以下、添付図面を参照しながら、本発明にかかるインクジェット記録装置の実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のインクジェット記録装置1の構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、ガイドロット2と、主走査モータ3と、プーリ4と、エンコーダシート5と、主走査エンコーダセンサ6と、副走査モータ7と、キャリッジ8と、記録ヘッド9と、ノズル10とを、備える。
キャリッジ8は、ガイドロット2で保持されており、主走査モータ3との間に渡されたプーリ4を介して主走査方向に走査する。またキャリッジ8は、インク滴を吐出する複数のノズル10が配列された(を有する)記録ヘッド9を搭載している。キャリッジ8は、色毎に記録ヘッド9を搭載しており、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びブラック(K)の4色を用いるのであれば、各色の記録ヘッド9を搭載する。
これにより、キャリッジ8は、主走査方向に移動しながら必要な位置で記録ヘッド9(ノズル10)からインク滴を吐出する(以下、「画像形成動作」と称する)ことによって、印刷紙などの記録媒体上に画像を形成する。なお、キャリッジ8の位置を示す位置情報は、キャリッジ8に固定された主走査エンコーダセンサ6が、インクジェット記録装置1の筐体に固定されたエンコーダシート5に等間隔で記録されたパターンを移動しながら読み取ってカウントすることで、得られる。
インクジェット記録装置1では、キャリッジ8が、上記のような画像形成動作を行うことで、記録媒体に対してノズル列の長さと同じ幅のバンド分の画像を形成する。そしてインクジェット記録装置1は、1バンド分の画像形成が終了したら、副走査モータ7を駆動して記録媒体を副走査方向に移動させ、キャリッジ8に1バンド分の画像形成動作を再度行わせることを繰り返すことにより、記録媒体に1ページ分の画像を形成する。
図2は、第1実施形態のインクジェット記録装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、インクジェット記録装置1は、主走査モータ3と、副走査モータ7と、キャリッジ8と、副走査エンコーダセンサ11と、ROM(Read Only Memory)20と、CPU(Central Processing Unit)30(主制御装置の一例)と、ホストI/F50と、RAM(Random Access Memory)60と、記録ヘッド制御部100と、主走査制御部300と、副走査制御部400とを、備える。またキャリッジ8は、主走査エンコーダセンサ6と、記録ヘッド9Y、9C、9M、9Kと、記録ヘッド駆動部200Y、200C、200M、200K(駆動部の一例)とを、備える。
なお、以下の説明では、記録ヘッド9Y、9C、9M、9Kを各々区別する必要がない場合は、単に記録ヘッド9と称する場合があり、記録ヘッド駆動部200Y、200C、200M、200Kを各々区別する必要がない場合は、単に記録ヘッド駆動部200と称する場合がある。
ROM20は、インクジェット記録装置1のハードウェア制御を行うファームウェアプログラムや記録ヘッド9Y、9C、9M、9Kの駆動に用いられる共通駆動波形データ及びマスクパターンデータなどを予め記憶している。
CPU30は、ホストPC(Personal Computer)40からホストI/F50を介して画像データ(印刷ジョブ)を受信すると、受信した画像データをRAM60に格納する。
主走査制御部300は、CPU30からの指示に基づいて、キャリッジ8を主走査方向に移動する。副走査制御部400は、CPU30からの指示に基づいて、記録媒体を副走査方向に移動する。主走査制御部300による主走査方向でのキャリッジ8の移動制御及び副走査制御部400による副走査方向での記録媒体の移動制御により、キャリッジ8を記録媒体上の任意の位置に移動できる。
