JP6285893B2 - 焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法に関するものである。
鋼板の硬化法として、焼入れ加工があり、製造時の品質評価として鋼板の硬さの測定が必要とされている。硬さは、一般的に、ビッカース硬さ試験などの硬さ試験によって判定されているが、このような硬さ試験では、鋼板の表面に圧痕などの傷がつくことが欠点として挙げられる。さらに、鋼板の内部の硬さ測定では、通常、鋼板およびその成形品の一部を切断した断面を用いて試験するため、製造された鋼板の全量を試験対象とすることは困難であって、実際には、一部の鋼板をサンプルとして抜き出して、硬さ試験が行われている。
このような背景から、鋼板およびその成形品について非破壊での硬さ測定を可能とする方法の開発が求められており、これまでに、例えば、磁気ヒステリシス特性の変化を測定する電磁気計測法が提案されている(特許文献1、2を参照)。
特許文献1には、鋼材を磁化する際の保磁力を利用して、鋼材の硬さが、所定の保磁力値Hcの範囲内にあるときに良と判定し、この範囲外にあるときを不良と判定して選別する方法とそのための装置が提案されている。この方法では、まず、硬さ既知の複数の鋼材を標品として、その保磁力を測定し、硬さと対応する保磁力との相関関係を評価する。次に、この相関関係から良品と不良品の選別限界である硬さHvに対応する保磁力Hcの範囲を求める。続いて、測定対象である鋼材を励磁して磁気飽和させた後、減磁して磁気ヒステリシス曲線を作成し、あらかじめ求めていた前記の良品と不良品の選別限界の保磁力Hcの値に対応する磁束密度Bの値を求め、その符号の正、負の出力数の判定を行うことにより、鋼材の硬さを選別することができるとされている。
特許文献2には、鋼材に損傷を与えることなく、鋼材の磁気特性を測定することによって硬さの推定値を算出し、鋼材の耐環境割れの発生前に事前にかつ非破壊的に鋼材の耐環境割れ特性を診断する方法が提案されている。この方法では、まず、励磁されたヨークの磁束を検出し、測定対象の鋼材の磁気ヒステリシス曲線(B−H曲線)を求め、このB−H曲線から測定対象の鋼材の保磁力Hcと残留磁束密度Brと透磁率μを求める。次に、測定対象の鋼材と実質的に同質であるが、熱処理によって硬さレベルを変え、硬さが既知であってかつ硬さの異なる複数の鋼材を標品として、磁気ヒステリシス曲線(B−H曲線)を求め、このB−H曲線から標品の保磁力Hcと残留磁束密度Brと透磁率μを求める。そして、標品に関するBr−Hv曲線、Hc−Hv曲線およびμ−Hv曲線から測定対象の鋼材の硬さHvを推定している。
しかしながら、鋼板の硬化を目的として、焼入れ加工を行う場合、通常、焼入れ加工の加熱急冷工程は大気中で行われるため、鋼板の表面には酸化被膜が形成される。このような酸化被膜が形成されると、鋼板の表面と電磁気計測法に用いられる測定子(磁気プローブ)との間に磁気的ギャップが生じ、電磁気計測法で得られる鋼板の硬さや保磁力の値に誤差が生じることが問題となる。
特許文献1および2に記載されたいずれの測定方法においても、このような鋼板の表面に形成された酸化被膜による磁気的ギャップの幅が鋼板の磁気特性に影響を及ぼす点については、何ら考慮されていないのが実情であった。
特に、近年軽量さと強度の両方を兼ね備えた材料として注目されている、ダイクエンチ鋼板では、その製造工程において凹凸面のある金型を用いる場合が多いが、この金型の立壁面においては金型と鋼板との接触面積とクリアランスとの兼ね合いから、焼入れ不良が起こりやすく、複雑な立体形状を有する金型成形品の精度のよい硬さ測定方法が求められている。
特開昭48−43954号公報 特開平5−142203号公報
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、鋼板を破壊することなく、しかも鋼板の表面に酸化被膜を有する状態であっても、さらにはめっき膜などの被膜を有する場合であっても、ダイクエンチ鋼板製の複雑な立体形状を有する金型成形品であっても、精度よく鋼板の硬さを推定することができる鋼板の硬さ測定方法およびこの方法を実施するための測定装置を提供することを課題としている。
本発明者らは、前記課題に対応するための検討を鋭意進めることで、焼入れ加工後の鋼板表面に酸化被膜が形成された部分においては、ギャップ幅の増大にともなって残留磁束密度Brの値が著しく減少すること、そして焼入れによって保磁力Hcが増大するとの知見を得た。また、酸化被膜を除去した焼入れ鋼板の硬さおよび磁気特性データと、人為的にギャップ幅を変動させ測定した焼入れ鋼板の磁気特性データから、酸化被膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板の硬さを非破壊で推定することができる数式を導き出し、この数式から実測値に極めて近い硬さを算出可能であることを確認した。
また、亜鉛めっきが施された鋼板の焼入れ加工後の酸化被膜とめっき膜を有する鋼板の硬さについても、非破壊での推定が可能であることを確認している。本発明は、このような知見にも基づいて完成された。
