JP6286898B6 - 成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材及びその製造方法及び成形品 - Google Patents
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Description
開示されている情報によれば、粗水性であるポリプロピレンを親水性である植物繊維と馴染ませるために、無水マレイン酸によりグラフト重合されたポリプロピレンを植物繊維とポリプロピレンに混練することで、植物繊維の剛性および強度が発現し、かつ、衝撃値を向上させることに成功している。
a. バガス繊維が熱分解を生じる温度では成形金型表面に茶褐色ヤニ状の付着物が生じ,エタノール,アセトン等の有機溶剤に溶解しないために、除去するのに極めて手間がかかる。
b. 成形性向上の為の高流動ポリプレンは分子量が低いため、成形体の衝撃性は低くなる。
(1)パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊維、及び熱可塑性樹脂を含有する、水分量が0.3重量%以下である成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材、
(2)パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊維のアスペクト比が20以上である、(1)に記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材、
(3)パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊維を5~50重量%、熱可塑性樹脂を50~95重量%含有する、(1)または(2)に記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材、
(4)熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、(1)~(3)の何れか1項に記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材、
(5)パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊維を水または有機溶媒で洗浄し、該植物繊維及び熱可塑性樹脂を180℃乃至270℃で混練した後水分量を0.3重量%以下に乾燥することを特徴とする、成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造方法、
(6)植物繊維1重量部に対し、10重量部以上の水あるいは有機溶媒で洗浄する、(5)記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造方法、
(7)(1)~(4)何れか1項に記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材を160℃乃至270℃で成形して得られる成形品、
である。
本発明の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材は、原料としてパーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊維と、熱可塑性樹脂を含有するものであるが、これらを混練したものや混練したものをペレタイザー等でペレット化したものも含むものである。
本発明の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材は、パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊維の重量比率が5~50重量%が好ましく、より好ましくは30~40重量%である。パーム果実抽出残渣とパーム空果房を併用する場合、両者の配合比率は任意に設定することができる。また、熱可塑性樹脂の重量比率は50~95重量%が好ましく、より好ましくは60~70重量%である。
植物繊維量が多すぎると粘性が高くなりすぎ、成形性が低下する場合がある。また、植物繊維量が少なすぎると熱可塑性樹脂の割合が多くなるために材料原価が高くなり、植物繊維を利用する効果が低下する場合がある。
植物繊維強化熱可塑性樹脂材の水分量は0.3重量%以下、好ましくは0.25重量%以下である。水分量が多すぎると、成形時に配合した植物繊維の熱分解が生じ着色が大きくなる場合がある。
本発明に用いることができる熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂,ポリエステル樹脂,ポリアミド樹脂,ABS樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアセタール樹脂が挙げられ、これらの1種または2種以上を併用して用いることができる。この中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
また、衝撃性あるいは曲げ強度を改善する目的の場合、無水マレイン酸をグラフト重合した変性ポリプロピレン等を本発明の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材に対して、0.1~20重量%の範囲で加えることが好ましい。
なお、本発明の植物繊維強化熱可塑性樹脂材には、成形の妨げにならない範囲で、他の繊維強化材や充填剤を添加することができる。
