JP6272740B2 - 表面改質剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス、繊維、金属、樹脂、フィルム、光学材料、塗料等の分野で用いられる、防指紋性能および塗膜表面の滑り性に優れる表面改質剤、活性エネルギー線硬化型コート液、硬化膜、硬化膜が表面に形成された物品に関する。
樹脂、光学材料、塗料などの分野で用いられている塗工液には、塗膜に様々な特性を付与することを目的として各種添加剤が添加されている。例えば特許文献1に示されるように、付与する性能として防汚性、特に防指紋性を目的とした添加剤として、フッ素系化合物が広く使用されている。フッ素系化合物を添加剤として用いた際の塗膜性状は、通常、撥水撥油の性状を示す。撥水撥油の表面では、指紋の成分をはじくことにより、ふき取り易さを向上させることができる。しかし、撥水撥油表面では、付着した指紋成分がはじくことにより目立ちやすくなることが問題となる。
更に近年、タッチパネルの用途においては、ユーザーがディスプレイパネルに触れて操作した際に指が表面をなめらかに滑る等、滑り性を有する表面が求められるようになってきた。表面に滑り性を付与するために、フッ素系化合物やシリコーン化合物が用いられることがあるが、これらの表面は撥水撥油性の性状を示すため、防指紋性と両立させることは難しい。
また、例えば特許文献2に示されるように、非フッ素系防汚性付与剤を用いた防汚機能を発現する、親油タイプの表面が得られる樹脂組成物も提案されている。親油タイプの塗膜表面は人指紋が付着しても見えにくいという効果がある。しかし、非フッ素系防汚性付与剤を用いた場合、防汚性付与剤のみでは、平滑な表面が得られないという問題があり、平滑な表面とするために別途非フッ素系レベリング剤の添加を行うことがある。
特開2012−37896 特開2011−73363
このような状況の中で防汚性能、特に高い親油性を発現することで防指紋性能を発現し、かつ表面の滑り性や表面の平滑性に優れる表面改質剤が望まれている。
本発明は、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等樹脂などの表面に防汚性、特に防指紋性能を付与すると同時に、塗膜表面の滑り性や表面の平滑性にも優れる表面改質剤を提供することを目的とする。また、防指紋性能に優れた活性エネルギー線硬化型コート液、硬化膜、硬化膜が表面に形成された物品を提供することを目的とする。
即ち本発明は、下記項1〜13の表面改質剤、活性エネルギー線硬化型コート液、硬化膜、硬化膜が表面に形成された物品を提供するものである。
項1.
(i)一般式A、B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の共重合体であって、共重合体中のフッ素含有量が質量で1%〜10%であることを特徴とする含フッ素共重合体、(ii)縮合ヒドロキシ脂肪酸を含有することを特徴とする、表面改質剤。
Figure 0006272740
[式中、Rfは下記式(1)または(2)で示される基である。
Figure 0006272740
は炭素原子数が2〜50の二価の基である。R2はHまたはメチル基である。]
Figure 0006272740
[Rは、置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。nは0〜4の整数である。Rは、Hまたはメチル基である。]
Figure 0006272740
[Rは炭素原子数が2〜50の二価の基または、繰り返し単位が2〜20のアルキレンオキシド基である。RはHまたはメチル基である。]
項2.
含フッ素共重合体が、さらに一般式(D)で表される(メタ)アクリレート化合物を共重合成分として含む項1に記載の表面改質剤。
Figure 0006272740
[RはHまたは炭素原子数が1〜50の脂肪族炭化水素基である。Rは、Hまたはメチル基である。]
項3.
一般式Bで表される(メタ)アクリレート化合物がベンジルメタクリレートである項1又は2に記載の表面改質剤。
項4.
一般式B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比が0.5≦B/C≦10の割合である項1〜3のいずれか1項に記載の表面改質剤。
項5.
一般式B、Dで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比が0≦D/B≦2の割合である項2〜4のいずれか1項に記載の表面改質剤。
項6.
含フッ素共重合体中の水酸基に対して、一般式Eで表される末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させてなる反応性含フッ素共重合体を含有する、項1〜5のいずれか1項に記載の表面改質剤。
Figure 0006272740
[式中、R9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R10はHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
項7.
一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をp、一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をqとしたとき、そのモル比が0.01≦q/p≦0.8の割合であることを特徴とする項6に記載の表面改質剤。
項8.
縮合ヒドロキシ脂肪酸として縮合リシノール酸を用いる、項1〜7に記載の表面改質剤。
項9.
