JP6274555B2 - 群遅延演算を用いたofdr方式光ファイバ計測方法及びそれを実施する装置 - Google Patents
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Description
このようにFBGを利用した高速測定の例は見られるが、これらはあくまでFBGを単点測定用に利用したものである。FBGセンサモニタの場合はFBGを多重化して計測することで準分布型の測定が可能である。
D1,D2,D3,D4: 光強度ディテクタ
C1: 5%−95%広帯域カップラ
C2-C5: 50%−50%広帯域カップラ
R1-R4: 全反射が起きるような終端
FC/PC1-3: 光ファイバ結合用FC/PCコネクタ
BNC1-3: 光強度電圧変換出力用BNCコネクタ
FBG1-2: FBGを5個配置した光ファイバ
計測は波長可変型光源よりレーザー光を供給し、波長をスイープさせながらディテクタ部で反射光の強度を測定する。データ処理には高速フーリエ変換やデジタルのフィルターを使用するので、一定間隔の光波数毎に計測を行う必要がある。ディテクタD1で計測される光強度は、次式のように表される光波数間隔△k(=π/nL)で周期的に変化する。光波数に対して周期的に変化するディテクタD1での光強度をトリガーとして使用して、センサ部である各FBGからの反射光の強度をディテクタD2、D3で計測する。
現状では実験室でリアルタイムにひずみをモニタリングするのは難しい。というのは測定データの保存と解析、ひずみ情報の信号処理を並行して高速で行うことが出来ないためである。これらを並行して行うには、経験的に、一度の計測に一秒以上はかかってしまう。上述したように測定速度が10Hzといったときには測定データの保存だけを意味しており、ひずみ変動については実験後に解析を行ってからようやく把握している状況にある。
表1に本研究で用いたことのあるSTFT演算の条件例を示す。この場合はデータ点数7455個の区間に対するFFTを1400回しなくてはならない。STFTはFFTを数多く演算する、CPU高負荷な演算である。
前記群遅延の演算の第1の形態は、前記群遅延の演算は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、位相のアンラッピングを行い、それぞれの位相誘導計算をしてその差から時間群遅延計算を行う位相微分方式を用いるものである請求項1に記載のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
前記群遅延の演算の第2の形態は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いるものとした。
前記群遅延の演算の第3の形態は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、畳み込み積分によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いるものとした。
上記形態において、ノイズ処理のためインパルス応答h(k)およびk h(k)に窓関数をかけて特定の区間における次の関数を取り出し、その抜き出す位置を変えてFFTを繰り返し計算し、それらの総和で群遅延を計算するものとした。
Z変換による手法では、波長掃引幅に依存しない傾向を示しており、従来のSTFTによる手法よりも高い空間分解能を示す。また、計測時間については位相微分による群遅延手法と比べてもこのZ変換による手法の方が数倍速くなっている。
また、畳み込み積分によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式においては、従来のSTFT手法の数十倍の計算効率が得られる。
OFDRが取得するFBG反射光の干渉信号は、FBG長を微小区間に区切って考えると、各微小区間における反射スペクトルの重ね合わせである。各々の反射スペクトルは区間位置に線形相関した周波数を持つ搬送波がブラッグスペクトルに乗算されたものである。すなわち反射スペクトルの包絡線はブラッグスペクトルに対応する。ひずみ変動を経験する前後の包絡線シフトを算出すればひずみ変動を計測できるが、包絡線シフトは群遅延に相当する。従って周波数領域で群遅延を算出すれば、FBG内各区間におけるひずみ変動を分布的に取得できる。
まず、位相微分を用いる方法であるが、この手法では式に示したように周波数応答の位相微分を行うことで群遅延を計算する。ここで位相アンラッピングの手間と不確定性について考えなければならない。周波数応答の位相は図3で例示されるように−π〜πの範囲で周期的に変動する。位相の微分を行うためには位相の“アンラッピング”を行わなくてはいけない。つまり位相が−πかπの境界をまたいだときに、図4に示す様に位相に±2πする必要が出てくる。ここでさらに問題となるのがアンラッピングの“不確定性”である。位相変動が−πかπの境界をまたいだのかどうかの判断には不確定性がつきまとう。例えば0であった位相が次点で2π/3になったとき、2π/3分の位相の増加によって2π/3となったのか、−4π/3分の位相の減少で2π/3となったのかはわからない。−4π/3分の位相減少の場合は境界をまたいでいるため、アンラッピングが必要である。点間における位相変化幅の許容基準を設けるなどしてアンラッピングする又はしないかの判断をしなくてはならない。
