JP6279172B2 - エコーキャンセラ装置及び通話装置 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロフォンで検出された音響信号に含まれる音響エコー成分を低減するエコーキャンセル技術に関し、特に、適応フィルタを用いてその音響エコー成分を低減するエコーキャンセル技術に関する。
各々がマイクロフォン及びスピーカを有する2台の通話装置間で双方向通話が行われる場合、一方の通話装置のマイクロフォンで採取された音(たとえば、送話者音声または背景雑音)は、電気通信網を通して相手方の通話装置に伝送された後に、その相手方の通話装置のスピーカで再生される。しかしながら、その再生音が当該スピーカから直接的または間接的にマイクロフォンに回り込んで採取されると、その再生音が発信元の通話装置に送り戻される。このようにして発信元の通話装置に送り戻される再生音は、「音響エコー」と呼ばれている。
音響エコーを抑制するデバイスとしては、適応フィルタを用いたエコーキャンセラが広く使用されている。この種のエコーキャンセラでは、適応フィルタは、スピーカからマイクロフォンに至る音響エコーの伝達経路(以下「エコー経路」ともいう。)の特性を逐次推定すなわち学習して、擬似エコー信号(「エコーレプリカ」とも呼ばれる。)を生成する。そして、発信元の通話装置へ伝送される送話信号からその擬似エコー信号を除去することにより、当該送話信号に含まれる音響エコー成分を低減することができる。したがって、適応フィルタの性能がエコーキャンセラのエコー消去性能を決定するということができる。
このような適応フィルタによるエコー経路特性の学習を阻害する要因としては、マイクロフォンで検出された音響信号への外乱信号の混入が考えられる。適応フィルタにとっては、音響エコーに混入する近端話者音声または背景雑音は、外乱信号であり、エコー経路特性の学習の妨げとなる。特にマイクロフォンに近端話者音声と音響エコーとが混入するダブルトーク(同時通話)状態は、エコー経路特性の学習を阻害する要因として問題となる。
前述のダブルトークに起因する問題に対しては、適応フィルタと、ダブルトーク発生の有無を判定するダブルトーク検出回路とを備えたエコーキャンセラが知られている。この種のエコーキャンセラは、たとえば、下記の非特許文献1に開示されている。非特許文献1に開示されている音響エコーキャンセラは、エコー消去量を検出パラメータとして監視し、当該エコー消去量が所定量以上となったときにダブルトークが発生したと判定して適応フィルタ係数の更新を休止させるダブルトーク検出回路を備えたものである。
また、外乱信号に対するエコー経路特性の学習のロバスト性(頑健性)を向上させるために、2種類のフィルタを備えたエコーキャンセラも知られている。この種のエコーキャンセラは、たとえば、下記の非特許文献2に開示されている。非特許文献2に開示されているエコーキャンセラは、エコー経路特性の学習を行うバックグラウンド(BG)フィルタと、このBGフィルタの学習結果がある程度の時間をかけて反映されるフォアグラウンド(FG)フィルタとを備えており、エコー消去にはFGフィルタが使用される。
なお、特許文献1(特開平6−338827号公報)には、2種類のフィルタとダブルトーク検出回路とを備えたエコーキャンセラが開示されている。
特開平6−338827号公報(たとえば、図1及び段落0014〜0020)
藤井健作,大賀寿郎,"エコー経路変動検出を併用するダブルトーク検出法,"信学論(A), vol. J78-A, no.3, pp. 314-322, March 1995. K. Ochiai, T. Araseki, and T. Ogihara,"Echo canceller with two echo path models,"IEEE Transactions on Communications, vol. COM-25, no. 6, pp. 589-595, June 1977.
