以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。なお、図1は、光源ユニット100の内部を透視した状態を図示している。また、配光部300の永久磁石312,314の図示を省略している。本実施形態に係る車両用灯具は、例えば車両用前照灯装置であり、この車両用前照灯装置は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットを有する。一対の前照灯ユニットは、一方が車両の左前方部分に設けられ、他方が車両の右前方部分に設けられる。図1は、左右いずれかの前照灯ユニットの構成を示す。他方の前照灯ユニットは、左右対称の構造を有する点以外は図1に示す前照灯ユニットと実質的に同一の構成であるため、説明を省略する。
本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、支持プレート6と、光源ユニット100と、配光部300と、制御ユニット400とが収容される。
光源ユニット100及び配光部300は、支持プレート6により灯室3内の所定位置に支持される。支持プレート6は、コーナー部がエイミングスクリュー8によってランプボディ2に接続される。光源ユニット100は、第1光源102、第2光源104、第3光源106、ヒートシンク108、及び集光部200等を有する。光源ユニット100は、ヒートシンク108が支持プレート6に接するようにして、支持プレート6の前面に固定される。光源ユニット100の内部構造については後に詳細に説明する。
配光部300は、反射鏡318を有する。配光部300は、光源ユニット100から出射されたレーザ光を灯具前方に反射するように光源ユニット100との位置関係が定められて、支持プレート6の前面から灯具前方に突出する突出部10の先端に固定される。配光部300の構造については後に詳細に説明する。制御ユニット400は、支持プレート6よりも灯具後方側でランプボディ2に固定される。なお、制御ユニット400を設ける位置は、特にこれに限定されない。
車両用灯具1は、エイミングスクリュー8を回転させて支持プレート6の姿勢を調節することで光軸を水平方向及び鉛直方向に調整できるように構成される。灯室3内における光源ユニット100及び配光部300の灯具前方には、配光部300によって反射された光の灯具前方への進行を許容する開口部を有するエクステンションリフレクタ12が設けられる。
続いて、車両用灯具1を構成する各部の詳細な構成について説明する。
(光源ユニット)
図2は、光源ユニットの概略構造を示す側面図である。なお、図2では、光源ユニット100の内部を透視した状態を図示している。光源ユニット100は、第1光源102、第2光源104、第3光源106、ヒートシンク108、第1レンズ110、第2レンズ112、第3レンズ114、第4レンズ116、及び集光部200を有する。
第1光源102は、赤色レーザ光Rを出射する光源であり、赤色レーザダイオードで構成される発光素子102aと、発光素子102aが搭載される基板102bとを有する。第2光源104は、緑色レーザ光Gを出射する光源であり、緑色レーザダイオードで構成される発光素子104aと、発光素子104aが搭載される基板104bとを有する。第3光源106は、青色レーザ光Bを出射する光源であり、青色レーザダイオードで構成される発光素子106aと、発光素子106aが搭載される基板106bとを有する。本実施形態では、発光素子102aのレーザ光出射面102as、発光素子104aのレーザ光出射面104as及び発光素子106aのレーザ光出射面106asが互いに平行である。なお、各光源は、レーザダイオード以外の他のレーザ装置を有してもよい。
第1光源102、第2光源104及び第3光源106は、それぞれのレーザ光出射面が灯具前方を向き、基板が灯具後方を向くように配置され、ヒートシンク108の灯具前方側を向く側面に取り付けられる。ヒートシンク108は、各光源の発光素子102a〜106aが発する熱を効率よく回収できるよう、アルミニウムなど熱伝導率が高い材料によって形成される。ヒートシンク108の灯具後方側の側面は、支持プレート6(図1参照)に接する。各光源の発光素子102a〜106aは、それぞれが接する基板102b〜106b、ヒートシンク108及び支持プレート6を介して放熱され、温度の上昇が抑制される。
