JP6279934B2 - スプリンクラヘッド - Google Patents

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Description

本発明は火災を消火するスプリンクラヘッドに関するものである。
スプリンクラヘッドは、放水口を塞ぐ弁体と、弁体を支持する感熱分解部(リンク機構)とを備えている。感熱分解部には火災時の熱によって溶融する感熱体が設置されており、感熱分解部は感熱体が溶融することで分解する機構で構成されている。そして、一般的には、感熱体には半田が使用されている。(特許文献1参照)。
特開平11−276631号公報
スプリンクラヘッドは長期間にわたって建物等に設置されるため、材料自体の安定性が要求される。
しかし、上記特許文献1においては、スプリンクラヘッドが腐食性ガスの雰囲気下に設けられた場合、半田が腐食(特に金属腐食)し、火災時に半田が溶融しづらくなることがあり、そのため、動作上の不具合が生じる虞がある。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、感熱体として半田を用いつつも、感熱体を腐食(特に金属腐食)させないスプリンクラヘッドを提供することを目的とする。
本発明は、筒状のシリンダと、該シリンダ内に収容される可溶合金と、該可溶合金を押圧するピストンと、を有するスプリンクラヘッドにおいて、可溶合金は円柱状に構成されてシリンダ内に収容され、ピストンと可溶合金とに挟まれて設けられ、可溶合金が外気に露出しないように、可溶合金を覆う可溶合金被覆部材を備え、可溶合金被覆部材は、円板状の平板であり、外径がシリンダの内径とほぼ同じで、可溶合金被覆部材の外周面とシリンダの内周面とが接するように設けられ、耐腐食性を有する有機化合物からなることを特徴とするものである。
本発明は、可溶合金を、耐腐食性を有する有機化合物からなる可溶合金被覆部材で覆い、可溶合金が外気に露出しないように構成されるため、スプリンクラヘッドが腐食性ガスの雰囲気下に設置されたとしても、可溶合金が腐食することはなく、スプリンクラヘッドを正常に作動させることができる。
本発明に係る実施の形態1及び2に係るスプリンクラヘッドの縦断面図である。 本発明に係る実施の形態1の要部(図1の鎖線の楕円で囲まれた部分)の部分拡大断面図である。 本発明に係る実施の形態2の要部(図1の鎖線の楕円で囲まれた部分)の部分拡大断面図である。 本発明に係る実施の形態3及び4に係るスプリンクラヘッドの縦断面図である。 本発明に係る実施の形態3の要部(図4の鎖線の楕円で囲まれた部分)の部分拡大断面図である。 本発明に係る実施の形態4の要部(図4の鎖線の楕円で囲まれた部分)の部分拡大断面図である。
図1及び図2を参照して、スプリンクラヘッド100の基本的な構成及び動作について説明した後、本発明に係る構成について詳述する。なお、図1を含め、以下の図面においては、各構成部材同士の大きさの関係を限定するものではなく、実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面における上下は、紙面から見た上下と対応している。さらに、以下の説明において、スプリンクラヘッドが放水動作をしないときを通常時又は監視時と称するものとする。
・実施の形態1
<スプリンクラヘッド100の構成>
図1を参照して、スプリンクラヘッド100の基本的な構成について説明する。
図1において、11は本体である。本体11には、上下に貫通する放水口12が設けられると共に、上部外周には配管類に接続するための例えば雄ねじ状の第1のねじ部13が設けられる。また、下部にはフランジ部14が設けられ、フランジ部14の下方には例えば雌ねじ状の第2のねじ部15が設けられる。