上記ダブルトーク検出回路を備えた従来のエコーキャンセラでは、そのダブルトーク発生回路の誤判定により適応フィルタが誤学習すれば、エコー消去量が極端に低下することがある。また、上記2種類のフィルタを備えた従来のエコーキャンセラでは、ダブルトークに起因して2種類のフィルタがともに誤学習を起こした場合に、外乱信号に対するロバスト性を維持することができないことがある。よって、上記した従来のエコーキャンセラでは、ダブルトークが発生する環境下で安定したエコー消去性能が得られるとは限らない。
上記に鑑みて本発明の目的は、ダブルトークが発生する環境下で安定したエコー消去性能を維持することができるエコーキャンセラ装置及び通話装置を提供する点にある。
本発明の第1の態様によるエコーキャンセラ装置は、入力された受話信号の系列に対してフィルタ係数群を用いたフィルタ演算を実行するとともに、集音部から入力された送話信号に応じて適応的に前記フィルタ係数群の更新を行う適応フィルタ部と、前記適応フィルタ部で用いられた現在及び過去の複数のフィルタ係数群を取得し、当該複数のフィルタ係数群をそれぞれ用いたフィルタ演算を前記受話信号の系列に対して実行することにより複数の疑似エコー信号を算出する疑似エコー算出部と、前記送話信号と前記複数の疑似エコー信号とに基づき、当該複数の疑似エコー信号にそれぞれ対応する複数のエコー消去量評価値を算出する評価値算出部と、前記複数のエコー消去量評価値に基づいて、前記複数の疑似エコー信号の中から一の疑似エコー信号を推定エコー成分として選択する疑似エコー選択部と、前記推定エコー成分と前記送話信号との差分を示す残差信号を出力する信号出力部とを備えることを特徴とする。
本発明の第2の態様によるエコーキャンセラ装置は、入力された受話信号の系列に対してフィルタ係数群を用いたフィルタ演算を実行するとともに、集音部から入力された送話信号に応じて適応的に前記フィルタ係数群の更新を行う適応フィルタ部と、前記適応フィルタ部で用いられた現在及び過去の複数のフィルタ係数群を取得し、当該複数のフィルタ係数群をそれぞれ用いたフィルタ演算を前記受話信号の系列に対して実行することにより複数の疑似エコー信号を算出する疑似エコー算出部と、前記送話信号と前記複数の疑似エコー信号とに基づき、当該複数の疑似エコー信号にそれぞれ対応する複数のエコー消去量評価値を算出する評価値算出部と、前記複数のエコー消去量評価値に基づいて、前記複数のフィルタ係数群の中から新フィルタ係数群を選択するフィルタ選択部と、前記受話信号の系列に対して前記新フィルタ係数群を用いたフィルタ演算を実行することにより推定エコー成分を生成するフォアグラウンドフィルタと、前記送話信号から前記推定エコー成分を差し引いて残差信号を生成する減算器とを備えることを特徴とする。
本発明の第3の態様による通話装置は、相手方通話装置との間で通信回線網を介した通信を行う通信機能部と、前記第1または第2の態様によるエコーキャンセラ装置とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、たとえ適応フィルタ部において誤学習が起きても、この誤学習を修正して良好なエコー消去性能を維持することができる。
本発明に係る実施の形態1に係る通話システムの概略構成を示す図である。 実施の形態1のエコーキャンセラの概略構成を示すブロック図である。 実施の形態1に係るエコー消去量評価値の例を示すグラフである。 実施の形態1に係るエコーキャンセル処理の手順の例を示すフローチャートである。 実施の形態1のエコーキャンセラのハードウェア構成例を示す図である。 実施の形態1のエコーキャンセラの他のハードウェア構成例を示す図である。 本発明に係る実施の形態2のエコーキャンセラの概略構成を示すブロック図である。 実施の形態2に係るエコーキャンセル処理の手順の例を示すフローチャートである。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る種々の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面全体において同一符号を付された構成要素は、同一構成及び同一機能を有するものとする。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1のエコーキャンセラ10を有する2台の通話装置1A,1Bを含む通話システムの概略構成を示す図である。図1に示されるように、2台の通話装置1A,1Bは、通信回線網NWを介して相互に接続されており、同一構成を有する。通話装置1A,1Bの各々は、マイクロフォンを含む集音部MKと、音響波である再生音を出力するスピーカSPとにそれぞれ接続され、相手方通話装置との間で通信を行う通信機能部11と、相手方通話装置に伝送される送話信号中の音響エコー成分を低減するエコーキャンセラ10とを備えている。集音部MKがスピーカSPと音響的に結合する場合、すなわち、スピーカSPから出力された音響波が、空気、液体または固体などの媒体を伝達して集音部MKに回り込んで検出される場合、集音部MKはその音響波を音響エコーとして検出し得る。通信回線網NWとしては、たとえば、電話回線網、移動体通信網もしくはインターネットなどの広域通信網、またはLAN(Local Area Network)などの小規模通信網が挙げられる。
