JP6286088B2 - バッキングプレート、スパッタリングターゲットおよびそれらの製造方法 - Google Patents

バッキングプレート、スパッタリングターゲットおよびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、バッキングプレート、スパッタリングターゲットおよびそれらの製造方法に関する。
バッキングプレートは、スパッタリングに用いられるスパッタリングターゲットのターゲット材を支持するとともに、スパッタリングターゲットをスパッタリング装置に固定するために用いられる部材である。また、バッキングプレートは、スパッタリング時に発生する熱を放散する役割をも担っている。
集積回路(IC)の形成に使用されるスパッタリング装置用のバッキングプレートは、例えば、直径が最大で500〜600mm程度の円盤形の形状を有するものであり、銅合金やアルミニウム合金などの板材から作製されるのが一般的である。
また、液晶ディスプレイ(LCD)の製造に使用されるスパッタリング装置用のバッキングプレートは、例えば板状(またはパネル状)の形状を有するものであり、銅または銅合金などの板材から作製されるのが一般的である。
また、LCD製造用のスパッタリング装置に用いるターゲット材は、通常、IC用のものよりも大型であり、スパッタリング時に発生する熱量も非常に大きくなる。発生する熱は、スパッタリングによって形成される薄膜の特性に影響を及ぼすため、効率的にターゲット材を冷却することができる大型のバッキングプレートが用いられる。板状の形状を有する場合、その長手方向の寸法は3mを超える場合もある。
例えば、特許文献1〜3に記載される通り、LCD製造などに用いられるバッキングプレートは、一般に、放熱性能および冷却性能の向上を目的として、その内部に冷媒用の流体が通過するための流路が形成されていることが多い。このような流路は、例えば、バッキングプレートを構成する本体に予め流路用の溝を形成しておき、この溝を覆うように作製された蓋部材を、例えば、本体の溝部に係合した状態で、溶接などの方法によって接合することによって形成することができる。
特許第4852897号公報 特許第3818084号公報 特開2012−126965号公報
LCD製造に用いられるバッキングプレートとしては、大型で長尺の寸法を有するものが一般的であり、また、銅および銅合金などの比較的硬い金属が用いられるため、その製造には、反りや歪みの問題がある。
また、バッキングプレート内に冷媒用の流路を形成する際、本体と蓋部材とを溶接によって接合すると、その熱によって、蓋部材を含めた本体全体に歪みや撓みが発生するなどの問題もある。特に、電子ビーム溶接(Electron Beam Welding)を利用する場合において、電子ビームが接合部に照射される際には、接合部には大きな熱量が付加されるため、歪みや撓みが発生する可能性が高くなる。
また、電子ビーム溶接の場合、その接合部には、一般にビードと呼ばれる突条部が形成され得るが、その切削除去を行うことによって、凹凸の少ない平坦な表面を形成し、所望のバッキングプレート形状に加工しようとすると、上述の歪みや撓みに起因して、蓋部材の厚さが不均一になる場合がある。
また、最近では、バッキングプレートを構成する本体と、蓋部材との接合において、摩擦熱を利用した摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding)を利用する場合もある。このような場合、接合部にバリと呼ばれる突起が形成され得るが、その切削除去を行うことによって平坦な表面を形成し、所望のバッキングプレート形状に加工しようとすると、上記と同様に、蓋部材の厚さが不均一となる場合がある。
従来、本体と蓋部材を接合した後、接合体に発生した歪みを修正するため、プレス機による矯正作業や機械加工による歪みの除去作業が行われていた。しかし、従来では、所望の最終形状に加工できること、または完成したバッキングプレートに歪みが残存しないように修正することに着目されており、バッキングプレートを構成する各部材の厚さの均一性を保つことは特に検討されておらず、従来のバッキングプレートは蓋部材の厚さの均一性に問題を抱えていた。
また、バッキングプレートのような接合体を形成する場合において、電子ビーム溶接や摩擦撹拌接合による接合を行うと、接合体は接合面側になだらかな反りを生じることがある。従って、本体と蓋部材とを接合後、切削加工により所望のサイズのバッキングプレートに加工しようとすると、数十〜数百mmの範囲で蓋部材が目的の厚さよりも薄くなる箇所や厚くなる箇所が生じやすい。
このように、蓋部材の厚さが不均一となると、スパッタリング時において、流路に圧入される流体の圧力(例えば0.2〜0.7MPa)が、このような不均一な蓋部材に付加されると、蓋部材の薄い部分において変形する可能性が高くなり、蓋部材が湾曲したり、破損したりするなどの問題が発生することがわかった。特に、構成部材の厚さを薄く設計したバッキングプレートでは、蓋の厚さの不均一性に伴う変形が生じるリスクが高く、例えば銅製のバッキングプレートにおいては、蓋部材の厚さを5mm以下に設計する場合には蓋部材の均一性に注意する必要がある。
また、このような蓋部材の厚さの不均一性は、繰返しターゲット材を貼りあわせて使用するバッキングプレート自体の強度を低下させるだけでなく、その反対側のターゲット材を貼る側の厚さの不均一性をも生じさせる。通常、蓋部材の接合面と平行になるように反対側の面を加工するため、本体の歪みや、撓みに起因する蓋部材の厚さの不均一性が残っていると、その反対側の面の加工の際にも厚さの不均一性が生じてしまうためである。このような厚さの不均一性により冷却効率が局所的に異なるので、ハンダによってターゲット材が結合されたスパッタリングターゲットにおいては、ターゲット材が局所的に剥離する可能性もある。
そこで、本発明では、蓋部材の厚さを均一にすることのできるバッキングプレートの製造方法の提供ならびに製造後の蓋部材の厚さが均一なバッキングプレートの提供ならびにこのようなバッキングプレートを含むスパッタリングターゲットの提供を課題とする。
