JP6284834B2 - 水性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は水性エポキシ樹脂組成物に関する。より詳細には、貯蔵安定性に優れ、低温硬化性が良好な水性エポキシ樹脂組成物に関する。
従来、グリシジルエーテル基等のエポキシ基を含有する化合物と、1級および2級アミノ基を有する化合物の水分散体を混合して塗料とした場合、グリシジルエーテル基とアミノ基の反応が室温でも進行し長期間保管すると塗料の粘度が上昇するため使用できなくなる問題があった。
そこでそれらを改善するため、エポキシ化合物を含有する水性分散体と、水に難溶性の微粉体ジヒドラジド化合物の潜在硬化剤からなることを特徴とする一液加熱硬化型水性エポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、エポキシ樹脂やグリシジルエーテル基含有ノボラックフェノール樹脂と1級水酸基を有する1級または2級アミン化合物およびフェノール性水酸基を有するフェノール化合物を反応させアミノ基およびエポキシ基を含有しない樹脂を主成分とした水性塗料用樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
特開平11−293092号公報 特開平06−122850号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術では、貯蔵安定性はある程度改善されたものの、完全硬化には200℃以上の高い温度が必要であったり、また、上記特許文献2の技術では、硬化後の塗膜の耐水性に劣るとの問題があり、これらを解決することが、とくに塗料用途において切望されていた。
本発明の目的は、長期間の貯蔵安定性と低温硬化性が良好で、かつ優れた耐水性を塗膜に与える水性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
なお、本発明における貯蔵安定性に優れるとは、60℃で静置したとき、粘度変化が小さいこと、低温硬化性に優れるとは140℃、20分の焼き付け塗膜が、密着性に優れること、また、耐水性に優れるとは塗膜の水への浸漬時に膨れが小さいことを意味し、それぞれは後述の方法により評価することができる。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(A)と、1級および/または2級アミノ基含有化合物(B)並びに炭酸(塩)(C1)からなる硬化剤(D)とを、水性媒体中に含有し、(A)と(D)との当量比[(A)/(D)]が0.3〜1.5である水性エポキシ樹脂組成物(X);該組成物を硬化させてなる塗膜である。
本発明の水性エポキシ樹脂組成物(X)は下記の効果を奏する。
(1)貯蔵安定性に優れる。
(2)低温硬化性が良好である。
(3)該組成物を硬化させてなる塗膜は耐水性に優れる。
[エポキシ樹脂(A)]
本発明におけるエポキシ樹脂(A)は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであり、芳香環含有ポリエポキシド(A1)、脂肪族ポリエポキシド(A2)、脂環含有ポリエポキシド(A3)および複素環含有ポリエポキシド(A4)等が挙げられる。
芳香環含有ポリエポキシド(A1)としては、2価〜10価またはそれ以上の、多価フェノールのポリグリシジルエーテル(A11)、芳香環含有ポリグリシジルアミン(A12)、その他の芳香環含有ポリエポキシド(A13)およびこれらの混合物が挙げられる。
多価フェノールのポリグリシジルエーテル(A11)を構成する多価フェノールとしては、2価〜10価またはそれ以上の、炭素数(以下Cと略記)6以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述の条件でのゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]10,000以下の多価フェノール(ビスフェノールA、−F、−B、−ADおよび−S、ハロゲン化ビスフェノールA、ピロガロール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等)が挙げられ、それらのポリグリシジルエーテルとしては、ビスフェノールA型ポリグリシジルエーテル(ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルまたはそれ以上との反応から得られるポリグリシジルエーテル)、ビスフェノールF型ポリグリシジルエーテル、ビスフェノールS型ポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型ポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型ポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
その他の2価〜10価またはそれ以上のポリグリシジルエーテルとしては、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒドもしくはホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル、レゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
芳香環含有ポリグリシジルアミン(A12)を構成する芳香環含有アミンとしては、例えば、C6〜30の芳香環含有1価〜4価またはそれ以上の芳香環含有ポリアミン(アニリン、1,3−および/または1,4−フェニレンジアミン、2,4−および/または2,6−トリレンジアミン等)が挙げられ、それらのポリグリシジルアミンとしては、ジグリシジルアミン[N,N−ジグリシジルアニリン等]、テトラグリシジルまたはそれ以上のポリグリシジルアミン[1,3−および/または1,4−フェニレンテトラグリシジルアミン、2,4−および/または2,6−トリレンテトラグリシジルアミン、4,4’−ジフェニルメタンテトラグリシジルアミン、m−および/またはp−キシリレンテトラグリシジルアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンテトラグリシジルアミン等]が挙げられる。