図2は、実施の形態1のエコーキャンセラ10の概略構成を示すブロック図である。図2に示されるように、エコーキャンセラ10は、集音部MKから入力された音検出信号をサンプリングして送話信号y(n)を出力する信号入力部Sinと、音響エコー成分が低減された送話信号である残差信号e(n)を通信機能部11に出力する回線側信号出力部Soutと、通信機能部11で受信された受話信号x(n)が入力される回線側信号入力部Rinと、受話信号x(n)をスピーカSPに出力する信号出力部Routとを備えている。ここで、送話信号y(n),受話信号x(n)及び残差信号e(n)はいずれも時間離散信号であり、nは、離散的なサンプリング時刻Tを特定する整数である。
また、エコーキャンセラ10は、入力された受話信号x(n)の系列(以下「受話信号列」ともいう。)に対して時間領域のフィルタ係数群w(n)を用いたフィルタ演算を実行する適応フィルタ部20を備えている。この適応フィルタ部20は、LMS(Least Mean Square)法またはNLMS(Normalized Least Mean Square)法などの公知の適応アルゴリズムに従い、送話信号y(n)に応じてフィルタ係数群w(n)を適応的に更新する機能をも有する。
適応フィルタ部20は、図2に示されるように、受話信号列とフィルタ係数群w(n)との畳み込み演算を実行する適応フィルタ21と、この適応フィルタ21のフィルタ出力d(n)を送話信号y(n)から差し引いて誤差信号δ(n)を生成する減算器22と、この誤差信号δ(n)に応じて適応的にフィルタ係数群w(n)の更新を行う適応アルゴリズム部(AAL)23とを備えて構成されている。
受話信号列X(n)は、次式(1)のN次元ベクトルで表現することができる。
Figure 0006279172
ここで、Nは、3以上の整数であり、記号Tは、1行N列の横ベクトルをN行1列の縦ベクトルに変換させる転置を表す記号である。畳み込み演算で使用されるフィルタ係数群w(n)は、次式(2)のN次元ベクトルで表現することができる。
Figure 0006279172
適応フィルタ21は、次式(3)に従って受話信号列X(n)とフィルタ係数群w(n)との畳み込み演算を実行することでフィルタ出力d(n)を算出することができる。
Figure 0006279172
また、減算器22は、次式に示されるように、送話信号y(n)からフィルタ出力d(n)を差し引くことで誤差信号δ(n)を算出する。
Figure 0006279172
適応アルゴリズム部23は、この誤差信号δ(n)の大きさが予め決められた条件下で最小になるようにフィルタ係数群w(n)を逐次修正する。学習同定法とも呼ばれている公知のNLMS法を採用する場合、適応アルゴリズム部23は、次式(5)に従って新たなフィルタ係数群w(n+1)を導出することができる。
Figure 0006279172
ここで、μ(n−1)は、サンプリング時刻Tn−1での係数であり、たとえば、次式(6)で与えられる。
Figure 0006279172
ここで、αは、フィルタ係数群の更新量を調整するためのステップサイズであり、βは、式(6)の中辺の分母が零になることを防止する微少な数である。また、Nは、適応フィルタ21のフィルタ長と一致し、σは、受話信号の分散である。更に、Nσは、受話信号列X(n−1)のノルムの2乗||X(n−1)||(={X(n−1)}・X(n−1))で近似することができる。
そして、適応アルゴリズム部23は、新たなフィルタ係数群w(n+1)で適応フィルタ21における現在のフィルタ係数群w(n)を置き換えることでフィルタ係数群w(n)を更新する。フィルタ係数群w(n)は、スピーカSPから集音部MKに至るエコー経路特性の推定量を表しているため、フィルタ係数群w(n)を逐次更新することは、そのエコー経路特性の逐次推定すなわちそのエコー経路特性の学習を行うことを意味する。なお、適応アルゴリズムは、LMS法及びNLMS法に限定されるものではない。たとえば、アフィン射影法またはRLS(Recursive Least Square)法などの他の適応アルゴリズムで動作するように適応フィルタ部20の構成が適宜変更されてもよい。また、本実施の形態の適応フィルタ部20は、時間領域で適応的なフィルタ演算を実行しつつ時間領域のフィルタ係数群w(n)を逐次更新する機能を有するが、これに限定されるものでもない。適応フィルタ部20に代えて、周波数領域で適応的なフィルタ演算を実行しつつ周波数領域のフィルタ係数群を逐次更新する適応フィルタ構成が使用されてもよい。
次に、図2を参照すると、エコーキャンセラ10は、上記適応フィルタ部20の学習を安定化させ、且つ推定エコー成分d(p)(n)を算出するエコー推定部30を備えている。このエコー推定部30は、フィルタ係数バッファ31、疑似エコー算出部32、疑似エコーバッファ33、評価値算出部34及びバッファ制御部35を含んで構成される。