これらの問題に鑑みて、本発明者は、鋭意研究の結果、流路用の溝を有する本体とその蓋部材とを用いたバッキングプレートの製造方法において、本体と蓋部材との接合面を上面として、蓋部材の表面において測定される高さの最大値と最小値との差が0.5mm未満となるように本体を固定した状態で、その接合面を切削により加工することによって、蓋部材の厚さを均一にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のバッキングプレートの製造方法およびバッキングプレートならびに以下のバッキングプレートを含むスパッタリングターゲットの製造方法およびスパッタリングターゲットを提供するが、本発明は、以下のものに限定されるものではない。
[1]
流体が通過する溝を片面に有する板状の本体と、該本体の溝を覆うように該本体に配置される板状の蓋部材とを接合することを含むバッキングプレートの製造方法であって、該本体と該蓋部材とを接合して一体化した後、該本体と該蓋部材との接合面を上面として、該蓋部材の表面において測定される高さの最大値と最小値との差が0.5mm未満となるように該本体を固定し、該接合面の少なくとも一部を切削により加工することを含む、バッキングプレートの製造方法。
[2]
前記本体を力学的に固定する、上記[1]に記載の製造方法。
[3]
前記本体をバイス、クランプまたは真空チャックにより固定する、上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
前記加工がフライス加工である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]
前記本体と前記蓋部材とを電子ビーム溶接または摩擦撹拌接合により接合する、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]
流体が通過する溝を片面に有する板状の本体と、該本体の溝を覆うように該本体に配置される板状の蓋部材とを含むバッキングプレートであって、該本体と該蓋部材とが接合により一体化されていて、該蓋部材の厚さの最大値と最小値との差が0.4mm以下である、バッキングプレート。
[7]
上記[1]に記載の製造方法により得られるバッキングプレート。
[8]
前記蓋部材の厚さの最大値と最小値との差が0.4mm以下である、上記[7]に記載のバッキングプレート。
[9]
上記[6]に記載のバッキングプレート上にターゲット材が結合されていることを特徴とするスパッタリングターゲット。
[10]
バッキングプレートにターゲット材を結合することを含むスパッタリングターゲットの製造方法であって、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法によって前記バッキングプレートを製造することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
本発明によると、蓋部材の厚さを均一にすることのできるバッキングプレートの製造方法ならびに製造後の蓋部材の厚さが均一なバッキングプレート、特に蓋部材の厚さの最大値と最小値との差が0.4mm以下であるバッキングプレートならびにこのようなバッキングプレートを含むスパッタリングターゲットを提供することができる。
本体(接合前)の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 蓋部材(接合前)の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 図1に示す本体のX−Xでの断面を模式的に示す断面図である。 バッキングプレートの製造方法を模式的に示す概略図である。 バッキングプレートの一実施形態を模式的に示す台座面側からの平面図である。 バッキングプレートの一実施形態(台座部あり)を模式的に示す台座面側からの平面図である。 バッキングプレートの一実施形態を模式的に示す側面図である。 バッキングプレートの一実施形態(台座部あり)を模式的に示す側面図である。 接合体の一実施形態を模式的に示す接合面側からの平面図である。 接合体の一実施形態を模式的に示す台座面側からの平面図である。 接合体の一実施形態を模式的に示す側面図である。 図8に示す接合体のA−Aでの断面を模式的に示す断面図(a)および図8に示す接合体のB−Bでの断面を模式的に示す断面図(b)である。 図8に示す接合体のC−Cでの断面を示す断面図である。 実施例1の結果(蓋部材の厚さ)を示すグラフである。 実施例2の結果(蓋部材の厚さ)を示すグラフである。 比較例1の結果(蓋部材の厚さ)を示すグラフである。 比較例2の結果(蓋部材の厚さ)を示すグラフである。 実施例3の結果(蓋部材の厚さ)を示すグラフである。
本発明は、主に、本体と、蓋部材とを有し、かかる蓋部材の厚さを均一に形成することのできるバッキングプレートの製造方法ならびに製造後の蓋部材の厚さが均一であるバッキングプレートに関する。
本発明において、バッキングプレートの「蓋部材の厚さが均一である」とは、以下にて詳細に説明する通り、製造後のバッキングプレートにおいて測定した蓋部材の厚さの最大値と最小値との差が、0.4mm以下、好ましくは0.35mm〜0mm、より好ましくは0.2mm〜0mmであることを意味する。この厚さの差が0.4mmを超えると、加圧時に蓋部材が局所的に降伏を起こし、蓋部材に変形が残存する恐れがある。また、バッキングプレートを繰り返し使用することによって、素材の強度が低下してくると、変形量が大きくなる場合もあるため、蓋部材が破損する恐れもある。また、本体部の厚さのばらつきが大きくなる場合もあるため、局所的に伝熱効率が変化し、ハンダ結合されたスパッタリングターゲットにおいては、ターゲット材の局所的な剥離が生じる恐れもある。ターゲット材が剥離すると、その箇所において、ターゲット材と基板との間の距離が変化し、スパッタリングによって成膜される薄膜特性に悪影響を及ぼすなどの問題が発生する恐れがある。