記録ヘッド制御部100は、主走査エンコーダセンサ6から得られるキャリッジの位置情報に連動し、RAM60に格納された画像データ、並びにROM20に予め記憶されている共通駆動波形データに基づく共通駆動波形及びマスクパターンデータに基づくマスクパターンを、記録ヘッド駆動部200Y、200C、200M、及び200Kに転送する。
記録ヘッド駆動部200は、記録ヘッド制御部100により転送された画像データ、共通駆動波形、及びマスクパターンに基づいて、記録ヘッド9(記録ヘッド9に配された複数のノズル10)を駆動し、複数のノズル10にインク滴を吐出させる。
なお、記録ヘッド駆動部200Yは、記録ヘッド9Yを駆動してイエローのインク滴を吐出させ、記録ヘッド駆動部200Cは、記録ヘッド9Cを駆動してシアンのインク滴を吐出させ、記録ヘッド駆動部200Mは、記録ヘッド9Mを駆動してマゼンタのインク滴を吐出させ、記録ヘッド駆動部200Kは、記録ヘッド9Kを駆動してブラックのインク滴を吐出させる。
図3は、第1実施形態の記録ヘッド制御部100及び記録ヘッド駆動部200の回路構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、記録ヘッド制御部100は、カウント部101と、画像データ転送部103と、マスクパターン転送部105と、共通駆動波形転送部107と、レジスタ109とを、備える。記録ヘッド駆動部200は、画像データシフトレジスタ201と、画像データラッチ部203と、マスクパターンシフトレジスタ205と、マスクパターンラッチ部207と、階調デコーダ209と、レベルシフタ211と、アナログスイッチ213とを、備える。
まず、共通駆動波形転送部107が記録ヘッド駆動部200に転送する共通駆動波形Vcom、マスクパターン転送部105が記録ヘッド駆動部200に転送するマスクパターンMN[7:0](図3では、図示省略)、及び画像データ転送部103が記録ヘッド駆動部200に転送する画像データSD[2:0]について説明する。
共通駆動波形Vcomは、微駆動パルスを少なくとも含むパルスで構成される。具体的には、共通駆動波形Vcomは、微駆動パルス及び1以上の吐出駆動パルスの組合せで構成される。微駆動パルスは、ノズル10を微駆動させるためのパルスであり、吐出駆動パルスは、ノズル10にインク吐出用の駆動を行わせるためのパルスである。
図4は、第1実施形態の共通駆動波形Vcomの一例を示す図である。共通駆動波形Vcomは、第1駆動パルス〜第4駆動パルスの組合せで構成されている。第1駆動パルスは、微駆動パルスであり、第2駆動パルス〜第4駆動パルスは、吐出駆動パルスである。
マスクパターンMN[7:0]は、共通駆動波形Vcomの少なくとも一部のパルスをマスクさせるマスクパターンであり、1以上の吐出駆動パルスをマスクさせる第1マスクパターン、微駆動パルスと1以上の吐出駆動パルスとをマスクさせる第2マスクパターン、及び微駆動パルスをマスクさせるとともに1以上の吐出駆動パルスの少なくともいずれかをマスクさせない第3マスクパターンなどが挙げられる。
図5は、第1実施形態のマスクパターンMN[7:0]の一例を示す図である。マスクパターンMN[0]は、図4に示す共通駆動波形Vcomの第2駆動パルス〜第4駆動パルスをマスクさせる第1マスクパターンであり、ノズル10を微駆動させるためのマスクパターンである。
マスクパターンMN[1]は、図4に示す共通駆動波形Vcomの第1駆動パルス〜第3駆動パルスをマスクさせる第3マスクパターンであり、ノズル10に小滴のインク吐出用の駆動を行わせるためのマスクパターンである。なお、マスクパターンMN[5]もマスクパターンMN[1]と同様である。
マスクパターンMN[2]は、図4に示す共通駆動波形Vcomの第1駆動パルス〜第2駆動パルスをマスクさせる第3マスクパターンであり、ノズル10に中滴のインク吐出用の駆動を行わせるためのマスクパターンである。なお、マスクパターンMN[6]もマスクパターンMN[2]と同様である。
マスクパターンMN[3]は、図4に示す共通駆動波形Vcomの第1駆動パルスをマスクさせる第3マスクパターンであり、ノズル10に大滴のインク吐出用の駆動を行わせるためのマスクパターンである。なお、マスクパターンMN[7]もマスクパターンMN[2]と同様である。