21は筒状のフレームである。フレーム21には、その上部に雄ねじ22が設けられてフランジ部14の第2のねじ部15に螺合される。雄ねじ22の下方には荷重調整用のスリット23が対向して1対設けられている。また、下部内側には、後述するアーム61a及び61bの上部を係合する環状の係合部24が設けられている。
31はデフレクタである。デフレクタ31には、その中央部に略小判形状の穴が設けられ、周側には、図示しない複数の散水用の爪片が所定角度に折り曲げられて設けられている。また、デフレクタ31には複数、例えば3本の図示されないガイドロッド34が立設され、ガイドロッド34の上端はデフレクタ31の降下を所定位置で停止させるためのストッパリング35に係止されている。
41は弁体である。弁体41は、上面側に放水口12内に入り込む凸部42が設けられ、下面には突出部43が設けられると共にその外側に複数、例えば1対の折り曲げ片44が設けられている。
51はアームガイドの基板である。基板51は長板状部とその中央部の円板部とからなり、円板部の中央部分には弁体41の突出部43と折り曲げ片44が挿通する孔が設けられ、この孔を挿通した折り曲げ片44の折り曲げによって弁体41の下面に結合されている。52は基板51の長尺側の両側に設けた1対のガイド片52(図1では1対のうち一方のみが図示されている)である。ガイド片52は火災による作動時にデフレクタ31の穴の内壁に案内されて降下する。従って、通常は、図1に図示されているように、ガイド片52の下端はデフレクタ31より僅かに下方へ突出する長さ(高さ)を有している。この基板51とガイド片52とによってアームガイドを構成している。
56はバランサである。バランサ56は、長板部と、その両側の長辺を下方へ折り曲げた図示を省略した折り曲げ部とで構成されている。そして長板部の中央部分に凹部が設けられ、凹部には弁体41の突出部43が当接している。
アーム61a及びアーム61bは、上部が円弧状に折曲げられ、当該上部から下部にかけて後述のシリンダから離れる方向に折曲げられて(傾斜して)形成されたものであり、ほぼ逆J字形状をしている。アーム61a及びアーム61bの下部には、下から順番に第1係止部62と第2係止部63が設けられている。
アーム支持板65は、両先端部が斜め下方に折曲げられた係止片を有し、アーム61a、アーム61bの間に配設されて、アーム支持板65の各係止片がアーム61a、アーム61bの第1係止部62にそれぞれ係止される。
81はシリンダである。シリンダ81は、上端部外周に環状鍔部を有する有底筒状で、その底壁下面に雄ねじ82が設けられている。84はシリンダ81の底部に載置された所定温度で溶融する感熱体である。85はシリンダ81に遊嵌され感熱体84を押圧する有底筒状の第1ピストンである。シリンダ81と第1ピストン85とは、感熱体84が流出する隙間S1(図2参照)を形成するように設けられる。なお、本発明に係る感熱体84については、後に詳述する。
86はリンク押さえ板である。リンク押さえ板86は中央に雌ねじが設けられた板状部を有し、板状部の両端と、第2係止部63とが遊嵌合している。
88は第2ピストンである。第2ピストン88は、リンク押さえ板86の雌ねじに螺合された上部の雄ねじ部と下部のロッド部とで構成され、ロッド部の先端が第1ピストン85の底壁を押圧している。
91は感熱板で、底壁中央の孔に雄ねじ82が挿通された椀状の第1感熱板と、中央の孔に雄ねじ82が挿通された円板状の第2感熱板と、円板状の第2感熱板の下に設けられる第3感熱板とからなる。この感熱板91は、火災時の熱気流を効率良く受熱することで、感熱体84の受熱効率を高める作用をはたす。
なお、アーム61a、61b、アーム支持板65、リンク押さえ板86、シリンダ81、第1ピストン85、第2ピストン88、感熱体84からなる感熱分解部のことをリンク機構と言い、監視状態において、リンク機構は弁体41を支持することで、放水口12を封止している。
<スプリンクラヘッド100の動作説明>
図1を参照して、火災時におけるスプリンクラヘッド100の基本的な動作について説明する。
