以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本発明の一実施形態に係る中空糸膜は、親水性を示す中空糸膜である。そして、この中空糸膜は、分画粒子径が、0.01〜0.5μmであり、外表面に存在する孔の直径の最頻値に対する、バブルポイント法で測定される最大孔径の比が、3より大きい。
まず、本実施形態に係る中空糸膜は、上述したように、親水性であるので、汚れに対する耐性が高いと考えられる。このことは、以下のことによると考えられる。中空糸膜の表面又は内部に堆積される濁質成分であるファウラントとしては、疎水性有機物が多い。特に、この中空糸膜を、水処理等の、被処理液として水系媒体を用いたろ過に用いた場合、ファウラントとしては、疎水性有機物が多い。中空糸膜が親水性であるほうが、疎水性であるより、この疎水性有機物の、中空糸膜への堆積を抑制できる。このことから、中空糸膜は、親水性であることによって、耐汚染性が高まると考えられる。さらに、この中空糸膜を、水処理等の、被処理液として水系媒体を用いたろ過に用いた場合、中空糸膜の透水性を高めることができ、ろ過抵抗を下げることができる。
また、前記中空糸膜の親水性は、親水性を示せば、その程度は、特に限定されない。例えば、前記中空糸膜の親水性としては、親水性により耐汚染性を高める程度の親水性等が挙げられる。また、前記中空糸膜の親水性の程度を、湿潤状態での透水量(湿潤透水量)に対する乾燥状態での透水量(乾燥透水量)の比(乾燥透水量/湿潤透水量)で評価することが考えられる。
乾燥透水量は、乾燥状態での中空糸膜の透水量であり、例えば、膜間差圧100kPaにおける透水量である。より具体的には、以下の方法により測定される透水量等が挙げられる。まず、測定対象物である中空糸膜を乾燥させる。この乾燥は、中空糸膜を乾燥できれば、特に限定されないが、例えば、60℃の恒温乾燥機での24時間の乾燥等が挙げられる。この乾燥状態の中空糸膜の一端を封止した中空糸膜モジュールを用い、原水として純水を利用し、ろ過圧力が100kPa、温度が25℃の条件で外圧濾過して、時間当たりの透水量を測定する。この測定した透水量から、単位膜面積、単位時間、単位圧力当たりの透水量に換算して、膜間差圧100kPa(0.1MPa)における透水量(L/m2/時)を得る。
次に、湿潤透水量は、湿潤状態での中空糸膜の透水量であり、例えば、膜間差圧100kPaにおける透水量である。より具体的には、以下の方法により測定される透水量等が挙げられる。まず、測定対象物である中空糸膜を、エタノール50質量%水溶液に15分間浸漬させ、その後、15分間純水で洗浄するといった湿潤処理を施す。この湿潤処理を施した中空糸膜を、乾燥状態の中空糸膜の代わりに用いること以外、乾燥透水量の測定方法と同様の方法により、膜間差圧100kPa(0.1MPa)における透水量(L/m2/時)を得る。
そして、湿潤状態での透水量(湿潤透水量)に対する乾燥状態での透水量(乾燥透水量)の比(乾燥透水量/湿潤透水量)は、上記のようにして求められた各透水量から算出する。
また、前記中空糸膜は、上記のようにして求められた比が、40%以上となるような親水性であることが好ましい。また、この比は、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。また、乾燥状態での中空糸膜も、水に触れたら、瞬時に湿潤状態になるのであれば、上記比が100%となる。このため、上記比の上限値は、100%である。よって、上記比は、40〜100%であることが好ましく、60〜100%であることがより好ましく、80〜100%であることがさらに好ましい。親水性が低すぎると、中空糸膜が親水性であることによって発揮される効果を充分に発揮できなくなる傾向がある。すなわち、耐汚染性が低くなる傾向がある。
また、前記中空糸膜は、中空糸膜を構成する材料の親水性を高めてもよいし、疎水性の中空糸膜を親水化処理により親水性にしてもよい。また、中空糸膜を構成する材料の親水性を高めるためには、中空糸膜の原料として、親水性を示す材料で製造すればよく、例えば、親水性樹脂を主成分として、中空糸膜を製造すればよい。また、親水化処理は、中空糸膜を親水性にできる処理であれば、特に限定されない。例えば、中空糸膜を、親水性樹脂に含浸させる方法等が挙げられる。
また、前記親水性樹脂としては、中空糸膜に含ませることができる親水性樹脂であれば、特に限定されない。前記親水性樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース、セルロースアセテート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテートとの共重合体、及びビニルピロリドンとビニルカプロラクタムとの共重合体等が挙げられる。前記親水性樹脂としては、上記例示の樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、親水化処理は、中空糸膜を、親水性樹脂に含浸させる方法以外に、中空糸膜を、グリセリン、エチレングリコール、及び界面活性剤等に浸漬させる方法も挙げられる。この方法により、中空糸膜の親水性を付与してもよい。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、上述したように、分画粒子径が、0.01〜0.5μmである。この分画粒子径は、中空糸膜の通過を阻止できる最小粒子の粒子径のことをいい、具体的には、例えば、中空糸膜による阻止率が90%となる粒子径等が挙げられる。このような分画粒子径は、小さければ小さいほど好ましいが、逆洗に適した気体透過性を有するためには、本実施形態に係る中空糸膜のように、膜内及び膜表面の構造を制御しても、限度がある。このため、中空糸膜の分画粒子径が小さすぎると、逆洗に適した気体透過性を維持できない傾向がある。また、中空糸膜の分画粒子径が、大きすぎると、気体透過性が高まったとしても、分画特性が低下してしまい、除去対象の適用範囲が狭くなってしまう傾向がある。また、中空糸膜の分画粒子径が、大きすぎると、通常の中空糸膜でも、逆洗に適した気体透過性を確保できる。この点からも、気体透過性と分画特性とがともに優れた中空糸膜にならない傾向がある。また、上記観点から、前記中空糸膜の分画粒子径は、0.01〜0.2μmであることが好ましく、0.02〜0.2μmであることがより好ましく、0.05〜0.2μmであることがさらに好ましい。これらのことから、中空糸膜の分画粒子径が、上記範囲内であれば、より優れた分画特性と、逆洗により適した気体透過性とをともに発揮できる。
また、中空糸膜は、分画粒子径によって、除去対象の適用範囲が異なる。具体的には、分画粒子径が0.05〜0.1μmであれば、精密ろ過膜として、微生物やウィルスの除去に好適に用いることができる。この点から、前記中空糸膜の分画粒子径は、0.05〜0.1μmであることが好ましい。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、上述したように、外表面に存在する孔の直径の最頻値(D1)に対する、バブルポイント法で測定される最大孔径(D2)の比(D2/D1)が、3より大きい。
最頻値D1は、中空糸膜の外表面に存在する孔の直径分布を作成し、その分布の最頻値である。すなわち、最頻値D1は、中空糸膜の外表面に存在する孔のモード径である。具体的には、例えば、以下のように算出した。まず、中空糸膜の外表面(外周面)を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する。この観察により得られた外周面の写真を、画像計測ソフトを用いて二値化し、大津方式で閾値を決定して、外周面に形成されている孔の直径分布を作成する。この直径分布から、孔の直径の最頻値(D1)を算出する。なお、走査型電子顕微鏡としては、特に限定されず、例えば、株式会社日立製作所製のS−3000N等が挙げられる。また、画像計測ソフトとしては、特に限定されず、例えば、株式会社プラネトロン製のImage−Pro Plus等が挙げられる。
また、最大孔径D2は、バブルポイント法で測定される最大孔径であり、例えば、ASTM−F316−70に記載のバブルポイント法に基づき、最初に連続的に気泡が発生する圧力を測定し、その圧力値を下記式(1)(Washburn式)に適用することで算出される最大孔径等である。すなわち、最大孔径D2としては、ASTM−F316−70に記載のバブルポイント法に基づく下記式(1)から算出される最大孔径等が挙げられる。具体的には、水で湿潤させた状態での中空糸膜の一方の面から、空気により圧力をかけ、その空気の透過を確認した圧力を、バブルポイント圧ΔPとして用いて、下記式(1)から算出される最大孔径等が挙げられる。その測定条件は、特に限定されないが、例えば、中空糸膜の膜面積1.2m2あたりの最大孔径を求める条件であってもよい。
d = 4γcosθ / ΔP (1)
上記式(1)中、dは、細孔径(m)を示す。すなわち、このdは、中空糸膜の細孔の直径(m)を示す。また、γは、溶媒の表面張力(N/m)を示す。また、θは、膜素材と溶媒との接触角(°)を示す。ΔPは、バブルポイント圧力(Pa)を示す。
具体的には、以下のようにして、測定することができる。
まず、中空糸膜の一方端を封止し、膜面積が1.2m2となるように、モジュール化する。このモジュール化した中空糸膜を、エタノール水溶液で湿潤させる。この湿潤させた状態での中空糸膜の、封止されていない側の端部から空気を供給し、空気により圧力をかけ、その空気の透過を確認する。そのときに、連続的に気泡が発生する最も低い圧力をバブルポイント圧ΔPとして、上記式(1)から、最大孔径を算出する。このようにして、最大孔径を測定することができる。