マスクパターンMN[4]は、図4に示す共通駆動波形Vcomの第1駆動パルス〜第4駆動パルスをマスクさせる第2マスクパターンであり、ノズル10を駆動させないためのマスクパターンである。
画像データSD[2:0]は、記録ヘッド9が有する複数のノズル10それぞれに吐出させるインク滴の有無を少なくとも示す第1情報と、第1情報が無を示す場合に微駆動パルスをマスクさせるか否かを示す第2情報と、を含む。第2情報は、具体的には、第1情報が無を示す場合に第1マスクパターンで共通駆動波形Vcomをマスクさせるか、第1情報が無を示す場合に第2マスクパターンで共通駆動波形Vcomをマスクさせるかを示す。
図6は、第1実施形態の画像データSD[2:0]の一例を示す図である。図6に示す例では、画像データSD[1:0]が第1情報に該当し、画像データSD[2]が第2情報に該当する。
画像データSD[1:0]は、RAM60に格納された画像データの一部である2bitのシリアルデータ(例えば、画素情報)であり、値が“00”の場合インク滴無を示し、値が“01”の場合インク滴有(小滴)を示し、値が“10”の場合インク滴有(中滴)を示し、値が“11”の場合インク滴有(大滴)を示す。
画像データSD[2]は、画像データ転送部103が生成する1bitのシリアルデータであり、値が“0”であれば、画像データSD[1:0]の値が“00”の場合に第1マスクパターンで共通駆動波形Vcomをマスクさせることを示し、値が“1”であれば、画像データSD[1:0]の値が“00”の場合に第2マスクパターンで共通駆動波形Vcomをマスクさせることを示す。なお、画像データSD[2]の生成については、後述する。
このため、画像データSD[2:0]=000の場合、マスクパターンMN[0]が採用され、画像データSD[2:0]=001の場合、マスクパターンMN[1]が採用され、画像データSD[2:0]=010の場合、マスクパターンMN[2]が採用され、画像データSD[2:0]=011の場合、マスクパターンMN[3]が採用され、画像データSD[2:0]=100の場合、マスクパターンMN[4]が採用され、画像データSD[2:0]=101の場合、マスクパターンMN[5]が採用され、画像データSD[2:0]=110の場合、マスクパターンMN[6]が採用され、画像データSD[2:0]=111の場合、マスクパターンMN[7]が採用される。
次に、図3、図7及び図8を参照しながら、第1実施形態の記録ヘッド制御部100及び記録ヘッド駆動部200の動作について説明する。図7は、第1実施形態の記録ヘッド制御部100から記録ヘッド駆動部200へ転送される画像データSD[2:0]及び共通駆動波形Vcomのタイミングチャートの一例を示す図であり、図8は、第1実施形態の記録ヘッド制御部100から記録ヘッド駆動部200へ転送されるマスクパターンMN[7:0]のタイミングチャートの一例を示す図である。
カウント部101は、微駆動パルスをマスクしない非マスク周期をカウントする。非マスク周期は、ノズル面が不吐出にならないよう維持するためにノズル10を微駆動させることが必要な微駆動周期である。具体的には、カウント部101は、非マスク周期が開始する毎に、所定値までカウントを行うことで非マスク周期をカウントする。所定値は、カウント部101がカウントアップで非マスク周期をカウントするのであれば、上限値(非マスク周期の上限値)であり、カウント部101がカウントダウンで非マスク周期をカウントするのであれば、下限値である。
非マスク周期が開始することのトリガには、記録ヘッド制御部100内で記録周期毎に発生する駆動開始信号を用いることができる。記録周期は、ノズル10にインクを吐出させるために必要な周期である。但し、記録周期は、非マスク周期よりも短い周期であるため、カウント部101は、最初の駆動開始信号をトリガに非マスク周期のカウントを開始した以後は、非マスク周期のカウント後に発生する駆動開始信号をトリガに非マスク周期のカウントを開始すればよい。なお第1実施形態では、非マスク周期は記録周期のn(nは2以上の自然数)倍であるものとするが、これに限定されるものではない。