パーム空果房(以下、EFB(Empty Fruit Bunch)と表記することがある。)及びパーム果実抽出残渣(以下、MF(Mesocarp Fiber)と表記することがある。)はパームオイルを製造する過程で副産物として排出されるものである。
パーム空果房は、収穫された果房(Fresh Fruit Bunch)の中に含まれる果実が除去された後の残りの果房であり、植物繊維を主成分とするものである。また、パーム果実抽出残渣は、パーム果実から油分を抽出した後の残渣であり、植物繊維を主成分とするものである。
所望の平均繊維長に調整するため、必要に応じEFB繊維やMF繊維を粉砕することができる。
洗浄方法として、植物繊維1重量部に対して、水または有機溶媒を好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上で洗浄する。洗浄する水または有機溶媒は多すぎても効果に差が出ない場合があるため、好ましくは40重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。
水を使用する場合、温度として40℃~100℃で使用するのが好ましく、より好ましくは60℃~80℃である。
成形温度は植物繊維の熱分解を生じず、流動性を確保できる160℃~270℃での成形が好ましく、より好ましくは180~260℃、さらにより好ましくは180~230℃である。
また、植物繊維と熱可塑性樹脂の混合物の水分量は0.3重量%以下、好ましくは0.25重量%以下である。水分量が多すぎると、成形時に配合した植物繊維の熱分解が生じ着色が大きくなる場合がある。
○MFR(メルトフローレート;樹脂の流動性を表す指標)
EFB繊維やMF繊維を用いると、MFRが高くなり、樹脂の流動性が良好になるため、樹脂の成形性がバガス繊維を用いた場合よりも良くなる。EFB繊維やMF繊維を用いることで、より低温での成形を実現できるため、植物繊維の熱分解を防止できる点においても有利である。
○成形体の表面の滑らかさ
表面の粗さの指標として、Rz値(10点平均、単位μm)が小さくなり、成形体の表面がバガス繊維を用いた場合よりも滑らかになり、成形体の品質が良好になる。
EFB繊維やMF繊維の繊維径(0.1mm程度)がバガス繊維(0.3mm程度)よりも細いことにより、表面粗さを低下させることができるため、従来のバガスより繊維長が短くても繊維強化の効果を発揮することができる。
10mmから50mmの繊維長のEFB繊維を1mmから5mmの繊維長分布になるように粉砕した。平均繊維長は3.41mm,アスペクト比は28.4であった。EFB繊維は残留している水可溶成分を除去するため、40gのEFB繊維に対して1000mlのビーカーに蒸留水800mlを加え、ヒータで加熱・攪拌しながら温水(80℃)による洗浄を行った。洗浄を行った後、EFB繊維を濾別・乾燥した。洗浄処理後のEFB繊維中の不純物の重量は8%減少した。さらにEFB繊維をオーブンにて24時間,80℃で加熱乾燥した。
次に図1に示すような1軸混練機にEFB繊維およびポリプロピレン樹脂を重量比で40:60として混合しながら200℃に加熱・押出し、ペレットを作製した。このときのペレットの水分は0.8%であった。
このペレットを2g秤量し、熱プレス成形を行った。熱プレス条件は圧力100kgf/cm2,保持時間10分,温度200℃,240℃,260℃で行った。
各条件で調製した成形体の加熱分解性をみるため、成形体の色調評価を行った。
色調評価はパネラー10名が目視で確認し、表1の基準に基づき、加熱前のEFB繊維の色調を5点とし、着色度合に応じて1~5点の点数をつけその平均値を算出した。平均値が3.5点以上のものを色調として合格と判断した。
比較例1と同様にEFB繊維中の水可溶成分を除去したEFB繊維を用意し,EFB繊維を真空加熱乾燥装置により100℃,5hr,5torrにて、水分量1%以下に乾燥した。乾燥直後のEFB繊維とポリプロピレンを40:60の重量比で混合・押出し、ペレットを作製した。ペレット作製後、ペレットは真空加熱乾燥装置により100℃,5hr,5torrにて乾燥を行った。ペレットは乾燥後、室内(25℃,湿度55%)で、0分,20分,40分,60分に放置し、続いて熱プレス成形を行った。熱プレス条件は圧力100kgf/cm2,保持時間10分,温度260℃とした。なお、0分,20分,40分,60分放置後のペレットの水分値は、それぞれ、0%、0.25%、0.35%、0.42%であった。色調評価した結果を表3に示した。
しかしながら、室内の暴露時間が40分以上と長くなると、焦げによる変色が進み色調評価が40分で2.4点、60分で1.4点と悪くなり、また、パネラー10名による焦げに伴う不快な臭気の有無を評価したところ、いずれも不快な臭気が認められるという結果になった。以上の結果より、ペレットに吸着している水分が植物繊維の熱分解温度を低下させていることが認められ、ペレットの水分を少なくとも0.3%以下に除去することで成形温度を200℃から260℃に上昇できることが明らかになった。
減圧加熱乾燥後に室内に放置した際のEFB繊維1gおよびEFB繊維・ポリプロピレンのペレット1g(植物繊維重量比率40%)の重量変化を測定した。減圧加熱乾燥条件は100℃,5hr, 5torrの条件とし、重量測定は25℃,湿度55%に保った室内に置いた電子天秤で重量変化を測定した。
図2は室内放置時間とEFB繊維およびEFB繊維・ポリプロピレンペレットの重量変化の関係を示した図である。
