始めに、実施例1のリクライナ4の構成について、図1〜図10を用いて説明する。本実施例のリクライナ4は、図1に示すように、自動車のシート1に適用されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2を、着座部となるシートクッション3に対して、背凭れ角度の調整を行える状態に連結する回転止め可能な回転軸装置(継手装置)として機能する構成となっている。ここで、シートクッション3が本発明の「ベース」に相当する。上述したリクライナ4は、シートバック2の左右両側部の骨格を成す各サイドフレーム2Fの下端部と、シートクッション3の左右両側部の骨格を成す各サイドフレーム3Fの後端部と、の間にそれぞれ介在して設けられており、これらを互いに連結した状態となっている。詳しくは、図2〜図4に示すように、上述したシートバック2の左右両側のサイドフレーム2Fは、シートクッション3の左右両側のサイドフレーム3Fの内側に位置して設けられており、これらの各間に上述したリクライナ4がそれぞれ介在して設けられている。
ここで、上述したシートクッション3の各サイドフレーム3Fは、シートバック2の各サイドフレーム2Fよりも板厚の大きな構成とされている。シートクッション3の各サイドフレーム3Fは、上述したシートバック2に凭れ掛かる着座乗員の荷重を、シートバック2を支える各側のリクライナ4を介して曲げモーメントとして強く受けるため、板厚を大きくして高い構造強度を持たせるためである。シートバック2の各サイドフレーム2Fは、軽量化のためにシートクッション3の各サイドフレーム3Fよりも薄板状の部材によって形成されている。
上述した各リクライナ4は、それぞれ、電動式の構成となっており、常時は、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態(回転止め状態)に保持されている。各リクライナ4は、シートクッション3の車両外側の側部に設けられた図示しない電動スイッチの操作が行われることにより、それぞれが一斉にシートバック2の背凭れ角度を前後方向に変動させていくように回動操作され、電動スイッチの操作が止められることにより、それらの回動操作が一斉に止められるようになっている。
具体的には、各リクライナ4は、それらの中心部に各々の回動操作を行うための操作部材60が組み込まれており、これら操作部材60同士がロッド5Rを介して互いに一体的に連結されていることにより、ロッド5Rが軸回動操作されることによって各々が一斉にシートバック2の背凭れ角度を前後方向に変動させていくように回動操作されるようになっている。上述したロッド5Rは、シートバック2の車両外側のサイドフレーム2Fの内側面に固定された駆動ユニット5に動力伝達可能な状態に連結されており、駆動ユニット5から伝達される回動力やブレーキ力によって正逆双方向に軸回動操作されたり回転止めされたりするようになっている。
以下、上述した各リクライナ4の具体的な構成について詳しく説明していく。なお、各リクライナ4は、互いに左右対称向きに配設されているが、実質的な構成は同じものとなっている。したがって、以下では、これらを代表して、図2〜図4に示されている車両外側に配置されたリクライナ4の構成について説明することとする。図5〜図6に示すように、リクライナ4は、互いに軸方向に組み付けられる円板形状のクッション側連結部材10及びバック側連結部材20と、これらの間に組み付けられる一対の楔部材40A,40Bと、一対の楔部材40A,40Bの間に跨って組み付けられるロックスプリング50と、バック側連結部材20の中心部に枢着される操作部材60と、両連結部材10,20の間に跨って組み付けられる座付きの円筒型形状に形成されたリング部材70と、を有して構成されている。
上述した両連結部材10,20、一対の楔部材40A,40B、及び操作部材60は、それぞれ、焼き入れ処理された硬い鋼板材によって形成されている。ここで、上述したクッション側連結部材10が本発明の「一方側の連結部材」に相当し、バック側連結部材20が本発明の「他方側の連結部材」に相当し、一対の楔部材40A,40Bとロックスプリング50とから成る動作機構が本発明の「回転止め機構」に相当する。