第1レンズ110、第2レンズ112、第3レンズ114及び第4レンズ116は、例えばコリメートレンズで構成される。第1レンズ110は、第1光源102と集光部200との間の赤色レーザ光Rの光路上に設けられ、第1光源102から出射された赤色レーザ光Rを平行光に変換して集光部200に出射する。第2レンズ112は、第2光源104と集光部200との間の緑色レーザ光Gの光路上に設けられ、第2光源104から出射された緑色レーザ光Gを平行光に変換して集光部200に出射する。
第3レンズ114は、第3光源106と集光部200との間の青色レーザ光Bの光路上に設けられ、第3光源106から出射された青色レーザ光Bを平行光に変換して集光部200に出射する。第4レンズ116は、光源ユニット100の筐体に設けられた開口101に嵌め合わされる。また、第4レンズ116は、集光部200と配光部300(図1参照)との間における、後述する白色レーザ光Wの光路上に設けられ、集光部200から出射された白色レーザ光Wを平行光に変換して配光部300に出射する。
集光部200は、赤色レーザ光R、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bを集合させて白色レーザ光Wを生成する。集光部200は、第1ダイクロイックミラー202、第2ダイクロイックミラー204、及び第3ダイクロイックミラー206を有する。
第1ダイクロイックミラー202は、少なくとも、赤色光を反射し青色光及び緑色光を透過させるミラーであり、第1レンズ110を通過した赤色レーザ光Rを第4レンズ116に向けて反射するように配置される。第2ダイクロイックミラー204は、少なくとも、緑色光を反射し青色光を透過させるミラーであり、第2レンズ112を通過した緑色レーザ光Gを第4レンズ116に向けて反射するように配置される。第3ダイクロイックミラー206は、少なくとも、青色光を反射するミラーであり、第3レンズ114を通過した青色レーザ光Bを第4レンズ116に向けて反射するように配置される。
また、第1ダイクロイックミラー202、第2ダイクロイックミラー204及び第3ダイクロイックミラー206は、それぞれが反射したレーザ光の光路が平行で、かつ各レーザ光が集合して第4レンズ116に入射されるように、互いの位置関係が定められる。本実施形態では、第1ダイクロイックミラー202〜第3ダイクロイックミラー206は、各ダイクロイックミラーにおいてレーザ光が当たる領域(レーザ光の反射点)が一直線上に並ぶように配置されている。
第3光源106から出射された青色レーザ光Bは、第3ダイクロイックミラー206で反射され、第2ダイクロイックミラー204側に進行する。第2光源104から出射された緑色レーザ光Gは、第2ダイクロイックミラー204により第1ダイクロイックミラー202側に反射されるとともに、第2ダイクロイックミラー204を透過した青色レーザ光Bと重ね合わせられる。第1光源102から出射された赤色レーザ光Rは、第1ダイクロイックミラー202により第4レンズ116側に反射されるとともに、第1ダイクロイックミラー202を透過した青色レーザ光B及び緑色レーザ光Gの集合光と重ね合わせられる。その結果、白色レーザ光Wが形成される。白色レーザ光Wは、第4レンズ116を通過して配光部300に向けて進行する。
第1光源102〜第3光源106は、赤色レーザ光Rを出射する第1光源102が集光部200から最も近い位置に配置され、青色レーザ光Bを出射する第3光源106が集光部200から最も遠い位置に配置され、緑色レーザ光Gを出射する第2光源104が中間の位置に配置される。すなわち、第1光源102〜第3光源106は、出射するレーザ光の波長が長いものほど集光部200に近い位置に配置される。レーザ光は、長波長のものほどレーザ光の拡がり角が大きい。そこで、拡散しやすいレーザ光を出射する光源ほど集光部200の近くに配置する。これにより、集光部200へ入射されるレーザ光量がレーザ光の拡散により低減することを抑制することができ、その結果、レーザ光の利用率を高めることができる。また、各レーザ光の拡がり角の差に起因して各レーザ光の集光部200への入射光量に差が生じることを抑制することができる。