縮合ヒドロキシ脂肪酸として縮合ひまし油脂肪酸を用いる、項1〜7に記載の表面改質剤。
項10.
縮合ヒドロキシ脂肪酸中の水酸基に対して、一般式Eで表される末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させてなる反応性縮合ヒドロキシ脂肪酸を含有する、項1〜9のいずれか1項に記載の表面改質剤。
Figure 0006272740
[式中、R9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R10はHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
項11.
(i)含フッ素共重合体と(ii)縮合ヒドロキシ脂肪酸の質量比が1:0.5〜1:5である項1〜10に記載の表面改質剤。
項12.
項1〜11のいずれか1項に記載の表面改質剤、多官能(メタ)アクリル化合物および光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型コート液。
項13.
項12に記載の活性エネルギー線硬化型コート液を硬化して得られる硬化膜。
項14.
項13に記載の硬化膜が表面に形成された物品。
本発明の表面改質剤は、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の表面に親油性、防汚性(特に防指紋性)および表面滑り性を付与することができる。
本発明の表面改質剤は、(i)特定の含フッ素共重合体(ii)縮合ヒドロキシ脂肪酸を含有する組成物である。
本明細書中、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
含フッ素共重合体
本発明の含むフッ素共重合体は表面に防汚性を付与するために添加する。含フッ素共重合体は、一般式A、B、C、必要に応じてさらにDで表される(メタ)アクリレート化合物を重合し、共重合体中のフッ素含有量が質量で1%〜10%であることを特徴とする共重合体である。
本発明の含フッ素共重合体は、A〜Cの共重合体或いはA〜Dの共重合体を含み、本発明の反応性含フッ素共重合体はA〜C+Eの共重合体或いはA〜D+Eの共重合体を含む。一般式A、B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物を含むモノマーを重合して得られる共重合体を本明細書では「含フッ素共重合体」と記載し、A、B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物を含むモノマーを重合して得られる共重合体と一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物をさらに反応させて得られた共重合体は、アクリレート由来の反応性の炭素-炭素二重結合を含むので特に「反応性含フッ素共重合体」と記載することがある。
含フッ素共重合体のフッ素含有量は、((フッ素原子量×全共重合体中のフッ素原子数)×100/全共重合体の質量)で表される。フッ素含有量はより好ましくは質量で2%〜6%である。フッ素含有率が高すぎると、フッ素の効果により撥水撥油性が発現することで、親油性にならないために、防指紋性能も劣るため不適である。
本発明の含フッ素共重合体における、一般式Aで表される(メタ)アクリレート化合物は、次式で表される。
Figure 0006272740
[式中、Rfは下記式(1)または(2)で示される基である。
Figure 0006272740
は炭素原子数が2〜50の二価の基である。R2はHまたはメチル基である。]
、Rで表される炭素原子数が2〜50の二価の基としては、以下の基が挙げられる。
−(CHn1− (n1=2〜50)
−X−Y-(CHn2− (n2=2〜43)
−X−(CHn3− (n3=1〜44)
−CHCH(OCHCHn4− (n4=1〜24)
−XCO(OCHCHn5− (n5=1〜21)
(式中、Xは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を1〜3個有していてもよいフェニレン、ビフェニレンもしくはナフチレンを示す。Yは、-O-CO-、-CO-O-、−CONH−または−NHCO−を示す。)
Xは1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンが好ましく、1,4-フェニレンが特に好ましい。
特に好ましいR、Rで表される炭素原子数が2〜50の二価の基としては、具体的に以下の構造の二価の基が挙げられる。
−(CHn1− (n1=2〜10)
−COCO(CHn2− (n2=2〜10)
−C(CHn3− (n3=1〜10)
−CHCH(OCHCHn4− (n4=1〜10)
−CCO(OCHCHn5− (n5=1〜10)
はH又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
一般式Aで表される(メタ)アクリレート化合物は公知の方法により製造することができる。
本発明の含フッ素共重合体における、一般式Bで表される(メタ)アクリレート化合物は、次式で表される。
Figure 0006272740
[Rは、置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。nは0〜4の整数である。Rは、Hまたはメチル基である。]
本発明において、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基、アントラニル基、フェナントリル基、ビフェニル基等の炭素数6〜15の芳香族炭化水素基が挙げられる。置換された芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、メチレンジオキシ、塩素原子、NO、CN、NHCOCHなどが挙げられる。置換基は、芳香族炭化水素基に1〜3個、好ましくは1〜2個含まれ得る。
一般式Bで表される(メタ)アクリレート化合物として特に好ましくは、ベンジルメタクリレートである。
一般式Bで表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。
本発明の含フッ素共重合体における、一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物は、次式で表される。
Figure 0006272740
[Rは炭素原子数が2〜50、好ましくは2〜10の二価の基または、繰り返し単位が2〜20のアルキレンオキシド基である。RはHまたはメチル基である。]
一般式Cにおいて、Rで表される炭素原子数が2〜50の二価の基としては、上記R1で例示された二価の基が挙げられる。この二価の基の炭素数は、2〜10が好ましい。
