以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
図1は、本発明の自動乾燥システムの実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す自動乾燥システム1において、対象物であるワーク(一例としてロール200)とロール冶具の搬送経路をより分かり易く示す斜視図である。図3は、図1に示す自動乾燥システム1の平面図であり、図4は、図1に示す自動乾燥システム1の正面図である。図5は、図1に示す自動乾燥システム1の側面図である。
図1と図2に示すように、自動乾燥システム1は、乾燥機室R内に収容されている。この自動乾燥システム1は、投入コンベアユニット2と、払出コンベアユニット3と、移載機10と、複数台の乾燥炉21,22と、操作盤OPを備える。図1から図4の例では、4台の乾燥炉21と2台の乾燥炉22が、Y1、Y2方向に配列されている。
図1と図2に示す操作盤OPは、制御部100を有しており、制御部100は、乾燥炉21,22の稼働状況、乾燥炉21,22における温度、圧力、処理時間の管理、あるいは乾燥炉21,22における各種の設定機能等を有し、自動乾燥システム1の全体の操作を可能とする集中操作機能を有する。操作盤OPは、メンテナンス時には、専用の遠隔移動式のリモコンを使用して、各種の自動化機能を操作する機能も有する。
また、自動乾燥システム1の操作盤OPは、乾燥炉21,22による乾燥処理の状況は、上流側の処理工程のシステムや下流側の処理工程のシステムへ情報伝達ができる機能を有する。情報伝達の内容例としては、乾燥対象物の乾燥処理の温度、処理時間、真空、加圧処理等が実施されたかの情報等である。
例えば半導体、電池、材料関係の製造には、加熱工程(乾燥、アニ―ル、ベーキング等)は必要不可欠なものであるが、一方、乾燥システムによる乾燥処理時間や設置場所、ランニングコストの各要件が重要である。製造者が、乾燥システムを導入する際の選定のための判断要素としては、乾燥効率(乾燥方法)、乾燥システムの設置スペースの大きさ、乾燥システムの自動化等の技術である。
図3に示すように、乾燥機室R内は、乾燥機械RMに接続されており、この乾燥機械RMを動作させることで、乾燥機室R内の所定の湿度と温度を予め定めた値に維持することができる。
図1から図5に示す自動乾燥システム1では、乾燥しようとする対象物としては、例えばコンデンサ(キャパシタ)、電池(電極、セパレータ)等の製造に使用される長尺の薄膜を巻いたロール200である。自動乾燥システム1を用いて、このロール200から水分及び溶剤を飛ばす(乾燥する)ことが必要である。特に乾燥の目安としては、対象物(ワーク)の含有水分量を、例えば数ppm以下(メーカによって異なり、決まった値ではない)まで飛ばす必要があるために、場合によっては、ロール200の加熱時間は数十時間必要となる。
この自動乾燥システム1により、乾燥しようとするロール200の形状例は、図6と図7に示している。図6は、乾燥しようとする対象物としてのロール200と、この複数のロール200を着脱可能に保持するためのロール冶具201を示している。図7は、図6に示す1つのロール200の形状例を示している。これらのロール200とロール冶具201は、後で説明する乾燥炉の内槽173内に配置されている状態を示している。
ロール200は、例えば長尺の薄膜を金属製の芯材202に巻いて形成されたものであり、マガジンともいう。この薄膜は、例えば電極を形成するのに用いられる。このロール200の寸法例を挙げれば、図7に示すロール200の直径200Dが300〜600mm、長さ200Lが100〜200mmであり、芯材202の長さ202Lは100〜300mmであるが、特に限定されない。
図6に示すように、ロール冶具201は、金属製であり、基部201Aと、複数の支持部201Bを有している。各ロール200の芯材202の両端部は、支持部201B,201Bにより、それぞれ着脱可能に支持されている。図6の例では、1つのロール冶具201において、3つのロール200が着脱可能に支持されているが、1つのロール冶具201が支持可能なロール200の数は、1つ、2つ、あるいは4つ以上であっても良く、特に限定されない。
次に、図1から図3を参照して、投入コンベアユニット2と払出コンベアユニット3について説明する。
図1から図3に示すように、投入コンベアユニット2と払出コンベアユニット3は、例えば複数の搬送ローラを配列したローラコンベアである。投入コンベアユニット2は、投入して搬送する方向であるX1方向に、乾燥処理をしようとするロール200を載せた複数のロール冶具201を搬送可能な直線型の投入搬送部であり、投入口2Aを有している。この投入口2Aには、この自動乾燥システム1の前段の処理工程のシステムから、乾燥処理をしようとするロール200を載せた複数のロール冶具201が送られてくる。
払出コンベアユニット3は、搬送して払い出す方向であるX2方向に、乾燥処理済みのロール200を載せた複数のロール冶具201を搬送して後段の処理工程のシステム側へ払出し可能な直線型の払出搬送部であり、払出口3Aを有している。これらのX1、X2方向は、逆方向である。払出口3Aから払出しされた乾燥処理済みのロール200を載せた複数のロール冶具201は、後段の処理工程のシステムに送られる。
これにより、図示しないモータが、図1に示す制御部100の制御により駆動されることで、投入コンベアユニット2は、ロール200を載せた複数のロール冶具201を、順次投入口2AからX1方向に向けて移載機10側へ搬送可能である。また、図示しないモータが、図1に示す制御部100の制御により駆動されることで、払出コンベアユニット3は、移載機10側から、乾燥処理済みのロール200を載せた複数のロール冶具201を、順次X2方向に向けて払出口3Aに払出し可能である。
図3に示すように、第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19が、間隔Gを離して、Y1,Y2方向に沿って平行に配置されている。Y1,Y2方向は、X1方向とX2方向に直交している。この例では、第1乾燥炉群18は、2台の乾燥炉21と、1台の乾燥炉22により構成され、第2乾燥炉群19も、2台の乾燥炉21と、1台の乾燥炉22により構成されている。
第1乾燥炉群18の2台の乾燥炉21と1台の乾燥炉22と、第2乾燥炉群19の2台の乾燥炉21と1台の乾燥炉22は、それぞれ間隔Gを離して対面した位置にしかもそれぞれ直列に配置されている。乾燥炉21は、2つの乾燥用の内槽173を有する2槽一体型の真空乾燥炉であり、乾燥炉22は、1つの内槽173を有する1槽一体型の真空乾燥炉である。なお、乾燥炉21と乾燥炉22の構造例は、後で説明する。
次に、図1から図3に示す移載機10の構造例を説明する。
図1から図3に示すように、移載機10は、投入コンベアユニット2上の乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を受け取って、そのロール冶具201を予め定めた位置の乾燥炉21の内槽173内あるいは乾燥炉22の内槽173内に投入することができる。そして、ロール200が乾燥炉21の内槽173内あるいは乾燥炉22の内槽173内で真空乾燥された後、移載機10は、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を取り出して、そのロール冶具201を払出コンベアユニット3側に受け渡す役割を有している。