これらのことから、最頻値D1は、外表面に存在する孔のうち、最も数の多い孔の直径であることがわかる。また、最大孔径D2は、気体の透過に寄与する細孔の直径であることがわかる。これらのことから、上記比(D2/D1)が大きいと、外表面に存在する孔のうち、最も数の多い孔の直径に対して、気体の透過に寄与する孔の直径が大きいことがわかる。このことから、中空糸膜に存在する細孔の直径分布が大きいことがわかる。上記比(D2/D1)が3以上となるように、直径分布が大きいと、優れた分画特性を維持しつつ、逆洗に適した気体透過性を発揮できる。このことは、以下のことによると考えられる。まず、中空糸膜が親水性であっても、一部に大きな細孔があれば、気体が透過できると考えられる。さらに、このような気体の透過できる程度の大きな細孔が、中空糸膜全体に占める割合が一定以下であると、優れた分画特性を維持できると考えられる。すなわち、外表面に存在する孔のうち、最も数の多い孔の直径が小さければ、優れた分画特性を有し、さらに、直径分布が広く、気体の透過できる程度の大きな細孔が一定以下で存在すれば、逆洗に適した気体透過性を発揮できると考えられる。
また、中空糸膜に存在する孔は、上記のような比を達成するのであれば、特に限定されない。例えば、中空糸膜に存在する孔は、中空糸膜を非溶剤誘起相分離法で製造した場合、中空糸膜の製造時における液交換により形成される。この液交換速度は、中空糸膜の製造における一定の条件下では、一定であるため、中空糸膜に存在する孔の直径は、正規分布に近い分布になると考えられる。本実施形態に係る中空糸膜は、分画粒子径が0.01〜0.5μmになり、かつ、上記比(D2/D1)が3以上になるような、比較的広い分布を有する。このような分布が得られるように、例えば、中空糸膜を非溶剤誘起相分離法で製造した場合であれば、上記液交換速度を調整して、中空糸膜を製造する。
また、中空糸膜の孔径としては、電子顕微鏡を用いた観察から得られる孔径であることが多い。このような孔径による評価は、中空糸膜の一部に基づいた評価である。このことから、電子顕微鏡観察から直径分布を得たとしても、その分布は、ミクロな範囲での分布である。これに対して、バブルポイント法で測定される最大孔径は、比較的広い範囲、例えば、測定範囲1m2での孔径である。このことから、上記比(D2/D1)は、ミクロな範囲での分布ではなく、広い範囲での分布に基づく比である点でも、この比を用いて評価することは好ましい。すなわち、上記比(D2/D1)が3以上であることは、膜の広い範囲で、優れた分画特性を有し、逆洗に適した気体透過性を発揮できることを示している。
また、上記比(D2/D1)は、上述したように、3以上である。上記比が大きいほど、直径分布が広くなり、好ましいが、実際には、15程度が限界である。このため、上記比(D2/D1)の上限値は、15である。このことから、上記比(D2/D1)は、3〜15であることが好ましい。また、上記比(D2/D1)は、5〜8であることが好ましい。上記比が小さすぎる場合は、気体透過性が低下する傾向がある。このことは、中空糸膜の細孔の直径分布が狭くなりすぎ、優れた分画特性を維持しながら、優れた気体透過性を発揮するのは困難になることによると考えられる。また、上記比は大きいほど好ましいが、大きすぎる状態を作ることができれば、分画特性が低下することが考えられる。
以上のことから、本実施形態に係る中空糸膜は、分画特性に優れるだけではなく、逆洗に適した気体透過性を有し、さらに、耐汚染性にも優れた中空糸膜である。また、この中空糸膜は、ろ過工程に用いて、優れた分画特性を発揮できるだけではなく、中空糸膜を透過させた気体を用いた逆洗を好適に行うことができる。よって、中空糸膜を透過させた気体を用いた逆洗を定期的に行うことによって、この中空糸膜を用いた膜ろ過法は、長期間にわたって、安定的にろ過することができる。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、外表面(外周面)に存在する孔が、内表面(内周面)に存在する孔より小さいことが好ましい。外表面に存在する孔が、内表面に存在する孔より小さいと、膜表面及び膜内部の構造が、前記比の大きい構造に好適になると考えられる。よって、本実施形態に係る中空糸膜は、分画特性に優れるにもかかわらず、逆洗により適した気体透過性を有する構造に好適になると考えられる。このことから、分画特性により優れ、逆洗により適した気体透過性を有する中空糸膜となる。これに対して、外表面に存在する孔が、内表面に存在する孔とほぼ同じになるような、中空糸膜全体が均質な構造である場合、外表面以外にも、比較的小さい細孔が形成され、気体透過性が低下する傾向がある。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、外表面に存在する孔が、内表面に存在する孔より小さくなるように、内表面から外表面に向かって、漸次的に小さくなる傾斜構造であることがより好ましい。このような構造であれば、中空糸膜は、前記比の大きい構造により好適になると考えられる。
また、前記中空糸膜は、上述したように、外表面(外周面)に存在する孔が、内表面(内周面)に存在する孔より小さいことが好ましい。すなわち、前記中空糸膜に形成されている孔の直径は、上記関係を満たすことが好ましい。具体的には、前記中空糸膜の外周面に存在する細孔の直径(外周側細孔径)は、特に限定されないが、具体的には、0.01〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましく、0.1〜0.3μmであることがさらに好ましい。また、前記中空糸膜の内周面に存在する細孔の直径(内周側細孔径)も、特には限定されないが、具体的には、1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましく、2〜8μmであることが好ましい。また、前記外周側細孔径に対する前記内周側細孔径の比(内周側細孔径/外周側細孔径)は、1より大きく、10〜100であることが好ましく、20〜50であることが好ましく、30〜50であることが好ましい。これらのことから、前記中空糸膜は、前記外周側細孔径や前記内周側細孔径を満たすように、内周面側から外周面側に向かって、膜内の気孔の大きさ(孔径)が厚み方向で漸次的に小さくなっていく傾斜構造を有するものであることが好ましい。なお、ここでの直径は、直径の平均値であり、例えば、直径の算術平均値等が挙げられる。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、内表面側に気体を供給した際、その気体の圧力が、150〜400kPaで、その気体が透過することが好ましい。また、気体が透過する際の圧力が、150〜400kPaであることが好ましく、150〜350kPaであることがより好ましい。この圧力が低すぎると、中空糸膜を透過させた気体を用いた逆洗の洗浄効果が低くなる傾向がある。また、低すぎる圧力で気体が透過する中空糸膜であれば、分画特性が低下する傾向もある。また、前記圧力が高すぎる場合、中空糸膜への加圧が大きくなりすぎ、中空糸膜が損傷するおそれがある。このため、中空糸膜を透過させた気体を用いた逆洗を実用上利用できなくなるおそれがある。これらのことから、前記圧力が上記範囲内で、気体が透過する中空糸膜であれば、分画特性に優れ、さらに、中空糸膜を透過した気体を用いた逆洗を好適に行うことができる。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、内表面側に気体を供給した際、その気体の透過流束が、500LMHより大きく20000LMH未満であることが好ましく、500〜10000LHMであることがより好ましく、500〜5000LHMであることがさらに好ましく、1000〜5000LHMであることが最も好ましい。なお、ここでの透過流束は、膜面積1m2あたり1時間に透過する流量(LMH)である。この透過流束が小さすぎると、中空糸膜を透過させた気体を用いた逆洗の洗浄効果が低くなる傾向がある。また、前記透過流束が大きすぎると、中空糸膜への負荷が大きすぎて、中空糸膜が損傷するおそれがある。また、前記透過流束が大きすぎても、中空糸膜を透過させた気体を用いた逆洗の洗浄効果が低くなる傾向がある。また、前記透過流束が大きくなりすぎる中空糸膜であれば、分画特性が低下する傾向もある。これらのことから、気体を上記透過流束で透過させれば、中空糸膜を透過した気体の透過量が、中空糸膜を透過した気体による逆洗に好適な量となるので、中空糸膜を透過した気体による逆洗を好適に行うことができる。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、内表面側に気体を供給した際、その気体の圧力が、150〜400kPaであるとき、その気体の透過流束が、500〜10000LHMであることが好ましく、1000〜5000LHMであることがより好ましい。また、内表面側に気体を供給した際、その気体の圧力が、150〜350kPaであるとき、その気体の透過流束が、500〜5000LHMであることが好ましい。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、単一層からなることが好ましい。すなわち、中空糸膜は、膜厚方向に、細孔の大きさ等が異なる、非対称な構造であっても、その素材は、同一な層からなることが好ましい。より具体的には、前記中空糸膜は、形成される細孔が比較的小さい層と、形成される細孔が比較的大きな層とを別々に形成し、それらを積層したものではなく、内周面側から外周面側に向かって、膜内の気孔の大きさ(孔径)が厚み方向で漸次的に小さくなっていく傾斜構造が単一層で形成されていることが好ましい。そうすることによって、分画特性及び気体透過性により優れ、膜内に剥離等の損傷が発生しにくい中空糸膜が得られる。