さらに、その他の芳香環含有ポリエポキシド(A13)としては、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略記)またはジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)とグリシドールとの付加反応によって得られるジグリシジルウレタン化合物、TDIまたはMDIにグリシドールおよびポリオールを反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマー、ビスフェノールAのアルキレンオキシド(以下AOと略記)[エチレンオキシド(以下EOと略記)またはプロピレンオキシド(以下POと略記)]付加物のジグリシジルエーテルが挙げられる。
脂肪族ポリエポキシド(A2)としては、2〜8価の、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル(A21)、脂肪族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル(A22)および脂肪族ポリグリシジルアミン(A23)およびこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル(A21)を構成する多価アルコールとしては、C2以上かつMn1,000以下の多価アルコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下それぞれEG、PG、TMG、PEG、PPG、TMP、GR、PE、SOと略記)等]が挙げられ、それらのポリグリシジルエーテルとしては、ジグリシジルエーテル[EGジグリシジルエーテル、PGジグリシジルエーテル、TMGジグリシジルエーテル、PEG(Mn100〜1,000)ジグリシジルエーテル、PPG(Mn100〜1,500)ジグリシジルエーテル等]、トリグリシジルエーテル[TMPトリグリシジルエーテルおよびGRトリグリシジルエーテル等]、4価以上のポリグリシジルエーテル[PEテトラグリシジルエーテル、SOポリグリシジルエーテル、SOポリグリシジルエーテル、ジPEポリグリシジルエーテル、ポリ(重合度2〜20)GRポリグリシジルエーテル等]等が挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル(A22)を構成する脂肪族ポリカルボン酸としては、2〜6価でC4〜24の脂肪族ポリカルボン酸[コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ブタンテトラカルボン酸、(メタ)アクリル酸等]が挙げられ、それらのポリグリシジルエステルとしては、ジグリシジルエステル[コハク酸ジグリシジル、アジピン酸ジグリシジル、セバシン酸ジグリシジル、アゼライン酸ジグリシジル等]、テトラグリシジルエステル[ブタンテトラカルボン酸テトラグリシジル等]、不飽和カルボン酸グリシジルエステル[(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等]が挙げられる。また、脂肪族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルとしては、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステルの重合体および共重合体も挙げられる。
脂肪族ポリグリシジルアミン(A23)としては、2〜6価でC2〜24の脂肪族アミンのポリグリシジルアミン、例えばエチレンジアミンのテトラグリシジルアミンが挙げられる。
脂環含有ポリエポキシド(A3)としては、2〜6価でC6〜36の脂環含有化合物のポリエポキシドが挙げられ、脂環含有不飽和炭化水素のポリエポキシドとしては、C6〜24で1分子中に2個またはそれ以上の二重結合を有する炭化水素のポリエポキシド[ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等]、脂環含有エーテルおよび脂環含有エステルのポリエポキシド[ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EGビスエポキシジシクロペンチルエール、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等]、前記芳香環含有ポリエポキシドの核水添物も含まれる。
複素環含有ポリエポキシド(A4)としては、2〜6価でC5〜30のもの、例えばトリスグリシジルメラミン等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂(A)のうち、後述の水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性および塗膜の耐水性の観点から、好ましいのは芳香環含有ポリエポキシド(A1)、さらに好ましいのは多価フェノールのポリグリシジルエーテル(A11)、とくに好ましいのはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラックおよびクレゾールノボラック型ポリグリシジルエーテルである。
エポキシ樹脂(A)のMnは、塗膜の耐水性および低温硬化性の観点から、好ましくは100〜20,000、さらに好ましくは200〜10,000、とくに好ましくは300〜7,000、最も好ましくは400〜4,000である。
本発明におけるMnは、次の条件でのGPC法により測定される。
装置 :「Alliance」日本ウォーターズ(株)製
