JP6274435B2 - 潤滑剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、潤滑剤組成物に関する。本発明は、二硫化モリブデンや有機モリブデン化合物といった重金属を含有する潤滑剤成分を配合することなく極圧性及び低摩擦性を有し、特に等速ジョイント機構及び建機用駆動装置における焼付の防止及び低摩擦化に寄与し、機構部分の長寿命化を果たし得るモリブデン化合物を含有しない潤滑剤組成物に関する。
具体的に、等速ジョイントとは、駆動軸と被駆動軸が任意の作動角において、その角速度が等速でトルクを伝達できる継手のことである。用途は、自動車の前輪駆動軸、後輪駆動軸、プロペラシャフト、一般の産業機械の駆動軸等、広範囲に及ぶ。等速ジョイントは、高面圧下における複雑な転がりすべり潤滑機構を有する。このため、摺動部における焼付及び異常振動がしばしば発生する。
等速ジョイントの主な形式としては、等速面上に中心が拘束されているボールを介して回転運動を伝達するもの(例えば、ダブルオフセットジョイント)やトリポート主軸に直交する三本の直線と外筒の軸に平行な三本の直線の交点において回転運動が伝達されるもの(例えば、フランジ式トリポートジョイント)が挙げられる(例えば、非特許文献1参照。)。
潤滑グリースとして最も一般的なものは、ダブルオフセットジョイント用としては、精製した鉱油を基油とし、リチウム石鹸を増ちょう剤として、極圧剤や二硫化モリブデンを添加したNLGIちょう度No.1〜2のグリースが挙げられる(例えば、非特許文献1参照。)。トリポートジョイント用としては、精製した鉱油を基油とし、リチウム又はカルシウム石鹸を増ちょう剤として、極圧剤を添加したNLGIちょう度No.1〜2のグリースが挙げられる(例えば、非特許文献1参照。)。
近年、等速ジョイント発展の課題として、自動車の静粛性に伴う低振動化(低摩擦性)、軽量コンパクト化を狙ったサイズダウンのための長寿命化、及び低コスト化が挙げられている。このため、ウレア化合物を増ちょう剤として、二硫化モリブデン又は有機モリブデン化合物を添加したグリースの使用が主流となっている(例えば、非特許文献2参照。)。
例えば、特許文献1においては、基油、ジウレア系増ちょう剤、二硫化モリブデン、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、石油スルホン酸のカルシウム塩、硫黄−リン系極圧剤、及び植物油脂を含有する等速ジョイント用グリース組成物が提案されている。
また、特許文献2においては、ウレア系増ちょう剤、二硫化モリブデン、及び酸化ワックスのカルシウム塩、石油スルホン酸のカルシウム塩、アルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩、サリシレートのカルシウム塩、フェネートのカルシウム塩、酸化ワックスの過塩基性カルシウム塩、石油スルホン酸の過塩基性カルシウム塩、アルキル芳香族スルホン酸の過塩基性カルシウム塩、サリシレートの過塩基性カルシウム塩、及びフェネートの過塩基性カルシウム塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する等速ジョイント用グリース組成物が提案されている。
また、特許文献3においては、金属を含まない硫黄−リン系極圧剤及び有機モリブデン化合物を含有する等速ジョイント用グリース組成物が提案されている。
また、特許文献4においては、基油、ジウレア系増ちょう剤、パーム油を原料とした油性剤、硫化ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、亜鉛スルホネート、及び硫黄−リン系極圧剤を含有する等速ジョイント用グリース組成物が提案されている。
さらに、特許文献5においては、ナフテン系鉱油、ウレア系増ちょう剤、有機モリブデン化合物、及びカーボンブラックを含有する等速ジョイント用グリース組成物が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の等速ジョイント用グリース組成物は、低摩擦性及び耐焼付性が不十分であり、近年の部品交換周期の長期化に伴うグリースの要求性能に関して、必ずしも十分とはいえない。