図1から図3に示すように、移載機10は、搬送ガイド部30と、受け取り側の安全カバー31と受け渡し側の安全カバー32と、移載用の移動体40を有している。
図3に示すように、搬送ガイド部30は、2本の平行なガイドレール30A,30Aから成り、搬送ガイド部30は、第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19の間隔Gの位置において、Y1,Y2方向に沿って配置されている。
受け取り側の安全カバー31は、投入コンベアユニット2の終端部と、搬送ガイド部30の始端部とを囲むことで、安全性を確保する透明な安全柵である。この安全カバー31では、天井と、側面とを透明なカバー部材が覆っている。同様にして、受け渡し側の安全カバー32は、排出コンベアユニット3の始端部と、搬送ガイド部30の終端部とを囲むことで、安全性を担保する透明なカバーである。この安全カバー32では、天井と、側面とを透明なカバー部材が覆っている。安全カバー31,32は、所定の位置に扉を備えており、メンテナンス等でこの扉を開く場合には、投入コンベアユニット2と払出コンベアユニット3と移載機10の動作は、安全性を確保するために停止する。
図1から図3に示す移載機10の移載用の移動体40は、上述した搬送ガイド部30の2本のガイドレール30A,30Aに沿ってY1方向あるいはY2方向に沿って移動して位置決め可能である。
図8は、移載機10の移載用の移動体40の構造例と、搬送ガイド部30の2本のガイドレール30A,30Aの一部を示す斜視図である。
移載用の移動体40は、図1と図2に示す安全カバー31と安全カバー32との間を、Y1方向あるいはY2方向に移動して位置決め可能である。移載用の移動体40は、図2に示す投入コンベアユニット2上の乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を受け取って、Y1方向に移動して位置決めして、そのロール冶具201を予め定めた位置の乾燥炉21の内槽173内あるいは乾燥炉22の内槽173内に投入する。その後、移載用の移動体40は、図2に示す乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を内槽173内から取り出して、Y1方向に移動して、そのロール冶具201を払出コンベアユニット3側に受け渡す。このように、移載用の移動体40は、投入・払出し用のスタッカである。
図8に示すように、移載用の移動体40は、本体部41と、4つの車輪42と、昇降部43と、昇降用サーボモータ44と、トラバーサ用サーボモータ45と、ラック46等を有している。4つの車輪42は、本体部41の下部の四隅部分に取り付けられており、2本のガイドレール30Aに載っている。これにより、本体部41は、2本のガイドレール30Aに沿って、Y1方向とY2方向に直線的に案内可能である。ラック46と2本のガイドレール30A,30Aは、床面FFに固定されており、ラック46は、2本のガイドレール30Aの間において、2本のガイドレール30Aと平行になっている。
図8に示す本体部41は、基部47と、取付台48を有している。この取付台48は、天井部49と、4本の支柱49Aを有している。天井部49は、4本の支柱49Aを用いて、基部47の上面に対して、高さHだけ離して保持されている。
昇降部43は、例えば長方形の板部材である。この昇降部43には、3カ所にスライドブッシュ50が配置されている。天井部49と基部47との間には、3本のガイドシャフト51が、Z1、Z2方向に取り付けられている。各ガイドシャフト51は、各スライドブッシュ50を通っている。これにより、昇降部43は、天井部49と基部47との間で、3本のガイドシャフト51に沿って、Z1方向(上方向)とZ2方向(下方向)に上下移動して位置決め可能になっている。
図9は、図8に示す移載用の移動体40の構造例を示している。図9(A)は、図8に示す基部47と、昇降部43等を示す側面図である。図9(B)は、基部47と2本のガイドレール30A等を示す側面図である。
図8と図9(A)に示すように、昇降部43には、ボールナット52が設けられている。図8に示すように、このボールナット52は、2つのスライドブッシュ50の間の位置に設けられており、このボールナット52にはボールねじ53が噛み合っている。ボールねじ53の上端部は、天井部49において回転可能に支持され、ボールねじ53の下端部は、基部47において回転可能に支持されている。
図9(A)に示すように、昇降用サーボモータ44は、基部47上に固定されている。ボールねじ53の下端部は、ホイール54を有している。昇降用サーボモータ44の出力軸44Aは、ホイール55を有している。ホイール54,55は、歯付きベルト56により連結されている。これにより、昇降用サーボモータ44が正回転あるいは逆回転すると、ボールねじ53が正回転あるいは逆回転することで、昇降部43を、Z1方向に上昇して位置決めしたり、Z2方向に下降して位置決めすることができる。このように、図9(A)に示すように、昇降用サーボモータ44と、ホイール54,55と、歯付きベルト56と、ボールねじ53と、ボールナット52は、昇降部43をZ1方向とZ2方向に関して移動して位置決めするための昇降位置決め部57を構成している。昇降用サーボモータ44は、サーボモータ制御部100Aの指令により動作する。このサーボモータ制御部100Aは、図1に示す操作盤OPの制御部100に含まれている。
図9(B)に示すように、トラバーサ用サーボモータ45は、基部47上に固定されている。トラバーサ用サーボモータ45の出力軸45Aは、ピニオン58を有しており、このピニオン58は、ラック46に噛み合っている。これにより、トラバーサ用サーボモータ45が、正回転あるいは逆回転すると、移載用の移動体40の本体部41は、Y1方向(前進方向)あるいはY2方向(後退方向)に移動して位置決め可能である。トラバーサ用サーボモータ45は、サーボモータ制御部100Aの指令により動作する。
次に、図8と図10と図11を参照して、昇降部43の構造例を説明する。
図10は、昇降部43の構造例を示す斜視図であり、図11は、昇降部43の構造例を示す正面図である。
図8と図10に示すように、昇降部43は、板状の部材であり、この昇降部43の上面には、第1スライドテーブル61と、第2スライドテーブル62を有している。第1スライドテーブル61は下台であり、第2スライドテーブル62は上台である。図11に示すように、第1スライドテーブル61の底面は、2つのガイドレール受け部61Aを有している。2つのガイドレール受け部61Aは、2本のガイドレール61Bに載っている。2本のガイドレール61Bは、昇降台43の上面に固定されている。
図10と図11に示すように、昇降台43の上面には、第1サーボモータ71が取り付けられており、第1サーボモータ71の出力軸に連結されたボールねじ72の端部は、支持部材73に回転可能に支持されている。ボールねじ72は、ボールナット74に噛み合っており、ボールナット74は、第1スライドテーブル61の下面に固定されている。これにより、第1サーボモータ71が、正回転あるいは逆回転すると、ボールねじ72が正回転あるいは逆回転することで、第1スライドテーブル61は、昇降台43上において、X1方向に移動して位置決めしたり、X2方向に移動して位置決めすることができる。
