター/秒)であった。
実施例2は、試験用基板TPの隔壁Paによって区画された膜形成領域Faに予め正孔注入層を形成し被吐出物とした。そして、膜形成領域Faに固形分としての正孔輸送材料を1.5wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、上記正孔注入層に積層して正孔輸送層(HTL)を形成した。正孔注入層(HIL)は、ポリビニルカルバゾール(PVK)を含んで形成されており、正孔輸送材料はポリトリフェニルジアミン(Poly−TPD)である。機能層132のうち正孔輸送層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、実施例2のインクの粘度は、およそ7mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに35個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は7.0m/s(メーター/秒)であった。
実施例3は、試験用基板TPの隔壁Paによって区画された膜形成領域Faに予め正孔注入層を形成し被吐出物とした。そして、膜形成領域Faに固形分としての正孔輸送材料を1.9wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、上記正孔注入層に積層して正孔輸送層(HTL)を形成した。正孔注入層(HIL)は、ポリビニルカルバゾール(PVK)を含んで形成されており、正孔輸送材料はポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4'−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)である。機能層132のうち正孔輸送層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、実施例3のインクの粘度は、およそ6mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに32個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は6.8m/s(メーター/秒)であった。つまり、実施例3は、実施例2に対して正孔輸送材料を異ならせたものである。
実施例4は、試験用基板TPの膜形成領域Faに予め正孔輸送層を形成し被吐出物とした。そして、膜形成領域Faに固形分としての発光層形成材料を1.8wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、上記正孔輸送層(HTL)に積層して発光層(EML)を形成した。上記正孔輸送層(HTL)はPoly−TPDを含んで形成されており、発光層形成材料は、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセンである。機能層132のうち正孔輸送層、発光層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、実施例4のインクの粘度は、およそ8mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに20個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は6.6m/s(メーター/秒)であった。
実施例5は、試験用基板TPの膜形成領域Faに予め正孔輸送層を形成し被吐出物とした。そして、膜形成領域Faに固形分としての発光層形成材料を1.6wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、上記正孔輸送層(HTL)に積層して発光層(EML)を形成した。上記正孔輸送層(HTL)はPoly−TPDを含んで形成されており、発光層形成材料は、前述した発光材料としてのADS108GE(Poly[{9,9-dioctyl-2,7-divinylene-fluorenylene}-alt-co-{2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylene}])とホスト材料とを含むものである。機能層132のうち正孔輸送層、発光層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、実施例5のインクの粘度は、およそ9mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに32個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は7.0m/s(メーター/秒)であった。
実施例6は、試験用基板TPの膜形成領域Faに予め正孔輸送層を形成し被吐出物とした。そして、膜形成領域Faに固形分としての発光層形成材料を1.8wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、上記正孔輸送層(HTL)に積層して発光層(EML)を形成した。上記正孔輸送層(HTL)はTFBを含んで形成されており、発光層形成材料は、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセンである。機能層132のうち正孔輸送層、発光層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、実施例6のインクの粘度は、およそ8mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに30個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は7.2m/s(メーター/秒)であった。つまり、実施例6は実施例4に対して正孔輸送材料を異ならせたものである。
実施例7は、試験用基板TPの膜形成領域Faに予め正孔輸送層を形成し被吐出物とした。そして、膜形成領域Faに固形分としての発光層形成材料を1.6wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、上記正孔輸送層(HTL)に積層して発光層(EML)を形成した。上記正孔輸送層(HTL)はTFBを含んで形成されており、発光層形成材料は、前述した発光材料としてのADS108GE(Poly[{9,9-dioctyl-2,7-divinylene-fluorenylene}-alt-co-{2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylene}])とホスト材料とを含むものである。機能層132のうち正孔輸送層、発光層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、実施例7のインクの粘度は、およそ9mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに32個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は7.1m/s(メーター/秒)であった。つまり、実施例7は実施例5に対して正孔輸送材料を異ならせたものである。