また、第1光源102〜第3光源106は、各光源のレーザ光出射面102as〜106asと交わる方向(図2の矢印X方向、言い換えると、各光源のレーザ光出射方向に平行な方向、もしくは各光源の基板の主表面と交わる方向)から見て、隣り合う光源における基板の一部同士が重なり合うように配置される。本実施形態では、第1光源102及び第2光源104は、基板102bにおける第2光源104側の領域102bgと、基板104bにおける第1光源102側の領域104brとが重なるように配置される。また、第2光源104及び第3光源106は、基板104bにおける第3光源106側の領域104bbと、基板106bにおける第2光源104側の領域106bgとが重なるように配置される。これにより、矢印X方向から見て各光源のレーザ光出射面102as〜106asを互いに近接させることができる。その結果、集光部200の小型化、ひいては光源ユニット100の小型化が可能である。
また、例えばレーザ光の照射強度を高めるべく各色の光源を複数備える場合、同一色の光源を上述のように段違いで配置してレーザ光発光面を近接させることで、同一色のレーザ光を集光させやすくすることができる。これにより、レーザ光の幅を細くして光源像を小さくすることができる。また、3色の光源群同士について、上述した段違い配置を適用することもできる。
光源ユニット100は、各光源のレーザ光の出射を監視する監視部130を有する。監視部130は、第1フォトセンサ132、第2フォトセンサ134、第3フォトセンサ136、第4フォトセンサ138及び異常判定部140を有する。第1フォトセンサ132は、第1光源102から出射される赤色レーザ光Rの照射強度を測定する。第2フォトセンサ134は、第2光源104から出射される緑色レーザ光Gの照射強度を測定する。第3フォトセンサ136は、第3光源106から出射される青色レーザ光Bの照射強度を測定する。第4フォトセンサ138は、集光部200から出射される白色レーザ光Wの照射強度を測定する。各フォトセンサは、測定値を示す信号を異常判定部140に送信する。
異常判定部140は、各光源にレーザ光の出射異常が生じているか否かを判定する。ここでいう出射異常とは、異常により集合光が所定の白色範囲から外れることをいい、出射が設定値からずれても集合光が所定の白色範囲に含まれる場合は除外される。異常判定部140は、例えば、各光源から出射されるレーザ光の照射強度が所定範囲から外れるとき、レーザ光の出射異常が生じていると判定する。また、異常判定部140は、集合光である白色レーザ光Wの照射強度が、予め定められた所定範囲に含まれるか否かを判定する。異常判定部140は、判定結果を示す信号を後述する灯具ECU402(図5参照)に送信する。なお、異常判定部140は、灯具ECU402内に設けられてもよい。
(配光部)
図3は、灯具前方側から観察したときの配光部の概略斜視図である。配光部300は、例えば、いわゆるガルバノミラーで構成され、ベース302、第1回動体304、第2回動体306、第1トーションバー308、第2トーションバー310、永久磁石312,314、端子部316及び反射鏡318等を有する。ベース302は、中央に開口部302aを有する枠体であり、灯具前後方向に傾斜した状態で突出部10(図1参照)の先端に固定される。ベース302には、所定位置に端子部316が設けられる。ベース302の開口部302aには、第1回動体304が配置される。第1回動体304は、中央に開口部304aを有する枠体であり、灯具後方下側から灯具前方上側に延在する第1トーションバー308により、ベース302に対し左右(車幅方向)に回動可能に支持される。
第1回動体304の開口部304aには、第2回動体306が配置される。第2回動体306は、矩形状の平板であり、車幅方向に延在する第2トーションバー310により、第1回動体304に対し上下(鉛直方向)に回動可能に支持される。第2回動体306は、第1回動体304が第1トーションバー308を回動軸として左右に回動すると、第1回動体304とともに左右に回動する。第2回動体306の表面には、メッキ又は蒸着等の方法により反射鏡318が設けられる。