カラム :Guardcolumn Super H−L
TSKgel Super H4000
TSKgel Super H3000
TSKgel Super H2000
(上記カラムを直列に接続する。)
溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
基準物質 :ポリスチレン
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液
測定温度 :40℃
(A)中のエポキシ基の数は、塗膜の耐水性および水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性の観点から好ましくは2〜30、さらに好ましくは2〜10である。
(A)のエポキシ当量(単位:g/eq。以下において数値のみを示す。)は、水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性および塗膜の耐水性の観点から好ましくは50〜10,000、さらに好ましくは100〜2,000である。
[1級および/または2級アミノ基含有化合物(B)]
本発明における1級および/または2級アミノ基含有化合物(B)は、塗膜の耐水性および水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性の観点から、1級および/または2級アミノ基を1分子中に好ましくは2〜15個、さらに好ましくは3〜8個有する。
(B)の活性水素当量(活性水素1個当たりの分子量、単位:g/eq。以下において数値のみを示す。)は、塗膜の耐水性および水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性の観点から好ましくは25〜5,000、さらに好ましくは50〜2,500である。
(B)としては、下記の(B1)〜(B6)、およびこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
(B1)ポリアミン
(B1)としては下記(B11)〜(B14)が挙げられる。
(B11)脂肪族ポリアミン(C2〜18)
〔1〕脂肪族ポリアミン〔C2〜6のアルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン)、ポリアルキレン(C2〜C6)ポリアミン[例えば、ジエチレントリアミン、トリメチレンテトラミン、テトラメチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン]〕
〔2〕これらのアルキル(C1〜4)置換体〔例えば、ジアルキル(C1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン〕
〔3〕脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン〔例えば、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン〕
〔4〕芳香環含有脂肪族アミン(C8〜15)(例えば、キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミン)
(B12)脂環式ポリアミン(C4〜15)
1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)
(B13)複素環式ポリアミン(C4〜15)
ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン
(B14)芳香族ポリアミン(C6〜20)
〔1〕非置換芳香族ポリアミン
1,2−、1,3−および1,4−フェニレンジアミン、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリアミン、ナフチレンジアミン
〔2〕核置換アルキル基〔メチル、エチル、n−およびi−プロピル、ブチル等のC1〜C4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミン
2,4−および2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレンおよびこれらの異性体の混合物
〔3〕イミノ基を有する芳香族ポリアミン[上記〔1〕〜〔2〕の芳香族ポリアミンの−NH2の一部または全部が−NH−R’(R’はアルキル基、例えばメチル、エチル等の
低級アルキル基)で置き換ったもの]
4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼン
アルカノールアミン(B2)は、C2以上かつMn3,000以下のもので、少なくとも1個の水酸基を有し、さらに少なくとも1個の1級アミノ基および/または少なくとも2個の2級アミノ基を有する化合物である。
(B2)には、C2〜20のヒドロキシルアミン、前記アミン化合物(B1)のアルキレンオキシド(以下AOと略記)付加物、およびこれらの混合物等が含まれる。
ヒドロキシルアミンとしては、C2〜20のもの、例えば水酸基が1個のもの〔アミノ基を有するもの[例えばモノエタノールアミン、イソプロパノールアミン]、アミノ基およびイミノ基を有するもの[例えば2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール]等〕が挙げられる。
アミン化合物のAO付加物としては、C3以上かつMn3,000以下のもの、例えば、脂肪族アミン[C1〜10、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−およびi−プ
ロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン]、芳香族アミン[C6〜12、例えば、アニリン、トルイジン、キシリレンジアミン]、脂環含有アミン[C4〜10、例えば、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン]、複素環含有アミン[C4〜10、例えば、ピペラジン]および前記ヒドロキシルアミンのAO付加物が挙げられる。AO付加
