JP6274555B2 - 群遅延演算を用いたofdr方式光ファイバ計測方法及びそれを実施する装置 - Google Patents

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本発明は、光周波数領域リフレクトメトリを用いた光ファイバセンシング技術における信号処理に関する。
光ファイバのコアに紫外線を照射して、規則的な縞(回折格子)を作ると、光ファイバの中を透過していく光の様々な波長の中でその縞の周期(屈折率)に合う波長だけが跳ね返(反射)される。この縞の周期は歪みや温度によって伸縮するため、このような光ファイバはセンサ(Fiber Bragg Grating:FBG)になる。このFBGを1本の光ファイバに複数個配置した周波数多重化(Optical Frequency Domain Reflectometry:OFDR)方式は、ファイバ全体を使って静歪み、変位、圧力、温度を計測するのに優れたものとして知られている。
FBGは通常、反射スペクトルのシフトを観測することでひずみ(あるいは温度)を計測する。FBGの反射スペクトルを観測する最も代表的な機器がスペクトラムアナライザである。代表例としてアンリツ社のスペクトラムアナライザは掃引速度が数Hzである。この場合、掃引速度がすなわち測定速度(周波数)となる。同社のFBGセンサモニタはFBG計測用に特化した使用となっており、これは1.2kHz以上の測定速度を有する。
FBGの反射スペクトルそのものを直接観測するのではなく、反射信号の強度変調を追跡することで被測定物のひずみ・振動を計測する例もある。図12のようにFBGからの反射信号を受光器で観測する。受光器には図11に示すような波長依存の光起電力特性を持たせておく。これにより被測定物のひずみ変化により生じるブラッグ波長シフトが起電力の変化として観測される。この手法により最大250Hzでの測定が実証された。
このようにFBGを利用した高速測定の例は見られるが、これらはあくまでFBGを単点測定用に利用したものである。FBGセンサモニタの場合はFBGを多重化して計測することで準分布型の測定が可能である。
特許文献1に示された例で、OFDR方式の多点歪計測装置の概要を示す。図13はその基本構成を示す図で、主要構成品は以下の通りである。
D1,D2,D3,D4: 光強度ディテクタ
C1: 5%−95%広帯域カップラ
C2-C5: 50%−50%広帯域カップラ
R1-R4: 全反射が起きるような終端
FC/PC1-3: 光ファイバ結合用FC/PCコネクタ
BNC1-3: 光強度電圧変換出力用BNCコネクタ
FBG1-2: FBGを5個配置した光ファイバ
計測は波長可変型光源よりレーザー光を供給し、波長をスイープさせながらディテクタ部で反射光の強度を測定する。データ処理には高速フーリエ変換やデジタルのフィルターを使用するので、一定間隔の光波数毎に計測を行う必要がある。ディテクタD1で計測される光強度は、次式のように表される光波数間隔△k(=π/nL)で周期的に変化する。光波数に対して周期的に変化するディテクタD1での光強度をトリガーとして使用して、センサ部である各FBGからの反射光の強度をディテクタD2、D3で計測する。
本発明者らが開発したOFDR式分布測定システムは、光源にその波長掃引速度が最高100nm/secのものを用いており、当研究室のシステムの測定速度は10Hzとなっている。観測した干渉信号の信号処理効率も測定速度に大きく影響する。現在のOFDR測定では波長掃引幅8nm,リファレンスアームであるL長(ディテクタD1信号用の二つの全反射端の行路長差)20mの条件で、一回の計測でバイナリ形式のファイルが0.76MBのサイズとなる。このサイズの大きさがデータ保存速度に影響し、測定速度に影響している。またこれは10Hzで5分間測定するとゆうに2GBを超える計算になり、長時間測定の場合は大きなストレージを用意しなくてはならない。実験室で測定データの取得を行った後に、解析作業を行いひずみ情報を算出する。ブラッグ波長分布を出力する解析は一つの測定データに対して1秒弱の時間がかかることになる。
現状では実験室でリアルタイムにひずみをモニタリングするのは難しい。というのは測定データの保存と解析、ひずみ情報の信号処理を並行して高速で行うことが出来ないためである。これらを並行して行うには、経験的に、一度の計測に一秒以上はかかってしまう。上述したように測定速度が10Hzといったときには測定データの保存だけを意味しており、ひずみ変動については実験後に解析を行ってからようやく把握している状況にある。
