JP2015145834A - 残留応力推定方法、残留応力推定システムおよびプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】残留応力推定方法が、残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得ステップと、前記残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得ステップと、前記関係取得ステップにて得られた前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得ステップにて得られた前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める固有ひずみ推定ステップと、前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物における残留応力を推定する残留応力推定ステップと、を有する。
【選択図】図1
Description
例えば、残留応力推定対象の部材の表面における残留ひずみをX線回析にて測定する方法がある(非特許文献1参照)。
また、シンクロトロン放射光を用いて残留応力を測定する方法や、中性子回析を用いて残留応力を測定する方法がある。
また、超音波を用いて残理由応力を測定する方法(超音波法)がある(非特許文献2、3参照)。
また、鋼材などの磁性体に対しては、磁化した際の磁気ひずみを測定して残留応力を求める方法(磁歪法)がある。
例えば、X線回析を用いる方法では、部材の表面についてしか残留応力を得られない。
また、シンクロトロン放射光を用いる方法では、表面から数ミリメートル(mm)程度の深さまでしか残留応力を得られない。
一方、中性子回析を用いる方法では、深さ十数ミリメートルまで残留応力を測定することができるが、大規模は中性子照射施設が必要である。このため、中性子回析を用いる方法は実施可能な施設が限られており、当該施設へ部材を持ち込む必要がある。移動が困難な部材に対しては、中性子解析を用いる方法を適用することは困難である。
また、磁歪法の適用対象は、単純形状で強磁性体、かつ、材料特性が既知のものに限られる。
なお、以下では、行列を”[”と”]”とで要素を括って表記し、ベクトルや行列の1行分または1列分を”{”と”}”とで要素を括って表記する。また、明細書本文において、ベクトルや行列を示す変数の太字表記を省略する。
本実施形態でいう固有ひずみとは、均一に生じた場合には、内部に応力を生じさせない非弾性ひずみである。なお、本実施形態でいう固有ひずみは、例えば熱ひずみや、塑性ひずみや、変態ひずみなど、具体的な物理量であってもよいがこれに限らない。本実施形態でいう固有ひずみは、物理的な実体を伴わない仮想的な量であってもよい。
以下では、残留応力に係る物理量として残留応力を求める場合を例に説明する。
例えば、作業者は、X線による残留応力測定装置を用いて、残留応力推定対象物の表面の残留応力を測定する。X線による残留応力測定装置にはポータブル型のものがあり、残留応力推定対象物が大きく移動が困難な場合でも、非破壊で表面の残留応力を測定し得る。
あるいは、残留応力測定対象物が磁性体であって特性が既知の場合、磁歪法を用いて残留ひずみを測定するようにしてもよい。
そして、作業者は、ステップS103で得られた固有ひずみに基づいて、残留応力推定対象物の内部など各位置における残留応力を推定する(ステップS104)。ステップS104は、残留応力推定ステップの一例に該当する。
その後、図1の処理を終了する。
本実施形態の方法では、残留応力分布(残留応力場)の推定に際して、当該残留応力分布を再現可能な固有ひずみを求める。すなわち、どこに、どれだけの固有ひずみを付加(有限要素モデルの要素に入力)すると残留応力分布が再現されるか、を求める。かかる固有ひずみが得られれば、当該固有ひずみに起因して生じる残留応力を求めることで、残留応力の3次元分布を得られる。
剛体棒、剛体の何れも直線形状であり、また、棒A、B、Cは、それぞれ、剛体棒、剛体のいずれとも直角に配置されている。同図(A)の状態では、棒A、B、Cのいずれにも、ひずみは生じていない。
棒A、B、Cそれぞれに+0.1の固有ひずみが付加されたことで、棒A、B、C全体として+0.1のひずみ(伸び)が生じている。
なお、ヤング率をEで表すと、弾性ひずみ(残留ひずみ)εと、残留応力σとの間には、σ=Eεの関係がある。残留ひずみが求まれば、上記の関係に基づいて残留応力を求めることが出来る。逆に、残留応力が求まれば残留ひずみを求めることが出来る。
図3は、不均一な固有ひずみ分布のモデルの例を示す説明図である。同図(A)は、固有ひずみを付加される前のモデルの状態を示す。同図(B)は、固有ひずみを付加されたモデルの状態を示す。
また、図2の場合と同様、図3においても、棒A、B、Cは、いずれも弾性係数および長さの等しい直線形状の棒であり、ひずみを付加されない状態において各棒の長さは等しい。棒A、B、Cのいずれも、一端(図で上側)を剛体棒に固定され、他端(図で下側)を剛体に固定されている。
剛体棒、剛体の何れも直線形状であり、また、棒A、B、Cは、それぞれ、剛体棒、剛体のいずれとも直角に配置されている。図2(A)と同様、図3(A)の状態では、棒A、B、Cのいずれにも、ひずみは生じていない。
図3(B)の状態における固有ひずみベクトルε*は式(7)のように示される。
図3の状態における弾性ひずみεeは、式(8)のように示される。