モル数は1〜10モルが好ましい。
AOには、C2〜12またはそれ以上(好ましくはC2〜4)のAO、例えばエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−、2,3−および1,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランおよび3−メチル−テトラヒドロフラン、1,3−プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、C5〜12のα−オレフィンオキシド、置換AO、例えばスチレンオキシド、並びにこれらの2種以上の併用(ランダム付加および/またはブロック付加)が含まれる。
上記(B2)のうち、塗膜の耐水性の観点から好ましいのは、C2〜20のヒドロキシルアミンのうちの1級アミノ基を有するもの、および1級アミノ基を有するものと2級アミノ基を有するものとの併用、さらに好ましいのはモノエタノールアミン、イソプロパノールアミンである。
(B3)エポキシ付加ポリアミン
Mn400〜20,000のもの、例えば前記エポキシ樹脂(A)1当量と前記(B1)1.1〜2当量またはそれ以上の反応物(ビスフェノールA型ポリグリシジルエーテル1モルとキシリレンジアミン2モルの付加反応物、ビスフェノールA型ポリグリシジルエーテル1モルとジエチレントリアミン1.5モルの付加反応物、クレゾールノボラック型ポリグリシジルエーテル1モルとエチレンジアミン3モルの付加反応物等);
(B4)ポリアミドアミン
Mn200〜20,000のもの、例えばジカルボン酸(テレフタル酸等)と過剰(カルボキシル基1当量当たり1.1〜2当量)の前記(B1)(ヘキサメチレンジアミン等)との縮合反応により得られるポリアミドアミン;
(B5)ポリエーテルポリアミン
Mn4,000〜20,000のもの、例えばポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール等)のシアノエチル化物の水添化物;
(B6)シアノエチル化ポリアミン
Mn1,000〜20,000のもの、例えばアクリロニトリルと前記(B1)(アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン等)の反応物。
上記(B)のうち、水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性および塗膜の耐水性の観点から、好ましいのは(B1)、(B3)、(B4)、さらに好ましいのは(B1)、(B3)、とくに好ましいのは(B3)である。
[中和剤(C)]
本発明における中和剤(C)としては、下記の(C1)〜(C3)およびこれらの混合物が挙げられる。
(C1)炭酸(塩)
(C1)としては、例えば炭酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムが挙げられる。ここにおいて炭酸(塩)は炭酸および/または炭酸塩を意味する。なお、炭酸とは後述の水性媒体中に炭酸ガス(二酸化炭素)を溶解させることで生じるものである。(C1)のうち、好ましいのは炭酸である。
(C2)カルボン酸(塩)
(C2)は、C1〜10(好ましくはC1〜4)のカルボン酸(塩)であり、下記(C21)〜(C23)が挙げられる。ここにおいてカルボン酸(塩)とはカルボン酸および/またはカルボン酸塩を意味する。
(C21)カルボン酸
(C21)としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、没食子酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、ピルビン酸、アコニット酸が挙げられる。
(C22)カルボン酸アンモニウム塩
(C22)としては、前記(C21)のアンモニウム塩が挙げられる。
(C23)カルボン酸金属塩
(C23)としては、前記(C21)のトリウム塩、チタン塩、マンガン塩、タンタル塩、亜鉛塩、クロム塩、鉄塩、カドミウム塩、コバルト塩、ニッケル塩、スズ塩、鉛塩、銅塩等が挙げられる。
(C3)(C1)以外の無機酸(塩)
(C3)としては、例えば塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム等が挙げられる。
上記(C)のうち、後述の水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性、低温硬化性、塗膜の耐水性の観点から好ましいのは(C1)、(C21)、(C22)、(C3)、さらに好ましいのは(C1)、(C21)、(C22)、とくに好ましいのは(C1)、(C22)、最も好ましいのは(C1)である。
[硬化剤(D)]
本発明における硬化剤(D)は前記1級および/または2級アミノ基含有化合物(B)並びに前記中和剤(C)からなる。
該(D)の形態としては次の(1)、(2)等が挙げられる。
(1)(B)と(C)とを、例えば水性媒体中で、混合してなる反応物および/または解離したもの[後述の硬化剤(D)の水性組成物(D0)]。
(2)(B)と(C)とを、例えば水性媒体中で、混合した後、水性媒体を除去したもの。
上記(1)、(2)のうち、工業上の観点から好ましいのは(1)である。
また、(B)の炭酸(塩)(C1)による中和率は、水性エポキシ樹脂組成物(X)の貯蔵安定性および塗膜の耐水性の観点から、好ましくは80〜120%、さらに好ましくは90〜110%、とくに好ましくは95〜105%である。
ここにおいて該中和率(%)は、次式にて算出できる。
中和率(%)=100×[(α)の合計]/[(β)の合計]
但し、
(α)=[炭酸(塩)(C1)が有する酸の価数]×[炭酸(塩)(C1)の重量]/[炭酸(塩)(C1)の分子量]