また、本実施形態に係る中空糸膜に含まれる樹脂は、中空糸膜の素材として利用可能なものであれば、特に限定されない。前記中空糸膜は、親水性樹脂を含んでいてもよく、上述したように、前記中空糸膜を構成する樹脂として、親水性樹脂を含むことによって、親水性を示すものであってもよい。前記親水性樹脂としては、上述した樹脂が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、及び酢酸セルロース等が挙げられる。また、前記中空糸膜は、上述したように、親水化処理によって、親水性にしてもよく、その場合には、親水性樹脂以外であっても、用いることができる。中空糸膜に含まれる樹脂としては、上記親水性樹脂以外に、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビニリデン系樹脂、テトラフルオロエチレン重合体、及びエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリメチルメタクリル、ポリメチルアクリル、ポリウレタン、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。前記樹脂としては、上記例示の樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記樹脂としては、上記例示の樹脂の中でも、良好な気体透過性を発揮させることができ、さらに、充分な強度及び優れた耐薬品性を維持できるという観点から、フッ素系樹脂が好ましく、フッ化ビニリデン系樹脂がより好ましい。また、前記中空糸膜は、上述したように、親水性を有する。このことから、前記中空糸膜は、フッ化ビニリデン系樹脂等のフッ素系樹脂を含む場合、疎水性が高くなる傾向があるので、中空糸膜に親水化処理を施すことが好ましい。このように親水化処理を施すことによって、前記樹脂として、フッ素系樹脂を用いても、親水性を発揮することができ、さらに、フッ素系樹脂を含むことによって、充分な強度及び優れた耐薬品性を維持できる。
また、このフッ化ビニリデン系樹脂は、中空糸膜を構成することができるフッ化ビニリデン系樹脂であれば、特に限定されない。このフッ化ビニリデン系樹脂としては、具体的には、フッ化ビニリデンのホモポリマーや、フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。このフッ化ビニリデン共重合体は、フッ化ビニリデンに基づく繰り返し単位を有する共重合体であれば、特に限定されない。フッ化ビニリデン共重合体としては、具体的には、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種とフッ化ビニリデンとの共重合体等が挙げられる。フッ化ビニリデン系樹脂としては、上記例示の中でも、フッ化ビニリデンのホモポリマーであるポリフッ化ビニリデンが好ましい。また、フッ化ビニリデン系樹脂としては、上記例示の樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記中空糸膜に含まれる樹脂、例えば、フッ化ビニリデン系樹脂の分子量は、中空糸膜の用途等によって異なるが、例えば、重量平均分子量で、50,000〜1,000,000であることが好ましい。分子量が小さすぎると、中空糸膜の強度が低下する傾向がある。また、分子量が大きすぎると、中空糸膜の製膜性が低下する傾向がある。また、薬液洗浄に晒される水処理用途に、中空糸膜が用いられる場合、その中空糸膜は、より高い性能が求められるので、強度に優れ、さらに、好適な中空糸膜を得るために、その製膜性に優れていることが求められる。このため、中空糸膜に含まれる樹脂、例えば、フッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量は、100,000〜900,000であることが好ましく、150,000〜800,000であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る中空糸膜の形状は、特に限定されない。中空糸膜は、中空糸状であって、長手方向の一方側は開放し、他方側は、開放していても閉じていてもよい。中空糸膜の形状としては、例えば、中空糸状であって、長手方向の一方側を開放したままで、他方側を閉じた形状等が挙げられる。また、中空糸膜の開放した側の形状としては、例えば、図1に示すような形状である場合等が挙げられる。なお、図1は、本発明の実施形態に係る中空糸膜の部分斜視図である。
また、前記中空糸膜の外径R1は、0.5〜7mmであることが好ましく、1〜2.5mmであることがより好ましく、1〜2mmであることがさらに好ましい。このような外径であれば、中空糸膜を用いた分離技術を実現する装置に備える中空糸膜として、好適な大きさである。
また、前記中空糸膜の内径R2は、0.4〜3mmであることが好ましく、0.6〜2mmであることが好ましく、0.6〜1.2mmであることがさらに好ましい。中空糸膜の内径が小さすぎると、透過液の抵抗(管内圧損)が大きくなり、流れが不良になる傾向がある。また、中空糸膜の内径が大きすぎると、中空糸膜の形状を維持できず、膜の潰れやゆがみ等が発生しやすくなる傾向がある。
また、前記中空糸膜の膜厚Tは、0.2〜1mmであり、0.25〜0.5mmであることがより好ましく、0.25〜0.4mmであることがさらに好ましい。中空糸膜の膜厚が薄すぎると、強度不足により、ゆがみ等の変形が発生しやすくなる傾向がある。また、前記膜厚が厚すぎると、マクロボイドの発生の抑制が困難になる等、好適な膜構造を得ることが困難になる傾向がある。場合によっては、強度が低下する場合もある。一方で、本実施形態に係る中空糸膜は、膜厚を変更しても、高い透水性を維持できるので、強度の観点から、モジュール等の使用環境に応じて比較的厚い膜厚の中空糸膜にすることも可能である。
前記中空糸膜の外径R1、内径R2、及び膜厚Tが、それぞれ上記範囲内であれば、中空糸膜を用いた分離技術を実現する装置に備える中空糸膜として、好適な大きさであり、前記装置の小型化が図れる。
また、本実施形態に係る中空糸膜の製造方法は、上述の構造を有する中空糸膜を製造することができれば、特に限定されない。前記中空糸膜の製造方法は、多孔性の中空糸膜を製造する方法等が挙げられる。このような多孔性の中空糸膜の製造方法としては、相分離を利用する方法が知られている。この相分離を利用する中空糸膜の製造方法としては、例えば、非溶剤誘起相分離法(Nonsolvent Induced Phase Separation:NIPS法)や、熱誘起相分離法(Thermally Induced Phase Separation:TIPS法)等が挙げられる。
NIPS法とは、ポリマーを溶剤に溶解させた均一なポリマー原液を、ポリマーを溶解させない非溶剤と接触させることで、ポリマー原液と非溶剤との濃度差を駆動力とした、ポリマー原液の溶剤と非溶剤との置換により、相分離現象を起こさせる方法である。NIPS法は、一般的に、溶剤交換速度によって、形成される細孔の孔径が変化する。具体的には、溶剤交換速度が遅いほど、細孔が粗大化する傾向がある。また、溶剤交換速度は、中空糸膜の製造においては、非溶剤との接触面が最も速く、膜内部に向かうにしたがって、遅くなる。このため、NIPS法で製造した中空糸膜は、非溶剤との接触面付近は緻密であって、膜内部に向かって、徐々に細孔を粗大化した非対称構造を有するものが得られる。
また、TIPS法とは、ポリマーを、高温下では溶解させることができるが、温度が低下すると溶解できなくなる貧溶剤に、高温下で溶解させ、その溶液を冷却することにより、相分離現象を起こさせる方法である。熱交換速度は、一般的に、NIPS法における溶剤交換速度より速く、速度の制御が困難であるため、TIPS法は、膜厚方向に対して、均一な細孔が形成されやすい。
以上のことから、前記中空糸膜の製造方法としては、前記中空糸膜を製造することができれば、特に限定されないが、非溶剤誘起相分離法が好ましい。具体的には、この製造方法としては、以下のような製造方法が挙げられる。この製造方法としては、前記中空糸膜を構成する樹脂と、溶剤とを含む製膜原液を中空糸状に押し出す押出工程と、押し出された中空糸状の製膜原液を、外部凝固液と接触させて、中空糸膜を形成する工程とを備える方法等が挙げられる。ここで、外部凝固液とは、水溶性無機塩、糖類及び水溶性有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む凝固液等が挙げられる。また、この外部凝固液は、前記水溶性無機塩、前記糖類及び前記水溶性有機化合物以外は、水を主成分として含むものが挙げられる。このような製造方法によって、前記中空糸膜を好適に製造することができる。
また、本実施形態に係る製造方法における押出工程で用いる製膜原液は、前記樹脂と前記溶剤を含み、中空糸膜を製造することができる製膜原液であれば、特に限定されない。また、前記製膜原液は、前記樹脂及び前記溶剤以外を含んでいてもよく、例えば、相分離促進剤を含んでいてもよい。また、この製膜原液を調製する方法としては、前記製膜原液を調製できれば、特に限定されない。この方法としては、例えば、製膜原液の原料を、加熱攪拌する方法等が挙げられる。また、加熱攪拌時に、混練することが好ましい。すなわち、製膜原液の原料である、前記樹脂、前記溶剤、及び必要に応じて前記相分離促進剤を所定の比率になるように混合し、加熱状態で混練する方法が好ましい。そうすることによって、製膜原液の原料である各成分が均一に分散された製膜原液が得られ、中空糸膜を好適に製造できると考えられる。また、混練の際に、例えば、二軸混練設備、ニーダー、及びミキサー等を用いることができる。
前記樹脂は、前記中空糸膜に含まれる樹脂である。
また、前記溶剤は、製膜原液の調製時や押出工程時に、前記樹脂を溶解させることができる溶剤であれば、特に限定されない。また、前記溶剤としては、水溶性であることが好ましい。水溶性であれば、製膜後、中空糸膜から溶剤を抽出する際に、水を使用することが可能であり、抽出した溶剤は、生物処理等によって処分することが可能である。また、前記溶剤としては、前記樹脂の貧溶剤であることが好ましい。前記樹脂の貧溶剤としては、前記樹脂と特定の温度以上で相溶して一相状態となり、かつ、温度低下による相溶性低下により相分離を起こしうる溶剤であることがより好ましい。このような溶剤を用い、前記温度変化による相分離が起こらない状態で、中空糸状の製膜原液を外部凝固液と接触させることで、製膜原液内の溶剤と外部凝固液との溶剤交換が起こり、製膜原液内の樹脂を凝固させる。このため、溶剤交換の速度が、良溶剤を用いた場合、いわゆる、従来のNIPS法より、好適な速度になると考えられる。よって、前記中空糸膜を、より好適に製造することができると考えられる。すなわち、本実施形態に係る中空糸膜の製造方法としては、前記中空糸膜を構成する樹脂と、前記樹脂と特定の温度以上で相溶して一相状態となり、かつ、温度低下による相分離を起こしうる貧溶剤とを含む製膜原液を調製する工程と、前記製膜原液を中空糸状に押し出す工程と、押し出された中空糸状の製膜原液を、外部凝固液と接触させて、中空糸膜を形成する工程を備える製造方法が好ましい。また、この製造方法は、前記外部凝固液の温度が、前記温度低下による相分離が開始する温度よりも高いことが好ましい。このような製造方法であれば、前記中空糸膜を好適に製造することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