本発明者らのOFDR式分布測定システムの信号処理は短時間フーリエ変換(STFT:Short time Fourier transform)に基づいた手法を採用している。短時間フーリエ変換は測定データの解析、ひずみ情報の信号処理を高速に行うための手法で、特許文献1に提示されている。ただし、特許文献1ではスペクトログラム解析との用語で記載されている。図10にSTFTの概念図を示す。干渉信号に対して、ある波長を中心波長とした窓関数をかけることで干渉信号の一定波数区間を取り出す。取り出された窓関数内の干渉信号区間について高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transformation)解析を行うことで周波数スペクトルが算出される。周波数はファイバ位置に対応するので、FFTによりとある波長における反射光強度の空間分布を取得したことになる。すなわち、スペクトログラムにおける縦方向断面の一つである。そして窓関数をオーバーラップさせながら次々にずらして同様にFFT演算をしていくことで、すべての波数(波長)に亘って反射強度空間分布を算出できる。すなわちスペクトログラムを波長方向に掃引するように描画できる。なお、本手法では窓関数にハミングウィンドウを採用している。
表1に本研究で用いたことのあるSTFT演算の条件例を示す。この場合はデータ点数7455個の区間に対するFFTを1400回しなくてはならない。STFTはFFTを数多く演算する、CPU高負荷な演算である。
Figure 0006274555
特開2005−147900号公報 「OFDR方式の歪連続分布計測装置」 平成17年6月9日公開
本発明が解決する課題は、従来のSTFTによる信号処理よりも格段に高速処理が可能で、かつCPUへの負担が軽い、OFDR方式の計測装置におけるあらたな高効率の信号処理手法を提案することにある。
本発明のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法は、FBGを1本の光ファイバに複数個配置したOFDR方式の光ファイバ計測装置において、観測されたブラッグ波長の初期信号とシフトされた信号から群遅延を演算してブラッグ波長シフトの分布を求めることを特徴とする。
前記群遅延の演算の第1の形態は、前記群遅延の演算は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、位相のアンラッピングを行い、それぞれの位相誘導計算をしてその差から時間群遅延計算を行う位相微分方式を用いるものである請求項1に記載のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
前記群遅延の演算の第2の形態は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いるものとした。
前記群遅延の演算の第3の形態は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、畳み込み積分によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いるものとした。
上記形態において、ノイズ処理のためインパルス応答h(k)およびk h(k)に窓関数をかけて特定の区間における次の関数を取り出し、その抜き出す位置を変えてFFTを繰り返し計算し、それらの総和で群遅延を計算するものとした。
本発明のOFDR方式光ファイバ計測装置は、FBGを1本の光ファイバに複数個配置して、光の干渉強度周期的変化を利用するOFDR方式の計測装置において、ブラッグ波長の初期信号とシフトされた信号から群遅延を演算し、ブラッグ波長シフトの分布を求める信号処理手段を備えたことを特徴とする。
本発明のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法は、従来のSTFTによる信号処理よりも格段に高速処理が可能で、かつCPUへの負担が軽く、OFDR方式の計測装置における高効率の信号処理が実現できる。
Z変換による手法では、波長掃引幅に依存しない傾向を示しており、従来のSTFTによる手法よりも高い空間分解能を示す。また、計測時間については位相微分による群遅延手法と比べてもこのZ変換による手法の方が数倍速くなっている。
また、畳み込み積分によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式においては、従来のSTFT手法の数十倍の計算効率が得られる。
本発明のOFDR方式光ファイバ計測装置は、ブラッグ波長の初期信号とシフトされた信号から群遅延を演算し、ブラッグ波長シフトの分布を求める信号処理手段を備えたものであるから、従来のSTFTによる計測装置より、信号処理よりも格段に高速処理が可能で、かつCPUへの負担が軽く、高効率の信号処理が実現可能なOFDR方式の計測装置を提供することができる。
