本発明の眼鏡においては、眼鏡を前側に押し出すことができるので、レンズの裏面から瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離を調節することができる。よって、矯正度数の入った眼鏡用レンズが装着される場合には、検査用眼鏡により得られた矯正効果を最大限に発揮できる間隔、すなわち、各レンズに固有の頂点間距離を確認することができる。
また、矯正度数の入ったレンズが装着された眼鏡に、後方を視認するためのミラーを設ける場合には、頂点間距離が適正化された状態(通常、12ミリの間隔)から、眼鏡を前側に押し出すことができるので、ミラーと瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離を調節することができる。よって、矯正度数の入ったレンズが装着された眼鏡枠に対応して、頂点間距離を適正化しつつ、かつ、ミラーを通して後方を視認しやすくすることができる。
さらに、ミラーの未使用時にはミラーによる光の乱反射を抑え、ミラーの使用時には即座に機動できるように、ミラーを収納するための収納ケースを設ける場合には、眼鏡を前側に押し出すことができるので、収納ケースと眼(特に、まつ毛)との間隔、すなわち、設置距離を調節することができる。よって、収納ケースを眼鏡枠の内側に設けて、収納ケースから露出したミラーを周囲から目立たなくさせることができるとともに、収納ケースと眼との間隔を開けて操作することができるので、収納ケースからミラーを安全に露出させることができる。
以上の目的を以下のようにして実現した。
本実施例に基づく頂点間距離の調節機能付眼鏡5(以下単に「眼鏡5」とする)において、頂点間距離を調節するための鼻当て100−1、100−2は、図1、図3〜図12に示すように構成され、さらに、眼鏡5にミラーを収納するための収納ケース(以下、後方視認装置における「収納部30」)を設けて後方視認機能を付加する場合には、図2、図13〜図24に示すように構成される。
本実施例に基づく眼鏡5は、眼鏡本体10と、眼鏡本体10におけるフレーム12に設けられた一対の鼻当て100−1、100−2とを有し、後方視認機能を付加する場合には、眼鏡本体10における左右の蝶番部(ヒンジ部としてもよい)15に設けられた後方視認装置20−1、20−2とを有している。
ここで、眼鏡本体10は、フレーム12と、フレーム12の左右両端にフレーム12に対して回動自在に設けられたテンプル14−1、14−2と、フレーム12に取り付けられた一対のレンズ16−1、16−2とを有している。
この眼鏡本体10は従来の眼鏡と略同様の構成であり、フレーム12は、フレーム12の左側を構成する左側構成部12−Aと、フレーム12の右側を構成する右側構成部12−Bと、左側構成部12−Aと右側構成部12−B間を連結するブリッジ部12−Cとを有している。左側構成部12−Aには左眼用のレンズ16−1が設けられ、右側構成部12−Bには右眼用のレンズ16−2が設けられている。
後方視認装置20−1、20−2を装着する場合には、フレーム12において、左右の両側の端部に後方に屈曲した屈曲部12−1、12−2を有し、フレーム12の左右の端部が後方に屈曲した形状を呈するものが好ましい。すなわち、左側構成部12−Aのブリッジ部12−C側とは反対側の端部に屈曲部12−1が設けられ、右側構成部12−Bのブリッジ部12−C側とは反対側の端部に屈曲部12−2が設けられている。この屈曲部12−1、12−2は、レンズ16−1、16−2の外側の端部よりも外側に設けられ、屈曲部12−1は、左側のレンズ16−1の外側の端部よりも外側(左側)に設けられ、屈曲部12−2は、右側のレンズ16−2の外側の端部よりも外側(右側)に設けられている。これにより、屈曲部12−1、12−2の内側には後方視認装置20−1、20−2を配置する空間が形成されている。
フレーム12とテンプル14−1、14−2とは、蝶番部15を介して連結され、この蝶番部15は、フレーム12の端部(屈曲部12−1、12−2の端部としてもよい)の内側から内側に突出した一対の突出部12a、12b(フレーム側蝶番構成部)とテンプル14−1、14−2の前方の端部の内側から突出した突出部14a(テンプル側蝶番構成部)と、突出部12a、14a、12bに挿通されたネジ17(蝶番用ネジ)を有している。突出部12a、12bと突出部14aとで、蝶番構成部11が構成される。つまり、蝶番部15は、フレーム12とテンプル14−1、14−2の内側に設けられている。また、ネジ17は、軸部18と、軸部18の基端に設けられた頭部19とを有し、軸部18は円柱形状を呈し、外周にはネジ溝が形成されている。ネジ17(特に、軸部18)は、上下方向(Z1−Z2方向)を向いている。また、突出部12a、12bにはネジ17のネジ溝が螺合するネジ穴が形成され、突出部14aにはネジ17が挿通する挿通孔が形成されている。なお、頭部19の径は、挿通孔(挿通穴としてもよい)44aの径よりも大きく形成されている。また、ネジ17の軸部18の長さは、軸部18を蝶番部15の突出部12a、突出部14a、突出部12bの順に挿通して、突出部12a、12bのネジ穴に螺合させて締め付けた際に、軸部18の下端と突出部12bの下端とが面一になる長さとなっている。なお、後方視認装置20−1、20−2が装着される場合には、ネジ17の軸部18の長さは、軸部18を支持部40の挿通穴44a、蝶番部15の突出部12a、突出部14a、突出部12b、挿通穴46aの順に挿通して、突出部12a、12bのネジ穴に螺合させて締め付けた際に、軸部18の下端と突出板部46の下端とが面一になる長さとなるのが好ましい。
眼鏡本体10は、全体に左右対称に形成されている。つまり、前後方向(Y1−Y2方向)かつ上下方向(Z1−Z2方向)の仮想面(平面状の仮想面)を介して対称に形成されている。なお、左右方向(X1−X2方向)とは、左側構成部12−Aの任意の位置と、右側構成部12−Bにおける該任意の位置に対応する位置とを結んだ方向といえ、例えば、左側構成部12−Aの外側の端部の上端部Pと右側構成部12−Bの外側の端部の上端部Qとを結んだ方向といえる。
鼻当て100−1、100−2は、フレーム12に固定された一対のパッド足110と、パッド足110のフレーム12側とは反対側の端部に固定された一対のパッド箱120と、パッド箱120に螺着された一対のパッドネジ150と、パッド箱120に挿通された一対のパッド支軸130と、パッド支軸130の長手方向の一方の端部に設けられた一対のパッド140とを有している。
鼻当て100−1は、フレーム12の左側構成部12−Aの内側に取り付けられ、鼻当て100−2は、フレーム12の右側構成部12−Bの内側に取り付けられており、鼻当て100−1と鼻当て100−2とは左右対称である以外は同様の構成であるので、鼻当て100−1を例に取って説明する。この鼻当て100−1は、パッド支軸130をパッド箱120に対してスライドさせることにより、頂点間距離(眼鏡のレンズと瞳の間の距離(すなわち、レンズの内側の面と角膜頂点の間の距離))の調整を行なうことができるものである。また、後方を視認するためのミラーを有する場合には、明視距離(ミラーを通して後方をはっきり視認することのできる距離(すなわち、ミラーの反射面と角膜との間の距離))の調整を行なうことができる。さらに、ミラーを収納するための収納ケースを設ける場合には、設置距離(収納ケースと眼(特に、まつ毛)との間の距離)を調節することができるものである。
なお、図4〜図12の説明において、X11側を前側とし、X12側を後側とし、Z11側を下側とし、Z12側を上側として説明するが、鼻当て100−1、100−2を実際にフレーム12に取り付けた状態では、X11側が斜め前側(斜め外側を向いた前側)となり、X12側が斜め後側(斜め内側を向いた後側)となり、Z12側が斜め上側(斜め内側を向いた上側)となり、Z11側が斜め下側(斜め外側を向いた下側)となる。
鼻当て100−1は、図4〜図12に示すように構成され、フレーム12の左側構成部12−Aに固定されたパッド足110と、パッド足110のフレーム12側とは反対側の端部に固定されたパッド箱120と、パッド箱120に螺着されたパッドネジ150と、パッド箱120に挿通されたパッド支軸130と、パッド支軸130の長手方向の一方の端部に設けられたパッド140とを有している。
ここで、パッド足110は、従来の鼻当てにおけるパッド足と同様の構成であり、フレーム12に溶接等により固定され、棒状部材を湾曲することにより形成されている。湾曲したパッド足110のたわみを伸縮させることで、通常の眼鏡と同様に、頂点間距離を調整することができる。
また、パッド箱120は、パッド足110と溶接等により固定して設けられ、四角枠状を呈している。すなわち、パッド箱120は、4つの方形状の板状部材を枠状に形成して構成され、パッド足110に固定された第1部材120aと、第1部材120aの相対する辺部から第1部材120aに対して直角に形成された第2部材120b及び第3部材120cと、第2部材120b及び第3部材120cの第1部材120a側とは反対側の端部間に形成された第4部材120dとを有し、第1部材120aと第2部材120bと第3部材120cと第4部材120dとはともに同大同形状で方形状の板状を呈し、第1部材120a〜第4部材120dにより正方形状の枠を構成している。すなわち、パッド箱120の両側の開口部を構成する各辺は同じ長さとなっている。
ここで、パッド箱120内には、直方体形状の空間が形成され、該空間の断面は、パッド支軸130が挿通可能な大きさに形成されている。つまり、この空間の横断面(正方形状の横断面)の1つの辺部の長さh71は、図6に示すように、パッド支軸130の第1規制面136a(後述)が形成された領域における幅h81(以下「パッド支軸130の幅h81」とする)よりも大きく形成されている。すなわち、幅h81は、パッド支軸130の軸線方向における第1規制面136aが形成された領域における幅であり、第1規制面136aにおける軸線Jと平行な2つの辺部である辺部136a−1と辺部136a−2間の長さ(図7参照)である。なお、第1規制面136aは、軸線Jに対してずれた位置に形成されているので、パッド支軸130の幅h81は、パッド支軸130の径h86(円柱形状における直径、図6、図11参照)よりも若干小さく形成されている。
また、第2部材120bには、パッドネジ150を挿通するための挿通穴122が形成され、第3部材120cには、パッドネジ150を螺着するためのネジ穴124が形成されている。挿通穴122は、円形の貫通孔であり、第2部材120bの中央位置に形成されている。つまり、第2部材120bにおけるパッド箱120の軸線方向(パッド支軸130の挿通方向)及び該軸線方向と直角の方向において中央の位置に挿通穴122が形成されている。また、ネジ穴124は、第3部材120cの中央位置に形成されている。つまり、第3部材120cにおけるパッド箱120の軸線方向(パッド支軸130の挿通方向)及び該軸線方向と直角の方向において中央の位置にネジ穴124が形成されている。よって、パッドネジ150の軸部152から第1部材120aの内側の面までの長さh72と、パッドネジ150の軸部152から第4部材120dの内側の面までの長さh73とは同一に形成されている。
このパッド箱120の軸線(一方の開口部の中心と他方の開口部の中心を結ぶ直線)の方向は、水平面(水平方向としてもよい)に対して傾斜して設けられ(「ネジ17の軸線に対する直角平面に対して傾斜して設けられ」としてもよい)、前方かつ外側の斜め上方から後方かつ内側の斜め下方を向いている。なお、水平面(水平方向)とは、X1−X2及びY1−Y2方向である。
また、パッド支軸130は、円柱形状の側面の一方に側面視台形形状の切欠部130Kを形成した形状を呈し、半球状(略半球状としてもよい)の先端面132と、先端面132から連設された外周面134と、外周面134から連設された切欠部形成面136と、固定部146に接する後端面とを有している。つまり、パッド支軸130は、円柱形状の側面の一部を抉った形状となっている。
ここで、外周面134は、円柱形状の外周面と同様の構成である。また、切欠部形成面136は、パッド支軸130の軸線Jと平行な方形状の平面状の第1規制面136aと、第1規制面136aから先端側に連設され、パッド支軸130の軸線Jに対して傾斜して形成された第2規制面136bと、第1規制面136aから第2規制面136bとは反対側に連設され、パッド支軸130の軸線Jに対して傾斜して形成された第3規制面136cとを有している。なお、第2規制面136bと第3規制面136cとは、ともに、楕円弧と直線とにより囲まれた形状を呈し、第2規制面136bと第3規制面136cとは、ともに斜め上向きに互いに対向した状態となっていて、第2規制面136bと第3規制面136cとは、ともに、平面視において(図7参照)、軸線Jを中心に対称に形成され、第2規制面136bと第1規制面136a間の辺部137aと、第3規制面136cと第1規制面136a間の辺部137bとは、互いに平行で、軸線Jに対して直角方向となっている。これにより、第2規制面136bや第3規制面136cがパッドネジ150の軸部152に接する際には、第2規制面136bや第3規制面136cは、軸部152に軸部152の軸線方向に均等に接することになる。なお、第2規制面136bと第1規制面136aとがなす角度α2と第3規制面136cと第1規制面136aとがなす角度α3は、ともに鈍角であり、角度α2と角度α3は同一に形成されている。
なお、パッド支軸130の軸線Jとパッド箱120の軸線とは、平行をなすが、図6に示すように、パッド支軸130はパッド箱120内で若干偏心した位置にあるので、若干ずれた位置にあるといえる。なお、図6では、パッド本体142と押え部144は省略して描いている。