Rで表される繰り返し単位が2〜20のアルキレンオキシド基としてより好ましくはエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基等を繰り返し単位として有するポリアルキレンオキシド基である。ポリアルキレンオキシド基においてアルキレンオキシドの繰り返し単位は好ましくは2〜20である。
特に好ましいRとしては、具体的に以下の基が挙げられる。
−(CHn6− (n6=2〜10)
−(CHCHO)n7CHCH− (n7=1〜20)
−(CHCHCHO)n8CHCHCH− (n8=1〜10)。
一般式Cで表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。一般式Bで表される化合物の市販品として、日油(株)社製ブレンマーAE−90、日油(株)社製ブレンマーAE−200、日油(株)社製ブレンマーAE−400、日油(株)社製ブレンマーAP−400、日油(株)社製ブレンマーPE−90、日油(株)社製ブレンマーPE−200、日油(株)社製ブレンマーPE−350、日油(株)社製ブレンマーPP−1000、日油(株)社製ブレンマー50PEP−300、日油(株)社製ブレンマー70PEP−350、日油(株)社製ブレンマー55PET―800、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)社製、ライトエステルHO−250)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)社製、ライトエステルHOA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)社製、4−HBA)等が挙げられる。
本発明の含フッ素共重合体において、共重合成分(モノマー)として一般式Dで表される(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
Figure 0006272740
[RはHまたは炭素原子数が1〜50の脂肪族炭化水素基である。Rは、Hまたはメチル基である。]
一般式Dにおいて、Rは、炭素原子数が1〜50の脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は環状構造を有していてもよい。
好ましいRとしては、アルキル基やシクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基などの環状構造を挙げることができる。特に好ましいRとしては、具体的に以下の構造の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
−(CHn9CH3 (n9=1〜30)。
一般式Dで表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。一般式Dで表される化合物の市販品として、日油(株)社製ブレンマーCHMA、日油(株)社製ブレンマーLMA、日油(株)社製ブレンマーSMA、日油(株)社製ブレンマーVMA、日油(株)社製ブレンマーCHA、日油(株)社製ブレンマーLA、日油(株)社製ブレンマーSA、日油(株)社製ブレンマーVA、日立化成(株)社製FA−513AS、日立化成(株)社製FA−513M等が挙げられる。
本発明の含フッ素共重合体において一般式B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比は0.5≦B/C≦10の割合であり、特に好ましくは0.8≦B/C≦5である。
一般式B、Dで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比は0≦D/B≦2の割合であり、特に好ましくは0≦D/B≦1である。
本発明において、含フッ素共重合体中の水酸基に対して、一般式Eで表される末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて反応性含フッ素共重合体とすることができる。
Figure 0006272740
[式中、R9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R10はHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
9で表される炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基としては、以下の基が挙げられ、それに対応する一般式Eの(メタ)アクリレート化合物を合わせて示す。

−(CHn10− (n10=2〜10)
−C12−(OCHCHn11−(n11=1〜2)
−C12(CHn12− (n12=1〜4)
−CHCH(OCHCHn13− (n13=1〜4)
−C(CH3)[(CHn14(n14=1〜4)
対応する一般式Eの(メタ)アクリレート化合物:
Figure 0006272740
(式中、C12は1,1-、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキシレン基を示し、R10はHまたはメチル基を示す。n10〜n14は前記に定義されるとおりである。)
一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をp、一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をqとしたとき、そのモル比は0.01≦q/p≦0.8の割合である。特に好ましくは0.05≦q/p≦0.5の割合である。
含フッ素共重合体を得るための(メタ)アクリレートA〜CもしくはA〜Dの重合方法としては公知の重合方法を用いることができる。詳しくは、(メタ)アクリレートA〜CもしくはA〜Dを所望の比率で混合し、適量の重合開始剤を加え、有機溶媒の存在下に室温から100℃程度の温度で1〜24時間程度反応させる。これにより反応は定量的に進む。(メタ)アクリレートA〜CもしくはA〜Dの混合順序は特に限定されるものではない。
重合開始剤としては、光重合開始剤が挙げられ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が好ましく使用できる。
有機溶媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、ジメトキシエタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく例示される。該有機溶媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