図5に本手法の演算フローを示す。本手法では二つの信号f1,f2それぞれについて位相を求め、アンラッピングを行う。位相の微分を行ったのちに二つの値の差を計算することで群遅延を求める。しかし、上記の手法は計算スピードにおいては従来のSTFT法に比べ、格段の改善がなされるのであるが、アンラッピングの手間・不確定性の問題を伴いリアルタイムの信号処理と動作安定性において十分に満足できるものではなかった。
このZ変換を用いる方法について以下に説明する。位相微分を用いる方法で述べたアンラッピングの手間・不確定性を気にしなくていいのがZ変換を用いる方法である。一般に計算コストが高い微分演算を行わなくてもよいこともこの手法の特徴である。この手法では微分演算をZ領域に持ち込むことで巧みに回避している。数式的な導出を以下に示す。
周波数応答Hを振幅Aと位相πで表すと
式(13)より、微分およびアンラッピングを行わずに群遅延を計算できる。しかしフーリエ変換や、周波数応答Hからインパルス応答hを算出するときに逆フーリエ変換を用いるため、演算過程でノイズ除去を行う必要が出てくる。
ノイズ除去のために窓関数(ハン窓)を演算するタイミングが二度、ゼロパッディングを行うタイミングが一度ある。逆フーリエ変換によるノイズを除去するため、図6に示されるウィンドウ2のタイミングでインパルス応答hに行う演算は必須である。二つの干渉信号f1,f2それぞれをフーリエ変換する前に窓関数をかけるウィンドウ1の場合は、この演算の有無で群遅延計算結果の特性が変わってくる。ハン窓を用いるのは窓両端で振幅が0になるからである。本手法ではハン窓を採用した。
ゼロパッディングはf1信号の後ろに、f2信号の前に同じ長さの0列を付け足す行程である。これにより周波数応答を算出するときにノイズが出にくくなる場合がある。しかしデータ量が二倍になるため計算コストもそれだけ高くなる。
この手法を以下に説明する。
前述したように、周波数応答H(ω)の位相をφ(ω)とすれば、群遅延Tg(ω)は式(3)で表される。これはインパルス応答hを用いれば
図7を参照しながら信号処理の流れを説明する。
この手法ではインパルス応答h(k)は畳み込み積分により求める。
h(k)=(f2*f1)(k) (15)
フーリエ変換後の関数を高速フーリエ変換fft ( )を用いて
H(ω)=fft (h(k)) (16)
Hk(ω)=fft (k h(k)) (17)
とすれば、求める群遅延は
HkやHはhkやhのフーリエ変換なので、
インパルス応答h(k)およびk h(k)に窓関数をかけて特定の区間における次の関数を取り出す。
その一部分について群遅延を求めると
図9に示すように、この抜き出す位置を変えて(窓関数をずらして)
この処理はFFT長の縮小により算出されるひずみ点数が減少する、すなわち空間分解能が低下する反面、ノイズを大きく低減する効果がある。空間分解能、ノイズ低減効果、信号処理時間は窓関数とそのスライドの長さにより調整される。この作業はSTFT演算中の計算過程に似ているが、窓関数の長さ、窓関数をスライドする長さともにSTFTの場合よりはるかに大きく設定しても十分な効果が得られることが大きなメリットである。
この試験では図13に示されるOFDRシステムを使用し、センシング領域を5m(これはリファレンスアーム長L=10mに相当)とし、波長可変光源波長掃引を10nmとした。そして、群遅延演算におけるノイズ処理のための窓関数の幅を1.35nm、窓関数のスライド長さを0.7nmとした。FBG観測信号を生成したシミュレーション条件の詳細は表3に示す通りである。
本発明の群遅延演算は信号処理速度において従来のSTFTの数十倍の性能が得られることが確認できた。
C1: 5%−95%広帯域カップラ
C2-C5: 50%−50%広帯域カップラ
R1-R4: 全反射が起きるような終端
Claims (4)
- FBGを1本の光ファイバに複数個配置したOFDR方式の光ファイバ計測装置において、観測されたブラッグ波長の初期信号とシフトされた信号から群遅延の演算を演算してブラッグ波長シフトの分布を求めるものであって、その演算は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いることを特徴とするOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
- 前記群遅延の演算は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、畳み込み積分によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いるものである請求項1に記載のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
- インパルス応答h(k)およびkh(k)に窓関数をかけて特定の区間における次の関数を取り出し、その抜き出す位置を変えてFFTを繰り返し計算し、それらの総和で群遅延を計算する請求項2に記載のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
- FBGを1本の光ファイバに複数個配置して、光の干渉強度周期的変化を利用するOFDR方式の計測装置において、ブラッグ波長の初期信号とシフトされた信号から群遅延を演算し、ブラッグ波長シフトの分布を求める信号処理手段を備えたものであって、前記信号処理手段における群遅延の演算部は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式機能を備えたものであることを特徴とするOFDR方式光ファイバ計測装置。
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