また、パッド支軸130の第1規制面136a形成部分は、パッドネジ150を螺着した状態のパッド箱120に挿通可能に形成され、第1規制面136aに垂直方向(Z11−Z12方向)の厚み、すなわち、第1規制面136aとパッド支軸130の底部間の長さh82は、パッドネジ150の軸部152から第4部材120dの内側の面までの長さh73よりも小さく形成されている(h82<h73)。つまり、パッド支軸130をパッドネジ150を螺着した状態のパッド箱120に取り付け、パッド支軸130の底部側の外周部が第4部材120dに接した状態では、パッド支軸130の第1規制面136aとパッドネジ150の軸部152間には間隔h84が形成されている。なお、第1規制面136aは、軸線Jに対してパッド支軸130の底部側にずれた位置に形成されていて、長さh82は、パッド支軸130の径h86の半分の長さ(つまり、h86/2)よりも小さく形成されている。
また、第1規制面136aの軸線J方向の長さh83は、パッド箱120の軸線方向の長さh74よりも長く形成され(h83>h74)、これにより、パッド支軸130のスライド長が長く確保されている。
また、パッド支軸130における後端面(固定部146に接する面)は、軸線J方向に直角の平面状を呈している。
このパッド支軸130は、水平面に対して傾斜して設けられている。すなわち、パッド箱120の軸線方向が水平面(水平方向としてもよい)に対して傾斜して設けられているので、パッド支軸130の軸線も、水平面に対して傾斜して設けられている。
このパッド支軸130はステンレスにより形成されている。パッド支軸130を金属製とすることにより、パッド支軸130にパッド140が固定された状態においても、重心をパッド支軸130側に保つことができ、パッド支軸130が傾斜して設けられたパッド箱120の内側の面をスライドするときに、パッド支軸130の先端面132が浮き上がることなく、円滑にスライドすることが可能となる。
なお、パッド支軸130の幅h81がパッド箱120内の空間の横断面の1つの辺部の長さh71よりも小さく形成され(h81<h71)、また、第1規制面136aとパッド支軸130の底部間の長さh82は、パッドネジ150の軸部152から第4部材120dの内側の面までの長さh73よりも小さく形成されている(h82<h73)ので、パッド支軸130は、パッド箱120内を円滑にスライドすることが可能となる。また、パッド支軸130の外周面は円柱形状の外周面を呈するので、パッド箱120との接触面積を小さくでき、これによってもパッド支軸130をパッド箱120に対して円滑にスライドさせることができる。また、パッド箱120は軸線方向に所定の長さを有し、パッド支軸130(特に、第1規制面136aに対応した部分)とパッド箱120の内側の面の間の隙間h75、h76やパッド支軸130とパッドネジ150の間の隙間h84もわずかに形成されているので、パッド支軸130はパッド箱120に対して大きく回転することがなく、その点でも、パッド支軸130をパッド箱120に対して円滑にスライドさせることができる。また、隙間h84が短い(つまり、長さh73から長さh82を減じた値が小さい)ので、パッド支軸130がその軸線を中心に回転する量をわずかとすることができる。つまり、パッド支軸130がその軸線を中心として回転してしまうと、パッド支軸130の基端側に固定されたパッド140も回転してしまうので、パッド支軸130に形成された第1規制面136aがパッドネジ150の軸部152に接することで、パッド140の軸線Jを中心とした回転が規制されている。また、パッド支軸130とパッド箱120の内側の面との隙間h75、h76が左右方向(Y11・Y12方向)の遊びとなり、また、パッド支軸130とパッドネジ150の間の隙間h84が上下方向(Z11・Z12方向)の遊びとなることで、パッド140が鼻Nに接するときに鼻Nの傾斜面(接触面)を捉えやすくなるとともに、パッド箱120内において、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線を中心に回転することができ、パッド支軸130をロックすることができる。
また、パッド支軸130の径h86は、パッドネジ150の軸部152から第4部材120dの内側の面までの長さh73よりも大きく(h86>h73)、径h86と長さh73の差が大きいので、パッド支軸130がスライドしても第2規制面136bや第3規制面136cが軸部152に接して、パッド支軸130がパッド箱120から脱落することがない。
また、パッド140は、パッド本体142と、パッド本体142の前側(X11側)に固定された押え部144と、パッド支軸130の後端面に固定されるとともに、パッド本体142と押え部144とにより挟設された固定部146とを有している。
ここで、パッド本体142は、鼻当て100−1の使用時において使用者の鼻に接する部材であり、縦長の台形形状の板状を呈し、一方の面(前側の面)に固定部146を配置するための凹部142aが設けられている。パッド140を組み立てた状態では、凹部142aには、固定部146の後側(X12側)の略半分が収納される。
また、押え部144は、パッド本体142と同様に縦長の台形形状の板状を呈し、パッド本体142と同大同形状の輪郭を有する板状を呈し、後側の面に固定部146を配置するための凹部144aが設けられている。また、凹部144aの略中央位置には、パッド支軸130を挿通するための円形の挿通孔144bが形成されている。これにより、パッド140を組み立てた状態では、挿通孔144bにパッド支軸130が挿通されるとともに、凹部144aには、固定部146の前側(X11側)の略半分が収納された状態で、押え部144の後側の面が、パッド本体142の前側の面に接着等により固定されている。
このパッド本体142と押え部144とは、合成樹脂材(好適には、透明又は半透明な合成樹脂材)により形成されている。
また、パッドネジ150は、軸部152と、軸部152の基端に設けられた頭部154とを有し、軸部152は円柱形状を呈し、その先端部分の外周にはネジ穴124に螺合するためのネジ溝152aが形成されている。なお、軸部152の先端部分以外はネジ溝は形成されていない。つまり、パッド支軸130の第1規制面136aが接する箇所にはネジ溝が形成されておらず、これにより、パッド支軸130がパッド箱120内を円滑にスライドすることができる。また、頭部154の径は、挿通穴122の径よりも大きく形成されている。
鼻当て100−1を組み立てた状態では、パッド支軸130にパッド140が固定され、パッド支軸130がパッド箱120に挿通した状態で、パッドネジ150が、パッド箱120の挿通穴122に挿通されるとともに、ネジ穴124に螺着される。これにより、パッド支軸130がパッド箱120内をスライド可能に形成される。また、組み立て方は通常の鼻当てと同じ方法であるので、パッド支軸130は、パッド支軸の側面にパッドネジ150の挿通孔を有する市販のパッドに付け替えることができる。
鼻当て100−1がフレーム12に取り付けられた状態では、パッド支軸130の水平面に対する角度は約20度程度としておくのが好ましい。すなわち、図8に示すように、パッド支軸130の軸線Jと水平面Sのなす角度α4をパッド支軸130がパッド箱120内をスライドする角度よりも若干小さくしておく。例えば、パッド支軸130がパッド箱120内をスライドする角度が20度を超えた角度である場合には、角度α4を20度としておく。よって、手で眼鏡5のフレーム12を前方上向きに持ち上げる動作をすることにより、パッド支軸130の軸線Jが水平面となす角度が20度よりも大きくなり、パッド支軸130がパッド箱120内を斜め下方にスライドして、パッド140が斜め下方にスライドする。
また、図9に示すように、第2規制面136bがパッドネジ150に接して、パッド140が下端に位置する状態(図9(a)参照)で、パッド支軸130をパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転させることにより、パッド支軸130の軸線とパッド箱120の軸線が平行にならず、パッド支軸130が第4部材120dの内側の角部(第4部材120dの内側のパッド支軸130の先端側の角部)120d−1とパッドネジ150間に挟まれてロックされた状態となり(図9(b)参照)、パッド支軸130はパッド箱120に対して容易にはスライドしないようになる。つまり、パッド支軸130の第2規制面136bがパッドネジ150に接した状態で、パッド支軸130のパッド側の端部をパッドネジに沿った軸線を中心にパッド箱に対して上方に回転させることにより、パッド支軸130がパッドネジ150と第4部材120dのパッド支軸の先端側の内側の角部間に挟まりロックされた状態となる。
また、第2規制面136bがパッドネジ150に接して、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転して、第4部材120dの内側の角部120d−1とパッドネジ150間に挟まれてロックされた状態(つまり、パッド支軸130の第2規制面136bがパッドネジ150に接した状態で、パッド支軸130のパッド側の端部をパッドネジに沿った軸線を中心にパッド箱に対して上方に回転させることにより、パッド支軸130がパッドネジ150と第4部材120dのパッド支軸の先端側の内側の角部間に挟まりロックされた状態)においても、第3規制面136cがパッドネジ150に接して、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転して、第4部材120dの内側の角部120d−1とパッドネジ150間に挟まれてロックされた状態(つまり、パッド支軸130の第3規制面136cがパッドネジ150に接した状態で、パッド支軸130のパッド側の端部をパッドネジに沿った軸線を中心にパッド箱に対して上方に回転させることにより、パッド支軸130がパッドネジ150と第4部材120dのパッド支軸の先端側の内側の角部間に挟まりロックされた状態)においても、ともに、パッド支軸130の軸線Jと水平面Sに対して傾斜して設けられたパッド箱120の第4部材120dの内側の傾斜面とのなす角度α1は同一であるので(図9及び図10参照)、頂点間距離を長くしても、眼鏡本体10に装着されたレンズ16−1、16−2におけるアイポイント(光学中心としてもよい)の位置と装用者の瞳孔中心の位置がずれないようになる。
なお、パッド支軸130の他の構成として、図11に示すように、パッド支軸130の先端に磁石部138を設けて、磁性を帯びた第2規制面136bと鉄製のパッドネジ150とが吸着する構成としてもよい。つまり、図11の場合のパッド支軸130は、パッド支軸本体131と、磁石部138とを有し、磁石部138は、図5の例におけるパッド支軸130の第2規制面136bの先端側の端部位置から先端側の形状を有しており、パッド支軸本体131は、図5の例におけるパッド支軸130を第2規制面の先端側の位置で切断した形状を有している。つまり、パッド支軸本体131と磁石部138の境界面は、パッド支軸130の軸線と直角をなしている。なお、磁石部138における磁極の配置は任意であるが、例えば、パッド支軸130の軸線方向の一方の側をN極とし、他方の側をS極とする。以上のようにして、磁石部138の形状は、先端面132及び外周面134と同一の形状に形成されている。磁石部138の固定方法は、ボンド接着等により固定される。パッド支軸130の先端に固定された磁石部138の磁界が鉄製のパッドネジ150に及ぶことにより、磁石部138にパッドネジ150が吸引されて、第2規制面136bとパッドネジ150とが吸着する。なお、この場合のパッド支軸本体131の第2規制面136bは、磁石により吸引する材料である磁性体(例えば、鉄)で形成するのが好ましいが、磁石部138の磁力が強い場合には、該磁性体により形成しなくてもよい。なお、パッド支軸本体131の第2規制面136bを鉄等の磁石が吸引する材料である磁性体により形成する(例えば、第2規制面136bの形状の鉄製の板状部を第2規制面136bに貼り付ける)ことにより、第2規制面136bが磁性を帯びることにより、第2規制面136bとパッドネジ150の吸引を強めることができる。また、磁石部138の他の固定方法として、磁石部138の先端面からパッド支軸本体131の第2規制面を含む外周面を塩化ビニール等のコーティング材でコーティングしてもよい。これにより、磁石部138の固定が強化されるとともに、先端面がビニールコーティングされることにより、先端面がレンズ16−1、16−2に接触したときに、レンズ面を保護することができる。なお、この場合、バッド支軸本体131のスライドに支障が出ないように、パッド支軸本体131の先端側の被膜形成部分の外周面を削った状態として、パッド支軸本体131の径h86(円柱形状の周面における直径)を均一に造形して、パッド支軸本体131の外周面に段差がないようにする(つまり、コーティングされた部分とコーティングされていない部分に段差がないようにする)。なお、当然、磁石部138におけるコーティングの表面とパッド支軸本体131におけるコーティングの表面の境界についても段差がないようにする。
このように、磁石部138を設けることにより、第2規制面136bがパッドネジ150に接して、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転して、第4部材120dの内側の角部120d−1とパッドネジ150間に挟まれてロックされるときに、パッド140が鼻Nに接した反動で、パッド支軸130がパッド箱120内を前側(X11側)に押し戻されるのを防ぐことができる。