ここで、弾性ひずみには自己平行条件が成立するため、式(9)のように、弾性ひずみの総和は0になる。
また、式(13)では弾性ひずみの全成分と固有ひずみの全成分とが関連付けられているのに対し、式(18)のように、対象の一部の弾性ひずみと対象全域の固有ひずみとを関連付けることもできる。
ここで、未知数の個数が測定データの個数より少ない場合、ノルム最小二乗法を用いて解くことが考えられる。固有ひずみの分布傾向が既知である場合、当該分布傾向を制約条件として用いて未知数の個数を削減することで、弾性応力推定対象の表面のみの弾性ひずみ測定データに基づいて(すなわち、弾性応力推定対象の内部の弾性ひずみ測定データを必要とせずに)、ノルム最小二乗法を用いて弾性応力推定対象全域の固有ひずみ分布を推定することが可能になる。
これにより、図1に示す処理のように、弾性応力推定対象の表面の残留応力を測定することで、弾性応力推定対象の内部についても残留応力の分布を推定することができる。
図4は、シミュレーションにて解析対象(残留応力推定対象)とする溶接平板の形状を示す概略外観図である。同図に示す溶接平板は、同形のステンレス鋼2枚を溶接して構成され、周囲に拘束のない突合せ溶接平板となっている。同図に示すx軸方向に溶接線があり、部分P11が余盛りの部分となっている。この溶接平板が溶接線について線対称であると想定して、2分の1モデル(y≧0の部分)を用いて解析を行った。
以下では、同図に示すx軸方向をステンレス板の板幅方向、y軸方向を長さ方向、z軸方向を板厚方向とする。
また、モデルの総節点数を3893とし、総要素数を3040とした。
なお、以下では、モデルに想定した固有ひずみを「正解固有ひずみ」と称する。
また、以下で残留応力分布を示す場合、測定位置の設定されていない部材の厚さ方向の中央部(z=5ミリメートル)の溶接線の中心(x=30ミリメートル)において、y方向への残留応力の分布を示す。
具体的には、正解固有ひずみを初期ひずみとして、図3に示す有限要素モデルに与えて残留応力を算出した。
なお、以下では、正解固有ひずみから得られた残留応力を「正解残留応力」と称する。
同図に示すように、部材の板幅方向には、x=3.75ミリメートル、11.25ミリメートル、18.75ミリメートル、・・・、56.25ミリメートルと7.5ミリメートル間隔で8列の測定点を設定する。また、長さ方向には、y=10ミリメートル、12ミリメートル、14ミリメートと2ミリメートル間隔で3列の測定点を設定する。これにより、部材の表面に8×3=24箇所の測定点を設定する。
このように、x、y、zの3方向の各々について固有ひずみを4つのロジスティック関数で近似することで、未知数の個数は12個になる。なお、固有ひずみが厚さ方向に一定であっても、残留応力は厚さ方向に分布する。
そこで、B−に代えて、人工ノイズと呼ばれる実数パラメータγを含んだ式(24)のBn_y −を用いる。
表面の残留応力の測定値として、余盛のある面(図8に示されている側の表面)のみの測定値を用いた場合と、余盛のある面および裏面(図4において下側の表面)における測定値を用いた場合とのそれぞれについて残留応力を推定した。なお、以下では、余盛のある面を余盛り面と称する。
余盛面、裏面のいずれも、図5のy方向の各位置について、残留応力のx成分σxと、y成分σyとを推定した。
図13は、Lカーブの例を示すグラフである。同図の横軸は残留ノルム(Residual Norms)を示し、縦軸は、解ノルム(Solution Norms)を示す。また、同図には、8つの計測誤差のパターンの各々について、Lカーブが示されている。
図11および図12のシミュレーションでは、図13におけるL字の屈曲部をなすときの人工ノイズの値を適切な値として採用した。同様に、図9および図10のシミュレーションでも、L字の屈曲部に基づく人工ノイズの値を採用している。
また、残留応力推定対象の表面についてのみ残留応力を測定すればよいので、例えば、X線による残留応力測定装置などポータブル型の測定機器を用いることができる。これにより、残留応力推定対象物が大きく移動が困難な場合でも、非破壊で表面の残留応力を測定し得る。
また、溶接線付近など固有ひずみがあると予測される位置の近くで残留応力の測定を行うことで、より高精度に残留応力を推定することができる。
一方、表面の残留応力の測定精度が上がれば、1面のみの測定でも高い精度で残留応力を推定可能になることが期待される。
図14は、本実施形態における残留応力推定システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、残留応力推定システム100は、関係取得部101と、表面測定値取得部102と、固有ひずみ推定部103と、残留応力推定部104と、結果出力部105とを具備する。
残留応力推定システム100は、例えばコンピュータと残留応力測定装置とを組み合わせて構成され、残留応力推定対象物の表面における残留応力の測定値から、内部など各位置における残留応力を推定する。
表面測定値取得部102は、残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する。表面測定値取得部102は、図1のステップS102の処理を行う。なお、残留応力に係る物理量の測定は、ユーザが行うようにしてもよいし、残留応力推定システム100が測定機器を制御して自動的に行うようにしてもよい。
残留応力推定部104は、固有ひずみ推定部103の取得した、残留応力推定対象物における固有ひずみの推定値に基づいて、残留応力推定対象物の内部など各位置における残留応力を推定する。残留応力推定部104は、図1のステップS104の処理を行う。