まず、製膜原液を調製する際、前記樹脂に対する良溶剤を用いるのではなく、上記のような貧溶剤を用い、前記温度変化による相分離が起こらない状態で、中空糸状の製膜原液を外部凝固液と接触させる。そうすることで、製膜原液内の溶剤と外部凝固液との溶剤交換が起こり、製膜原液内の樹脂を凝固させる。このため、溶剤交換の速度が、良溶剤を用いた場合、いわゆる、従来のNIPS法より、好適な速度になると考えられる。よって、分画特性に優れるだけではなく、逆洗に適した気体透過性を有する中空糸膜を、好適に製造することができると考えられる。
前記溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のカプロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、及びアセトン等が挙げられる。前記溶剤としては、前記例示の溶剤の中でも、環境負荷、安全面、及びコスト面等の観点からγ−ブチロラクトンやε−カプロラクトンが好ましい。また、前記溶剤としては、上記例示の溶剤樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記相分離促進剤は、特に限定されない。また、前記相分離促進剤としては、水溶性であることが好ましい。水溶性であれば、製膜後、中空糸膜から相分離促進剤を抽出する際に、水を使用することが可能であり、抽出した相分離促進剤は、生物処理等によって処分することが可能である。前記相分離促進剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、水、エタノール、メタノール等の、前記溶剤以外の溶剤、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタムとの共重合体等の、樹脂や界面活性剤等が挙げられる。また、この樹脂は、各樹脂の単独であってもよいし、各樹脂の共重合体であってもよい。前記相分離促進剤としては、前記例示の中でも、マクロボイドが形成されにくいという観点からポリビニルピロリドンが好ましい。また、製膜原液の相分離を促進する添加剤としては、また、前記相分離促進剤としては、上記例示の化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記製膜原液における各成分の含有量としては、以下のようなものが挙げられる
。まず、前記樹脂の含有量は、前記製膜原液に対して、20〜35質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。前記貧溶剤の含有量は、前記製膜原液に対して、45〜70質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましく、55〜65質量%であることがさらに好ましい。前記相分離促進剤の含有量は、前記製膜原液に対して、5〜20質量%であることが好ましく、8〜20質量%であることがより好ましく、10〜15質量%であることがさらに好ましい。
また、前記製膜原液は、前記樹脂と前記溶剤とを含んでいればよく、この2成分からなるものであってもよい。また、前記製膜原液は、前記相分離促進剤を含むことが好ましいので、前記樹脂と前記溶剤と前記相分離促進剤とを含んでいることが好ましく、この3成分からなるものであってもよい。また、前記製膜原液としては、これらの3成分以外にも、他の成分を含んでいてもよい。この他の成分としては、例えば、シリカ、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、及び製膜原液の相分離を促進する添加剤やフィラー等の各種添加剤等が挙げられる。
また、本実施形態に係る製造方法における押出工程は、前記製膜原液を中空糸状に押し出す工程であれば、特に限定されない。前記押出工程としては、図2に示す中空糸成型用ノズルから前記製膜原液を押し出す工程等が挙げられる。なお、図2は、本発明の実施形態に係る製造方法で用いる中空糸成型用ノズルの一例を示す概略図である。また、図2(a)には、その断面図を示し、図2(b)には、中空糸成型用ノズルの、製膜原液を吐出する吐出口側を示す平面図である。具体的には、ここでの中空糸成型用ノズル21は、円環状の外側吐出口26と、前記外側吐出口26の内側に配置する円状又は円環状の内側吐出口27とを備える。そして、この中空糸成型用ノズル21は、製膜原液を流通させる流通管24の末端に備え、流通管24内を流動してきた製膜原液を、ノズル内の流路22を介して、外側吐出口26から吐出する。また、この中空糸成型用ノズル21は、この外側吐出口26からの製膜原液の吐出と同時に、内部凝固液を、流通管25に流通させ、ノズル内の流路23を介して、内側吐出口27から吐出する。そうすることによって、中空糸成型用ノズル21から押し出された中空糸状の前記製膜原液を前記内部凝固液と接触させる。
そして、この内部凝固液としては、前記中空糸膜の製造を阻害しない、すなわち、前記中空糸膜の製造を可能にする凝固液であれば、特に限定されない。内部凝固液としては、前記中空糸膜として、前記傾斜構造の中空糸膜を製造できる凝固液であることが好ましく、前記製膜原液との溶剤交換速度が遅く、粗大な細孔が形成されることが好ましい。前記内部凝固液としては、グリセリン、エチレングリコール、及び10質量%以上の比較的高濃度のポリマー水溶液等の高粘度液体や、前記製膜原液に含まれる溶剤と同じような構成のもの等が挙げられる。内部凝固液として、このような、粘度が高い液体又は溶剤構成が製膜原液の溶剤と似ている液体を用いれば、液交換速度が抑制され、粗大な孔を得られやすいという点で好ましい。前記内部凝固液としては、例えば、ジメチルアセトアミドとグリセリンとの混合溶剤、γ−ブチロラクトンとグリセリンとの混合溶剤、γ−ブチロラクトンとポリビニルアルコールとの混合溶剤、γ−ブチロラクトンとポリビニルピロリドンとの混合溶剤、水とポリビニルアルコールとの混合溶剤、等が挙げられる。この中でも、γ−ブチロラクトンとグリセリンとの混合溶剤が、中空糸膜の成形性が良いという点から好ましい。内部凝固液としては、上記例示の溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、内部凝固液の温度は、内部凝固液の均一性を確保するという観点から、40〜170℃であることが好ましい。すなわち、内部凝固液の温度としては、40〜170℃の間で調整されることが好ましい。
また、本実施形態においては、製膜原液に含まれる溶剤、相分離促進剤、及び内部凝固液は、中空糸膜が傾斜構造になるように選択することが好ましい。
また、本実施形態に係る製造方法における形成工程は、押し出された中空糸状の製膜原液を、外部凝固液と接触させて、中空糸膜を形成する工程であれば、特に限定されない。この形成工程は、具体的には、前記押出工程で押し出された中空糸状の製膜原液を、外部凝固浴に貯留した外部凝固液に浸漬させる工程等が挙げられる。
前記外部凝固液は、押し出された中空糸状の製膜原液と接触することで、押し出された中空糸状の製膜原液を凝固させることができるものであれば、特に限定されない。前記外部凝固液としては、具体的には、水や、塩類又は溶剤を含有した水溶液等が挙げられる。具体的には、ここでの外部凝固液は、上述したように、水溶性無機塩、糖類及び水溶性有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む凝固液等が挙げられる。また、この外部凝固液は、前記水溶性無機塩、前記糖類及び前記水溶性有機化合物以外は、水を主成分として含むものが挙げられる。このような外部凝固液を用いることで、前記水溶性無機塩を加えたことによる塩析効果のみではなく、前記水溶性有機化合物を加えたことにより、製膜原液と外部凝固液との有機溶剤濃度差を低減でき、二重の効果により液交換速度(溶剤交換速度)を抑制することができる。
また、前記外部凝固液において、前記水溶性無機塩を含有する場合、その含有量は、前記外部凝固液に対して、10〜30質量%であることが好ましく、13〜30質量%であることがより好ましい。前記糖類を含有する場合、その含有量は、前記外部凝固液に対して、10〜30質量%であることが好ましく、13〜30質量%であることがより好ましい。また、前記水溶性有機化合物を含有する場合、その含有量は、前記外部凝固液に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましく、1〜3質量%であることが最も好ましい。すなわち、前記外部凝固液において、前記水溶性無機塩、前記糖類、及び前記水溶性有機化合物の各含有量が、それぞれ、前記外部凝固液に対して、10〜30質量%、10〜30質量%、0.1〜30質量%であることが好ましい。前記水溶性無機塩、前記糖類及び水溶性有機化合物の含有量が少なすぎる場合、製膜原液内の溶剤と外部凝固液との溶剤交換速度を充分に抑制できず、中空糸膜に形成される細孔の直径分布の広がりが不充分となり、気体透過性が低下する傾向がある。また、前記水溶性無機塩、前記糖類及び水溶性有機化合物の含有量が多すぎる場合、製膜原液内の溶剤と外部凝固液との溶剤交換速度が抑制されすぎ、中空糸膜に形成される細孔の直径分布が広くなりすぎ、分画特性が低下する傾向がある。よって、前記水溶性無機塩、前記糖類及び水溶性有機化合物の含有量が上記範囲内であれば、本実施形態に係る中空糸膜を好適に製造することができる。