図10と図11に示すように、第2スライドテーブル62の底面は、複数のガイドレール受け部62Aを有している。これらのガイドレール受け部62Aは、2本のガイドレール62Bに載っている。2本のガイドレール62Bは、第1スライドテーブル61の上面に固定されている。
図10に示すように、第1スライドテーブルの上面には、第2サーボモータ81が取り付けられており、第2サーボモータ81の出力軸に連結されたボールねじ82の端部は、支持部材83に回転可能に支持されている。ボールねじ82は、ボールナット84に噛み合っており、ボールナット84は、第2スライドテーブル62に固定されている。これにより、第2サーボモータ81が、正回転あるいは逆回転すると、ボールねじ82が正回転あるいは逆回転することで、第2スライドテーブル62は、第1スライドテーブル61上において、X1方向に移動して位置決めしたり、X2方向に移動して位置決めすることができる。
第1サーボモータ71と第2サーボモータ81は、サーボモータ制御部100Bの指令により動作する。このサーボモータ制御部100Bは、図1に示す操作盤OPの制御部100に含まれている。
図11に示すように、第2スライドテーブル62の上には、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201あるいは、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を載せるようになっている。第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62がスライド移動することで、第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62は、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を、図1に示す乾燥炉21の内槽173内あるいは乾燥炉22の内槽173内に投入することができる。また、第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62がスライド移動することで、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を、図1に示す乾燥炉21の内槽173内あるいは乾燥炉22の内槽173内から取り出す役割を果たすことができる。
次に、図12と図13を参照して、図1に示す1槽一体型の乾燥炉22の構造例を説明する。
図12は、1槽一体型の乾燥炉22の正面図であり、図13は、1槽一体型の乾燥炉22の側面図である。
図12に示すように、1槽一体型の乾燥炉22は、1つの内槽173を有する乾燥炉であり、好ましくは真空乾燥炉である。乾燥炉22は、炉本体部170と、1つの自動扉171と、上下位置のガイドレール172,172と、1つの内槽173と、アクチュータ174を有している。炉本体部170内には、1つの内槽73が設けられている。
炉本体部170の内槽173は、真空乾燥用の槽であり、真空気圧に耐えられる容器である。一対のガイドレール172,172は、内槽173の上側と下側にY1方向に平行に固定されている。自動扉171は、外側自動扉171Aと内側自動扉171Bから成り、自動扉171は、内槽173を密封状態で閉じる。自動扉171は、ガイドレール172,172に沿ってY1方向にスライド可能に取り付けられている。
図13に示すように、自動扉171は、外側自動扉171Aと内側自動扉171Bを有しており、内側自動扉171Bは、内槽173との間の気密性を保つ扉である。外側自動扉171Aは、内側自動扉前後開閉用シリンダ171Cを有している。内槽173の開口部173Pの周囲には、パッキン部の冷却配管171Dが配置されている。
これにより、図13において、この内側自動扉前後開閉用シリンダ171Cは、制御部100の指令により作動すると、内側自動扉171Bを外側自動扉171A側に引くことで、内側自動扉171Bを内槽173の開口部173Pのパッキン部から離すことで、内側自動扉171Bによる開口部173Pの気密性の解除を行うことができる。
その後、図12において、制御部100の指令により、流体圧シリンダ等のアクチュエータ174が作動すると、自動扉171は、左側の開口部173Pを閉じた位置から、右側の開いた位置まで、一対のガイドレール172,172に沿ってY1方向に、自動的にスライドして開けることができる。
逆に、内側自動扉171Bにより内槽173の開口部173Pのパッキン部に密着させる場合には、内槽173内を真空引きして内側自動扉171Bをパッキン部側に引きこむことで、内側自動扉171Bによる開口部173Pの気密性を確保することができる。
ここで、炉本体部170のシステム構造例を、図13を参照して説明する。
図13に示すように、炉本体部170の内槽173は、ヒータ内蔵の整流板175と、冷却コイル176と、シロッコファン177と、ドライエア供給口178Aと、窒素供給口178Bと、真空吸引口178Cと、排気口179を有している。
炉本体部170の内槽173は、直方体型の空間であり、この内槽173の内壁部分には、ヒータ内蔵の整流板175と、冷却コイル176と、シロッコファン177と、ドライエア供給口178Aと、窒素供給口178Bと、真空吸引口178Cと、排気口179が配置されている。ヒータ内蔵の整流板175と冷却コイル176は、例えば内槽173の上面と下面にそれぞれ配置されている。ヒータ内蔵の整流板175は、冷却コイル176よりも内側に位置されている。
シロッコファン177は、内槽173の奥の面の中央位置に配置されている。シロッコファン177は、内槽173内の熱風を循環させるためのファンであり、シロッコファン177は、磁気シール177Aを介してモータ177Bに接続されている。制御部100の指令によりモータ177Bが駆動することで、シロッコファン177が回転して、炉内気流RKを内槽173内に循環させることができる。
なお、乾燥する対象物(ワーク)の種類によっては、シロッコファンではなくプロペラファンであっても良い。モータ177Bは、回転制御機構付きで、ベアリング部の熱対策のために、冷却水循環装置184から冷却水が供給されることで、ベアリング部を水冷式で冷やすようになっている。
図13に示すように、ドライエア供給口178Aは、ドライエア供給部180に対して、バルブ180Bを介して接続されており、ドライエア供給部180のドライエアは、ドライエア供給口178Aを介して、内槽173内に供給できる。窒素供給口178Bは、窒素ガス供給部181に対して、バルブ181Bとヒータ181Hを介して接続されており、窒素ガス供給部181からの窒素ガスは、窒素供給口178Bを介して、内槽173内に供給できる。ヒータ181Hを動作することで、窒素ガスを加熱して乾燥炉の内槽173内に導入できる。バルブ180B、181B、182B等は、制御部100の指令により開閉可能である。なお、窒素ガスに代えて、他の種類の不活性ガスを用いても良い。