本発明のバッキングプレートの製造方法は、例えば、図1〜4、特に図4に模式的に示す通り、その内部に流体が通過することのできる溝2を片面に有する板状の本体1と、本体1の溝2を覆う(または塞ぐ)ように、本体1に配置される板状の蓋部材3とを接合することを含み(以下、「工程(a)」と称する。例えば、図4に示す工程(a)を参照のこと)、本体1と蓋部材3とを接合して一体化した後(例えば、図4に示す本体1と蓋部材3との接合体4を参照のこと)、本体1と蓋部材3との接合面を上面として、蓋部材3の表面において測定される高さの最大値と最小値との差が0.5mm未満となるように本体1(および必要に応じて蓋部材3)を固定して、接合面の少なくとも一部を切削により加工することを含む(以下、「工程(b)」と称する。例えば、図4に示す工程(b)を参照のこと)。
本発明では、上述の工程(a)および工程(b)によって、切削による加工後の蓋部材3の厚さを均一にすることができ、具体的には、蓋部材の厚さの最大値と最小値との差を0.4mm以下とすることができる。
さらに、本発明では、必要に応じて、後処理工程として、例えば、本体1と蓋部材3との接合面の反対側の面(以下、スパッタリングターゲット用のターゲット材を配置することのできる「台座面」と称する場合もある)に、台座部5を形成してもよい。台座部5は、ターゲット材を配置することのできる部分であり、その形成方法に特に制限はなく、台座部5は、例えば、切削加工、好ましくはフライス加工によって、台座面の台座部5を除く部分を切削することにより形成することができる。また、台座部5の形状、寸法、高さなどに特に制限はなく、例えば、台座部5の表面が加工後の接合面と略平行、好ましくは平行であればよい。
例えば、図5、6において、本発明のバッキングプレートの一実施形態を模式的に示すが、本発明のバッキングプレートは、かかる実施形態に限定されるものではない。なお、図5A(平面図)、図6A(側面図)は、上記の台座部5を有していないバッキングプレートの一実施形態を模式的に示し、図5B(平面図)、図6B(側面図)は、上記の台座部5を形成したバッキングプレートの一実施形態を模式的に示す。
図5(台座面側からの平面図)および図6(側面図)において、バッキングプレート10、20は、基本的には、流体が通過する溝2を片面に有する板状の本体1(例えば図1を参照のこと)と、本体1の溝2を覆うように本体1に配置される板状の蓋部材3(例えば図2を参照のこと)とを含み、本体1と蓋部材3とが接合により一体化された構造を有する。
また、図5B(上面図)、図6B(側面図)に示す通り、バッキングプレート20の台座面には、ターゲット材を配置することのできる台座部5が形成されていてもよい。
接合面の蓋部材3には、その任意の場所において、任意の寸法の孔6が形成されていてもよく、本体1に形成された溝(または流路)2との流体接続を可能としている。なお、孔6の数に特に制限はない。
さらに、バッキングプレート10、20の本体には、スパッタリング装置への取り付けを可能とするための複数の孔、好ましくは貫通孔(図せず)が形成されていてもよい。
本発明において、バッキングプレートの形状に特に制限はなく、例えば、図5の平面図に記載されるような板状(またはパネル状)のものが好ましい。
本発明において、バッキングプレートの寸法に特に制限はない。例えば、バッキングプレートが板状(またはパネル状)の形状を有する場合、長手方向の長さは、例えば400mm〜4000mm、好ましくは500mm〜3500mm、より好ましくは700mm〜3200mmである。また、この長手方向の長さを垂直に横切る幅方向の長さは、例えば100mm〜2000mm、好ましくは150mm〜1500mm、より好ましくは200mm〜1500mmである。なお、長手方向の長さと、幅方向の長さとは、同一であっても、異なっていてもよい。
本発明において、バッキングプレートの厚さ(すなわち、台座面(台座部を有する場合には、台座部の台座面)と接合面との間の最大の距離)は、例えば5mm〜30mm、好ましくは7mm〜25mm、より好ましくは10mm〜20mmである。ただし、その内部に流路を形成することができるのであれば、バッキングプレートの厚さに特に制限はない。
本発明において、バッキングプレートの内部に形成される流路の形状に特に制限はなく、バッキングプレートの台座面に配置されるターゲット材を冷却することができるものであれば特に制限はない。例えば、図示する実施形態のように、流路が矩形の断面を有する場合、その幅方向の寸法は、例えば10mm〜100mmである。また、高さ方向の寸法は、例えば1mm〜20mm、好ましくは3mm〜15mm、より好ましくは4mm〜10mmである。また、本発明では、本体1の溝2の上側に蓋部材3が配置されて接合された状態で、本体1の溝2と、蓋部材3とによって形成される空間を流路と呼ぶ。溝2の底面と、蓋部材3の裏面(すなわち、接合面の反対側の面)とは、略平行であることが好ましく、平行であることがより好ましい。バッキングプレートのサイズによっては、流路を複数形成してもよい。
以下、図4を参照しながら、本発明の製造方法を例示するとともに、本発明で使用する用語および各部材について、それぞれ詳しく説明する。
図4に示す通り、本発明の製造方法は、「工程(a)」において、本体用の材料1’から作製された本体1と、蓋部材用の材料3’から作製された蓋部材3とを接合し、これらを一体化することによって、その内部に流路を有する接合体4を形成する。その後、「工程(b)」において、接合体4の本体1と蓋部材3との接合面を上面(または上側)として、蓋部材3の表面において測定される高さの最大値と最小値との差が0.5mm未満となるように本体1を、必要に応じて蓋部材3とともに固定し、接合体4の接合面の少なくとも一部、好ましくは全面を切削により加工する。このようにして得られる加工後の接合体4は、本体1と蓋部材3とを接合することで冷却水などの流体が通過することのできる流路をその内部に有することになるため、接合面の反対側の面は、冷却機能を有し、なおかつターゲット材を配置することのできる台座面として機能することができるので、スパッタリングターゲット用のバッキングプレートとして使用することができる(例えば図4に示す点線で囲んだ接合体4およびバッキングプレート10を参照のこと)。さらに、必要に応じて、本発明の製造方法は、「後処理工程」を含み、例えば、ターゲット材を配置するための台座面に台座部5を有するバッキングプレートを製造してもよい(例えば、図4、図5B、図6Bに示すバッキングプレート20を参照のこと)。なお、図4では、本発明の製造方法をより簡便に説明するために、各部材は、その断面の形状を示す斜視図で示す。