また、特許文献4に記載の等速ジョイント用グリース組成物は、油性剤の油膜強度が十分ではないため、高面圧下高速摺動における潤滑性能は、必ずしも十分とはいえない。
さらに、特許文献5における等速ジョイント用グリース組成物は、カーボンブラックを含有していることから、金属表面を削ってしまう可能性があり、潤滑機構の長寿命化に関して、必ずしも十分とはいえない。
このように、いずれの場合においても、これまでの等速ジョイント用グリース組成物では、二硫化モリブデンや有機モリブデン化合物などのモリブデン化合物の高配合処方、高価な特殊添加剤の適用、多様な添加剤種類の組合せを主流としているため、低摩擦性において優れていても、耐荷重性能、低コスト化の課題においては、必ずしも十分とはいえない。
建機用駆動装置についても、等速ジョイントと同様に、高面圧下における複雑な転がりすべり潤滑機構を有する。このため、建機用駆動装置も摺動部における焼付及び異常振動がしばしば発生する。
建機用駆動装置における潤滑剤組成物においては、二硫化モリブデンを高配合した処方を適用しているため、耐荷重性能が優れていても、低摩擦性及び低コスト化の課題においては、必ずしも十分とはいえない。
さらに、いずれの場合においてもモリブデン化合物を含む添加剤を含んでおり、環境リスクを持つ化学物質を管理する手法であるPRTR制度に該当するため、それらの潤滑剤組成物の環境リスクの低減の問題においては、たとえ使用量を減少させたとしても必ずしも十分とはいえない。したがって、潤滑剤組成物としては、モリブデン化合物を使用していないものが求められている。
特開2006−96949号公報 特開平9−194871号公報 特開平9−324189号公報 特許第5028701号公報 特許第5022582号公報
木全圭著、「潤滑」、31(10)、p.697〜702、1986年 「NTN TECHNICAL REVIEW No.66」、1997年
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、モリブデン化合物を含まない潤滑剤組成物であって、特に等速ジョイント機構、建機用駆動装置等の建設機会及び軸受における焼付の防止及び低摩擦化に寄与し、機構部分の長寿命化を果たし得る潤滑剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、等速ジョイント、建機用駆動装置等の建設機械及び軸受の摩擦を低減し、振動を防止する潤滑剤組成物の開発研究を種々行い、振動の発生し易い潤滑条件下で使用するグリースの性能評価を、一般的に採用される振動摩擦摩耗試験機として知られるSRV試験機を用いて行った。その結果、基グリースに増ちょう剤を用いて、リグニン化合物が必須成分として配合され、さらに硫黄-リン系極圧剤、ジチオリン酸亜鉛化合物から選ばれる少なくとも一種を組合せて配合することによって、モリブデン化合物を含まない配合組成において、高耐荷重能、低摩擦係数の望ましい潤滑特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る潤滑剤組成物は、基油と、増ちょう剤とを含むベースグリースに、リグニン化合物と、硫黄−リン系極圧剤及び/又はジチオリン酸亜鉛化合物とを含有してなり、リグニン化合物は、リグニンスルホン酸ナトリウム、ソーダリグニン、クラフトリグニン、及びリグノフェノール誘導体から選ばれる1種類以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る潤滑剤組成物は、全組成中におけるリグニン化合物の含有量は、1.0〜30.0質量%であることが好ましい。
本発明に係る潤滑剤組成物は、等速ジョイント、軸受、建設機械に適用することができる。
本発明に係る潤滑剤組成物によれば、有害成分のモリブデン化合物を含有せず、等速ジョイント機構、建機用駆動装置等の建設機械及び軸受を効率よく潤滑し、また有効に摩擦を低減して、焼付きを顕著に防止し、機構部分の長寿命化を可能にすることができる。
以下、本発明に係る潤滑剤組成物の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において変更が可能である。