所定値は、レジスタ109に記憶されており、CPU30により値が変更可能となっている。このため第1実施形態では、非マスク周期を任意に設定することができる。但し、前述の通り、第1実施形態では、非マスク周期を記録周期のn倍としているため、この条件内で非マスク周期を任意に設定することができる。
なお、CPU30は、ユーザ操作に基づいて、所定値の値を変更してもよいし、インクジェット記録装置1の印刷モードに基づいて、所定値の値を変更してもよいし、温湿度などインクジェット記録装置1の周辺環境に基づいて、所定値の値を変更してもよい。印刷モードに基づいて所定値の値を変更する場合、印刷モードと所定値の値とを対応付けたテーブルをROM20等に予め記憶しておき、CPU30は、このテーブルを用いて所定値の値を変更すればよい。温湿度に基づいて所定値の値を変更する場合、温度及び湿度の少なくともいずれかと所定値の値とを対応付けたテーブルをROM20等に予め記憶しておいたり、温度及び湿度の少なくともいずれかから所定値の値を導出する数式をCPU30が実行するプログラムに定義しておいたりしておき、CPU30は、このテーブルや数式を用いて所定値の値を変更すればよい。
画像データ転送部103は、第1情報と第2情報とを含む画像データを、記録ヘッド駆動部200の画像データシフトレジスタ201に転送する。
具体的には、画像データ転送部103は、駆動開始信号が発生すると、記録ヘッド9に配されたノズル10の数分(詳細には、ノズル10のアクチュエータ数分)の画像データSD[1:0]を、RAM60に格納された画像データから取得するとともに、画像データSD[2]を生成する。ここで、画像データ転送部103は、カウント部101により所定値までカウントがされていれば、値が“0”の画像データSD[2]を生成し、カウント部101により所定値までカウントがされていなければ、値が“1”の画像データSD[2]を生成する。そして画像データ転送部103は、ノズル10の数分の画像データSD[1:0]及び生成した画像データSD[2]を、画像データ転送クロックSCKに基づいて、画像データシフトレジスタ201に転送する(図8のt1参照)。
画像データSD[2:0]の転送が完了すると、画像データ転送部103は、記録ヘッド駆動部200の画像データラッチ部203に画像データラッチ信号SLnを出力し、画像データシフトレジスタ201に転送した画像データSD[2:0]を画像データラッチ部203に記憶させる(図7のt2参照)。
画像データSD[2:0]のラッチが完了すると、共通駆動波形転送部107は、共通駆動波形Vcomを、記録ヘッド駆動部200のアナログスイッチ213に転送する。具体的には、共通駆動波形転送部107は、ROM20から共通駆動波形データを取得し、取得した共通駆動波形データに基づく共通駆動波形Vcomをアナログスイッチ213に転送する(図7のt3参照)。
この際、マスクパターン転送部105は、共通駆動波形Vcomの転送タイミングに合わせてマスクパターンMN[7:0]を記録ヘッド駆動部200のマスクパターンシフトレジスタ205に転送する。具体的には、マスクパターン転送部105は、マスクパターンMN[7]〜MN[0]それぞれをマスクパターンシリアル転送データMDに設定し、マスクパターンシリアル転送クロックMCKに基づいて、マスクパターンシフトレジスタ205に転送する(図8参照)。
マスクパターンシリアル転送データMDの転送が完了すると、マスクパターン転送部105は、記録ヘッド駆動部200のマスクパターンラッチ部207にマスクパターンシリアル転送ラッチ信号MLnを出力し、マスクパターンシフトレジスタ205に転送したマスクパターンシリアル転送データMDをマスクパターンMN[7:0]としてマスクパターンラッチ部207に記憶させる(図8参照)。