なお、磁石部138の代わりに、円柱状の磁石部と、該磁石部の先端に設けられた略半球状のコーティング材とにより形成してもよい。つまり、パッド支軸本体131の先端に円柱状の磁石部が接着等により固定され、該磁石部の先端(つまり、磁石部のパッド支軸本体131と反対側)に略半球状のコーティング材が設けられている。このように、円柱状の磁石部と略半球状のコーティング材とにより磁石部138の形状に形成するので、磁石部138の先端面132を半球状に造形する必要がない。なお、該略半球状のコーティング材の代わりに、略半球状の合成樹脂を円柱状の磁石部の先端に接着等により固定し、磁石部と合成樹脂とをコーティング材によりコーティングする構成としてもよい。この場合も、磁石部におけるコーティング材の表面と合成樹脂におけるコーティング材の表面の境界に段差がないようにする。
なお、パッドネジ150を構成する磁性体(磁石が吸引する材料である磁性体)として鉄製としたが、鉄以外の磁性体としてもよい。また、パッドネジ150の軸部152の先端部分以外の領域にネジ溝を形成せず、軸部152における第2規制面136bが接する領域にはネジ溝を形成しない構成とすることで、第2規制面136bとの接触面積を広げ吸着力を強めることができるが、磁石部138の磁力が強い場合には、パッドネジ150の軸部152にネジ溝が形成された(すなわち、軸部152の先端部分以外の領域にもネジ溝が形成された)磁性を有する市販のパッドネジを使用してもよい。
さらに、パッドネジ150の他の構成として、パッドネジ150が磁力を有する構成としてもよい。すなわち、パッドネジ150が磁力を有し、軸部152と、軸部152の基端に設けられた頭部154とを有し、軸部152は円柱形状を呈し、その先端部分の外周にはネジ穴124に螺合するためのネジ溝152aが形成され、パッド支軸130の第1規制面136aが接する箇所にはネジ溝が形成されていない。よって、パッドネジ150が円柱状の周面の形状を呈するので、パッド支軸130がパッド箱120内を円滑にスライドすることができるとともに、パッド支軸130が磁石部138を有し、磁気を帯びた第2規制面136bと磁力を有するパッドネジ150とが吸着し合うことで吸着力を強めることができる。よって、第2規制面136bがパッドネジ150に接して、頂点間距離を長くした状態でパッド支軸130がロックされるときに、パッド140が鼻Nに接した反動で、パッド支軸130がパッド箱120内を前側(X11側)に押し戻されるのを防ぐことができる。
パッドネジ150が磁力を有する構成における第1の構成としては、軸部152が磁石により構成され、図12(a)に示すように、軸部152において、先端側の半分をN極とし基端側の半分をS極として、軸部152の厚み方向(長さ方向)に磁力線が形成される構成となっていて、磁石部138においては、パッド支軸130の先端側をN極とし基端側をS極とする。図12(a)の構成においては、磁石部138のS極が軸部152のN極に吸着することになる。なお、磁石部138のS極が軸部152のN極に吸着するので、磁石部138のS極が軸部152のN極に吸着した状態では、パッド支軸130の軸線は、吸着する前のパッド支軸130の軸線に対して、軸部152の先端側(Y12側)にずれた状態となる。
また、パッドネジ150が磁力を有する構成における第2の構成としては、軸部152が磁石により構成され、図12(b)に示すように、軸部152において、軸部152の軸線を通る平面を介した一方をN極とし他方をS極として、軸部152の径方向に磁力線が形成される構成となっていて、磁石部138においては、パッド支軸130の先端側がN極で基端側がS極とする。そして、パッドネジ150をパッド箱120に取り付けた状態においては、軸部152のN極が磁石部138側となるようにする。このように構成することにより、磁石部138が軸部152に吸着することになる。なお、磁石部138において、パッド支軸130の先端側をS極とし基端側をN極としてもよく、その場合には、軸部152のS極が磁石部138側となるようにする。なお、図12(a)、(b)においては、理解を容易とするためにパッド箱120を省略した状態で描いている。
また、鼻当て100−2は、鼻当て100−1と左右対称である以外は同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。
次に、上記構成の鼻当て100−1、100−2の使用方法について説明する。上記構成の鼻当て100−1、100−2が装着された眼鏡5の使用に際して、眼鏡5を顔に装着する場合には、通常の眼鏡の使用状態と同様に、テンプル14−1、14−2を耳に掛けて使用する。
その際、パッド140は、パッド箱120に対して最も後側にある状態(この状態を「初期状態」とする)としておき、テンプル14−1、14−2を耳に掛けて、レンズ16−1、16−2を通して見やすい位置(つまり、レンズのアイポイント(光学中心)Oと装用者の瞳孔中心Rとが一致する位置)で、鼻当て100−1、100−2を鼻に接するようにする。その後、眼鏡5を後側に押し込むことにより、(パッド支軸130の先端に設けられた磁石部138と鉄製のパッドネジ150、又は、磁力を帯びたパッドネジ150とが吸着する場合には、その吸着力に抗して)、パッド支軸130がパッド箱120に対してスライドし、パッド140が前側に押されて、パッド支軸130の先端(パッド140側とは反対側の端部)のパッド箱120からの突出長さが徐々に長くなり、一対のパッド140間の幅が徐々に広がり、図10(a)に示すように、第3規制面136cがパッドネジ150に接して、テンプル14−1、14−2から手を放すと、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転して、図10(b)に示すように、パッド支軸130が第4部材120dの内側の(パッド支軸130の基端側の)角部120d−2とパッドネジ150間に挟まれてパッド箱120にロックされ、パッド140がパッド箱120に対して上端位置にある状態となる。なお、眼鏡5を後側に押し込む際に、フレーム12を下方に移動させると、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転して、図9(b)のようにパッド支軸130がロックされた状態となり、パッド支軸130がパッド箱120に対してスライドしづらくなるので、眼鏡5を水平方向に後側に押し込むのが好ましい。このように、パッド140が上端位置にある場合(第3規制面136cがパッドネジ150に接する状態)を「通常使用状態(第1使用状態)」とする。つまり、この通常使用状態では、眼鏡を装着することにより、パッド支軸130がパッド箱120に対して斜め上方にスライドして、パッド140が鼻に接している状態で、第2規制面136bがパッドネジ150から離れた状態となっている。矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2に固有の頂点間距離を適正化する場合には、まず、この通常使用状態(第1使用状態)の位置において、レンズ16−1、16−2の裏面から瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離が12ミリの間隔となるようにフィッティングさせておく。つまり、通常の鼻当てのフィッティング(位置合わせ)と同様に、パッド足110を伸縮させて頂点間距離を12ミリの間隔に合わせる(仮の調整)。
次に、通常使用状態からテンプル14−1、14−2を耳に掛けた状態で、フレーム12を手で前方上向きに持ち上げることにより、パッド支軸130が水平方向に対して20度を超えて傾斜し、さらに、パッド140は鼻の表面から離れた状態となるので、パッド支軸130がパッド箱120に対して斜め下方(X12側)にスライドし、これにより、パッド140が斜め下方(X12側)にスライドし(滑落としてもよい)、第2規制面136bがパッドネジ150に接した状態、つまり、初期状態に戻る。(パッド支軸130の先端に磁石部138が設けられ、鉄製のパッドネジ150、又は、磁力を有するパッドネジ150と吸着し合う場合には、磁気を帯びた第2規制面136bと軸部152とが接し、吸着した状態に戻る。)。このとき、パッド140が下端に位置した状態で、フレーム12を持ち上げていた手を離してフレーム12を落下させることにより、パッド140は鼻に接するが、フレーム12が落下することにより、パッド140も落下しながら鼻に接することから、パッド140にはパッド140に沿って斜め上方に力が加えられ、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転して、図9(b)に示すように、パッド支軸130が第4部材120dの内側の(パッド支軸130の先端側の)角部120d−1とパッドネジ150間に挟まれてパッド箱120にロックされた状態となり、パッド140はその状態で鼻Nに接することになる。この状態を第2使用状態とする。この第2使用状態では、一対のパッド支軸130がパッド箱120から斜め下方(X12側)に最も長くスライドした状態となるので、一対のパッド140間の幅が通常使用状態の場合と比べて狭くなって、一対のパッド140の鼻Nへの着床位置が前側(Y1側)にずれるので、フレーム12は通常使用状態に比べて前側(Y1側)に位置し、通常使用状態に比べて頂点間距離が長くなった状態となる。
なお、パッド支軸130がパッド箱120内でロックされるとき、パッド支軸130の回転角度(すなわち、パッド支軸130の軸線Jと第4部材120dの内側の傾斜面とのなす角度)α1は、第1規制面136aの高さh82が、辺部137bと辺部137aとの間において均一であり、パッド支軸130がパッドネジ150に常に同じ高さh73で接するので、第1使用状態においても、第2使用状態においても同一である。つまり、図9(b)のα1と図10(b)のα1は同一である。よって、頂点間距離を長くしてもフレーム12の前傾角度が変わらないので、レンズ16−1、16−2のアイポイント(光学中心)Oと装用者の瞳孔中心Rの位置がずれない。したがって、レンズ16−1、16−2が矯正度数の入ったレンズである場合には、第1使用状態(仮調整した12ミリの間隔)、あるいは、頂点間距離を長くした第2使用状態の間隔において、レンズ16−1、16−2を通して網膜に映り込む像の見やすさを比較対象とすることができ、眼鏡5を装着することにより、レンズ16−1、16−2に固有の頂点間距離を装用者自らが確認することができる(図6、図7、図9(b)参照)。
レンズ16−1、16−2を通して見やすさを確認後、頂点間距離を適正化する方法は、12ミリの間隔で仮調整された第1使用状態の方が見やすい場合には、そのままの状態(つまり、第1使用状態の間隔)で、該鼻当て100−1、100−2に装着されたパッド支軸130をパッド箱120から取り外し、パッド支軸にパッドネジ150の挿通孔を有する市販のパッドに付け替えればよい。ただし、この場合には、レンズの裏面と眼の間にほとんど間隔がないので、後述する後方視認装置を設けるのは困難となる。頂点間距離は12ミリの間隔で適正化される(本調整)。これに対して、頂点間距離を長くした第2使用状態の方が見やすい場合には、パッド足110を伸ばすことにより頂点間距離を長くした状態(つまり、第2使用状態の間隔)にして、パッド箱120からパッド支軸130を取り外し、パッド支軸にパッドネジ150の挿通孔を有する市販のパッドに付け替えればよい。後者は、眼鏡本体10に装着されたレンズ16−1、16−2が固有の頂点間距離をとる場合であり、頂点間距離を長くした状態(つまり、第2使用状態の間隔)で適正化することができる(本調整)。頂点間距離が適正化されると、カメラでピントを合わせるように、くっきりとした状態で網膜に像を映しこむことができる。
次に、上記構成の鼻当て100−1、100−2が装着された眼鏡5を使用すれば、頂点間距離が適正化された第1使用状態(通常、12ミリの間隔)から頂点間距離を長くした第2使用状態とすることができるので、後方を視認するためのミラー(本実施例においては、ミラーユニット60が有するミラー74)を眼鏡本体10に設ける場合には、ミラーと瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離を調節することができる。すなわち、通常、頂点間距離が12ミリの間隔で適正化された場合、レンズの裏面と眼(特に、まつ毛)との間にはほとんど隙間がない状態であり、特に、眼鏡枠の内側(Y2側)にミラーを設けるケースでは、ミラーと瞳(角膜)との間隔が近接し過ぎるので、ミラーを通して後方を視認しづらくなる。そこで、上記構成の鼻当て100−1、100−2(特に、パッド支軸130)を使用すれば、眼鏡本体10に装着される矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2に対応して頂点間距離を適正化しつつ、かつ、ミラーと瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離を調節することができるので、ミラーを通して後方を視認しやすくすることができる。よって、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2が装着される眼鏡5に、後方を視認するための機能を付加することができる。
そこで、次に、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2が装着された眼鏡本体10に後方を視認するためのミラー(本実施例では、ミラー74)を設ける場合に、頂点間距離を適正化しつつ、かつ、ミラーと瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離を調節するための眼鏡5の使用方法について説明する。なお、本実施例におけるミラー74についての詳しい解説は、後述する。