<1.潤滑剤組成物の構成>
本実施の形態に係る潤滑剤組成物は、基油と増ちょう剤とを含むベースグリース(基グリース)に、リグニン化合物を必須成分として配合され、さらに硫黄−リン系極圧剤及び/又はジチオリン酸亜鉛化合物が配合される。
(基油)
基油(ベースオイル)は、グリースの主成分をなすものであり、後述する増ちょう剤と共にベースグリース(基グリース)を構成する。この基油としては、特に限定されるものではなく従来から一般的に使用されているものを用いることができ、鉱物油、エーテル油系合成油、エステル系合成油、及び炭化水素合成油等の潤滑油、並びにそれらの合成油が挙げられる。その中でも、コストの観点から、鉱物油を用いることが好ましく、また鉱物油を主成分としてこれに合成油を混合した基油を用いることが好ましい。
基油の100℃における動粘度は、好ましくは5〜30mm/sであり、より好ましくは7〜20mm/sである。動粘度が5mm/s未満では、等速ジョイント内で油膜を形成せず高速耐久性が不十分となる傾向があり、一方で30mm/sを超えると、粘性抵抗による等速ジョイント内の発熱のため高速耐久性が低下する傾向がある。
基油の含有量としては、特に限定されず、ベースグリースを構成する後述の増ちょう剤との配合割合を考慮して決定することができる。具体的には、例えば、潤滑剤組成物の全組成中において49.0〜97.5質量%程度の割合で含有させることができる。
なお、ベースグリースにおける基油と後述の増ちょう剤との配合割合は、特に限定されるものではなく、所望の潤滑剤組成物の硬度を得るために任意に定めることができる。例えば、潤滑剤組成物の硬度を硬くするためには基油の割合を少なくし、一方で柔らかくするためには基油の割合を多くすることで調整することができる。
(増ちょう剤)
増ちょう剤は、油を保持するために必要な素材であり、基油と共にベースグリースを構成する。この増ちょう剤としては、特に限定されるものではなく従来から一般的に使用されているものを用いることができる。増ちょう剤としては、石鹸系と非石鹸系とに大別できる。石鹸系としては、例えばリチウム石鹸、リチウム複合石鹸、カルシウム石鹸、カルシウム複合石鹸、アルミニウム石鹸、アルミニウム複合石鹸が挙げられる。非石鹸系としては、例えばウレア、ナトリウムテレフタラート、フッ素樹脂、有機ベントナイト、シリカゲル等が挙げられる。これらの増ちょう剤は、1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。なお、増ちょう剤として、具体的な一例としては、リチウム−12−ヒドキシステアレート/アゼライン酸複合体リチウム石鹸を挙げることができる。
増ちょう剤の含有量としては、特に限定されず、ベースグリースを構成する上述の増ちょう剤との配合割合を考慮して決定することができるが、例えば潤滑剤組成物の全組成中において1.0〜25.0質量%の割合で含有させることが好ましい。含有量が1.0質量%未満であると、増ちょう効果が少なく、グリース化し難くなり、一方で25.0質量%を超えると、得られた組成物が硬くなりすぎ、所期の効果が得られなくなる場合がある。
(リグニン化合物)
リグニン化合物は、リグノセルロース系材料を原料として、これからセルロース、ヘミセルロース及び抽出成分を除去した後の残渣分等の形態で得られる高分子化合物である。具体的には、リグニンスルホン酸金属塩、ソーダリグニン、クラフトリグニン、及びリグノフェノール誘導体から選択される1種以上を用いることができる。
なお、リグニンを含有するリグノセルロース材料としては、木粉、木材チップ、大鋸屑、廃材、端材、樹皮、グランドパルプ(GP)等の樹木系木質材料、稲わら、麦わら、籾殻、椰子殻、ビートパルプ、バガス、竹等の各種植物材料が挙げられる。
このように、本実施の形態に係るリグニン化合物は、ベースグリースにリグニン化合物を含有させることによって、リグニン化合物の極性基が金属表面に吸着し、極圧状態を緩和させるように作用すると思われる。これにより、本実施の形態に係る潤滑剤組成物では、従来の極圧剤や固体潤滑剤を添加したグリースと同等以上に、高い耐荷重性能を有し、優れた潤滑性能を発揮するようになる。
