JP6283866B2 - 残留応力推定方法、残留応力推定システムおよびプログラム - Google Patents

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本発明は、残留応力推定方法、残留応力推定システムおよびプログラムに関する。
構造物等に生じる残留応力を正確に推定することが、当該構造物等の強度や寿命などを正確に把握するために重要となる。かかる残留応力を測定ないし推定するための幾つかの技術がある。
例えば、残留応力推定対象の部材の表面における残留ひずみをX線回析にて測定する方法がある(非特許文献1参照)。
また、シンクロトロン放射光を用いて残留応力を測定する方法や、中性子回析を用いて残留応力を測定する方法がある。
また、超音波を用いて残理由応力を測定する方法(超音波法)がある(非特許文献2、3参照)。
また、鋼材などの磁性体に対しては、磁化した際の磁気ひずみを測定して残留応力を求める方法(磁歪法)がある。
栗村隆之、他1名、「回折法による材料評価の新しい展開1.溶接残留応力とX線残留応力測定」日本材料学会誌、2009年、Vol.58、No.10、p.873−878 荒居善雄、他3名、「溶接残留応力測定への音弾性法の適用と疲労き裂進展の評価」、日本機械学会論文集A編、1987年、Vol.53、No.492、p.1574−1580 小林英男、他4名、「音弾性法による溶接残留応力の非破壊測定と疲労き裂進展の予測」、日本機械学会論文集A編、1989年、Vol.55、No.512、p.902−909
従来の残留応力測定方法や残留応力推定方法では、大掛かりな装置や部材の搬送を必要とせずに、非破壊で部材の内部まで残留応力を精度よく推定することは困難であった。
例えば、X線回析を用いる方法では、部材の表面についてしか残留応力を得られない。
また、シンクロトロン放射光を用いる方法では、表面から数ミリメートル(mm)程度の深さまでしか残留応力を得られない。
一方、中性子回析を用いる方法では、深さ十数ミリメートルまで残留応力を測定することができるが、大規模は中性子照射施設が必要である。このため、中性子回析を用いる方法は実施可能な施設が限られており、当該施設へ部材を持ち込む必要がある。移動が困難な部材に対しては、中性子解析を用いる方法を適用することは困難である。
また、超音波法では、部材の厚さ方向について残留応力の平均値のみ測定可能であり、厚さ方向に分布する応力勾配を求めることはできない。
また、磁歪法の適用対象は、単純形状で強磁性体、かつ、材料特性が既知のものに限られる。
本発明は、大掛かりな装置や部材の搬送を必要とせずに、非破壊で部材の内部など測定位置以外の位置についてまで残留応力をより精度よく推定することのできる残留応力推定方法、残留応力推定システムおよびプログラムを提供する。
本発明の第1の態様による残留応力推定方法は、残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得ステップと、前記残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得ステップと、前記関係取得ステップにて得られた前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得ステップにて得られた前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める固有ひずみ推定ステップと、前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物における残留応力を推定する残留応力推定ステップと、を有する。
本発明の第2の態様による残留応力推定システムは、残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得部と、前記残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得部と、前記関係取得部が取得した前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得部が取得した前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める固有ひずみ推定部と、前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物における残留応力を推定する残留応力推定部と、を具備する。
また、本発明の一態様によるひずみ推定システムは、残留応力推定システムを制御するコンピュータに、残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得ステップと、前記残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得ステップと、前記関係取得ステップにて得られた前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得ステップにて得られた前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める固有ひずみ推定ステップと、前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物における残留応力を推定する残留応力推定ステップと、を実行させるためのプログラムである。
本発明によれば、大掛かりな装置や部材の搬送を必要とせずに、非破壊で部材の内部など測定位置以外の位置についてまで残留応力をより精度よく推定することができる。