上述したクッション側連結部材10は、略円板型形状に形成されており、その外周縁部に、軸方向の外側に向かって円筒状に突出する内歯車11が板厚方向に半抜き加工されて形成された構成となっている。この内歯車11の内周面には、後述するバック側連結部材20の中央部に突出形成された外歯車21の外歯列21Aを半径方向の内側から押し付けて噛合させることのできる内歯列11Aが円周方向に並んで形成されている。上記内歯列11Aは、内歯車11の内周面上の全周領域に亘って形成されている。
また、クッション側連結部材10の中央部には、板厚方向に正円状に貫通した丸孔12が形成されている。この丸孔12内には、後述するバック側連結部材20の中心部に突出形成された円筒部22や、一対の楔部材40A,40Bが組み付けられるようになっている。上記クッション側連結部材10は、上述した丸孔12の内部に組み付けられたバック側連結部材20の円筒部22と丸孔12の内周面との間で、一対の楔部材40A,40Bが円周方向に両挟み状に押し込まれたりどちらか一方側に押し回されたりすることにより、バック側連結部材20を回転止めしたりどちらか一方側に相対回転させたりするようになっている。この動きの具体的な説明については、後に詳述することとする。
また、図5に示すように、上述したクッション側連結部材10の軸方向の外側面上には、円弧状に湾曲した形に突出する3つのダボ13が同一円周上の位置に円周方向に並んで形成されている。これらダボ13は、クッション側連結部材10の中央の壁部が板厚方向(軸方向)に半抜き加工されることによって形成されている。これらダボ13は、図3及び図7に示すように、クッション側連結部材10の軸方向の外側面をシートクッション3のサイドフレーム3Fの内側面にあてがえて結合する際に、同サイドフレーム3Fに形成された3つのダボ孔3Fb内にそれぞれ嵌め込まれて溶接により一体的に結合される部位となっている。上記シートクッション3のサイドフレーム3Fには、上述した3つのダボ孔3Fbに跨る形で正円状に大きく貫通した嵌合孔3Faが形成されている(図3参照)。
図5〜図6に示すように、バック側連結部材20は、上述したクッション側連結部材10よりもひとまわり大きな外径をもつ略円板型形状に形成されており、その中央部に、クッション側連結部材10への組み付け方向となる軸方向の内側に向かって円筒状に突出する外歯車21が板厚方向に半抜き加工されて形成された構成となっている。この外歯車21の外周面には、上述したクッション側連結部材10の内歯車11の内周面に形成された内歯列11Aと噛合することのできる外歯列21Aが円周方向に並んで形成されている。上述した外歯列21Aは、外歯車21の外周面上の全周領域に亘って形成されている。
上述した外歯車21は、クッション側連結部材10の内歯車11よりも外径が小さく、かつ、歯数も1つ少ない構成とされている。具体的には、外歯車21は、その外歯列21Aの歯数が33個となっており、内歯車11は、その内歯列11Aの歯数が34個となっている。上述したバック側連結部材20は、上述したクッション側連結部材10に対して、互いの歯車同士が半径方向に噛合した状態に組み付けられている。
ここで、上述したバック側連結部材20の中心部には、クッション側連結部材10への組み付け方向となる軸方向の内側に向かって円筒状に突出する円筒部22がバーリング加工されて形成されている。上記円筒部22は、前述したクッション側連結部材10の中心部に形成された丸孔12よりも小さな外径をもつ形に形成されており、その円筒内には、板厚方向に正円状に貫通する貫通孔22Aが形成されている。上述した円筒部22は、上述したバック側連結部材20の外歯車21をクッション側連結部材10の内歯車11に噛合させる軸方向の組み付けにより、クッション側連結部材10の丸孔12内に挿通され、丸孔12の内周面との間に円環状の隙間Sを形成するようになっている(図7〜図8参照)。
図8に示すように、上述した円環状の隙間Sは、上述したバック側連結部材20の外歯車21がクッション側連結部材10の内歯車11に対して特定の半径方向(図示では下方向)に押し付けられて互いの中心位置20R,10Rが偏心した状態に組み付けられるようになっていることにより、外歯車21と内歯車11とが噛合する円周領域では半径方向の隙間が狭く、その軸中心を挟んだ反対側では半径方向の隙間が広い形となる構成とされている。そして、上記円環状の隙間S内には、一対の楔部材40A,40Bが配設され、更にこれら楔部材40A,40Bの間には、これらを互いに円周方向に引き離す方向に附勢力をかける開リング状のロックスプリング50が掛けられている。