また、このようなリグニン化合物は、樹木系植物や草本系植物等のいずれの植物からも誘導可能な環境調和型高分子であるため、原料としての供給安定性も高く、低コストで優れた潤滑性能を発揮する潤滑剤組成物とすることができる。更に、樹木系植物や草本系植物等のリグニン化合物は、当然の如く、植物資源を活用するものであるため、資源の有効活用としての社会的な意義は大きく、資源循環型社会の形成に大きく寄与する。
ここで、リグニンスルホン酸金属塩は、木粉等の天然リグニンを含有する原料(リグニン含有原料)に対して亜硫酸塩や亜硫酸水素塩の溶液を用いて高温で蒸解(亜硫酸法)することで得られる工業リグニンである。リグニンスルホン酸金属塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩等を使用することが可能であり、耐荷重性能をより効果的に発現させることができるという観点から、ナトリウム塩を使用することが好ましい。リグニンスルホン酸金属塩の分子量としては、特に限定されないが、例えば平均分子量が2,000〜200,000程度のものを用いることができる。
ソーダリグニンは、草本系植物等のリグニン含有材料から、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液のみを用いた高温高圧処理(ソーダ蒸解法)により誘導されるリグニン化合物である。ソーダリグニンの分子量としては、特に限定されないが、例えば平均分子量が1,000〜100,000程度のものを用いることができる。
クラフトリグニンは、樹木系(木質系)植物等のリグニン含有材料から、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液及び硫化ナトリウムを用いた高温高圧処理(クラフト蒸解)により誘導されるリグニン化合物である。クラフトリグニンの分子量としては、特に限定されないが、例えば平均分子量が1,000〜100,000程度のものを用いることができる。
リグノフェノール誘導体は、針葉樹、広葉樹の間伐材、草本系植物等のリグニン含有材料にフェノール誘導体を反応させることによって、リグニン含有材料中の天然リグニンの一次分子鎖にフェノール誘導体をグラフト化させることによって得られる。より具体的には、リグニン含有材料にフェノール誘導体を添加した後、濃酸を添加して得られるフェノール誘導体相(有機相)と濃酸相(水相)とからなる相分離系のうちのフェノール誘導体相から得られるものである。フェノール誘導体としては、フェノール性のOH基を有し、少なくとも1つの無置換のオルト位又はパラ位を有する化合物であり、1価フェノール誘導体、2価フェノール誘導体、又は3価フェノール誘導体を用いることができる。リグノフェノール誘導体の分子量としては、特に限定されないが、平均分子量が2,000〜20,000程度のものを用いることができる。
上述したリグニン化合物のうち、リグニンスルホン酸金属塩、ソーダリグニン、及びクラフトリグニンの工業リグニンは、市販されているグレードのものを用いることができる。また、リグノフェノール誘導体としては、耐荷重性能をより効果的に発現させることができるという観点から、針葉樹由来のリグノフェノール誘導体であることを好ましい。
リグニン化合物の含有量としては、特に限定されないが、潤滑剤組成物の全組成中において1.0〜30.0質量%の割合で含有させることが好ましく、3.0〜25.0質量%の割合がより好ましい。リグニン化合物の含有量が1.0質量%未満であると、所期の効果を得ることが困難になり、一方で30.0質量%を超えて含有させても、効果の増大がない場合がある。
(硫黄−リン系極圧剤)
硫黄−リン系極圧剤は、摩耗防止性能や焼付防止性能を向上させるために添加する。硫黄−リン系極圧剤は、リン原子及び硫黄原子を有する化合物であり、分子中にリン原子及び硫黄原子の双方を有するチオフォスフェート類、チオフォスファイト類等が挙げられる。また、例えば、硫黄系極圧剤とリン系極圧剤とを所定の比率で混合したものを用いることもできる。
硫黄−リン系極圧剤の含有量としては、特に限定されないが、潤滑剤組成物の全組成中において0.1〜3.0質量%の割合で含有させることが好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、所期の効果を得ることが困難になり、一方で3.0質量%を超えて含有させても、効果の増大がない場合があるので、上記範囲内にすることが望ましい。