本発明の一実施形態における残留応力推定方法を行う処理の手順を示すフローチャートである。 均一な固有ひずみ分布のモデルの例を示す説明図である。 不均一な固有ひずみ分布のモデルの例を示す説明図である。 本実施形態のシミュレーションにて解析対象とする溶接平板の形状を示す概略外観図である。 本実施形態のシミュレーションにて残留応力推定対象のモデルに設定した部材の形状を示す概略外形図である。 本実施形態のシミュレーションにてモデルに想定した固有ひずみを示すグラフである。 本実施形態のシミュレーションにて正解固有ひずみから得られた残留応力分布を示すグラフである。 本実施形態のシミュレーションにて部材に設定する測定点の位置を示す説明図である。 本実施形態のシミュレーションにて余盛面における計測値のみを用いる場合の、残留応力のx成分の推定値を示すグラフである。 本実施形態のシミュレーションにて余盛面における計測値のみを用いる場合の、残留応力のy成分の推定値を示すグラフである。 本実施形態のシミュレーションにて余盛面および裏面における計測値を用いる場合の、残留応力のx成分の推定値を示すグラフである。 本実施形態のシミュレーションにて余盛面および裏面における計測値を用いる場合の、残留応力のy成分の推定値を示すグラフである。 本実施形態のシミュレーションにおけるLカーブの例を示すグラフである。 本実施形態における残留応力推定システムの機能構成を示す概略ブロック図である。 本実施形態のシミュレーションにて解析対象とする、余盛を除去された溶接平板の形状を示す概略外観図である。 本実施形態のシミュレーションにて部材に設定する測定点の位置を示す説明図である。 本実施形態のシミュレーションにおける残留応力のx成分σの推定値を示すグラフである。 本実施形態のシミュレーションにおける残留応力のy成分σの推定値を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
なお、以下では、行列を”[”と”]”とで要素を括って表記し、ベクトルや行列の1行分または1列分を”{”と”}”とで要素を括って表記する。また、明細書本文において、ベクトルや行列を示す変数の太字表記を省略する。
図1は、本発明の一実施形態における残留応力推定方法を行う処理の手順を示すフローチャートである。同図の処理を人が行うようにしてもよいし、後述する残留応力推定システムが自動的に、あるいは半自動的に同図の処理を行うようにしてもよい。ここでは、人(作業者)が、コンピュータやひずみ測定装置を用いて同図の処理を行う場合を例に説明する。
図1の処理において、作業者は、まず、残留応力推定対象物(残留応力を推定する対象となっている物)における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する(ステップS101)。ステップS101は、関係取得ステップの一例に該当する。
本実施形態でいう固有ひずみとは、均一に生じた場合には、内部に応力を生じさせない非弾性ひずみである。なお、本実施形態でいう固有ひずみは、例えば熱ひずみや、塑性ひずみや、変態ひずみなど、具体的な物理量であってもよいがこれに限らない。本実施形態でいう固有ひずみは、物理的な実体を伴わない仮想的な量であってもよい。
また、本実施形態でいう残留応力に係る物理量とは、残留応力を求めることのできる物理量である。残留応力に係る物理量の例として、残留ひずみや、磁歪法における電圧測定値が挙げられる。例えば、残留ひずみを求め、当該残留ひずみから残留応力を求めることができる。また、磁歪法において磁気ひずみに対応する電圧値を求め、当該電圧値から残留応力を求めることができる。
以下では、残留応力に係る物理量として残留応力を求める場合を例に説明する。
ステップS101において、より具体的には、作業者は、残留応力推定対象物における固有ひずみの複数通りの設定の各々について、設定された固有ひずみを、有限要素モデルの要素(計算格子の格子点)に、初期ひずみ(強制ひずみ)として入力する。ここでいう有限要素モデルとは、有限要素法(Finite Element Method;FEM)におけるモデルである。そして、作業者は、入力した初期ひずみから得られる残留応力を求めることで、固有ひずみと残留応力との関係を取得する。
次に、作業者は、残留応力推定対象物の表面の残留応力を測定する(ステップS102)。ステップS102は、表面測定値取得ステップの一例に該当する。
例えば、作業者は、X線による残留応力測定装置を用いて、残留応力推定対象物の表面の残留応力を測定する。X線による残留応力測定装置にはポータブル型のものがあり、残留応力推定対象物が大きく移動が困難な場合でも、非破壊で表面の残留応力を測定し得る。
但し、残留応力推定対象物の表面の残留応力を測定する方法は、X線を用いる方法に限らない。例えば、作業者が、EBSD(Electron Backscatter Diffraction、電子線後方散乱解析)法を用いて残留応力推定対象物の表面の残留応力を測定するようにしてもよい。ここでいうEBSD法は、ひずみ測定対象物に対して電子線を当て、観測されるパターンから表面のひずみを求める方法である。表面のひずみを測定することで、表面の残留応力を測定できる。
あるいは、残留応力測定対象物が磁性体であって特性が既知の場合、磁歪法を用いて残留ひずみを測定するようにしてもよい。
次に、作業者は、ステップS101にて得られた固有ひずみと残留応力との関係、および、ステップS102にて得られた残留応力の測定値に基づいて、ステップS102にて得られた残留応力を生じさせる固有ひずみを求める(ステップS103)。ステップS103は、固有ひずみ推定ステップの一例に該当する。
