〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
1.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域内に設けられ、その長さ方向に於いて区切られたアクティブセクション;
(d6)前記アクティブセクションにおいて、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d7)前記線状アクティブセル領域内に設けられ、その長さ方向に於いて区切られた前記第1導電型エミッタ領域を有さないインアクティブセクション。
2.前記1項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状アクティブセル領域の幅は、前記線状インアクティブセル領域の幅よりも狭い。
3.前記1または2項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状インアクティブセル領域の前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域には、ほぼ全面に前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域が設けられ、この第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深い。
4.前記1から3項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、各線状単位セル領域は、その長さ方向列を成す複数のブロックを有し、各ブロックは、以下を有する:
(x1)前記アクティブセクションを有するアクティブサブブロック;
(x2)前記アクティブセクションを有さないインアクティブサブブロック;
(x3)前記一対の線状トレンチゲート電極間を連結し、前記アクティブサブブロックおよび前記インアクティブサブブロックを分離する連結トレンチゲート電極;
(x4)前記インアクティブサブブロックには設けられず、前記アクティブサブブロックに設けられたエミッタコンタクト部。
5.前記4項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記アクティブセクションは、アクティブサブブロックの一部に設けられている。
6.前記4項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記アクティブセクションは、アクティブサブブロックの全域に設けられている。
7.前記1から6項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状インアクティブセル領域は、以下を有する:
(y1)前記線状インアクティブセル領域の長さ方向に於いて区切られ、前記第1主面側表面領域に形成され、前記第1導電型と同一導電型の第1導電型フローティング領域を有する第1導電型フローティング領域形成セクション;
(y2)前記線状インアクティブセル領域の長さ方向に於いて区切られ、前記第1主面側表面領域に形成され、前記第1導電型フローティング領域を有さない第1導電型フローティング領域非形成セクション。
8.前記1から6項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状インアクティブセル領域の前記第1主面側表面領域には、ほぼ全面に前記第1導電型と同一導電型の第1導電型フローティング領域が設けられている。
9.前記4から6項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記インアクティブサブブロックおよび前記線状インアクティブセル領域の前記第1主面側表面領域には、ほぼ全面に前記第1導電型と同一導電型の第1導電型フローティング領域が設けられている。
10.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d6)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の下部の前記ドリフト領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高く、前記第1導電型エミッタ領域よりも低い第1導電型ホールバリア領域;
(d7)前記線状インアクティブセル領域において、前記第1主面側表面領域のほぼ全面に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域、
ここで、この第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深い。
11.前記10項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記一対のトレンチの各トレンチの幅は、0.8マイクロメートル以下である。
12.前記10または11項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記第2導電型フローティング領域は、前記セル領域の外部周辺のフローティングフィールドリングと同時に形成される。
13.前記10から12項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記一対の線状トレンチゲート電極の各線状トレンチゲート電極の両側のゲート絶縁膜の厚さは実質的に同一である。
14.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域;
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d6)前記線状インアクティブセル領域において、前記第1主面側表面領域のほぼ全面に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域、
ここで、この第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深い。
15.前記14項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、各線状単位セル領域は、更に以下を有する:
(d7)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の下部の前記ドリフト領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高く、前記第1導電型エミッタ領域よりも低い第1導電型ホールバリア領域。
16.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d6)前記線状インアクティブセル領域において、前記第1主面側表面領域のほぼ全面に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域、
更に、ここで、この第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深くされ、
ここで、前記IE型トレンチゲートIGBTは、更に以下を含む:
(e)前記半導体基板の前記第1の主面上に設けられたメタルエミッタ電極;
(f)前記セル領域の最外側に設けられ、前記線状アクティブセル領域と同一方向に延在し、前記メタルエミッタ電極とのコンタクト部を有する線状ダミーセル領域;
(g)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域において、平面的に見て、前記セル領域の周辺を囲むように、前記線状ダミーセル領域の外側に設けられた前記第1導電型と反対導電型であって、前記メタルエミッタ電極とのコンタクト部を有する第2導電型セル周辺接合領域。
17.前記16項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状ダミーセル領域は、前記第1導電型エミッタ領域を有さない以外、前記線状アクティブセル領域と同一の構造を有する。
18.前記16項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記第2導電型セル周辺接合領域は、線状ダミーセル領域の内部まで延在している。
19.前記16項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、各線状単位セル領域は、更に以下を有する:
(d7)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の下部の前記ドリフト領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高く、前記第1導電型エミッタ領域よりも低い第1導電型ホールバリア領域。
20.前記17項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、各線状単位セル領域は、更に以下を有する:
(d7)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の下部の前記ドリフト領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高く、前記第1導電型エミッタ領域よりも低い第1導電型ホールバリア領域。
次に、本願において開示される発明のその他の実施の形態について概要を説明する。
21.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域;
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域内に設けられ、その長さ方向に於いて区切られたアクティブセクション;
(d6)前記アクティブセクションにおいて、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d7)前記線状アクティブセル領域内に設けられ、その長さ方向に於いて区切られた前記第1導電型エミッタ領域を有さないインアクティブセクション。
22.前記21項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状アクティブセル領域の幅は、前記線状インアクティブセル領域の幅よりも狭い。
23.前記21または22項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状インアクティブセル領域の前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域には、ほぼ全面に前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域が設けられ、この第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深い。
24.前記21から23項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、各線状単位セル領域は、その長さ方向列を成す複数のブロックを有し、各ブロックは、以下を有する:
(x1)前記アクティブセクションを有するアクティブサブブロック;
(x2)前記アクティブセクションを有さないインアクティブサブブロック;
(x3)前記一対の線状トレンチゲート電極間を連結し、前記アクティブサブブロックおよび前記インアクティブサブブロックを分離する連結トレンチゲート電極;