含フッ素共重合体において、繰り返し単位は、化学式で示すとおりに位置しなくてもよく、水酸基含有共重合体は(メタ)アクリレートA〜CもしくはA〜Dのランダム重合体またはブロック共重合体であってよい。
含フッ素共重合体とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートEとの反応は、得られた水酸基含有共重合体溶液に対して、(メタ)アクリレートEを所定の比率で混合し、−20℃〜100℃、好ましくは20℃〜90℃で、1〜48時間撹拌することにより達成できる。これにより、水酸基含有共重合体における(メタ)アクリレートB成分に由来の水酸基と、(メタ)アクリレートEのイソシアネート基とが反応し、ウレタン結合が形成され、本発明の反応性含フッ素オリゴマーが得られる。このとき、混合された(メタ)アクリレートEは定量的に反応する。
当該反応に際しては、アルカリ性触媒を用いてもよい。アルカリ性触媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、好ましいアルカリ性触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機系のアルカリ性触媒が挙げられる。該アルカリ性触媒は、特に、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好ましい。該アルカリ性触媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
本発明の含フッ素共重合体又は含フッ素反応性共重合体の重量平均分子量は通常5000〜100000であり、好ましくは10000〜50000である。
重量平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィー、粘度法、光散乱法など、従来公知の方法で測定すればよい。
(ii)縮合ヒドロキシ脂肪酸
本発明において、塗膜表面を触った時に指がなめらかに滑りやすくするために縮合ヒドロキシ脂肪酸を添加する。縮合ヒドロキシ脂肪酸は、例えば、ヒドロキシ脂肪酸の1種または2種以上の混合物を窒素ガス等の不活性ガスの気流化、100〜200℃で30分〜12時間脱水縮合反応することにより得られる。ヒドロキシ脂肪酸としては、12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸(リシノール酸)、12−ヒドロキシステアリン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸(ユニペリン酸)、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシデカン酸(サビニン酸)、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、ヒマシ油脂肪酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸等を挙げることができる。ヒドロキシ脂肪酸として好ましくは、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、ヒマシ油脂肪酸、水添加ヒマシ油脂肪酸である。本発明に用いる縮合ヒドロキシ脂肪酸の縮合度は2〜6量体が好ましく、これら各縮合物および未縮合ヒドロキシ脂肪酸の混合物を用いてもよい。
本発明において、縮合ヒドロキシ脂肪酸として好ましくは、縮合ヒマシ油脂肪酸が挙げることができる。縮合ヒマシ油脂肪酸の主成分は縮合リシノール酸であり、ヒマシ油脂肪酸(リシノール酸がおよそ90%)の脱水縮合により得ることができる。縮合ヒドロキシ脂肪酸は、市販品を使用してもよいし、ヒドロキシ脂肪酸の脱水縮合によって得たものを使用してもよい。市販品としては、HSC−95(豊国製油株式会社製 縮合ヒマシ油脂肪酸2量体)、HSC−60D(豊国製油株式会社製 縮合ヒマシ油脂肪酸3量体)、HSC−47(豊国製油株式会社製 縮合ヒマシ油脂肪酸4量体)、HSC−32(豊国製油株式会社製 縮合ヒマシ油脂肪酸6量体)、PCF−30(伊藤製油株式会社製 縮合ヒマシ油脂肪酸 4〜5量体)、PHF−33(伊藤製油株式会社製 縮合12−ヒドロキシステアリン酸 6量体)、等を挙げることができる。
本発明において、縮合ヒマシ油脂肪酸の水酸基に対して、一般式Eで表される末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて反応性縮合ヒマシ油脂肪酸とすることができる。
Figure 0006272740
[式中、R9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R10はHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
縮合ヒマシ油脂肪酸とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートEとの反応は、前述の含フッ素共重合体とEとの反応と同様の方法で行うとよい。
(i)含フッ素共重合体と(ii)縮合ヒドロキシ脂肪酸の質量比は好ましくは1:0.5〜1:5であり、より好ましくは1:2である。
本発明の表面改質剤は、溶液として使用することができるが、通常は、樹脂成分、溶媒成分、重合開始剤成分、フィラー成分等の添加剤と混合されて樹脂組成物として使用する。
溶液として使用する場合、溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、アセトニトリル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒が挙げられるが、好ましくはメチルイソブチルケトンである。溶媒は一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
溶液として使用する場合、濃度は0.01質量%〜5質量%が好ましい。
本発明の含フッ素共重合体又は反応性含フッ素共重合体を含む溶液を、たとえば、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の機材表面に塗布、コーティング、スプレー等により付着させることにより、基材表面の特性を改質することができる。
表面改質剤を含有する樹脂組成物