(ジチオリン酸亜鉛化合物)
ジチオリン酸亜鉛化合物は、硫黄−リン系極圧剤と同様に摩耗防止性能や焼付防止性能を向上させるために添加する。このジチオリン酸亜鉛化合物としては、特に限定されるものではないが、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
ジチオリン酸亜鉛化合物の含有量としては、特に限定されないが、潤滑剤組成物の全組成中において0.1〜4.5質量%の割合で含有させることが好ましい。ジチオリン酸亜鉛化合物の含有量が0.1質量%未満であると、所期の効果を得ることが困難になり、4.5質量%を超えて含有させても効果の増大がない場合があるので、上記範囲内とすることが望ましい。
潤滑剤組成物では、使用する用途などにより、硫黄−リン系極圧剤、ジチオリン酸亜鉛化合物を単独又は組み合わせて使用することができる。本実施の形態に係る潤滑剤組成物では、前述したリグニン化合物を必須成分とし、硫黄-リン系極圧剤及び/またはジチオリン酸亜鉛化合物をさらに組み合わせてベースグリースに含有させることによって、優れた耐荷重性能を発揮するとともに、有効に摩擦を低減することができ、焼付きを顕著に防止することができる。特に、優れた振動特性が求められる等速ジョイント、軸受、建設機械に対して好適に用いることができる。
(その他の添加剤)
潤滑剤組成物では、上述した各成分に加え、更に、潤滑油やグリースに一般的に用いられている各種添加剤、例えば極圧剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、防錆剤、ポリマー添加剤等を必要に応じて添加配合することができる。また、上述した成分以外の摩擦調整剤、耐摩耗剤、及び固体潤滑剤等の添加剤を更に添加することもできる。これらの添加剤をさらに含有させる場合、その含有量としては、潤滑剤組成物の全量中において、0.1〜10.0質量%程度の割合で含有させることが好ましい。
なお、上述した他の添加剤は、基油と、増ちょう剤と共に、ベースグリースを構成する成分として添加してもよいことは言うまでもない。
以上のように、本実施の形態に係る潤滑剤組成物は、基油と、増ちょう剤とを含むベースグリースに、リグニン化合物を必須成分として含有し、さらに硫黄−リン系極圧剤及び/又はジチオリン酸亜鉛化合物を含有してなる。このような潤滑剤組成物によれば、高い耐荷重性能を発揮するとともに、有効に摩擦を低減して、焼付きを顕著に防止することができ、機構部分の長寿命化を図ることができる。特に、この潤滑剤組成物によれば、当該潤滑剤組成物を封入した機構に対して優れた振動特性を付与することができ、等速ジョイント用、軸受用、建設機械用として極めて有効に用いることができる。
<潤滑剤組成物の製造方法>
本実施の形態に係る潤滑剤組成物は、上述したように、基油と増ちょう剤とを含むベースグリースに、少なくともリグニン化合物を必須成分として含有し、さらに硫黄―リン系極圧剤及び/又はジチオリン酸亜鉛化合物を含有してなる。この潤滑剤組成物は、従来の潤滑剤組成物と同様に、周知の方法により製造することができる。
具体的には、例えば、基油と、金属石鹸等の増ちょう剤とを混練してベースグリースを作製し、このベースグリースに、リグニン化合物を添加し、さらに硫黄―リン系極圧剤及び/又はジチオリン酸亜鉛化合物を添加して分散させ、さらに必要に応じて各種の添加剤を加えて混練することにより得ることができる。
上述した成分のリグニン化合物、硫黄―リン系極圧剤、ジチオリン酸亜鉛化合物をベースグリースに添加して分散させるに際しては、例えば、適当な有機溶剤に溶解させた溶液として添加することもできる。
また、混練処理においては、例えば三本ロール、万能撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル等の周知の撹拌・分散処理装置を用いて行うことができる。なお、上述のように各成分を順に添加して混練することに限られず、各成分を同時に添加し混練してもよい。