そして、作業者は、ステップS103で得られた固有ひずみに基づいて、残留応力推定対象物の内部など各位置における残留応力を推定する(ステップS104)。ステップS104は、残留応力推定ステップの一例に該当する。
その後、図1の処理を終了する。
ここで、図2および図3を参照して、本実施形態における残留応力の推定についてさらに詳細に説明する。
本実施形態の方法では、残留応力分布(残留応力場)の推定に際して、当該残留応力分布を再現可能な固有ひずみを求める。すなわち、どこに、どれだけの固有ひずみを付加(有限要素モデルの要素に入力)すると残留応力分布が再現されるか、を求める。かかる固有ひずみが得られれば、当該固有ひずみに起因して生じる残留応力を求めることで、残留応力の3次元分布を得られる。
図2は、均一な固有ひずみ分布のモデルの例を示す説明図である。同図(A)は、固有ひずみを付加される前のモデルの状態を示す。同図(B)は、固有ひずみを付加されたモデルの状態を示す。なお、同図に示すモデルは一次元モデルである。より具体的には、棒A、BおよびCや剛体棒や剛体は、長さを考慮されるが、幅や厚みは無視される。
棒A、B、Cは、いずれも弾性係数および長さの等しい直線形状の棒であり、ひずみを付加されない状態において各棒の長さは等しい。棒A、B、Cのいずれも、一端(図で上側)を剛体棒に固定され、他端(図で下側)を剛体に固定されている。
剛体棒、剛体の何れも直線形状であり、また、棒A、B、Cは、それぞれ、剛体棒、剛体のいずれとも直角に配置されている。同図(A)の状態では、棒A、B、Cのいずれにも、ひずみは生じていない。
一方、同図(B)の状態では、棒A、B、Cそれぞれに同じ大きさ(+0.1)の固有ひずみが付加されている。ここで、伸び方向のひずみを「+」で示し、縮み方向のひずみを「−」で示している。
棒A、B、Cそれぞれに+0.1の固有ひずみが付加されたことで、棒A、B、C全体として+0.1のひずみ(伸び)が生じている。
ここで、棒A、B、Cの各々に付加される固有ひずみを、それぞれε 、ε 、ε とする。これら、ε 、ε 、ε を示すベクトルをεとすると、式(1)のように表される。
Figure 0006283866
このように固有ひずみを示すベクトルを、以下では「固有ひずみベクトル」と称する。図2(B)の状態における固有ひずみベクトルεは式(2)のように示される。
Figure 0006283866
また、固有ひずみが付加された結果生じる弾性ひずみ(残留ひずみ)をεeA、εeB、εeCとする。これら、εeA、εeB、εeCを示すベクトルをεとすると、式(2)のように表される。
Figure 0006283866
このように弾性ひずみを示すベクトルを、以下では「弾性ひずみベクトル」と称する。
なお、ヤング率をEで表すと、弾性ひずみ(残留ひずみ)εと、残留応力σとの間には、σ=Eεの関係がある。残留ひずみが求まれば、上記の関係に基づいて残留応力を求めることが出来る。逆に、残留応力が求まれば残留ひずみを求めることが出来る。
図2の例で、棒A、B、Cにおけるひずみは、それぞれにおける固有ひずみと弾性ひずみとの足し合わせにて示される。以下では、固有ひずみと弾性ひずみとを足し合わせたひずみを「全ひずみ」と称し、全ひずみを示すベクトルを「全ひずみベクトル」と称する。固有ひずみベクトルをεとし、弾性ひずみベクトルをεとすると、全ひずみベクトルεallは、式(3)のように示される。
Figure 0006283866
また、図2(B)の状態における全ひずみベクトルεallは式(5)のように示される。
Figure 0006283866
ここで、式(4)を変形し、式(2)および式(5)を適用すると、図2(B)の状態における弾性ひずみベクトルεは式(6)のように示される。
Figure 0006283866
このように、固有ひずみが均一な場合、弾性ひずみは生じない。これに対して、固有ひずみが不均一な場合は、弾性ひずみが生じる。
図3は、不均一な固有ひずみ分布のモデルの例を示す説明図である。同図(A)は、固有ひずみを付加される前のモデルの状態を示す。同図(B)は、固有ひずみを付加されたモデルの状態を示す。
図2の場合と同様、図3に示すモデルは一次元モデルである。より具体的には、棒A、BおよびCや剛体棒や剛体は、長さを考慮されるが、幅や厚みは無視される。
また、図2の場合と同様、図3においても、棒A、B、Cは、いずれも弾性係数および長さの等しい直線形状の棒であり、ひずみを付加されない状態において各棒の長さは等しい。棒A、B、Cのいずれも、一端(図で上側)を剛体棒に固定され、他端(図で下側)を剛体に固定されている。
剛体棒、剛体の何れも直線形状であり、また、棒A、B、Cは、それぞれ、剛体棒、剛体のいずれとも直角に配置されている。図2(A)と同様、図3(A)の状態では、棒A、B、Cのいずれにも、ひずみは生じていない。
一方、図3(B)の状態では、棒Bにのみ+0.3の固有ひずみが付加されており、棒Aや棒Cには固有ひずみは付加されていない。
図3(B)の状態における固有ひずみベクトルεは式(7)のように示される。
Figure 0006283866
棒A、B、Cの何れも剛体棒および剛体に固定されているため、棒Bにはマイナスの弾性ひずみ(棒Bを縮める弾性ひずみ)が生じ、棒A、Cにはそれぞれ、プラスの弾性ひずみ(棒Aや棒Cを伸ばす弾性ひずみ)が生じている。棒A、B、C全体として0.1伸びたところで弾性ひずみが釣り合っている。
図3の状態における弾性ひずみεは、式(8)のように示される。
Figure 0006283866
但し、εallは全ひずみベクトルを示し、εは固有ひずみベクトルを示す。