図13に示す冷却トラップ182は、内槽173と真空ポンプ183の間に配置され、真空加熱処理によってロール200から生じるガスや溶剤成分をトラップする。真空吸引口178Cは、バルブ182Bと、冷却トラップ182を介して、真空ポンプ183に接続されており、制御部100の指令により、真空ポンプ183が動作すると、内槽173内を真空吸引することができる。排気口179は、バルブ179Bと排気部溶剤トラップ179Aに接続されており、内槽173内の窒素ガスを含む排気からこの排気部溶剤トラップ179Aにより溶剤が取り除かれて、窒素を排気する。
図13に示す冷却コイル176は、冷却水循環装置184からの冷却水を循環させることにより、内槽173内を冷却するラジエタである。ヒータ内蔵の整流板175は、制御部100の指令により通電することで、内槽73内を加熱する加熱器であり、整流板と兼用している。ヒータ内蔵の整流板175のヒータは、例えばパイプヒータ等である。
図14は、図1に示す2槽一体型の乾燥炉21を示す正面図である。
図14に示す2槽一体型の乾燥炉21は、図12と図13に示す1槽一体型の乾燥炉22と、基本的には同様の構造を有しているので、同様の構造の説明を省略する。乾燥炉21が2つの内槽173,173を有しているのに対して、乾燥炉22は上述したように1つの内槽173を有している点が異なる。このため、乾燥炉21では、2つの内槽173,173に対応する位置に、それぞれ自動扉171を有している。
図14(A)と図14(B)に示すように、左側の自動扉171は左側の内槽173の開口部173Pを覆っており、右側の自動扉171は右側の内槽173の開口部173Pを覆っている。左右の自動扉171,171は、制御部100の指令によりアクチュータ174を動作させることにより、上下位置のガイドレール172,172に沿って、Y1、Y2方向にスライド可能に支持されている。
図13に示す乾燥炉21においては、扉収納部190が、左右の自動扉171,171の間に、設けられている。これにより、図14(A)に示すように、左側の自動扉171をY1方向にスライドすることで、扉収納部190に収納できる。同様にして、図14(B)に示すように、右側の自動扉171をY2方向にスライドすることで、扉収納部190に収納できる。
このように、乾燥炉21は2つの内槽173,173を有しており、それぞれに自動扉171,171が配置されている。しかも、左右の自動扉171,171は、いずれか一方を開けると、共通の扉格納部分である扉収納部190に収納することができる。これにより、2槽一体型の乾燥炉21をコンパクト化することができ、乾燥炉の占有スペースの省スペース化が図れる。
また、図1と図2に例示するように、第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19は、共に例えば2台の2槽一体型の乾燥炉21と、1台の1槽一体型の乾燥炉22を組み合わせて構成されている。このように、第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19における2槽一体型の乾燥炉21の設置数と、1台の1槽一体型の乾燥炉22の設置数を適宜選択することにより、実際の工場の建屋の大きさやロール200の乾燥処理数(ワークの数)に応じて、自由に設定することができる。
第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19がガイドレール部30A,30Aの両側に配置されているので、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を、乾燥炉21,22に対して、効率よく投入して乾燥処理を行うことができる。
図15は、図1に示す2槽一体型の乾燥炉21と、1槽一体型の乾燥炉22の内槽173の構造例を示す図である。
図15に示すように、内槽173は、上段乾燥部231と下段乾燥部232を有している。上段乾燥部231は、ロール冶具201を着脱可能に載せるための一対の支持部233を有している。同様にして、下段乾燥部232も、ロール冶具201を着脱可能に載せるための一対の支持部234を有している。内槽173内にはこれらの支持部233,234を設けることで、ロール冶具201をX1方向(図15における紙面垂直下方向)に挿入し、X2方向(図15における紙面垂直上方向)に取り出すことができる。
次に、図16と図17を参照して、移載機10の移載用の移動体40の動作により、乾燥炉21,22の内槽173内に、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を投入したり、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を内槽173内から取り出す動作例を説明する。
図16は、移載機40の移載用の移動体40により第1乾燥炉群18の乾燥炉21,22の内槽173内に、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を投入したり、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を内槽173内から取り出す動作を示す図である。図17は、移載機40の移載用の移動体40により第2乾燥炉群19の乾燥炉21,22の内槽173内に、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を投入したり、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を内槽173内から取り出す動作を示す図である。
図8に示す昇降部43は、Z1方向(上方向)とZ2方向(下方向)に昇降して位置決めできることにより、図16に示す内槽173の上段乾燥部231あるいは内槽173の下段乾燥部232に対応する位置にそれぞれ位置決めすることができる。
図16(A)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX2方向にスライドして、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を、第1乾燥炉群18側の乾燥炉21(22)の内槽173の上段乾燥部231内に投入することができる。同様にして、図16(B)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX2方向にスライドして、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を、第1乾燥炉群18側の乾燥炉21(22)の内槽173の下段乾燥部232内に投入することができる。
ロール冶具201を内槽173内に投入した後は、ロール冶具201は、図15(A)に示すように支持部233に載るか、図15(B)に示すように支持部234に載ることから、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62は、内槽173内から昇降部43側にX1方向にスライドして戻す。
