JP6281617B2 - ディスクブレーキ用キャリパの製造方法 - Google Patents
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Description
このディスクブレーキによる自動車の制動は、車輪とともに回転するディスクロータの軸方向両側に配置された1対のパッドを、シリンダに封入されているピストンを油圧により前進させることにより、上記ディスクロータの両側面に押し付けて行われる。
上記インナキャリパ部102とアウタキャリパ部103とには、それぞれ2個のシリンダ105,105が形成され、各シリンダ105,105には、それぞれピストン106,106が液密に挿入されている。
また、インナキャリパ部102とアウタキャリパ部103とには、上記各シリンダ105,105の内底部同士を接続するとともにディスクロータDの径方向外側に向かって延伸するインナ側シリンダ接続油路110Aと、アウタ側シリンダ接続油路110Bとがそれぞれ形成されている。
そして、これらのシリンダ接続油路110A,110Bは、キャリパボディ101を鋳造する際に、崩壊性中子を使用して形成されている。
その結果、ブレーキパッド107,107の押圧力が車軸に対する制動力として働き、車軸の回転速度を低下させ、または停止させる。つまり、ブレーキが掛かることになる。
すなわち、インナキャリパ部102およびアウタキャリパ部103にそれぞれ形成されるシリンダ接続油路110A,110Bは、キャリパボディ101の製造時に、金型のキャビティ内に設置された中子で形成されるが、それらのシリンダ接続油路110A,110B同士を連通する油圧連通路113は、キャリパボディ101の鋳造後に、例えば、インナキャリパ部102の外表面部からドリル加工してあけられている。
ところが、ドリルによる油圧連通路113の加工は、その穴径が小さいうえに、インナキャリパ部102からアウタキャリパ部103にわたっての穴あけ加工となるため、加工寸法が長くなる。その結果、ドリルの進行速度によってはドリルが反るおそれがあり、加工が困難であるとともに、加工精度が悪くなるおそれがあり、歩留まりも悪くなる、という不都合がある。
さらに、油圧連通路113の加工は、その穴径が小さいうえに、加工寸法が長いので、ドリルを慎重に進行させなければならず、加工時間が長くなって生産性が悪く、その結果、コストパフォーマンスも悪いものであった。
そうすると、実際にピストン106を装着したシリンダ105に油圧を供給して、ピストン106を作動させ、インナキャリパ部102とアウタキャリパ部103のシリンダ105に均等に油圧が作動しているか否かを確認する必要がある。
そして、各キャリパ部102,103のシリンダ105に均等に油圧が作動していない場合、制動が不安定になるとともに、ブレーキパッド107が片減りする等の問題が生じ、結局、不良品となる。そこまでの作業によって、初めて、キャリパボディ101が製品として使えるか否か、の判断がなされるので、多くの手間と時間がかかり、この面でも、コストパフォーマンスが悪いものであった。
前記シリンダ側油圧通路用つなぎ部および油圧連通路用つなぎ部のそれぞれを有する、崩壊性材料でなる中子を作成する第1の工程と、
前記中子を、金型の中子支持面に設置する第2の工程と、
前記金型のキャビティに溶湯を充填して前記インナキャリパ部、前記アウタキャリパ部、および前記ブリッジ部を成形する第3の工程と、
前記溶湯の凝固後に前記中子を崩壊させて、前記各シリンダ側油圧通路、および前記油圧連通路を得る第4の工程と、
前記油圧連通路に向かって前記インナキャリパ部の外表面からブリーダ取付け部を有するブリーダ穴を形成する第5の工程と、を備えていることを特徴とする。
キャリパ10は、ディスクロータDを挟んで相互に対向して配置され、且つそれぞれの長さ方向両端部がブリッジ部14により一体的に連結されたインナキャリパ部12およびアウタキャリパ部13を有するとともに、当該インナキャリパ部12およびアウタキャリパ部13の各対向面領域に設けられ、作動時にブレーキパッド42を介して、上記ディスクロータDをその両面から同時に押圧する押圧ピストン用の複数(本実施形態ではインナキャリパ部12側およびアウタキャリパ部13側に各2個)の油圧シリンダ15,15を備えて構成されている。
ディスクブレーキ40は、以上のような構成となっているので、油圧によりピストンをディスクロータD側に前進させると、ブレーキパッド42がディスクロータDに摺接して、ディスクロータDの回転が制動されることになる。つまり、ブレーキが掛けられることになる。