(β)=[(B)が有する1、2、および3級アミノ基の数]×[(B)の重量]
/[(B)の分子量]
[水性媒体]
本発明における水性媒体としては、公知の水性媒体、例えば、水および親水性有機溶媒[C1〜4の低級アルコール(メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等)、C3〜6のケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、C2〜6のグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール等)およびそのモノアルキル(C1〜2)エーテル、並びにジメチルホルムアミド等]等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。水性媒体のうち、安全性等の観点から好ましいのは、水、および水と親水性有機溶媒の混合溶媒であり、さらに好ましいのは水である。
[水性エポキシ樹脂組成物(X)]
本発明の水性エポキシ樹脂組成物(X)は、前記エポキシ樹脂(A)と、前記硬化剤(D)とを、水性媒体中に含有してなる。
該(X)の具体的な製造方法としては、例えば(A)の水性組成物(A0)と(D)の水性組成物(D0)とを混合する方法、(A)の水性組成物(A0)と(D)とを混合する方法が挙げられる。
前記エポキシ樹脂(A)の水性組成物(A0)は、例えば以下の方法により得られる。
[i]エポキシ樹脂(A)に、必要により有機溶剤を加えて、さらに必要により界面活性剤を加えたものを、例えば35〜45℃で撹拌しながら、水性媒体を徐々に加え転相乳化する。次に、必要に応じて加熱しながら減圧することで、有機溶剤を留去してエポキシ樹脂(A)の水性分散体(A01)を得る。
[ii]必要により有機溶剤を加えた(A)に、必要により界面活性剤を添加した水性媒体を加えて、通常の分散機により分散させ、必要に応じて有機溶剤を留去して、(A)の水性分散体(A01)を得る。
[iii]エポキシ樹脂(A)と水性媒体とを混合し、必要により有機溶剤、界面活性剤を加えてエポキシ樹脂(A)の水性媒体溶液(A02)を得る。
上記[i]〜[iii]のうち、工業上の観点から好ましいのは[i]の方法である。
前記硬化剤(D)の水性組成物(D0)は、例えば以下の方法により得られる。
[i]前記(B)と(C)とを、必要により有機溶剤、界面活性剤を加えた水性媒体中で撹拌、混合して、硬化剤(D)の水性分散体(D01)を得る。
[ii]前記(B)と(C)とを、必要により有機溶剤、界面活性剤を加えた水性媒体中で、撹拌、混合して、硬化剤(D)の水性媒体溶液(D02)を得る。
[iii]硬化剤(D)に、必要により有機溶剤、界面活性剤を加えて、例えば35〜45℃で撹拌しながら、水性媒体を徐々に加え転相乳化する。次に、必要に応じて加熱しながら減圧することで、有機溶剤を留去して硬化剤(D)の水性分散体(D01)を得る。
[iv]硬化剤(D)に、必要により有機溶剤、界面活性剤を加えた水性媒体を加えて、通常の分散機により分散させ、必要に応じて有機溶剤を留去して、(D)の水性分散体(D01)を得る。
上記[i]〜[iv]のうち、工業上の観点から好ましいのは[i]、[ii]の方法である。
上記製造方法における有機溶剤としては、C2〜10(好ましくはC4〜10)のもの、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル等が挙げられる。これらのうち、脱溶剤の観点から好ましいのはテトラヒドロフランおよび酢酸エチルである。
上記(A0)の製造および(D0)の製造、いずれの方法においても、本発明の効果を阻害しない範囲で有機溶剤は残存してもよいが、貯蔵安定性の観点から有機溶剤は留去することが好ましい。
なお、(A0)、(D0)が、それぞれ(A)、(D)の水性分散体である場合、該メジアン粒子径(単位:μm。以下において数値のみを示すことがある)は、(X)のハンドリング性および貯蔵安定性の観点から、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜20である。該メジアン粒子径は、光散乱理論を応用したレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置[商品名「LA−700」、(株)堀場製作所製]を用いて測定できる。後述の実施例におけるメジアン粒子径は上記方法に従った。
本発明の水性エポキシ樹脂組成物(X)の重量に基づく、(A)と(D)との合計重量は、工業上および塗装性の観点から、好ましくは30〜70%、さらに好ましくは35〜65%、とくに好ましくは40〜60%である。
なお、(X)の重量に基づく、(A)および(D)の合計重量は、必要により水性媒体を加える、または留去することで適宜調整できる。
また、(A)と(D)との当量比[(A)/(D)]は塗膜の耐水性の観点から0.3〜1.5が好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.2、とくに好ましくは0.9〜1.1である。該当量比[(A)/(D)]は、(A)のエポキシ当量と、(D)を構成する(B)の活性水素当量とから算出できる。
[添加剤(E)]
本発明の水性エポキシ樹脂組成物(X)には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、界面活性剤、充填剤、防腐剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、着色剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、粘弾性調整剤および動的表面張力調整剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(E)を含有させることができる。
なお、該(E)は、上記(X)の製造工程の任意の段階で添加することができる。