<本体>
図4に示す通り、本体1は、本体用の材料1’を切削、研削などの方法により加工することによって形成することができる。
本体用の材料1’としては、導電性の材料から構成されていればよく、金属またはその合金などから作製された板状(またはパネル状)の材料を使用することが好ましい。
金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、タンタル、タンタル合金、ニオブ、ニオブ合金、ステンレス等が挙げられ、加工性、機械的強度、耐久性、放熱性などの観点から、銅を使用することが好ましく、そのなかでも特に高熱伝導性と高電気導電性との観点から、無酸素銅(純度99.96%以上、酸素濃度10ppm以下)を使用することが好ましい。
本体1は、例えば図1の斜視図にて示される通り、以下にて詳細に説明する蓋部材(例えば図2に示す蓋部材3)との接合後に液体冷媒(例えば、水、エタノール、エチレングリコールまたはそれら二種以上の混合液などの流体)などが通過することができるように、その片面に流路を形成し得る溝2を有するものである。
溝2は、例えば図3の断面図にて示される通り、以下にて詳細に説明する蓋部材3を支持(または載置)することのできる形状、例えば段差部2a、2bを有していてもよい。
なお、溝2の形状や寸法、ならびに本体1に占める割合や位置などに特に制限はない。溝2は、接合後に接合面となる蓋部材3の表面と、接合後に接合面となる本体1の表面とが面一になるような形状や寸法を有することが好ましい。
ここで、図4に示す通り、溝2を有する本体1は、例えば、適切な寸法の板状(またはパネル状)の材料1’を、まず、台座面となる側の面を上面として、例えばバイス、真空チャックなどを用いて力学的に固定し、例えばフェイスミルやカッタなどの回転工具を用いるフライス加工によって面削を行い、次いで、この台座面を下面として、例えばバイス、真空チャックなどを用いて力学的に固定し、必要に応じて、例えばフェイスミルやカッタなどの回転工具を用いるフライス加工によって面削を行った後、例えばフェイスミルやカッタなどを用いる切削加工によって、溝2を有する本体1を作製することができる。形成した本体1は、厚さがほぼ一定であり、台座面、接合面となる側の面および溝2の底面が略平行、好ましくは平行であればよい。また、必要に応じて、任意の段階で、本体1の外周面を切削または研磨により加工してもよい。
なお、材料1’に反りや歪み、ねじれなどがなく、水平面が確保されている場合、その面をそのまま台座面とすることができ、その反対側の面に上述のように溝2を形成してもよい。
<蓋部材>
蓋部材3は、例えば図2の斜視図および図4の概略図に示す通り、本体1の溝2を覆うように(または塞ぐように)本体1に配置され得る通常2〜6mmの厚さの板状(またはパネル状)の部材である。蓋部材の本体への設置のしやすさから、図3の断面図にて示される本体の段差部2a、2bに蓋部材を載置させるように、蓋部材の幅は溝の幅よりも大きい方がよいが、蓋部材の厚さを5mm以下、特に3.5mm以下に設計した場合には、流路への加圧で変形が生じやすいため、蓋部材の幅は溝の幅+30mm以下、好ましくは+20mm以下、より好ましくは+15mm以下のサイズとすることが好ましい。また、蓋部材の厚さは適宜決定すればよいが、蓋部材の厚さが5mm以下、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3mm以下の場合に本発明の効果を奏しやすい。
蓋部材3を形成することのできる蓋部材用の材料3’としては、導電性の材料から構成されていればよく、金属またはその合金などから作製された板状(またはパネル状)の材料を使用することが好ましい。
金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、タンタル、タンタル合金、ニオブ、ニオブ合金、ステンレス等が挙げられ、加工性、機械的強度、耐久性、放熱性などの観点から、銅を使用することが好ましく、そのなかでも特に高熱伝導性と高電気導電性との観点から、無酸素銅(純度99.96%以上、酸素濃度10ppm以下)を使用することが好ましい。無酸素銅の中でも強度の高い質別1/4H〜Hの無酸素銅を使用することがさらに好ましい。
材料3’は、材料1’と同一であっても、異なっていてもよいが、本発明では、蓋部材3と本体1とを接合により一体化し、接合部の強度を高く保つという観点から、同一の材料、もしくは同一組成、純度からなる材料であることが好ましい。
蓋部材3は、適切な寸法の材料3’を、例えばバイスなどの拘束具を用いて力学的に固定し、例えばバンドソー、ワイヤーソー、丸鋸、旋盤、フライス盤、帯鋸、グラインダー、ウォータージェットなどを用いて切断または切削することによって形成することができる。形成した蓋部材は、厚さがほぼ一定であり、表裏面が略平行、好ましくは平行であればよい。また、必要に応じて、任意の段階で、蓋部材3の外周面を切削または研磨により加工してもよい。
さらに、任意の段階で、必要に応じて、蓋部材3の任意の場所に、流体が通過することのできる孔を形成してもよい(例えば図5、6に示す孔6を参照のこと)。なお、孔6の数に特に制限はない。特に本体1への接合の前に蓋部材3に孔6を形成しておくと、本体1に蓋部材3をはめ込む際や、それらの接合時に本体1と蓋部材3とで囲まれた空気が孔6を通して抜けることができ、接合部におけるズレの発生を抑えることができるので好ましい。
<工程(a)>
工程(a)は、本体1と蓋部材3とを接合によって、これらを一体化することを含む。
例えば、図4に示す通り、蓋部材3が本体1の溝2を覆うように蓋部材3を本体1に配置し、好ましくは本体1の表面と蓋部材3の表面とが面一になるように、これらの部材を配置する。