また、前記水溶性無機塩としては、外部凝固液に含有させて、前記溶剤交換速度の調整ができる水溶性無機塩であれば、特に限定されない。この水溶性無機塩としては、例えば、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等の各種の塩類が挙げられる。この中でも、前記溶剤交換速度を好適に抑制でき、取り扱いが容易であるという点から硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムが好ましい。
また、前記糖類としては、外部凝固液に含有させて、前記溶剤交換速度の調整ができる糖類であれば、特に限定されない。この糖類としては、水溶性糖類であれば、特に限定されず、例えば、グリセルアルデヒド、リボース、ガラクトース、フルクトース等の各種の単糖類や、デンプン、セルロース等の多糖類が挙げられる。この中でも、前記溶剤交換速度を好適に抑制でき、取り扱いが容易であるという点からデンプンが好ましい。
また、前記水溶性有機化合物としては、外部凝固液に含有させて、前記溶剤交換速度の調整ができる水溶性有機化合物であれば、特に限定されない。この水溶性有機化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、エタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、及びグリセリン等の水溶性有機溶剤、及びポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリルアミド等の水溶性樹脂等が挙げられる。前記水溶性有機化合物としては、上記例示化合物の中でも、外部凝固液の粘度が上昇し、前記溶剤交換速度を好適に抑制できるという観点から、ポリビニルアルコールやグリセリンが好ましい。
また、前記形成工程は、押し出された中空糸状の製膜原液を、外部凝固液に接触させる前に、気体、通常、空気中を走行してもよい。すなわち、前記形成工程は、前記押出工程で押し出された中空糸状の製膜原液を、気体中を走行した後、外部凝固液に接触させてもよい。気体中を走行する距離は、特に限定されず、例えば、5〜300mmであることが好ましい。この気体中の走行は、押し出された中空糸状の製膜原液と内部凝固液との溶剤交換を好適に行うことができ、中空糸形状が安定化し、紡糸性が向上する。なお、本実施形態に係る製造方法では、この気体中の走行を行わなくてもよい。
また、本実施形態に係る製造方法は、前記形成工程により形成された中空糸膜を、長手方向に延伸してもよい。この延伸方法は、特に限定されないが、例えば、水浴中、例えば、加温した水浴中での延伸処理等が挙げられる。なお、延伸後、延伸にかかる力を開放すると、長手方向に収縮する。このような延伸及び収縮を施すと、中空糸膜は、透過性能や気体透過性が向上する。このことは、膜内に存在する独立孔が開裂し、連通孔となり、膜内の連通性が向上し、透過性能や気体透過性が向上すると考えられる。さらに、このような延伸及び収縮を施すと、中空糸膜の繊維の方向が均質化し、強度が向上するという利点もある。なお、本実施形態に係る製造方法では、この延伸及び収縮を行わなくてもよい。
また、本実施形態に係る製造方法は、前記形成工程により形成された中空糸膜を、洗浄してもよい。洗浄方法としては、例えば、中空糸膜を、水浴中にて洗浄する方法などが挙げられる。この洗浄により、形成された中空糸膜から、内部に残存した溶剤や相分離促進剤等を好適に除去することができる。
また、本実施形態に係る製造方法は、前記中空糸膜に親水性を付与する工程を備えていてもよい。この親水性を付与する工程は、中空糸膜の親水性を高めることができれば、特に限定されない。この工程としては、例えば、中空糸膜を、親水性樹脂の溶液に浸漬させ、その後、中空糸膜に含浸された親水性樹脂を架橋する工程等が挙げられる。より具体的には、この工程としては、中空糸膜を、3質量%のポリビニルアルコール水溶液に浸漬し、このポリビニルアルコール水溶液に浸漬させた中空糸膜を、グルタルアルデヒド1質量%及び硫酸4質量%を含有する水溶液に浸漬させる。このようにすることによって、中空糸膜に含浸されたポリビニルアルコールが架橋する。このことから、中空糸膜が親水化する。
また、上記中空糸膜に親水性を付与する方法としては、上記工程以外に、製膜原液に、親水性樹脂を含有する方法や、内部凝固液に親水性樹脂を含有させ、その親水性樹脂を中空糸膜に拡散付与する方法等が挙げられる。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、膜ろ過法に供することができる。具体的には、例えば、中空糸膜を用いて、以下のようにモジュール化し、このモジュール化されたものを用いて、膜ろ過法に用いることができる。より具体的には、本実施形態に係る中空糸膜は、所定本数束ねられ、所定長さに切断されて、所定形状のケーシングに充填され、中空糸束の端部はポリウレタン樹脂やエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂によりケーシングに固定されて、モジュールとなる。なお、このモジュールの構造としては、中空糸膜の両端が開口固定されているタイプ、中空糸膜の一端が開口固定され、他端が密封されているが、固定されていないタイプ等、種々の構造のものが知られており、本実施形態に係る中空糸膜は、いずれのモジュールの構造においても使用可能である。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、上記のようにモジュール化され、例えば、図3に示すような膜ろ過装置に組み込むことができる。なお、図3は、本発明の実施形態に係る中空糸膜を備えた膜ろ過装置の一例を示す概略図である。膜ろ過装置31は、上記のように中空糸膜をモジュール化した膜モジュール32を備える。そして、この膜モジュール32は、例えば、中空糸膜の上端部33は中空部を開口しており、下端部34は中空部をエポキシ系樹脂にて封止しているものが挙げられる。また、膜モジュール32は、例えば、有効膜長さ100cmの中空糸膜を70本用いてなるもの等が挙げられる。そして、この膜ろ過装置31は、導入口35から、被処理液を、膜モジュール32によるろ過が施された液体(ろ過水)等が導出口36から排出される。そうすることによって、中空糸膜を用いたろ過が実施される。なお、膜ろ過装置31に導入された空気は、空気抜き口37から排出される。また、ここでの膜ろ過法は、中空糸膜の外表面から内表面にむかって、被処理液が透過させることによって、被処理液がろ過される。このことから、中空糸膜の外表面側を、1次側と呼び、内表面側を、2次側とも呼ぶ。
本実施形態に係る中空糸膜は、このようにモジュール化されて、浄水処理、飲料水製造、工業水製造、排水処理等の各種用途に用いられる。すなわち、前記膜ろ過法で、処理対象物である被処理液としては、このような用途を達成するための液体であり、水を主成分とした水系媒体等が挙げられる。
また、本実施形態に係る中空糸膜は、上記のような膜ろ過法に用いることによって、液体処理、具体的には、ろ過処理を行うことができる。この中空糸膜を用いた液体処理方法は、具体的には、前記中空糸膜を用いて、被処理液をろ過するろ過工程と、前記中空糸膜を逆流洗浄する逆洗工程とを備え、前記ろ過工程と前記逆洗工程とを交互に行う方法等が挙げられる。そして、この方法としては、例えば、前記逆洗工程が、前記ろ過工程における二次側に、空気等の気体を供給することによって、前記中空糸膜を透過した気体で、前記中空糸膜を洗浄する。
前記ろ過工程としては、前記中空糸膜を用いたろ過であれば、特に限定されず、前記膜ろ過法等が挙げられる。
また、前記逆洗工程としては、上述したような、中空糸膜を透過させた気体を用いて、逆洗をすることができれば、特に限定されない。具体的には、図3に示すような膜ろ過装置では、導出口36から、圧縮した空気を供給し、膜モジュール32を構成する各中空糸膜を透過させ、透過した空気を、空気抜き口37から排出する。そうすることによって、膜モジュール32を構成する各中空糸膜を、中空糸膜を透過させた気体を用いて、逆洗をする。
このような液体処理方法であれば、中空糸膜を用いたろ過工程による液体処理を、長期間にわたって好適に行うことができる。具体的には、まず、ろ過工程とろ過工程との間に行う逆洗工程で、中空糸膜を透過した気体を用いて逆洗するので、優れた洗浄効率を発揮できる。このため、このような逆洗工程を、ろ過工程とろ過工程との間に定期的に行うことによって、中空糸膜を用いたろ過工程におけるろ過効率の低下を充分に抑制できる。よって、中空糸膜を用いたろ過工程による液体処理を、長期間にわたって好適に行うことができる。
また、前記中空糸膜は、分画粒子径が0.5μm以下であるので、得られたろ過液は、除菌されたものとなる。よって、この中空糸膜を用いた液体処理方法は、除菌性能も発揮できる。
また、前記液体処理方法は、前記気体を、圧力が、150〜400kPaで二次側に供給することが好ましい。そうすることによって、上述した理由により、中空糸膜を透過した気体による逆洗を好適に行うことができる。また、前記液体処理方法は、前記気体の透過流束が、500LMHより大きく20000LMH未満であることが好ましい。そうすることによって、中空糸膜を透過した気体の透過量が、中空糸膜を透過した気体による逆洗に好適な量となり、中空糸膜を透過した気体による逆洗を好適に行うことができる。よって、中空糸膜を用いたろ過工程による液体処理を、より長期間にわたって好適に行うことができる。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
まず、中空糸膜を構成する樹脂として、フッ化ビニリデン系樹脂であるポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略することがある)(アルケマ株式会社製のKynar741)と、溶剤として、γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製のGBL)と、相分離促進剤として、ポリビニルピロリドン系樹脂であるポリビニルピロリドン(BASFジャパン株式会社製のソカランK−90P)とを、質量比25:62:13になるように混合物を調製した。