また、図17(A)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX1方向にスライドして、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を、第2乾燥炉群19側の乾燥炉21(22)の内槽173の上段乾燥部231内に投入することができる。同様にして、図17(B)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX1方向にスライドして、乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201を、第2乾燥炉群19側の乾燥炉21(22)の内槽173の下段乾燥部232内に投入することができる。
ロール冶具201を投入した後は、ロール冶具201は、図15(A)に示すように乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201は支持部233に載るか、図15(B)に示すように支持部234に載ることから、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62は、内槽173内から昇降部43側にX2方向にスライドして戻す。
なお、図12と図14に示す自動扉171の開くタイミングは、乾燥処理前のロール200のロール冶具201が、内槽173の前に位置決めされた時と、乾燥処理後のロール200を、内槽173内から取り出す時である。また、自動扉171の閉じるタイミングは、内槽173内の上段乾燥部231と下段乾燥部232の少なくも一方に、乾燥処理前のロール200のロール冶具201が載置され、第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が内槽173内から退出した後である。さらに、自動扉171の閉じるタイミングは、内槽173内の上段乾燥部231と下段乾燥部232から、乾燥処理後のロール200のロール冶具201を第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62により取り出した後である。
次に、上述した自動乾燥システム1のロール200の乾燥処理動作例を説明する。
図1と図2に示すように、各ロール冶具201には、3つの乾燥処理前のロール200が搭載されている。複数のロール冶具201は、例えば前段の処理工程のシステムから図示しない搬送台車に載せて、図1と図2に示す投入口2Aから投入コンベアユニット2に移す。移載機10では、移載用の移動体40は、投入コンベアユニット2の終端部の付近に位置されている。これにより、投入コンベアユニット2は、複数のロール冶具201を順次搬送方向であるX1方向に沿って、移載用の移動体40の近傍まで搬送する。
ロール冶具201は、この投入コンベアユニット2から、図11に示す移載用の移動体40の第2スライドテーブル62上に移される。この場合にロール冶具201を移す装置としては、図示しない流体圧シリンダ等のアクチュエータやロボット等を用いることができる。しかし、ロール冶具201は、投入コンベアユニット2の終端部から、図11に示す移載用の移動体40の第2スライドテーブル62上に直接載せても良い。
その後、図9(B)に示すように、サーボモータ制御部100Aが、サーボモータ45を動作させてピニオン58を回転することで、移載用の移動体40はラック46に沿って、Y1方向に直線移動され、移載用の移動体40は、第1乾燥炉群18の乾燥炉21,22と、第2乾燥炉群19の乾燥炉21,22の内の予め定めた位置における空の乾燥炉21(あるいは22)の前に、位置決めされる。
例えば、図16(A)に示すように、第1乾燥炉群18の乾燥炉21の内槽173が開いている場合には、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX2方向にスライドして、ロール冶具201を、第1乾燥炉群18側の乾燥炉21(22)の内槽173の上段乾燥部231内に投入することができる。同様にして、図16(B)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX2方向にスライドして、ロール冶具201を、第1乾燥炉群18側の乾燥炉21(22)の内槽173の下段乾燥部232内に投入できる。
ロール冶具201を投入した後は、ロール冶具201は、図15(A)に示すように支持部233あるいは図15(B)に示すように支持部234に載ることから、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62は、内槽173内から昇降部43側にX1方向に沿ってスライドして退避させる。
また、例えば図17(A)に示すように、第2乾燥炉群18の乾燥炉21の内槽173が開いている場合には、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX1方向にスライドして、ロール冶具201を、第2乾燥炉群19側の乾燥炉21(22)の内槽173の上段乾燥部231内に投入することができる。同様にして、図17(B)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX1方向にスライドして、ロール冶具201を、第2乾燥炉群19側の乾燥炉21(22)の内槽173の下段乾燥部232内に投入した状態を示している。
ロール冶具201を投入した後は、ロール冶具201は、図15(A)に示すようにロール冶具201は支持部233あるいは図15(B)に示すように支持部234に載ることから、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62は、昇降部43側に、X2方向に沿って内槽173内からスライドして退避させる。
このように、乾燥処理前のロール200のロール冶具201が乾燥炉21(22)内に投入されると、次に説明するように、図18に示すような乾燥モード1を有する乾燥処理工程に従って、乾燥処理前のロール200を乾燥処理する。
図18は、乾燥炉21,22における乾燥モード1を有する乾燥処理工程を示すフロー図である。
(乾燥モード1を有する乾燥処理工程)
図18のステップS1では、例えば図15(A)と図15(B)に例示するように、ワークである乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201が、上述したように例えば第1乾燥炉群18の乾燥炉21の内槽173の上段乾燥部231と下段乾燥部232にそれぞれ投入される。これにより、図13に示す乾燥炉21の自動扉171が、乾燥炉21の内槽173の開口部173Pを閉じる。
図18のステップS2では、乾燥モード1を有する乾燥処理工程による乾燥処理をスタートする。乾燥処理がスタートすると、ステップS3の減圧工程になり、減圧工程のステップS3−1では、図13に示す真空ポンプ183がオンして真空引きを開始して、内槽173内を減圧して、ステップS3−2では真空度を確認した後、ステップS3−3では真空ポンプ183をオフする。そして、ステップS4では、図13に示す窒素ガス供給部181から内槽173内に窒素あるいはその他の不活性ガスを、内槽173内が大気圧になるまで導入する。