ベース302には、第1トーションバー308の延在方向と直交する位置に、一対の永久磁石312が設けられる。永久磁石312は、第1トーションバー308と直交する磁界を形成する。第1回動体304には第1コイル(図示せず)が配線され、第1コイルは、端子部316を介して制御ユニット400に接続される。また、ベース302には、第2トーションバー310の延在方向と直交する位置に、一対の永久磁石314が設けられる。永久磁石314は、第2トーションバー310と直交する磁界を形成する。第2回動体306には第2コイル(図示せず)が配線され、第2コイルは、端子部316を介して制御ユニット400に接続される。
第1コイル及び永久磁石312と、第2コイル及び永久磁石314とにより走査用アクチュエータ320(図5参照)が構成される。走査用アクチュエータ320は、制御ユニット400の後述するアクチュエータ制御部408(図5参照)により駆動が制御される。アクチュエータ制御部408は、第1コイル及び第2コイルに流れる駆動電流の大きさと向きを制御する。この駆動電流の大きさと向きの制御により、第1回動体304及び第2回動体306が左右に往復回動し、また第2回動体306が単独で上下に往復回動する。これにより、反射鏡318が上下左右に往復回動する。
光源ユニット100と配光部300とは、光源ユニット100から出射された白色レーザ光Wが反射鏡318で灯具前方に反射されるよう互いの位置関係が定められる。そして、配光部300は、反射鏡318の往復回動により白色レーザ光Wで車両前方を走査する。例えば、配光部300は、形成すべき配光パターンの領域を白色レーザ光Wで走査する。これにより、白色レーザ光Wが配光パターンの形成領域に配光されて、車両前方(灯具前方)に所定の配光パターンが形成される。
なお、制御ユニット400は、後述する光源制御部410(図5参照)が、配光部300による白色レーザ光Wでの灯具前方のスキャンに合わせて、第1光源102、第2光源104及び第3光源106のレーザ光の出射を制御してもよい。例えば、配光部300は、配光パターンの形成領域よりも広い走査範囲で反射鏡318を回動させる。そして、光源制御部410は、反射鏡318の回動位置が、形成すべき配光パターンの領域と対応する位置にあるとき各光源を点灯させる。このような制御によっても、灯具前方に所定の配光パターンを形成することができる。この場合、制御ユニット400の光源制御部410は、配光部300の一部を構成する。
図4は、実施形態1に係る車両用灯具により形成される配光パターンの一例を示す図である。なお、図4では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
本実施形態に係る車両用灯具1の配光部300は、車幅方向に延在する矩形の走査領域SA内を白色レーザ光Wでスキャン可能である。また、制御ユニット400の光源制御部410は、配光部300の走査位置がロービーム用配光パターンLo内である場合に、各光源からレーザ光を出射させ、当該走査位置がロービーム用配光パターンLo外である場合に、各光源からのレーザ光の出射を停止させる。これにより、対向車線側カットオフラインCL1、自車線側カットオフラインCL2及び斜めカットオフラインCL3を有するロービーム用配光パターンLoが形成される。
本実施形態に係る車両用灯具1は、赤色レーザ光R、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bを集合させて得られる白色レーザ光Wを車両前方に配光して、所定の配光パターンを形成する。レーザ光は、蛍光体等から発せられる光に比べて波長が揃っており、波長のばらつきが少ない。すなわち、レーザ光は、より半値幅が狭く発光ピークが鋭い。したがって、赤色レーザ光R、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bは、蛍光に比べて色純度の高い単色光となる。そのため、これらの単色レーザ光が集合して得られる白色レーザ光Wを用いて配光パターンを形成した場合、被照射体の色コントラストが大きくなる。その結果、運転者は、被照射体を視認しやすくなる。
(制御ユニット)
図5は、制御ユニットを説明する機能ブロック図である。なお、図5に示す機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。制御ユニット400は、灯具ECU402、ROM404、RAM406等を有する。