眼鏡本体10がフレーム12の内側にミラー(以下、ミラー74を例に説明する。)を有し、上述の方法により、レンズ16・1、16・2と瞳(角膜)の頂点との間隔、すなわち、頂点間距離が12ミリの間隔で適正化された場合には、眼鏡本体10が鼻当て100−1、100−2(特に、パッド支軸130)を有した状態で使用する。眼鏡5を顔に装着する場合には、通常の眼鏡と同様に、テンプル14−1、14−2を耳に掛けて使用する。パッド140が、パッド箱120に対して最も後側にある状態(初期状態)から、テンプル14−1、14−2を耳に掛けて、レンズ16−1、16−2を通して見やすい位置で鼻当て100−1、100−2が鼻に接するようにする。その後、眼鏡5を後側に押し込むことにより、パッド支軸130がパッド箱120に対してスライドし、パッド140が前側に押されて、パッド支軸130の先端のパッド箱120からの突出長さが徐々に長くなり、一対のパッド140間の幅が徐々に広がり、第3規制面136cがパッドネジ150に接して、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転してロックされ、パッド140がパッド箱120に対して上端位置にある通常使用状態(第1使用状態)となる。レンズ16−1、16−2と瞳(角膜)の頂点との間隔、すなわち、頂点間距離は12ミリの間隔である。この状態では、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離が近接し過ぎるので、ミラーを通して後方を視認しづらくなる。そこで、後方を見やすくするためには、通常使用状態(第1使用状態)からテンプル14−1、14−2を耳に掛けた状態で、フレーム12を手で前方上向きに持ち上げることにより、パッド支軸130が水平方向に対して20度を超えて傾斜し、さらに、パッド140は鼻の表面から離れた状態となるので、パッド支軸130がパッド箱120に対して斜め下方(X12側)にスライドし、これにより、パッド140が斜め下方(X12側)にスライドし、第2規制面136bがパッドネジ150に接した状態、つまり、初期状態に戻し、パッド140が下端に位置した状態で、フレーム12を持ち上げていた手を離してフレーム12を落下させることにより、パッド140は鼻に接するが、フレーム12が落下することにより、パッド140も落下しながら鼻に接することから、パッド140にはパッド140に沿って斜め上方に力が加えられ、パッド支軸130がパッドネジ150の軸線に沿った回転軸を中心に回転して、パッド支軸130が第4部材120dの内側のパッド支軸130の先端側の角部120d−1とパッドネジ150間に挟まれてパッド箱120にロックされた状態、すなわち、第2使用状態となる。この状態では、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離が長くなった状態であるので、後方を視認しやすくなっている。(なお、上記説明では、磁石部138(磁気を帯びた第2規制面136b)と鉄製のパッドネジ150、又は磁力を有するパッドネジ150とが吸着する解説は省略して書いている。)なお、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離を前側(Y1側)に長くするとミラー74を通して後方が視認しやすくなる理由は、眼の回旋角度を考慮すると理解しやすい。すなわち、図14、図16に示すように、レンズ16−1、16−2のアイポイント(光学中心)Oから眼(瞳)を回旋させてミラー74を覗き込む場合、一般に、物(物体)は視角の影響を受けて前側にあるほど中央寄りに小さく見えるので、レンズ16−1、16−2のアイポイント(光学中心)Oからミラー74までの距離(すなわち、回旋距離)h85は、見かけ上、フレーム12を前側に出すほど中央ブリッジ部12−C寄りに縮んで見える。よって、眼の回旋角度、すなわち、眼の回旋中心(瞳孔中心としてもよい)Rとレンズ16−1、16−2のアイポイント(光学中心)Oとを通過する直線(Y1−Y2方向)と、眼の回旋中心(瞳孔中心)Rとミラー74とを結ぶ直線(ミラー74を覗き込む方向)とのなす角度α6を小さくすることができる。よって、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離を長くすれば、視角の影響を受け、見かけ上、回旋距離h85が縮んで見える結果、ミラー74を覗き込む眼(瞳)の回旋角度α6も小さくなり、少ない眼の回旋で後方を視認することができるので、ミラー74を通して後方を見やすくすることができる。
したがって、レンズ16−1、16−2の裏面から瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離が12ミリの間隔で適正化された場合には、眼鏡5を通常の眼鏡として使用する場合には、頂点間距離が適正化された第1使用状態の間隔で使用し、特に、後方を注視したい場合には、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離を長くした状態、すなわち、第2使用状態の間隔で使用し、ミラーを通して後方を視認しやすくする方法で使い分ければよい。
また、上述の方法により、レンズ16・1、16・2の裏面から瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離を長くした状態で適正化される場合には、大変、都合がよい。すでに、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離も長くなっている状態だからである。したがって、パッド足110を伸ばすことにより頂点間距離を長くした状態(すなわち、第2使用状態の間隔)に合わせて、パッド箱120からパッド支軸130を取り外し、パッド支軸にパッドネジ150の挿通孔を有する市販のパッドに付け替えればよい。眼鏡5に装着されたレンズ16−1、16−2に固有の頂点間距離が、第2使用状態の間隔で適正化されるとともに、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離も長くすることができるので、ミラー74を通して後方を視認しやすくすることができる。以上の方法により、眼鏡本体10に装着された矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2に対応して、頂点間距離を適正化しつつ、かつ、後方を視認するためのミラー74をフレーム12の内側に設けることができ、眼鏡5に後方視認機能を付加することができる。
さらに、眼鏡本体10にミラーを収納するための収納ケース(以下、後方視認装置20・1、20・2における収納部30)を設ける場合には、上記構成の鼻当て100−1、100−2(特に、パッド支軸130)を使用することで、収納ケースと眼との間隔、すなわち、設置距離を調節することができる。すなわち、ミラーの未使用時にはミラーによる光の乱反射を抑え、また、ミラーの使用時には即座に機動する(つまり、後方を視認可能とする)ことができるように、ミラーを収納するための収納ケースを設ける場合には、レンズ16−1、16−2の裏面から瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離が適正化された第1使用状態(通常、12ミリの間隔)から、収納ケースと眼(特に、まつ毛)との間隔、すなわち、設置距離を長くした第2使用状態とすることができるので、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2に対応して頂点間距離を適正化しつつ、かつ、収納ケースを眼鏡本体10の内側(Y2側)に設けることができ、収納ケースから露出したミラーを周囲から目立たなくさせることができるとともに、設置距離を長くした第2使用状態の位置で操作することにより、収納ケースからミラーを安全に露出させことができる。
よって、次に、収納部30を有する後方視認装置20・1、20・2について説明する。後方視認装置20−1は左側の蝶番部15に設けられ、後方視認装置20−2は右側の蝶番部15に設けられているが、左右対称の構成である以外は同様の構成であるので、後方視認装置20−1を例にとって説明する。
後方視認装置20−1は、図13〜図24に示すように構成され、蝶番部15に軸着された収納部30と、収納部30の軸ピン50に軸着されたミラーユニット60と、軸ピン50に取り付けられた前後位置調整板部群(以下「調整板部群」とする)80とを有している。
ここで、収納部30は、板状部材をコ字状に形成した形状を呈する収納部本体32と、収納部本体32の後方側の面に固定された支持部40と、収納部本体32に挿通する軸ピン50とを有している。
収納部本体32は、縦長帯板状の側面部34と、側面部34の前側の辺部から側面部34に対して直角に形成された縦長帯板状の前面部36と、側面部34の後側の辺部から側面部34に対して直角に形成された縦長帯板状の後面部38とを有し、断面略コ字状を呈している。ここで、側面部34は、方形状の板状を呈し、前面部36と後面部38とは、側面部34とは反対側の上下の角部にアールを形成した方形状の板状を呈している。ここで、側面部34の縦方向(上下方向としてもよい)の長さh11と前面部36の縦方向の長さh21とは同一に形成されているのに対して、後面部38の縦方向の長さh31(長手方向の長さ)は、側面部34や前面部36の縦方向の長さよりも短く形成され、側面部34の上端と前面部36の上端と後面部38の上端とは面一に形成されていることから、後面部38の下端は、側面部34の下端よりも上位置に形成されている。これにより、操作つまみ68を用いてミラーユニット60を回動させた際に、操作つまみ68が後面部38に接触しないように構成されている。
また、側面部34の縦方向の長さh11や前面部36の縦方向の長さh21は、ミラーユニット60の長手方向の長さ(支持部62の長手方向の長さでもある)h41以上に形成され、これにより、ミラーユニット60を収納部本体32に収納した状態では、ミラーユニット60が収納部本体32から上下方向に突出しないようになっている。なお、側面部34の縦方向の長さh11や前面部36の縦方向の長さh21をミラーユニット60の長手方向の長さh41と同一としてもよい。
また、前面部36の横方向の長さh22と後面部38の横方向の長さh32とは同一に形成され、長さh22、h32は、ミラー72の短手方向の長さh42以上の長さに形成され、図13に示すようにミラーユニット60を収納部本体32に収納した状態では、ミラー74が収納部本体32から突出しない(つまり、前面部36や後面部38の内側の端部(側面部34とは反対側の端部)から突出しない)ように形成されている。
また、前面部36と後面部38には軸ピン50を挿通するための円形の挿通孔36a、38aが形成されている。この挿通孔36aと挿通孔38aは、左右方向に同じ位置に形成され、これにより、挿通孔36a、38aに挿通された軸ピン50は前面部36、後面部38に対して垂直となる。なお、挿通孔36aの径の大きさは、軸ピン50の軸部52の溝部52aが嵌合するために、挿通孔38aの径の大きさよりも小さく形成されている。つまり、挿通孔38aは、軸ピン50の軸部52が挿通する大きさに形成され、挿通孔36aは、軸部52の径(最大径)よりも小さく形成されている。これにより、軸ピン50が収納部本体32に対して回転可能に固定されるとともに、軸ピン50が挿通孔36a、38aから容易には脱落しないようになる。
また、支持部40は、細長の板状部材を略コ字状に形成した形状を呈し、方形状の平板状の中間板部42と、中間板部42の上辺から突出した平板状の突出板部44と、中間板部42の下辺から突出した平板状の突出板部46とを有している。突出板部44と突出板部46とは互いに平行に形成されている。
なお、突出板部44と突出板部46間の長さは、蝶番部15に軸着できるように、突出部12aの上面と突出部12bの下面間の長さと同一又はわずかに長く形成されている。また、中間板部42の横方向の長さは、後面部38の横方向の長さh32よりも短く形成されている。
また、突出板部44の長手方向の長さh51は、突出板部46の長手方向の長さh52よりもわずかに長く形成され、突出板部44の先端位置と突出板部46の先端位置を結ぶ方向は鉛直方向となっているので、これにより、中間板部42は、突出板部44、46に対してわずかに傾斜し、中間板部42は、上側が前方側となるように(つまり、フロント12の前傾角度に沿う形で)傾斜している。また、突出板部44と突出板部46には、対応する位置に、ネジ17を挿通するための円形の挿通孔44a、46aが形成されている。ネジ17が挿通孔44a、46aに挿通された状態では、ネジ17は、鉛直方向となっている。これにより、後方視認装置20−1を蝶番部15に取り付けた状態では、図13、図14、図15等に示すように、収納部本体32の上側が、フロント12の傾斜角度に沿って、前側に傾斜している。例えば、図13や図17では、ネジ17の軸線方向と後面部38の側面部34側の辺部とは角度α11が形成され、収納部本体32が傾斜した状態となっている。また、図15からも分かるように、眼鏡5を真上から(つまり、鉛直方向の真上から)視認した場合に、収納部本体32が傾斜している。これは、フレーム12の両端を除く部分において、レンズ16−1、16−2に前傾角度を設けるために、フレーム12の上側が前方側に傾斜していることから、フレーム12の屈曲部12−1の内側の傾斜面に沿って後方視認装置20−1を配置することで、収納部本体32がフレーム12と一体化して、周囲から目立たなくさせるためである。