本発明は、以下のとおりの焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法を提供する。
〔1〕少なくとも次の手順(A)(B)(C)(D)を含むことを特徴とする酸化被膜もしくはめっき膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法。
(A)前記焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定する;
(B)前記焼入れ加工後の鋼板と実質的に同質の鋼板であって、複数の異なる焼入れ条件で焼入れ加工し、酸化被膜もしくはめっき膜を完全に除去した複数の標品の各々について、
<1>前記標品の硬さHvおよび保磁力Hcを測定し、前記標品の硬さHvと保磁力Hcとの相関関係を評価し、
<2>前記標品の表面と磁気プローブとの間に非磁性材を介在させてギャップ幅w(ギャップ幅0を含む)を変動させた場合の標品の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定し、
<3>前記標品の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brとギャップ幅wとの関係を評価する;
(C)焼入れ加工後の鋼板について、保磁力Hcの実測値に、ギャップ幅効果による補正値αを加算し、酸化被膜もしくはめっき膜の無い状態の焼入れ加工後の鋼板の保磁力の推定値Hcを算定する;
(D)酸化被膜もしくはめっき膜の無い鋼板の保磁力の実測値Hcの値として、推定値Hcを用い、Hcに対応する硬さHvの値を前記標品における硬さHvと保磁力Hcとの相関関係から導く。
〔2]前記鋼板が、鋼板の焼入れと金型成形を同時に行うダイクエンチ工法によって製造される鋼板成形品である。
本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法および測定装置によれば、鋼板を破壊することなく、しかも鋼板の表面に酸化被膜を有する状態であっても、さらにはめっき膜などの被膜を有する場合であっても、ダイクエンチ鋼板製の複雑な立体形状を有する金型成形品であっても、精度よく鋼板の硬さを推定することができる。
本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法において、測定対象となり得る鋼板の加工状態を示した概略模式図である。 本発明の焼入れ加工後の鋼板の一実施形態である、ダイクエンチ鋼板の製造工程を例示した概略工程図である。 本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法の手順を例示した概略模式図である。 本発明の手順(B)の<1>における酸化被膜を完全に除去した標品(ラインA)と、手順(A)における酸化被膜を有する測定対象の鋼板(ラインB)の磁気特性および硬さHvの測定地点P1〜P10を例示した図である。 図4における標品(ラインA)と測定対象の鋼板(ラインB)のそれぞれにおける保磁力Hco、Hcと硬さHvとの相関関係を示すグラフである。 本発明の手順(B)の<2>において、酸化被膜を除去した標品と磁気プローブとの間にアルミ箔を挟みこんで磁気特性を測定した際の、ギャップ幅wと保磁力Hcとの関係を示したグラフである。 図6におけるギャップ幅wと残留磁束密度Brとの関係を示したグラフである。 図6、7の結果をもとに残留磁束密度Brと保磁力Hcとを組み合わせて求めた、ギャップ幅wを推定するためのパラメータPを示したグラフである。 図8において算出したパラメータPとギャップ幅wが反比例すると仮定して、図4に示した各測定地点の実測値をフィットして得られるギャップ幅の推定値を示したグラフである。 図6の結果をもとに、ギャップ幅wと、ギャップ幅効果による保磁力Hcの減少値を示す補正値αとの関係を示したグラフである。 図4における標品(ラインA)と測定対象の鋼板(ラインB)のそれぞれの保磁力の実測値Hco、Hcと、図10より求めた補正値αをもとに算出した酸化被膜の無い状態の鋼板の保磁力の推定値Hcの比較結果を示したグラフである。 本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置の模式図である。 本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置の各部の関係を示したブロック図である。 図12における測定装置の磁気プローブの一実施形態を示す概略図である。(a)は概略斜視図であり、(b)は(a)のA−A’断面図である。 (a)は、ダイクエンチ鋼板成形品の外形と磁気プローブを面接触させて磁気特性を測定した地点を示す模式図である。(b)は、ダイクエンチ鋼板成形品を連続的に製造する過程において、図14に示す磁気プローブを備えた測定装置を用いて、(a)で示した地点の保磁力を測定した結果を示すグラフである。
以下、図面に基づいて、本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法を詳細に説明する。