記録ヘッド駆動部200の階調デコーダ209及びレベルシフタ211は、画像データラッチ部203に記憶されたノズル10の数分の画像データSD[2:0]それぞれと、マスクパターンラッチ部207に記憶されたマスクパターンMN[7:0]のうち画像データSD[2:0]に該当するマスクパターンMNとの論理演算を行う。そして記録ヘッド駆動部200のアナログスイッチ213は、論理演算結果に基づいて開閉を行って共通駆動波形Vcomを出力することにより、ノズル10(アクチュエータ)毎の個別駆動波形VoutN(Nは、該当ノズルを示す値)が記録ヘッド9の各ノズル10に出力され、各ノズル10で個別駆動波形VoutNに基づく駆動が行われる。
つまり、記録ヘッド駆動部200は、ノズル毎に、転送された共通駆動波形Vcom及び画像データSD[2:0]に基づいて個別駆動波形VoutNを生成する。
そして記録ヘッド駆動部200は、個別駆動波形VoutNが、微駆動パルスをマスクしなかったことに基づく微駆動波形の場合、当該微駆動波形に基づいて該当ノズルを微駆動させ、当該個別駆動波形が、微駆動パルスをマスクしたことに基づく無駆動波形の場合、該当ノズルを駆動させない。
具体的には、記録ヘッド駆動部200は、画像データSD[2:0]=000の場合、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[0]でマスクし、個別駆動波形VoutNとして微駆動波形を生成する。
また記録ヘッド駆動部200は、画像データSD[2:0]=100の場合、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[4]でマスクし、個別駆動波形VoutNとして無駆動波形を生成する。
また記録ヘッド駆動部200は、画像データSD[1:0]=00でない場合、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[1]〜MN[3]、MN[5]〜MN[7]のいずれかでマスクし、個別駆動波形VoutNとして吐出駆動波形を生成し、当該吐出駆動波形に基づいて該当ノズルを吐出駆動させる。
なお、記録ヘッド駆動部200は、画像データSD[1:0]=01の場合、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[1]又はMN[5]でマスクし、画像データSD[1:0]=10の場合、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[2]又はMN[6]でマスクし、画像データSD[1:0]=11の場合、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[3]又はMN[7]でマスクする。
図9は、第1実施形態の個別駆動波形VoutNの一例を示す図であり、微駆動波形、無駆動波形、吐出駆動波形(小滴)、吐出駆動波形(中滴)、及び吐出駆動波形(大滴)を示している。
微駆動波形は、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[0]でマスクした個別駆動波形VoutNであり、第1駆動パルス(図4参照)で構成されている。このため、微駆動波形をノズル10に出力することにより、ノズル10を微駆動させることができる。
無駆動波形は、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[4]でマスクした個別駆動波形VoutNであり、中間電位のみ印加する波形で構成されている。このため、無駆動波形をノズル10に出力することにより、ノズル10を駆動させないことができる。
吐出駆動波形(小滴)は、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[1]又はMN[5]でマスクした個別駆動波形VoutNであり、第4駆動パルス(図4参照)で構成されている。このため、吐出駆動波形(小滴)をノズル10に出力することにより、ノズル10に小滴分のインク吐出用の駆動を行わせることができる。
吐出駆動波形(中滴)は、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[2]又はMN[6]でマスクした個別駆動波形VoutNであり、第3駆動パルス及び第4駆動パルス(図4参照)で構成されている。このため、吐出駆動波形(中滴)をノズル10に出力することにより、ノズル10に中滴分のインク吐出用の駆動を行わせることができる。