添加剤(E)全体の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常30%以下、好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.2〜10%である。
界面活性剤(E1)としては、公知の非イオン、アニオンおよび/またはカチオン性界面活性剤が挙げられる。
(E1)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.1〜3%である。
充填剤(E2)としては、炭酸ナトリウム、シリカ等が挙げられる。
(E2)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.1〜3%である。
防腐剤(E3)としては、メチルパラベン、エチルパラベン等が挙げられる。
(E3)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.1〜3%である。
耐熱安定剤(E4)としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ジオクタデシル−3,3’−チオジプロピオナート等が挙げられる。
(E4)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.1〜3%である。
耐候安定剤(E5)としては、紫外線吸収剤、例えばサリチル酸化合物(フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等)、ベンゾフェノン(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾール化合物[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、シアノアクリレート化合物(2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等);光安定剤、例えばヒンダードアミン[オクチル化ジフェニルアミン、等]が挙げられる。
(E5)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.5〜3%である。
着色剤(E6)には顔料および染料が含まれる。顔料のうち、無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、フェライト等;有機顔料としてはアゾ顔料(アゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系等)、多環式顔料(ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系等)が挙げられる。
染料としては、ニグロシン系、アニリン系等が挙げられる。
(E6)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常30%以下、好ましくは1〜10%である。
増粘剤(E7)としては、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等が挙げられる。
(E7)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.1〜5%である。
レベリング剤(E8)としては、Mnが好ましくは100〜1,000の、ポリオレフィン樹脂[ポリエチレン、ポリプロピレン等]、オレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体[エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等]、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
(E8)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常6%以下、好ましくは0.5〜3%である。
消泡剤(E9)としては、ミネラルオイル消泡剤、シリコーンオイル消泡剤等が挙げられる。
(E9)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常6%以下、好ましくは0.5〜3%である。
粘弾性調整剤(E10)としては、高分子型(Mn10,000〜500,000のもの、例えばポリカルボン酸、ポリスルホン酸、ポリエーテル変性カルボン酸、ポリエーテル)、会合型(Mn10,000〜500,000のもの、例えばウレタン変性ポリエーテル)が挙げられる。
(E10)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.1〜5%である。
動的表面張力調整剤(E11)としては、アセチレングリコール、フッ素含有化合物シリコーン含有化合物等が挙げられる。なお、動的表面張力調整剤とは、表面張力を低下させる機能を有するものである。
(E11)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常20%以下、好ましくは0.1〜10%である。
密着性付与剤(E12)としては、シランカップリング剤等が挙げられる。
(E12)の含有量は、添加剤添加後の水性エポキシ樹脂組成物(X)の全重量に基づいて、通常5%以下、好ましくは0.05〜1%である。
[塗膜]
本発明の塗膜は、前記水性エポキシ樹脂組成物(X)を硬化させてなる。該(X)は、従来の水性塗料用塗装設備、または溶剤塗料用塗装設備である、スプレー塗装機を使用して塗装することができ、新規の設備を必要としない。
塗装方法としては、被塗装物に対して、前記(X)を、ウェット膜厚(塗布直後の膜厚)が、塗装効果および工業上の観点から好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは20〜100μmとなるようにスプレー塗布する方法が挙げられる。