灯具ECU402は、アクチュエータ制御部408及び光源制御部410を有する。ROM404は、各種制御プログラムを格納する。RAM406は、データ格納や灯具ECU402によるプログラム実行のためのワークエリアとして利用される。灯具ECU402は、ROM404に格納された複数の制御プログラムを適宜選択的に実行し、各種制御信号を生成する。
アクチュエータ制御部408は、配光部300の走査用アクチュエータ320を制御して、白色レーザ光Wでの車両前方の走査を制御する。光源制御部410は、第1光源102、第2光源104及び第3光源106のレーザ光の出射を各光源独立に制御する。例えば、光源制御部410は、車両に設けられたライトスイッチが運転者に操作されると、第1光源102〜第3光源106の点消灯を制御する。光源制御部410による制御は後に詳細に説明する。
また、灯具ECU402は、監視部130の異常判定部140からの信号を受信可能である。光源制御部410は、監視部130から得られた信号を用いて、第1光源102〜第3光源106の出力を調整する制御信号を生成する。また、灯具ECU402は、光源の出力異常を報知する報知部500に動作指令信号を送信可能である。報知部500は、例えば車両内に設けられる警告灯(インジケータランプ)等で構成することができる。また、灯具ECU402は、車載カメラ502で撮像された画像データを受信して解析する画像処理装置504や、ナビゲーションシステム506等からの信号を受信可能である。
続いて、上述した構成を備える車両用灯具1で実施されるレーザ光の照射制御について説明する。本実施形態に係る車両用灯具1において、故障や劣化等により第1光源102〜第3光源106の少なくとも1つに出射異常が生じると、赤色、緑色及び青色のバランスが崩れて、集合光の色が所定の白色から外れる可能性がある。そこで、光源制御部410は、少なくとも1つの光源の出射異常が検出されたとき、出射が異常である光源及び出射が正常である光源の少なくとも一方の出射、もしくは少なくとも1つの光源の出射を調整して、集合光である白色レーザ光Wの白色を維持する。すなわち、光源制御部410は、光源の出射異常に起因して所定の白色範囲から外れた集合光を所定の白色範囲内に戻す。これにより、運転者や自車周囲の歩行者等の安全を確保することができ、また運転者や自車周囲の歩行者等に違和感や不快感を与えることを回避できる。
具体的には、例えば赤色レーザ光Rの照射強度が所定範囲を下回り、監視部130の異常判定部140により第1光源102に出射異常が発生したと判定されたとする。この場合、光源制御部410は、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bの照射強度を赤色レーザ光Rの照射強度に合わせて低減させる制御信号を出力する。これにより、第2光源104及び第3光源106への供給電力の低減等が実施され、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bの照射強度が赤色レーザ光Rの照射強度の低減量に応じた分だけ低減される。その結果、集合光の白色が維持される。
また、例えば赤色レーザ光Rの照射強度が所定範囲を上回り、監視部130の異常判定部140により第1光源102に出射異常が発生したと判定されたとする。この場合、光源制御部410は、赤色レーザ光Rの照射強度を緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bの照射強度に合わせて低減させる制御信号を出力する。これにより、第1光源102への供給電力の低減等が実施され、赤色レーザ光Rの照射強度が緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bの照射強度に合わせて低減される。その結果、集合光の白色が維持される。
なお、光源制御部410は、各光源の照射強度の測定値を監視部130から受信し、これらの測定値を用いて集合光の発光色度もしくは色温度を計算し、算出された発光色度もしくは色温度と、予めROM404に格納される発光色度もしくは色温度についての基準値情報とを用いて各光源を調整してもよい。