本発明に含まれる硬化性樹脂組成物は、基材に塗布するための塗液として調製される。硬化性樹脂組成物(塗液)には、防汚性と表面滑り性を発揮する成分として含フッ素共重合体及びヒマシ油脂肪酸が配合される他、主に樹脂膜として機能するエネルギー線硬化性樹脂モノマー又は樹脂オリゴマー、その他、重合開始剤、溶剤等が配合される。ただし、無溶剤系塗液とする場合には溶剤は配合せず、放射線硬化の場合は重合開始剤を必要としない。また、塗液には必要に応じてその他の成分を加えてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物全体量中(溶剤成分を使用する場合は、溶剤成分の量を除く)の前記表面改質剤の含有量は、通常0.001〜10質量%程度、好ましくは0.01〜6質量%程度、より好ましくは0.1質量%〜3質量%である。
エネルギー線硬化性樹脂モノマー又は樹脂オリゴマー成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、表面改質剤に加えて、これと反応して樹脂硬化膜となるエネルギー線硬化性樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー(以下、樹脂モノマー、樹脂オリゴマーということがある)を含む。
このような樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーは、含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体と反応して硬化膜を形成するものであれば、特に限定されず、通常ハードコート膜や反射防止コート膜に用いられるエネルギー線硬化性の樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを任意に使用することができる。
当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーとしては、例えば、各種アクリレートやアクリルウレタン等のアクリル系、ウレタン系、エポキシ系等の反応性化合物が挙げられ、好ましくはアクリル系樹脂が用いられる。特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化して膜形態で用いられるため、2官能以上の反応性官能基を有する樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを用いることが好ましい。
2官能以上の反応性官能基を有する樹脂モノマー、樹脂オリゴマーとしては、例えば、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、各種ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製 紫光シリーズ、根上工業株式会社製 アートレジンシリーズ等)等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。該樹脂モノマー、樹脂オリゴマーは1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
樹脂モノマー、樹脂オリゴマーを硬化させるエネルギー線としては、放射線、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。放射線、電子線による硬化では電磁波のエネルギーが高いため、重合性二重結合のみで重合が可能である。紫外線、可視光線をエネルギー源とする場合には、後述の重合開始剤成分を配合することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物全体量中(溶剤成分を使用する場合は、溶剤成分の量を除く)の当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーの含有量は、通常55〜99.9質量%程度、好ましくは60〜99.5質量%程度、より好ましくは、70〜99質量%程度である。
また、当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーと含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体の使用割合は、樹脂モノマー及び樹脂オリゴマー100質量部に対して、前記含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体を通常0.001〜10質量部程度、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜2質量部程度使用すればよい。
重合開始剤成分
本発明の硬化性樹脂組成物には、前記含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体、樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーに加えて、必要に応じて、重合開始剤成分を含んでいても良い。
重合開始剤成分は、従来公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤を使用することができる。
光重合開始剤としては、多種多様なものが知られており、適宜選択して使用すればよい。例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ベンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、アントラキノン、アントロン、ジベンゾスベロン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、P−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、2−(P−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、3,3−カルボニルービス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−フェニル−5−ベンゾイルチオ−テトラゾール等が挙げられる。
重合開始剤成分を使用する場合、1種類単独での使用も可能であるが、2種以上を任意に配合して使用してもよい。重合開始剤成分の添加量は、重合性樹脂成分(前記含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体、前記樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーの合計量)100質量部に対して、通常0.1〜50質量部程度、好ましくは0.5〜30質量部程度、より好ましくは1〜10質量部程度とすればよい。