このような構成となっていることにより、一対の楔部材40A,40Bは、上記円環状の隙間S内において、半径方向の隙間の広い領域から狭い領域に向かって円周方向に両挟み状に押し込まれるように附勢力を受けた状態とされている。そして、これらの押し込み力によって、バック側連結部材20が、常時、クッション側連結部材10に対して、特定の半径方向(図示では下方向)に押し付けられた状態として(押圧点P1,P2)、互いの歯車21,11同士が特定の半径方向に噛合してバックラッシのない状態に押し付けられて回転止めされた状態に保持されるようになっている。
そして、上記バック側連結部材20は、上述したクッション側連結部材10に対して回転止めされた状態から、上述した両挟み状に押し込まれた状態とされている一対の楔部材40A,40Bのうちのどちらか一方が、後述する操作部材60の軸回転操作によって押し込み状態が解除される方向(例えば図9に示す向かって時計回り方向)に押し回されることにより、クッション側連結部材10に対する回転止め状態が解かれると共に、クッション側連結部材10に対して互いの歯車21,11同士の噛み合い位置を回転方向に変化させるように図示時計回り方向か反時計回り方向かに押し回されていくようになっている。
図6に示すように、上述したバック側連結部材20の軸方向の外側面上には、円弧状に湾曲した形に突出する3つのダボ23が同一円周上の位置に円周方向に並んで形成された状態とされている。これらダボ23は、バック側連結部材20の外周縁部が板厚方向に半抜き加工されることによって形成されている。これらダボ23は、図4及び図7に示すように、バック側連結部材20の軸方向の外側面をシートバック2のサイドフレーム2Fの内側面にあてがえて結合する際に、同サイドフレーム2Fに形成された3つのダボ孔2Fb(図3参照)内にそれぞれ嵌め込まれて溶接により一体的に結合される部位となっている。上記シートバック2のサイドフレーム2Fには、更に、上述した3つのダボ孔2Fbによって囲まれた領域の中心部に、ロッド5Rを軸方向に通せるようにするための正円状に貫通した通し孔2Faが形成されている。ここで、上述したシートバック2のサイドフレーム2Fが本発明の「フレーム」に相当する。
図6に示すように、上述したバック側連結部材20の外周縁部には、半径方向の内側に凹んだ凹み部位24と、凹み部位24よりも半径方向の外側に張り出した張出部位25と、が円周方向に交互に6つずつ並んで形成されている。上述した各凹み部位24は、それぞれ、各張出部位25よりも円周方向の幅が広い形に形成されており、各凹み部位24の形成領域が、バック側連結部材20の外周縁部の円周領域の大部分の領域を占めている。上述した3つのダボ23は、上述した円周方向に6つ並ぶ各凹み部位24のうちの1つ飛びの凹み部位24の形成領域と重なる位置にそれぞれ形成されている。各ダボ23の外周面は、各凹み部位24の底面と面一状の円弧面となっている。
上述した各凹み部位24は、それぞれ、後述するリング部材70の円筒形状の一端に形成された、円周方向の6箇所から軸方向に突出する各結合部71をそれぞれ軸方向に受け入れて外周面上にあてがえた状態に嵌合させるように機能するものとなっている。また、各張出部位25は、それぞれ、上述したリング部材70の各結合部71を各凹み部位24内に軸方向の適切な位置まで挿通した際に、各結合部71の円周方向の配置間領域に形成された各窪み部位71Aをそれぞれ軸方向に当接させて、各結合部71の軸方向の挿通位置を位置決めする突き当て部位として機能する構成となっている。
上述した各凹み部位24に嵌合されるリング部材70の各結合部71のうち、各ダボ23のない3つの凹み部位24の形成領域に嵌合される3つの結合部71は、それぞれ、軸方向にストレートに延出する形状とされており、それらの軸方向に挿し込まれた先の端部が、アーク溶接によって、各凹み部位24の外周面上に溶接されて一体化されている(図7参照)。
一方、図6に示すように、残りの3つの結合部71、すなわち各ダボ23の形成された3つの凹み部位24の形成領域に嵌合される3つの結合部71は、それぞれ、上述した他の3つの結合部71よりも軸方向に長く延出した形状とされていると共に、それらの軸方向に延出した先の端部に、半径方向の外側にフランジ状に張り出す裏当て部73が形成された構成となっている。そして、上記裏当て部73の形成された3つの結合部71は、それぞれ、上述した各凹み部位24への挿し込みにより、各裏当て部73の軸方向の外側面を、バック側連結部材20の外歯車21より外周側の領域の軸方向の外側面と面一状となる位置に位置付けるようになっている(図7参照)。