さらに、灯具ECU402は、各光源の出射の調整により集合光の白色性を維持する制御を実施した結果、当該調整により得られる集合光の照射強度が所定範囲から外れるとき、報知部500を介して光源の出力異常を報知する。具体的には、監視部130の異常判定部140により、出射調整後の白色レーザ光Wの照射強度が所定範囲から外れると判定されると、灯具ECU402が報知部500に警告灯の点灯を指示する制御信号を出力する。これにより、運転者に車両用灯具1の異常が報知される。なお、光源制御部410は、白色レーザ光Wの照射強度が所定範囲から外れる場合、運転者の視認性を少しでも向上させるべく照射強度の低い白色レーザ光Wの照射を継続してもよいし、運転者に車両用灯具1の早期整備を促すべく白色レーザ光Wの照射を停止させてもよい。
なお、第1光源102〜第3光源106の少なくとも1つに出射異常があると判定されたとき、光源制御部410が全ての光源を消灯し、報知部500が光源の異常を報知する制御が実施されてもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具1は、赤色レーザ光Rを出射する第1光源102、緑色レーザ光Gを出射する第2光源104及び青色レーザ光Bを出射する第3光源106を備える。そして、少なくともこの3つのレーザ光を集合させて白色レーザ光Wを生成し、この白色レーザ光Wを配光して所定の配光パターンを形成する。このように、色純度の高い赤色レーザ光R、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bで形成した白色レーザ光Wを照射することで、被照射体の色コントラストを大きくすることができる。これにより、運転者の視認性をより向上させることができる。
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具1は、光源制御部410によるレーザ光の照射制御の内容を除き、実施形態1に係る車両用灯具1の構成と共通する。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
本実施形態に係る車両用灯具1は、光源からのレーザ光の出射を調整することにより灯具の照射光の白色性を維持する第1エラー処理モードと、照射光の白色性の維持は諦めて灯具の照射強度を維持する第2エラー処理モードとを有する。第2エラー処理モードは、第1エラー処理モードの実行が困難な場合、すなわち、例えば第1エラー処理モードの実行により白色レーザ光Wの照射強度が下がりすぎてしまう場合に実施される。
車両用灯具1が車両用前照灯として用いられる場合、歩行者や他車両の運転者が自車両の前方と後方とを取り違えるといった誤認を防ぐために、車両用灯具1には照射光が所定の白色であることが求められる。しかしながら、車両用灯具1には、たとえ照射光が所定の白色範囲から外れていても光を照射して運転者の視認性を確保することが求められる場合がありうる。
そこで、光源制御部410は、まず第1エラー処理モードを実行する。すなわち、光源制御部410は、複数の光源のいずれかに出射異常が検出されたとき、複数の光源の少なくとも1つの出射を調整して集合光の白色を維持する。そして、第1エラー処理モードが実行された後、監視部130の異常判定部140によって調整後の集合光の照射強度が所定範囲から外れると判定されると、光源制御部410は、光源の出射の調整により集合光の照射強度を維持する。具体的には、例えば赤色レーザ光Rの照射強度が所定範囲を下回った場合、光源制御部410は、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bの少なくとも一方の照射強度を増大させて、集合光の照射強度を維持する。
なお、光源制御部410は、光源の出力異常が検知されたとき、監視部130から得られる各光源の照射強度値を用いて、第1エラー処理モードを実行した場合に得られるであろう集合光の照射強度を計算し、算出された集合光の照射強度に応じて第1エラー処理モードと第2エラー処理モードとを選択してもよい。本実施形態の第1エラー処理モード及び第2エラー処理モードの実行制御は、レーザ光源以外の光源を備える車両用灯具にも適用することができる。
(実施形態3)