上記混合物を95℃の恒温下で溶解タンク内にて溶解して得られた製膜原液を、図2に示すような、外径1.6mm、内径0.8mmの二重環構造のノズル(中空糸膜形成用ノズル)から押し出した。このとき、内部凝固液として、γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製のGBL)とグリセリン(花王株式会社製の精製グリセリン)とを質量比15:85になるように混合した混合物を、製膜原液と同時吐出した。
この内部凝固液とともに押し出した製膜原液を、30mmの空走距離を経て、水溶性無機塩として、硫酸ナトリウムを18質量%含み、水溶性有機化合物として、グリセリンを2質量%含む水溶液からなる外部凝固液中に浸漬させた。そうすることによって、製膜原液が固化され、中空糸膜が得られる。
次いで、得られた中空糸膜を、延伸、収縮処理をした後に、洗浄した。そうすることによって、溶剤(γ−ブチロラクトン)と相分離促進剤(ポリビニルピロリドン)とが、中空糸膜から抽出除去される。その後、得られた中空糸膜に対して、親水化処理を施した。具体的には、得られた中空糸膜を、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製のPVA−505)の0.5質量%水溶液に浸漬させた。その後、このポリビニルアルコール水溶液に浸漬させた中空糸膜を、グルタルアルデヒドを1質量%含み、硫酸を4質量%含む水溶液に浸漬させた。このように親水化処理を施した中空糸膜の、湿潤状態での透水量と乾燥状態での透水量とを上記の方法で測定した。その結果、湿潤状態での透水量(湿潤透水量)に対する乾燥状態での透水量(乾燥透水量)の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、85%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。なお、乾燥透水量は、乾燥状態での中空糸膜の、膜間差圧100kPaにおける透水量であり、湿潤透水量は、湿潤状態での中空糸膜の、膜間差圧100kPaにおける透水量である。
このようにして得られた中空糸膜の外径は、1.3mm、内径は0.8mmであり、膜厚が、0.25mmであった。
また、得られた中空糸膜の分画粒子径を、以下の方法で測定した。
異なる粒子径を有する少なくとも2種類の粒子(日揮触媒化成株式会社製の、カタロイドSI−550、カタロイドSI−45P、カタロイドSI−80P、ダウケミカル株式会社製の、粒径0.1μm、0.2μm、0.5μmのポリスチレンラテックス等)の阻止率を測定し、その測定値を元にして、下記の近似式において、Rが90となるSの値を求め、これを分画粒子径とした。
R=100/(1−m×exp(−a×log(S)))
上記式中のaおよびmは、中空糸膜によって定まる定数であって、2種類以上の阻止率の測定値をもとに算出される。
この測定方法により得られた分画粒子径が、0.2μmであった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が230kPaで供給したところ、その空気の透過流束が、2677LMHであった。
また、得られた中空糸膜のバブルポイント法で測定される最大孔径を、以下の方法で測定した。
まず、後述する膜ろ過装置に備えるのと同様のモジュールを用意した。具体的には、図3に示す膜モジュール32と同様のものを用意した。より具体的には、使用するモジュールは、有効膜長さ30cm、中空糸本数1000本からなり、膜面積が約1.2m2となるモジュールである。また、このモジュールは、上端部33が中空糸膜の中空部が開口し、下端部34がエポキシ系樹脂で封止されている。
このモジュール化した中空糸膜を、エタノールの50質量%水溶液で膨潤させた。この湿潤させた状態での中空糸膜の上端部33から、中空糸膜の中空部に空気を供給し、この空気により圧力をかけた。その際、中空糸膜に対する空気の透過を確認した。そのときに、連続的に気泡が発生する最も低い圧力をバブルポイント圧ΔPとして、上記式(1)から、最大孔径を算出した。
この測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径が、1.15μmであった。
また、実施例1に係る中空糸膜の膜構造を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製のS−3000N)を用いて確認した。その結果を、図4〜6に示す。
まず、図4は、実施例1に係る中空糸膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。また、図5は、実施例1に係る中空糸膜の外周面の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。また、図6は、実施例1に係る中空糸膜の内周面の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
図4から、外周面付近には、緻密な層状部分が形成されており、それ以外の部分は、それより疎な部分が形成されていることがわかる。
また、中空糸膜の外表面に存在する孔の直径の最頻値は、以下のように測定した。
まず、中空糸膜の外周面を、走査型電子顕微鏡写真で観察した。その際、複数箇所、例えば、3箇所以上を観察した。その際の写真の一例が、図5に示す写真である。このような外周面の写真を、画像計測ソフト(株式会社プラネトロン製のImage−Pro Plus)を用いて二値化し、大津方式で閾値を決定し、中空糸膜の外表面に存在する孔の直径を測定した。その測定した直径から、直径分布を算出し、そこから最頻値を算出した。また、同様に中空糸膜の内周面も、走査型電子顕微鏡写真で観察し、上記と同様の方法により、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値を算出した。
この測定方法により得られた、中空糸膜の外表面に存在する孔の直径の最頻値が、0.16μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。
上記により測定した、バブルポイント法で測定される最大孔径D2と表面に存在する孔の直径の最頻値D1とから、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約7.1倍であり、3倍以上であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の広いものであることがわかった。
また、この中空糸膜を用いて図3に示すような膜ろ過装置31を作製した。膜ろ過装置31に装填されている膜モジュール32は、有効膜長さ100cm、中空糸本数50本からなり、下端部34をエポキシ系樹脂で封止されている。上端部33は中空糸膜の中空部が開口しており、下端部34は中空糸膜の中空部をエポキシ系樹脂にて封止されている。この膜ろ過装置31は、導入口35を経て、中空糸膜の外周面側より、濁度1.0NTU(HACH社製:2100Qにて測定)の河川水をろ過し、上端部の内周面側にある導出口36よりろ過水を得た。設定流量3m/日(設定流量は(m/日)は、ろ過流量(m3/日)を中空糸膜外面積m2)で割った値)で、30分間ろ過した後、導出口36より0.2〜0.4MPaの圧縮した空気にて、60秒間、中空糸膜を透過した空気による逆洗を実施した。その後、モジュール下部の導入口35から0.1MPaの圧縮した空気にてエアースクラビングを60秒間行い、膜の汚れを洗浄した(導入エアーの抜き口は、空気抜き口37を開けることで確保した。)。洗浄した汚れは、導入口35より抜き取り、再びろ過を開始した。
このようなサイクルを20日以上継続させた。
そして、20日経過後の透水性保持率を算出した。なお、20日経過後の透水性保持率とは、運転開始時の初期透水性(LMH)に対する、20日経過後の透水性(LMH)の比(%)である。
この実施例1に係る中空糸膜を用いた場合の、20日経過後の透水性保持率は、85%と優れていた。
また、得られた中空糸膜の除菌性能を、以下の方法で測定した。
まず、菌数が、1×103〜2×104となるように、Brevundimonas diminuta(NBRC14213)の培養を行った。このようにして得られた菌液を、被処理物として、中空糸膜の片端を封止した、上述したようなモジュールで、流量が1L/分以下となるように、ろ過した。そして、得られたろ液の菌数を調べた。
この実施例1に係る中空糸膜を用いた場合。得られたろ液の菌数が0であり、優れた除菌性能を示すことがわかった。
[実施例2]
外部凝固液におけるグリセリンの濃度を2質量%から0.1質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、88%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が300kPaで供給したところ、その空気の透過流束が、1255LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.1μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、0.83μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.13μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約6.4倍であり、3倍以上であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の広いものであることがわかった。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、90%であった。
[実施例3]