上記組み付けにより、リング部材70は、バック側連結部材20の各ダボ23をシートバック2のサイドフレーム2Fに形成された各ダボ孔2Fb内に嵌合させて、バック側連結部材20の軸方向の外側面とサイドフレーム2Fの内側面とを面当接させた際に、上記各裏当て部73がサイドフレーム2Fの内側面に面当接した状態にあてがえられるようになっている(図10参照)。これにより、リング部材70の各裏当て部73は、上記各ダボ23の外周面とサイドフレーム2Fの各ダボ孔2Fbの内周面との当接部位を、それぞれ、サイドフレーム2Fの軸方向の外側からアーク溶接する際に、サイドフレーム2Fの溶接部位Weに裏側からあてがわれた状態となって、溶接熱のかけられる溶接部領域の肉厚を増大させて、サイドフレーム2Fの溶け落ちを防止するように作用するようになっている。
次に、一対の楔部材40A,40Bの構成について説明する。図5に示すように、一対の楔部材40A,40Bは、それぞれ、互いに左右対称な円弧状に湾曲した形に形成されており、上述したクッション側連結部材10の丸孔12とバック側連結部材20の円筒部22との間に形成される円環状の隙間S内にセットされて組み付けられている(図8参照)。これら楔部材40A,40Bは、それぞれ、前述した円環状の隙間Sの形に沿うように、それらの円弧形状の一端側から他端側にかけて半径方向の肉厚が薄くなる先細り状の形に湾曲して形成されている。
そして、一対の楔部材40A,40Bの肉厚の厚い側の端部には、それぞれ、部分的に切り欠かれた形のバネ掛部41A,41Bが形成されており、これらバネ掛部41A,41Bの間に、開リング状のロックスプリング50の各端部50A,50Bが両内側から掛着されている。これにより、一対の楔部材40A,40Bは、上記ロックスプリング50の附勢力によって、互いに円周方向に引き離される方向の力を受けた状態として、上記円環状の隙間Sにおける半径方向の隙間の広い領域から狭い領域に向かって円周方向に両挟み状に押し込まれるように附勢力を受けた状態とされている。そして、上記の押し込み力によって、バック側連結部材20は、常時、クッション側連結部材10に対して、特定の半径方向(図示では下方向)に押し付けられた状態(押圧点P1,P2)として、互いの歯車21,11同士を特定の半径方向に噛合させてバックラッシのない状態に押し付けられて回転止めされた状態に保持されるようになっている。
上述した一対の楔部材40A,40Bによる両歯車11,21間(両連結部材10,20間)の回転止め状態は、バック側連結部材20の円筒部22内に軸回転可能な状態に枢着された操作部材60が、ロッド5Rの軸回動操作によって一方向或いは他方向に軸回動操作されることで解除されるようになっている。次に、この操作部材60の構成について説明する。図6に示すように、操作部材60は、略円板形状の押さえ板部61と、押さえ板部61の中央部から軸方向に円筒状に突出する円筒部62と、押さえ板部61の外周縁部から上述した円筒部62と同じ軸方向に円弧状に突出する操作部63と、を有する形に形成されている。
上述した操作部材60の中心部には、その円筒部62と押さえ板部61とに軸方向に貫通するように六角孔60Aが形成されており、六角孔60Aの内部に断面六角形状のロッド5Rが軸方向に挿通嵌合されて回転方向に一体的な状態に連結された状態とされている。上述した押さえ板部61は、その外周部の円周方向の一部領域が切り欠かれた形状となっており、上記切り欠きによって回転方向に面を向けるように形成された各端部面が、それぞれ、上述したロックスプリング50の各楔部材40A,40Bに掛着された各端部50A,50Bを回転方向に押し動かすバネ押部61A,61Bとして形成されている(図9参照)。
上述した操作部材60は、図5、図7及び図8に示すように、その円筒部62がバック側連結部材20の円筒部22内に軸方向に嵌め込まれて軸回転可能な状態に支えられた状態として設けられるようになっている。そして、この組み付けにより、操作部材60は、上述した操作部63が一対の楔部材40A,40Bの先細り側の端部間の隙間(円環状の隙間S)内に差し込まれた状態にセットされ、上述した押さえ板部61が一対の楔部材40A,40Bを軸方向の外側からあてがえると共に各バネ押部61A,61Bがロックスプリング50の各端部50A,50Bと円周方向に並ぶ位置に配置された状態にセットされるようになっている。なお、図8〜図9では、リクライナ4の内部構造を分かりやすく表すために、操作部材60の押さえ板部61やロックスプリング50の一部を仮想線によって透過させた形で表している。