したがって、キャリパ10には、これらの各キャリパ部12,13とブリッジ部14とのそれぞれの内側側面により、長方形形状の前記開口部が形成され、この開口部により窓穴11が構成されている。
そして、ブリッジ部14は、ディスクロータDの外周面と対向する対向面14Aが半径寸法rの円弧状に形成されている。また、この対向面14Aの半径寸法rは、ディスクロータDの半径寸法より所定寸法だけ大きな寸法に設定されている。
つまり、ブリッジ部14の対向面14Aとインナキャリパ部12およびアウタキャリパ部13の前記突出部12A,13Aの一端面同士により、ディスク溝14Bが構成されている。
第1の通路16Aは、図8に示すように、断面略四角形形状に形成され、その側面の一直線部が油圧シリンダ15,15の底部と略一致するように形成されている。そして、第2の通路16Bも第1の通路16Aと略同様の形状に形成されている。
これらの第1の通路17Aおよび第2の通路17Bも、図8で示すような、上記インナキャリパ部12の第1の通路16Aおよび第2の通路16Bと略同様の形状に形成されている。
なお、油圧連通路18は、ブリッジ部14の厚さtの中心寄りにあけられている。
すなわち、油圧連通路18が、前述のようにブリッジ部14の厚さtの中心寄りにあけられているのに対して、ブリーダ穴19は、油圧連通路18から前記ディスクロータDの中心部側に所定寸法離れて形成されている。そのため、そのままの状態では、ブリーダ穴19と油圧連通路18との重なり部が少なく、両者19,18の連通が充分でなくなるおそれがある。
また、エアブリーダ取付け部19Aの先端面19Bに、ブリーダ穴19をあける時にドリルの先端をガイドする断面V字条の窪み部(図略)を予め形成しておいてもよい。
上記ブリーダ穴19にはエアブリーダ45(図2参照)が装着されている。
なお、エアブリーダ取付け部19Aは、インナキャリパ部12の外表面から外方に突起した状態に形成されているが、ブリーダ穴19とほぼ直交する面を有していればよく、インナキャリパ部12の外表面から窪んだ形状に形成してもよい。
本実施形態で使用される中子20は、例えば、樹脂を被覆した珪砂を熱で固めて所定の形状に形成したシェル中子である。
このつなぎ通路形成部22は、中子20を、各キャリパ部12,13およびブリッジ部14の一体鋳造成形時に、当該各キャリパ部12,13およびブリッジ部14内に同時に埋設した状態に設定し、鋳造成形後に、つなぎ通路形成部22を除去することによって、前記各シリンダ側油圧通路16,17および油圧連通路18が形成されるようになっている。
そして、上記第2のつなぎ部23Bと第2のつなぎ部24Bの先端同士間に、前記油圧連通路用つなぎ部26が架けわたされている。
この接続コブ部26Aは、油圧連通路用つなぎ部26と第2のつなぎ部23Bとの接続点部Kにおいて、油圧シリンダ形成突起部25の高さ方向側に向いて突起して設けられている。
これらの内周型31および外周型32は、耐熱性、耐摩耗性に優れた工具鋼の、例えばSKD61等で形成されている。
さらに、内周型31の中央部分において、上記キャビティ31Aに臨む部位には、ディスク溝部14Bを形成するための溝部形成突起部31Cが、中子押え部31Bの長さ方向両端の側面基部から外周型32側に突出して設けられている。
また、内周型31においてキャビティ31Aおよび窪み部31D以外の部位は、外周型32との割り型面31Eとなっている。
そして、上記内周型31のキャビティ31Aと外周型32のキャビティ31A内に、前記アルミニウムあるいはアルミニウム合金の溶湯を流し込むことで、前記キャリパ10の外形が形成されるようになっている。
さらに、外周型32の長さ方向の略中央部には、上記キャビティ32Aに繋がる湯口部33を構成する窪み部32Dが形成されている。この窪み部32Dは、内周型31の窪み部31Dに対応して形成されており、かつ内周型31の割り型面31Eと対応する外周型32の割り型面32Eから円弧状に窪んだ形状に形成されている。
そして、内周型31と外周型32とを組み立てたとき、各型31,32の窪み部31E,32Eにより、前記湯口部33が構成されるようになっている。
すなわち、重力鋳造方法は、金型30の湯口部33からキャビティ31A,32Aに、前述のように、アルミニウムあるいはアルミニウム合金の溶湯を流し込んで鋳造する際に、溶湯の重量(重力)を利用してキャビティ31A,32A全体に溶湯を充填させるようにする鋳造方法である。