ブラッグスペクトルの群遅延を包絡線シフトで説明する図である。 STFTと群遅延計算による出力の違いを説明する図である。 周波数応答の位相分布を示す図である。 位相アンラッピングを説明する図である。 位相微分を用いた群遅延計算のフロー図である。 逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出するZ変換を用いた群遅延計算のフロー図である。 畳み込み積分によりインパルス応答を求めるZ変換を用いた群遅延計算のフロー図である。 ノイズ処理を加えた畳み込み積分によりインパルス応答を求めるZ変換を用いた群遅延計算のフロー図である。 ノイズ処理の過程で行う窓関数を用いた区間取り出しを説明する図である。 STFTの概念図である。 ブラッグスペクトルの光起電力と波長シフトの関係を説明する図である。 FBGによるひずみ計測システムを説明する図である。 OFDR方式の多点歪計測装置の概要を示す図である。
本発明が提案する新たなOFDR信号処理である群遅延演算の原理・特徴について説明する。OFDRにより生成される干渉信号は、各位置に準じた周波数を有する搬送波がのったブラッグスペクトルの重ね合わせである。とある位置(とある周波数)におけるブラッグスペクトルを取り出すと図1のようになる。搬送波の周波数は同じ位置を見ている限り一定であり、ブラッグ波長シフトは信号の包絡線(振幅変調)シフトで表される。この包絡線シフトが“群遅延”に対応する。
OFDRが取得するFBG反射光の干渉信号は、FBG長を微小区間に区切って考えると、各微小区間における反射スペクトルの重ね合わせである。各々の反射スペクトルは区間位置に線形相関した周波数を持つ搬送波がブラッグスペクトルに乗算されたものである。すなわち反射スペクトルの包絡線はブラッグスペクトルに対応する。ひずみ変動を経験する前後の包絡線シフトを算出すればひずみ変動を計測できるが、包絡線シフトは群遅延に相当する。従って周波数領域で群遅延を算出すれば、FBG内各区間におけるひずみ変動を分布的に取得できる。
ひずみ変化前の干渉信号をf(k)、ひずみ変化後の干渉信号をf(k)とすると、これら二つはインパルス応答h(k)を用いて
Figure 0006274555
と表現される。フーリエ変換によるf(k),f(k)の周波数スペクトルをF(ω),F(ω)とすれば、それらの関係は周波数応答H(k)を用いて
Figure 0006274555
と表される。ここで周波数応答H(k)の位相をφ(ω)とすれば、群遅延T(ω)は
Figure 0006274555
となる。群遅延は周波数の関数として算出される。周波数が位置に対応していることを考えれば、上述のように群遅延を求めることでブラッグ波長シフトの分布を求めることができる。
STFTと群遅延計算では演算の意味合いでどのような差があるのかを説明すれば、STFTは反射光強度の空間分布を波長成分全域に亘って算出する。わかりやすくするため軸を違う方向からみれば、ブラッグ“スペクトル”の空間分布を算出する演算である。一方群遅延計算ではブラッグ“波長シフト”の空間分布を演算する。図2のように、STFTによる出力の方がスペクトル形状を観測できるために情報量が豊富だが、演算コストも高くなる。もちろんブラッグ波長シフトを出力するためにはシフト前と後の二つの信号に対してSTFT演算を施さなくてはならない。それに対して群遅延計算ではブラッグ波長シフトしか算出されないためにひずみ変化といった情報しか引き出せないが、その分演算コストは低くなる。
本発明では従来のSTFT演算による信号処理に代わる信号処理手法として群遅延計算に基づく新たなアプローチを提案する。本発明では群遅延計算に基づく信号処理手法として二種類のアプローチを提案する。一つは「位相微分を用いる方法」であり、これは直接的に群遅延を計算する手法である。もう一つは「Z変換を用いる方法」である。これは微分演算をZ領域に持ち込む手法である。
まず、位相微分を用いる方法であるが、この手法では式に示したように周波数応答の位相微分を行うことで群遅延を計算する。ここで位相アンラッピングの手間と不確定性について考えなければならない。周波数応答の位相は図3で例示されるように−π〜πの範囲で周期的に変動する。位相の微分を行うためには位相の“アンラッピング”を行わなくてはいけない。つまり位相が−πかπの境界をまたいだときに、図4に示す様に位相に±2πする必要が出てくる。ここでさらに問題となるのがアンラッピングの“不確定性”である。位相変動が−πかπの境界をまたいだのかどうかの判断には不確定性がつきまとう。例えば0であった位相が次点で2π/3になったとき、2π/3分の位相の増加によって2π/3となったのか、−4π/3分の位相の減少で2π/3となったのかはわからない。−4π/3分の位相減少の場合は境界をまたいでいるため、アンラッピングが必要である。点間における位相変化幅の許容基準を設けるなどしてアンラッピングする又はしないかの判断をしなくてはならない。
図5に本手法の演算フローを示す。本手法では二つの信号f,fそれぞれについて位相を求め、アンラッピングを行う。位相の微分を行ったのちに二つの値の差を計算することで群遅延を求める。しかし、上記の手法は計算スピードにおいては従来のSTFT法に比べ、格段の改善がなされるのであるが、アンラッピングの手間・不確定性の問題を伴いリアルタイムの信号処理と動作安定性において十分に満足できるものではなかった。