フィルタ係数バッファ31は、適応フィルタ21におけるフィルタ係数群の更新が行われる度に、適応フィルタ21から供給を受けた更新後のフィルタ係数群を一時的に記憶する。またフィルタ係数バッファ31は、適応フィルタ部20で使用された現在及び過去の一定個数のフィルタ係数群w(1)(n),w(2)(n),…,w(M)(n)(Mは3以上の整数)を一時的に記憶する。なお、本明細書において「現在」とは、最新のサンプリング時刻を意味し、「過去」とは、この最新のサンプリング時刻よりも以前のサンプリング時刻を意味するものとする。
フィルタ係数バッファ31に記憶される現在及び過去のフィルタ係数群w(1)(n),w(2)(n),…,w(M)(n)と、適応フィルタ部20で使用されたフィルタ係数群との間の関係は、たとえば、次式(7)に示される通りである。
Figure 0006279172
すなわち、フィルタ係数バッファ31に記憶されるk番目のフィルタ係数群w(k)(n)は、サンプリング時刻Tn−k+1でのフィルタ係数群w(n−k+1)となる。フィルタ係数バッファ31は、適応フィルタ部20から最新のフィルタ係数w(n+1)の供給を受けると、次式(8)に示されるように、記憶済みのフィルタ係数群の中から最も古い時刻のフィルタ係数群を削除し、フィルタ係数群を更新する。
Figure 0006279172
なお、上式(7)に示したように、フィルタ係数バッファ31に記憶される現在及び過去のフィルタ係数群w(n),w(n−1)のサンプリング時刻T,Tn−1が連続していることが好ましいが、これに限定されるものではない。連続しないサンプリング時刻での現在及び過去のフィルタ係数群がフィルタ係数バッファ31に記憶されて利用されてもよい。
次に、疑似エコー算出部32は、フィルタ係数バッファ31から読み出されたフィルタ係数群w(1)(n)〜w(M)(n)をそれぞれ用いたフィルタ演算を受話信号列X(n)に対してM回実行することによりM個の疑似エコー信号d(1)(n)〜d(M)(n)を算出する。k番目の疑似エコー信号d(k)(n)は、次式(9)に従い、k番目のフィルタ係数群w(k)(n)を用いた畳み込み演算により算出される。
Figure 0006279172
疑似エコーバッファ33は、疑似エコー算出部32から供給を受けた疑似エコー信号d(1)(n)〜d(M)(n)を一時的に記憶する。図2に示されるように、評価値算出部34は、疑似エコーバッファ33から読み出された疑似エコー信号d(1)(n)〜d(M)(n)と現在の送話信号y(n)とに基づき、M個のエコー消去量評価値EV(n)〜EV(n)を算出する。具体的には、次式(10)に示されるように、k番目のエコー消去量評価値EV(n)は、送話信号y(n)とk番目の疑似エコー信号d(k)(n)との差分に対する当該送話信号y(n)の比率の2乗として算出される。
Figure 0006279172
更には、評価値算出部34は、次式(11)に示されるようにデシベル表示のエコー消去量評価値dEV(n)を算出し、このエコー消去量評価値dEV(n)をバッファ制御部35に供給する。
Figure 0006279172
バッファ制御部35は、フィルタ選択部35fと疑似エコー選択部35eとを有している。疑似エコー選択部35eは、評価値算出部34から供給されたM個のエコー消去量評価値dEV(n)〜dEV(n)に基づいて、M個の疑似エコー信号d(1)(n)〜d(M)(n)の中から最適な一の疑似エコー信号を推定エコー成分d(p)(n)として選択し、その選択結果を示す制御信号Ceを疑似エコーバッファ33に供給する。疑似エコーバッファ33は、この制御信号Ceに応じて推定エコー成分d(p)(n)を減算器25に供給する。減算器25は、送話信号y(n)と推定エコー成分d(p)(n)とを入力とし、次式(12)に示されるように、送話信号y(n)から推定エコー成分d(p)(n)を差し引いて残差信号e(n)を生成する。
Figure 0006279172
この残差信号e(n)は、回線側信号出力部Soutによって通信機能部11に出力される。
図3は、デシベル表示のエコー消去量評価値dEV〜dEVの例を示すグラフである。疑似エコー選択部35eは、たとえば、エコー消去量評価値dEV〜dEVの中から最も高いエコー消去量評価値dEVに対応する疑似エコー信号を推定エコー成分d(p)(n)として選択することができる。
一方、フィルタ選択部35fは、M個のエコー消去量評価値dEV(n)〜dEV(n)に基づいて、フィルタ係数バッファ31に記憶されているフィルタ係数群w(k)(n)〜w(k)(n)の中からフィルタ係数群w(p)(n)を選択する。フィルタ選択部35fは、たとえば、フィルタ係数群w(k)(n)〜w(k)(n)の中から、エコー消去量評価値dEV(n)〜dEV(n)のうち最も高いエコー消去量評価値dEV(n)に対応するフィルタ係数群w(p)(n)を新フィルタ係数群として選択することができる。