残留応力推定対象の表面についてのみ残留応力を測定すればよいので、例えば、X線による残留応力測定装置などポータブル型の測定機器を用いることが出来る。これにより、残留応力推定システム100は、残留応力推定対象物が大きく移動が困難な場合でも、非破壊で表面の残留応力を測定し得る。
また、溶接線付近など固有ひずみがあると予測される位置の近くで残留応力の測定を行うことで、より高精度に残留応力を推定することができる。
一方、表面の残留応力の測定精度が上がれば、1面のみの測定でも高い精度で残留応力を推定可能になることが期待される。
図15は、シミュレーションにて解析対象(残留応力推定対象)とする、余盛を除去された溶接平板の形状を示す概略外観図である。同図に示す溶接平板は、同形のステンレス鋼2枚を溶接して構成され、周囲に拘束のない突合せ溶接平板となっている。同図に示すx軸方向に溶接線があり、部分P21は余盛り除去後の平面となっている。
図4の場合と同様、この溶接平板が溶接線について線対称であると想定して、2分の1モデル(y≧0の部分)を用いて解析を行った。また、図4の場合と同様、以下では、図14に示すx軸方向をステンレス板の板幅方向、y軸方向を長さ方向、z軸方向を板厚方向とする。
なお、上記のように、図15の例では余盛は既に除去されている。具体的には、平面(部材の上面)からはみ出た部分の金属が電解研磨にて加工ひずみを生じさせずに除去されたことを想定する。
また、図6の場合と同様の正解固有ひずみ、および、図7の場合と同様の正解残留応力を想定する。また、図3〜図13を参照して説明した上記のシミュレーションと同様、人工ノイズを用いた解の安定化手法と、その安定化パラメータを決定するためのLカーブ法を用いる。
同図に示すように、部材の板幅方向には、x=3.75ミリメートル、11.25ミリメートル、18.75ミリメートル、・・・、56.25ミリメートルと7.5ミリメートル間隔で8列の測定点を設定する。また、長さ方向には、y=2ミリメートル、4ミリメートル、6ミリメートと2ミリメートル間隔で3列の測定点を設定する。さらに、y=10ミリメートル、12ミリメートル、14ミリメートと2ミリメートル間隔で3列の測定点を設定する。すなわち、合計6列の測定点を設定する。
特に、図16を参照して説明した測定点のように余盛りを除去した部分を含む測定点を用いて測定を行うことで、比較的大きい残留ひずみの測定値を得られる。これにより、測定値に対する計測誤差の影響が相対的に小さくなり、良好な結果を得ることができる。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
101 関係取得部
102 表面測定値取得部
103 固有ひずみ推定部
104 残留応力推定部
105 結果出力部
Claims (3)
- 残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得ステップと、
前記残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得ステップと、
前記関係取得ステップにて得られた前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得ステップにて得られた前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める固有ひずみ推定ステップと、
前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物における残留応力を推定する残留応力推定ステップと、
を有する残留応力推定方法。 - 残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得部と、
前記残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得部と、
前記関係取得部が取得した前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得部が取得した前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める固有ひずみ推定部と、
前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物における残留応力を推定する残留応力推定部と、
を具備する残留応力推定システム。 - 残留応力推定システムを制御するコンピュータに、
残留応力推定対象物における、固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係を取得する関係取得ステップと、
前記残留応力推定対象物の表面における残留応力に係る物理量の測定値を取得する表面測定値取得ステップと、
前記関係取得ステップにて得られた前記固有ひずみと残留応力に係る物理量との関係、および、前記表面測定値取得ステップにて得られた前記残留応力に係る物理量の測定値に基づいて、当該残留応力を生じさせる固有ひずみを求める固有ひずみ推定ステップと、
前記固有ひずみに基づいて、前記残留応力推定対象物における残留応力を推定する残留応力推定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
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