吐出駆動波形(大滴)は、共通駆動波形VcomをマスクパターンMN[3]又はMN[7]でマスクした個別駆動波形VoutNであり、第2駆動パルス〜第4駆動パルス(図4参照)で構成されている。このため、吐出駆動波形(大滴)をノズル10に出力することにより、ノズル10に大滴分のインク吐出用の駆動を行わせることができる。
図10は、第1実施形態のノズル10の微駆動のタイミングチャートの一例を示す図である。なお図10に示す例では、微駆動周期(非マスク周期)は、記録周期の4倍であり、最初と5番目の記録周期で画像データSD[2]=0となり、それ以外の記録周期で画像データSD[2]=1となっている。つまり、記録周期の4回に1回、SD[2]=0となり、それ以外では、SD[2]=1となっている。
ノズルaでは、全ての記録周期で画像データSD[1:0]=00であるものとする。このため、ノズルaは、画像データSD[2]=0の場合(最初と5番目の記録周期の場合)、微駆動波形に基づいて微駆動し(微駆動on)、画像データSD[2]=1の場合(2〜4、及び6番目の記録周期の場合)、無駆動波形に基づいて駆動していない(微駆動off)。
ノズルbでは、最初と4番目の記録周期で画像データSD[1:0]≠00であり、それ以外の記録周期で画像データSD[1:0]=00であるものとする。このため、ノズルbは、画像データSD[1:0]≠00の場合(最初と4番目の記録周期の場合)、吐出駆動波形に基づいてインク吐出用の駆動を行い(吐出)、画像データSD[2]=0かつ画像データSD[1:0]=00の場合(5番目の記録周期の場合)、微駆動波形に基づいて微駆動し(微駆動on)、画像データSD[2]=1かつ画像データSD[1:0]=00の場合(2、3、及び6番目の記録周期の場合)、無駆動波形に基づいて駆動していない(微駆動off)。
図10に示す例では、ノズルの無駆動期間が微駆動周期よりも長くなることがなく、微駆動周期毎に、インク吐出用の駆動又は微駆動が少なくとも1回行われているため、不要なノズルの微駆動を削減しつつ、ノズル面が不吐出にならないよう維持することができる。
以上のように第1実施形態では、第1情報が無を示す場合に微駆動パルスをマスクさせるか否かを示す第2情報を、画像データの一部として記録ヘッド制御部から記録ヘッド駆動部へ転送する。このため第1実施形態によれば、第2情報についても記録ヘッド駆動部の回路規模を増大させずに処理し、不要なノズルの微駆動を削減できるので、記録ヘッド駆動部の回路規模の増大を抑えつつ、消費電力及び発熱を低減させることができるという効果を奏する。
詳細には、記録ヘッド駆動部は、元々、3bit分の画像データSD[2:0]に対応可能であるが、従来は、画像データSD[2]を使用していなかったため、第1実施形態では、この使用していなかった画像データSD[2]を第2情報用に使用した。このため、第1実施形態によれば、上述の効果を奏する。なお、第2情報は、記録ヘッドに配された全ノズルに共通の情報であるため、画像データSD[2]のデータ容量(1bit)で足りる。
なお、第1実施形態のように、記録ヘッド制御部が第2情報を生成するのではなく、第2情報を付加しておいた画像データ(詳細には、画素情報毎に第2情報を付加した画像データ)をホストPCからインクジェット記録装置が受信するという手法も考えられるが、この手法の場合、画像データのデータ量の増大を招いてしまうため、第1実施形態によれば、画像データのデータ量の増加を抑えることもできる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、記録ヘッドの主走査位置に応じた値に基づいて第2情報を生成する例について説明する。以下では、第1実施形態との相違点の説明を主に行い、第1実施形態と同様の機能を有する構成要素については、第1実施形態と同様の名称・符号を付し、その説明を省略する。