支持部40を蝶番部15に取り付けた状態では、収納部本体32はフレーム12の端部の内側(つまり、屈曲部12−1、12−2)の内側に設けられ(つまり、収納部本体32は、フレーム12の端部の内側の位置に固定して設けられている)、突出板部44の下面が突出部12aの上面に接し、突出板部46の上面が突出部12bの下面に接した状態で(つまり、突出板部44と突出板部46とで、突出部12a、14a、12bを挟んだ状態で)、ネジ17の軸部18を挿通孔44a、突出部12aのネジ穴、突出部14aの挿通孔、突出部12bのネジ穴、挿通孔46aに挿通させることにより、軸部18が、突出部12a、12bのネジ穴に螺合する。つまり、支持部40を蝶番部15に取り付けた状態では、突出板部44が蝶番構成部の上端に接し、突出板部46が蝶番構成部の下端に接している。なお、突出板部44は、軸部18が突出部12aのネジ溝に螺合することにより、頭部19と突出部12a間に挟まれた状態で締め付けて固定され、軸部18は、挿通孔46aにも挿通されるので、支持部40が蝶番部15に確実に固定される。よって、支持部40の突出板部44をネジ17により蝶番部15(特に、突出部12a)に締め付けた状態で固定するので、収納部30はネジ17に沿った軸線を中心に容易に回動することがなく、後方視認装置20−1、20−2が眼に触れて危険となることがない。なお、挿通孔44a及び挿通孔46aの形状は、前後方向(Y1−Y2方向)において、縦長に形成されていることが好ましい。すなわち、挿通孔44a及び挿通孔46aの径の大きさは、ネジ17の軸部18の径と同一又はわずかに大きく形成されるが、収納部本体32の鉛直方向(Z1−Z2方向)における設置角度を調整する場合、例えば、ネジ17の軸線方向と後面部38の側面部34側の辺部との為す角度α11を相殺して、収納部本体32をネジ17の軸線方向と平行に設ける場合、突出板部44及び突出板部46における挿通孔44a及び挿通孔46aの位置を前後方向にずらす必要がある。そこで、挿通孔44a及び挿通孔46aの孔の形状が、前後方向において、縦長に形成されていれば、収納部本体32の鉛直方向における設置角度を調整することが可能となる。
また、軸ピン(軸部材としてもよい)50は、軸部52と、軸部52の基端に設けられた頭部54とを有し、軸部52は、略円柱状を呈し、円柱形状の一部に溝部(リング状の溝部)52aを形成した形状となっている。つまり、溝部52aは、軸部52の先端側に形成され、この溝部52a形成部分の径は、溝部52aの形成部分が挿通孔36aに挿通できるように、挿通孔36aの径以下に形成されている。また、頭部54の径は、挿通孔38aの径よりも大きく形成されている。これにより、軸ピン50を挿通孔38a側から挿通孔38a、36aに挿通した際には、溝部52aが挿通孔36aに嵌合し、挿通孔38aには、軸部52の基端側の部分が挿通した状態となり、頭部54は、後面部38の後面側に接し、軸部52の溝部52aよりも先端側の部分は、前面部36よりも前面側に突出する。これにより、軸ピン50は、収納部本体32に対して回転可能に固定される。つまり、軸ピン50は、前面部36と後面部38間に略前後方向に支持して設けられている。また、軸ピン50の先端部分が前面側に突出しているので、収納部本体32がフレーム12の屈曲部12−1、12−2の内側に設けられた状態では、図16、図17に示すように、前面側に突出した軸ピン50の先端部分がレンズ16−1、16−2の側面(外側の端部)に接し、収納部30のネジ17に沿った軸線を中心とした回動が規制されているので、収納部30を固定するネジ17による締め付けが緩んだ状態になっても、収納部30は規制位置よりさらに内側に回動することがなく、後方視認装置20−1、20−2が目に触れて危険となることがない。なお、屈曲部12−1、12−2の内側に収納部本体32を収納できるスペースを設ける場合には、すなわち、屈曲部12−1、12−2の内側の左右方向(X1−X2方向)の長さが、収納部本体32の短手方向の長さh22より長く形成され、前面部36の長手方向の辺部36−1がレンズ16−1、16−2の側面(外側の端部)に接することができる場合には、ネジ17による締め付けが緩んだ状態となっても、辺部36−1がレンズ16−1、16−2の側面に接し、収納部30のネジ17に沿った軸線を中心とした回動を規制することができる。よって、この場合には、軸ピン50を逆向きに、すなわち、頭部54が前面側に位置するようにして固定してもよい。したがって、挿通孔36aと38aの径は逆となり、挿通孔38aの径の大きさは、軸ピン50の軸部52の溝部52aが嵌合するために、挿通孔36aの径の大きさよりも小さく形成される。また、屈曲部12−1、12−2の内側に収納部本体32を収納できるスペースを設ける場合には、フレーム12の内側に辺部36−1を当接させるための規制突起が形成されていてもよい。例えば、フレーム12における左側構成部12−Aを例にとると、左側構成部12−Aの上側構成部12−A−1(図16参照)の内側と下側構成部12−A−2(図16参照)の内側に背面側に突出する突起を設けて、辺部36−1がこれらの突起に対して側方から接する構成とする。
なお、軸ピン50の先端部分がレンズ16−1、16−2の側面(外側の端部)に接し、又は前面部36の長手方向の辺部36−1がレンズ16−1、16−2の側面(外側の端部)に接して、収納部30のネジ17に沿った軸線を中心とした回動が規制される範囲において、ネジ17の軸線を基点として、収納部本体32の水平方向(X1−X2方向)における設置角度を調整することができる。
収納部30を構成する収納部本体32と支持部40と軸ピン50とは、透明な部材(具体的には、透明な合成樹脂材)により構成されている。なお、収納部30を半透明又は着色された部材(例えば、フレーム12と同系色に着色された部材)により構成してもよい。ミラーを収納部本体32に収納することで、ミラーの未使用時にはミラーによる光の乱反射を抑えることができるとともに、ミラーの使用時には、収納部本体32を眼鏡本体10の内側に常設することで、必要なときに即座に使用することができるので、機動性が備わる。なお、軸ピン50を金属製としてもよい。収納部30が透明又は半透明の部材により形成されることにより、後方視認装置が目立つことなく、周囲の人に違和感を与えることがなく、また、収納部30がフレーム12と同系色に着色された部材により形成されることにより、後方視認装置がフレームと一体化して目立つことがなく、周囲の人に違和感を与えることがない。
また、ミラーユニット60は、支持部62と、支持部62の支持部本体64の後面側の面に固定された静止用板部70と、支持部62の支持部本体64の後面側の面に固定された装飾板72と、装飾板72の後面側の面に固定されたミラー74とを有している。
ここで、支持部(本体部)62は、装飾板72を介してミラー74を支持するものであり、略L字状の板状を呈する支持部本体(板状部)64と、支持部本体64における突状部66から連設され、支持部本体64に対して直角に形成された操作つまみ68とを有している。この支持部本体64は、全体に平板状を呈していて、支持部本体64は、縦長帯状の帯状部65と、帯状部65の側辺の下端領域から連設された突状部66とを有している。
この帯状部(帯板状部)65は、縦長長方形状の3つの角部(突状部66を連設した箇所以外の3つの角部)にアールを形成した形状を呈し、長手方向の一方の端部は、半円状に形成されている。帯状部65の下側領域には、軸ピン50の軸部52を挿通するための円形の挿通孔65aが形成されている。この挿通孔65aの径の大きさは、軸部52の径(溝部52a以外の部分の径)以上に形成され、ミラーユニット60が軸ピン50に対して軸ピン50の軸線を中心に回転可能に形成されている。帯状部65の短手方向の長さは、ミラー74の短手方向の長さh42と同一に形成されている。
また、突状部66は、帯状部65の長手辺65−1の端部から連設され、方形状の板状を呈し、長手辺65−1と直角の辺部の一方は、帯状部65の辺部と面一に形成されている。この突状部66の先端は、ミラーユニット60が収納部本体32に収納された状態では、収納部本体32から突出した状態となる。これにより、ミラーユニット60を収納部本体32に対して回動した場合でも、操作つまみ68が収納部本体32に接触することがない。
また、操作つまみ68は、突状部66の先端から連設され、方形状の板状の先端の一対の角部にアールを形成した形状となっている。
なお、支持部62は、透明な部材(具体的には、透明な合成樹脂材)により構成されている。
また、静止用板部70は、リング状の板状を呈し、静止用板部70の径は、帯状部65の短手方向の長さh42以下(好ましくは若干小さく)形成されている。また、静止用板部70の厚みは、ミラー74の厚みと装飾板72の厚みを加算した厚みと略同一(同一又は若干大きく)に形成されている。この静止用板部70には、軸ピン50の軸部52を挿通するための円形の挿通穴70aが形成されている。この挿通穴70aの径の大きさは、軸部52の径(溝部52a以外の部分の径)以上に形成されている。この静止用板部70は、軟質合成樹脂(好適には、軟質性塩化ビニル)により形成され、静止用板部70が接する調整板部82(84)や後面部38との間に適度な摩擦を生じて、ミラーユニット60が、図24に示すように、所望の回動角度で静止するように形成されている。したがって、収納部本体32に収納された状態におけるミラー74の収納姿勢を保持し、また、収納部本体32から露出した状態におけるミラー74の露出姿勢を維持することができる。なお、静止用板部70は、透明な軟質合成樹脂(好適には、透明な軟質性塩化ビニル)により形成するのが好ましい。
なお、静止用板部70と支持部62とを軟質合成樹脂で一体成型してもよい。支持部62を軟質合成樹脂で形成することにより、支持部本体64の帯状部65(特に、ミラー74と静止板部70との間の境界部位)が柔軟となり、ミラーユニット60による眼の損傷を未然に防止することができ、安全に使用することができる。
装飾板72は、帯状を呈し、長方形状の4つの角部にアールを形成して、長手方向の両側の端部は半円状に形成されている。短手方向の長さは、ミラー74の短手方向の長さh42と同一に形成され、長手方向の長さは、装飾板72が静止用板部70に接しない程度の長さ(つまり、長さh41から静止用板部70の外径を減じた長さ以下の長さ)となっている。装飾板72は、支持部本体64の帯状部65の後面側の面に接着等により固定して設けられ、装飾板72の上端の半円状の辺部と帯状部65の上端の半円状と辺部とを一致させて固定している。この装飾板72の前面側は、着色されている。つまり、装飾板72は、ミラー74の前面側の面を装飾するために設けられ、周囲から目立たない色(例えば、フレーム12と同系色)に着色されている。
また、ミラー74は、装飾板72と同大同形状に形成され、装飾板72の後面側の面に接着等により固定して設けられている。ミラー74は、ミラー74の外周を装飾板72の外周に一致させて装飾板72に固定されている。このミラー74の後面側の面には鏡面が設けられている。
なお、ミラー74の前面側の面を装飾して、装飾板72を省略してもよい。その場合には、静止用板部70の厚みは、ミラー74の厚み以上の厚みがあればよい。
なお、ミラー74は、表面に鏡面加工が施されて塩化ビニル板により形成されている。
ミラーユニット60は、軸ピン50の軸部52が挿通孔65a、70aに挿通されることにより、軸ピン50を介して収納部本体32に回動可能に取り付けられている。
また、軸ピン50は収納部本体32に対して回転しないように固定され、ミラーユニット60は、軸ピン50に対して回転する構成としてもよく、あるいは、軸ピン50が収納部本体32に対して回転し、ミラーユニット60が軸ピン50に固着された構成としてもよい。さらに、収納部本体32と軸ピン50とを一体に成型し(つまり、収納部本体32に軸ピン(前面部36と後面部38間に設けられた軸ピン)を設けた構成とする)、ミラーユニット60が、収納部本体32に固定された軸部材を軸として回動する構成としてもよい。この場合には、軸ピン(軸部材)50を取り外すことができないので、ミラーユニット60を軸部材に掛止するために、帯状部65と静止用板部70とに、以下の調整板部群80における切欠部84Kと同形状の切欠部を要する。
調整板部群80は、複数の前後位置調整板部(以下「調整板部」とする)82、84とを有し、調整板部82と調整板部84とは同一の構成であるので、調整板部84を例にとって説明する。調整板部84は、全体に板状を呈していて、調整板部84は、本体部84−1と、本体部84−1の周縁から突出して形成された棒状の柄部84−2とを有している。
本体部84−1は、板状を呈し、円形の板状部材に対して円形状と扇形状とを連ねた切欠部84Kを形成した形状を呈している。この切欠部84Kは、円形の開口部84aと、本体部84−1の周縁から開口部84aに至る扇状の切欠部84bとから構成されている。この扇状の切欠部84bの最奥位置の幅h61は、開口部84aの径h62よりも小さく形成されている。つまり、幅h61は、軸部52の径(溝部52a以外の部分の径)よりも小さく形成され、開口部84aの径h62は、軸部52の径(溝部52a以外の部分の径)と略同一に形成され、調整板部84の切欠部84b内に軸部52を配置し、調整板部84を軸部52側に押し込むことにより、軸部52が開口部84aに嵌合するようになっている。つまり、調整板部84の切欠部84Kは、軸部52に掛止するためのものである。この本体部84−1の外径は、静止用板部70の外径と略同一に形成されている。
この調整板部84は、軟質合成樹脂(好適には、軟質性塩化ビニル)により形成されている。なお、調整板部84は、透明な軟質合成樹脂(好適には、透明な軟質性塩化ビニル)により形成するのが好ましい。
なお、ミラーユニット60における本体部62と静止用板部70とを軟質合成樹脂により一体に形成し、本体部62と静止用板部70とに、軸部52に掛止するための切欠部84Kと同形状の切欠部を形成してもよい。
この調整板部群80における各調整板部82、84はミラーユニット60の収納部本体32における前後方向の位置を調整するために用いられる。つまり、眼鏡本体10に矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2が装着される場合、通常、度数が強くなるほどレンズの厚みが増し、フレーム12から後側(Y2側)にはみ出してくるため、ミラーユニット60の回動動作に支障が出る。そこで、レンズの厚みに応じて、ミラーユニット60の回動動作に支障が出ないように、収納部本体32内におけるミラーユニット60の前後方向の位置を調整する必要がある。