以下に本発明の潤滑剤組成物についての実施例により更に詳細に説明するが、本発明の潤滑剤組成物は下記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
<実施例1〜4>
実施例1〜4では、耐熱容器に、基油及び12−ヒドロキシステアリン酸を投入し加熱した。次に、80℃付近で水酸化リチウム水溶液を添加し、けん化反応によりリチウム−12−ヒドキシステアレートを生成させた。さらに、90℃付近で水酸化リチウム水溶液及びアゼライン酸を加えて約2時間反応させ、リチウムコンプレックス石鹸を生成させた。その後、これを加熱し、急冷を行い、リチウム−12−ヒドキシステアレート/アゼライン酸複合体リチウム石鹸を得た。その基グリースに基油を加え、80〜90℃に加熱混合後、増ちょう剤量のカルシウムスルホネート(スルホールCa−45N、株式会社MORESCO製)を添加・混合し、ちょう度がNLGI No.1(JIS規格に定められた稠度)程度になるように、三本ロールを用いて分散処理したものをベースグリースとした。
なお、グリースの基油としては、以下の特性を有する鉱油及び合成油のハイブリッド油を使用した。
粘度 : 40℃ 154.7 mm/s
100℃ 16.34 mm/s
さらに、下記表1に示す配合の残りの添加剤を添加し、得られる混合物に対して三本ロールを用いて分散処理を行った。
なお、表1中に示す各成分は以下の通りであり、表中の数字は質量%を示す。
「リグニン化合物」:リグニンスルホン酸ナトリウム塩((商品名)Lignosulfonic acid sodium salt、シグマアルドリッチジャパン株式会社製)
「硫黄−リン系極圧剤」:(商品名)LZ810、日本ルーブリゾール株式会社製
「ジチオリン酸亜鉛化合物」:(商品名)HiTEC7197、アフトンケミカル・
ジャパン株式会社製
<比較例1〜2>
比較例1及び比較例2では、市販のCVJインボード用グリース(市販品(1))及び市販の二硫化モリブデン含有グリース(市販品(2))を用いた。
<評価方法>
上述した実施例1〜4、比較例1〜2の市販品グリースにつき、以下に示す試験方法で物性の評価を行った。
(SRV試験)
テストピース ボール :直径10.0mm(SUJ2)
プレート:直径24mm×7.85mm(SUJ2)
試験条件 荷重 :500N
周波数 :15Hz
振幅 :1.5mm
時間 :10分
試験温度:25℃
測定項目 摩擦係数(μ、試験時間5分時の摩擦係数)
判定基準 ○:0.12以下
△:0.12より大きく0.14以下
×:0.14より大きい
(耐荷重性試験)
耐荷重性試験としては、ASTM D 2596により規定された方法によりシェル式四球試験を実施し、融着荷重(WL、N)を測定した。
判定基準 ○:3,089N以上
△:1,961N以上3,089N未満
×:1,961N未満
<結果>
下記表1に、実施例1〜4にて調製したモリブデンフリー潤滑剤組成物の組成と、物性評価の結果を示す。また、下記表2に、比較例1〜2で説明したモリブデン化合物含有グリース(市販品(1)及び(2))における物性評価の結果を示す。
表1〜4に示される結果から分かるように、本発明で規定した成分の構成である実施例1〜4の潤滑剤組成物は、比較例1及び2の市販品と比較して、著しい摩擦係数低減効果、並びに耐荷重性能の向上効果を示すことが分かる。

Claims (3)

  1. 基油と、増ちょう剤とを含むベースグリースに、
    リグニン化合物と、硫黄−リン系極圧剤及び/又はジチオリン酸亜鉛化合物とを含有してなることを特徴とする潤滑剤組成物であって、
    上記リグニン化合物は、リグニンスルホン酸ナトリウム、ソーダリグニン、クラフトリグニン、及びリグノフェノール誘導体から選ばれる1種類以上であることを特徴とする潤滑剤組成物
  2. 全組成中における上記リグニン化合物の含有量は、1.0〜30.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤組成物。
  3. 等速ジョイント、軸受、建設機械に用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の潤滑剤組成物。
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