(x4)前記インアクティブサブブロックには設けられず、前記アクティブサブブロックに設けられたエミッタコンタクト部。
25.前記24項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記アクティブセクションは、アクティブサブブロックの一部に設けられている。
26.前記24項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記アクティブセクションは、アクティブサブブロックの全域に設けられている。
27.前記21から26項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状インアクティブセル領域は、以下を有する:
(y1)前記線状インアクティブセル領域の長さ方向に於いて区切られ、前記第1主面側表面領域に形成され、前記第1導電型と同一導電型の第1導電型フローティング領域を有する第1導電型フローティング領域形成セクション;
(y2)前記線状インアクティブセル領域の長さ方向に於いて区切られ、前記第1主面側表面領域に形成され、前記第1導電型フローティング領域を有さない第1導電型フローティング領域非形成セクション。
28.前記21から26項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状インアクティブセル領域の前記第1主面側表面領域には、ほぼ全面に前記第1導電型と同一導電型の第1導電型フローティング領域が設けられている。
29.前記24から26項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記インアクティブサブブロックおよび前記線状インアクティブセル領域の前記第1主面側表面領域には、ほぼ全面に前記第1導電型と同一導電型の第1導電型フローティング領域が設けられている。
30.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域;
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d6)前記線状インアクティブセル領域において、前記第1主面側表面領域のほぼ全面に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域。
31.前記30項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域は、アルミニウムがドープされた領域である。
32.前記31項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記メタルコレクタ電極の内、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域に接する部分は、アルミニウムを主要な成分とするメタル膜である。
33.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域;
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域は、アルミニウムがドープされた領域である。
34.前記33項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記メタルコレクタ電極の内、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域に接する部分は、アルミニウムを主要な成分とするメタル膜である。
35.以下を含むトレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域;
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域は、アルミニウムがドープされた領域である。
36.前記35項のトレンチゲートIGBTにおいて、前記メタルコレクタ電極の内、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域に接する部分は、アルミニウムを主要な成分とするメタル膜である。
37.以下を含むIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域;
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域は、アルミニウムがドープされた領域である。
38.前記37項のIGBTにおいて、前記メタルコレクタ電極の内、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域に接する部分は、アルミニウムを主要な成分とするメタル膜である。
39.前記21、30、33、35または37項のIGBTにおいて、前記メタルコレクタ電極の内、前記半導体基板の前記第2の主面に接する部分は、アルミニウムを主要な成分とするメタル膜である。
40.前記39項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記アルミニウムがドープされた領域は、前記アルミニウムを主要な成分とするメタル膜を成膜する際の熱処理により導入されたものである。
次に、本願において開示される実施の形態について、更にその他の概要を説明する。
41.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内およびその周辺に亘って設けられた多数の線状単位セル領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d6)前記線状インアクティブセル領域において、前記第1主面側表面領域のほぼ全面に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域;
(d7)前記線状インアクティブセル領域の端部に沿って前記第1の主面の表面領域に設けられた端部トレンチ;
(d8)前記端部トレンチに沿って前記セル領域外の前記第1主面側表面領域に設けられ、前記ボディ領域よりも深く、前記メタルエミッタ電極に電気的に接続された周辺第2導電型領域;
(d9)前記端部トレンチに沿って前記周辺第2導電型領域上の前記第1主面側表面に設けられた、前記メタルエミッタ電極との周辺コンタクト部、
ここで、前記第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深くされており、
更に、前記周辺第2導電型領域が形成されている領域であって、前記周辺コンタクト部に関して、前記端部トレンチと反対側には、前記端部トレンチと同等かまたはこれよりも深く、前記ゲート配線下と前記周辺コンタクト部下並びにその間の領域を平面的に前記端部トレンチに近い領域と遠い領域に分離するようなその他のトレンチを有しない。
42.前記項41のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記周辺第2導電型領域は、前記フローティング領域とほぼ同時に形成される。
43.前記項41または42のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記周辺第2導電型領域は、前記端部トレンチよりも深い。
44.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有するMCZ系単結晶シリコン半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域内に設けられ、その長さ方向に於いて区切られたアクティブセクション;
(d6)前記アクティブセクションにおいて、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d7)前記線状アクティブセル領域内に設けられ、その長さ方向に於いて区切られた前記第1導電型エミッタ領域を有さないインアクティブセクション。
45.前記44項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記ドリフト領域の抵抗率は、20Ωcmから85Ωcm程度である。
46.前記44または45項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記半導体基板は、HMCZ成長またはCMCZ成長によって製造されたものである。
47.前記44から46項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記半導体基板の投入時における酸素欠陥濃度は、3x1017/cm3から7x1017/cm3程度である。
48.前記44から47項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状アクティブセル領域の幅は、前記線状インアクティブセル領域の幅よりも狭い。
49.前記44から48項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記線状インアクティブセル領域の前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域には、ほぼ全面に前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域が設けられ、この第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深い。
50.前記44から49項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、更に以下を含む:
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域。
51.前記50項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記第2導電型コレクタ領域のキャリア濃度/前記第1導電型フィールドストップ領域のキャリア濃度の値は、1.1から4程度である。
52.前記50または51項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、更に以下を含む:
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域は、アルミニウムがドープされた領域である。
53.前記52項のIGBTにおいて、前記メタルコレクタ電極の内、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域に接する部分は、アルミニウムを主要な成分とするメタル膜である。
54.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有するMCZ系単結晶シリコン半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内に設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記半導体基板の前記第2の主面上に設けられたメタルコレクタ電極;
(f)前記半導体基板の前記第2の主面内に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型コレクタ領域;