ミラーユニット60を最も前側(Y1側)に位置させる場合(これを前位置とする)には、図18に示すように、調整板部82、84をともに静止用板部70の後面側に位置させる。つまり、調整板部82を静止用板部70の後面側に接した位置とするとともに、調整板部84を調整板部82の後面側に接した位置とする。また、ミラーユニット60を最も後側(Y2側)に位置させる場合(これを後位置とする)には、図22に示すように、調整板部84を支持部本体64の前面側に接した位置とするとともに、調整板部82を調整板部84の前面側に位置させる。また、ミラーユニット60を前位置と後位置の中間に位置させる場合(これを中間位置とする)には、図23に示すように、調整板部82を支持部本体64の前面側に位置させるとともに、調整板部84を静止用板部70の後面側に位置させる。この調節により、眼鏡本体10に装着される矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2の厚みに対応して、ミラーユニット60をレンズ16−1、16−2の裏面直近の位置で回動させることができる。
後方視認装置20−1がフレーム12に取り付けられた状態では、支持部40が蝶番部15に取り付けられ、収納部本体32は、屈曲部12−1の内側の空間に配置されている。また、収納部本体32は、上下方向には、フレーム12の前傾角度に沿って、上側が前側に傾斜しており(例えば、図13や図17に示すように、ネジ17の軸線方向と後面部38の側面部34側の辺部とは角度α11が形成されている)、前後方向には、フレーム12の湾曲に沿って、収納部本体32の右側は左側よりも前方に傾斜している(つまり、図15に示すように、収納部本体32の前面部36は左右方向(X1−X2方向)に対してα12の角度で傾斜している)。なお、収納部本体32における縦方向の辺部はほぼ鉛直方向(Z1−Z2方向)となっており、左右方向には傾斜していない(例えば、図16に示すように、前面部36の右側の辺部36−1は、正面視において鉛直方向となっている)。よって、収納部本体32がフレーム12と一体化するので、後方視認装置20−1、20−2を周囲から目立たなくさせることができる。
また、軸ピン50は、収納部本体32においては略前後方向を向いているが、収納部本体32が眼鏡本体10に装着された状態では、フレーム12の前傾角度に沿って収納部本体32の上側が前方に傾斜し、また、フレーム12の湾曲に沿って収納部本体32の右側が左側より前方に傾斜するので、軸ピン50は、前後方向(Y1−Y2方向)に対して、上下方向には、先端側が若干斜め下方を向くとともに、左右方向には、先端側が若干斜め外側を向く状態となる。つまり、ミラーユニット60の回動軸は、収納部本体32内においては略前後方向を向いているが、収納部本体32が眼鏡本体10に装着された状態では、前後方向に対して、上下方向には、先端側が若干斜め下方を向き、左右方向には、先端側が若干斜め外側を向いている。したがって、ミラーユニット60の回動面は、前後方向に対して、上下方向には上側が前側に傾斜し、左右方向には内側が前側に傾斜する。これにより、ミラーユニット60をフレーム12の内側の面に沿って回動させることができる。
また、本実施例は、眼鏡本体10に後方視認装置20−1、20−2を後付けした例示であり、収納部本体32はフレーム12の内側とレンズ16−1の一部に接した状態となっている。つまり、収納部本体32の側面部34と前面部36間の角部がフレーム12の屈曲部12−1の内側に接し、また、前面部36がレンズ16−1の外側の端部の内側に接している。つまり、後方視認装置20−1の収納部30は、蝶番部15とフレーム12間、さらには、蝶番部15とレンズ16−1間に嵌合されている。これにより、収納部30の支持部40が蝶番部15に締め付けて固定されていることと相まって、操作つまみ68を操作してミラーユニット60を回動させた場合やテンプル14−1をフレーム12に対して回動させた場合に、後方視認装置20−1がネジ17の軸線を中心に回動してしまうことがなく、後方視認装置20−1、20−2が眼に触れて危険となることがない。
また、屈曲部12−1とレンズ16−1との間に収納部本体32を収納可能なスペース(具体的には、左右方向にはh22の長さ、前後方向にはh12の長さ)を設ける場合には、収納部本体32の前面部36の角部を屈曲部12−1の内側に当接させ、前面部36の辺部36−1(図18参照)をレンズ16−1の外側の端部に当接させ、前面部36の内側の面とレンズ16−1の裏面とが面一となるように、収納部本体32を屈曲部12−1の内側に嵌合させることができる。よって、前面部36の辺部36−1がレンズ16−1の外側の側面に当接しているので、収納部30を固定するネジ17による締め付けが緩んだ状態となっても、収納部30のネジ17の軸線を中心とした回動が規制され、後方視認装置20−1、20−2が眼に触れて危険となることがない。また、屈曲部12−1の内側に収納部本体32を収納可能なスペースを設ける場合には、収納部30のネジ17の軸線を中心とした回動を規制するために、屈曲部12−1の内側(例えば、12−D(図1参照)の位置)に辺部36−1を当接させるための規制突起が形成されていてもよい。例えば、屈曲部12−1の内側に背面側に突出する突起を設けて、辺部36−1がこれらの突起に対して側方から接する構成とする。
なお、ミラー74を起立した状態とした場合には、図13、図24(a)に示すように、ミラー74は収納部本体32内に収納された状態となり(つまり、眼鏡5は、ミラー74の収納機能を有しているといえる)、一方、ミラーユニット60を回動させてミラー74を横方向にした場合には、ミラー74は、図14、図24(c)に示すように、収納部本体32から露出してフレーム12の下端に沿った状態となる。ミラーユニット60は、図13、図24(a)に示すように、収納部本体32内に収納された状態(「ミラーの収納状態」とする)と、図14、図24(c)に示すように、収納部本体32から露出した状態(「ミラーの全開状態」又は「定位置」とする)の間を回動可能である。ミラーユニット60の回動に際しては、ミラー74が収納部本体32内に収納された状態においてミラーユニット60の下端領域に回動軸が設けられているので、ミラー74が収納部本体32に収納された状態からミラーユニット60が回動するに際しては、ミラーユニット60の上端が内側かつ下方に回動する。
なお、図24(c)に示すように、ミラー74の全開状態(定位置)では、突状部66が側面部34の下端部分の内側に当接するので、ミラー74の収納状態(図24(a)参照)からミラー74の全開状態(定位置)までの角度は90度であるが、側面部34の上下方向の長さを短くして、側面部34の下端が後面部38の下端よりも上側にあるようにすることにより(つまり、側面部34の下端部分を除去した構成とする)、図24(c)に示す位置よりもさらに下方に回動するように構成して、フレーム12の下側の枠の形状に応じて、ミラー74の収納状態から全開状態までの角度を90度よりも大きく100度程度となるようにしてもよい。つまり、ミラーユニット60がフレーム12の左側構成部12−Aの下側の枠に沿った位置でミラー74の全開状態(定位置)とすることができれば、前側(Y1側)から眼鏡5を見た場合、収納部本体32から露出したミラーユニット60の帯状部65をフレーム12の下側の枠の陰に隠すことができるので、収納部本体32から露出したミラー74や帯状部65を周囲から目立ちにくくすることができる。
なお、後方視認装置20−2は、後方視認装置20−1と左右対称である以外は同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。
なお、上記の構成においては、収納部本体32の固定方法として、収納部本体支持部40を介して収納部本体32を眼鏡本体10に固定するとしたが、屈曲部12−1、12−2の内側に収納部本体32を収納できるスペースを設ける場合には、フレーム12の屈曲部12−1、12−2の内側の面(つまり、フレーム12の端部の内側)に、収納部本体32の前面部36又は側面部34を固着させ(固着方法としては、接着剤や加熱による溶着等が考えられる)、収納部本体支持部40を省略した構成として、収納部本体32をフレーム12の端部の内側の位置に固定して設けるようにしてもよい。なお、この場合には、後方の視野範囲(つまり、鉛直方向(Z1−Z2方向)及び水平方向(X1−X2方向)におけるミラー74の設置角度)の調整は、ミラーユニット60の帯状部65(特に、静止用板部70とミラー74との境界部位)を変形させることで、対応することもできる。
次に、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2が装着された眼鏡本体10に、後方視認装置20−1、20−2(特に、収納部30)を設ける場合の眼鏡5の使用方法について説明する。なお、眼鏡5を使用するに際しては、調整板部82、84を用いてミラーユニット60の前後位置を予め調整しておく。すなわち、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2の厚みに対応して、ミラー74を最も前側(Y1側)に位置させる場合(レンズ16−1、16−2の厚みが薄い場合には、前位置とする)には、図18に示すように、調整板部82、84をともに静止用板部70の後側に配置し(つまり、調整板部82を静止用板部70の後側の面に接するように配置し、調整板部84を調整板部82の後側の面に接するように配置する)、ミラー74を最も後側(Y2側)に位置させる場合(レンズ16−1、16−2の厚みが厚い場合には、後位置とする)には、図22に示すように、調整板部82、84をともに支持部本体64の前側に配置し(つまり、調整板部84を支持部本体64の前側の面に接するように配置し、調整板部82を調整板部84の前側に接するように配置する)、ミラー74を前位置と後位置の中間に位置させる場合(レンズ16−1、16−2の厚みが中程度の場合には、中間位置とする)には、図23に示すように、調整板部82を支持部本体64の前側の面に接するように配置し、調整板部84を静止用板部70の後面側に接するように配置する。なお、調整板部82、84は、軸ピン50の軸部52に取り付ける。つまり、調整板部82、84の円形の開口部を軸部52に嵌合させる。この調整により、ミラーユニット60をレンズ16−1、16−2の裏面直近の位置で回動させることができる。
なお、調整板部82、84を所望の位置で軸部52に取り付けて、ミラーユニット60の前後位置を調整した場合には、調整板部82、84の柄部(調整板部84においては、柄部84−2)を切り取ることにより、操作つまみ68を操作する際に柄部が邪魔になることがない。
次に、ミラー74が収納部本体32に収納された状態、すなわち、収納状態にして、レンズ16−1、16−2の裏面から瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離を合わせる。なお、収納状態では、図13に示すように、ミラーユニット60は最も外側に回動した状態となっていて、ミラー74は起立した状態で収納されている。
頂点間距離の合わせ方は、前述と同じ方法による。すなわち、眼鏡5を顔に装着して、通常のパッドの位置合わせと同様に、パッド足110を伸縮させて、レンズ16−1、16−2の裏面から装用者の瞳(角膜)の頂点までの間隔が12ミリとなるように合わせる(仮調整)。装用者は眼鏡5を顔に掛けた状態で、テンプル14−1、14−2を両手で支持して、フロント12を前後させ、頂点間距離が12ミリの間隔に調整された第1使用状態と頂点間距離を長くした第2使用状態との間で、レンズ16−1、16−2を通して網膜に映り込む像を比較して、見やすい間隔(すなわち、検査用眼鏡600を通して得られた矯正効果を再現できる間隔)を確認して選択する。頂点間距離が12ミリの間隔で見やすかった場合には、そのままの状態で使用する(本調整)。よって、レンズ16−1、16−2の裏面から装用者の瞳(角膜)の頂点までの距離は、12ミリの間隔で適正化される(第1使用状態(通常使用状態))。
この間隔では、収納部30(特に、後面部38)と眼との間隔、すなわち、設置距離が狭すぎるので、図24に示すように、操作つまみ68を操作して、収納部本体32からミラーユニット60を回動させてミラー74を露出させるときに、ミラー74が眼(特に、まつ毛)に触れて危険となる。また、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離も近接し過ぎるので、ミラー74を通して後方を視認しづらくなる。そこで、眼鏡本体10が該鼻当て100−1、100−2(特に、パッド支軸130)を有した状態で使用すれば、頂点間距離が12ミリの間隔で適正化された第1使用状態(通常使用状態)から、頂点間距離を長くした第2使用状態とすることができるので、収納部30と眼との間隔、すなわち、設置距離を長くすることで、収納部本体32からミラー74を安全に露出させることができるとともに、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離も長くすることができるので、ミラー74を通して後方を視認しやすくすることができる。
すなわち、後方視認装置20−1、20−2を使用するときには、テンプル14−1、14−2を両手で支持し、フレーム12を前方上向きに押し出して、パッド支軸130をパッド箱120内から後側(X12側)にスライドさせて、頂点間距離を長くした第2使用状態とする。第2使用状態では、収納部30と眼との間隔、すなわち、設置距離を長くすることができるので、操作つまみ68を操作してミラーユニット60を内側に回動させて、収納部本体32からミラー74を眼(特に、まつ毛)に触れることなく安全に露出させることができる。また、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離も長くすることができるので、回旋距離h85が見かけ上、縮み、回旋角度α6(図14参照)が小さくなる結果、少ない眼の回旋で後方を見ることができ、ミラー74を通して後方を視認しやすくすることができる。