本体1と蓋部材3との接合方法には、特に制限はなく、例えば、電子ビーム溶接(Electron Beam Welding(EBW))、摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding(FSW))、TIG溶接、レーザービーム溶接、MIG溶接、MAG溶接などが挙げられる。なかでも、溶接ビードが小さい、溶接歪みが小さいなどの観点から、電子ビーム溶接や摩擦撹拌接合が好ましい。
なお、本発明では、本体1と蓋部材3とを接合することにより一体化して得られる接合体4は、その接合部において優れた気密性を有する。例えば、0.1MPa〜0.8MPaに加圧した空気を流路内に注入しても、その空気は漏れずに、その気密性を維持することができる。
ここで、図7〜9において模式的に示す通り、接合体4の一実施形態をさらに具体的に示す。図7は、接合体4の接合面を示し、図8は、接合体4の台座面を示し、図9は、接合体4の側面を示す。また、図10〜11は、接合体4の断面を示す。より詳しくは、図10(a)および(b)は、それぞれ、図8のA−AおよびB−Bでの断面を示し、図11は、図8のC−Cでの断面を示す。なお、本発明において、接合体4は、図示する実施形態に限定されるものではない。
また、上述の接合によって得られる接合体4に反りが発生し得る場合もあるが、その場合(特に長手方向の長さが2000mmを超える長尺の場合などには)、例えば、矯正機などを用いて、蓋部材3が変形しないように注意しながら、反りの大きさが水平面上に接地するように固定できるレベルにまで、好ましくは5mm未満になるまで、接合体4を矯正することが好ましい。なお、本発明において、接合体4の「反り」とは、接合体4を、その台座面を下側にして、任意の水平な平面上に静置した際、接合体4の長手方向または幅方向(長手方向を垂直に横切る幅方向)の少なくとも1つの端部の下方の縁部が、この水平な平面から離間して位置している場合や、全ての端部の下方の縁部が水平な面に接するが、接合体4の下方の中央部のみが水平な平面から離間していることなどを意味し、この離間した縁部や下方の中央部と、水平な平面との間の最大の距離を、本発明では「反り」の大きさとして表す。また、上記端部の下方の縁部が、上記の水平な平面に対して、波状に離間する場合もあり、その場合においても、かかる水平な平面と縁部との間の最大の距離を「反り」の大きさとして表す。また、接合体4の下方中央部で生じた「反り」は、直接測定することができないため、蓋部材3の表面において測定される接合体4の高さから接合体4の厚さを引いた差の最大値を「反り」の大きさとして表す。
例えば、長手方向の少なくとも一方の端部の反り(以下、「長手方向の反り」と称する場合もある)は、好ましくは5mm未満、より好ましくは1mm未満である。
また、幅方向の少なくとも一方の端部の反り(以下、「幅方向の反り」と称する場合もある)は、好ましくは5mm未満、より好ましくは1mm未満である。
<工程(b)>
工程(b)では、例えば水平な平面上に、接合体4の本体1と蓋部材3との接合面を上面(または上側)として固定する(例えば、図4に示す接合体4を参照のこと)。そして、この水平な平面上に接合体4を固定する際、好ましくは接合体4の設置する側の面(台座面となる側の面)を、できる限りこの水平な平面に近接して配置した後に固定する。そして、蓋部材3の表面において測定される高さ(すなわち、この水平な平面から、蓋部材3の表面の測定点までの距離)の最大値と最小値との差が0.5mm未満、好ましくは0.4mm〜0mm、より好ましくは0.3mm〜0mmとなるように固定し、必要に応じて蓋部材3とともに接合面の少なくとも一部、好ましくは接合面の全面を切削により水平に加工する。
また、接合面と台座面の互いの平行性が保証できる場合は、工程(b)における接合体4の固定方法としては、次の方法を用いてもよい。上記の水平な平面上に、接合体4の本体1と蓋部材3との接合面を上面(または上側)として、その台座面ができるだけ水平な平面と接地するように固定する。この水平な平面上に接合体4を固定する際、この水平な平面と、接合体4の底面(台座面となる側の面)との間の間隔の最大値が、0.5mm未満、好ましくは0.4mm〜0mm、より好ましくは0.3mm〜0mmとなるようにして、固定することが好ましく、その後、接合面の少なくとも一部、好ましくは全面を上記のように切削によって水平に加工する。
接合体4、特に本体1の固定方法に特に制限はなく、例えば、バイス、クランプ、真空チャックなどの拘束具を用いて、力学的に固定することが好ましい。バイス、クランプなどの拘束具を用いて固定する場合、例えば、接合体4の長さ方向に複数の拘束具を配置し、接合体の側部を挟み込むように押さえることで接合体4を水平な平面上に固定することができる。拘束具は、少なくとも接合体4の長さ方向の両端部と中央部の3か所、好ましくはさらに長さ方向の1/4、3/4の位置を追加した5か所以上に、均等に配置する。蓋部材3の表面において測定される高さの最大値と最小値の差が0.5mm未満とならない場合には、接合体4が動かない程度にバイスで仮固定した後、木槌やプラスチックハンマー等で叩いて水平な平面上に接地させることで、蓋部材3の表面を水平な状態で固定することができる。また、真空チャックで固定する場合には、例えば、本体と蓋部材との接合前に、本体の台座面側を切削加工して平坦な面を作製し、吸着面積が大きくなるように接合体の縁部から30mm以内、好ましくは5mm〜20mmの場所に中心が位置するようにOリングを接合体の周囲に配置し、台座面側を吸着面として−0.1MPaの真空度(ゲージ圧)まで真空吸引して固定することで、蓋部材3の表面を水平な状態で固定することができる。
また、蓋部材3の表面において、その高さを測定する位置に特に制限はなく、例えば、溝2の上方で測定することが好ましく、溝2の中央部分の上方で測定することがさらに好ましい。例えば図7に示す通り、直線L1および/またはL2に沿って、蓋部材3の高さを測定することが好ましい。
高さの測定方法に特に制限はないが、例えば、ハイトゲージ、ダイヤルゲージなどを用いて測定することができる。