火災が発生して感熱体84が溶融し始めると、溶融した感熱体84は第1ピストン85に押され、シリンダ81と第1ピストン85との間の隙間S1から外部に流出する。これによりアーム61aは右回転を開始してその下端側は図1において左方向への移動を開始し、アーム61bは左回転を開始してその下端側は図1において右方向への移動を開始する。
即ち、感熱体84の僅かな溶融により、アーム61a及びアーム61bの第2係止部63と、リンク押さえ板86との係止が解除され、リンク機構は分解する。これにより、リンク機構を構成する各部品は下方へ落下する。
リンク機構の分解落下により、弁体41とアームガイドはデフレクタ31のガイドロッド34とデフレクタ31の穴内を降下する一対のガイド片52に案内されて降下する。そして、弁体41が、デフレクタ31の上面に当接して着座する。また、デフレクタ31は、ストッパリング35のフレーム21内の摺動に伴って下降する。そして、放水口12から放出される水がデフレクタ31に衝突し、スプリンクラヘッド100の周囲に散水される。
<感熱体84について>
図2を参照して、本発明の実施の形態1に係る感熱体84について、以下に説明する。
感熱体84は、可溶合金の一例である半田84aと、半田84aを覆うように構成される半田被覆部材84b(可溶合金被覆部材の一例)とからなる。本発明の実施の形態1に係る半田84aは円柱状(円板状)であり、シリンダ81内に収容される。半田被覆部材84bは、シリンダ81内であって、半田84aの上面に載置される円板状の樹脂(有機化合物の一例)である。半田84a及び半田被覆部材84bの外径は、シリンダ81の内径とほぼ同じである。即ち、半田被覆部材84bの外周面が、シリンダ81の内周面と接している。つまり、半田被覆部材84bは、シリンダ81と第1ピストン85の間の隙間S1と半田84aとの間に設けられ、隙間S1を塞ぐように構成されることで、半田84aがシリンダ81内に密封され、外気に露出しないようになっている。
従って、上記のように感熱体84を構成することで、スプリンクラヘッド100が腐食性ガスの雰囲気下に設置されたとしても、腐食性ガスは、シリンダ81と第1ピストン85の間の隙間S1までしか進入できず、腐食性ガスが半田84aと接触することはない。これにより、スプリンクラヘッド100を確実に動作させることができる。
なお、半田被覆部材84bの厚みは適宜選択されるが、半田84aの特性を活かしたい場合には、半田被覆部材84bは半田84aより薄くすれば良い。ここで、半田の特性とは、特に長期間におよぶ荷重に対する耐久性のことである。
<半田被覆部材84bについて>
半田被覆部材84bは、耐腐食性を有する樹脂からなる。これにより、スプリンクラヘッド100が腐食性ガスの雰囲気下に設置されたとしても、腐食性ガスは隙間S1までの進入に留まるため、半田84aが腐食することがなく、スプリンクラヘッド100は正常に監視状態を保つことができる。
また、半田被覆部材84bは、水に不溶性又は難溶性の樹脂であり、融点が55〜190度の温度範囲にある樹脂の中から選ばれる。半田被覆部材84bの材料とする樹脂は、スプリンクラヘッド100の半田84aの融点とほぼ同じか、それより低い融点の樹脂の中から選択される。これにより、半田84aの溶融によるスプリンクラヘッド100の作動を遅らせることなく、設計通りの作動温度でスプリンクラヘッド100を動作させることができる。
特に、半田被覆部材84bを半田84aの融点より低い樹脂で構成した場合、半田被覆部材84bが先に溶融することになるが、半田被覆部材84bが先に溶融しただけではスプリンクラヘッド100は作動しない(誤作動しない)。火災の場合、半田84aの溶融の前に、半田被覆部材84bが既に溶融しているため、スプリンクラヘッド100は早く作動することができる。