比較例1は、試験用基板TPの導電膜F1をITO膜(陽極を想定)で形成して被吐出物とした。そして、隔壁Paによって区画された膜形成領域Faに固形分としての正孔注入材料を10wt%含有する3−フェノキシトルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、正孔注入層(HIL)を形成した。正孔注入材料は、ポリビニルカルバゾール(PVK)である。機能層132のうち正孔注入層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、比較例1のインクの粘度は、およそ16mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに6個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は6.8m/s(メーター/秒)であった。つまり、比較例1は、実施例1に対して正孔注入材料の濃度を高めたものである。
比較例2は、試験用基板TPの導電膜F1をITO膜(陽極を想定)で形成して被吐出物とした。そして、隔壁Paによって区画された膜形成領域Faに固形分としての正孔注入材料を2.1wt%含有するジエチレングリコールブチルメチルエーテル溶液(インク)を液滴として吐出して、正孔注入層(HIL)を形成した。正孔注入材料は、ポリビニルカルバゾール(PVK)である。機能層132のうち正孔注入層(HIL)を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、比較例2のインクの粘度は、およそ10mPa・sであり、沸点は212℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに31個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は6.7m/s(メーター/秒)であった。つまり、比較例2は、実施例1に対して沸点が低い溶媒を用いたものである。
比較例3は、試験用基板TPの導電膜F1をITO膜(陽極を想定)で形成して被吐出物とした。そして、隔壁Paによって区画された膜形成領域Faに固形分としての正孔注入材料を2.1wt%含有するm−(4−フルオロフェニキシ)トルエン溶液(インク)を液滴として吐出して、正孔注入層(HIL)を形成した。正孔注入材料は、ポリビニルカルバゾール(PVK)である。機能層132のうち正孔注入層を除く他の薄膜層の構成や形成方法は、上述した有機EL素子130の製造方法を適用している。図10に示すように、比較例3のインクの粘度は、およそ10mPa・sであり、沸点は273℃である。また、液滴の吐出量を5plとして膜形成領域Faに31個の液滴を吐出した。このときの液滴の吐出速度は6.9m/s(メーター/秒)であった。つまり、比較例3は、実施例1に対して沸点は同じであるが、異なる溶媒を用いたものである。
実施例1のインクの隔壁Paに対する接触角は60度であり、被吐出物であるITO膜に対する接触角は4.8度であった。インクが隔壁Paに着弾したときの着弾半径Aは17μmであり、インクが膜形成領域Fa(ITO膜)に着弾したときの着弾半径Bは42.5μmであった。したがって、着弾半径の比(B/A)は2.5である。
比較例1または比較例2のインクを用いると、所定量のインクを隔壁Paで囲まれた膜形成領域に確実に充填することが困難になり、一部は隣り合う膜形成領域Faに漏れた。それゆえに、乾燥後の正孔注入層に膜厚ムラが生じた。該正孔注入層を有する有機EL素子は、発光ムラが認められた。
Claims (5)
- 撥液性を有する隔壁によって区画された膜形成領域に、機能層形成材料を含むインクを液滴吐出法により塗布して機能層を形成する場合のインクの評価方法であって、
前記隔壁に対する前記インクの接触角が60度以上であり、
前記膜形成領域の被吐出物に対する前記インクの接触角が5度以下であって、
前記インクを液滴として前記隔壁に着弾させたときの着弾半径をAとし、
前記インクを液滴として前記被吐出物に着弾させたときの着弾半径をBとするとき、
B/A≧2.5の関係を満たす前記インクを良インクと判定し、
前記インクが良インクと判定されなかった場合、前記インクにおける、粘度、溶媒の構成、前記液滴の吐出速度のうち少なくとも1つの条件を見直すことを特徴とするインクの評価方法。 - 前記インクの粘度が、20mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクの評価方法。
- 前記インクは、前記機能層形成材料を溶解させる良溶媒を含み、
前記良溶媒の沸点が200℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクの評価方法。 - 機能層を含む機能素子の製造方法であって、
撥液性を有する隔壁によって区画された膜形成領域に、機能層形成材料を含む所定量のインクを液滴として吐出する工程と、
吐出された前記インクを固化して前記膜形成領域に前記機能層を形成する工程と、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載されたインクの評価方法を用いて予め前記インクを評価し、前記B/A≧2.5の関係を満たす前記インクを良インクと判定し、前記インクが良インクと判定されなかった場合、前記インクにおける、粘度、溶媒の構成、前記液滴の吐出速度のうち少なくとも1つの条件を見直す工程と、を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。 - 陽極と陰極との間に発光機能を有する機能層を備えた有機EL素子の製造方法であって、
撥液性を有する隔壁によって区画された膜形成領域に、機能層形成材料を含む所定量のインクを液滴として吐出する工程と、
吐出された前記インクを固化して前記膜形成領域に前記機能層のうちの少なくとも1つの有機薄膜層を形成する工程と、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載されたインクの評価方法を用いて予め前記インクを評価し、前記B/A≧2.5の関係を満たす前記インクを良インクと判定し、前記インクが良インクと判定されなかった場合、前記インクにおける、粘度、溶媒の構成、前記液滴の吐出速度のうち少なくとも1つの条件を見直す工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
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