次いで、フィルタ選択部35fは、その選択結果を示す制御信号Cfをフィルタ係数バッファ31に供給する。フィルタ係数バッファ31は、この制御信号Cfに応じて当該新たなフィルタ係数群w(p)(n)を適応フィルタ21に供給する。これに応じて、適応フィルタ21は、現在設定されているフィルタ係数群w(n)を新フィルタ係数群w(p)(n)で置き換えることでフィルタ係数群w(n)を更新する。よって、適応フィルタ部20においてエコー経路特性の推定精度が低下してエコー経路特性の誤学習が生じたときでも、正常に学習できていたときの過去のフィルタ係数群でフィルタ係数群w(n)を置き換えることができる。これにより、適応フィルタ部20によるエコー経路特性の学習の安定化向上という効果が得られる。また、音響エコーに混入する近端話者音声または背景雑音といった外乱信号に対するロバスト性も向上する。
なお、評価値算出部34がエコー消去量評価値EV(n)を算出する際、減算器25の出力である残差信号e(n)と同じ信号成分(=y(n)−d(p)(n))は既に算出されている。このため、減算器25の代わりに、評価値算出部34で算出された信号成分y(n)−d(k)(n)(k=1〜M)を一時的に記憶するバッファメモリを使用してもよい。このバッファメモリは、最も高いエコー消去量評価値dEV(n)に対応する信号成分y(n)−d(p)(n)を残差信号e(n)として回線側信号出力部Soutに供給すればよい。
次に、図4を参照しつつ、上記エコーキャンセラ10の動作例について説明する。図4は、エコーキャンセラ10により実行されるエコーキャンセル処理の手順の一例を概略的に示すフローチャートである。
図4を参照すると、適応フィルタ部20は、サンプリング時刻Tに受話信号列X(n)が入力されるまで待機している(ステップST1のNO)。受話信号列X(n)が入力されると(ステップST1のYES)、適応フィルタ部20は、上述したフィルタ演算を実行してフィルタ係数群を更新する(ステップST2)。更新後のフィルタ係数群w(n)は、フィルタ係数バッファ31に供給される。フィルタ係数バッファ31は、適応フィルタ21から更新後のフィルタ係数群w(n)の供給を受けると、自己が記憶しているフィルタ係数群を更新する(ステップST3)。
次に、疑似エコー算出部32は、フィルタ係数群の番号kを「1」に設定し(ステップST4)、フィルタ係数バッファ31から読み出されたk番目のフィルタ係数群w(k)(n)を用いたフィルタ演算を実行して疑似エコー信号d(k)(n)を生成する(ステップST5)。この疑似エコー信号d(k)(n)は、疑似エコーバッファ33に記憶される。次いで、評価値算出部34は、その疑似エコー信号d(k)(n)と現在の送話信号y(n)とに基づき、エコー消去量評価値dEV(n)を算出する(ステップST6)。このエコー消去量評価値dEV(n)は、バッファ制御部35に供給される。その後、評価値算出部34は、番号kを1だけインクリメントし(ステップST7)、番号kが最大値M以下である場合には(ステップST8のYES)、処理手順をステップST5に戻す。
一方、番号kが最大値M以下ではない場合(ステップST8のNO)、言い換えれば、全ての疑似エコー信号d(1)(n)〜d(M)(n)についてM個のエコー消去量評価値dEV(n)〜dEV(n)が算出された場合、処理手順はステップST9に移行する。なお、図4の例では、M個のエコー消去量評価値dEV(n)〜dEV(n)はこの順番で算出されている(ステップST4〜ST8)が、この代わりに、M個のエコー消去量評価値EV(n)〜EV(n)が同時並列に算出されてもよい。
次のステップST9では、疑似エコー選択部35eは、エコー消去量評価値dEV(n)〜dEV(n)に基づいて、M個の疑似エコー信号d(1)(n)〜d(M)(n)の中から最適な一の疑似エコー信号を推定エコー成分d(p)(n)として選択する(ステップST9)。この選択結果を示す制御信号Ceは、疑似エコーバッファ33に供給される。
一方、フィルタ選択部35fは、エコー消去量評価値dEV(n)〜dEV(n)に基づいて、フィルタ係数バッファ31に記憶されているフィルタ係数群w(k)(n)〜w(k)(n)の中から新フィルタ係数群w(p)(n)を選択する(ステップST10)。この選択結果を示す制御信号Cfは、フィルタ係数バッファ31に供給される。
その後、フィルタ係数バッファ31は、制御信号Cfで指定された新フィルタ係数群w(p)(n)を適応フィルタ21に供給することにより、適応フィルタ部20におけるフィルタ係数群w(n)を新フィルタ係数群w(p)(n)に置き換える(ステップST11)。
一方、疑似エコーバッファ33は、制御信号Ceで指定された推定エコー成分d(p)(n)を減算器25に供給することにより、減算器25に残差信号e(n)を生成させる(ステップST12)。その後、回線側信号出力部Soutは、残差信号e(n)を通信機能部11に出力する(ステップST13)。
ステップST13の後、エコーキャンセル処理が続行される場合(ステップST14のYES)、処理手順はステップST1に戻る。一方、エコーキャンセル処理が続行されない場合(ステップST14のNO)、エコーキャンセル処理は終了する。
なお、上記ステップST9,ST10,ST11,ST12はこの順番で処理される必要はない。たとえば、ステップST9,ST10が同時並列に実行されてもよいし、ステップST11,ST12が同時並列に実行されてもよい。また、ステップST10の実行前にステップST11が実行されてもよい。