また、半田被覆部材84bは、上記温度範囲の融点を持つ樹脂の微粉末を硬度1.4kg〜4.0kgに圧縮成型してなるものである。さらに、結晶性がある樹脂であれば、硬度が高く、感熱体84として、より適している。なお、樹脂の微粉末を圧縮成型するに際して、事前に樹脂の微粉末をふるいにかけて微粉末の粒子径をそろえておくのが好ましい。これによって、圧縮成型したときに密度の疎密ができず、硬度を安定させることができる。また、加熱せずに圧縮して成型することで、水分が蒸発せず、融点が変化しづらいため、設計通りの融点の圧縮成型体(半田被覆部材84b)を得ることができる。
また、半田被覆部材84bに選択される樹脂は、第1ピストン85と第2ピストン88に押圧されて加えられる組立荷重に対する経時変化量(クリープ量)が半田84aと比較して小さい樹脂(即ち、耐クリープ性を有する樹脂)が選択されることが好ましい。この組立荷重に対する経時変化量は小さいほど良く、この経時変化量が小さい樹脂の例としては、安息香酸2−ナフチル(経時変化量が半田の1/2程度)や、フタル酸ジフェニル(経時変化量が半田の1/6程度)、4−クロロベンズヒドロール及び1,8−オクタンジオール(共に経時変化量が半田の1/5程度)等が挙げられる。
なお、一般的に、スプリンクラヘッドの感熱体は、第1ピストン85と第2ピストン88に押圧されることで、50〜100kgf程度の組立荷重が加えられている。そのため、長期間経過すると、感熱体は変形する(この変形を「クリープ」という)ことになるが、この変形が大きい場合にはスプリンクラヘッドが火災でないのに作動してしまうことになるので、クリープを所定の範囲内にすることは、スプリンクラヘッドの誤作動の防止に寄与することになる。また、クリープ量が小さいということは、それだけ半田被覆部材84bを薄くできるので、熱容量が小さくなり、感度を良くすることにも繋がる。
また、半田被覆部材84bで使用される樹脂は、半田と同等以上の感度があると良い。ここで、「感度が高い」とは、感熱体84が溶融を開始し、感熱体84の変位が完了(溶融が完了)するまでの温度範囲が狭いことを言う。言い換えれば、「感度が高い」とは急激な溶融をすることであり、例えば、溶融開始点の温度と溶融完了点の温度が、3℃の範囲内に収まっていれば、感度が高いと言える。つまり、半田被覆部材84bに選択される樹脂は、溶融開始点の温度と溶融完了点の温度の範囲が、半田よりも狭い樹脂(即ち高感度性を有する樹脂)が選択されることが好ましい。このような感度が高い樹脂の例としては、安息香酸2−ナフチル(上記温度範囲が約2度)、フタル酸ジフェニル(上記温度範囲が約2度)、4−クロロベンズヒドロール(上記温度範囲が約1度)、サリチル酸(上記温度範囲が約1.5度)、スクシンイミド(上記温度範囲が約0.2度)等が挙げられる。
なお、上記の樹脂例とそのクリープ量及び感度に関しては、実際に発明者が実験を行って詳細な数値を出しているが、上記には概算による数値を記載した。
また、半田被覆部材84bとしての樹脂の必須な特性は、耐腐食性及び水に不溶性(難溶性)という性質である。その他の特性(耐クリープ性、高感度性、等)は全て備えている必要はなく、一部でも備えていれば好ましい。
また、半田被覆部材84bとしての樹脂は、昇華性を有する樹脂は使用できず、ベンゼンやアセトン等の有機溶剤に溶けるような耐薬品性が低い樹脂を使用することは好ましくない。
上記のような特性を全て満たす、又は一部満たす樹脂の例を以下の表1に示す。左欄が樹脂の名称で、右欄が樹脂の融点である。本発明の実施の形態1の半田被覆部材84bは、例えば下記表の中から選択される。
・実施の形態2
図3を参照して、本発明の実施の形態2に係る発明について、以下に説明する。本発明の実施の形態2は、実施の形態1と比べて、感熱体84の構成が異なり、それ以外のスプリンクラヘッド100の基本構成及び火災時の動作は同じものである。従って、実施の形態2では、上述の実施の形態1との相違点について詳細に説明するものとし、実施の形態1に対応している部材については同じ符号をつけて説明を省略する。