塗装された被塗装物は、塗膜硬化性および工業上の観点から好ましくは100〜180℃、さらに好ましくは120〜160℃の硬化温度条件で、また、同様の観点から好ましくは5〜60分、さらに好ましくは8〜30分、とくに好ましくは10〜20分の硬化時間で塗膜を形成させることができる。
硬化後塗膜の膜厚は、塗装効果および工業上の観点から好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは15〜50μmである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
[エポキシ樹脂(A)の水性組成物(A0)の製造]
製造例1
容器にエポキシ樹脂(A−1)[ビスフェノールA型ポリグリシジルエーテル、商品名「JER828」、三菱化学(株)製、Mn500、エポキシ当量200、以下同じ]48.8部を加えて溶解させ、これに界面活性剤(E−1)[スチレン化フェノールEO17モル付加物、商品名「サンスパールST−36」、三洋化成工業(株)製、以下同じ]2.4部を添加し、40℃で30分間撹拌した。その後、同温度で水48.8部を2時間かけて滴下して転相乳化させることで、(A−1)の水性組成物(A0−1)(固形分濃度51.2%)を得た。(A0−1)中の粒子のメジアン粒子径は0.3μmであった。
製造例2
容器にエポキシ樹脂(A−2)[ポリエチレングリコールポリグリシジルエーテル、商品名「デナコールEX−810」、ナガセケムテックス(株)製、Mn200、エポキシ当量100、以下同じ]80部を加え、40℃で水20部を加えて溶解させることで(A−2)の水性組成物(A0−2)(固形分濃度80.0%)を得た。(A0−2)は水性媒体溶液であった。
製造例3
容器に酢酸エチル5.0部を仕込み、エポキシ樹脂(A−3)[クレゾールノボラック型ポリグリシジルエーテル、商品名「EOCN−104S」、日本化薬(株)製、Mn2,000、エポキシ当量200、以下同じ]43.2部を加えて溶解させ、これに界面活性剤(E−2)[ビスフェノールAのEO18モル付加物、商品名「ニューポールBPE−180」、三洋化成工業(株)製、以下同じ]4.3部を添加し、40℃で30分間撹拌した。その後、同温度で水47.5部を2時間かけて滴下して転相乳化させたものを50℃、減圧下で2時間脱溶剤して、(A−3)の水性組成物(A0−3)(固形分濃度50.0%)を得た。(A0−3)中の粒子のメジアン粒子径は0.4μmであった。
製造例4
容器にエポキシ樹脂(A−4)[ビスフェノールF型ポリグリシジルエーテル、商品名「JER807」、三菱化学(株)製、Mn350、エポキシ当量170、以下同じ]48.8部を加えて溶解させ、これに界面活性剤(E−1)2.4部を添加し、40℃で30分間撹拌した。その後、同温度で水48.8部を2時間かけて滴下して転相乳化させることで、(A−4)の水性組成物(A0−4)(固形分濃度50.0%)を得た。(A0−4)中の粒子のメジアン粒子径は0.3μmであった。
製造例5
製造例4において、(A−4)を、(A−5)[ビスフェノールF型ポリグリシジルエーテル、商品名「JER4010P」、三菱化学(株)製、Mn8800、エポキシ当量4400、以下同じ]に代えたこと以外は、製造例4と同様にして、(A−5)の水性組成物(A0−5)(固形分濃度50.0%)を得た。(A0−5)中の粒子のメジアン粒子径は0.4μmであった。
[硬化剤(D)の水性組成物(D0)の製造]
製造例6
反応容器にトリエチレンテトラミン(B−1)27.4部を仕込み、水を27.4部加えて均一混合し、酢酸(C−1)45.2部を加えて50℃で2時間撹拌することで、硬化剤(D−1)の水性組成物(D0−1)(固形分濃度72.6%、中和率100%)を得た。(D0−1)は水性媒体溶液であった。
製造例7
製造例6において、(B−1)27.4部、水27.4部、(C−1)45.2部を、(B−1)30.2部、水30.1部、(C−1)39.7部に代えたこと以外は、製造例6と同様にして、硬化剤(D−2)の水性組成物(D0−2)(固形分濃度69.9%、中和率80%)を得た。(D0−2)は水性媒体溶液であった。
製造例8
製造例6において、(B−1)27.4部、水27.4部、(C−1)45.2部を、(B−1)25.2部、水25.2部、(C−1)49.6部に代えたこと以外は、製造例6と同様にして、硬化剤(D−3)の水性組成物(D0−3)(固形分濃度74.8%、中和率120%)を得た。(D0−3)は水性媒体溶液であった。
製造例9
オートクレーブにm−キシリレンジアミン(B−2)37.8部と水37.8部を仕込み、これに界面活性剤(E−3)[高級アルコールのEO4モル付加物、商品名「エマルミン40」、三洋化成工業(株)製、以下同じ]1部を添加し、炭酸ガス(C−2)24.4部を吹き込み、0.3mPaの圧力下で2時間撹拌することで、硬化剤(D−4)の水性組成物(D0−4)(固形分濃度62.6%、中和率100%)を得た。(D0−4)中の粒子のメジアン粒子径は0.8μmであった。
製造例10
反応容器にエチルメチルケトン(以下、MEKと略記)5.0部を仕込み、(B−1)16.3部を加えて溶解させ、これに(A−1)21.1部を仕込み、60℃で4時間反応させ、1級および/または2級アミノ基含有化合物(B−3)を得た。
別の容器に水37.4部、(E−3)0.4部、プロピオン酸(C−3)24.8部、(B−3)37.4部を仕込み、40℃で30分間撹拌した。その後、50℃、減圧下で2時間脱溶剤して、硬化剤(D−5)の水性組成物(D0−5)(固形分濃度62.6%、中和率100%)を得た。(D0−5)中の粒子のメジアン粒子径は0.7μmであった。
製造例11
反応容器に(B−1)25.3部とアジピン酸12.6部を仕込み、180℃で脱水しながら6時間反応させ、1級および/または2級アミノ基含有化合物(B−4)を得た。