上記のように組み付けられた操作部材60は、その中心部の六角孔60A内にロッド5Rが軸方向に挿通されて回転方向に一体的な状態に連結され、ロッド5Rが前述した駆動ユニット5の駆動によって正逆どちらかの方向に軸回動操作されることにより、同方向に軸回動操作されるようになっている。ここで、上述したロッド5Rは、図2に示すように、上述した操作部材60の六角孔60A内に軸方向の内側から外側に挿通された先の箇所に抜け止めワッシャ5Raが装着されることにより、操作部材60に対して軸方向に抜け止めされた状態に保持されている。上述したロッド5Rの軸回動操作により、操作部材60は、例えば図9に示すように図示時計回り方向に軸回動操作された時には、操作部63によって図示左側の楔部材40Aの先細り側の端部を押圧して同方向に押し回すと共に、押さえ板部61に形成された図示左側のバネ押部61Aによってロックスプリング50の同側の楔部材40Aに掛着された端部50Aを押圧して楔部材40Aとの掛着状態から外す。
この動作により、操作部材60は、図示左側の楔部材40Aを上記円環状の隙間S内の狭い側の領域内に押し込んでいた状態から広い側の領域内に外し出すと共に、同楔部材40Aに掛けられていたロックスプリング50による附勢力を解除して、同側の楔部材40Aを図示時計回り方向に円滑に押し回す。そして、この動作により、一対の楔部材40A,40Bによる両歯車11,21間(両連結部材10,20間)の回転止め状態が解除されると共に、両楔部材40A,40Bが図示時計回り方向に押し回されて、円環状の隙間Sの狭い側の領域を図示時計回り方向に漸次押し広げていく形で回転移動を進行させていく。これにより、バック側連結部材20の円筒部22がクッション側連結部材10の丸孔12に対して押圧力を受ける特定の半径方向が、図示下方側から図示時計回り方向に漸次変化していき、外歯車21が内歯車11に対する噛合い位置を図示時計回り方向に漸次変化させていく。その結果、外歯車21が内歯車11に対して、互いの歯数差によって、相対的に図示反時計回り方向に自転していき、バック側連結部材20(シートバック2)がクッション側連結部材10(シートクッション3)に対して前方側に傾動していくようになっている。
上記の傾動は、ロッド5Rの軸回動操作が止められることによって、各楔部材40A,40Bが再びロックスプリング50の附勢力により前述した円環状の隙間Sの狭い側の領域内に両挟み状に押し込まれた状態に戻されて止められるようになっている。なお、上記ロッド5Rが上記とは逆方向に軸回動操作された時には、リクライナ4は上記とは逆方向(シートバック2を後傾させる方向)に回動操作されるようになっている。
ところで、図2〜図3に示すように、上述したリクライナ4が結合されるシートクッション3のサイドフレーム3Fの嵌合孔3Fa内には、円筒容器型形状のキャップ80が嵌め込まれて溶接されている。上記キャップ80は、上記サイドフレーム3Fの嵌合孔3Faの外周部(3つのダボ孔3Fbの配置間領域に形成された突起部)と溶接されて結合されており、上述したリクライナ4に軸方向に組み付けられてセットされる一対の楔部材40A,40Bやロックスプリング50や操作部材60が軸方向の外側に脱落しないように押さえる機能をするものとなっている。
次に、リング部材70の構成について説明する。図5〜図6に示すように、リング部材70は、薄い鋼板が中空円板状に打ち抜かれると共に、その打ち抜かれた外周縁部分が更に板厚方向に絞り加工されることによって、全体が略円筒状の形に形成されると共に、その軸方向の一端側の縁部に軸方向に面を向けた中空円板状の座(押さえ部72)が付いた形に形成されている。上記軸方向に面を向けた中空円板状の座(押さえ部72)は、クッション側連結部材10の外周部を構成する内歯車11に軸方向の外側からあてがわれる部位となっている。
上記リング部材70は、上記押さえ部72が形成された側とは反対側の軸方向に略円筒状に延びる先端側領域が、円周方向に離間した6つの曲がり片に分断されて、上述したバック側連結部材20の外周部に形成された各凹み部位24内に軸方向に挿通されて結合される結合部71として形成されている。また、上記各結合部71の円周方向の配置間領域には、それぞれ、軸方向の先端側から切り込まれて凹んだ窪み部位71Aが形成されている。