このように蓋部材3の表面において測定される高さの最大値と最小値との差が0.5mm未満、好ましくは0.4mm〜0mm、より好ましくは0.3mm〜0mmとなるように接合体4を固定した上で、接合面の少なくとも一部、好ましくは全面を切削により水平に加工することにより、好ましくは面削により水平に加工することにより、加工後の蓋部材の厚さを均一にすることができる。好ましくは、加工後の蓋部材の厚さの最大値と最小値との差を0.4mm以下、好ましくは0.35mm〜0mm、より好ましくは0.3mm〜0mmとすることができる。
なお、接合面の加工は、接合面を切削により処理することができれば特に制限はなく、例えば、フライス加工、平面研削加工、エンドミル加工、旋盤加工などで加工を行うことができる。
また、工程(b)において、任意の段階で接合体4の側面を切削または研削により加工してもよく、例えば鏡面にまで仕上げ加工を施してもよい。
本発明では、工程(b)の後に得られる接合体4(例えば、図4の点線で囲んだ接合体4や、図7〜11に示す接合体4)は、そのままバッキングプレートとして使用することができる(例えば、図4、図5A、図6Aに示すバッキングプレート10)。
さらに、本発明の製造方法では、必要に応じて、接合体4を以下の後処理工程に付してもよい。
<後処理工程>
後処理工程としては、例えば、以下の工程などが挙げられる。
(1)台座面の切削による加工
(2)接合面の仕上げ加工
(3)台座面の仕上げ加工
(4)穴あけ加工
(5)反り矯正
後処理工程は、上記の工程(1)〜(5)の順序で行うことが好ましいが、上記の順番に限定されることはない。また、上記の工程(1)〜(5)は、いずれも任意の工程であり、任意の順番で行うことができる。以下、各工程について簡単に説明する。
(1)台座面の切削による加工
接合体4をその台座面を上側に配置して、例えば真空チャックなどで固定し、接合体4の台座面を、例えば、フライス加工、研削加工、エンドミル加工、旋盤加工などを用いてさらに加工してもよい。
この切削による加工は、台座面を接合体4の接合面に対して略平行、好ましくは平行に整形するためのものである。
(2)接合面の仕上げ加工
接合体4をその接合面を上側に配置して、例えば真空チャックなどで固定して、接合体4の接合面を例えばフライス加工、研削加工、エンドミル加工、旋盤加工などを用いて仕上げ加工してもよい。
この仕上げ加工は、接合体4の接合面を、その用途に応じて、必要に応じて鏡面にまで切削または研磨して仕上げるためのものである。
(3)台座面の仕上げ加工
接合体4をその台座面を上側に配置して、例えば真空チャックなどで固定して、接合体4の台座面を、例えば、フライス加工、研削加工、エンドミル加工などを用いて仕上げ加工してもよい。
また、台座面に仕上げ加工を行う前の任意の段階において、必要に応じて、台座面に台座部5を形成してもよい(例えば、図5B、図6Bに示すバッキングプレート20)。台座部5の形成方法に特に制限はなく、例えば、フライス加工、研削加工、エンドミル加工、旋盤加工などを用いることができる。
台座面の仕上げ加工は、上述の台座部5とそれ以外の周囲の部分とを、それぞれ別々に行ってもよい。
この仕上げ加工は、接合体4の台座面(場合によっては、上述の台座部5およびそれ以外の周囲部分の両方)を鏡面にまで加工してもよい。
(4)穴あけ加工
必要に応じて、バッキングプレートの本体1の溝2や台座部5が形成されていない部分には貫通孔を形成してもよい。このような貫通孔にボルト等を通すことによって、本体1をスパッタリング装置に固定することができるようになる。貫通孔の形成方法に特に制限はなく、例えばドリル等を用いて形成することができる。また、貫通孔の寸法、位置、数などに特に制限はない。
(5)反り矯正
上記のバッキングプレートの後処理工程の間において、接合体4に反りが発生し得る場合もあり、その場合には、必要に応じて、例えば矯正機などを用いて、反りの大きさが2mm未満、好ましくは1mm〜0mm、より好ましくは0.5mm〜0mmになるまで、接合体4を矯正することが好ましい。
また、このような反りの矯正は、バッキングプレート製造のいずれの段階において行ってもよい。
このようにして得られるバッキングプレートに対して、ハンダ材を用いて、バッキングプレートの台座面にターゲット材を結合(あるいは接合もしくはボンディング)することにより、スパッタリングターゲットを作製することができる。
ターゲット材としては、スパッタリング法による成膜に通常用いられ得るような金属や合金、酸化物、窒化物などのセラミックス又は焼結体から構成された材料であれば特に限定されず、用途や目的に応じて適宜ターゲット材を選択すればよい。このようなターゲット材としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、モリブデン、銀、タングステンまたはそれらを主成分とする合金、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、In−Ga−Zn系複合酸化物(IGZO)などが挙げられる。
本発明の製造方法において、ターゲット材は略板状に加工され得るが、板状に加工する方法は特に限定されない。金属系のターゲット材料の場合は、例えば溶解、鋳造によって得られた直方体や円筒状のターゲット材料を、圧延加工や押出加工、鍛造加工などの塑性加工に供した後、切断加工やフライス加工、エンドミル加工などの機械加工を施すことによって、所望のサイズや表面状態になるように仕上げることで製造することができる。一方、高融点金属や酸化物の焼結体系のターゲット材料の場合は、板状となるような型にターゲット材料を充填して、ホットプレスや熱間等方圧加圧装置にて焼結する加圧焼結法や、冷間等方圧加圧や射出成形などによって圧粉体を得た後、大気圧下で焼結する常圧焼結法などにより板状の焼結体を得た後、切断加工やフライス加工、エンドミル加工などの機械加工、研削加工を施すことによって、所望のサイズや表面状態になるように仕上げることで製造することができる。