なお、図13は、外周型32のキャビティ32A内に中子20をセットし、内周型31を外周型32と合わせたときの、内周型31と中子20との関係を示す。
ここで、上記湯口部33に溶湯を流し込んで、キャリパ10を形成するとき、湯口部33に充填された溶湯が押し湯部34を構成する。
その後、所定温度で熱処理する等の方法で、中子20に含まれている樹脂を溶かして中子20を崩壊させる。そして、キャリパ10が充分に冷却されたら、インナ側のシリンダ15,15、アウタ側のシリンダ15,15、シリンダ側油圧通路116,17、および油圧連通路18内に残った中子20の砂分を、エアを吹き付ける等して除去する(第4の工程)。
その後、キャリパ10から切断線Aに沿って押湯部34を切り離すことで、図1に示すような、加工処理前のキャリパ10が完成する。
(1)本実施形態のディスクブレーキ用キャリパの製造方法により製造されたキャリパ10によれば、インナキャリパ部12およびアウタキャリパ部13の油圧シリンダ15,15を、ブリッジ部14を介してシリンダ側油圧通路16,17で連通するとともに、これらのシリンダ側油圧通路16,17同士を連通する油圧連通路18を、中子20を使用することで、シリンダ側油圧通路16,17と同時に一体成形することができる。その結果、インナキャリパ部12およびアウタキャリパ部13に設けられたシリンダ側油圧通路16,17同士を連通させるための油圧連通路18を、鋳造後にドリルで穴加工、つまり機械加工せずにすむので、前述した加工の手間が軽減され、生産性の著しい向上を図ることができる。
中子の変形例として、例えば、図17に示すような形状の中子60を用いてもよい。この中子60は、前記実施形態の中子20が、一方のブリッジ部14に形成される油圧連通路18(図1等参照)を形成するための前記油圧連通路用つなぎ部26を設けたものであったのに対して、例えば、前記既存の例として説明した図18のようなキャリパボディ101と同じように、2箇所のブリッジ部14に油圧連通路を設ける場合に用いられるように構成されている。
すなわち、図17に示すように、1本の油圧連通路用つなぎ部26に対して、前記本体部21を挟んで対称位置に第2の油圧連通路用つなぎ部26Cが設けられている。そして、この第2の油圧連通路用つなぎ部26Cの両端部には、前記第1のつなぎ部23A,24Aに連通する第3のつなぎ部23C,24Cの各先端部が連通されている。
なお、この図17において、図9に示す各部位と同じ部位には、同一符号を付してある。
また、前記実施形態では、本体部21とシリンダ形成突起部25とが接続され一体に形成されている中子を示したが、本体部21とシリンダ形成突起部25とが一体に形成されていなくても構わない。
ディスクロータを挟んで相互に対向して配置され且つそれぞれの長さ方向両端部がブリッジ部により一体的に連結されたインナキャリパ部およびアウタキャリパ部を有するとともに、当該インナキャリパ部およびアウタキャリパ部の各対向面領域に設けられ作動時にブレーキパッドを介して前記ディスクロータをその両面から同時に押圧する押圧ピストン用の油圧シリンダを有するディスクブレーキ用キャリパであって、
前記インナキャリパ部側の前記油圧シリンダと前記アウタキャリパ部側の前記油圧シリンダとを、それぞれの背面側に設けられたシリンダ側油圧通路と前記ブリッジ部内に設けられた油圧連通路で連通するとともに、
前記各シリンダ側油圧通路と前記油圧連通路とは、前記インナキャリパ部、アウタキャリパ部およびブリッジ部の鋳造成形時に使用する中子に前記各シリンダ側油圧通路および油圧連通路に対応するつなぎ通路形成部を予め設けることにより、前記各キャリパ部およびブリッジ部の一体鋳造成形時に前記各キャリパ部およびブリッジ部内に同時に埋設した状態に設定されたものであることを特徴とするディスクブレーキ用キャリパ。
付記1に記載したディスクブレーキ用キャリパにおいて、
前記中子の一部を成す前記つなぎ通路形成部は、
前記インナキャリパ部およびアウタキャリパ部の前記各油圧シリンダの背面側から前記インナキャリパ部およびアウタキャリパ部に沿って且つ前記ブリッジ部側に向けて延設されたシリンダ側油圧通路用つなぎ部と、これらの各つなぎ部の先端部に連結され前記ブリッジ部内に埋設される油圧連通路を鋳造成形する油圧連通路用つなぎ部とにより構成されていることを特徴とするディスクブレーキ用キャリパ。
付記1又は2に記載したディスクブレーキ用キャリパにおいて、
前記インナキャリパ部およびアウタキャリパ部の前記油圧シリンダをそれぞれ複数設け、