(g)前記第2導電型コレクタ領域に接するように、前記ドリフト領域の前記第2の主面側に設けられた前記第1導電型と同一導電型であって、不純物濃度が前記ドリフト領域よりも高い第1導電型フィールドストップ領域;
(h)前記第2導電型コレクタ領域の前記メタルコレクタ電極側に設けられた前記第2導電型コレクタ領域と同一導電型であって、不純物濃度がより高い第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d6)前記線状インアクティブセル領域において、前記第1主面側表面領域のほぼ全面に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域。
55.前記54項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記ドリフト領域の抵抗率は、20Ωcmから85Ωcm程度である。
56.前記54または55項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記半導体基板は、HMCZ成長またはCMCZ成長によって製造されたものである。
57.前記54から56項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記半導体基板の投入時における酸素欠陥濃度は、3x1017/cm3から7x1017/cm3程度である。
58.前記54から57項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記第2導電型コレクタ領域のキャリア濃度/前記第1導電型フィールドストップ領域のキャリア濃度の値は、1.1から4程度である。
59.前記54から58項のいずれか一つのIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域は、アルミニウムがドープされた領域である。
60.前記59項のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記メタルコレクタ電極の内、前記第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域に接する部分は、アルミニウムを主要な成分とするメタル膜である。
次に、本願において開示される実施の形態について、また、更にその他の概要を説明する。
61.以下を含むIE型トレンチゲートIGBT:
(a)第1の主面及び第2の主面を有する半導体基板;
(b)前記半導体基板内に設けられ、第1導電型を有するドリフト領域;
(c)前記第1の主面上に設けられたセル領域;
(d)平面的に見て、前記セル領域内およびその周辺に亘って設けられた多数の線状単位セル領域;
(e)前記第1の主面上に設けられたメタルゲート電極;
(f)前記第1の主面上に設けられたメタルエミッタ電極;
(g)前記セル形成領域の第1の辺に沿って、前記セル形成領域の周辺外部に設けられたゲート配線、
ここで、各線状単位セル領域は、以下を有する:
(d1)前記ドリフト領域の前記第1の主面上から内部に亘って設けられた線状アクティブセル領域;
(d2)平面的に見て、前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、前記第1の主面の表面に設けられた一対のトレンチ内の一対の線状トレンチゲート電極;
(d3)前記ドリフト領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型ボディ領域;
(d4)前記一対の線状トレンチゲート電極を境界として、平面的に前記線状アクティブセル領域を両側から挟むように、両側に隣接して設けられた線状インアクティブセル領域;
(d5)前記線状アクティブセル領域において、前記第2導電型ボディ領域の前記第1主面側表面領域に設けられた前記第1導電型と同一導電型の第1導電型エミッタ領域;
(d6)前記線状インアクティブセル領域において、前記第1主面側表面領域のほぼ全面に設けられた前記第1導電型と反対導電型の第2導電型フローティング領域;
(d7)前記線状インアクティブセル領域の端部に沿って前記第1の主面の表面領域に設けられた端部トレンチ;
(d8)前記端部トレンチに沿って前記ゲート配線下方の前記第1主面側表面領域から前記端部トレンチの近傍まで延在し、前記ボディ領域よりも深く、前記メタルエミッタ電極に電気的に接続された周辺第2導電型領域;
(d9)前記端部トレンチに沿って前記周辺第2導電型領域上の前記第1主面側表面上であって前記ゲート配線と前記端部トレンチの間に設けられた、前記メタルエミッタ電極との周辺コンタクト部、
ここで、前記第2導電型フローティング領域は、前記一対のトレンチの下端部を覆い、その深さは、前記一対のトレンチの深さよりも深くされており、
更に、前記周辺第2導電型領域が形成されている領域であって、前記ゲート配線と前記周辺コンタクト部の間には、前記端部トレンチと同等かまたはこれよりも深く、前記ゲート配線下と前記周辺コンタクト部下並びにその間の領域を平面的に前記ゲート配線に近い領域と前記端部トレンチに近い領域に分離するようなその他のトレンチを有しない。
62.前記項61のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記周辺第2導電型領域は、前記フローティング領域とほぼ同時に形成される。
63.前記項61または62のIE型トレンチゲートIGBTにおいて、前記周辺第2導電型領域は、前記端部トレンチよりも深い。
〔本願における記載形式、基本的用語、用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
更に、本願において、「半導体装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)単体、またはそれらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したものをいう。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を例示することができる。このとき、各種単体トランジスタの代表的なものとしては、パワーMOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を例示することができる。これらは、一本にパワー系半導体デバイスに分類され、その中には、パワーMOSFET、IGBTの外、バイポーラパワートランジスタ、サイリスタ(Thyristor)、パワーダイオード等を含む。
パワーMOSFETの代表的な形態は、表面にソース電極があり、裏面にドレイン電極がある2重拡散型縦型パワーMOSFET(Double Duffused Vertical Power MOSFET)であるが、この2重拡散型縦型パワーMOSFETには、主に2種類に分類でき、第1は実施形態において主に説明するプレーナゲート(Planar Gate)型であり、第2はU−MOSFET等のトレンチゲート(Trench Gate)型である。
パワーMOSFETには、その他に、LD−MOSFET(Lateral−Diffused MOSFET)がある。
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノクラスタリングシリカ(Nano-Clustering Silica:NCS)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
また、酸化シリコン系絶縁膜と並んで、半導体分野で常用されているシリコン系絶縁膜としては、窒化シリコン系絶縁膜がある。この系統の属する材料としては、SiN,SiCN,SiNH,SiCNH等がある。ここで、「窒化シリコン」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiNおよびSiNHの両方を含む。同様に、「SiCN」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiCNおよびSiCNHの両方を含む。
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体装置(半導体集積回路装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
6.先に、パワーMOSFETについて説明したのと同様に、IGBTは、一般にプレーナゲート(Planar Gate)型とトレンチゲート(Trench Gate)型に大別される。このトレンチゲート型IGBTは、比較的オン抵抗が低いが、伝導度変調を更に促進してオン抵抗を更に低くするために、IE(Injection Enhancement)効果を利用した「IE型トレンチゲートIGBT」(または、「アクティブセル間引き型トレンチゲートIGBT」)が開発されている。IE型トレンチゲートIGBTは、セル領域に於いて、実際にエミッタ電極に接続されたアクティブセル(Active Cell)と、フローティングPボディ領域を有するインアクティブセル(Inactive Cell)を交互に、または、櫛の歯状に配置することにより、半導体基板のデバイス主面側(エミッタ側)にホール(正孔)が蓄積しやすい構造としたものである。
7.本願においては、IE型トレンチゲートIGBTの内、主要なアクティブセルの幅が、主要なインアクティブセルの幅よりも狭いものを「狭アクティブセルIE型トレンチゲートIGBT」と呼ぶ。
また、トレンチゲートを横切る方向を「セルの幅方向」とし、これと直交するトレンチゲート(リニアゲート部分)の延在方向(長手方向)を「セルの長さ方向」とする。
本願に於いては、主に「線状単位セル領域」(線状アクティブセル領域と線状インアクティブセル領域から構成される)を主に扱うが、この線状単位セル領域が周期的に繰り返して、半導体チップの内部領域に配列されて、「セル領域」を構成している。
このセル領域の周りには、通常、セル周辺接合領域が設けられており、更にその周りには、フローティングフィールドリング(Floating Field Ring)またはフィールドリミッティングリング(Field Limiting Ring)等が設けられ、終端構造を構成している。ここで、フローティングフィールドリングまたはフィールドリミッティングリングとは、ドリフト領域の表面(デバイス面)にP型ボディ領域(P型ウエル領域)とは分離して設けられ、それと同一導電形を有するとともに類似した濃度(主接合に逆方向電圧が印加されたときに完全空乏化しない程度の濃度である)を有し、リング状にセル領域を1重又は多重に取り巻く不純物領域または不純物領域群を言う。
また、これらのフローティングフィールドリングには、フィールドプレート(Field Plate)が設けられることがある。このフィールドプレートとは、フローティングフィールドリングに接続された導電体膜パターンであって、絶縁膜を介してドリフト領域の表面(デバイス面)の上方に延在し、リング状にセル領域を取り巻く部分を言う。
セル領域を構成する周期要素としての線状単位セル領域は、線状アクティブセル領域を中心に両側に半幅の線状インアクティブセル領域を配置したものをセットとして扱いうが合理的であるが、具体的に個別に線状インアクティブセル領域を説明する場合には、両側に分離しているため不便であるので、その場合には、具体的な一体の部分を線状インアクティブセル領域という。
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