上述した各結合部71は、上述したバック側連結部材20の外周部に形成された各凹み部位24内に軸方向に挿通されて各凹み部位24の外周面にあてがわれた状態に嵌合されるように、それらの内径が各凹み部位24の外径とほぼ同じ(僅かに大きい)大きさとなっており、かつ、各々の周長も、対応する各凹み部位24の周長とほぼ同じ(僅かに短い)大きさとなっている。
上述した各結合部71は、そのうち、各ダボ23のない3つの凹み部位24の形成領域に嵌合される3つの結合部71が、それぞれ、軸方向にストレートに延出する形状とされている。これら結合部71は、それらの軸方向に挿し込まれた先の端部が、アーク溶接によって、各凹み部位24の外周面上にそれぞれ溶接されて一体化されている(図7参照)。また、残り3つの結合部71、すなわち各ダボ23の形成された3つの凹み部位24の形成領域に嵌合される3つの結合部71は、それぞれ、上述した他の3つの結合部71よりも軸方向に長く延出した形状とされていると共に、それらの軸方向に延出した先の端部に、半径方向の外側にフランジ状に張り出す裏当て部73が形成された構成となっている。
各裏当て部73は、図10にて前述したように、上記各ダボ23の外周面とサイドフレーム2Fの各ダボ孔2Fbの内周面との当接部位を、それぞれ、サイドフレーム2Fの軸方向の外側からアーク溶接する際に、サイドフレーム2Fの溶接部位Weに裏側からあてがわれた状態となって、溶接熱のかけられる溶接部領域の肉厚を増大させて、サイドフレーム2Fの溶け落ちを防止するように機能するものとなっている。各裏当て部73は、それらの周長が、各ダボ23の周長とほぼ同じ(僅かに長い)大きさとなっており、各ダボ23が溶接される溶接部位Weの円周方向の全域に亘って広く裏側からあてがわれるようになっている。
また、上述した各結合部71の配置間領域に形成された各窪み部位71Aは、上述した各結合部71を各凹み部位24内に適切に嵌合させる位置まで挿通することにより、バック側連結部材20の各張出部位25の軸方向の内側面と当接し、各結合部71の軸方向の挿通位置の位置決めを行うようになっている。上記リング部材70は、上記バック側連結部材20への組み付け(結合)により、その押さえ部72がクッション側連結部材10の内歯車11の軸方向の外側面に対面した状態となり、クッション側連結部材10をバック側連結部材20に対して軸方向に脱落させることなく回転させられる状態に保持した状態となる(図3〜図4、及び図7参照)。
以上をまとめると、本実施例のリクライナ4は、次のような構成となっている。すなわち、リクライナ4は、互いに相対回転可能な状態に軸方向に組み付けられたクッション側連結部材10及びバック側連結部材20(二枚の円板状の連結部材)と、これらの間に設けられてこれらの相対回転を止める一対の楔部材40A,40B及びロックスプリング50(回転止め機構)と、クッション側連結部材10及びバック側連結部材20の外周部間に跨って装着されてこれらを軸方向に組み付けた状態に保持するリング部材70と、を有する。リング部材70は、クッション側連結部材10(一方側の連結部材)の外周部に軸方向の外側からあてがわれる押さえ部72と、バック側連結部材20(他方側の連結部材)の外周部に結合される結合部71と、バック側連結部材20におけるダボ23の形成された円周領域上の外周部から半径方向の外側に張り出して、ダボ23が嵌合されて軸方向の外側から溶接されるシートバック2のサイドフレーム2F(フレーム)の溶接部位Weに軸方向の内側からあてがわれる裏当て部73と、を有する構成となっている。
このように、バック側連結部材20のダボ23が嵌合されて溶接されるサイドフレーム2Fの溶接部位Weに、リング部材70の裏当て部73が裏側からあてがわれることで、ダボ23を溶接する時のサイドフレーム2Fの溶け落ちを防止することができる。上記リング部材70の裏当て部73は、バック側連結部材20とは別部材で構成される、形状の自由度が大きな構成とされるため、サイドフレーム2Fの溶け落ちを適切に防止できる形に広く形成することができる。