これに、MEK10.0部、水37.9部、(E−3)0.4部、ギ酸(C−4)23.9部を仕込み、40℃で30分間撹拌した。その後、50℃、減圧下で2時間脱溶剤して、硬化剤(D−6)の水性組成物(D0−6)(固形分濃度62.1%、中和率100%)を得た。(D0−6)中の粒子のメジアン粒子径は0.8μmであった。
製造例12
反応容器に(B−1)24.3部を仕込み、水を24.3部加えて均一混合し、酢酸アンモニウム(C−5)51.4部を加えて50℃で2時間撹拌することで、硬化剤(D−7)の水性組成物(D0−7)(固形分濃度75.7%、中和率100%)を得た。(D0−7)は水性媒体溶液であった。
製造例13
反応容器に(B−2)28.9部を仕込み、水を28.9部加えて均一混合し、これに(E−3)1部を添加し、炭酸アンモニウム(C−6)41.2部を加えて40℃で2時間撹拌することで、硬化剤(D−8)の水性組成物(D0−8)(固形分濃度71.1%、中和率100%)を得た。(D0−8)中の粒子のメジアン粒子径は0.8μmであった。
製造例14
製造例9において、(B−1)37.8部、水37.8部、(E−3)1部、(C−2)24.4部を、(B−1)39.3部、水39.3部、(E−3)1部、(C−2)20.4部に代えたこと以外は、製造例9と同様にして、硬化剤(D−9)の水性組成物(D0−9)(固形分濃度60.7%、中和率80%)を得た。(D0−9)中の粒子のメジアン粒子径は0.8μmであった。
製造例15
製造例9において、(B−1)37.8部、水37.8部、(E−3)1部、(C−2)24.4部を、(B−1)35.7部、水35.7部、(E−3)0.9部、(C−2)27.7部に代えたこと以外は、製造例9と同様にして、硬化剤(D−10)の水性組成物(D0−10)(固形分濃度62.6%、中和率120%)を得た。(D0−10)中の粒子のメジアン粒子径は0.8μmであった。
製造例16
反応容器に(B−2)19.4部を仕込み、水を49.8部加えて均一混合し、これに(E−3)1部を添加し、塩酸[35%塩化水素水溶液](C−7)29.8部を加えて30℃で1時間撹拌することで、硬化剤(D−11)の水性組成物(D0−11)(固形分濃度30.8%、中和率100%)を得た。(D0−11)中の粒子のメジアン粒子径は0.8μmであった。
比較製造例1
容器にアジピン酸ジヒドラジド[日本ヒドラジン工業(株)、社名変更後は(株)日本ファインケム製](B−5)80.0部仕込み、水を20.0部加えて均一混合することにより(B−5)の水性組成物(比D0−1)(固形分濃度80.0%)を得た。(比D0−1)中の粒子のメジアン粒子径は1.6μmであった。
比較製造例2
容器に(B−1)50.0部を仕込み、水を50.0部加えて均一混合することにより(B−1)の水性組成物(比D0−2)(固形分濃度50.0%)を得た。(比D0−2)は水性媒体溶液であった。
実施例1〜18および比較例1〜2
容器を用いて表1に従って配合、混合(温度25℃、撹拌時間30分間)し、水性エポキシ樹脂組成物(X−1)〜(X−18)、(比X−1)〜(比X−2)を得た。各組成物について下記の試験方法で性能評価を行った。結果を表1に示す。
<試験方法>
(1)貯蔵安定性
JIS K5600−2−7の常温貯蔵安定性の操作に準拠して貯蔵安定性を評価した。すなわち、容量225ml、内径5cmの密閉できるガラス容器に180ml充填し、50℃で20日間静置した樹脂組成物を、粘度について評価した。
水性エポキシ樹脂組成物の粘度はBL型粘度計[型番「DVL−BII」、東機産業(株)製、回転数30rpm、3号スピンドル]により、JIS K7117−1に準じて25℃での粘度を測定した。試験前後の粘度の増加を下記の評価基準で評価した。
<評価基準>
◎:粘度の増加が10%未満
○:粘度の増加が10%以上20%未満
△:粘度の増加が20%以上50%未満
×:粘度の増加が50%以上
(2)密着性
試験鋼板[JIS G3141に規定する0.5mm×80mm×150mmの冷間圧
延鋼板(SPCC−SD)]の表面をメタノールで脱脂後、焼付け後の塗膜の厚さが30〜40μmとなるように水性エポキシ樹脂組成物を塗布し、140℃、20分で焼付けて試験片を作製し、JIS K5600−5−6のクロスカット法に準拠して、100マス中の剥離したマスの数で密着性を評価した。
(3)塗膜の耐水性
前述の方法で試験片を作製し、JIS K5600−6−2の浸せき手順に準拠して耐水性を目視による外観にて評価した。なお、浸せきは水温50℃にて3日間行った。
<評価基準>
◎:膨れなし
○:膨れごくわずかあり
△:膨れ多くあり
×:膨れが多く、剥がれている部位もあり
Figure 0006284834
表1の結果から、本発明の水性エポキシ樹脂組成物は比較のものと比べ、貯蔵安定性および低温硬化性に優れ、さらに水性エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる塗膜は耐水性に優れていることがわかる。
本発明の水性エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性および低温硬化性に優れ、その硬化塗膜は耐水性に優れることから、種々の用途、特に自動車、鉄道車両及び船舶等の塗装用途、あるいは建築物や家電製品等、種々の製品の塗装用途等に塗料、プライマー等として幅広く好適に用いることができ、極めて有用である。

Claims (3)

  1. エポキシ樹脂(A)と、1級および/または2級アミノ基含有化合物(B)並びに炭酸(塩)(C1)からなる硬化剤(D)とを、水性媒体中に含有し、(A)と(D)との当量比[(A)/(D)]が0.3〜1.5である水性エポキシ樹脂組成物(X)。
  2. (B)の(C1)によるアミノ基の中和率が80〜120%である請求項1に記載の組成物。
  3. 請求項1または2に記載の組成物を硬化させてなる塗膜。
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