なお、本明細書中において、「相関関係」の用語は、HvとHcの比較時に用い、比例する意味合いを含んでいる。また、単に「関係」の用語を用いる場合は、Hc、Brおよびwの比較時であって、比例する意味合いを含んではいない。
図1は、本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法において、測定対象となり得る鋼板の加工状態を例示した概略模式図である。
本発明では、機械構造用の鋼板、特に自動車用の焼入れ鋼板を焼入れ加工後、その表面に形成された酸化被膜を除去することなく、焼入れ加工後の鋼板を対象としてその硬さを測定することができる。また、本発明では、鋼板を焼入れ加工後、ブラスト処理などで部分的もしくは完全に酸化被膜を除去した鋼板の硬さについて測定できる。さらに、亜鉛めっきなどの被膜を有する鋼板を焼入れ加工し、表面に酸化被膜およびめっき膜を有する鋼板の硬さについても測定することができる。
なお、通常、ショットブラスト法を用いたブラスト処理などでは、酸化被膜を完全に除去することは難しく、鋼板の表面には厚さ未知の残存酸化被膜が不均一に存在することが多い。本発明では、このような残存酸化被膜を有する鋼板の硬さについても精度よく測定することができる。
また、本発明においては、板材としての鋼板およびこの鋼板を金型成形することで得られる成形品についても非破壊での硬さ測定が可能である。
焼入れ加工前の鋼板としては、例えば、引っ張り強度が600MPa〜800MPa程度の焼入れ鋼板などが例示される。また、めっき膜を有する鋼板としては、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板等が例示される。なお、焼入れ加工後の鋼板の引っ張り強度は、1300MPa〜2200MPaが例示される。
このような鋼板の厚さとしては、例えば、0.5mm以上3.0mm以下、好ましくは、0.8mm以上3.0mm以下、より好ましくは1.2mm以上2.8mm以下の範囲が例示される。
本発明における鋼板の焼入れ加工の方法としては、例えば、電気炉で加熱し焼入れ加工を行う方法、または鋼板の両端部に少なくとも一対の電極を接続して通電加熱することによって焼入れ加工を行う方法などが例示される。通電加熱法では、電極直下の鋼板の温度は、例えば90℃〜120℃程度までしか上昇しないが、鋼板の向かい合う両端部に接続した電極間、特に中央付近においては、鋼板の温度を800℃〜1000℃程度まで加熱することができる。
例えば、図2に例示するように、本発明における鋼板は、鋼板の焼入れと金型成形を同時に行うダイクエンチ工法によって製造される鋼板成形品であることが好ましく考慮される。ダイクエンチ工法では、例えば、鋼板を約900℃まで加熱し、常時冷却している金型でプレスすることにより、成形と同時に金型内で焼入れすることが例示される。
このダイクエンチ工法において、金型の水平面に対向する鋼板の部位においては、通常焼入れ不良が起こりにくいが、立設された立壁面に対向する鋼板の部位においては、金型の嵌合精度や摩耗および鋼板の位置決め精度や成分バラツキ等に起因して鋼板と立壁面との間に隙間が生じ十分な冷却速度が得られないおそれがあるため、鋼板に焼入れ不良が起こる可能性を完全には排除しきれない。そして、この焼入れ不良部は、必ずしも最終製品に要求される硬さを備えておらず、強度不足から鋼板成形品が不良品となることがある。本発明によれば、このようなダイクエンチ工法による鋼板成形品についても、精度よく硬さ測定を行うことが可能であって、確実な焼入れ不良品の判別を実現することができる。
図3は、本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法の手順を例示した概略模式図である。なお、図3中ならびに以下に記載する図3の説明においては、焼入れ加工後の鋼板の表面に形成された被膜として、特に酸化被膜を例に挙げて説明する。めっき膜の場合も同様の測定方法を適用することができる。
本発明の酸化被膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法は、少なくとも次の手順(A)(B)(C)(D)を含むことを特徴とする酸化被膜もしくはめっき膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法である。
(A)前記焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定する;
(B)前記焼入れ加工後の鋼板と実質的に同質の鋼板であって、複数の異なる焼入れ条件で焼入れ加工し、酸化被膜もしくはめっき膜を完全に除去した複数の標品の各々について、
<1>前記標品の硬さHvおよび保磁力Hcを測定し、前記標品の硬さHvと保磁力Hcとの相関関係を評価し、
<2>前記標品の表面と磁気プローブとの間に非磁性材を介在させてギャップ幅w(ギャップ幅0を含む)を変動させた場合の標品の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定し、
<3>前記標品の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brとギャップ幅wとの関係を評価する;