これにより、ステップS5−1では、図13の制御部100の庫内酸素濃度測定部が内槽173内の庫内酸素濃度値を検出して、ステップS5−2において酸素濃度値が所定の設定値、例えば500ppm(0.05%)以下である場合には、次のステップS6に進む。しかし、ステップS5−2において、内槽173内の庫内酸素濃度値が500ppmを超えている場合には、まだ内槽173内の酸素濃度が高いとして、ステップS3−1に戻ってさらに真空ポンプ183により内槽173内を減圧して、不活性ガスを導入する。これにより、内槽173内の酸素を窒素で置換する。
次に、図18に示す乾燥モード1を説明する。この乾燥モード1のステップS6の昇温工程からステップS12の降温工程までは、乾燥炉21の内槽173内を、大気圧で昇温して、真空圧下で加熱をし、大気圧に戻して冷却を行う動作を示している。
図18に示すステップS6の昇温工程のステップS6−1では、図13に示す制御部100がシロッコファン177のモータ177Bを動作して、シロッコファン177を回転するとともに、ヒータ内蔵の整流板175を発熱させて、内槽173内を昇温する。
そこで、ステップS6−2において、図13の制御部100の温度調節器によりこの内槽173内の温度を所定の設定値、例えば250℃に達した場合にはステップS7の減圧工程に進むが、所定の設定値を下回っている場合には、ステップS6−1に戻って、内槽173内の昇温を続ける。なお、この温度の所定の設定値は、好ましくは150℃から250℃の範囲で設定できる。
次に、ステップS7の減圧工程に移り、減圧工程のステップS8−1では、図13に示す真空ポンプ183がオンして真空引きを開始して、内槽173内を減圧して、ステップS8−2では真空度を確認した後、ステップS8−3では真空ポンプ183をオフする。
次に、テップS9では、図15に示す内槽173内の上段乾燥部231と下段乾燥部232に配置されている各ロール200は、真空加熱により乾燥される。そして、ステップS10では、温度調節器によりこの内槽173内の温度を所定の設定値、例えば250℃に達したかを判断して、250℃に達したらステップS11に進むが、温度が所定の設定値を超えているとステップS9に戻って、ステップS9においてロール200の真空加熱をして乾燥を続ける。なお、この温度の所定の設定値は、好ましくは150℃から250℃の範囲で設定できる。
図18のステップS10において、温度が所定の設定値250℃に達すると、ステップS11に進み、図13に示す窒素ガス供給部181から再び窒素ガスあるいはその他の不活性ガスを内槽173内に導入し、ステップS12の降温工程に移る。降温工程では、ステップS12−1において、内槽173内の温度を下げるためにシロッコファン177を回転させる。そして、ステップS12−2では、温度調節器によりこの内槽173内の温度を所定の設定値、例えば30℃に達すると、ステップS14に進むが、温度が所定の設定値を超えているとステップS12−1に戻って、内槽173内の温度を下げるためにシロッコファン177を回転させる。なお、この所定の設定値は、好ましくは30℃から50℃の間で設定できる。
ステップS14では、内槽173内に窒素ガスや不活性ガスの導入を停止して、ステップS15では、真空ポンプ183により内槽173内を減圧して、不活性ガスを排気する。ステップS16では、図13に示すドライエア供給部180からドライエア(空気)を内槽173内に導入する。そして、ステップS17では、庫内酸素濃度値を測定して、ステップS18では、この庫内酸素濃度値が大気酸素濃度であるかどうかを判断して、庫内酸素濃度値が大気酸素濃度であると、ステップS19において、乾燥処理をストップするが、庫内酸素濃度値が大気酸素濃度未満であると、ステップS15に示すように、図13の真空ポンプ183により内槽173内を減圧して不活性ガスを排気してステップS16において、内槽173内にドライエア(空気)の導入を行う。
ステップS19において、乾燥処理をストップすると、ステップS20では、図14(A)あるいは図12に示す自動扉171を開けて、乾燥処理後のロール200を載せているロール冶具201を、内槽173内から払い出す(取り出す)。
図16(A)と図16(B)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX2方向にスライドして、乾燥処理後のロール200を載せているロール冶具201を、第1乾燥炉群18側の乾燥炉21(22)の内槽173の上段乾燥部231から受け取って、X1方向にスライドして、ロール冶具201を内槽173内から移載用の移動体40側に戻す。
同様にして、図17(A)と図17(B)に示すように、移載用の移動体40の第1スライドテーブル61と第2スライドテーブル62が、昇降部43からX1方向にスライドして、乾燥処理後のロール200を載せているロール冶具201を、第2乾燥炉群19側の乾燥炉21(22)の内槽173の上段乾燥部231から受け取って、X2方向にスライドして、ロール冶具201を内槽173内から移載用の移動体40側に戻すことができる。
その後、移載用の移動体40は、図9(B)に示すサーボモータ制御部100Aが、サーボモータ45を動作させてピニオン58を回転することで、ラック46に沿って、Y1方向に直線移動される。これにより、図2に示す移載用の移動体40が、ラック46の端部の位置に達すると、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201が、例えば図示しないアクチュエータの操作により、払出コンベアユニット3の始まり端部に移される。払出コンベアユニット3は、X2方向に沿って、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201を排出(払出し)して、乾燥処理後のロール200を載せたロール冶具201は図示しない次の処理工程に移されることになる。
ところで、上述した図18に示す乾燥モード1を有する乾燥処理工程では、ロール200は、乾燥炉21,22の内槽173では、大気圧状態で昇温(窒素ガスあるいは他の不活性ガスを導入して酸素と置換)してから、真空状態で加熱をして乾燥を行い、そして大気圧状態で降温を行う。
上述した本発明の実施形態における図18に示す乾燥モード1では、ロール200は、乾燥炉21,22の内槽173において大気圧状態で昇温をして、真空状態で加熱をして乾燥を行い、そして大気圧で降温するモードを採用している。
これに対して、通常行われているワークの乾燥工程では、ワークは全ての工程を真空中で処理していたために、真空中では熱効率が悪いことから、通常の真空乾燥工程では乾燥に時間がかかっていた。
従って、本発明の実施形態では内槽173での庫内の昇温と降温は、共に大気圧で行えるために、通常行われている昇温と降温を含めてすべての工程を真空中で行う乾燥処理に比べて、本発明の実施形態では昇温と降温の効率が高い。従って、内槽173を用いてロール200の乾燥工程に掛かる時間を短縮でき、トータルの乾燥処理時間の短縮が図れるメリットがある。
また、このため、加熱前に不活性ガスを導入することで内槽173の庫内の酸素濃度を低下させつつ、内槽173の庫内の温度が設定温度に上がるまで、大気圧で加熱をし、その後は真空状態で加熱をする。加熱処理が終了後は、再び不活性ガスを導入することで内槽173の庫内の酸素濃度を低下させつつ、大気圧で冷却する。ロール200に対するメインの乾燥処理は、真空状態化で行うことができるので、全ての乾燥処理を大気圧下で行う場合に比べて、不活性ガスの使用量を減らすことができ、ランニングコストが低減できる。