図2からわかるように、EFB繊維は乾燥後7重量%、EFB繊維・ポリプロピレンのペレットは0.75重量%、吸湿による重量増加が認められた。また、EFB繊維、EFB繊維・ポリプロピレンペレット共に大気暴露直後に急速に吸湿していることが判明した。特に20分後から60分後の吸湿量が大きかった。
図2から判断すると、EFB繊維・ポリプロピレンペレットは重量比で0.3重量%以上の水分を吸湿すると、熱分解が生じ始めることが判明した。これはペレットのEFB繊維重量が40%であることから、EFB繊維単体において0.75重量%の水分が吸着することに相当する。0.75重量%の水分は乾燥後EFB繊維においては、5分以内に吸収されるため、200℃以上の成形でEFB繊維・ポリプロピレンが熱分解を避けるためには厳密な水分吸着量の管理が必要であると判断される。
植物繊維の洗浄処理と金型付着成分(ヤニ成分)との関係を調べた。
EFB繊維あるいはMF繊維を未洗浄あるいは洗浄した後、60℃、2時間オーブンで乾燥し、その後室温で1日放置した。放置後のEFB繊維あるいはMF繊維の水分量は7%であった。平均繊維長は3.41mm,アスペクト比は28.4であった。
なお、植物繊維の洗浄条件は水で洗浄する場合は、80℃で行い、植物繊維と水の重量比は1:20とした。アセトンで洗浄する場合は25℃で行い、植物繊維とアセトンの重量比は1:20とした。
次に実施例1の方法に従い、洗浄あるいは未洗浄のEFB繊維あるいはMF繊維と、ポリプロピレンを混錬し、40%の植物繊維・ポリプロピレンペレットを作製した。ペレットを乾燥する場合、真空加熱乾燥装置により100℃,5hr,5torrにて乾燥を行った。作製したペレットに対して熱プレス成形を行った。熱プレス条件は圧力100kgf/cm2,保持時間10分,温度260℃とした。
なお、各植物繊維の洗浄方法、乾燥処理の有無及びペレットの水分値を表4に示した。
成形時には金型とペレットの間にアルミ箔シートを置いた。成形後に、成形体からアルミ箔シートを剥がし、その重量を測定した。ヤニ成分が付着すると、アルミ箔シートの重量は増加する。そこで、成形前後のアルミ箔シートの重量差を測定し、ヤニ成分(mass change:重量変化率)とした。Mass changeの値が、1.5×10-4以下である場合、目視でヤニ成分の付着量が認められず、ヤニ成分の付着量が少なく良好であると判断される。
EFB繊維の結果(実施例3~4、比較例5~6)を図3に、MF繊維の結果(実施例5~6、比較例7~8)を図4に示した。
本発明のMF繊維:ポリプロピレンを40:60で配合した樹脂材とバガス繊維:ポリプロピレンを40:60で配合した樹脂材についてMFR(メルトフローレート)を測定した。MFRは樹脂の流動性を表し、JISK7210:1999に定めた方法に従い、シリンダー中で樹脂により決められた温度、例えば一般的なポリエチレンなどでは190℃、ポリプロピレンでは230℃に加熱した樹脂に2160gf/cm2の荷重をかけたとき、決められた細孔(オリフィス)から10分間に流れ出る流量(g/10min)で表す。
MFR値は高くなるほど流動性が良いことを示し、樹脂の成形性が良好となる。
MFRを測定した結果を表5に示した。
繊維長の異なるEFB繊維、MF繊維とバガス繊維を原料として、実施例1と同様にして調製した成形体の表面の粗さ(Rz値)を測定した。
表面の粗さRz値(10点平均、単位μm)は、測定機器として小型表面粗さ測定器 SJ-301型(株式会社ミツトヨ製)を用い、測定区間7.2mmで測定した。結果を表6に示した。
Claims (6)
- パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊維を水または有機溶媒で洗浄し、該植物繊維及び熱可塑性樹脂を180℃乃至270℃で混練した後水分量を0.3重量%以下に乾燥することを特徴とする、着色抑制、臭気抑制またはヤニ成分の金型表面への付着抑制用の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造方法。
- 植物繊維1重量部に対し、10重量部以上の水あるいは有機溶媒で洗浄する、請求項1記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造方法。
- パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊のアスペクト比が20以上である、請求項1または2記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造方法。
- パーム果実抽出残渣及び/又はパーム空果房由来の植物繊を5~50重量%、熱可塑性樹脂を50~95重量%含有する、請求項1~3何れか1項に記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造方法。
- 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である、請求項1~4の何れか1項に記載の成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造方法。
- 請求項1~5の何れか1項に記載の製造方法により得られる成形用植物繊維強化熱可塑性樹脂材を160℃乃至270℃で成形する、成形品の製造方法。
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