溶剤成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶剤成分を含む必要はないが、必要に応じて溶剤成分を含んでいても良い。溶剤成分としては、従来公知の溶剤成分を使用すればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル等、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノエーテル類、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンが挙げられる。これらの溶剤成分は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
溶剤成分を使用する場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の溶剤成分の使用量は、重合性樹脂成分(前記含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体、前記樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーの合計量)100質量部に対して、通常25〜5000質量部程度、好ましくは40〜2000質量部程度、より好ましくは60〜1000質量部程度とすればよい。
その他の成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化膜表面に形状を設けたり、その他の望む機能を付与するために、必要に応じて微粒子、フィラー等を配合してもよい。
硬化膜の作製方法
本発明においては、本発明の硬化性樹脂組成物を塗液とし、該塗液を基材に塗布した後、光照射等を行うことにより硬化膜とすることができる。
本発明の硬化膜を得るための手順としては、含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体、樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー、さらに、必要に応じて、重合開始剤成分、溶剤成分、微粒子、フィラー等を適当な配合比で混合溶解させて、本発明の硬化性樹脂組成物を塗液として調製する。ついで、基材上に塗液を一定の膜厚となるよう塗布し、温風乾燥、真空乾燥等により溶媒成分を除去した後、放射線、電子線、紫外線、可視光線等のエネルギー線を照射することにより硬化膜を得ることができる。
塗液の塗工方法は特に限定されないが、例えば、ウェットコーティングにより塗布され、その方式として例えばグラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式等が挙げられる。
硬化膜を作製する基材としては、硬化膜の支持が可能であれば特に限定されないが、例えば、光学用途向けハードコートとして利用する場合には透明性を有するシートが望ましい。透明性シートの材質としては、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特にプラスチックシートが好ましい。プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらのシートは必要に応じて、バインダー処理、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の易着処理を行ってもよい。
本発明の硬化膜の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。通常は、100nm〜30μm程度とすることができる。
硬化膜を表面に形成する物品としては、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の基材が挙げられ、例えばタッチパネル、スマートフォン、タブレット、テレビなどのディスプレイ、眼鏡のレンズなどが挙げられる。
本発明の内容を以下の実施例により説明するが、本発明の内容は実施例により限定して解釈されるものではない。
合成例で使用している含フッ素(メタ)アクリレート(A−1)及び(A−2)は、公知の合成方法(例えば特開2010−47680に記載の合成方法)により、合成を実施した。
合成例1
冷却管を備えた三つ口フラスコ(50mL)内に、含フッ素アクリレート(A−1)1.00g、ベンジルメタクリレート(B−1)6.00g、日油製AP−400(C−1)2.00g、メチルイソブチルケトン18.00g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.065gを入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。含フッ素オリゴマーが定量的(33質量%メチルイソブチルケトン溶液)に得られた。得られた含フッ素共重合体を固形分濃度30質量%になるようにメチルイソブチルケトンを加え調製した。
合成例2〜4
合成例1と同様の手順で、モノマーA、B、CおよびDの割合を変更して含フッ素共重合体を合成した。モノマーの割合、モノマー種は表1に示したとおりである。表1においてカッコ内の数字は質量比を表す(モノマーEの欄を除く)。モノマーEのカッコ内の数字は含フッ素共重合体中の水酸基に対してのモノマーEの等量比を表す。
合成例5
冷却管を備えた三つ口フラスコ(50mL)内に、含フッ素アクリレート(A−1)1.00g、ベンジルメタクリレート(B−1)5.00g、日油製AP−400(C−1)5.00g、メチルイソブチルケトン18.00g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.065gを入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了をH−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。含フッ素オリゴマーが定量的(33質量%メチルイソブチルケトン溶液)に得られた。得られた含フッ素共重合体を固形分濃度30質量%になるようにメチルイソブチルケトンを加え調製した。
得られた含フッ素共重合体に、単量体(C−1)に対して0.5当量分の2−(イソシアネートエチル)アクリレート(E−1)及び0.01当量分の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを入れ、50℃で反応溶液の攪拌を20時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm−1)の消失により確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(30質量%メチルイソブチルケトン溶液)に得られた。
Figure 0006272740
(A-1);C9F17OC6H4COCH2CH2OC(=O)C(CH3)=CH