前記つなぎ通路形成部を、隣接する前記各油圧シリンダの背面側に設けられるとともに当該各油圧シリンダ同士をつなぐ第1のつなぎ部と、この第1のつなぎ部に連通し前記油圧シリンダの背面から前記ブリッジ部に向けて延設された第2のつなぎ部と、これらの第1、第2のつなぎ部の先端同士間に架けわたされた前記油圧連通路とで構成したことを特徴とするディスクブレーキ用キャリパ。
付記1〜3のいずれか1項に記載したディスクブレーキ用キャリパにおいて、
前記インナキャリパ部側に位置する前記シリンダ側油圧通路用つなぎ部と前記通路形成部との接続点部に当該接続点部の内部空間を広げるための接続コブ部を設けるとともに、この接続コブ部を、前記通路形成部から前記ディスクロータの面に平行で且つディスクロータの中心部側に向けて突設した状態で設け、
この接続コブ部により形成される鋳造後の前記内部空間に向けて、前記インナキャリパ部の外表面からエア抜き用のブリーダ穴を形成したことを特徴とするディスクブレーキ用キャリパ。
付記4に記載したディスクブレーキ用キャリパにおいて、
前記インナキャリパ部の外表面の一部に前記ブリーダ穴に装着するエアブリーダ取付け用のエアブリーダ取付け部を設けるとともに、このエアブリーダ取付け部の端面を前記ブリーダ穴に対してほぼ直交となるように形成したことを特徴するディスクブレーキ用キャリパ。
12 インナキャリパ部
13 アウタキャリパ部
14 ブリッジ部
14A 対向面
14B ディスク溝
15 油圧シリンダ
16 シリンダ側油圧通路
16A 第1の通路
16B 第2の通路
17 シリンダ側油圧通路
17A 第1の通路
17B 第2の通路
18 油圧連通路
19 ブリーダ穴
20 中子
22 つなぎ通路形成部
23 シリンダ側油圧通路用つなぎ部
23A 第1のつなぎ部
23B 第2のつなぎ部
24 シリンダ側油圧通路用つなぎ部
24A 第1のつなぎ部
24B 第2のつなぎ部
25 シリンダ形成突起部
26 油圧連通路用つなぎ部
30 金型
31 内周型
32 外周型
33 湯口部
34 押し湯部
40 ディスクブレーキ
S 内部空間
K 接続点部
Claims (3)
- ディスクロータを挟んで相互に対向して配置され且つそれぞれの長さ方向両端部がブリッジ部により一体的に連結されたインナキャリパ部およびアウタキャリパ部と、当該インナキャリパ部およびアウタキャリパ部の各対向面領域に設けられ作動時にブレーキパッドを介して前記ディスクロータをその両面から同時に押圧する押圧ピストン用の油圧シリンダと、前記インナキャリパ部側の前記油圧シリンダおよび前記アウタキャリパ部側の前記各油圧シリンダの背面側にそれぞれ設けられたシリンダ側油圧通路と、前記ブリッジ部内に設けられると共に前記インナキャリパ部側のシリンダ側油圧通路と前記アウタキャリパ部側のシリンダ側油圧通路とを連通する油圧連通路と、を形成して成るディスクブレーキ用キャリパの製造方法であって、
前記シリンダ側油圧通路用つなぎ部および油圧連通路用つなぎ部のそれぞれを有する、崩壊性材料でなる中子を作成する第1の工程と、
前記中子を、金型の中子支持面に設置する第2の工程と、
前記金型のキャビティに溶湯を充填して前記インナキャリパ部、前記アウタキャリパ部、および前記ブリッジ部を成形する第3の工程と、
前記溶湯の凝固後に前記中子を崩壊させて、前記各シリンダ側油圧通路、および前記油圧連通路を得る第4の工程と、
前記油圧連通路に向かって前記インナキャリパ部の外表面からブリーダ取付け部を有するブリーダ穴を形成する第5の工程と、を備えていることを特徴とするディスクブレーキ用キャリパの製造方法。 - 請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパの製造方法において、
前記第1の工程では、前記インナキャリパ部および前記アウタキャリパ部の前記油圧シリンダ形成突起部をそれぞれ複数設ける工程と、前記油圧シリンダ形成突起部同士を接続するつなぎ通路形成部を設ける工程が含まれていることを特徴とするディスクブレーキ用キャリパの製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載したディスクブレーキ用キャリパの製造方法において、
前記第1の工程では、前記インナキャリパ部側の前記シリンダ側油圧通路用つなぎ部と前記油圧連通路用つなぎ部との接続点部に、前記接続点部を包含すると共に当該接続点部から突出する接続コブ部を設ける工程が含まれていることを特徴とするディスクブレーキ用キャリパの製造方法。
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