実施の形態2に係る半田84aは、実施の形態1と同じく、シリンダ81内に収容される円柱状の可溶合金である。そして、半田被覆部材84bは、半田84aの周囲を全面的にコーティングしており、半田84aが密封され、全く露出しない構成となっている。半田被覆部材84bとして使用する有機化合物の一例としての樹脂は、上述した実施の形態1と同様の物質である。即ち、本発明の実施の形態2に係る発明では、半田84aに半田被覆部材84bをコーティングした状態において、半田被覆部材84bの外径がシリンダ81の内径とほぼ同じであり、半田被覆部材84bの外周面とシリンダ81の内周面が接するように設けられる。
従って、スプリンクラヘッド100が腐食性ガスの雰囲気下に設置されたとしても、実施の形態1と同様に、腐食性ガスは、シリンダ81と第1ピストン85の間の隙間S1までしか進入できず、腐食性ガスが半田84aと接触することはない。これにより、スプリンクラヘッド100を確実に動作させることができる。
・実施の形態3
上述した実施の形態1〜2は、リンク機構にアームを用いたスプリンクラヘッドを例に説明したが、本発明の実施の形態3は、実施の形態1〜2の発明を、リンク機構にボールを用いたスプリンクラヘッド200に適用する場合について説明する。
<スプリンクラヘッド200の構成>
図4を参照して、スプリンクラヘッド200の基本構成と動作説明をする。なお、実施の形態3では、上述の実施の形態1のスプリンクラヘッド100との相違点であるリンク機構について主に説明するものとし、実施の形態1に対応している部材については同じ符号をつけて説明を省略する。
スプリンクラヘッド200は、ヘッド本体11と、ヘッド本体11と接続されるフレーム21と、ヘッド本体11の放水口12を塞ぐ弁体41と、作動時に散水部を構成するデフレクタ31と、放水動作しないときに弁体41を支持するリンク機構(感熱分解部)とを備えている。
フレーム21は、円筒状に形成され、ヘッド本体11に接続されるものである。フレーム21の下部には、内側に突出した係止段部25が設けられ、係止段部25には後述のボール71が係止される。
弁体41は、通常時において、弁体上面の凸部に設けられる皿ばね47を介して、放水口12を封止している。弁体41の下部の中央部には、後述のセットスクリュ77の頭部が圧接される。この弁体41は、リンク機構によって支えられている。
弁体41の下部には、デフレクタ31が固定されている。そして、デフレクタ31には、ガイドロッド34が接続され、ガイドロッド34には、放水動作時に係止段部25に引っかかるまで下降するストッパリング35が接続される。
デフレクタ31は、中央に開口部を有する円板によって構成されており、その開口部に弁体41の下部が挿入された状態で、弁体41のフランジ部下面に固定されている。また、デフレクタ31には、ガイドロッド34(たとえば3本)が挿入される挿入穴(たとえば3個)が設けられており、ガイドロッド34の下端は、その挿入穴から突出した状態でデフレクタ31に固着されている。したがって、これらの弁体41、デフレクタ31及びガイドロッド34は一体的に構成されている。
リンク機構は、感熱部と、ボール保持部と、感熱部及びボール保持部を構成する各種部品同士を固定するセットスクリュ77とからなり、通常時において弁体41が放水口12を塞ぐように、弁体41を支持するものである。
感熱部は、熱により溶融する感熱体84、感熱体84を押圧するピストン89、スプリンクラヘッド200が設置される空間の熱を感熱体84に伝達させる感熱板91、ピストン89及び感熱体84が収容され、感熱板としても機能するシリンダ81を備えている。
感熱体84は、火災時に発生する熱により溶融する。感熱体84はドーナツ形状などに形成されているものとして説明するが、それに限定されるものではない。この感熱体84は、ピストン89の上部から挿入され、後述するピストン89のフランジ部の上に設置される。なお、本発明に係る感熱体84については、後に詳述する。