ターゲットとバッキングプレートとの接合に用いるハンダ材としては、特に制限はなく、低融点(例えば723K以下)の金属または合金を含む材料が好ましく、例えば、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)およびアンチモン(Sb)からなる群から選択される金属またはその合金を含む材料などが挙げられる。より具体的には、In、In−Sn、Sn−Zn、Sn−Zn−In、In−Ag、Sn−Pb、Sn−Pb−Ag、Sn−Bi、Sn−Ag−Cu、Pb−Sn、Pb−Ag、Zn−Cd、Pb−Sn−Sb、Pb−Sn−Cd、Pb−Sn−In、Bi−Sn−Sbなどが挙げられる。スパッタリングターゲットのハンダ材としては、一般的には低融点であるInやIn合金、Sn合金が広く使用され得る。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
図1、2に示す形状の本体および蓋部材を用いて、図5A、6Aに示すバッキングプレート10を作製した。なお、工程(a)での接合では、シュタイガーバルト社製の電子ビーム溶接機を用いて、電子ビーム溶接により本体と蓋部材とを接合した。
各部材の材料および目標とする設計目標値は、以下の通りであった。
本体: 無酸素銅板(三菱伸銅社製圧延板 C1020−1/2H)
ビッカース硬度 >80
引張強度 >265MPa
導電率 >101%IACS(20℃)
蓋部材:無酸素銅板(三菱伸銅社製圧延板 C1020−1/2H)
ビッカース硬度 >80
引張強度 >265MPa
導電率 >101%IACS(20℃)
バッキングプレートの設計目標値
バッキングプレートの長手方向の寸法:2500mm
バッキングプレートの幅方向の寸法:270mm
バッキングプレートの厚さ:16mm
本体の厚さ(溝部):8mm
蓋部材の厚さ:3mm
蓋部材の長手方向の寸法:2350mm
蓋部材の幅方向の寸法:175mm(全長)(=70mm(長尺直線部分の幅方向の寸法)+35mm(中間部分の幅方向の寸法)+70mm(長尺直線部分の幅方向の寸法))
流路の幅方向の寸法:165mm(全長)(=60mm(長尺直線部分の幅方向の寸法)+45mm(中間部分の幅方向の寸法)+60mm(長尺直線部分の幅方向の寸法))
流路の厚さ(または高さ):5mm
接合後の接合体は、長さ方向、幅方向ともに接合面側に反っていたため、反りが1mm未満となるようにプレス成型を施すことにより矯正を施した。
その接合面において、門型マシニングセンタにダイヤルゲージを固定し、図7に示す蓋部材の長尺直線部分の中央に位置する直線L1およびL2に沿って、ダイヤルゲージを移動することにより蓋部材の表面において高さを測定した。
接合面で測定した高さの最大値と最小値との差が0.4mmとなるように接合体をバイスで固定し、その後、門型マシニングセンタを用いて、フライス加工を行った(工程(b))。
次いで、フライス加工後の接合体をその台座面が上側となるように真空チャックで固定して、その台座面を、門型マシニングセンタを用いてフライス加工を施した。
このようにして製造したバッキングプレートを、図7に示すL1およびL2に沿って切断し、ノギスを用いて「蓋部材の厚さ」を測定した。結果を図12のグラフおよび以下の表1に示す。
図12および表1に示す通り、「蓋部材の厚さ」の最大値と最小値との差は、L1において0.31mm(=3.13−2.82)であり、L2において0.26mm(=3.14mm−2.88mm)であった。
このような結果から、実施例1で製造したバッキングプレートでは、蓋部材の厚さは、均一であることがわかった。
なお、本発明の実施例において、蓋部材の厚さが均一であるとは、蓋部材の厚さの最大値と最小値との差が「0.4mm以下」であることを意味する。
[実施例2]
接合面で測定した高さの最大値と最小値との差が0.3mmとなるように接合体をバイスで固定したことを除いて、実施例1と同様にして、バッキングプレートを作製した。
このようにして製造したバッキングプレートを、図7に示すL1およびL2に沿って切断し、「蓋部材の厚さ」を測定した。結果を図13のグラフおよび以下の表1に示す。
図13および表1に示す通り、「蓋部材の厚さ」の最大値と最小値との差は、L1において0.17mm(=3.04−2.87)であり、L2において0.13mm(=3.04mm−2.91mm)であった。
このような結果から、実施例2で製造したバッキングプレートでは、蓋部材の厚さは、均一であることがわかった。
[実施例3]
摩擦撹拌接合により本体と蓋部材とを接合し、以下に示す設計目標値でバッキングプレートを作製した。各部材の材料は実施例1と同様の材料を使用した。
バッキングプレートの設計目標値
バッキングプレートの長手方向の寸法:2100mm
バッキングプレートの幅方向の寸法:270mm
バッキングプレートの厚さ:16mm
本体の厚さ(溝部):7.7mm
蓋部材の厚さ:3.3mm
蓋部材の長手方向の寸法:2000mm
蓋部材の幅方向の寸法:175mm(全長)(=70mm(長尺直線部分の幅方向の寸法)+35mm(中間部分の幅方向の寸法)+70mm(長尺直線部分の幅方向の寸法))
流路の幅方向の寸法:165mm(全長)(=60mm(長尺直線部分の幅方向の寸法)+45mm(中間部分の幅方向の寸法)+60mm(長尺直線部分の幅方向の寸法))
流路の厚さ(または高さ):5mm
接合面で測定した高さの最大値と最小値の差が0.3mmとなるように接合体をバイスで固定したことを除いて、実施例1と同様にして、バッキングプレートを作製した。
このようにして製造したバッキングプレートを、図7に示すL1およびL2に沿って切断し、「蓋部材の厚さ」を測定した。結果を図16のグラフおよび以下の表1に示す。
図16および表1に示す通り、「蓋部材の厚さ」の最大値と最小値との差は、L1において0.13mm(=3.34−3.21)であり、L2において0.10mm(=3.31mm−3.21mm)であった。
このような結果から、実施例3で製造したバッキングプレートでは、蓋部材の厚さは、均一であることがわかった。
[比較例1]
接合面で測定した高さの最大値と最小値との差が1.0mmとなるように接合体をバイスで固定したことを除いて、実施例1と同様にして、バッキングプレートを作製した。
このようにして製造したバッキングプレートを、図7に示すL1およびL2に沿って切断し、「蓋部材の厚さ」を測定した。結果を図14のグラフおよび以下の表1に示す。