そこで、本発明らが推奨する手法は「Z変換を用いる方法」である。これは微分演算をZ領域に持ち込む手法である。
このZ変換を用いる方法について以下に説明する。位相微分を用いる方法で述べたアンラッピングの手間・不確定性を気にしなくていいのがZ変換を用いる方法である。一般に計算コストが高い微分演算を行わなくてもよいこともこの手法の特徴である。この手法では微分演算をZ領域に持ち込むことで巧みに回避している。数式的な導出を以下に示す。
周波数応答Hを振幅Aと位相πで表すと
Figure 0006274555
となるため、位相は
Figure 0006274555
と表される。このとき群遅延は
Figure 0006274555
となるが、実関数であるために
Figure 0006274555
となる。この計算をZ領域で行うために、サンプル波数間隔をTとして
Figure 0006274555
を用いると群遅延は
Figure 0006274555
と表される。Z=ej・Tより
Figure 0006274555
となる。ここでZ変換をZ[ ]で表すと
Figure 0006274555
となるので、Z領域での群遅延は
Figure 0006274555
で表され、これを周波数領域にすると、フーリエ変換をfft[ ]で表して
Figure 0006274555
となる。
式(13)より、微分およびアンラッピングを行わずに群遅延を計算できる。しかしフーリエ変換や、周波数応答Hからインパルス応答hを算出するときに逆フーリエ変換を用いるため、演算過程でノイズ除去を行う必要が出てくる。
図6に上記手法の演算フローを示す。基本的には二つの信号f,fそれぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出する。インパルス応答を用いて群遅延を計算する。
ノイズ除去のために窓関数(ハン窓)を演算するタイミングが二度、ゼロパッディングを行うタイミングが一度ある。逆フーリエ変換によるノイズを除去するため、図6に示されるウィンドウ2のタイミングでインパルス応答hに行う演算は必須である。二つの干渉信号f,fそれぞれをフーリエ変換する前に窓関数をかけるウィンドウ1の場合は、この演算の有無で群遅延計算結果の特性が変わってくる。ハン窓を用いるのは窓両端で振幅が0になるからである。本手法ではハン窓を採用した。
ゼロパッディングはf信号の後ろに、f信号の前に同じ長さの0列を付け足す行程である。これにより周波数応答を算出するときにノイズが出にくくなる場合がある。しかしデータ量が二倍になるため計算コストもそれだけ高くなる。
前述した位相微分、Z変換を用いた群遅延計算による信号処理手法の性能比較を実証データで表2に示す。Z変換はウィンドウ1と2の演算を施している。信号処理性能はいずれの手法においてもL長には依らず、波長掃引幅(sweep幅)に依存していたため、波長掃引幅7nm,14nm,21nmの3ケースを取り上げた。計測時間は同等の測定結果をもたらすSTFT演算にかかる時間を1としている。
Figure 0006274555
シミュレーションによる検討では、群遅延計算に基づく信号処理手法を採用することで、従来のSTFTによる手法よりも空間分解能、計測速度が大きく向上され、測定精度に関してもほぼ同様の性能を示すことがわかった。位相微分を用いる手法ではその性能は波長掃引幅に依存するような関係があることがわかった。Z変換を用いた手法では特に空間分解がウィンドウのかけ方に影響されることがわかった。測定速度は位相微分を用いる手法よりも数倍速かった。
本発明者らは上記の信号処理手法に追加修正する形で更なる改良型のZ変換を用いた信号処理方法を開発した。
この手法を以下に説明する。
前述したように、周波数応答H(ω)の位相をφ(ω)とすれば、群遅延T(ω)は式(3)で表される。これはインパルス応答hを用いれば
Figure 0006274555
と表せる。上式において、fft( )はフーリエ変換、Tは係数、Re( )は複素数関数の実部を示す。
図7を参照しながら信号処理の流れを説明する。
この手法ではインパルス応答h(k)は畳み込み積分により求める。
h(k)=(f*f)(k) (15)
フーリエ変換後の関数を高速フーリエ変換fft ( )を用いて
H(ω)=fft (h(k)) (16)
(ω)=fft (k h(k)) (17)
とすれば、求める群遅延は
Figure 0006274555
となる。群遅延シフトをブラッグ波長シフトあるいはひずみ変動に変換するよう係数Tを設定し、角周波数をFBG位置に対応させることでひずみ分布を得る。
やHはhやhのフーリエ変換なので、
Figure 0006274555
とも書くことができる。
Figure 0006274555
となる。これは、ノイズ処理のない場合ではインパルス応答hを用いて行ったものである。