実施形態3に係る車両用灯具は、左右の前照灯ユニットで光源ユニット100及び配光部300の配置が異なる。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
図6(A)は、実施形態3に係る右側前照灯ユニットを構成する車両用灯具の構造を模式的に示す正面図である。図6(B)は、実施形態3に係る左側前照灯ユニットを構成する車両用灯具の構造を模式的に示す正面図である。なお、図6(A)及び図6(B)では、白色レーザ光Wの偏光方向を模式的に示している。右側前照灯ユニットを構成する車両用灯具1Rでは、光源ユニット100と配光部300とが鉛直方向に並ぶように配置される。本実施形態では、光源ユニット100が下側、配光部300が上側に配置される。白色レーザ光Wは、光源ユニット100から鉛直方向上方に照射され、配光部300により灯具前方に向けて反射される。なお、光源ユニット100が上側、配光部300が下側に配置され、白色レーザ光Wが光源ユニット100から鉛直方向下方に照射されてもよい。
一方、左側前照灯ユニットを構成する車両用灯具1Lでは、光源ユニット100と配光部300とが水平方向に並ぶように配置される。本実施形態では、光源ユニット100が車幅方向外側に配置され、配光部300が車幅方向内側に配置される。白色レーザ光Wは、光源ユニット100から車幅方向内側に向けて照射され、配光部300により灯具前方に向けて反射される。なお、光源ユニット100が車幅方向内側、配光部300が車幅方向外側に配置され、白色レーザ光Wが光源ユニット100から車幅方向外側に向けて照射されてもよい。
一般に、レーザ光は直線偏光である。そのため、レーザ光を車両前方に照射した場合、被照射体によっては実際の色とは異なる色に見える場合がある。例えば、被照射体が路面上に形成された白色のレーンマークである場合、レーザ光の偏光によりレーンマークが赤味や緑味を帯びることがある。このような色味の変化は、運転者に違和感や不快感を与えうる。
これに対し、本実施形態では、左側の車両用灯具1Lと右側の車両用灯具1Rとで、光源ユニット100のレーザ光出射方向が互いに90度ずれている。したがって、車両用灯具1Lから出射される白色レーザ光Wの偏光軸(偏光方向)と、車両用灯具1Rから出射される白色レーザ光Wの偏光軸とが直交する。本実施形態では、車両用灯具1Lにおける白色レーザ光Wの偏光軸は鉛直方向に延びるように設定され、車両用灯具1Rにおける白色レーザ光Wの偏光軸は車幅方向に延びるように設定される。これにより、被照射体の色味の変化を抑制することができ、運転者が受ける違和感や不快感を抑制することができる。
(実施形態4)
実施形態4に係る車両用灯具1は、配光パターンの色を部分的もしくは全体的に変化させる点を除き、実施形態1に係る車両用灯具1の構成と共通する。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
図7(A)は、実施形態4に係る車両用灯具により形成される配光パターンの一例を示す図である。図7(B)は、実施形態4に係る車両用灯具により形成される配光パターンの他の一例を示す図である。図7(C)は、実施形態4に係る車両用灯具により形成される配光パターンのさらに他の一例を示す図である。なお、図7(A)〜図7(C)では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方に照射するレーザ光、すなわち集合光の色を所定の条件に応じて変化させる。例えば、人間の眼は暗所では明所に比べて青色の光に対する比視感度が高くなる。そこで、図7(A)に示すように、光源制御部410は、白色レーザ光Wがロービーム用配光パターンLoの車幅方向左端の部分領域Lo1と車幅方向右端の部分領域Lo2とに配光されるときに青色レーザ光Bの照射強度を増大させる。これにより、青味を帯びた白色の配光パターンで部分領域Lo1及び部分領域Lo2を照射することができる。よって、これらの領域における運転者の視認性をより向上させることができ、その結果、運転者が例えば路肩領域にいる歩行者や障害物の存在をより確実に認識することができる。