図14および表1に示す通り、「蓋部材の厚さ」の最大値と最小値との差は、L1において0.60mm(=3.77−3.17)であり、L2において0.65mm(=3.79−3.14)であった。
このような結果から、比較例1で製造したバッキングプレートでは、蓋部材の厚さは、均一でないことがわかった。
[比較例2]
接合面で測定した高さの最大値と最小値との差が0.5mmとなるように接合体をバイスで固定したことを除いて、実施例1と同様にして、バッキングプレートを作製した。
このようにして製造したバッキングプレートを、図7に示すL1およびL2に沿って切断し、「蓋部材の厚さ」を測定した。結果を図15のグラフおよび以下の表1に示す。
図15および表1に示す通り、「蓋部材の厚さ」の最大値と最小値との差は、L1において0.41mm(=3.17−2.76)であり、L2において0.48mm(=3.16mm−2.68mm)であった。
このような結果から、比較例2で製造したバッキングプレートでは、蓋部材の厚さは、均一でないことがわかった。
Figure 0006286088
比較例1、2において、蓋部材の厚さの最大値と最小値との差は、0.4mmを超えるものとなり、蓋部材の厚さが均一でないことがわかった。これは、工程(b)において、接合体を固定する際に接合面で測定した高さの最大値と最小値との差を0.5mm以上としたことに起因する(特に比較例2の結果を参照のこと)。
対して、本発明の実施例1〜3では、蓋部材の厚さの最大値と最小値との差は、いずれも0.4mm以下となり、蓋部材の厚さが均一であることがわかった。これは、工程(b)において、接合体を固定する際に接合面で測定した高さの最大値と最小値との差を0.5mm未満としたことに起因する。
このように、実施例1〜3および比較例1〜2によると、工程(a)の後、工程(b)において、接合体の接合面における蓋部材の表面において測定される高さの最大値と最小値との差を0.5mm未満として接合体を固定して、接合面の少なくとも一部を切削により加工することによって、製造後のバッキングプレートにおいて、蓋部材の厚さの最大値と最小値との差は、0.4mm以下となり、蓋部材の厚さを均一にすることができる。
また、工程(b)において、接合体を固定した状態で接合面の少なくとも一部を切削によって加工するが、このような固定によって、製造後のバッキングプレートへの反りや歪みへの影響は、ほとんど見受けられない。
[実施例4]
実施例1と同様にして、バッキングプレートを作製し、流路につながる蓋部材に設けた穴より0.5MPaの水圧をバッキングプレート内の流路に印加し、耐圧テストを行った。加圧状態で30分間保持した後、除荷状態で蓋部材が変形しているか確認したところ、変形した箇所は見られなかった。また、耐圧テスト後に、アルバック製のHeリーク装置を用い、流路のHeリークテストを行ったが、リークレートが5.0×10−10Pa・m/s以下であり、漏洩は見られなかった。蓋部材の厚さを均一にすることによって、加圧によっても蓋部材の塑性変形が生じない変形に強いバッキングプレートを得ることができる。
前記耐圧テスト及び流路のHeリークテストにより変形やリークの無いことを確認したバッキングプレート上に、2250mm×200mm×t15mmのアルミニウムターゲットをインジウムはんだを用いてボンディングし、スパッタリングターゲットを作製した。ボンディング作業時は、バッキングプレートを240℃に加熱したが、大きな反りは生じず、超音波探傷装置により接合率検査を行ったところ、接合率が99%以上であり、ターゲット材全面が均一にボンディングされているスパッタリングターゲットを作製することができた。
なお、本願は、2015年7月10日に日本国で出願された特願第2015−138918号を基礎としてその優先権を主張するものであり、その内容はすべて本明細書中に参照することにより援用される。
本発明のバッキングプレートおよびその製造方法は、スパッタリングターゲット、特に液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイの製造で使用され得るスパッタリングターゲットにおいて利用することができる。
1 本体
2 溝(または流路)
3 蓋部材
4 接合体
5 台座部
6 孔
10 バッキングプレート
20 バッキングプレート(台座部あり)

Claims (9)

  1. 流体が通過する溝を片面に有する板状の本体と、該溝を覆うように該本体に配置される板状の蓋部材とを含むバッキングプレートであって、該本体と該蓋部材とが接合により一体化されている接合面を有し、該接合面をなす該蓋部材の長手方向の略全長にわたって該溝の中央部分の上方を測定した厚さの最大値と最小値との差が0.4mm以下であり、該本体の長手方向の長さが2000mmを超える、バッキングプレート。
  2. 前記本体の長手方向の長さが2000mmよりも大きく4000mm以下である、請求項1に記載のバッキングプレート。
  3. 前記本体の長手方向の長さが2500mm以下である、請求項2に記載のバッキングプレート。
  4. 前記蓋部材の厚さが3.5mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッキングプレート。
  5. 前記蓋部材の厚さが3.0mm以上3.5mm以下である、請求項に記載のバッキングプレート。
  6. 前記本体の幅方向の長さが、100mm以上2000mm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバッキングプレート。
  7. 前記本体の幅方向の長さが、150mm以上1500mm以下である、請求項6に記載のバッキングプレート。
  8. 前記接合面は、全面が切削により加工されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバッキングプレート。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のバッキングプレート上にターゲット材が結合されていることを特徴とするスパッタリングターゲット。
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