(C)焼入れ加工後の鋼板について、保磁力Hcの実測値に、ギャップ幅効果による補正値αを加算し、酸化被膜もしくはめっき膜の無い状態の焼入れ加工後の鋼板の保磁力の推定値Hcを算定する;
(D)酸化被膜もしくはめっき膜の無い鋼板の保磁力の実測値Hcの値として、推定値Hcを用い、Hcに対応する硬さHvの値を前記標品における硬さHvと保磁力Hcとの相関関係から導く。
手順(A)においては、後述の測定装置を用いて、測定試料である焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定する。すなわち、磁気プローブを焼入れ加工後の鋼板に接触させて閉磁回路を形成し、この閉磁回路の励磁コイルに通電して検出コイルで電圧を検出する。これらのデータに基づいて、演算装置上で磁束Bと磁場Hを算出してB−H曲線を作成し、B−H曲線の横軸である磁場軸の切片に相当する保磁力Hcと縦軸である磁束密度軸の切片に相当する残留磁束密度Brを測定する。なお、ここでの保磁力Hcと残留磁束密度Brはいずれも焼入れ加工後の鋼板そのものの磁気特性を表しておらず、焼入れ加工後の鋼板、磁気プローブおよび酸化被膜の3者の特性を反映していることが留意される。すなわち、鋼板自体の硬さが同じ場合であっても、酸化被膜の膜厚が異なるために、鋼板の保磁力が異なることがあり得る。本発明はそのような測定対象についても、精度よく硬さを測定することができる。
次に、手順(B)においては、測定対象である焼入れ鋼板と同素材・同じ板厚の鋼板について、最終製品に要求される硬さを備えた良品と、硬さが不十分である不良品とが得られるように、様々な焼入れ条件にて焼入れ加工を行う。そして、焼入れ加工後の鋼板の表面に存在する酸化被膜を、ブラスト処理などで部分的にまたは完全に除去したものを標品とする。
鋼板の表面に存在する酸化被膜またはブラスト処理後の残存酸化被膜の厚さとしては、例えば、0.1μm以上50μm以下の範囲であることが好ましく考慮される。鋼板の表面に存在する酸化被膜またはブラスト処理後の残存酸化被膜の厚さが、上記の範囲内であれば、精度よく鋼板の硬さを推定することができるが、50μmを超えると、鋼板の硬さの推定精度が低下してしまうおそれがある。
手順(B)<1>においては、前記標品の硬さHvを公知の硬さ測定方法によって測定し、さらに手順(A)と同様にして、酸化被膜が無い場合の焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcを算出する。そして、前記標品の硬さHvの実測値と保磁力Hcとの相関関係をグラフ化して、評価する。
本発明において硬さHvの実測値を得るための硬さ測定方法としては、公知の硬さ測定方法である限り特に制限されないが、例えば、ビッカース硬さ試験などが例示される。
図4は、本発明の手順(B)<1>における酸化被膜を完全に除去した標品(ラインA)と、手順(A)における酸化被膜を有する測定対象の鋼板(ラインB)の磁気特性および硬さHvの測定地点P1〜P10を例示した図である。P1〜P10の各測定地点は、図4中、鋼板の左端部からの水平方向の距離(cm)を表しており、例えば、P1は、鋼板の左端部から水平方向に1cm離れた地点を表している。なお、図4および以下の実施形態においては、測定対象の鋼板を標品として、それぞれ別体の鋼板を試験体とはせずに、鋼板の同一平面上であって異なる領域に酸化被膜の無い状態の領域と酸化被膜を有する領域とを設けて試験体としている。この試験体には、表1に化学組成を示すダイクエンチ鋼板を試験体として用いる。
以下に、焼入れ加工の工程の一例を示す。
すなわち、まず、厚さ1.6mmの鋼板の両端を電極で挟み、通電加熱を行う。電極直下では100℃程度、鋼板の中央部は910℃以上に達した後、冷却したプレス金型で急冷する。その鋼板から、電極直下の部分と鋼板の中央部付近を含む約13cm角の広さの板状試験体を切り出す。ダイクエンチ工法の加熱冷却工程は大気中で行うため、鋼板表面には酸化被膜が形成される。ここで、電極部(焼入れ不良部)から中央部(完全焼入れ部)に向けた2か所の線上の地点を選ぶ。ラインAは紙やすりで酸化被膜を完全に除去し、ラインBは酸化被膜を有する状態のままとする。
また、上記の焼入れ加工後の鋼板から試験片を幾つか切り出し、硬度試験を実施する。硬度試験では、電極部から中央部に向かう線上に沿って切断した試験片を熱硬化性ベークライトに埋め込み、鋼板断面の中央部のビッカース硬度(荷重1kg重)を測定する。酸化被膜の評価には、焼入部から切り出した5mm×4mmの試験片を使用する。
図5は、図4の標品(ラインA)と測定対象の鋼板(ラインB)のそれぞれにおける硬さHvと保磁力Hc、Hcとの相関関係を示すグラフである。酸化被膜の有無に関わらず線形の関係が見られるが、ラインAとラインBの線形関数の係数はそれぞれ異なっている。例えば、酸化被膜を除去した鋼板であらかじめ線形関数の係数を決めて保磁力Hcを測定して硬さHvを推定する場合、実際の鋼板の表面に形成された酸化被膜が厚くなるほど硬さHvを過小評価することになる。このような硬さHvのズレは、焼入れ加工後の鋼板の表面に酸化被膜が存在する場合、磁気プローブの端部と焼入れ加工後の鋼板の表面とが完全に接触することができずに磁気的ギャップが生じ、保磁力Hcの値が変化することに起因する。したがって、酸化被膜の厚さが未知の場合、正確な硬さの推定ができなくなる。そこで、次の手順では、酸化被膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcと残留磁束密度Brのギャップ幅wに対する依存性を評価する。