次に、第2使用状態の位置において、前後方向(Y1−Y2方向)におけるミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離が定まることにより、後方の視野範囲を調整するための水平方向(X1−X2方向)及び鉛直方向(Z1−Z2方向)の設置角度を調整する必要がある。
収納部30を設ける場合には、収納部本体32における水平方向及び鉛直方向の設置角度を調整することによって、後方の視野範囲を調整することができる。すなわち、ミラーユニット60は、収納部本体32の前面部(36)と後面部(38)に対して、軸ピン(軸部材としてもよい)50を介して略平行に設けられているので、収納部本体32における水平方向及び鉛直方向の設置角度を調整することによって、ミラー74における後方の視野範囲を調整することができる。鉛直方向(Z1−Z2方向)の調整は、図13や図17に示すように、ネジ17の軸線方向と後面部38の側面部34側の辺部とのなす角度α11が相殺されるように、つまり、収納部本体32がネジ17の軸線と平行となるように設置すれば、ミラー74における後方の視野範囲を、鉛直方向において、上側から下側に移動させることができる。具体的には、支持部40の突出板部44及び突出板部46と中間板部42(後面部38としてもよい)とのなす角度が90度(直角)となるように変形させて、蝶番部15に固定し直せばよい。したがって、収納部本体32の蝶番部15(特に、ネジ17)に対する固定位置を調整することができるように、挿通孔44a及び挿通孔46aの孔の形状は、前後方向に縦長に形成されていることが好ましい。また、水平方向(X1−X2方向)の調整は、図15に示すように、収納部本体32の前面部36の左右方向(X1−X2方向)に対する傾斜角度α12が相殺されるように、つまり、収納部本体32が左右方向と水平となるように設置すれば、ミラー74における後方の視野範囲を、水平方向において、真後ろからより外側へ移動させることができる。具体的には、ネジ17の軸線を中心に収納部本体32を内側に回動させて、ミラー74が左右方向と水平となるようにして、蝶番部15に固定し直せばよい。したがって、収納部本体32がネジ17の軸線を中心に回動して、収納部本体32が左右方向と水平となる位置で、軸ピン50の先端側がレンズ16−1、16−2の外側の端部に接し、又は、前面部36の側面部とは反対側の辺部36−1がレンズ16−1、16−2の外側の端部に接して、さらに内側に収納部本体32が回動しないように規制されていることが好ましい。
なお、後方の視野範囲は、ミラーユニット60を回動させて調節することができる。すなわち、ミラーユニット60においては、静止用板部70と、調整板部82、84が軟質合成樹脂により形成されているので、他の部材との摩擦力が大きく、ミラーの収納状態と全開状態の間の任意の位置でミラーユニット60を静止させることができ、ミラー74を任意の回動角度とすることができる。ミラーユニット60の回動角度としては、後方の上側を見たい場合には、ミラー74の収納状態(図13、図24(a))から回動角度を小さくし、例えば、図24(b)の状態とし、後方の下側を見たい場合には、回動角度を大きくして、例えば、図24(c)の状態とする。なお、夜間は、収納部本体32から露出したミラーユニット60が目立たないので、後方を見やすい位置とし、昼間や往来が激しい場所では、図24(b)のようにミラーの収納状態と全開状態の中間位置ではミラーユニット60が目立ってしまうので、全開位置としておくのが好ましい。つまり、ミラーの全開位置では、ミラーユニット60はフレーム12の下側の部分とほぼ平行になるので、目立ちにくいといえる。
頂点間距離が第1使用状態(通常使用状態)の位置で12ミリの間隔で適正化され、第2使用状態の位置で収納部本体32の設置角度(後方の視野範囲)が調整された後、後方視認装置20−1、20−2を使用する場合には、頂点間距離を長くした第2使用状態の位置で使用する。すなわち、レンズ16−1、16−2を通して眼鏡として使用する場合には、第1使用状態(通常使用状態)の位置で使用し、特に後方を注視したい場合には、テンプル14−1、14−2を両手で支持し、フレーム12を前方上向きに押し出し、収納部30と眼との間隔、すなわち、設置距離を長くした第2使用状態とする。収納部本体32にミラー74が収納された収納状態から、操作つまみ68によりミラーユニット60を内側に回動させて、ミラー74を収納部本体32から露出させて、後方を視認可能な状態とする。ミラーユニット60と眼(特に、まつ毛)との間隔が開くので、ミラー74が眼に触れない状態で、安全に露出させることができる。また、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離も長くなるので、ミラー74を通して後方を視認しやすくすることができる。また、ミラー74の未使用時には、第2使用状態の位置で、操作つまみ68を操作して、ミラーユニット60を外向きに回動させ、ミラー74を収納部本体32に収納する。眼鏡本体10が収納部30を有するので、ミラーの未使用時には、ミラー74の反射面を収納部本体32の後面部38により覆い隠すことにより、ミラー74による光の乱反射を抑えることができるとともに、ミラー74の使用時には、即座に操作つまみ68を操作して、ミラー74を収納部本体32から露出させることができるので、機動性に富むとともに、ミラー74を眼鏡5に常設することができる。
よって、頂点間距離の調節機能付眼鏡5を使用すれば、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2に対応して頂点間距離を適正化しつつ、かつ、収納部30(収納ケース)と眼との間隔、すなわち、設置距離を調節することができるので、後方視認装置20−1、20−2をフレーム12の屈曲部12−1、12−2の内側に設けることができる。また、ミラー74の全開状態(定位置)では、ミラーユニット60はフレーム12の下枠に沿うので、収納部本体32から露出した帯板状部65やミラー74を周囲から目立ちにくくすることができる。また、設置距離を長くした第2使用状態とすることができるので、第2使用状態の位置で操作つまみ68を操作して、収納部本体32からミラー74を安全に露出させることができる。したがって、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2が装着される眼鏡5に、後方視認装置20−1、20−2を設けて、眼鏡5に後方視認機能を付加することができる。
なお、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2と瞳(角膜)の頂点との間隔、すなわち、頂点間距離が第2使用状態の位置で適正化される場合には、大変都合がよい。すなわち、レンズ16−1、16−2が固有の頂点間距離をとる場合には、収納部30と眼との間隔、すなわち、設置距離もすでに長くなっている状態だからである。したがって、その状態よりも、さらに前側(Y1側)にフレーム12を押し出す必要がない。よって、通常のパッドの位置の合わせ方と同様に、パッド足110を伸ばして(具体的には、治具を用いてパッド足110を伸ばす)頂点間距離を長くして、レンズ16−1、16−2と瞳(角膜)の頂点との間隔を第2使用状態の位置に合わせて、パッド箱120からパッド支軸130を取り外し、パッド支軸にパッドネジ150の挿通孔を有する市販のパッドに付け替えればよい。頂点間距離は第2使用状態の間隔で適正化される。この状態では、収納部30と眼との間隔、すなわち、設置距離も長くなっているので、操作つまみ68を操作して、収納部本体32からミラー74を安全に露出させることができる。また、ミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離も長くなっているので、ミラー74を通して後方を視認しやすくすることができる。よって、前後方向(Y1−Y2方向)におけるミラー74と瞳(角膜)との間隔、すなわち、明視距離が第2使用状態の間隔に定まるので、その位置で、水平方向(X1−X2方向)及び鉛直方向(Z1−Z2方向)における収納部本体32の設置角度を調整する。眼鏡本体10にパッド支軸130が装着されていないので、眼鏡5の使用に際しては、レンズ16−1、16−2を通して眼鏡として使用するときも、後方視認装置20−1、20−2を使用して後方を視認するときも、常に、第2使用状態の間隔で使用することになる。なお、後方視認装置20−1、20−2の使用方法は、前述の使用方法と同様であるので、詳しい説明を省略する。
なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。また、図面において、Y11−Y12方向は、X11−X12方向に直角な方向であり、Z11−Z12方向は、X11−X12方向及びY11−Y12方向に直角な方向である。
なお、上述の説明において、眼鏡5に装着される視力矯正用のレンズ16−1、16−2の裏面から装用者の瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離を適正化するに当たり、該鼻当て100−1、100−2(特に、パッド支軸130)が装着された眼鏡5を使用して、レンズ16−1、16−2を通して見やすい間隔、すなわち、検査用眼鏡600において得られた矯正効果を再現できる間隔を装用者自らが確認することができ、レンズ16−1、16−2に固有の頂点間距離を選択することができると説明したが、頂点間距離における適正位置とされる12ミリの間隔を、意図的に変更するのではない。
すなわち、前述の通り、視力矯正に使用されるレンズにおいて、レンズの裏面から瞳(角膜)の頂点までの間隔は、頂点間距離、あるいは、角膜頂点間距離と呼称されるが、JIS規格では、眼鏡枠に装着されるレンズの設計において、通常、レンズの裏面から眼球の回旋中心までの距離を25ミリ(角膜の頂点から眼球の回旋中心までの標準距離は13ミリであるので、したがって、頂点間距離は12ミリ)と定め、頂点間距離が12ミリの間隔で最も収差が出ないように設計される。また、検査用眼鏡による矯正度数の決定においては、最も顔側のレンズホルダに挿入される検査用レンズの裏面から被験者の瞳(角膜)の頂点までの距離を、できるだけ12ミリの間隔に保った状態で矯正度数を決定するとの要請がある。よって、日本の規格においては、検査用眼鏡を使用して頂点間距離を12ミリの間隔に保って矯正度数を決定し、その矯正度数のもとに眼鏡用レンズが12ミリの間隔で最も収差が出ないように設計されるならば、仕上げられた眼鏡用レンズを眼鏡枠に装着して顔に掛けるときには、頂点間距離を12ミリの間隔に保ってフィッティングさせるのが原則である。
よって、次に、検査用眼鏡600を使用して矯正度数が決定され、その矯正度数のもとに眼鏡用レンズ16−1、16−2が製作され、仕上がった眼鏡用レンズを眼鏡本体10に装着して顔に掛けて頂点間距離を合わせる場合、眼鏡本体10に装着されたレンズ16−1、16−2の裏面から装用者の瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔でフィッティングさせると、レンズ16−1、16−2による矯正効果が低減する(すなわち、矯正度数の入ったレンズ16−1、16−2が固有の頂点間距離をとる)原因について説明する。
頂点間距離のずれは、図25に示すように、検査用眼鏡600における各レンズホルダ(右眼用レンズホルダ612a、612b、612c、左眼用レンズホルダ614a、614b、614c)に挿入される検査用レンズの重ね合わせ方により発生する場合がある。すなわち、最後尾のレンズホルダ(最も顔側のレンズホルダ612c、614c(第1レンズホルダとする))に挿入される検査用レンズの裏面から被験者の瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保って矯正度数を決定し、その矯正度数のもとに眼鏡用レンズ16−1、16−2が12ミリの間隔で最も収差が出ないように設計され、仕上げられたレンズ16−1、16−2を眼鏡本体10に装着して顔に掛け、レンズ16−1、16−2の裏面から装用者の瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔でフィッティングさせると見にくい場合である(これを「第1の原因」とする)。また、厚い検査用レンズを重ね合わせて決定した矯正度数を、一枚の薄い眼鏡用レンズに仕上げるという造形上の問題から、頂点間距離が12ミリの間隔からずれる場合がある(これを「第2の原因」とする)。
第1の原因について具体例を示す(両眼とも矯正度数の決定手順は同様であるので、右眼の視力矯正を例に簡略に説明する)。例えば、Aさんが眼鏡を作ることにした。視力低下の原因が遠視によるものか、近視によるものかを調べるため、検査用眼鏡600を使用して、最も顔側のレンズホルダ(第1レンズホルダ)612cに検査用レンズを入れて、順次、レンズを入れ変えたところ、+0.50Dのときに見やすくなったので、遠視であることがわかった。そこで、+0.50Dのレンズの裏面からAさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に合わせた。(なお、遠視は網膜の後方で像が結像する眼の屈折異常である。遠視の矯正には凸レンズを使用し、光を収束させて瞳に入射させることで、像を網膜まで引き戻して矯正する。凸レンズには+の符号を付し、屈折度の単位はジオプトリ(D)を使用する。ジオプトリは焦点距離を逆数で表したものであり、1/1(メートル)=1Dである。)遠視と判明したが、まだ十分な視力が得られない。そこで、中間のレンズホルダ(第2レンズホルダとする)612bにおいて、検査用レンズを挿入して度数を上げていった結果、+1.00Dのとき最高視力が得られた。よって、右眼の矯正度数を+1.50Dと決定して眼鏡用レンズを発注した。(なお、各検査用レンズの屈折度は、焦点距離を基礎としているので、単純に合算することができる。)