図11は、第2実施形態のインクジェット記録装置1001の記録ヘッド制御部1100及び記録ヘッド駆動部200の回路構成の一例を示すブロック図である。図11に示すように、第2実施形態では、記録ヘッド制御部1100の画像データ転送部1103及びレジスタ1109が第1実施形態と相違する。
主走査制御部300は、前述したように、キャリッジ8(記録ヘッド9)の主走査方向の移動を制御する。そして主走査制御部300は、キャリッジ8(記録ヘッド9)の主走査位置に応じた値の制御信号を記録ヘッド制御部1100に出力する。制御信号は、例えば、主走査位置カウント信号であり、キャリッジ8の主走査位置に応じた値として、主走査エンコーダセンサ6により得られるキャリッジ8の位置情報を含む。なお、主走査位置カウント信号は、記録ヘッド制御部1100の制御に用いられる既存信号である。
画像データ転送部1103は、主走査制御部300からの制御信号の値が所定値である場合、値が“0”の画像データSD[2]を生成し、制御信号の値が所定値でない場合、値が“1”の画像データSD[2]を生成する。所定値は、例えば、制御信号の下位所定bitの値(例えば、下位1bit=0)である。
所定値は、レジスタ1109に記憶されており、CPU30により値が変更可能となっている。ここで、下位所定bitのbit数をmとすると、非マスク周期は、記録周期の2m倍となる。このためCPU30は、所定値(下位所定bitのbit数及び下位所定bitの値)を変更することで非マスク周期を任意に設定することができる。但し、前述の通り、第2実施形態では、非マスク周期は、記録周期の2m倍となるため、この条件内で非マスク周期を任意に設定することができる。例えば、CPU30は、所定値を下位1bit=0から下位2bit=00に変更することで、非マスク周期を記録周期の2倍から4倍に変更できる。なお、CPU30による所定値の値を変更するトリガは、第1実施形態と同様である。
第2実施形態によれば、記録ヘッド制御部がカウント部を備える必要がないので、記録ヘッド制御部の回路規模をより小さくすることができる。また第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態では、複数のノズルを微駆動させるタイミングを分散させる例について説明する。以下では、第1実施形態との相違点の説明を主に行い、第1実施形態と同様の機能を有する構成要素については、第1実施形態と同様の名称・符号を付し、その説明を省略する。
図12は、第3実施形態のインクジェット記録装置2001の記録ヘッド制御部2100及び記録ヘッド駆動部200の回路構成の一例を示すブロック図である。図12に示すように、第3実施形態では、記録ヘッド制御部2100の画像データ転送部2103及びレジスタ2109が第1実施形態と相違する。
画像データ転送部2103は、カウント部101のカウント値の下位所定bit値が所定値である場合、値が“0”の画像データSD[2]を生成し、下位所定bit値が所定値でない場合、値が“1”の画像データSD[2]を生成する。
第3実施形態では、画像データ転送部2103は、画像データの転送に用いるクロックであるSCKのクロック数をカウントし、SCKのクロック数のカウント値の下位所定bit値を所定値に用いる。SCKのクロック数のカウント値は、例えば、SCKパルスカウントの値である。なお、SCKパルスカウントは、画像データ転送部2103がノズル10のノズル数分の画像データ(第1情報)を記録ヘッド駆動部200へ転送する際に用いる既存信号である。
つまり、画像データ転送部2103は、カウント部101のカウント値の下位所定bit値がSCKパルスカウントの値の下位所定bit値と一致する場合、値が“0”の画像データSD[2]を生成し、カウント部101のカウント値の下位所定bit値がSCKパルスカウントの値の下位所定bit値と一致しない場合、値が“1”の画像データSD[2]を生成する。
但し、所定値(SCKパルスカウントの値の下位所定bit値)は、記録ヘッド9の記録周期毎に異なり、かつ非マスク周期毎に同一であるものとする。