なお、本願発明者らが開発したIE型IGBTについて開示した特許出願としては、たとえば日本特願第2012−577号(日本出願日2012年1月5日)がある。
1.本願の主要な実施の形態のアウトラインの説明(主に図1から図5)
このセクションでは、具体的な例を示して、先の定義等を補足するとともに、本願の代表的具体例を抜き出して、その概要を説明するとともに、全体の予備的な説明を行う。
図1は本願の主要な実施の形態のアウトラインを説明するためのIE型トレンチゲートIGBTデバイスチップのセル領域およびその周辺の上面模式レイアウト図である。図2は図1のセル領域端部切り出し領域R1のA−A’断面に対応するデバイス模式断面図である。図3は図1のセル領域内部切り出し領域R2のB−B’断面に対応するデバイス模式断面図である。図4は本願の実施の形態1(1次元アクティブセル間引き構造:図6から図8に対応)に関する図1の線状単位セル領域およびその周辺R5の拡大上面図である。図5は本願の実施の形態5(2次元アクティブセル間引き構造:図30から図32に対応)に関する図1の線状単位セル領域およびその周辺R5の拡大上面図である。これらに基づいて、本願の主要な実施の形態のアウトラインを説明する。
(1)セル領域およびその周辺の平面構造の説明(主に図1):
まず、本願の主な対象であるIE型トレンチゲートIGBTのデバイスチップ2の内部領域(終端構造の最外部であるガードリング等の内側の部分、すなわち、チップ2の主要部)の上面図を図1に示す。図1に示すように、チップ2(半導体基板)の内部領域の主要部は、セル領域10によって占有されている。セル領域10には、外周部には、これを取り巻くように、環状を呈し、P型のセル周辺接合領域35(第2導電型セル周辺接合領域)が設けられている。このセル周辺接合領域35の外側には、間隔を置いて、単数又は複数の環状を呈し、P型のフローティングフィールドリング36(すなわちフィールドリミッティングリング)が設けられており、セル周辺接合領域35、ガードリング4(図6参照)等とともに、セル領域10に対する終端構造を構成している。
セル領域10には、この例では、多数の線状単位セル領域40が敷き詰められており、これらの端部領域には、一対又はそれ以上(片方についていえば、1列又は数列程度)のダミーセル領域34(線状ダミーセル領域)が配置されている。
(2)狭アクティブセル型単位セルおよび交互配列方式の説明(主に図2):
次に、図1のセル領域端部切り出し領域R1のA−A’断面を図2に示す。図2に示すように、チップ2の裏面1b(半導体基板の裏側主面または第2の主面)の半導体領域(この例では、シリコン単結晶領域)には、P+型コレクタ領域18が設けられており、その表面にはメタルコレクタ電極17が設けられている。半導体基板2の主要部を構成するN−型ドリフト領域20(第1導電型のドリフト領域)とP+型コレクタ領域18(第2導電型コレクタ領域)との間には、N型フィールドストップ領域19(第1導電型フィールドストップ領域)が設けられている。
一方、N−型ドリフト領域20の表面側1a(半導体基板の表側主面または第1の主面)の半導体領域には、多数のトレンチ21が設けられており、その中には、ゲート絶縁膜22を介して、トレンチゲート電極14が埋め込まれている。これらのトレンチゲート電極14は、メタルゲート電極5に接続されている。
また、これらのトレンチ21は、各領域を区画する働きをしており、たとえば、ダミーセル領域34は、一対のトレンチ21によって両側から区画されており、その内の一つのトレンチ21によって、セル領域10とセル周辺接合領域35が区画されている。このセル周辺接合領域35は、P+型ボディコンタクト領域25pを介して、メタルエミッタ電極8と接続されている。なお、本願に於いては、特に断らない限り、トレンチのどの部分のゲート絶縁膜22の厚さもほぼ同じとしている(しかし、必要により、ある部分の厚さを他の部分と比較して、異ならせることを排除するものではない)。このように、セル周辺接合領域35およびダミーセル領域34に於いて、エミッタコンタクトを取ることによって、ダミーセル領域34等の幅がプロセス的に変化した場合に於いても、耐圧の低下を防止することができる。
セル周辺接合領域35の外側のN−型ドリフト領域20の表面側1aの半導体領域には、P型のフローティングフィールドリング36が設けられており、この表面1a上には、フィールドプレート4が設けられ、P+型ボディコンタクト領域25rを介して、フローティングフィールドリング36に接続されている。
次に、セル領域10を更に説明する。ダミーセル領域34は、N+型エミッタ領域12を有さない以外は、構造およびサイズとも、基本的に線状アクティブセル領域40aと同じであり、P型ボディ領域15の表面に設けられたP+型ボディコンタクト領域25dは、メタルエミッタ電極8と接続されている。セル領域10の内部領域の大部分は、基本的に、線状単位セル領域40を単位格子とする並進対象の繰り返し構造(なお、厳密な意味での対象性を要求するものではない。以下同じ)をしている。単位格子としての線状単位セル領域40は、線状アクティブセル領域40aとその両側の半幅の線状インアクティブセル領域40iから構成されているが、具体的には、隣接する線状アクティブセル領域40aの間に全幅の線状インアクティブセル領域40iが配置されていると見ることができる(図4参照)。
線状アクティブセル領域40aの半導体基板の表側主面1a(第1の主面)側半導体表面領域には、P型ボディ領域15が設けられており、その表面には、N+型エミッタ領域12(第1導電型エミッタ領域)およびP+型ボディコンタクト領域25が設けられている。このP+型ボディコンタクト領域25は、メタルエミッタ電極8と接続されている。線状アクティブセル領域40aにおいては、このP型ボディ領域15の下部のN−型ドリフト領域20に、N型ホールバリア領域24が設けられている。
一方、線状インアクティブセル領域40iの半導体基板の表側主面1a(第1の主面)側半導体表面領域には、同様に、P型ボディ領域15が設けられており、その下部のN−型ドリフト領域20には、両側のトレンチ21の下端部をカバーし、それよりも深いP型フローティング領域16(第2導電型フローティング領域)が設けられている。このようなP型フローティング領域16を設けることによって、耐圧の急激な低下を招くことなく、線状インアクティブセル領域の幅Wiを広くすることができる。これによって、ホール蓄積効果を有効に増強することが可能となる。なお、IE型トレンチゲートIGBTにおいては、エミッタ電極8からP型フローティング領域16へのコンタクトは形成されておらず、P型フローティング領域16からエミッタ電極8への直接的なホール排出経路を遮断することによって、線状アクティブセル領域40aの下部のN−型ドリフト領域20(Nベース領域)のホール濃度を増加させ、その結果、IGBT内のMOSFETからNベース領域へ注入される電子濃度を向上させることによって、オン抵抗を下げようとするものである。
この例では、線状アクティブセル領域40aの幅Waは、線状インアクティブセル領域40iの幅Wiよりも狭くされており、本願では、これを「狭アクティブセル型単位セル」と呼ぶ。以下では、主に、この狭アクティブセル型単位セルを有するデバイスについて、具体的に説明するが、本願の発明は、それに限定されるものではなく、「非狭アクティブセル型単位セル」を有するデバイスにも適用できることは言うまでもない。
図2の例では、線状アクティブセル領域40aと線状インアクティブセル領域40iを交互に配列して、線状単位セル領域40を構成しているが、この構成を、本願においては、「交互配列方式」と呼ぶ。以下では、特に断らない限り(具体的には、基本的に図3以外)、交互配列方式を前提に説明するが、「非交互配列方式」でもよいことはいうまでもない。
図2では、本願の各種の実施の形態の各部分を例示的に包含する主要部を説明したが、以下の説明では、これらをセル部(断面、平面構造)、セル周辺部等の構成要素に分けて説明するが、これらは、個々ばらばらのものではなく、図2に示したように、各種の変形例が各構成要素と置換して、主要部を構成するものである。このことは、図2に限らず、次の図3についてもいえる。
(3)非交互配列方式の説明(主に図3):
次に、非交互配列方式の線状単位セル領域40の具体例を図3に示す。図3に示すように、図2の例では、隣接する線状アクティブセル領域40a間に挿入される線状インアクティブセル領域40iは一つであるが、図3の例では、隣接する線状アクティブセル領域40a間に挿入される線状インアクティブサブセル領域40is(図2の線状インアクティブセル領域40iに対応するデバイス要素)が複数となっている。非交互配列方式の例においても、主に、線状アクティブセル領域40aの幅Waは、線状インアクティブサブセル領域40isの幅Wisよりも狭くされており、上と同様に、本願では、これを「狭アクティブセル型単位セル」と呼ぶ。すなわち、狭アクティブセル型単位セルの定義は、線状インアクティブセル領域40iの幅Wiではなく、線状インアクティブサブセル領域40isの幅Wisによって行われる。なお、隣接する線状アクティブセル領域40a間に挿入される線状インアクティブサブセル領域40isの数(以下「挿入数」という)は、一定である必要はなく、場所によって、1個から数個の間で変化させても良い。
これと同様に、交互配列方式においても、一部に於いて、挿入数を複数としてもよい。
なお、交互配列方式のメリットは、トレンチの数が少ないので、平面構造を比較的単純にすることが可能である。一方、非交互配列方式のメリットは、耐圧を下げることなく、比較的広い線状インアクティブセル領域の幅Wiを設定できるところに有る。
(4)アクティブセル1次元間引き構造の説明(主に図4)
図1の線状単位セル領域主要部およびその周辺切り出し領域R5の詳細平面構造の一例を図4に示す。図4に示すように、線状アクティブセル領域40aの長さ方向の全域にN+型エミッタ領域12が設けられている。すなわち、線状アクティブセル領域40aの長さ方向の全域が、アクティブセクション40aaとなっている。ここで、アクティブセクション40aaとは、N+型エミッタ領域12が設けられている線状アクティブセル領域40aの長さ方向の区画をいう。
この構造を本願では、「アクティブセル1次元間引き構造」と呼ぶ。
(5)アクティブセル2次元間引き構造の説明(主に図5)
図1の線状単位セル領域主要部およびその周辺切り出し領域R5の詳細平面構造の一例を図5に示す。図5に示すように、線状アクティブセル領域40aの長さ方向に、たとえば、一定間隔で一定の長さのアクティブセクション40aaが設けられており、その間が、N+型エミッタ領域12が設けられていないインアクティブセクション40aiとなっている。すなわち、線状アクティブセル領域40aの長さ方向の一部分が局所分散的にアクティブセクション40aaとなっている。なお、ここで、一定間隔で一定の長さで分布していることは、周期的であることを意味するが、実質的に周期的であることは、局所分散的分布に対応するが、局所分散的であることは、それよりも広く、必ずしも周期的又は準周期的であることを意味しない。
2.本願の実施の形態1(P型ディープフローティング&ホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造の説明(主に図6から図8)
このセクションでは、セクション1の説明を踏まえて、各実施の形態に共通な具体的チップ上面レイアウトおよび単位セル構造(アクティブセル1次元間引き構造)の一例(セクション1の図1、図2および図4に対応)を説明する。このセクションで説明するセル構造は、交互配列方式の狭アクティブセル型単位セルである。