外部凝固液におけるグリセリンの濃度を2質量%から4質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、80%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が200kPaで供給したところ、その空気の透過流束が、4780LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.4μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、1.38μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.23μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約6倍であり、3倍以上であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の広いものであることがわかった。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、90%であった。
[実施例4]
外部凝固液における、水溶性無機塩を、硫酸ナトリウムから塩化ナトリウムに変え、その濃度を30質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、84%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が170kPaで供給したところ、その空気の透過流束が、4400LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.5μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、1.38μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.45μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約3.1倍であり、3倍以上であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の広いものであることがわかった。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、85%であった。
[実施例5]
外部凝固液における、水溶性無機塩を、硫酸ナトリウムから塩化ナトリウムに変え、その濃度を10質量%に変更し、グリセリンの濃度を2質量%から5質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、84%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が350kPaで供給したところ、その空気の透過流束が、600LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.05μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、0.52μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.05μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約9倍であり、3倍以上であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の広いものであることがわかった。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、90%であった。
[実施例6]
製膜原液の溶剤として、ε−カプロラクタム(宇部興産株式会社製のカプロラクタム)を用い、相分離促進剤として、ポリエチレングコール(三洋化成工業株式会社製のPEG−2000)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、84%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が400kPaで供給したところ、その空気の透過流束が、520LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.02μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、0.63μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.07μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、2μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約10.3倍であり、3倍以上であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の広いものであることがわかった。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、80%であった。
[比較例1]
外部凝固液における硫酸ナトリウムの濃度を18質量%から5質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、90%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が400kPaで供給しても、中空糸膜を空気が透過しなかった。すなわち、そのときの空気の透過流束が、0LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.02μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、0.21μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.13μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約1.5倍であり、3倍未満であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の狭いものであることがわかった。このことは、溶剤交換速度が速くなりすぎたためと考えられる。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、50%であった。
[比較例2]
外部凝固液における、水溶性無機塩を、硫酸ナトリウムから塩化ナトリウムに変え、その濃度を45質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、90%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が120kPaで供給しただけで、その空気の透過流束が、20000LMHを越え、高い透過量で空気が透過した。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、1.2μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認できなかった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、4.14μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、1.41μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約2.9倍であり、3倍未満であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の比較的狭いものであることがわかった。このことは、溶剤交換速度が遅くなりすぎたため、細孔の直径分布が広いものにならなかったと思われる。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、60%であった。
[比較例3]
外部凝固液におけるグリセリンの濃度を2質量%から35質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、88%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が100kPaで供給しただけで、その空気の透過流束が、20000LMHを越え、高い透過量で空気が透過した。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、2μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認できなかった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、6μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、2.07μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、5μmであった。これらの値から、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約2.9倍であり、3倍未満であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の比較的狭いものであることがわかった。このことは、溶剤交換速度が遅くなりすぎたため、細孔の直径分布が広いものにならなかったと思われる。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、45%であった。
[比較例4]
比較例4は、熱誘起相分離法により中空糸膜を製造した。具体的には、以下のように製造した。