ノイズ処理を行う場合には図8に示すように、上記の信号処理手法に追加修正する形でノイズ処理手法となる。
インパルス応答h(k)およびk h(k)に窓関数をかけて特定の区間における次の関数を取り出す。
Figure 0006274555
上につくハットマークは、一部分であることを意味する。
その一部分について群遅延を求めると
Figure 0006274555
となる。ちなみに、抜きだす作業は窓関数をかけることで行うが、これは窓を通るもの以外は0にする作業である。
図9に示すように、この抜き出す位置を変えて(窓関数をずらして)
Figure 0006274555
を何度も計算し、それらの総和で群遅延を求めると
Figure 0006274555
が得られる。何度も計算した分母と分子それぞれの総和を割ることは、“重みづけして平均化する”ことに相当するので、この過程でノイズは抑えられることとなる。
この処理はFFT長の縮小により算出されるひずみ点数が減少する、すなわち空間分解能が低下する反面、ノイズを大きく低減する効果がある。空間分解能、ノイズ低減効果、信号処理時間は窓関数とそのスライドの長さにより調整される。この作業はSTFT演算中の計算過程に似ているが、窓関数の長さ、窓関数をスライドする長さともにSTFTの場合よりはるかに大きく設定しても十分な効果が得られることが大きなメリットである。
本発明に係る改良型のZ変換による群遅延演算を用いたOFDR方式光ファイバ計測装置の効果をシミュレーションにより検証したデータを以下に示す。
この試験では図13に示されるOFDRシステムを使用し、センシング領域を5m(これはリファレンスアーム長L=10mに相当)とし、波長可変光源波長掃引を10nmとした。そして、群遅延演算におけるノイズ処理のための窓関数の幅を1.35nm、窓関数のスライド長さを0.7nmとした。FBG観測信号を生成したシミュレーション条件の詳細は表3に示す通りである。
Figure 0006274555
生成された信号を従来のSTFT、提案する改良型群遅延演算を用いて信号処理した結果を表4に示す。なお、計算ソフトには Matlab を用いた。
Figure 0006274555
二つの信号処理手法を比較すると、出力されるブラッグ波長分布の波長測定精度、空間分解能は同等を維持して計算効率が28倍であることを示している。
本発明の群遅延演算は信号処理速度において従来のSTFTの数十倍の性能が得られることが確認できた。
D1,D2,D3,D4: 光強度ディテクタ
C1: 5%−95%広帯域カップラ
C2-C5: 50%−50%広帯域カップラ
R1-R4: 全反射が起きるような終端

Claims (4)

  1. FBGを1本の光ファイバに複数個配置したOFDR方式の光ファイバ計測装置において、観測されたブラッグ波長の初期信号とシフトされた信号から群遅延の演算を演算してブラッグ波長シフトの分布を求めるものであって、その演算は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いることを特徴とするOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
  2. 前記群遅延の演算は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、畳み込み積分によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式を用いるものである請求項1に記載のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
  3. インパルス応答h(k)およびkh(k)に窓関数をかけて特定の区間における次の関数を取り出し、その抜き出す位置を変えてFFTを繰り返し計算し、それらの総和で群遅延を計算する請求項2に記載のOFDR方式光ファイバ計測の信号処理方法。
  4. FBGを1本の光ファイバに複数個配置して、光の干渉強度周期的変化を利用するOFDR方式の計測装置において、ブラッグ波長の初期信号とシフトされた信号から群遅延を演算し、ブラッグ波長シフトの分布を求める信号処理手段を備えたものであって、前記信号処理手段における群遅延の演算部は、初期信号とシフトされた信号の位相を検出し、それぞれにフーリエ変換を施し、周波数応答を求め、逆フーリエ変換によりインパルス応答を算出し、該インパルス応答を用いて群遅延を計算するZ変換方式機能を備えたものであることを特徴とするOFDR方式光ファイバ計測装置。
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CN110749419A (zh) * 2019-09-12 2020-02-04 芯华创(武汉)光电科技有限公司 一种ofdr检测方法
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