図13は、第3実施形態のノズル10の微駆動のタイミングチャートの一例を示す図である。なお図13に示す例では、微駆動周期(非マスク周期)は、記録周期の4倍であるものとする。また、ノズルc〜ノズルfでは、全ての記録周期で画像データSD[1:0]=00であるものとする。
また説明を簡略化するため、カウント部101のカウント値は、0000〜1111の4bitで表され、SCKパルスカウントの値は、00〜11の2bitで表されるものとする。なお、SCKパルスカウントの値は、記録周期のカウント値にも相当する。
また、図13に示す例では、最初と5番目の記録周期の場合、所定値(SCKパルスカウントの値の下位所定bit値)=00であり、2番目と6番目の記録周期の場合、所定値=01であり、3番目の記録周期の場合、所定値=10であり、4番目の記録周期の場合、所定値=11であるものとする。
また、図13に示す例では、SCKパルスカウントの値=00の場合、ノズルc用の画像データSD[1:0]が転送され、SCKパルスカウントの値=01の場合、ノズルd用の画像データSD[1:0]が転送され、SCKパルスカウントの値=10の場合、ノズルe用の画像データSD[1:0]が転送され、SCKパルスカウントの値=11の場合、ノズルd用の画像データSD[1:0]が転送されるものとする。
このため、1番目の記録周期では(カウント部101のカウント値が0000〜0011では)、ノズルc用の画像データSD[2:0]=000、ノズルd〜ノズルf用の画像データSD[2:0]=100となり、ノズルcが微駆動する(微駆動on)。
また、2番目の記録周期では(カウント部101のカウント値が0100〜0111では)、ノズルd用の画像データSD[2:0]=000、ノズルc、ノズルe〜ノズルf用の画像データSD[2:0]=100となり、ノズルdが微駆動する(微駆動on)。
また、3番目の記録周期では(カウント部101のカウント値が1000〜1011では)、ノズルe用の画像データSD[2:0]=000、ノズルc〜ノズルd、ノズルf用の画像データSD[2:0]=100となり、ノズルeが微駆動する(微駆動on)。
また、4番目の記録周期では(カウント部101のカウント値が1100〜1111では)、ノズルf用の画像データSD[2:0]=000、ノズルc〜ノズルe用の画像データSD[2:0]=100となり、ノズルfが微駆動する(微駆動on)。
また、5番目の記録周期では(カウント部101のカウント値が0000〜0011では)、1番目の記録周期同様、ノズルc用の画像データSD[2:0]=000、ノズルd〜ノズルf用の画像データSD[2:0]=100となり、ノズルcが微駆動する(微駆動on)。
また、6番目の記録周期では(カウント部101のカウント値が0100〜0111では)、2番目の記録周期同様、ノズルd用の画像データSD[2:0]=000、ノズルc、ノズルe〜ノズルf用の画像データSD[2:0]=100となり、ノズルdが微駆動する(微駆動on)。
このように、図13に示す例では、ノズルの無駆動期間が微駆動周期よりも長くなることがなく、微駆動周期毎に、インク吐出用の駆動又は微駆動が少なくとも1回行われており、更に微駆動を行うノズルが分散されているため、不要なノズルの微駆動を削減しつつ、ノズル面が不吐出にならないよう維持することができ、更に全ノズルが同時に微駆動又は吐出駆動を行う場合と比べ、ピーク消費電力及び発熱の更なる低減が期待できる。
なお、レジスタ2109は、第1実施形態で説明したカウント部101用の所定値に加え、画像データ転送部2103用の所定値(図13に示す例では、最初と5番目の記録周期の所定値=00、2番目と6番目の記録周期の所定値=01、3番目の記録周期の所定値=10、4番目の記録周期の所定値=11)が記憶されており、CPU30により値が変更可能となっている。CPU30が所定値を変更することにより、微駆動させるノズル10の分散パターンを変更することができる。なお、CPU30による所定値の値を変更するトリガは、第1実施形態と同様である。
(変形例)
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記第2実施形態についても上記第3実施形態と同様の変形を行うようにしてもよい。