ここで、弾性ひずみには自己平行条件が成立するため、式(9)のように、弾性ひずみの総和は0になる。
Figure 0006283866
ここで、図2および図3の例において、棒Aの弾性ひずみεeAは、棒A、B、Cの固有ひずみε 、ε 、ε を用いて式(10)のように示される。
Figure 0006283866
また、棒Bの弾性ひずみεeBは、棒A、B、Cの固有ひずみε 、ε 、ε を用いて式(11)のように示される。
Figure 0006283866
また、棒Cの弾性ひずみεeCは、棒A、B、Cの固有ひずみε 、ε 、ε を用いて式(12)のように示される。
Figure 0006283866
式(10)〜式(12)を行列計算で表記すると、式(13)のようになる。
Figure 0006283866
このように、弾性ひずみベクトルεと固有ひずみベクトルεとの関係は、弾性応答行列Rを用いて式(14)のように示される。
Figure 0006283866
例えば、式(13)では弾性応答行列Rは式(15)のように示される。
Figure 0006283866
弾性応答行列Rの第i行の成分は、固有ひずみベクトルεの第i行を1とし、それ以外を0とした、式(16)に示される単位固有ひずみを付加することで得られる。
Figure 0006283866
また、対象とするモデルに単位固有ひずみを付加した場合の弾性ひずみの値は、当該モデルの形状、ヤング率およびポアソン比に依存する。従って、対象とするモデルの形状、ヤング率およびポアソン比を得られれば、当該モデルの弾性応答行列を生成することができる。
式(14)のように原因である固有ひずみεから結果である弾性ひずみεを求める過程を順問題と考えると、式(17)のように弾性ひずみεから固有ひずみεを求める過程は逆問題と考えられる。
Figure 0006283866
ここで、行列Rは、弾性応答行列Rの逆行列である。弾性応答行列Rと同様、対象とするモデルの形状、ヤング率およびポアソン比を得られれば、当該モデルの行列Rを生成することができる。
また、式(13)では弾性ひずみの全成分と固有ひずみの全成分とが関連付けられているのに対し、式(18)のように、対象の一部の弾性ひずみと対象全域の固有ひずみとを関連付けることもできる。
Figure 0006283866
従って、弾性応力推定対象の一部、例えば、弾性応力推定対象の表面の弾性ひずみを測定するだけで、対象全域の固有ひずみを推定することができる。そして、推定された固有ひずみを有限要素モデルに初期ひずみとして付加(入力)することで、対象全体の残留ひずみや残留応力を求めることができる。
ここで、未知数の個数が測定データの個数より少ない場合、ノルム最小二乗法を用いて解くことが考えられる。固有ひずみの分布傾向が既知である場合、当該分布傾向を制約条件として用いて未知数の個数を削減することで、弾性応力推定対象の表面のみの弾性ひずみ測定データに基づいて(すなわち、弾性応力推定対象の内部の弾性ひずみ測定データを必要とせずに)、ノルム最小二乗法を用いて弾性応力推定対象全域の固有ひずみ分布を推定することが可能になる。
これにより、図1に示す処理のように、弾性応力推定対象の表面の残留応力を測定することで、弾性応力推定対象の内部についても残留応力の分布を推定することができる。
次に、本実施形態における残留応力推定方法のシミュレーション例について説明する。
図4は、シミュレーションにて解析対象(残留応力推定対象)とする溶接平板の形状を示す概略外観図である。同図に示す溶接平板は、同形のステンレス鋼2枚を溶接して構成され、周囲に拘束のない突合せ溶接平板となっている。同図に示すx軸方向に溶接線があり、部分P11が余盛りの部分となっている。この溶接平板が溶接線について線対称であると想定して、2分の1モデル(y≧0の部分)を用いて解析を行った。
以下では、同図に示すx軸方向をステンレス板の板幅方向、y軸方向を長さ方向、z軸方向を板厚方向とする。
図5は、残留応力推定対象のモデル(有限要素モデル)に設定した部材(溶接部分を有するステンレス鋼板)の形状を示す概略外形図である。上記のように、図5に示す部材のモデルは、図4に示す溶接平板の2分の1モデル(y≧0の部分)となっている。図5に示す部材の、同図に向かって左側の端部が溶接線となっており、余盛りの部分P11が示されている。
また、図5に示す部材の大きさは、板幅(溶接線の長さ)60ミリメートル、長さ240ミリメートル(図5に示す部分は、半分の120ミリメートル)、板厚10ミリメートルであり、余盛りの片幅が8ミリメートル、余盛りの高さが0.3ミリメートルである。また、ステンレス鋼のヤング率E=2.0×10(10の5乗)メガパスカル(MPa)とし、ポアソン比n=0.26とした。
また、モデルの総節点数を3893とし、総要素数を3040とした。
図6は、モデルに想定した固有ひずみを示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、ひずみを示す。線L11、L12、L13は、それぞれ、固有ひずみのx方向成分、y方向成分、z方向成分を示す。本シミュレーションでは、文献:熊谷、他2名「余盛り除去による溶接残留応力の解析援用非破壊評価(概念提案と付き合わせ溶接平板による解析的実証)」、日本機械学会論文集A編、1999年、Vol.65、No.629、p.133−140において溶接平板に仮定されている固有ひずみを用いている。
なお、以下では、モデルに想定した固有ひずみを「正解固有ひずみ」と称する。
また、以下で残留応力分布を示す場合、測定位置の設定されていない部材の厚さ方向の中央部(z=5ミリメートル)の溶接線の中心(x=30ミリメートル)において、y方向への残留応力の分布を示す。