なお、通常、耐圧600ボルトのIGBT素子2を例にとると、チップサイズは、3から6ミリメートル角が平均的である。ここでは、説明の都合上、縦4ミリメートル、横5.2ミリメートルのチップを例にとり説明する。ここでは、デバイスの耐圧をたとえば、600ボルト程度として説明する。
図6は本願の実施の形態1(他の実施形態にも共通する)のIE型トレンチゲートIGBTデバイスチップの全体上面図(図1にほぼ対応するが、より具体的な形状に近い)である。図7は図6のセル領域内部切り出し領域R3の拡大上面図(P型ディープフローティング&ホールバリア線状単位セル構造)である。図8は図7のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態1(P型ディープフローティング&ホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造を説明する。
図6に示すように、IGBTデバイスチップ2の上面1aの外周部には、たとえば、アルミニウム系配線層等から構成された環状のガードリング3が設けられており、その内側には、環状のフローティングフィールドリング等と接続された数本(単数又は複数)の環状のフィールドプレート4(たとえば、先と同じアルミニウム系配線層等から構成されている)が設けられている。フィールドプレート4(フローティングフィールドリング36)の内側であって、チップ2の上面1aの内部領域の主要部には、セル領域10が設けられており、セル領域10上は、その外部近傍まで、たとえば、先と同じアルミニウム系配線層等から構成されたメタルエミッタ電極8に覆われている。メタルエミッタ電極8の中央部は、ボンディングワイヤ等を接続するためのメタルエミッタパッド9となっており、メタルエミッタ電極8とフィールドプレート4の間には、たとえば、先と同じアルミニウム系配線層等から構成されたメタルゲート配線7が配置されている。このメタルゲート配線7は、たとえば、先と同じアルミニウム系配線層等から構成されたメタルゲート電極5に接続されており、メタルゲート電極5の中心部は、ボンディングワイヤ等を接続するためのゲートパッド6となっている。
次に、図6のセル領域内部切り出し領域R3の拡大上面図を図7に示す。図7に示すように、セル領域10は、横方向に交互に配置された線状アクティブセル領域40aおよび線状インアクティブセル領域40iから構成されている。線状アクティブセル領域40aおよび線状インアクティブセル領域40iの間には、トレンチゲート電極14が配置されており、線状アクティブセル領域40aの中央部には、線状のコンタクト溝11(またはコンタクトホール)が配置されている。このコンタクト溝11の両側の線状アクティブセル領域40aには、線状のN+型エミッタ領域12が設けられている。一方、線状インアクティブセル領域40iには、ほぼその全面にP型ボディ領域15およびP型フローティング領域16が上下(図2又は図8参照)に設けられている。
次に、図7のD−D’断面を図8に示す。図8に示すように、半導体チップ2の裏面1bの半導体領域には、上下に接するようにP+型コレクタ領域18およびN型フィールドストップ領域19が形成されており、半導体チップ2の裏面1b上には、メタルコレクタ電極17が形成されている。
線状アクティブセル領域40aにおける半導体チップ2の表面1a(第1の主面)側のN−型ドリフト領域20(半導体基板の表面側半導体領域)には、下から順に、N型ホールバリア領域24(第1導電型ホールバリア領域)、P型ボディ領域15およびN+型エミッタ領域12が設けられている。また、半導体チップ2の表面1a上には、層間絶縁膜26が形成されており、線状アクティブセル領域40aにおける層間絶縁膜26部分には、半導体基板内部に及ぶコンタクト溝11(またはコンタクトホール)が形成されており、このコンタクト溝11等の底の半導体領域には、上からP+型ボディコンタクト領域25およびP+型ラッチアップ防止領域23が設けられている。このコンタクト溝11等を介して、P型ボディ領域15およびN+型エミッタ領域12は、層間絶縁膜26上に設けられたメタルエミッタ電極8に接続されている。
ここで、N型ホールバリア領域24は、N−型ドリフト領域20からN+型エミッタ領域12への通路にホールが流れ込むのを阻止するためのバリア領域であり、その不純物濃度は、N+型エミッタ領域12よりも低く、N−型ドリフト領域20よりも高い。このN型ホールバリア領域24の存在により、線状インアクティブセル領域40iに蓄積されたホールが、線状アクティブセル領域40aのエミッタ通路(N−型ドリフト領域20からP+型ボディコンタクト領域25へ向かう通路)へ入り込むのを有効に阻止することができる。
これに対して、線状インアクティブセル領域40iにおける半導体チップ2の表面1a(第1の主面)側のN−型ドリフト領域20(半導体基板の表面側半導体領域)には、下から順に、P型フローティング領域16およびP型ボディ領域15が設けられており、P型フローティング領域16の深さは、トレンチ21の深さよりも深くされており、トレンチ21の下端部をカバーするように分布している。
ここで、デバイス構造をより具体的に例示するために、デバイス各部(図8および図4参照)の主要寸法の一例を示す。すなわち、線状アクティブセル領域の幅Waは、2.3マイクロメートル程度、線状インアクティブセル領域の幅Wiは、6マイクロメートル程度(線状アクティブセル領域の幅Waは、線状インアクティブセル領域の幅Wiよりも狭いことが望ましく、Wi/Waの値は、たとえば2から3の範囲が特に好適である)、コンタクト幅は、0.5マイクロメートル程度、トレンチ幅は、0.7マイクロメートル程度(0.8マイクロメートル以下が特に好適である)、トレンチ深さは、3マイクロメートル程度、N+型エミッタ領域12の深さは、250nm程度、P型ボディ領域15(チャネル領域)の深さは、0.8マイクロメートル程度、P+型ラッチアップ防止領域23の深さは、1.4マイクロメートル程度、P型フローティング領域16の深さは、4.5マイクロメートル程度、N型フィールドストップ領域19の厚さは、1.5マイクロメートル程度、P+型コレクタ領域の厚さは、0.5マイクロメートル程度、半導体基板2の厚さは、70マイクロメートル程度(ここでは、耐圧600ボルト程度の例を示す)である。なお、半導体基板2の厚さは求められる耐圧に強く依存する。従って、耐圧1200ボルトでは、たとえば120マイクロメートル程度であり、耐圧400ボルトでは、たとえば40マイクロメートル程度である。
なお、以下の例、および、セクション1の例に於いても、対応する部分の寸法は、ここに示したものとほぼ同じであるので、説明は繰り返さない。
3.本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法の説明(主に図9から図26)
このセクションでは、セクション2で説明したデバイス構造に対する製造方法の一例を示す。以下では、セル領域10を中心に説明するが、周辺部等については、必要に応じて図1、図2、図4等を参照する。
図9は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(ホールバリア領域導入工程)におけるデバイス断面図である。図10は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(P型フローティング領域導入工程)におけるデバイス断面図である。図11は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(トレンチ加工用ハードマスク成膜工程)におけるデバイス断面図である。図12は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(トレンチハードマスク加工工程)におけるデバイス断面図である。図13は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(トレンチハードマスク加工用レジスト除去工程)におけるデバイス断面図である。図14は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(トレンチ加工工程)におけるデバイス断面図である。図15は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(トレンチ加工用ハードマスク除去工程)におけるデバイス断面図である。図16は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(引き伸ばし拡散およびゲート酸化工程)におけるデバイス断面図である。図17は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(ゲートポリシリコン成膜工程)におけるデバイス断面図である。図18は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(ゲートポリシリコンエッチバック工程)におけるデバイス断面図である。図19は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(ゲート酸化膜エッチバック工程)におけるデバイス断面図である。図20は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(P型ボディ領域およびN+型エミッタ領域導入工程)におけるデバイス断面図である。図21は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(層間絶縁膜成膜工程)におけるデバイス断面図である。図22は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(コンタクトホール形成工程)におけるデバイス断面図である。図23は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(基板エッチング工程)におけるデバイス断面図である。図24は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(P+型ボディコンタクト領域およびP+型ラッチアップ防止領域導入工程)におけるデバイス断面図である。図25は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(表面メタル成膜工程)におけるデバイス断面図である。図26は本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明するための図8に対応する製造工程中(裏面研削および裏面不純物導入工程)におけるデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態1のデバイス構造に対応する製造方法を説明する。
まず、N−型シリコン単結晶(たとえばリン濃度2x1014/cm3程度)の200φウエハ(150φ、100φ、300φ、450φ等の各種径のウエハでもよい)を準備する。ここでは、たとえば、FZ(Floating Zone)法によるウエハが最も好適であるが、CZ(Czochralski)法によるウエハでもよい。