中空糸膜を構成する樹脂として、フッ化ビニリデン系であるポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略記することがある)(ソルベイ ソレクシス株式会社製のSOLEF6010)と、溶剤として、γ−ブチロラクトン(三菱化学株式会社製のGBL)と、無機粒子として、シリカ(日本アエロジル株式会社製のアエロジル50)と、相分離促進剤として、ポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製のPEG200)とを、質量比で34:21:25:20の割合となるように混合物を調製した。
上記混合物を二軸押出機に供給、加熱混練して得られた製膜原液を、外径1.6mm、内径0.8mmの二重環構造のノズルから押出した。このとき、内部凝固液として、ポリビニルアルコール(PVA−205、平均重合度:500、けん化度87〜89モル%、株式会社クラレ製)と水とジメチルアセトアマイド(三菱ガス化学株式会社製のDMAC)とを質量比で2:70:28の割合からなる混合溶液と同時に吐出した。
この内部凝固液とともに押し出した製膜原液を、30mmの空走距離を経て、20質量%の硫酸ナトリウム水溶液からなる外部凝固浴中に入れた。そうすることにより、製膜原液が、冷却固化され、中空糸膜が得られる。
次いで、この得られた中空糸膜を、延伸処理をした後、得られた中空糸状物を熱水洗浄し、溶剤(γ−ブチロラクトン)、凝集剤(PEG200)、注入液(DMAC、グリセリン)、過剰のポリビニルアルコールの抽出除去を行った。このとき、ポリビニルアルコールの洗浄率は70%であった。その後、ポリビニルアルコールをアセタール化し不溶性にした。続いて、水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して無機粒子(シリカ)を抽出除去し、乾燥させた。このようにして得られた中空糸膜の外径は1.3mm、内径は0.8mmであった。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、84%であった。このことから、得られた中空糸膜が、親水性を有することがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が400kPaで供給しても、中空糸膜を空気が透過しなかった。すなわち、そのときの空気の透過流束が、0LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.1μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、0.69μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.37μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、0.37μmであった。これらの値から、まず、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1と内表面に存在する孔の直径の最頻値とが、同等であることから、この中空糸膜は、傾斜構造のない均質構造であると考えられる。また、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約1.9倍であり、3倍未満であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の狭いものであることがわかった。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、30%であった。
[比較例5]
比較例5は、国際公開第2002/070115号(特許4043364号公報)に記載の実施例7で製造された中空糸膜である。
平均一次粒径0.016μm、比表面積110m2/gの疎水性シリカ(日本アエロジル社製;AEROSIL−R972(商品名))23重量%、フタル酸ジオクチル30.8重量%、フタル酸ジブチル6.2重量%(二者の混合液のSP:18.59(MPa)1/2)をヘンシェルミキサーで混合し、これに重量平均分子量290000のポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業(株)製:KFポリマー#1000(商品名))40重量%を添加し、再度ヘンシェルミキサーで混合した。
得られた混合物を48mmφ二軸押し出し機で更に溶融混練し、ペレットにした。このペレットを30mmφ二軸押し出し機に連続的に投入し、押し出し機先端にとりつけた円環状ノズルより、中空部内にエアーを供給しつつ、240℃にて溶融押し出しした。押し出し物を、約20cmの空中走行を経て40℃の水槽中に20m/minの紡速で通過させることで冷却固化して中空繊維を得た。この中空繊維を連続的に一対の第一の無限軌道式ベルト引き取り機で20m/minの速度で引き取り、空間温度40℃に制御した第一の加熱槽(0.8m長)を経由して、更に第一の無限軌道式ベルト引き取り機と同様な第二の無限軌道式ベルト引き取り機で40m/minの速度で引き取り2.0倍に延伸した。そして更に、空間温度80℃に制御した第二の加熱槽(0.8m長)を出た後に、20℃の冷却水槽の水面に位置する一対の周長が約0.20mであり且つ4山の凹凸ロールに170rpmの回転速度で中空繊維を連続的に挟んで周期的に曲げつつ冷却し、その後、中空繊維を第三の無限軌道式ベルト引き取り機で30m/minの速度で引き取り、また、抽出後乾燥した中空糸膜をオーブン中で140℃・2時間の加熱処理した後、周長約3mのカセで巻き取った。次いで、この中空繊維を束として30℃の塩化メチレン中に1時間浸漬させ、これを5回繰り返してフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルを抽出した後、乾燥させた。続いて、50重量%エタノール水溶液に30分間浸漬し、更に水中に移して30分間浸漬して、中空繊維を水で濡らした。更に、40℃の5重量%苛性ソーダ水溶液中へ1時間浸漬させ、これを2回行った後、40℃の温水へ1時間浸漬することによる水洗を10回行い疎水性シリカを抽出した後、乾燥した。
次に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業製:ソアノールET3803、エチレン含量38モル%)を、水とイソプロピルアルコールの50重量%ずつの混合溶剤100重量部に対して3重量部加熱混合し溶解させた。得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液中(68℃)に、上記で得られた加熱処理後の中空糸膜を両端の開口した150cmの中空糸膜100本からなる糸束にして5分間完全に浸漬し、溶液中から取り出した中空糸膜束を30分間室温で風乾し、次いで60℃のオーブンで1時間乾燥することで、エチレン−ビニルアルコール共重合体被覆ポリフッ化ビニリデン中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の、湿潤透水量に対する乾燥透水量の比(乾燥透水量/湿潤透水量)が、38%であった。このことから、得られた中空糸膜の親水性が低いことがわかった。
また、得られた中空糸膜の二次側に、空気を圧力が400kPaで供給しても、中空糸膜を空気が透過しなかった。すなわち、そのときの空気の透過流束が、0LMHであった。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた分画粒子径は、0.1μmであった。また、この中空糸膜は、上記の除菌性能が確認された。
また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、バブルポイント法で測定される最大孔径D2が、0.36μmであった。また、この中空糸膜の、上記の測定方法により得られた、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1が、0.28μmであった。また、中空糸膜の内表面に存在する孔の直径の最頻値が、0.28μmであった。これらの値から、まず、外表面に存在する孔の直径の最頻値D1と内表面に存在する孔の直径の最頻値とが、同等であることから、この中空糸膜は、傾斜構造のない均質構造であると考えられる。また、D1に対するD2の比(D2/D1)が、約1.29倍であり、3倍未満であることがわかった。このことから、得られた中空糸膜は、中空糸膜に形成された細孔の直径分布の狭いものであることがわかった。
また、この中空糸膜の、20日経過後の透水性保持率は、30%であった。
以上の各実施例、及び比較例における製造条件を、表1にまとめて示す。なお、比較例5の製造条件は、他の実施例・比較例と製造条件が大きく異なるため、表1には記載しない。また、以上の各実施例、及び比較例における測定結果を、表2にまとめて示す。なお、透過流束が、20000を越えるときは、表2において「>20000」と表記する。
表2と上記の記載とからわかるように、実施例1〜6に係る中空糸膜は、比較例1〜5に係る中空糸膜と比較して、分画特性に優れるだけではなく、逆洗に適した気体透過性を有し、さらに、耐汚染性にも優れていることがわかる。
このことは、実施例1〜6に係る中空糸膜は、外表面に存在する孔の直径の最頻値に対する、バブルポイント法で測定される最大孔径の比が、3より大きくなるような、中空糸膜に存在する孔の直径分布が広い中空糸膜であることによると考えられる。
また、比較例1に係る中空糸膜は、溶剤交換速度が速すぎて、孔の直径が小さいが、その分布が狭い中空糸膜となったため、分画特性に優れていても、気体透過性の低いものとなったと考えられる。
また、比較例2及び比較例3に係る中空糸膜は、溶剤交換速度が遅すぎて、孔の直径分布が狭い中空糸膜となったため、孔の直径が全体的に大きく、さらに、その分布も狭い中空糸膜となったため、分画特性の劣ったものとなった。
また、比較例4及び比較例5に係る発明は、傾斜構造のない均質構造の中空糸膜であると考えられる。このため、分画特性に優れていても、気体透過性の低いものとなったと考えられる。