手順(B)<2>においては、前記標品の表面と磁気プローブとの間に、酸化被膜の代わりに厚さが既知の非磁性材を介在させて、ギャップ幅wを変動させた場合の標品の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定する。
前記非磁性材としては、特に制限されないが、例えば、アルミ箔などが例示される。
以下に測定の一例を示す。鋼板のラインA上のP1〜P10の各位置において、磁気プローブと標品の鋼板の間に、厚さ11μmの市販のアルミ箔を1枚から5枚まで重ねて挟み、測定した保磁力Hcおよび残留磁束密度とギャップ幅wとの関係を評価する(手順(B)<3>)
図6に、ラインAのP1〜P10の各地点で測定した保磁力Hcのギャップ幅依存性を示す。保磁力Hcはギャップ幅wが増えると減少しているが、ギャップ幅wよりも測定位置による変動の方が大きく、焼入れ状態に非常に敏感であることが確認される。なお、ギャップ幅0μmの保磁力は、アルミ箔を挟まずギャップ無しの状態で測定した標品の保磁力Hcoである。
図7に、ラインAのP1〜P10の各地点で測定した残留磁束密度Brのギャップ幅依存性を示す。ギャップ幅wが増えると残留磁束密度Brは急激に減少している。その変化量は、測定位置よりもギャップ幅wに大きく依存しており、ギャップ幅wに敏感であることが確認される(手順(B)<3>)
また、図6、7のグラフから、ギャップ幅が大きくなると変化傾向が小さくなるため、推定の精度が低下することが確認される。
次に、磁気パラメータの変化挙動の違いをもとに、ギャップ幅が推定できないか検討する。残留磁束密度Brはギャップ幅に敏感であるが、図7に示すように、焼入れ状態の影響もわずかに受ける。この焼入れ状態の効果を取り込むため、残留磁束密度Brと焼入れ状態に敏感な保磁力Hcとを組み合わせた次式のパラメータPを考える。
P = Br・Hc-a (1)
アルミ箔を挟み、ラインAのP1〜P10の各地点で測定した残留磁束密度Brと保磁力Hcの値を代入して、パラメータPを求める。図8は、完全に焼入れされていると考えられるラインAのP6〜P10の各地点における、パラメータPとギャップ幅wとの関係を示している。ここでは、aを0.5とした。パラメータPとギャップ幅wの関係は、全く焼入れされていない鋼板を除き、およそ一つの曲線で整理できることが確認される。
また、非破壊での硬さ測定方法では、微妙な焼入れ不足の違いを検出することが要求されるため、図8と同様に、完全に焼入れされていると考えられるラインAのP6〜P10の各地点に着目し、ギャップ幅wとパラメータPが反比例すると仮定して、残留磁束密度Brと保磁力Hcの値を、前記(1)式に代入して算出したパラメータPの値を用いて次式でフィットする。
w = b/P-c (2)
ここでは、bを0.45、cを15.5とした。ラインBのP1〜P10の各地点における残留磁束密度Brと保磁力Hcの値を前記(1)式に代入してパラメータPの値を算出し、得られたパラメータPの値を(2)式に代入すると、ラインBのP1〜P10の各地点におけるギャップ幅w、すなわち酸化被膜の厚さ(μm)を求めることができる。図9に示すように、完全に焼入れされたと考えられるラインBのP6〜P10付近の厚さは10〜25μmと算出され、別に実施したSEM観察の結果と一致していることが確認される。そこで、次の手順では、得られたギャップ幅wの値を用いて、ギャップ幅効果の影響を補正する。
手順(C)においては、手順(B)<3>において明らかにした保磁力Hcおよび残留磁束密度Brとギャップ幅wとの関係に基づいて、ギャップ幅効果による保磁力Hcの減少量を示す補正値αを求める。また、前記焼入れ加工後の鋼板について、保磁力Hcの実測値に、ギャップ幅効果による補正値αを加算し、酸化被膜の無い状態の焼入れ加工後の鋼板の保磁力の推定値Hcを算定する。
以下に算定の一例を示す。図6のデータからギャップ幅効果による保磁力Hcの減少量を各測定値点で求めて補正値αとし、それらの補正値αとギャップ幅wとの関係を図10に示す。P6〜P10における補正値αとギャップ幅wとの関係はおよそ1つの減少曲線で整理できる。この減少曲線を次式でフィットする。
α=-d・we (3)
ここでは、dを12、eを0.64とした。上に示した (1)式から(3)式より、ギャップ幅w、すなわち厚さが未知の酸化被膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板での残留磁束密度Brと保磁力Hcの測定結果をもとに、被膜の無い状態の鋼板の保磁力の推定値Hcを算定できる。すなわち、被膜の無い状態の保磁力の推定値Hcは、被膜の有る状態で検出した保磁力Hcと残留磁束密度Brを用いて、以下の式に表現できる。
Hc*=Hc + α=Hc -d・(b/(Br・Hc-a) - c)e (4)