次に、図9に示すように、半導体ウエハ1の表面1a(第1の主面)上のほぼ全面に、N型ホールバリア領域導入用レジスト膜31を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたN型ホールバリア領域導入用レジスト膜31をマスクとして、たとえば、イオン注入により、半導体ウエハ1の表面1a(第1の主面)側の半導体基板1s(N−型単結晶シリコン基板)内に、N型不純物を導入することにより、N型ホールバリア領域24を形成する。このときのイオン注入条件としては、たとえば、イオン種:リン、ドーズ量:6x1012/cm2程度、注入エネルギ:80KeV程度を好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜31を除去する。
次に、図10に示すように、半導体ウエハ1の表面1a上のほぼ全面に、P型フローティング領域導入用レジスト膜37を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたP型フローティング領域導入用レジスト膜37をマスクとして、たとえば、イオン注入により、半導体ウエハ1の表面1a(第1の主面)側の半導体基板1s内に、P型不純物を導入することにより、P型フローティング領域16を形成する。このときのイオン注入条件としては、たとえば、イオン種:ボロン、ドーズ量:3.5x1013/cm2程度、注入エネルギ:75KeV程度を好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜37を除去する。なお、P型フローティング領域16の導入の際に、図2のセル周辺接合領域35、フローティングフィールドリング36も同時に導入する。
次に、図11に示すように、半導体ウエハ1の表面1a上のほぼ全面に、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)等により、酸化シリコン系絶縁膜等のトレンチ形成用ハードマスク膜32(例えば、厚さ450nm程度)を成膜する。
次に、図12に示すように、半導体ウエハ1の表面1a上のほぼ全面に、トレンチハードマスク膜加工用レジスト膜33を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたトレンチハードマスク膜加工用レジスト膜33をマスクとして、たとえば、ドライエッチングにより、トレンチ形成用ハードマスク膜32をパターニングする。
その後、図13に示すように、アッシング等により、不要になったレジスト膜33を除去する。
次に、図14に示すように、パターニングされたトレンチ形成用ハードマスク膜32を用いて、たとえば、異方性ドライエッチングにより、トレンチ21を形成する。この異方性ドライエッチングのガス系としては、たとえば、Cl2/O2系ガスを好適なものとして例示することができる。
その後、図15に示すように、たとえば、弗酸系酸化シリコン膜エッチング液等を用いたウエットエッチングにより、不要になったトレンチ形成用ハードマスク膜32を除去する。
次に、図16に示すように、P型フローティング領域16およびN型ホールバリア領域24に対する引き延ばし拡散(たとえば、摂氏1200度、30分程度)を実行する。続いて、たとえば、熱酸化等により、半導体ウエハ1の表面1a上およびトレンチ21の内面のほぼ全面に、ゲート絶縁膜22(例えば、厚さ120nm程度)を形成する。
次に、図17に示すように、トレンチ21を埋め込むように、ゲート絶縁膜22上の半導体ウエハ1の表面1a上およびトレンチ21の内面のほぼ全面に、たとえばCVD等により、燐がドープされたドープトポリシリコン(Doped Poly−Silicon)膜27を成膜する(例えば、厚さ600nm程度)。
次に、図18に示すように、たとえば、ドライエチング等(たとえば、ガス系はSF6等)により、ポリシリコン膜27をエッチバックすることにより、トレンチ21内にトレンチゲート電極14を形成する。
次に、図19に示すように、たとえば、弗酸系酸化シリコン膜エッチング液等を用いたウエットエッチングにより、トレンチ21外のゲート絶縁膜22を除去する。
次に、図20に示すように、たとえば、熱酸化またはCVDにより、半導体ウエハ1の表面1a上のほぼ全面に、後続のイオン注入用の比較的薄い酸化シリコン膜(たとえば、ゲート絶縁膜と同程度)を形成する。続いて、半導体ウエハ1の表面1a上に通常のリソグラフィにより、P型ボディ領域導入用レジスト膜を形成する。このP型ボディ領域導入用レジスト膜をマスクとして、例えば、イオン注入により、セル領域10のほぼ全面およびその他必要な部分に、P型不純物を導入することにより、P型ボディ領域15を形成する。このときのイオン注入条件としては、たとえば、イオン種:ボロン、ドーズ量:3x1013/cm2程度、注入エネルギ:75KeV程度を好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったP型ボディ領域導入用レジスト膜を除去する。
更に、半導体ウエハ1の表面1a上に通常のリソグラフィにより、N+型エミッタ領域導入用レジスト膜を形成する。このN+型エミッタ領域導入用レジスト膜をマスクとして、例えば、イオン注入により、線状アクティブセル領域40aのP型ボディ領域15の上部表面のほぼ全面に、N型不純物を導入することにより、N+型エミッタ領域12を形成する。このときのイオン注入条件としては、たとえば、イオン種:砒素、ドーズ量:5x1015/cm2程度、注入エネルギ:80KeV程度を好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったN+型エミッタ領域導入用レジスト膜を除去する。
次に、図21に示すように、半導体ウエハ1の表面1a上のほぼ全面に、たとえば、CVD等により、層間絶縁膜26として、たとえば、PSG(Phosphsilicate Glass)膜を成膜する(厚さは、たとえば、600nm程度)。この層間絶縁膜26の材料としては、PSG膜のほか、BPSG(Borophosphsilicate Glass)膜、NSG(Non−doped Silicate Glass)膜、SOG(Spin−On−Glass)膜または、これらの複合膜等を好適なものとして例示することができる。
次に、図22に示すように、層間絶縁膜26上の半導体ウエハ1の表面1a上に、通常のリソグラフィにより、コンタクト溝形成用レジスト膜28を形成する。続いて、たとえば、異方性ドライエッチング等(ガス系は、たとえば、Ar/CHF3/CF4等)により、コンタクト溝11(またはコンタクトホール)を形成する。
その後、図23に示すように、アッシング等により、不要になったレジスト膜28を除去する。続いて、たとえば、異方性ドライエッチングにより、コンタクト溝11(またはコンタクトホール)を半導体基板内に延長する。このときのガス系としては、たとえば、Cl2/O2系ガスを好適なものとして例示することができる。
次に、図24に示すように、たとえば、コンタクト溝11を通して、P型不純物をイオン注入することにより、P+型ボディコンタクト領域25を形成する。ここで、イオン注入条件としては、たとえば、イオン種:BF2、ドーズ量:5x1015/cm2程度、打ち込みエネルギ:80KeV程度を好適なものとして例示することができる。
同様に、たとえば、コンタクト溝11を通して、P型不純物をイオン注入することにより、P+型ラッチアップ防止領域23を形成する。ここで、イオン注入条件としては、たとえば、イオン種:ボロン、ドーズ量:5x1015/cm2程度、打ち込みエネルギ:80KeV程度を好適なものとして例示することができる。
次に、図25に示すように、スパッタリング等により、たとえば、アルミニウム系電極膜8(メタルエミッタ電極8となる)を形成する。具体的には、たとえば、以下のような手順で実行する。まず、たとえばスパッタリング成膜より、半導体ウエハ1の表面1a上のほぼ全面にバリアメタル膜として、TiW膜を(たとえば、厚さ200nm程度)を形成する(TiW膜中のチタンの多くの部分は、後の熱処理によって、シリコン界面に移動してシリサイドを形成して、コンタクト特性の改善に寄与するが、これらの過程は煩雑であるので図面には表示しない)。
続いて、たとえば、窒素雰囲気、摂氏600度程度で、10分程度のシリサイドアニールを実行する。続いて、バリアメタル膜上のほぼ全面に、コンタクト溝11を埋め込むように、たとえばスパッタリング成膜より、アルミニウムを主要な成分とする(たとえば、数%シリコン添加、残りはアルミニウム)アルミニウム系メタル膜(たとえば、厚さ5マイクロメートル程度)を形成する。続いて、通常のリソグラフィによって、アルミニウム系メタル膜およびバリアメタル膜からなるメタルエミッタ電極8をパターニングする(ドライエッチングのガス系としては、たとえば、Cl2/BCl3等)。更に、ファイナルパッシベーション膜として、たとえば、ポリイミドを主要な成分とする有機膜(たとえば、厚さ2.5マイクロメートル程度)等をウエハ1のデバイス面1aのほぼ全面に塗布し、通常のリソグラフィによって、図6のエミッタパッド9、ゲートパッド6等を開口する。
次に、ウエハ1の裏面1bに対して、バックグラインディング処理(必要に応じて、裏面のダメージ除去のためのケミカルエッチング等も実施)を施すことによって、たとえば、もともとの800マイクロメータ程度(好適な範囲としては、1000から450マイクロメータ程度)のウエハ厚を必要に応じて、たとえば200から30マイクロメータ程度に薄膜化する。たとえば、耐圧が600ボルト程度とすると、最終厚さは、70マイクロメートル程度である。
次に、図26に示すように、半導体ウエハ1の裏面1bのほぼ全面に、たとえば、イオン注入により、N型不純物を導入することによって、N型フィールドストップ領域19を形成する。ここで、イオン注入条件としては、たとえば、イオン種:燐、ドーズ量:7x1012/cm2程度、打ち込みエネルギ:350KeV程度を好適なものとして例示することができる。その後、必要に応じて、不純物活性化のために、ウエハ1の裏面1bに対して、レーザアニール等を実施する。次に、半導体ウエハ1の裏面1bのほぼ全面に、たとえば、イオン注入により、N型不純物を導入することによって、P+型コレクタ領域18を形成する。ここで、イオン注入条件としては、たとえば、イオン種:ボロン、ドーズ量:1x1013/cm2程度、打ち込みエネルギ:40KeV程度を好適なものとして例示することができる。その後、必要に応じて、不純物活性化のために、ウエハ1の裏面1bに対して、レーザアニール等を実施する。
次に、たとえば、スパッタリング成膜により、半導体ウエハ1の裏面1bのほぼ全面に、メタルコレクタ電極17を形成する(具体的な詳細については、図49およびその説明を参照)。その後、ダイシング等により、半導体ウエハ1のチップ領域に分割し、必要に応じて、パッケージに封止すると、デバイスが完成する。
4.本願の実施の形態2(P型ディープフローティング構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造の説明(主に図27)
このセクションで説明する単位セル構造は、図8における単位セル構造において、N型ホールバリア領域24を省略したものである。
図27は本願の実施の形態2(P型ディープフローティング構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造を説明するための図7のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。これに基づいて、本願の実施の形態2(P型ディープフローティング構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造を説明する。