ピストン89は、後述のボール保持部のバランサ75とともに、感熱体84を押圧するものである。このピストン89は、円筒状に形成された円筒部と、該円筒部の下部に形成されたフランジ部とから構成されている。また、円筒部の内面には、セットスクリュ77の脚部がねじ込まれ、ピストン89とセットスクリュ77とが結合している。
なお、ピストン89は、セットスクリュ77と結合して固定されている一方で、ピストン89のフランジ部は、感熱板91、シリンダ81、及び感熱体84を介してバランサ75に押圧されている。そのため、感熱体84は、ピストン89のフランジ部と、シリンダ81とによって押圧されている。
感熱板91は、スプリンクラヘッド200が設置される空間の熱を感熱体84に伝達させるものである。感熱板91は、略ドーナツ形状をしており、後述するシリンダ81の立設部81bと一体に構成される。
シリンダ81は、ピストン89の一部、感熱体84を収容するとともに、感熱板としての機能を有するものである。このシリンダ81は、円板形状部材の中央部が上方に突出し、該中央部にピストン89の円筒部が挿入されるように開口形成された形状をしているものである。具体的には、このシリンダ81は、略ドーナツ形状でありシリンダ81の上部を構成するシリンダ上部81aと、略円筒形状であり一方がシリンダ上部81aに接続され、下方に向かって立設する立設部81bとが一体に形成されたものである。通常時においては、このシリンダ81のシリンダ上部81a及び立設部81bと、ピストン89の円筒部及びフランジ部とによって形成される空間に感熱体84が設置される。
立設部81bは、略円筒形状であり、一方がシリンダ上部81aに接続され、他方が感熱板91に接続されたものである。この立設部81bの内側に感熱体84が設けられている。すなわち、この立設部81bは、感熱体84の側面部を覆っている。ここで、この立設部81bの内面と、ピストン89のフランジ部との間には、溶融した感熱体84が流出する隙間S2(図5参照)が形成されている。すなわち、溶融した感熱体84は、隙間S2から主に流出する。なお、シリンダ上部81aとピストン89の円筒部との間にも若干の隙間S3(図5参照)が形成されており、隙間S2よりは少ないが、感熱体84が流出する。
シリンダ81(感熱板91)は、バランサ75に押圧されているため、シリンダ81(感熱板91)は感熱体84の上部を押圧する。これにより、シリンダ81(感熱板91)は、感熱体84が溶融すると下降する。
ボール保持部は、係止段部25に係止されるボール71、外周側下部がボール71と接するスライダ73、及びバランサ75を備えている。なお、バランサ75は、シリンダ81を押圧している。このため、バランサ75は、シリンダ81及びピストン89によって感熱体84を押圧させるものとして機能する。
ボール71は、その下部が、フレーム21の係止段部25及びバランサ75に接触して係止されている。また、この状態において、ボール71は、スライダ73によって上から押さえられているためスライダ73からボール71に力がかかり、ボール71には内側に入り込む方向に力が作用する。その結果、ボール71は、バランサ75を下方に移動させるように力が作用している。
<スプリンクラヘッド200の動作説明>
図4を参照して、火災時におけるスプリンクラヘッド200の基本的な動作について説明する。
火災によって、感熱体84が溶融するとシリンダ81が下降し、そのシリンダ81の下降に伴って、バランサ75が下方に移動し、さらに、それに伴って、ボール71が内側に入り込む。これにより、ボール71は、フレーム21の係止段部25との係止状態が解除され、リンク機構(ボール保持部及び感熱部)が落下する。ボール保持部が落下すれば、それに伴って、弁体41及びデフレクタ31と、ガイドロッド34と、ストッパリング35とからなる散水部が落下して、放水が行われる。