自動乾燥システム1では、投入コンベアユニット2が対象物であるロール200を投入すると、移載機10は、投入コンベアユニット2により搬送されてくるロール200を、一旦複数の乾燥炉21,22のいずれかに投入し、移載機10は、その後乾燥炉21,22で必要な処理時間をかけて乾燥処理されたロール200を払出コンベアユニット3側に戻して運ぶので、乾燥に時間が掛かるロール200を、ラインを止めることなく順次効率良く乾燥させることができる。
(乾燥モード2を有する乾燥処理工程)
次に、図19は、乾燥モード2を有する乾燥処理工程を示すフロー図である。乾燥モード2は、上述した乾燥モード1とは異なり、真空圧力下ではロール200の乾燥を行わず、大気圧下でロール200の乾燥を行う。図19を参照して、乾燥モード2を有する乾燥処理工程について説明する。図19に示す乾燥モード2を有する乾燥処理工程においては、上述した図18に示す乾燥モード1を有する乾燥処理工程とは異なり、図1に示す乾燥炉21,22の内槽173では、大気圧状態で加熱(窒素ガスあるいは他の不活性ガス導入)して乾燥した後に、大気圧で冷却する手順を有している。この乾燥モード2を有する乾燥処理工程は、内槽173内を真空吸引して減圧することがないので、乾燥炉21,22の構造を簡単化して、乾燥炉21,22の小型化が図れる。
図19に示す乾燥モード2を有する乾燥処理工程では、ステップS21では、例えば図15(A)と図15(B)に例示するように、ワークである乾燥処理前のロール200を載せたロール冶具201が、上述したように例えば第1乾燥炉群18の乾燥炉21の内槽173の上段乾燥部231と下段乾燥部232にそれぞれ投入されると、図13に示す乾燥炉21の自動扉171が乾燥炉21の内槽173を閉じる。ステップS22では、乾燥モード2を有する乾燥処理工程による乾燥処理をスタートする。
図19のステップS22では、乾燥モード2を有する乾燥処理工程による乾燥処理をスタートする。乾燥処理がスタートすると、ステップS23の減圧工程になり、減圧工程のステップS23−1では、図13に示す真空ポンプ183がオンして真空引きを開始して、内槽173内を減圧して、ステップS23−2では真空度を確認した後、ステップS23−3では真空ポンプをオフする。そして、ステップS24では、図13に示す窒素ガス供給部181から内槽173内に窒素あるいはその他の不活性ガスを、大気圧になるまで導入する。
これにより、ステップS25−1では、庫内酸素濃度測定部(図示せず)が内槽173内の庫内酸素濃度値を検出して、ステップS25−2において酸素濃度値が所定の設定値、例えば500ppm以下である場合には、次のステップS26に進む。しかし、ステップS25−2において、内槽173内の庫内酸素濃度値が500ppmを超えている場合には、まだ内槽173内の酸素濃度が高いとして、ステップS23−1に戻ってさらに真空ポンプ183により内槽173内を減圧して、不活性ガスを導入する。これにより、内槽173内の酸素を窒素で置換する。
次に、図19に示す乾燥モード2を説明する。乾燥モード2のステップS26の昇温工程とステップS27の降温工程は、乾燥炉21の内槽173内を、大気圧で昇温して、大気圧下で加熱をし、大気圧下で冷却を行う動作を示している。
図19に示すステップS6の昇温工程のステップS26−1では、図13に示す制御部100がシロッコファン177のモータ177Bを動作して、シロッコファン177を回転するとともに、ヒータ内蔵の整流板175を発熱させて、内槽173内を昇温する。
そこで、ステップS26−2において、温度調節器によりこの内槽173内の温度を所定の設定値、例えば250℃に達した場合にはステップS27に進むが、所定の設定値を下回っている場合には、ステップS26−1に戻って、内槽173内の昇温を続ける。なお、この温度の所定の設定値は、好ましくは150℃から250℃の範囲で設定できる。
次に、ステップテップS26の昇温工程において、図15に示す内槽173内の上段乾燥部231と下段乾燥部232に配置されている各ロール200は、大気圧下で加熱により乾燥される。
次に、図19のステップS27の降温工程では、ステップS28において、内槽173内の温度を下げるためにシロッコファン177を回転させる。そして、ステップS29では、温度調節器によりこの内槽173内の温度を所定の設定値、例えば30℃に達すると、ステップS30に進むが、温度が所定の設定値を超えているとステップS28に戻って、内槽173内の温度を下げるためにシロッコファン177を回転させる。なお、この所定の設定値は、好ましくは30℃から50℃の間で設定できる。
ステップS30では、内槽173内に窒素ガスや不活性ガスの導入を停止して、ステップS31では、真空ポンプ183により内槽173内を減圧して、不活性ガスを排気する。ステップS32では、図13に示すドライエア供給部180からドライエア(空気)を内槽173内に導入する。そして、ステップS33では、庫内酸素濃度値を測定して、ステップS18では、この庫内酸素濃度値が大気酸素濃度であるかどうかを判断して、庫内酸素濃度値が大気酸素濃度であると、ステップS35において、乾燥処理をストップするが、庫内酸素濃度値が大気酸素濃度未満であると、ステップS31に示すように、図13の真空ポンプ183により内槽173内を減圧して不活性ガスを排気してステップS32において、内槽173内にドライエア(空気)の導入を行う。
ステップS35において、乾燥処理をストップすると、ステップS36では、図14(A)あるいは図12に示す自動扉171を開けて、乾燥処理後のロール200を載せているロール冶具201を、内槽173内から払い出す(取り出す)。
以上のようにして、乾燥モード2を有する乾燥処理工程では、第1乾燥炉群18の乾燥炉21,22の内槽173と、第2乾燥炉群19の乾燥炉21,22の内槽173は、乾燥処理前のロール200を、大気圧状態で加熱をして、大気圧状態で大気冷却することで乾燥させることができる。このような乾燥モード2では、加熱前に不活性ガスにて内槽173の庫内の酸素濃度を低下させつつ、庫内の温度が設定温度まで上がるまでを全て大気圧下で加熱する。その後の冷却は、大気圧により処理するので、乾燥モード2の一連の工程は、庫内の酸素を不活性ガスに置換する作業以外は、全て大気圧により処理をすることができる。
このため、昇温と降温ともに、大気圧での処理ができるので、真空中での処理に比べて、昇温と降温の効率が高い。さらに、メインの加熱による乾燥処理が大気圧であるために、溶媒や水分を多く含むワーク(ロール)の場合に、真空側(冷却トラップや真空ポンプ)は不要であるので溶媒や水分が多く回ることがなく、メンテナンスの頻度が低い。大気加熱の場合には、乾燥炉(加熱炉)に設置している不活性ガスの排気ラインを使用して、溶媒をトラップしつつ排気する。
図20は、乾燥モード1を有する乾燥処理工程において、時刻t1から時刻t10の経過に伴って変化する冷却制御、ファンの回転数制御、窒素ガス流量制御、圧力制御、温度制御の関係例を示す真空チャンバ(内槽173)の温度プロファイル事例を示す図である。