図27に示すように、この例では、図8における単位セル構造において、N型ホールバリア領域24を省略した構造となっている。従って、線状アクティブセル領域40aのN−型ドリフト領域20部分のホール濃度は、図8の構造と比較すると、低下する傾向にある。たとえば、線状アクティブセル領域40aが十分に狭い場合、トレンチ21の深さが十分に深い場合(対応してP型フローティング領域16も深い場合)、図27の構造を採用する事が有効となる。
5.本願の実施の形態3(P/N型フローティング&ホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造の説明(主に図28)
このセクションで説明する単位セル構造は、図8における単位セル構造において、線状インアクティブセル領域40iの半導体基板の表面1aのほぼ全面に、線状アクティブセル領域40aと同様に、N+型エミッタ領域12に対応するN+型フローティング領域29(N+型エミッタ領域12と同一のプロセスで作られる)を設けたものである。
図28は本願の実施の形態3(P/N型フローティング&ホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造を説明するための図7のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。これに基づいて、本願の実施の形態3(P/N型フローティング&ホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造を説明する。
図28に示すように、図8と異なり、セル領域10の半導体基板の表面1aのほぼ全面に、N+型エミッタ領域12(29)が設けられた構造となっている。この構造を実現するには、例えば、図20において、N+型領域12をセル領域10の全域に広げればよい。
6.本願の実施の形態4(ディープホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造の説明(主に図29)
このセクションで説明する単位セル構造は、図8における単位セル構造において、N型ホールバリア領域24の深さをP型フローティング領域16の深さよりも深くしたものである。
図29は本願の実施の形態4(ディープホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造を説明するための図7のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。これに基づいて、本願の実施の形態4(ディープホールバリア構造)におけるIE型トレンチゲートIGBTのデバイス構造を説明する。
図29に示すように、図8と異なり、N型ホールバリア領域24の深さが、P型フローティング領域16の深さよりも深くなっている。これを実現する方法としては、たとえば、図9に於いて、ドーズ量や注入エネルギーを若干増加させる方法の外、レジスト膜31の開口をセル領域10の全域に広げる方法や、イオン注入直後に不純物を十分に拡散可能な熱処理を追加する方法の三つを、好適なものとして、例示することができる。
7.本願の実施の形態5(アクティブセル2次元間引き構造におけるアクティブセクション分散構造)のデバイス構造の説明(主に図30から図32)
このセクションで説明する単位セル構造は、図4や図8で説明した平面レイアウトに対する変形例であり、図5に関して説明したものの具体例の説明である。ここで示す平面構造は、たとえば図2、図3、図8、および図27から図29の単位セル構造等の断面構造に適用できる。このセクションではその一例を説明する。
図30は本願の実施の形態5(アクティブセル2次元間引き構造におけるアクティブセクション分散構造)のデバイス構造を説明するための図7に対応する拡大上面図である。図31は図30のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。図32は図30のE−E’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態5(アクティブセル2次元間引き構造におけるアクティブセクション分散構造)のデバイス構造を説明する。
図30に示すように、図8(図4)と異なり、線状アクティブセル領域40aのほぼ全長に亘りN+型エミッタ領域12が形成されておらず、その長さ方向に於いて、N+型エミッタ領域12が形成されているアクティブセクション40aaと、N+型エミッタ領域12が形成されていないインアクティブセクション40aiにほぼ周期的に区分されている。すなわち、図8でN+型エミッタ領域12に当たる領域は、比較的短いN+型エミッタ領域12と比較的長いN型不純物が導入されていない領域12iに分かれている。
一方、この例では、コンタクト溝11(またはコンタクトホール)は、図8(図4)と同様に、線状アクティブセル領域40aのほぼ全長に亘り形成されている。
図30のD−D’断面を図31に示す。図31に示すように、この部分の断面構造は、図8と同じである。更に、図30のE−E’断面を図32に示す。図32に示すように、線状アクティブセル領域40aにN+型エミッタ領域12が形成されていない点を除いて、図8と同じである。
この例で、アクティブセクション40aaとインアクティブセクション40aiの長さは、要求される特性、すなわち、飽和電流、高電流域におけるオン抵抗、負荷短絡時に流れる短絡電流と印加されている電圧で決まるエネルギーによって、デバイスが熱破壊しないで耐えられる時間(負荷短絡耐量)等により種々設定できる。ここでの例に対応して、具体的な寸法の一例を示すと、たとえば、以下のようになる。すなわち、アクティブセクション40aaの長さは、1マイクロメートル程度で、インアクティブセクション40aiの長さは、10マイクロメートル程度である。
従って、負荷短絡耐量が問題とならないようなケースで高電流域におけるオン抵抗を下げたいような場合は、たとえば、アクティブセクション40aaの長さは、1マイクロメートル程度で、インアクティブセクション40aiの長さは、1マイクロメートル程度(又はそれ以下)とすることもできる。更に、飽和電流を十分に下げて、負荷短絡耐量をあげたいような場合には、たとえばアクティブセクション40aaの長さは、1マイクロメートル程度で、インアクティブセクション40aiの長さは、20マイクロメートル程度(又はそれ以上)とすることもできる。
8.本願の実施の形態6(アクティブセル2次元間引き構造における局所アクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造の説明(主に図33から図36)
このセクションで説明する例は、たとえば図30の平面レイアウトに対する変形例である。
ここで示す平面構造は、図30の平面レイアウトに関する変形例であり、たとえば図2、図3、図8、および図27から図29の単位セル構造等の断面構造に適用できる。このセクションではその一例を説明する。
図33は本願の実施の形態6(アクティブセル2次元間引き構造における局所アクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造を説明するための図7に対応する拡大上面図である。図34は図33のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。図35は図33のE−E’断面に対応するデバイス断面図である。図36は図33のF−F’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態6(アクティブセル2次元間引き構造における局所アクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造を説明する。
図33に示すように、図30と異なり、同一の線状アクティブセル領域40aの幅方向の両側で境界を構成する一対のトレンチゲート電極14(主トレンチゲート電極)を連結トレンチゲート電極14c(すなわち隣接する主トレンチゲート電極をセル領域内で連結するトレンチゲート電極)で相互に連結して、ラダー状の平面構造(ラダー状トレンチゲート電極)とすることによって、線状アクティブセル領域40aをその長さ方向に、ブロック化する。すなわち、線状アクティブセル領域40aを例えば、連結トレンチゲート電極14cで区画されたほぼ周期的なブロック40abに分割する(なお、必ずしも周期的である必要はない)。各ブロック40abは、基本的にアクティブセクション40aaを有するアクティブサブブロック40abaとアクティブセクション40aaを有さないインアクティブサブブロック40abiから構成されており、これらの間は、先と同様に、連結トレンチゲート電極14cによって区画されている。また、コンタクトホール11(エミッタコンタクト部)は、アクティブサブブロック40abaに設けられており、インアクティブサブブロック40abiには設けられていない。また、この例では、アクティブセクション40aaは、アクティブサブブロック40abaの一部にのみに設けられている。このような構造とすることにより、図30等と比較して、エミッタメタル電極への通路を実質的に制限することができるので、より効率的に、ホールのエミッタメタル電極への流れ込みを制限することができる。
図33のD−D’断面を図34に示す。図34に示すように、この断面構造は、図31と同じである。更に、図33のE−E’断面を図35に示す。図35に示すように、この部分の断面構造は、コンタクト溝11、(またはコンタクトホール)および、それに関連してP+型ボディコンタクト領域25、P+型ラッチアップ防止領域23等がない以外、図32と同じである。図33のF−F’断面を図36に示す。図36に示すように、アクティブサブブロック40abaにおける断面構造は、図8等の線状アクティブセル領域40aとほぼ同じであり、インアクティブサブブロック40abiにおける断面構造は、図8等の線状インアクティブセル領域40iとほぼ同じである。異なるところは、図8等における線状アクティブセル領域40aと線状インアクティブセル領域40iとの境界には、主トレンチゲート電極14があるのに対して、アクティブサブブロック40abaとインアクティブサブブロック40abiの境界には、連結トレンチゲート電極14cがあることである。
また、図8等と同様に、インアクティブサブブロック40abiにおける半導体チップ2の表面1a(第1の主面)側のN−型ドリフト領域20(半導体基板の表面側半導体領域)には、下から順に、P型フローティング領域16およびP型ボディ領域15が設けられており、P型フローティング領域16の深さは、トレンチ21の深さよりも深くされており、トレンチ21(連結トレンチゲート電極14cが収納されているトレンチ)の下端部をカバーするように分布している。このような構造によれば、連結トレンチゲート電極14cがホールに対して、遮断トレンチとして作用し、エミッタ通路を遮断するので、ホール蓄積効果を更に向上させることができる。
この例に於いても、セクション7で説明したアクティブセクション40aaとインアクティブセクション40aiの長さと同様に、アクティブサブブロック40abaとインアクティブサブブロック40abiの長さも、要求される特性によって種々変更可能である。この例に対応して、具体的な寸法の一例を示すとすれば、たとえば以下のようになる。すなわち、アクティブサブブロック40abaの長さは、5マイクロメートル程度で、インアクティブサブブロック40abiの長さは、6マイクロメートル程度である。