上記エコーキャンセラ10のハードウェア構成は、たとえば、ワークステーションまたはメインフレームなどの、CPU(Central Processing Unit)内蔵のコンピュータで実現可能である。あるいは、上記エコーキャンセラ10のハードウェア構成は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field−Programmable Gate Array)などのLSI(Large Scale Integrated circuit)により実現されてもよい。
図5は、DSP、ASICまたはFPGAなどのLSIを用いて構成されるエコーキャンセラ10のハードウェア構成例を示すブロック図である。図5の例では、エコーキャンセラ10は、信号処理回路50、音響入出力部51、回線側入出力部52、記録媒体53及びバスなどの信号路54により構成されている。音響入出力部51は、信号入力部Sin及び信号出力部Routの機能を実現するインタフェース回路であり、回線側入出力部52は、回線側信号出力部Sout及び回線側信号入力部Rinの機能を実現するインタフェース回路である。適応フィルタ部20、エコー推定部30及び減算器25の機能は、信号処理回路50及び記録媒体53で実現することができる。記録媒体53は、フィルタ係数バッファ31及び疑似エコーバッファ33として使用され得る。記録媒体53としては、たとえば、SDRAM(Synchronous DRAM)などの揮発性メモリ、HDD(ハードディスクドライブ)またはSSD(ソリッドステートドライブ)を使用することが可能である。
一方、図6は、コンピュータを用いて構成されるエコーキャンセラ10のハードウェア構成例を示すブロック図である。図6の例では、エコーキャンセラ10は、CPU60cを内蔵するプロセッサ60、RAM(Random Access Memory)61、ROM(Read Only Memory)62、音響入出力部63、回線側入出力部64、記録媒体65及びバスなどの信号路66により構成されている。音響入出力部63は、信号入力部Sin及び信号出力部Routの機能を実現するインタフェース回路であり、回線側入出力部64は、回線側信号出力部Sout及び回線側信号入力部Rinの機能を実現するインタフェース回路である。適応フィルタ部20、エコー推定部30及び減算器25の機能は、プロセッサ60及び記録媒体65で実現することができる。記録媒体65は、フィルタ係数バッファ31及び疑似エコーバッファ33として使用され得る。プロセッサ60は、RAM61を作業用メモリとして使用し、ROM62から読み出されたコンピュータ・プログラムに従って動作することにより、適応フィルタ部20、エコー推定部30及び減算器25と同様の信号処理を実行することができる。記録媒体65としては、たとえば、SDRAMなどの揮発性メモリ、HDDまたはSSDを使用することが可能である。
以上に説明したように実施の形態1のエコーキャンセラ10は、適応フィルタ部20においてエコー経路特性の推定精度が劣化してエコー経路特性の誤学習が生じたときでも、疑似エコーバッファ33に記憶されている疑似エコー信号の中から推定エコー成分d(p)(n)を選択的に用いて残差信号e(n)を生成することができる。よって、ダブルトークが発生する環境下で安定したエコー消去性能を得ることができる。また、正常に学習できていたときの過去のフィルタ係数群で適応フィルタ部20におけるフィルタ係数群w(n)を置き換えることもできる。よって、従来技術と比べて、適応フィルタ部20によるエコー経路特性の学習の安定化が可能となる。また、音響エコーに混入する近端話者音声または背景雑音といった外乱信号に対するロバスト性が向上する。特に、上記番号Mをある程度大きい値に設定することで、比較的長時間のダブルトーク状態に対するロバスト性を向上させることができる。
更に、スピーカSP近傍の人の動きなどの環境変化によりエコー経路変動が発生した際、疑似エコーバッファ33に記憶されている疑似エコー信号の中から推定エコー成分d(p)(n)を選択的に用いることによりエコー消去量の最大化を図ることができるため、エコー経路変動に対する高速追従性が良好となる。したがって、本実施の形態のエコーキャンセラ10は、ダブルトークやエコー経路変動が発生する環境下でも、安定したエコー消去性能を維持することができる。
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図7は、実施の形態2のエコーキャンセラ10Aの概略構成を示すブロック図である。上記実施の形態1のエコーキャンセラ10の場合と同様に、このエコーキャンセラ10Aと図1に示した通信機能部11との組み合わせで通話装置を構成し得る。
図7に示されるように、実施の形態2のエコーキャンセラ10Aは、上記実施の形態1のエコーキャンセラ10と同様に、信号入力部Sin、信号出力部Rout、回線側信号出力部Sout及び回線側信号入力部Rinを備えるとともに、適応フィルタ部20及び減算器25を備えている。