(a=0.5、b=0.45、c=15.5、d=12、e=0.64)
ここで、係数a、b、c、d、eの値は、鋼種および鋼板の厚さによりそれぞれ変わるので、測定対象と同素材かつ同じ板厚の標品を用いて決定する必要がある。
ラインB上で検出した保磁力Hcと残留磁束密度Brを(4)式に代入し、算出した保磁力の推定値Hcを図11に示す。比較のため、ラインAの保磁力の実測値HcとラインBの保磁力の実測値Hcを重ね書きする。算出した保磁力の推定値HcとラインAの保磁力の実測値Hcは良く一致しており、酸化被膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板の試験体の計測結果をもとに、酸化被膜無しの試験体の保磁力Hcを推定できることが確認される。
次に、前記標品の硬さHvと酸化被膜の無い状態の鋼板の保磁力の推定値Hcとの相関関係を評価する。
手順(D)においては、上記の相関関係に基づいて手順(A)における前記焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcから焼入れ加工後の鋼板の硬さHvを導く。
以下に焼入れ加工後の鋼板の硬さHvの測定の一例を示す。図5に示したように、硬さHvと酸化被膜の無い状態の鋼板の保磁力の実測値Hcには線形の相関がある。そこで、酸化被膜の無い状態の鋼板の保磁力の実測値Hcの値として、酸化被膜の無い状態の鋼板の保磁力の推定値Hcを用い、Hcに対応する硬さHvの値を、図5に示した線形の相関式から導く。
以上の手順(A)(B)(C)(D)の方法を用いることにより、焼入れ状態を変え、酸化被膜を除去した標品の相関データをあらかじめ揃えておけば、測定対象の鋼板が酸化被膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板であっても、硬さHvの非破壊での測定が可能である。
上記のとおりの本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法を実施するための測定装置について、以下に図に基づいて詳細に説明する。
図12は、本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置の模式図である。また、図13は、本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置の各部の関係を示したブロック図である。
図12に例示したように、本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置は、
(1)2つの端部を測定対象である焼入れ加工後の鋼板に接触させることで閉磁回路を形成するU字ヨークと、電流が流れることで電磁石となる励磁コイルと、および磁束が変化することで生じる電圧を検出して閉磁回路外に送る検出コイルとを有する磁気プローブと、
(2)前記励磁コイルに電流を供給して励磁する電源と、
(3)前記検出コイルによって検出された電圧のシグナルを記録するデータ集録装置と、
(4)前記データ集録装置に記録されたデータを取り込み、前記磁気プローブを用いて測定した手順(A)における前記焼入れ加工後の鋼板の磁気特性と、手順(B)<1>における前記標品の硬さHvおよび保磁力Hcと、手順(B)<2>における前記標品の表面と磁気プローブとの間に非磁性材を介在させてギャップ幅wを変動させた場合の標品の保磁力Hcの測定値から、手順(B)<3>における前記ギャップ幅効果による補正値αを算出して、前記焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcに補正値αを加算し、酸化被膜もしくはめっき膜の無い状態の焼入れ加工後の鋼板の保磁力の推定値Hcを算定し、手順(B)<4>における前記標品の硬さHvと保磁力の推定値Hcとの相関関係に基づいて、手順(C)における前記焼入れ加工後の鋼板の保磁力から焼入れ加工後の鋼板の硬さHvを導き、かつ、前記電源が前記励磁コイルに供給する電流量を制御する演算装置とを備えることを特徴としている。
前記磁気プローブにおいては、U字ヨークの略中央部分に励磁コイルが巻き付けられており、さらにU字ヨークの一方の腕部に検出コイルが巻き付けられている。励磁コイルには、電流制御機能を備える電源が電気的に接続されており、検出コイルには、電圧を増幅するアンプと、不要な周波数の信号をカットすることができる波形調整フィルタとが電気的に接続されている。波形調整フィルタは、信号を記録することができるデータ集録ユニットと電気的に接続されており、このデータ集録ユニットはさらにアナログ信号からデジタル信号へと信号を変換するためのA/D変換器を介して、PCなどの演算装置と電気的に接続されている。演算装置は、A/D変換器を介してデータ集録ユニットから取り込まれた電圧の信号を取り込んで、演算装置に組み込まれた波形解析ソフトウェアによって、B−H曲線を作成し、さらに、このB−H曲線から、残留磁束密度Brや保磁力Hcの値を算出することができる。また、演算装置には電流量を経時的に変化させるためのプログラムが組み込まれており、演算装置からのデジタル信号をアナログ信号へと変換するためのD/A変換器を介して、電源と電気的に接続されている。電源は、演算装置からの信号に基づいて、励磁コイルに供給する電流量を実際に調節、制御することができる。