(A-2);C9F17OC6H4COCH2CH2CH2CH2OC(=O)CH=CH
(B-1);ベンジルメタクリレート
(C-1);ポリ(プロピレンオキサイド)アクリレート(日油株式会社製 ブレンマーAP−400)
(C-2);ポリ(エチレンオキサイド)アクリレート(日油株式会社製 ブレンマーAE−400)
(C-3);4−ヒドロキシブチルアクリレート
(D-1);ベヘニルアクリレート
(D-2);ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成株式会社製 FA−513M)
(E-1);2−(イソシアネートエチル)アクリレート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)
実施例1〜8
硬化性樹脂モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亜合成製、商品名:M−402)40質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)を1.2質量部、合成例1〜5の化合物を1.3質量部(30質量%溶液品)、縮合ヒドロキシ油脂肪酸を0.4質量%、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を57.1質量部、混合し、硬化性塗工液を作成した。これをNo.5のバーコーターでポリエステルフィルム(東洋紡績製、商品名:コスモシャインA4100)に塗り広げ、100℃に設定した乾燥機に1分間投入し、溶剤を揮発させた後、UV照射することで硬化膜を得た。その評価結果を表2に示す。
実施例9
縮合ヒドロキシ脂肪酸を0.2質量%、MEKを57.3質量%にした以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を得た。
実施例10
縮合ヒドロキシ脂肪酸を2.0質量%、MEKを55.5質量%にした以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を得た。
実施例11
メチルエチルケトンのかわりに酢酸ノルマルプロピルを用いた以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を作製した。
実施例12、13
ナスフラスコに縮合ヒマシ油脂肪酸4量体(豊国製油株式会社製 HSC-47)1.0質量部及び縮合ヒマシ油脂肪酸の水酸基に対して0.5当量分の2−(イソシアネートエチル)アクリレート(E−1)及び0.01当量分の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、メチルイソブチルケトン3.0質量部を入れ、50℃で反応溶液の攪拌を20時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm−1)の消失により確認した。目的の反応性縮合ヒマシ油脂肪酸(F−1)が定量的(25質量%メチルイソブチルケトン溶液)に得られた。
得られたF−1を用いて、硬化膜を作製した。縮合ヒマシ油脂肪酸のかわりにF−1を1.6質量%、メチルエチルケトンを55.9質量部に変更した以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を得た。
実施例12
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのかわりにウレタンアクリレート(根上工業株式会社製 UN−949)を用いた以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を得た。
比較例1
含フッ素共重合体および縮合ヒドロキシ脂肪酸を使用せず、MEKを58.8質量部に変更した以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を得た。
比較例2
縮合ヒドロキシ脂肪酸のかわりに脱水ヒマシ油脂肪酸(小倉工業株式会社製 DCO-FA)を用いた以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を作製した。
比較例3
縮合ヒドロキシ脂肪酸のかわりにオレイン酸を用いた以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を作製した。
比較例4
縮合ヒドロキシ脂肪酸のかわりにアマニ油を用いた以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を作製した。
比較例5
縮合ヒドロキシ脂肪酸のかわりにポリオキシエチレンヒマシ油(青木油脂工業社製 ブラウノン BR−425)を用いた以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を作製した。
比較例6
縮合ヒドロキシ脂肪酸のかわりにヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製 CO−FA)を用いた以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を作製した。
比較例7
縮合ヒドロキシ脂肪酸を使用せず、MEKを57.5質量%に変更した以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を得た。
比較例8
含フッ素共重合体を使用せず、MEKを58.4質量%に変更した以外は実施例1〜8と同様にして硬化膜を得た。塗膜表面にプツが発生したため、接触角などの評価は行わなかった。
評価方法
(1)相溶性
硬化性塗工液の相溶性を目視で観察した。
評価基準 : 透明 = ○
白濁・沈殿物有 = ×
(2)接触角
作製直後の硬化膜表面に対する水、オレイン酸の接触角を接触角測定装置(協和界面化学製 DropMaster700)で測定した。
(3)動摩擦係数
滑り性を評価するため、新東科学社製HEIDON Type 14Fwを用いて動摩擦係数を測定した。硬化膜表面に、鉄製(直径10mm)金属を置き、加重500g、移動速度1000mm/min、移動距離80mmの条件にて測定を行った。
(4)指滑り性
滑り性を評価するため、官能試験を行い評価した。硬化膜表面を、乾燥した人差し指で軽く滑らせ、引っ掛かりがなく移動可能であったかどうかを評価した。
○: 引っ掛かりがなく指が滑らかに移動した
×: 引っ掛かりがあった
(5)指紋拭取り性
硬化膜表面に指紋を付着させ、指紋が見えなくなるまでプロワイプ(大王製紙製、商品名:エリエール プロワイプ ソフトマイクロワイパーS220)で指紋を拭き取り、その回数(往復で1回とする)を計測した。
◎: 3回以下
○: 5回以下
×: 6回以上