図20に示すように、時刻t1から時刻t2では、冷却制御、ファンの回転数制御、窒素ガスの流量制御や、温度制御は行われておらず、圧力制御における圧力値が下がって例えば100Pa以下の真空状態になっている。時刻t2から時刻t3では、窒素ガスの流量制御により窒素ガスの流量値が増加し、圧力制御による圧力値は増加する。時刻t3から時刻t4では、ファンの回転数が上がり、窒素ガスの流量値がやや下がり、温度制御による温度が上昇する。時刻t4から時刻t5では、冷却は一定で回転数も一定で、窒素ガスの流量も一定に保ち、圧力が一定であり、温度も一定である。乾燥炉の内槽内の酸素は、不活性ガスによりガス置換され、酸素濃度は0.05%以下の低酸素濃度である。
時刻t5から時刻t6では、シロッコファンの空冷による冷却と冷却水の水冷による冷却が行われ、ファン回転数は少し上がるが、窒素ガスの流量は一定で、圧力も一定であり、温度が急激に下がる。時刻t6から時刻t7では、ファンの回転数は低下し、窒素ガスの流量も低下して圧力が下がって大気圧になり、温度は下がっている。時刻t7から時刻t8は、時刻t1から時刻t2の繰り返しであり、時刻t8からt9は、時刻t2から時刻t3の繰り返しであり、時刻t9から時刻t10は、時刻t3から時刻t4の繰り返しである。このように、時刻t1から時刻t7の期間では、高精度な制御を行っており、サイクルタイムの短縮化を図っていることで、スループットの向上を図っている。
ところで、ロール200を乾燥させるために、ロール200を投入する乾燥炉21,22の選択の順番については、(1)平均モードと、(2)最速モードと、(3)任意モードがある。
(1)平均モードでは、各乾燥炉21,22の稼働時間を積算して、各乾燥炉の稼働時間を平均化してロール200の乾燥に使用するモードであり、各乾燥炉を均等に使用することができる。
(2)最速モードでは、乾燥炉内が空であり、かつ位置的に近い乾燥炉を優先して自動選択してロール200の乾燥に使用するモードである。
(3)任意モードでは、作業者が任意に乾燥炉21,22を指定してロール200の乾燥に使用するモードである。
加熱処理方法としては、図1に示す操作盤OPの制御部100が、温度,圧力、時間を管理して処理を行うが、時間はワーク(ロール)の種類や素材により様々である。一般的には、電極用のロールを乾燥する等の場合には、例えば乾燥時間は5乃至20時間である。ロールのアニ―ル・ベーキングの場合には、乾燥時間は1乃至5時間である。液晶基板と偏光板等を貼り合わせ後の加圧、加熱脱泡処理の場合には、1乃至2時間である。
本発明の実施形態の自動乾燥システム1の用途としては、電極素材の水分除去(真空加熱による)、モールド樹脂部品(IC部品)の硬化(大気加熱による)、部品、素材等のアニ―ル・ベーキング処理、液晶基板と偏光板等を貼り合わせ後の加圧、加熱脱泡処理(加圧乾燥による)、部品の加圧乾燥(真空を嫌う部品)(加圧乾燥による)等がある。
本発明の実施形態の自動乾燥システム1は、対象物であるロール200を投入する投入搬送部(投入コンベアユニット)2と、対象物を乾燥させるための複数の乾燥炉21,22と、乾燥炉21,22で乾燥処理された対象物を排出する払い出しする払出搬送部(払出しコンベアユニット)3と、投入搬送部により搬送されてくる対象物を、複数の乾燥炉21,22のいずれかに移して、乾燥炉21,22で乾燥処理された対象物を払出搬送部側に運ぶ移載機10を備える。
これにより、投入搬送部が対象物を投入すると、移載機は、投入搬送部により搬送されてくる対象物を、一旦複数の乾燥炉のいずれかに投入し、移載機は、その後乾燥炉で必要な処理時間をかけて乾燥処理された対象物を払出搬送部側に戻して運ぶので、乾燥処理に時間が掛かる対象物を、ラインを止めることなく順次効率良く乾燥させることができる。
自動乾燥システム1は、複数の乾燥炉から構成される第1乾燥炉群18と、第1乾燥炉群18に対して間隔をおいて配置されている複数の乾燥炉から構成される第2乾燥炉群19を構成しており、第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19の間には、移載機10が配置されており、移載機10は、第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19の間に配置されている搬送ガイド部30と、搬送ガイド部30に沿って移動して、第1乾燥炉群18と第2乾燥炉群19のいずれかの乾燥炉21,22の前に位置決めされる移載用の移動体40と、を有し、移載用の移動体40は、乾燥炉21,22の内部に対象物を投入し、乾燥後の対象物を乾燥炉21,22の内部から取り出す構成である。
これにより、対象物は、移載用の移動体を用いて、第1乾燥炉群と第2乾燥炉群の中の空いている乾燥炉に投入して乾燥処理できるので、対象物の乾燥処理の効率化が図れる。
自動乾燥システム1では、乾燥炉21,22は、複数の内槽173を有する炉本体部170と、複数の内槽173をそれぞれ開閉可能に閉じる複数の自動扉171を有し、炉本体部170は、複数の内槽173の間の領域には、内槽173を開けたいずれの自動扉171をも収納可能な扉収納部190を有する。
これにより、各内槽を開けたいずれの自動扉であっても扉収納部には共通の収納部として収納できるので、乾燥炉の炉本体部の小型化を図ることができる。
請求項4に記載の自動乾燥システムでは、炉本体部は、各内槽を開けたいずれの自動扉であっても案内可能な共通のガイドレールを有することを特徴とする。
自動乾燥システム1では、複数の内槽173を有していても、各内槽173を閉める自動扉171は、共通のガイドレール172により案内できるので、乾燥炉21,22の炉本体部170の構造を簡単化することができる。
自動乾燥システム1は、乾燥炉21,22の内槽173内では、対象物を、大気圧で昇温をして、真空状態で加熱をし、大気圧で降温する乾燥モード1により乾燥する。これにより、自動乾燥システム1では、内槽での庫内の昇温と降温は、共に大気圧で行え、対象物の加熱は真空状態で加熱をするために、通常行われている昇温と降温を含めてすべての工程を真空中で行う乾燥処理に比べて、本発明の実施形態では、昇温と降温の作業効率が高い。従って、加熱炉の内槽を用いて乾燥しようとする対象物の乾燥工程に掛かる時間を短縮でき、トータルの乾燥処理時間の短縮が図れる。
本発明の実施形態では、大気加熱時は、乾燥炉に過熱した窒素ガスを導入することにより、微量ではあるが昇温効率を高めることができる。また、大気降温時には、加熱せずに
窒素ガスを導入する乾燥炉内に冷却用の熱交換器としての冷却コイルあるいは多管式熱交換器、プレート式熱交換器、フィンチューブ型熱交換器等を設置することにより、降温効率を高める。なお、冷却のみならず加熱用として利用しても良い。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
例えば、乾燥炉21,22は、真空状態で乾燥を行える乾燥炉であるが、これに限らず、加熱による乾燥対象物の種類によっては、大気圧雰囲気下により乾燥を行う乾燥炉、あるいは加圧状態下により乾燥を行う乾燥炉であっても良い。
不活性ガスとしては、窒素の他にアルゴンや二酸化炭素を主成分とするガス等でも良く、特に限定されない。
なお、上述してきた自動乾燥システムは、乾燥炉または加熱炉(真空・大気炉・加圧炉等あらゆる用途)に適用可能である。