<感熱体84について>
図5を参照して、本発明の実施の形態3に係る発明の感熱体84について説明する。実施の形態3は、半田被覆部材84bについては実施の形態1と同様の有機化合物を用いるため、その点については説明を省略する。
実施の形態3に係る感熱体84は、ドーナツ状であり、シリンダ81内に収容される半田84aと、1対(2枚)のドーナツ状の平板からなり、シリンダ81内に収容される半田被覆部材84bとから構成される。
半田84a及び1対の半田被覆部材84bの内径はピストン89の円筒部の外径とほぼ同じで、半田84a及び1対の半田被覆部材84bの内周面はピストン89の円筒部の外周面と接している。また、半田84a及び1対の半田被覆部材84bの外径は、シリンダ81の立設部81bの内径とほぼ同じで、半田84a及び1対の半田被覆部材84bの外周面はシリンダ81の立設部81bの内周面と接している。
1対の半田被覆部材84bは、一方は半田84aの下面に接するように設けられており、他方は半田84aの上面に接するように設けられている。言い換えれば、下面に設けられた半田被覆部材84bは、シリンダ81の立設部81bの内面とピストン89のフランジ部との間の隙間S2と、半田84aとの間に設けられており、上面に設けられた半田被覆部材84bは、シリンダ上部81aとピストン89の円筒部の間の隙間S3と、半田84aとの間に設けられる。即ち、感熱体84のうち、半田84aはシリンダ81の立設部81b及びピストン89の円筒部に接しており、上面の半田被覆部材84bは、シリンダ上部81a、シリンダ81の立設部81b、及びピストン89の円筒部に接しており、下面の半田被覆部材84bは、シリンダ81の立設部81b、ピストン89のフランジ部及び円筒部に接している。これにより、半田84aは、半田被覆部材84b、シリンダ81及びピストン89により密封されて、外気に露出しないように設けられている。
そして、半田被覆部材84bは、有機化合物の一例である樹脂からなり、その樹脂は実施の形態1に記載に樹脂と同様のもので構成される。
従って、スプリンクラヘッド200が腐食性ガスの雰囲気下に設置されたとしても、実施の形態1と同様に、腐食性ガスは、シリンダ81とピストン89との間の隙間S2及び隙間S3までしか進入できず、腐食性ガスが半田84aと接触することはない。これにより、スプリンクラヘッド200を確実に動作させることができる。
なお、隙間S3は隙間S2より小さいので、隙間S3に腐食性ガスが進入したとしても、感熱体84との接触面積は小さく、スプリンクラヘッドの動作は十分可能であるため、上面の半田被覆部材84bを設けなくても良い。
・実施の形態4
図6を参照して、本発明の実施の形態4に係る発明について、以下に説明する。本発明の実施の形態4は、実施の形態3と比べて、感熱体84の構成が異なり、それ以外のスプリンクラヘッド200の基本構成及び火災時の動作は同じものである。従って、実施の形態4では、上述の実施の形態3との相違点について詳細に説明するものとし、実施の形態3に対応している部材については同じ符号をつけて説明を省略する。
実施の形態4に係る半田84aは、実施の形態3と同じく、シリンダ81内に収容されるドーナツ状の可溶合金である。そして、半田被覆部材84bは、半田84aの周囲を全面的にコーティングしており、半田84aが全く露出しない構成となっている。半田被覆部材84bとして使用する有機化合物の一例としての樹脂は、上述した実施の形態1と同様の物質である。即ち、本発明の実施の形態4に係る発明では、半田84aに半田被覆部材84bをコーティングした状態において、半田被覆部材84bの外径がシリンダ81の立設部81bの内径とほぼ同じであり、半田被覆部材84bの外周面とシリンダ81の立設部81bの内周面が接するように設けられる。さらに、半田被覆部材84bの内径がピストン89の円筒部の外径とほぼ同じであり、半田被覆部材84bの内周面とピストン89の円筒部の外周面が接するように設けられている。