また、クッション側連結部材10は、円板の中央部に内歯車11が軸方向の外側に半抜きされて形成された構成とされている。バック側連結部材20は、円板の中央部に上記内歯車11に対して噛合い位置を変化させながら回転するように噛合する外歯車21が軸方向の内側に半抜きされて形成され、かつ、外歯車21より外周側の領域にダボ23が形成された構成とされている。このような構成となっていることにより、バック側連結部材20をシートバック2のサイドフレーム2Fに対して高強度に接合することができる。すなわち、外歯車21の形成されるバック側連結部材20は、外歯車21より外周側の領域が軸方向の外側に面を張り出す構成となるため、このような領域にダボ23を形成することで、ダボ23の軸方向の突出を抑え、かつ、ダボ23をより外周縁側に近い領域に配置した、構造強度の高い構成とすることができる。このような構成において、シートバック2のサイドフレーム2Fの溶接部位Weにあてがわれる裏当て部73を設けることで、より有意義にサイドフレーム2Fの溶接部位Weの溶け落ちを防止することができる。
また、ダボ23が、バック側連結部材20の外周縁部位に形成されている。このように、バック側連結部材20が、ダボ23の外周側に全く肉のない形状とされていても、リング部材70に形成された裏当て部73によって、サイドフレーム2Fの溶接部位Weの溶け落ちを防止することができる。したがって、バック側連結部材20をより半径方向にコンパクトな形に形成することができる。
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、本発明のリクライナは、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、シートバックが連結されるベースは、フロア上に設けられるシートクッションの他、フロア上に設けられる別のブラケットなどであってもよい。
また、リクライナは、シートバックをフロア上のベースに対して背凭れ角度の調整を行える状態に連結する構成となっているものであればよく、上記実施例で示したような電動の無段階式のリクライナの他、手動の無段階式のリクライナであってもよい。また、特開2011−116303号公報等の文献に開示されているような歯のロック解除の操作によって回転止めしたり回転可能にしたりする有段階式のリクライナであってもよい。具体的には、互いに相対回転可能な状態に組み付けられた二枚の円板状のラチェット(一方側の連結部材或いは他方側の連結部材)及びガイド(他方側の連結部材或いは一方側の連結部材)と、ガイドに円周方向に支えられた状態として設けられ、半径方向の外側に押し出される移動によりラチェットに噛合してラチェットのガイドに対する回転移動をロックするポール(回転止め機構)と、ラチェットとガイドとの外周部間に跨って装着されてこれらを軸方向に組み付けた状態に保持するリング部材と、を有する構成から成るものである。
また、上記実施例では、一方側の連結部材(クッション側連結部材10)に内歯車が形成され、他方側の連結部材(バック側連結部材20)に外歯車が形成された構成を例示したが、外歯車が形成される側の部材を一方側の連結部材とし、内歯車が形成される側の部材を他方側の連結部材とした構成であってもよい。すなわち、本発明のリング部材の裏当て部がダボの外周側にあてがわれる他方側の連結部材は、リング部材が一体的に結合される側の部材として構成されるものであればよい。また、他方側の連結部材は、ダボの外周側に、フレームに対して裏側からあてがわれる肉部を有した形状とされたものであっても構わない。このような構成においても、上記肉部だけではフレームの溶け落ちを十分に防止できない場合に、リング部材の裏当て部を上記肉部の外周側に更に張り出させる形で設けることにより、フレームの溶け落ちをより適切に防止できる構成を得ることができる。
また、リング部材の結合部は、他方側の連結部材の外周部に対して圧入やかしめによって一体的に結合されるものであってもよい。また、リング部材の結合部が結合される他方側の連結部材の外周部は、他方側の連結部材の外周面のほか、他方側の連結部材の軸方向に面を向けるどちらかの側面であってもよい。
また、リング部材の裏当て部は、他方側の連結部材の外周部におけるダボが形成された円周領域上において、ダボが溶接されるフレームの溶接部位に裏側からあてがわれるように半径方向の外側に突出する構成となっているものであればよく、その突出する形や大きさは特定の形態に限定されるものではない。しかし、裏当て部は、少なくともダボがフレームに溶接される領域をカバーできる程度の周長や半径方向の張出し長さを有していることが好ましく、軸方向の厚みも、フレームの溶け落ちを適切にカバーできる程度の厚みを有していることが好ましい。