次に、Bさんが、視力が落ちたので眼鏡を作ることにした。まず、視力低下の原因が近視によるものか、遠視によるものかを調べるために、右眼用の第1レンズホルダ612cに検査用レンズを入れて、順次、レンズを入れ替えたところ、+0.50Dのとき見やすくなったので、遠視であることがわかった。そこで、+0.50Dのレンズの裏面からBさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保った。遠視と判明したが、まだ、十分な視力が得られないので、第2レンズホルダ612bにおいて検査用レンズを挿入して度数を上げていった結果、+1.00Dのとき最高視力が得られた。よって、右眼の矯正度数が+1.50Dであることがわかった。その後、念のために、+1.50Dのレンズを第1レンズホルダ612cに入れ替えて、+1.50Dのレンズの裏面からBさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保って、見やすさを確認した。見やすかったので、右眼の矯正度数を+1.50Dと決定し、眼鏡用レンズを発注した。
Aさんの場合も、Bさんの場合も、ともに、検査用眼鏡600において、第1レンズホルダ612cに挿入される検査用レンズの裏面からAさん、Bさんの瞳(角膜)の頂点までの間隔、すなわち、頂点間距離を12ミリの間隔に保って矯正度数を決定している。決定した矯正度数は、どちらも同じ+1.50Dである。その矯正度数のもとに、右眼用の眼鏡用レンズ16−2が、12ミリの間隔で最も収差が出ないように設計された。矯正度数+1.50Dの右眼用レンズ16−2が仕上がったので、眼鏡本体10の右側構成部12−Bに装着された。
Bさんの場合には、第1レンズホルダ612cにおいて、+1.50Dの検査用レンズに入れ替えて、+1.50Dの検査用レンズの裏面からBさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保って見やすさを確認している。よって、決定された矯正度数のもとに、12ミリの間隔で最も収差が出ないように設計された眼鏡用レンズ16−2を眼鏡本体10の右側構成部12−Bに装着して、眼鏡5をBさんの顔に掛けて頂点間距離を合わせる場合には、+1.50Dの矯正度数の入った右眼用レンズ16−2の裏面からBさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を、12ミリの間隔に保ってフィッティングさせれば見やすい筈である。
ところが、Aさんの場合には、第1レンズホルダ612cに+0.50Dの検査用レンズを入れて、+0.50Dの検査用レンズの裏面からAさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保ち、第2レンズホルダ612bに+1.00Dの検査用レンズを入れて矯正度数を決定した結果、主力となる+1.00Dの検査用レンズの裏面からAさんの瞳(角膜)の頂点までの間隔は、第2レンズホルダ612bの位置からの計測となっている。
一般に、レンズは同じ度数であったとしても、瞳から遠ざけるほど矯正効果が強まる。例えば、凸レンズの場合には、瞳から遠ざかるほど光を収束させる。よって、Aさんの場合には、第2レンズホルダ612bに挿入された+1.00Dの検査用レンズの矯正効果は、第1レンズホルダ612cに挿入された場合よりも強めの矯正になっている。よって、第1レンズホルダ612cに+0.50Dの検査用レンズが挿入され、第2レンズホルダ612bに+1.00Dの検査用レンズが挿入された状態で見やすかったならば、第1レンズホルダ612cに+1.50Dの検査用レンズが挿入された状態で見やすかったBさんよりも、強めの矯正を必要とする。つまり、Aさんの方が、やや視力が悪いわけである(別な言い方をすれば、検査用眼鏡600における検査用レンズを重ね合わせた一つの光学系において、焦点距離の主点(計測始点)の位置が前側にずれた状態で矯正度数を決定したとしてもよい)。
よって、Aさんの場合には、第1レンズホルダ612cに+0.50Dの検査用レンズが挿入され、+0.50Dの検査用レンズの裏面からAさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保ち、第2レンズホルダ612bに主力となる+1.00Dの検査用レンズが挿入され矯正度数を+1.50Dと決定したので、+1.50Dの矯正度数の入った右眼用レンズ16−2を眼鏡本体10の右側構成部12−Bに装着して、眼鏡5を顔に掛けてレンズ16−2の裏面からAさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を合わせる場合には、12ミリの間隔よりも前側(Y1側)にずらした方が見やすい筈である。よって、Aさんの場合には、眼鏡本体10に装着された右眼用レンズ16−2が、固有の頂点間距離をとるといえる。これは、あくまでも、意図的に頂点間距離を12ミリの間隔からずらすのではなく、検査用眼鏡600における一つの光学系において、焦点距離の主点(計測始点)の位置が前側にずれた状態で矯正度数を決定した場合には、その矯正度数のもとに仕上げられた眼鏡用レンズ(本事例では、右眼用レンズ16−2)の主点(計測始点)の位置も前側(Y1側)にずらした方が見やすくなるわけである。
これが、検査用眼鏡600を使用して矯正度数を決定する場合に、検査用レンズの重ね合わせ方を原因として頂点間距離のずれが発生する例示である。現在、Aさんに使用された検査用レンズの重ね合わせ方も、また、Bさんに使用された検査用レンズの重ね合わせ方も、どちらも容認されている。
次に、第2の原因、すなわち、厚い検査用レンズを重ね合わせて決定した矯正度数を、一枚の薄い眼鏡用レンズに造形し直すことにより発生する頂点間距離のずれについて、具体的に説明する(なお、両眼とも矯正度数の決定手順は同様であるので、右眼の視力矯正を例に簡略に説明する)。
Cさんが、視力が低下したので眼鏡を作ることにした。まず、視力低下の原因が近視によるものか、遠視によるものかを判断するために、検査用眼鏡600の右眼用の第1レンズホルダ612cにおいて、順次、検査用レンズを入れ替えたところ、−0.50Dの検査用レンズを挿入したとき見やすかったので、近視であることがわかった。(近視は、網膜の手前で像が結像する眼の屈折異常である。近視の矯正には凹レンズが使用される。凹レンズにより光を拡散させて瞳に入射させることで、像を網膜まで押し戻して矯正する。凹レンズには−の符号を付す。屈折度の単位は、ジオプトリ(D)を使用する。なお、凹レンズの屈折度も焦点距離を基礎とするので、凸レンズとの間では単純な合算が成り立つ。)次に、第2レンズホルダ612bにおいて、凹レンズの検査用レンズの度数を強めていったところ、−1.00Dより度数を上げても十分な視力が得られず、放射線乱視表で確認したところ、ぼやけて見える線があるので、乱視を併発していることが分った。ここで、第1レンズホルダ612cに挿入された近視の矯正度数−0.50Dと第2レンズホルダ612bに挿入された近視の矯正度数−1.00Dを合算し、−1.50Dの検査用レンズに替えて、第1レンズホルダ612cに入れ直して、−1.50Dの検査用レンズの裏面からCさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保った。(なお、乱視は、眼球において互いに直交する2つの経線を想定し、各経線における屈折度が異なるため(例えば、眼球の各経線における曲がりに差があると考えると分かりやすい)、各経線を通過した像が網膜上で一致せず、網膜の前後にずれて結像する眼の屈折異常である。経線を通過する像を線として捉え、前側の像を前焦線と呼び、後側の像を後焦線と呼ぶ。この前焦線と後焦線の間隔が乱視である。乱視の矯正には円柱レンズが使用される。円柱レンズは一方の経線の方向に度が入り、直交する他方の経線の方向には度が入らないので、片側の経線により結像する像の位置をずらすことで、2つの経線による結像位置を一致させて乱視を矯正することができる。)
第1レンズホルダ612cに−1.50Dの検査用レンズが入り、近視が矯正された状態では、乱視がまだ矯正されていないので、前焦線は網膜の前で結像し、後焦線は網膜の後で結像して、像が一致していないため十分な視力が得られない。そこで、+0.50Dの検査用レンズ(凸レンズ)を第2レンズホルダ612bに入れて、後焦線を網膜上に位置させる。当然、前焦線もさらに前側にずれる。この状態で、円柱レンズを使用して乱視を矯正する。すなわち、円柱レンズを使用して、網膜の手前で結像している前焦線だけを押し戻し、網膜上で結像している後焦線に一致させることで、乱視を矯正する。そこで、外側のホルダ(第3レンズホルダとする)612aにおいて、放射線乱視表のぼやけて見える線の方向に円柱レンズの向き(軸)を合わせて、円柱レンズの度数を上げていったところ、軸の方向は90°、円柱レンズの度数は−0.50Dのとき、放射線乱視表の各線を均一に見ることができた。この状態で、前焦線と後焦線は網膜上で一致し、乱視を矯正することができた。よって、右眼の近視による矯正度数を、重複する+0.50D(凸レンズ)を差し引いて、−1.00Dとし、乱視による矯正度数を−0.50D、軸の方向を90°と決定してレンズを発注した。(なお、円柱レンズの屈折度の単位は、ジオプトリ(D)を使用する。軸の方向を有するので、凸レンズ、凹レンズとの間では合算できない。)
右眼用レンズ16−2が仕上がったので、眼鏡本体10の右側構成部12−Bに装着された。
このケースでは、検査用眼鏡枠600において、第1レンズホルダ612cに挿入された−1.50Dの検査用レンズの裏面からCさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保ち、第2レンズホルダ612bに挿入された+0.50Dの検査用レンズ(凸レンズ)を経て、第3レンズホルダ612aにおいて、−0.50D、軸の方向90°の円柱レンズが挿入された状態で矯正度数を決定している。これを、近視の矯正度数を−1.00D、乱視の矯正度数を−0.50D、軸の方向90°として発注して右眼用レンズ16−2が仕上げられている。したがって、眼鏡5を顔に掛け、眼鏡本体10に装着された右眼用レンズ16−2の裏面からCさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔でフィッティングさせると、第3レンズホルダ612aの位置から円柱レンズを使用して矯正された前焦線の結像位置が乱れるはずである。通例、各レンズホルダの幅は5ミリあり、第3レンズホルダ612aは、第1レンズホルダ612cから10ミリ離れた位置にある。よって、前焦線の矯正に使用した円柱レンズの主点(計測始点)の位置が前側にずれているので、Cさんの場合には、眼鏡本体10に装着された右眼用レンズ16−2の主点(計測始点)の位置を12ミリの間隔よりも前側(Y1側)にずらした方が、前焦線と後焦線とが一致して見やすいはずである。つまり、眼鏡本体10に装着されたCさんの眼鏡用レンズ16−2は、固有の頂点間距離をとるといえる。仮に、重複する+0.50Dの検査用レンズ(凸レンズ)と−1.50Dの検査用レンズを一枚のレンズに入れ替えて、−1.00Dの検査用レンズを第1レンズホルダ612cに挿入して、−1.00Dの検査用レンズの裏面からCさんの瞳(角膜)の頂点までの距離を12ミリの間隔に保ち、第2レンズホルダ612bに−0.50D、軸の方向90°の円柱レンズを入れ替えて見やすさを確認した場合においても、前焦線の矯正に使用する円柱レンズの主点(計測始点)の位置は、前側に5ミリずれた状態(つまり、第2レンズホルダからの計測)となり、前焦線の結像位置が乱れる。
これが、検査用眼鏡600を使用して、厚い検査用レンズを重ね合わせて矯正度数を決定し、その度数のもとに一枚の薄い眼鏡用レンズ(本事例では、右眼用レンズ16−2)に造形し直すことに起因して発生する頂点間距離のずれである。
眼鏡本体10に装着されたレンズ16−1、16−2が固有の頂点間距離をとる場合、どの位置にフィッティングさせればよいかは、装用者自らが眼鏡5を顔に装着して、レンズ16−1、16−2を通して見やすさを確認するより他に方法がない。レンズ16−1、16−2が装着された眼鏡本体10を両手で支持して前後に移動させて見やすさを確認する方法では、12ミリの間隔で最も収差が出ないように設計されたレンズの許容範囲をはるかに超える位置(例えば、20ミリ程度の開き過ぎた間隔)からの確認となり、確認方法として不適切である。また、眼鏡5を両手で支持した状態では、フロント12が上方に上向くので、上下方向においてレンズ16−1、16−2のアイポイント(光学中心)と装用者の瞳孔中心の位置がずれた状態での確認となり、正確性を欠いたものとなる。そこで、該鼻当て100−1、100−2(特に、パッド支軸130)が装着された眼鏡5を使用すれば、頂点間距離が12ミリの間隔で適正化された第1使用状態と頂点間距離を長くした第2使用状態との間で、レンズ16−1、16−2を通して見やすさを比較することができ、見やすい間隔(すなわち、検査用眼鏡600により得られた矯正効果を再現できる間隔)を確認して選択することで、眼鏡本体10に装着されたレンズ16−1、16−2に固有の頂点間距離を適正化することができる。頂点間距離が適正化されると、カメラでピントが合うように、カレンダーやテレビ映像の数字や小文字、あるいは、走行中の交通標識や道路面の凹凸等をくっきりとした状態で見ることができる。