また、エコーキャンセラ10Aは、エコー推定部30Aを備えている。このエコー推定部30Aは、上記実施の形態1のエコー推定部30と同様に、フィルタ係数バッファ31、疑似エコー算出部32及び評価値算出部34を有しており、更に、フィルタ選択部35fを含むバッファ制御部35Aと、FG(フォアグラウンド)フィルタ36とを有する。
FGフィルタ36は、フィルタ係数群wFG(n)を用いたフィルタ演算を受話信号列X(n)に対して実行することにより、推定エコー成分dFG(n)を生成する。具体的には、FGフィルタ36は、次式(13)に従って受話信号列X(n)とフィルタ係数群wFG(n)との畳み込み演算を実行することで推定エコー成分dFG(n)を生成することができる。
Figure 0006279172
減算器25は、送話信号y(n)から推定エコー成分dFG (p)(n)を差し引いて残差信号e(n)を生成する。この残差信号e(n)は、回線側信号出力部Soutによって通信機能部11に出力される。
次に、図8を参照しつつ、上記エコーキャンセラ10Aの動作例について説明する。図8は、エコーキャンセラ10Aにより実行されるエコーキャンセル処理の手順の一例を概略的に示すフローチャートである。図8のステップST1〜ST11の処理内容は、上記実施の形態1に係る図3のステップST1〜ST11の処理内容と同じであるので、それらの処理内容の説明を省略する。
ステップST20では、FGフィルタ36は、フィルタ係数バッファ31から取得した新フィルタ係数群w(p)(n)を用いたフィルタ演算を実行することで推定エコー成分dFG(n)を生成する(ステップST20)。具体的には、FGフィルタ36は、新フィルタ係数群w(p)(n)の供給を受けると、自己のフィルタ係数群wFG(n−1)を新フィルタ係数群w(p)(n)で置き換えることで、旧フィルタ係数群wFG(n−1)をフィルタ係数群wFG(n)(=w(p)(n))に更新する。そして、FGフィルタ36は、更新後のフィルタ係数群wFG(n)と受話信号列X(n)との畳み込み演算を実行することで推定エコー成分dFG (p)(n)を生成することができる。
あるいは、FGフィルタ36は、当該FGフィルタ36で用いられた旧フィルタ係数群wFG(n−1)と当該新たなフィルタ係数群w(p)(n)との線形結合により合成フィルタ係数群を生成し、旧フィルタ係数群wFG (p)(n−1)を合成フィルタ係数群w(p)(n)で置き換えてもよい。そして、FGフィルタ36は、この合成フィルタ係数群wFG(n)を用いたフィルタ演算により推定エコー成分dFG (p)(n)を生成してよい。今、新たなフィルタ係数群w(p)(n)に重み付ける重み係数をγとするとき、次式(14)により、合成フィルタ係数群wFG(n)を算出することができる。
Figure 0006279172
ここで、重み係数γは、忘却係数と呼ばれる。忘却係数γは、零近傍の値に設定されることが好ましく、たとえば、零より大きく且つ0.1未満の範囲内にあることが望ましい。このような合成フィルタ係数群の使用により、適応フィルタ部20のフィルタ係数群がある程度の時間をかけてFGフィルタ36に反映されるので、ダブルトークに対するロバスト性(頑健性)の向上が可能となる。
上記ステップST20の後は、減算器25は、送話信号y(n)から推定エコー成分dFG (p)(n)を差し引いて残差信号e(n)を生成し(ステップST21)、回線側信号出力部Soutは、その残差信号e(n)を通信機能部11に出力する(ステップST22)。
その後、エコーキャンセル処理が続行される場合(ステップST23のYES)、処理手順はステップST1に戻る。一方、エコーキャンセル処理が続行されない場合(ステップST23のNO)、エコーキャンセル処理は終了する。
なお、本実施の形態のエコーキャンセラ10Aのハードウェア構成は、たとえば、ワークステーションまたはメインフレームなどのCPU内蔵のコンピュータで実現可能である。あるいは、エコーキャンセラ10Aのハードウェア構成は、DSP、ASICまたはFPGAなどのLSIにより実現されてもよい。実施の形態1の場合と同様に、エコーキャンセラ10Aのハードウェア構成を、図5または図6に示した構成で実現することも可能である。
以上に説明したように実施の形態2のエコーキャンセラ10Aでは、適応フィルタ部20で用いられた現在及び過去のフィルタ係数群w(1)(n)〜w(M)(n)の中から最適なフィルタ係数群w(p)(n)が選択され、このフィルタ係数群w(p)(n)がFGフィルタ36のフィルタ係数群wFG(n)に反映される。FGフィルタ36は、このフィルタ係数群wFG(n)を用いて推定エコー成分dFG (p)(n)を生成する。また、正常に学習できていたときの過去のフィルタ係数群で適応フィルタ部20におけるフィルタ係数群w(n)を置き換えることもできる。よって、従来技術と比べて、外乱信号に対するロバスト性の向上が可能である。したがって、安定したエコー消去性能を得ることができる。
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これら実施の形態は本発明の例示であり、これら実施の形態以外の様々な形態を採用することもできる。たとえば、説明の便宜上、実施の形態1,2のフィルタ係数バッファ31は、3個以上のフィルタ係数群w(1)(n)〜w(M)(n)を記憶するように構成されているが、これに限定されず、2個のフィルタ係数群w(1)(n),w(2)(n)を記憶するように構成されてもよい。この場合、評価値算出部34は、2個のエコー消去量評価値dEV(n),dEV(n)を算出することとなる。