また、光源制御部410は、運転者の年齢に応じて集合光の色を変化させてもよい。例えば、青色の光は、水晶体の濁りにより眼球内で散乱する傾向にある。そこで、水晶体が濁る傾向が高い高齢者が運転者である場合、光源制御部410は、予め定められる初期設定値よりも低色温度の白色レーザ光Wを照射して配光パターンを形成する。これにより、運転者の視認性をより向上させることができる。この制御は、例えば次のように実行される。すなわち、運転者が自身の年齢を入力する入力部(図示せず)が車両に設けられ、また年齢と白色レーザ光Wの色温度とを対応付けた変換テーブルが予めROM404に格納される。光源制御部410は、入力部から受信した年齢情報と当該変換テーブルとを用いて、照射する白色レーザ光Wの色温度を決定する。そして、各光源のレーザ光の出射を調整し、決定した色温度の白色レーザ光Wを生成する。
また、光源制御部410は、運転時間の長さに応じて集合光の色を変化させてもよい。例えば、青色の光は運転者に疲労を与えやすい傾向にある。そこで、運転時間が所定時間以上となった場合、光源制御部410は、予め定められる初期設定値よりも低色温度の白色レーザ光Wを照射して配光パターンを形成する。これにより、運転者の疲労を軽減することができる。この制御は、例えば次のように実行される。すなわち、灯具ECU402は運転時間計算部(図示せず)を有し、また運転時間と白色レーザ光Wの色温度とを対応付けた変換テーブルが予めROM404に格納される。運転時間計算部は、例えば車両側からイグニッション電源のオンオフ信号を受信し、イグニッションがONになってからOFFになるまでの時間を運転時間として計算する。光源制御部410は、運転時間計算部から受信した運転時間情報と当該変換テーブルとを用いて、照射する白色レーザ光Wの色温度を決定する。そして、各光源のレーザ光の出射を調整し、決定した色温度の白色レーザ光Wを生成する。
また、光源制御部410は、配光パターンにおける、運転者により認識されるべき対象と重なる部分領域を、他の領域とは異なる色にしてもよい。例えば、車載カメラ502で撮像された車両前方の画像データが画像処理装置504で解析され、車両前方の歩行者や障害物の位置が特定される。画像処理装置504で特定された歩行者等の位置情報は、灯具ECU402に送信される。光源制御部410は、当該位置情報を用いて、白色レーザ光Wが歩行者等と重なる領域に配光されるときに、例えば赤色レーザ光Rの照射強度を増大させて、当該領域をマゼンタ色で照射する。これにより、運転者に、歩行者や障害物等の存在をより確実に認識させることができる。もしくは、光源制御部410は、ナビゲーションシステム506から得られる車両前方の道路形状情報を用いて、認識されるべき対象の存在位置を特定し、白色レーザ光Wが当該存在位置と重なる領域に配光されるときに光源を調整して配光パターンの色を変化させてもよい。
また、光源制御部410は、図7(B)に示すように、車両前方の光照射領域を車両から近い領域R1と、車両から遠い領域R2とに分割し、領域R1には相対的に低色温度の白色レーザ光Wを照射し、領域R2には相対的に高色温度の白色レーザ光Wを照射してもよい。例えば、領域R2には予め定められる初期設定値の白色レーザ光Wが照射され、領域R1には初期設定値よりも黄色味を帯びた白色レーザ光Wが照射される。これにより、運転者の視認性をより向上させることができる。
また、光源制御部410は、図7(C)に示すように、車両前方の光照射領域を、上述した領域R1及び領域R2に加えて、車幅方向外側に位置する領域R3に分割し、領域R2に初期設定値の白色レーザ光Wを照射し、領域R1に初期設定値よりも黄色味を帯びた白色レーザ光Wを照射し、領域R3に初期設定値よりも青味を帯びた白色レーザ光Wを照射してもよい。これにより、運転者の視認性をより向上させることができる。
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施形態同士、および上述の各実施形態と以下の変形例との組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
上述の各実施形態では、赤色レーザ光R、緑色レーザ光G及び青色レーザ光Bにより白色レーザ光Wが形成されているが、オレンジ色や黄色等の他の色のレーザ光を含ませてもよい。
上述の各実施形態において、配光部300はガルバノミラーで構成されているが、特にこれに限定されず、例えば、ポリゴンミラー、MEMSミラー、パラボラ型等のリフレクタ等であってもよい。