U字ヨークとしては、例えば、純鉄などの磁性金属製のものが例示される。
また、波形調整フィルタとしては、所望の帯域の電気信号を減衰させない限り特に制限されないが、例えば、市販のローパスフィルタなどが例示される。
このような焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置の実施形態としては、例えば、図12に示すように、純鉄製のU字ヨークに励磁コイルをN=120巻、検出コイルをN=40巻した磁気プローブを備えている硬さ測定装置が例示される。前記磁気プローブの前記U字ヨークの両端部を、測定対象である鋼板の表面に面接触させ、前記励磁コイルには、バイポーラ定流電源から1Hzの三角波電流Iを流し、検出コイルに発生した電圧Vをアンプ(500倍)とフィルター(40Hzローパスフィルタ)を通し、AD変換器(16ビット)を経由して演算装置であるPCに取り込んだ。PC上で波形解析ソフトウェアのLabVIEWプログラムを用いて、次式により磁束密度Bと磁場Hを算出し、B−H曲線を求めることができる。
B=(1/N2S)・∫VBdt (5)
H=(N1/L)・I (6)
バイポーラ定流電源から、励磁コイルに流す三角波電流Iとしては、例えば、0.1Hz以上1.0Hz以下の範囲が例示される。三角波電流Iが上記の範囲内であれば、S/N比の良好な測定結果が得られ、また、測定時間についても実用上問題ない範囲に収まる。
本実施形態におけるU字ヨークは、磁路長L=28.55mm、ヨーク断面積S=8.64mmである。
図14は、図12における測定装置の磁気プローブの一実施形態を示した概略図である。前記磁気プローブは、先端部に、前記励磁コイルおよび前記検出コイルを備える純鉄製の前記U字ヨークを備えるとともに、ばねの弾性力によって前記U字ヨークの前記2つの端部を測定対象である前記鋼板表面に押圧して密着させることを可能とするバネ機構、および軸受部が回動自在な軸受機構のうちの少なくともいずれか一方の機構を備える軸体を備えている。
図14(a)の概略斜視図に示すように、本発明の測定装置の磁気プローブは、耐熱樹脂製のヨークホルダーに挟みこまれるように取り付けられており、このヨークホルダーは、金属製の測定台に埋設されたグラブスクリューセットのパッド部に開けられた貫通孔であるキリ孔を介して、前記ヨークホルダーと前記グラブスクリューセットとが固定ねじによりネジ留め固定されている。また、前記ヨークホルダーの側面部に設けられた、断面中空のシャフトの中空部には、前記磁気プローブの検出コイルと電気的に接続されている導線が挿通されており、アンプおよび波形調整フィルタと電気的に接続されている(図13参照)。
また、図14(b)の断面図に示すように、前記パッド部の下面とワッシャの間にばねが取り付けられており、このばねの弾性力によって、前記磁気プローブの前記U字ヨークの前記2つの端部を測定対象である鋼板および鋼板成形品の表面に押圧して密着、面接触させることが可能である。さらに、前記グラブスクリューセットの前記パッド部の下方には、回動自在な軸受部が設けられており、前記軸受部を中心として、前記パッド部と固定された前記ヨークホルダーが様々な角度に可動する。
前記軸受部としては、例えば、球体軸受やポールジョイント軸受などが例示される。
本実施形態における測定装置の磁気プローブでは、測定対象である鋼板および鋼板成形品の測定地点を、測定台に取り付けられた磁気プローブに、上方から押し当てて面接触させることによって、硬さ測定を行うことができる。なお、測定台に取り付ける磁気プローブの数は少なくとも1つであればよく、複数取り付けた態様も好ましく考慮される。
また、磁気プローブに鋼板および鋼板成形品を押し当てる工程は、測定者の手を介して行ってもよいし、ロボットアームなどの設備を用いて自動化してもよい。
このような磁気プローブを備えていることにより、本発明の硬さ測定装置は、鋼板表面とU字ヨークとで形成される閉磁回路において、物理的なギャップと磁気的ギャップの両方を解消し、しかも複雑な形状を有する鋼板成形品の硬さ測定時であっても、軸受部が回動することにより鋼板表面とU字ヨークとの面接触が維持可能である。
なお、本発明の測定装置の磁気プローブの構成は、上記の一実施形態によって何ら限定されるものではなく、ハンディータイプの磁気プローブであってもよいし、ロボットアームの先端部に磁気プローブが取り付けられ、自動化された態様なども考慮される。
図15(a)は、ダイクエンチ鋼板成形品の外形と磁気プローブを面接触させて磁気特性を測定した地点を示す模式図である。図15(b)は、ダイクエンチ鋼板成形品を連続的に製造する過程において、図14に示す磁気プローブを備えた測定装置を用いて、(a)で示した地点の保磁力を測定した結果を示すグラフである。