図7は、正解固有ひずみから得られた残留応力分布を示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、応力を示す。線L21、L22、L23は、それぞれ、残留応力のx方向成分、y方向成分、z方向成分を示す。
具体的には、正解固有ひずみを初期ひずみとして、図3に示す有限要素モデルに与えて残留応力を算出した。
なお、以下では、正解固有ひずみから得られた残留応力を「正解残留応力」と称する。
図8は、部材に設定する測定点の位置を示す説明図である。
同図に示すように、部材の板幅方向には、x=3.75ミリメートル、11.25ミリメートル、18.75ミリメートル、・・・、56.25ミリメートルと7.5ミリメートル間隔で8列の測定点を設定する。また、長さ方向には、y=10ミリメートル、12ミリメートル、14ミリメートと2ミリメートル間隔で3列の測定点を設定する。これにより、部材の表面に8×3=24箇所の測定点を設定する。
本シミュレーションで求める固有ひずみの未知数は、モデルの節点(計算格子の格子点)毎に3方向の成分があるため、節点数の3倍となる。この未知数を削減するため、溶接固有ひずみについて、式(19)に示すロジスティック関数の線形結合により固有ひずみの解空間を適切に限定する。
Figure 0006283866
ここで、添え字sは、板幅方向(溶接線方向、x方向)、長さ方向(溶接線垂直方向、y方向)、板厚方向(z方向)を示す。また、{asi}は未知係数ベクトルである。また、pとqとは、固有ひずみの存在領域が高々40ミリメートル程度であることを考慮して、z≦40ミリメートルの範囲で式(19)の右辺の4個の基本項がほぼ等間隔に分布するように定めた定数である。具体的には、p、q〜qの値は、式(20)のように設定した。
Figure 0006283866
さらに、薄肉溶接平板を想定して、固有ひずみは厚さ方向に均一に分布し、溶接線方向にも一定であると仮定している。
このように、x、y、zの3方向の各々について固有ひずみを4つのロジスティック関数で近似することで、未知数の個数は12個になる。なお、固有ひずみが厚さ方向に一定であっても、残留応力は厚さ方向に分布する。
ここで、固有ひずみベクトルと残留ひずみベクトルとの関係を示す弾性応答マトリクスRがN×M(N行M列)の行列によって表され、その階数がnである場合、特異値分解により行列Rは式(21)のように表される。
Figure 0006283866
ここで、Tは行列またはベクトルの転置を示す。また、行列Bは式(22)のように表される。
Figure 0006283866
行列B は式(23)のように表される。
Figure 0006283866
ここで、V、B、Uは、それぞれ、M×M、M×N、N×Nの行列である。また、μ(jは、1≦j≦nの整数)は行列Rの特異値と呼ばれる。この特異値が小さいと、Rの成分の値が大きくなり、固有ひずみの評価値(ベクトル表記){eest }に寄与する誤差の影響が拡大されてしまうため、解が不安定になる。
そこで、Bに代えて、人工ノイズと呼ばれる実数パラメータγを含んだ式(24)のBn_y を用いる。
Figure 0006283866
ここで、Iは単位行列を示す。人工ノイズを用いた解の安定化手法では、実数γの値を増加させることによりBn_y の各成分の値を減少させて解の安定化を図る。γを1つの実数パラメータと見做すことにより、安定化の度合いを連続的に設定することができる。
本シミュレーションでは、ひずみの計測をX線回析により行うことを想定し、平均0、標準偏差500μの正規分布に従う乱数を、各ひずみの計測値に加えた。さらに、計測誤差に対する残留応力推定値の感度(安定性)を確認するために、8つの異なる計測誤差のパターンに対してそれぞれ残留応力を推定した。
表面の残留応力の測定値として、余盛のある面(図8に示されている側の表面)のみの測定値を用いた場合と、余盛のある面および裏面(図4において下側の表面)における測定値を用いた場合とのそれぞれについて残留応力を推定した。なお、以下では、余盛のある面を余盛り面と称する。
余盛面における表面の残留応力の測定位置は、図8を参照して説明した位置に設定した。また、余盛面の裏面における表面の残留応力の測定位置は、余盛面における測定位置に対応する位置(余盛り面側と同じx座標およびy座標の位置)に設定した。
余盛面、裏面のいずれも、図5のy方向の各位置について、残留応力のx成分σと、y成分σとを推定した。
図9は、余盛面における計測値のみを用いる場合の、残留応力のx成分σの推定値を示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、残留応力を示す。線L31は、正解残留応力のx成分を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、残留応力のx成分の推定値を示す線が示されている。
図10は、余盛面における計測値のみを用いる場合の、残留応力のy成分σの推定値を示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、残留応力を示す。線L41は、正解残留応力のy成分を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、残留応力のy成分の推定値を示す線が示されている。