(6)表面平滑性
UV照射後の硬化膜表面を目視で観察した。
評価基準 : スジ、ハジキ等がない ○
スジ、ハジキ等がある ×
Figure 0006272740
(HSC-32) : 縮合ヒマシ油脂肪酸 6量体(豊国製油株式会社製 HSC-32)
(HSC-47) : 縮合ヒマシ油脂肪酸 4量体(豊国製油株式会社製 HSC-47)
(HSC-95) : 縮合ヒマシ油脂肪酸 2量体(豊国製油株式会社製 HSC-95)
(KF-4500) : 縮合ヒマシ油脂肪酸 4〜5量体(ケイエフ・トレーディング社製 KF-4500)
(PHF-33) : 12−ヒドロキシステアリン酸(伊藤製油株式会社製 PHF-33)
(DCO-FA) : 脱水ヒマシ油脂肪酸(小倉工業株式会社製 DCO-FA)
(BR−425) : ポリオキシエチレンヒマシ油(青木油脂工業株式会社製 ブラウノンBR−425)
(CO-FA) : ヒマシ油脂肪酸(伊藤製油株式会社製 CO-FA)
表2から分かるように、実施例1〜14の硬化膜は、動摩擦係数が小さく、またいずれも良好な親油性及び表面平滑性を示し、優れた防指紋性能を有することが分った。比較例2、3から縮合ヒドロキシ脂肪酸を未縮合の脂肪酸に変更した場合は、動摩擦係数が大きく十分な滑り性が得られないことが分かった。比較例4から、縮合ヒドロキシ脂肪酸を使用しなかった場合も同様に、動摩擦係数が大きくなった。比較例5から、含フッ素共重合体を使用した場合は膜表面にプツが発生し、良好な塗膜が得られなかった。
本発明による、含フッ素共重合体は、例えば、ガラス、繊維、金属、樹脂、フィルム、光学材料、塗料等の分野で用いられる防汚性を付与する表面改質剤として有用であり、基材表面に親油性、平滑性を付与させることができる化合物として有用である。本発明の含フッ素共重合体を含有する硬化性組成物は、透明性にも優れるため、光学用途等の透明性を必要とする分野での使用も可能となる。

Claims (14)

  1. (i)一般式A、B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の共重合体であって、共重合体中のフッ素含有量が質量で1%〜10%であることを特徴とする含フッ素共重合体、(ii)縮合ヒドロキシ脂肪酸を含有することを特徴とする、表面改質剤。
    Figure 0006272740
    [式中、Rfは下記式(1)または(2)で示される基である。
    Figure 0006272740
    は炭素原子数が2〜50の二価の基である。R2はHまたはメチル基である。]
    Figure 0006272740
    [Rは、置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。nは0〜4の整数である。Rは、Hまたはメチル基である。]
    Figure 0006272740
    [Rは炭素原子数が2〜50の二価の基または、繰り返し単位が2〜20のアルキレンオキシド基である。RはHまたはメチル基である。]
  2. 含フッ素共重合体が、さらに一般式(D)で表される(メタ)アクリレート化合物を共重合成分として含む請求項1に記載の表面改質剤。
    Figure 0006272740
    [RはHまたは炭素原子数が1〜50の脂肪族炭化水素基である。Rは、Hまたはメチル基である。]
  3. 一般式Bで表される(メタ)アクリレート化合物がベンジルメタクリレートである請求項1又は2に記載の表面改質剤。
  4. 一般式B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比が0.5≦B/C≦10の割合である請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面改質剤。
  5. 一般式B、Dで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比が0≦D/B≦2の割合である請求項2〜4のいずれか1項に記載の表面改質剤。
  6. 含フッ素共重合体中の水酸基に対して、一般式Eで表される末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させてなる反応性含フッ素共重合体を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面改質剤。
    Figure 0006272740
    [式中、R9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R10はHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
  7. 一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をp、一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をqとしたとき、そのモル比が0.01≦q/p≦0.8の割合であることを特徴とする請求項6に記載の表面改質剤。
  8. 縮合ヒドロキシ脂肪酸として縮合リシノール酸を用いる、請求項1〜7に記載の表面改質剤。
  9. 縮合ヒドロキシ脂肪酸として縮合ひまし油脂肪酸を用いる、請求項1〜7に記載の表面改質剤。
  10. 縮合ヒドロキシ脂肪酸中の水酸基に対して、一般式Eで表される末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させてなる反応性縮合ヒドロキシ脂肪酸を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面改質剤。
    Figure 0006272740
    [式中、R9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R10はHまたはメチル基を示す。xは、1または2の整数である。]
  11. (i)含フッ素共重合体と(ii)縮合ヒドロキシ脂肪酸の質量比が1:0.5〜1:5である請求項1〜10に記載の表面改質剤。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の表面改質剤、多官能(メタ)アクリル化合物および光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型コート液。
  13. 請求項12に記載の活性エネルギー線硬化型コート液を硬化して得られる硬化膜。
  14. 請求項13に記載の硬化膜が表面に形成された物品。
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