本発明の硬さ測定装置を用いた測定試験の一例として、図15(a)に示すように、断面概略矩形波形状を有するダイクエンチ鋼板成形品(厚さ2mm)を、連続的に100個成形と同時焼入れ加工して試験体とした。1番目の試験体から60番目の試験体については、硬さが良品の基準に達するよう、加熱炉で850℃に加熱した後10秒間金型冷却することにより焼き入れを行った。一方、61番目の試験体から100番目の試験体については、硬さが良品の基準に達しないように焼入れ条件を、740℃に加熱、4秒間金型冷却に変更した。得られた100個の試験体について、本発明の硬さ測定装置を用いて、鋼板成形品の立設面である測定地点1、2における保磁力Hcを測定し、硬さHvを導いた。
図15(b)に示すように、1番目の試験体から60番目の試験体については、保磁力Hcの値が650A/m付近に集中しており、この保磁力Hcから導いた試験体の硬さHvは520前後の値を示した。一方、61番目の試験体から100番目の試験体については、保磁力Hcおよび硬さHvの値が大きく減少し、硬さ不良を明確に検知可能であることが確認された。
このような結果から、ダイクエンチ鋼板成形品の生産工程において、同一製品の同一部位における保磁力Hcを測定し、その傾向値を管理することによって、製品の全量検査が可能となる。しかも、測定誤差の少ない高度な製品管理を実現できることが確認される。
また、本発明の測定装置は、焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置であって、
(1)2つの端部を測定対象である焼入れ加工後の鋼板に接触させることで閉磁回路を形成するU字ヨークと、電流が流れることで電磁石となる励磁コイルと、および磁束が変化することで生じる電圧を検出して閉磁回路外に送る検出コイルとを有する磁気プローブと、
(2)前記励磁コイルに電流を供給して励磁する電源と、
(3)前記検出コイルによって検出された磁束が変化することで生じる電圧のシグナルを記録するデータ集録装置と、
(4)前記データ集録装置に記録されたデータを取り込み、焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcから鋼板の硬さHvを導く演算装置とを備え、
前記磁気プローブは、先端部に、前記励磁コイルおよび前記検出コイルを備える純鉄製の前記U字ヨークを備えるとともに、ばねの弾性力によって前記U字ヨークの前記2つの端部を測定対象である前記鋼板表面に押圧して密着させることを可能とするバネ機構、および軸受部が回動自在かつ回転自在な軸受機構のうちの少なくともいずれか一方の機構を備える軸体を備えている焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定装置も提供する。硬さ測定装置の他の実施形態と共通する構成についての説明は省略する。
なお、上記の実施形態においては、焼入れ加工後の鋼板として、特にダイクエンチ鋼板を用いているが、本発明の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法および測定装置の本質は、磁気プローブと測定対象の鋼板表面とのギャップ効果を補正する点にあることから、高周波焼入れなど他の焼入れ部材の硬度評価でも有効である。さらに、亜鉛めっきやアルミニウムめっきなどのめっき被膜を有する鋼板の焼入れ加工後の鋼板の硬さについても、本発明の硬さ測定方法を適用することができるため、応用可能な範囲は広い。

Claims (2)

  1. 少なくとも次の手順(A)(B)(C)(D)を含むことを特徴とする酸化被膜もしくはめっき膜を有する状態の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法。
    (A)前記焼入れ加工後の鋼板の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定する;
    (B)前記焼入れ加工後の鋼板と実質的に同質の鋼板であって、複数の異なる焼入れ条件で焼入れ加工し、酸化被膜もしくはめっき膜を完全に除去した複数の標品の各々について、
    <1>前記標品の硬さHvおよび保磁力Hcを測定し、前記標品の硬さHvと保磁力Hcとの相関関係を評価し、
    <2>前記標品の表面と磁気プローブとの間に非磁性材を介在させてギャップ幅w(ギャップ幅0を含む)を変動させた場合の標品の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brを測定し、
    <3>前記標品の保磁力Hcおよび残留磁束密度Brとギャップ幅wとの関係を評価する;
    (C)焼入れ加工後の鋼板について、保磁力Hcの実測値に、ギャップ幅効果による補正値αを加算し、酸化被膜もしくはめっき膜の無い状態の焼入れ加工後の鋼板の保磁力の推定値Hcを算定する;
    (D)酸化被膜もしくはめっき膜の無い鋼板の保磁力の実測値Hcの値として、推定値Hcを用い、Hcに対応する硬さHvの値を前記標品における硬さHvと保磁力Hcとの相関関係から導く。
  2. 前記焼入れ加工後の鋼板が、鋼板の焼入れと金型成形を同時に行うダイクエンチ工法によって製造される鋼板成形品であることを特徴とする請求項1に記載の焼入れ加工後の鋼板の硬さ測定方法。
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