図11は、余盛面および裏面における計測値を用いる場合の、残留応力のx成分σの推定値を示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、残留応力を示す。線L51は、正解残留応力のx成分を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、残留応力のx成分の推定値を示す線が示されている。
図12は、余盛面および裏面における計測値を用いる場合の、残留応力のy成分σの推定値を示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、残留応力を示す。線L61は、正解残留応力のy成分を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、残留応力のy成分の推定値を示す線が示されている。
特に、図11および図12に示される結果によれば、余盛面だけでなく、その裏面についても表面の残留応力を測定することにより、部材内部までおよそ±100メガパスカルの精度で残留応力を推定することができる。この±100メガパスカルの精度は、溶接部材に対するX線回析の推定精度に匹敵する。
なお、適切な人工ノイズ(安定化パラメータ)の値は、Lカーブ法により決定した。
図13は、Lカーブの例を示すグラフである。同図の横軸は残留ノルム(Residual Norms)を示し、縦軸は、解ノルム(Solution Norms)を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、Lカーブが示されている。
図11および図12のシミュレーションでは、図13におけるL字の屈曲部をなすときの人工ノイズの値を適切な値として採用した。同様に、図9および図10のシミュレーションでも、L字の屈曲部に基づく人工ノイズの値を採用している。
以上のように、関係取得ステップにて、残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する。また、表面測定値取得ステップにて、残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する。そして、固有ひずみ推定ステップにて、関係取得ステップで得られた固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、表面測定値取得ステップで得られた残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める。さらに、残留応力推定ステップにて、固有ひずみに基づいて、残留応力推定対象物の内部など各位置における残留応力を推定する。
これにより、本実施形態の残留応力推定方法では、残留応力推定対象の表面における残留応力の測定値に基づいて、残留応力推定対象の内部など測定位置以外の位置についてまで残留応力を、より精度よく推定することができる。
また、残留応力推定対象の表面についてのみ残留応力を測定すればよいので、例えば、X線による残留応力測定装置などポータブル型の測定機器を用いることができる。これにより、残留応力推定対象物が大きく移動が困難な場合でも、非破壊で表面の残留応力を測定し得る。
また、本実施形態の残留応力推定方法では、残留応力の測定に際して、例えば余盛の除去など残留応力に対する加工を行う必要がない。従って、非溶接部材など特定の加工対象部分(例えば、余盛)を有していない部材に対しても本実施形態の残留応力推定方法を適用することができる。また、加工が不要なので加工ひずみによる測定誤差も生じない。
また、均一に溶接された部材などでは、固有ひずみの分布に対する制約条件を想定することで、適切に未知数の数を減らすことができる。これにより、未知数の数よりも測定データの数のほうが多い状態で、最小二乗法を用いて残留応力推定値を求めることができる。
また、溶接線付近など固有ひずみがあると予測される位置の近くで残留応力の測定を行うことで、より高精度に残留応力を推定することができる。
また、板状の部材など複数の面を有する部材では、1面のみならず複数の面について表面の残留応力を測定することで、残留応力の推定精度を高めることができる。特に、上記のシミュレーション例における余盛面および裏面のように、対向する2面など比較的離れた位置にある複数面について表面の残留応力を測定することで、残留応力の推定精度を高めることができる。
一方、表面の残留応力の測定精度が上がれば、1面のみの測定でも高い精度で残留応力を推定可能になることが期待される。
なお、本発明を、残留応力推定システムとして実施することも可能である。
図14は、本実施形態における残留応力推定システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、残留応力推定システム100は、関係取得部101と、表面測定値取得部102と、固有ひずみ推定部103と、残留応力推定部104と、結果出力部105とを具備する。
残留応力推定システム100は、例えばコンピュータと残留応力測定装置とを組み合わせて構成され、残留応力推定対象物の表面における残留応力の測定値から、内部など各位置における残留応力を推定する。
関係取得部101は、残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する。関係取得部101は、図1のステップS101の処理を行う。
表面測定値取得部102は、残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する。表面測定値取得部102は、図1のステップS102の処理を行う。なお、残留応力に係る物理量の測定は、ユーザが行うようにしてもよいし、残留応力推定システム100が測定機器を制御して自動的に行うようにしてもよい。