従って、スプリンクラヘッド100が腐食性ガスの雰囲気下に設置されたとしても、実施の形態3と同様に、腐食性ガスは、シリンダ81とピストン89のフランジ部との間の隙間S2及び隙間S3までしか進入できず、腐食性ガスが半田84aと接触することはない。これにより、スプリンクラヘッド200を確実に動作させることができる。
なお、上記実施の形態1乃至4では、火災による作動時にデフレクタが降下するいわゆるフラッシュ型と言われるスプリンクラヘッドの場合について説明したが、腐食性ガスで腐食する感熱体(金属、樹脂問わず)を有するスプリンクラヘッドであれば本発明を適用でき、例えばマルチ型などの他の型式のスプリンクラヘッドでも同様に実施できる。
11 本体、12 放水口、14 フランジ部、21 フレーム、23 スリット、24 係合部、25 係止段部、31 デフレクタ、34 ガイドロッド、35 ストッパリング、41 弁体、42 凸部、43突出部、44 折り曲げ片、皿ばね47、51 基板、52 ガイド片、61a、61b アーム、62 第1係止部、63 第2係止部、65 アーム支持板、71 ボール、73 スライダ、75 バランサ、77 セットスクリュ、81 シリンダ、81a シリンダ上部、81b 立設部、84 感熱体、84a 半田、84b 半田被覆部材、85 第1ピストン、86 リンク押さえ板、88 第2ピストン、89 ピストン、91 感熱板、100、200 スプリンクラヘッド、S1、S2、S3 隙間。

Claims (3)

  1. 筒状のシリンダと、該シリンダ内に収容される可溶合金と、該可溶合金を押圧するピストンと、を有するスプリンクラヘッドにおいて、
    前記可溶合金は円柱状に構成されて前記シリンダ内に収容され、
    前記ピストンと前記可溶合金とに挟まれて設けられ、前記可溶合金が外気に露出しないように、前記可溶合金を覆う可溶合金被覆部材を備え、
    前記可溶合金被覆部材は、円板状の平板であり、外径が前記シリンダの内径とほぼ同じで、前記可溶合金被覆部材の外周面とシリンダの内周面とが接するように設けられ、耐腐食性を有する有機化合物からなることを特徴とするスプリンクラヘッド。
  2. 筒状のシリンダと、該シリンダ内に収容される可溶合金と、該可溶合金を押圧するピストンと、を有するスプリンクラヘッドにおいて、
    前記可溶合金はドーナツ状に構成されて前記シリンダ内に収容され、
    前記ピストンと前記可溶合金とに挟まれて設けられ、前記可溶合金が外気に露出しないように、前記可溶合金を覆う可溶合金被覆部材を備え、
    前記可溶合金被覆部材は、耐腐食性を有する有機化合物からなるドーナツ状の平板であり、
    前記可溶合金被覆部材の内径が前記ピストンの外径とほぼ同じで、前記可溶合金被覆部材の内周面と前記ピストンの外周面とが接すると共に、
    前記可溶合金被覆部材の外径が前記シリンダの内径とほぼ同じで、前記可溶合金被覆部材の外周面と前記シリンダの内周面とが接することを特徴とするスプリンクラヘッド。
  3. 前記可溶合金被覆部材の有機化合物は、4−クロロベンズヒドロール、フタル酸ジフェニル、9−フルオレノン、オクタ−O−アセチルD−(+)−サッカロース、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、4−ブチリルビフェニル、安息香酸2−ナフチル、ペンタ−O−アセチル−β−D−グルコピラノース、アセチルサリチル酸、サリチル酸の中から、前記可溶合金の融点に合わせて選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載のスプリンクラヘッド。
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