なお、本発明の範囲内において、上記実施の形態1,2の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、または各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
本発明に係るエコーキャンセラ装置及び通話装置は、たとえば、固定電話機、拡声機能付き携帯電話機、ハンズフリー通話システム及びテレビ電話会議システムに使用され得る。
1A,1B 通話装置、10,10A エコーキャンセラ、11 通信機能部、20 適応フィルタ部、21 適応フィルタ、22 減算器、23 適応アルゴリズム部(AAL)、25 減算器、30,30A エコー推定部、31 フィルタ係数バッファ、32 疑似エコー算出部、33 疑似エコーバッファ、34 評価値算出部、35,35A バッファ制御部、35e 疑似エコー選択部、35f フィルタ選択部、36 FG(フォアグラウンド)フィルタ、50 信号処理回路、51 音響入出力部、52 回線側入出力部、53 記録媒体、54 信号路、60 プロセッサ、60c CPU、61 RAM、62 ROM、63 音響入出力部、64 回線側入出力部、65 記録媒体、66 信号路、MK 集音部、SP スピーカ、Sin 信号入力部、Sout 回線側信号出力部、Rout 信号出力部、Rin 回線側信号入力部。

Claims (8)

  1. 入力された受話信号の系列に対してフィルタ係数群を用いたフィルタ演算を実行するとともに、集音部から入力された送話信号に応じて適応的に前記フィルタ係数群の更新を行う適応フィルタ部と、
    前記適応フィルタ部で用いられた現在及び過去の複数のフィルタ係数群を取得し、当該複数のフィルタ係数群をそれぞれ用いたフィルタ演算を前記受話信号の系列に対して実行することにより複数の疑似エコー信号を算出する疑似エコー算出部と、
    前記送話信号と前記複数の疑似エコー信号とに基づき、当該複数の疑似エコー信号にそれぞれ対応する複数のエコー消去量評価値を算出する評価値算出部と、
    前記複数のエコー消去量評価値に基づいて、前記複数の疑似エコー信号の中から一の疑似エコー信号を推定エコー成分として選択する疑似エコー選択部と、
    前記推定エコー成分と前記送話信号との差分を示す残差信号を出力する信号出力部と
    を備えることを特徴とするエコーキャンセラ装置。
  2. 請求項1記載のエコーキャンセラ装置であって、前記複数のエコー消去量評価値に基づいて、前記複数のフィルタ係数群の中から一のフィルタ係数群を新フィルタ係数群として選択するフィルタ選択部を更に備え、
    前記フィルタ選択部は、前記新フィルタ係数群で前記適応フィルタ部におけるフィルタ係数群の値を置き換えることを特徴とするエコーキャンセラ装置。
  3. 請求項2記載のエコーキャンセラ装置であって、前記複数のフィルタ係数群を一時的に記憶するフィルタ係数バッファを更に備え、
    前記フィルタ係数バッファは、前記フィルタ選択部による制御を受けて前記新フィルタ係数群を前記適応フィルタ部に供給することを特徴とするエコーキャンセラ装置。
  4. 請求項1記載のエコーキャンセラ装置であって、前記評価値算出部は、前記送話信号と前記疑似エコー信号との差分に対する当該送話信号の比率の2乗を前記エコー消去量評価値として算出することを特徴とするエコーキャンセラ装置。
  5. 請求項1記載のエコーキャンセラ装置であって、前記複数のエコー消去量評価値は、前記集音部から入力された現在の送話信号に基づいて算出されることを特徴とするエコーキャンセラ装置。
  6. 請求項1記載のエコーキャンセラ装置であって、
    前記複数の疑似エコー信号を一時的に記憶する疑似エコーバッファと、
    前記送話信号の供給を受ける減算器とを更に備え、
    前記疑似エコーバッファは、前記疑似エコー選択部による制御を受けて前記推定エコー成分を出力し、
    前記減算器は、前記疑似エコーバッファから出力された当該推定エコー成分を前記送話信号から差し引いて前記残差信号を生成することを特徴とするエコーキャンセラ装置。
  7. 請求項1記載のエコーキャンセラ装置であって、前記適応フィルタ部は、学習同定法による適応アルゴリズムを用いて前記更新を行うことを特徴とするエコーキャンセラ装置。
  8. 相手方通話装置との間で電気通信網を介して通信を行う通信機能部と、
    前記通信機能部から入力された受話信号列を音響波に変換して放射するスピーカ及び集音部に接続された請求項1記載のエコーキャンセラ装置とを備え、
    前記エコーキャンセラ装置は、前記受話信号列を用いて、前記集音部から入力された送話信号中の音響エコー成分を低減させることを特徴とする通話装置。
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