固有ひずみ推定部103は、関係取得部101が取得した固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、表面測定値取得部102が測定した残留応力に係る物理量に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める。固有ひずみ推定部103は、図1のステップS103の処理を行う。
残留応力推定部104は、固有ひずみ推定部103の取得した、残留応力推定対象物における固有ひずみの推定値に基づいて、残留応力推定対象物の内部など各位置における残留応力を推定する。残留応力推定部104は、図1のステップS104の処理を行う。
結果出力部105は、例えば液晶パネル等の表示画面を有し、残留応力推定部104の推定結果を表示する。但し、結果出力部105が残留応力推定部104の推定結果を出力する方法は表示に限らない。例えば、結果出力部105が、残留応力推定部104の推定結果を他の機器へ送信するようにしてもよい。
上記の構成により、残留応力推定システム100は、残留応力推定対象の表面における残留応力の測定値に基づいて、残留応力推定対象の内部など測定位置以外の位置についてまで残留応力を推定することができる。
残留応力推定対象の表面についてのみ残留応力を測定すればよいので、例えば、X線による残留応力測定装置などポータブル型の測定機器を用いることが出来る。これにより、残留応力推定システム100は、残留応力推定対象物が大きく移動が困難な場合でも、非破壊で表面の残留応力を測定し得る。
また、残留応力推定システム100では、残留応力の測定に際して、例えば余盛の除去など残留応力に対する加工を行う必要がない。従って、非溶接部材など特定の加工対象部分(例えば、余盛)を有していない部材に対しても本実施形態の残留応力推定方法を適用することができる。また、加工が不要なので加工ひずみによる測定誤差も生じない。
また、均一に溶接された部材などでは、固有ひずみの分布に対する制約条件を想定することで、適切に未知数の数を減らすことができる。これにより、未知数の数よりも測定データの数のほうが多い状態で、最小二乗法を用いて残留応力推定値を求めることができる。
また、溶接線付近など固有ひずみがあると予測される位置の近くで残留応力の測定を行うことで、より高精度に残留応力を推定することができる。
また、板状の部材など複数の面を有する部材では、1面のみならず複数の面について表面の残留応力を測定することで、残留応力の推定精度を高めることができる。特に、上記のシミュレーション例における余盛面および裏面のように、対向する2面など比較的離れた位置にある複数面について表面の残留応力を測定することで、残留応力の推定精度を高めることができる。
一方、表面の残留応力の測定精度が上がれば、1面のみの測定でも高い精度で残留応力を推定可能になることが期待される。
次に、本実施形態における残留応力推定方法のもう1つのシミュレーション例について説明する。
図15は、シミュレーションにて解析対象(残留応力推定対象)とする、余盛を除去された溶接平板の形状を示す概略外観図である。同図に示す溶接平板は、同形のステンレス鋼2枚を溶接して構成され、周囲に拘束のない突合せ溶接平板となっている。同図に示すx軸方向に溶接線があり、部分P21は余盛り除去後の平面となっている。
図4の場合と同様、この溶接平板が溶接線について線対称であると想定して、2分の1モデル(y≧0の部分)を用いて解析を行った。また、図4の場合と同様、以下では、図14に示すx軸方向をステンレス板の板幅方向、y軸方向を長さ方向、z軸方向を板厚方向とする。
また、図5の場合と同様、図15に示す部材の大きさは、板幅(溶接線の長さ)60ミリメートル、長さ240ミリメートル(図5に示す部分は、半分の120ミリメートル)、板厚10ミリメートルであり、余盛りの片幅が8ミリメートルである。
なお、上記のように、図15の例では余盛は既に除去されている。具体的には、平面(部材の上面)からはみ出た部分の金属が電解研磨にて加工ひずみを生じさせずに除去されたことを想定する。
また、図5の場合と同様、ステンレス鋼のヤング率E=2.0×10(10の5乗)メガパスカル(MPa)とし、ポアソン比n=0.26とした。また、モデルの総節点数を3893とし、総要素数を3040とした。
また、図6の場合と同様の正解固有ひずみ、および、図7の場合と同様の正解残留応力を想定する。また、図3〜図13を参照して説明した上記のシミュレーションと同様、人工ノイズを用いた解の安定化手法と、その安定化パラメータを決定するためのLカーブ法を用いる。
図16は、部材に設定する測定点の位置を示す説明図である。
同図に示すように、部材の板幅方向には、x=3.75ミリメートル、11.25ミリメートル、18.75ミリメートル、・・・、56.25ミリメートルと7.5ミリメートル間隔で8列の測定点を設定する。また、長さ方向には、y=2ミリメートル、4ミリメートル、6ミリメートと2ミリメートル間隔で3列の測定点を設定する。さらに、y=10ミリメートル、12ミリメートル、14ミリメートと2ミリメートル間隔で3列の測定点を設定する。すなわち、合計6列の測定点を設定する。
この図16に示す測定点を、部材の上面(z=10ミリメートル)と下面(z=0ミリメートル)とのそれぞれに設定する。測定値として得られる情報の数は192(観測点48点 × 2方向(x方向、y方向) × 表面2面(上面、下面))となる。本シミュレーションでも、図3〜図13を参照して説明した上記のシミュレーションと同様、固有ひずみの解空間を限定して未知数を削減する。
図17は、残留応力のx成分σの推定値を示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、残留応力を示す。線L71は、正解残留応力のx成分を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、残留応力のx成分の推定値を示す線が示されている。
図18は、残留応力のy成分σの推定値を示すグラフである。同図の横軸は、部材の長さ方向(y方向)の位置を示し、縦軸は、残留応力を示す。線L81は、正解残留応力のy成分を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、残留応力のy成分の推定値を示す線が示されている。
図17および図18に示されるように、図16を参照して説明した測定点を用いて測定を行うことで、図9〜図10に示す結果や、図11〜図12に示す結果よりもさらに良好な結果を得られる。
特に、図16を参照して説明した測定点のように余盛りを除去した部分を含む測定点を用いて測定を行うことで、比較的大きい残留ひずみの測定値を得られる。これにより、測定値に対する計測誤差の影響が相対的に小さくなり、良好な結果を得ることができる。
なお、残留応力推定システム100の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
100 残留応力推定システム
101 関係取得部
102 表面測定値取得部
103 固有ひずみ推定部
104 残留応力推定部
105 結果出力部

Claims (6)

  1. 残留応力推定対象物の各3次元位置における固有ひずみと前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得ステップと、
    前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得ステップと、
    前記関係取得ステップにて得られた前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得ステップにて得られた前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる各3次元位置の固有ひずみを求める固有ひずみ推定ステップと、
    各3次元位置の前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物の各3次元位置における残留応力を推定する残留応力推定ステップと、
    を有する残留応力推定方法。
  2. 前記表面測定値取得ステップでは、X線を用いる方法、電子線後方散乱解析法、又は磁歪法により、前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量の測定値を取得する請求項1記載の残留応力推定方法。
  3. 残留応力推定対象物の各3次元位置における固有ひずみと前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得部と、
    前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得部と、
    前記関係取得部が取得した前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得部が取得した前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる各3次元位置の固有ひずみを求める固有ひずみ推定部と、
    各3次元位置の前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物の各3次元位置における残留応力を推定する残留応力推定部と、
    を具備する残留応力推定システム。
  4. 前記表面測定値取得部は、X線を用いる方法、電子線後方散乱解析法、又は磁歪法により、前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量の測定値を取得する請求項3記載の残留応力推定システム。
  5. 残留応力推定システムを制御するコンピュータに、
    残留応力推定対象物の各3次元位置における固有ひずみと前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得ステップと、
    前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得ステップと、
    前記関係取得ステップにて得られた前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得ステップにて得られた前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる各3次元位置の固有ひずみを求める固有ひずみ推定ステップと、
    各3次元位置の前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物の各3次元位置における残留応力を推定する残留応力推定ステップと、
    を実行させるためのプログラム。
  6. 前記表面測定値取得ステップでは、X線を用いる方法、電子線後方散乱解析法、又は磁歪法により、前記残留応力推定対象物の表面の各2次元位置における残留応力に係る物理量の測定値を取得する請求項5記載のプログラム。
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