なお、この例では、アクティブセクション40aaとインアクティブセクション40aiの長さは、セクション7の例と同一としているが、先に説明した例に従って、必要に応じて変更してもよい。
9.本願の実施の形態7(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルアクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造の説明(主に図37から図40)
このセクションで説明する例は、たとえば図33の平面レイアウトの変形例である。
ここで示す平面構造は、たとえば図2、図3、図8、および図27から図29の単位セル構造等の断面構造に適用できる。このセクションではその一例を説明する。
図37は本願の実施の形態7(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルアクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造を説明するための図7に対応する拡大上面図である。図38は図37のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。図39は図37のE−E’断面に対応するデバイス断面図である。図40は図37のF−F’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態7(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルアクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造を説明する。
図37に示すように、図33の例と異なる点は、アクティブサブブロック40abaのほぼ全部がアクティブセクション40aaとなっていることである。すなわち、図33の例では、アクティブサブブロック40abaの一部の区画のみが、N+型エミッタ領域12が形成されたアクティブセクション40aaとなっているが、この例では、コンタクト溝11(またはコンタクトホール)の部分を除く、アクティブサブブロック40abaの半導体基板表面全体に、N+型エミッタ領域12が形成されている。一方、インアクティブサブブロック40abiの方は、図33の例と同様に、そのほぼ全域が、インアクティブセクション40aiとなっている。この構造は、飽和電流を増やしたいときに有効である。ただし、負荷短絡時の耐圧が低下する恐れが有る。
従って、図37のD−D’断面は、図38に示すように、図34とほぼ同じである。また、図37のE−E’断面は、図39に示すように、図35とほぼ同じである。一方、図37のF−F’断面は、図40に示すように、アクティブサブブロック40abaの半導体基板の表面1aに、N+型エミッタ領域12が設けられている。
10.本願の実施の形態8(アクティブセル2次元間引き構造における局所N+型フローティング−インアクティブセクション構造)のデバイス構造の説明(主に図41から図43)
このセクションで説明する例は、たとえば図30の平面レイアウトの変形例である。
ここで示す平面構造は、たとえば図2、図3、図8、および図27から図29の単位セル構造等の断面構造に適用できる。このセクションではその一例を説明する。
図41は本願の実施の形態8(アクティブセル2次元間引き構造における局所N+型フローティング−インアクティブセクション構造)のデバイス構造を説明するための図7に対応する拡大上面図である。図42は図41のD−D’断面に対応するデバイス断面図である。図43は図41のE−E’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態8(アクティブセル2次元間引き構造における局所N+型フローティング−インアクティブセクション構造)のデバイス構造を説明する。
図41に示すように、図30と異なり、線状アクティブセル領域40aのみではなく、アクティブセクション40aaに対応する線状インアクティブセル領域40iの部分にもN+型エミッタ領域12に対応するN+型フローティング領域29(第1導電型フローティング領域)が設けられている。すなわち、このN+型フローティング領域29は、たとえばN+型エミッタ領域12と同一のプロセスで同時に作られる。これにより、線状インアクティブセル領域40iは、その長さ方向に、N+型フローティング領域29が作られた第1導電型フローティング領域形成セクションとN+型フローティング領域29が作られない第1導電型フローティング領域非形成セクションに区分されることとなる。
IGBT内のMOSFET部分から注入された電子の一部は、トレンチ側壁のN型層部分にできる蓄積層およびP型側壁部分にできる反転層を経由して、このN+型フローティング領域29にも到達し、P型フローティング領域16に注入される。この状態で、IGBTがオフすると、この電子は、P型フローティング領域16に残留したホールと再結合して消滅する。これにより、オフ時のスイッチング損失を低減することができる。
従って、図41のD−D’断面は、図42に示すように、線状インアクティブセル領域40iの内、アクティブセクション40aaの半導体基板の表面1aに、N+型フローティング領域29が設けられている以外、図31とほぼ同一である。一方、図41のE−E’断面は、図43に示すように、図32とほぼ同一である。
11.本願の実施の形態9(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルN+型フローティング−インアクティブセクション構造)のデバイス構造の説明(主に図44および図45)
このセクションで説明する例は、たとえば図41の平面レイアウトの変形例である。
ここで示す平面構造は、たとえば図2、図3、図8、および図27から図29の単位セル構造等の断面構造に適用できる。このセクションではその一例を説明する。
図44は本願の実施の形態9(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルN+型フローティング−インアクティブセクション構造)のデバイス構造を説明するための図7に対応する拡大上面図である。図45は図44のE−E’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態9(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルN+型フローティング−インアクティブセクション構造)のデバイス構造を説明する。
図44に示すように、この例では、図41と異なり、線状インアクティブセル領域40iのほぼ全体の半導体基板の表面1aに、N+型フローティング領域29が設けられている。従って、図44のD−D’断面は、図42とほぼ同一である。一方、図44のE−E’断面は、図45に示すように、図43と異なり、線状インアクティブセル領域40iにおける半導体基板の表面1aにN+型フローティング領域29が設けられている。このような構造とすることにより、先に図41で説明したような、線状インアクティブセル領域40iのP型フローティング領域16への電子注入の経路を広くすることが可能となる。
12.本願の実施の形態10(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルN+型フローティング−インアクティブセクション&局所アクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造の説明(主に図46から図48)
このセクションで説明する例は、たとえば、図33と図44の組み合わせおよびその変形例に関するものである。
ここで示す平面構造は、たとえば図2、図3、図8、および図27から図29の単位セル構造等の断面構造に適用できる。このセクションではその一例を説明する。
図46は本願の実施の形態10(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルN+型フローティング−インアクティブセクション&局所アクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造を説明するための図7に対応する拡大上面図である。図47は図46のE−E’断面に対応するデバイス断面図である。図48は図46のF−F’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態10(アクティブセル2次元間引き構造におけるフルN+型フローティング−インアクティブセクション&局所アクティブセクション−アクティブサブブロック構造)のデバイス構造を説明する。
この例では、図46に示すように、線状アクティブセル領域40aのアクティブサブブロック40abaの構造は、図33とほぼ同一であるが、線状インアクティブセル領域40iの構造は、図44とほぼ同一である。また、付加的に、線状アクティブセル領域40aのインアクティブサブブロック40abiのほぼ全体の半導体基板の表面1aに、N+型フローティング領域29が設けられている。このような構造とすることにより、先に図41で説明したような、インアクティブサブブロック40abiのP型フローティング領域16への電子注入の経路を広くすることが可能となる。
従って、図46のD−D’断面は、図42とほぼ同一であり、図46のE−E’断面においては、図47に示すように、図39と異なり、線状インアクティブセル領域40iおよび線状アクティブセル領域40aにおける半導体基板の表面1aに、N+型フローティング領域29が設けられている。また、図46のF−F’断面においては、図36と異なり、インアクティブサブブロック40abiにおける半導体基板の表面1aに、N+型フローティング領域29が設けられている。
13.本願の実施の形態11(裏面アルミニウムドープ構造)のデバイス構造およびその製法の説明(主に図49)
このセクションで説明する例は半導体基板の裏面側構造に関するものであるが、このセクション以外の例は、全て、半導体基板の表面側構造に関するものである。従って、このセクションの例は、このセクション以外の他の全ての例に適用できる。また、そのほかの一般的な表面側構造を有するIGBT等にも適用できることは言うまでもない。
このセクションでは、説明の便宜上、セクション2の例に従って、デバイス構造を説明し、プロセスについては、セクション3を参照して、簡単に説明する。
なお、以下では、IE型トレンチゲートIGBTについて、具体的に説明するが、この裏面構造は、IE型IGBTやトレンチゲートIGBTに限定されるものではなく、その他の形態のIGBT等にも適用できることは言うまでもない。
図49は本願の実施の形態11(裏面アルミニウムドープ構造)のデバイス構造およびその製法を説明するためのデバイス裏面の局所詳細断面図である。これに基づいて、本願の実施の形態11(裏面アルミニウムドープ構造)のデバイス構造およびその製法を説明する。
図8の半導体チップ2の裏側およびその近傍の断面拡大図(チップの厚さ方向に裏面近傍の構造を拡大して模式的に示したもの)を図49に示す。図49に示すように、半導体基板2の裏面側のP+型コレクタ領域18の下端部の半導体領域には、比較的薄いP型半導体領域(たとえば厚さ0.04から0.1マイクロメートル程度)、すなわちアルミニウムドープ領域30(第2導電型高濃度コレクタコンタクト領域)が設けられており、この不純物濃度(たとえば、1x1019/cm3程度)は、P+型コレクタ領域18の不純物濃度よりも高い。アルミニウムドープ領域30に接して、半導体基板2の裏面1b上に、メタルコレクタ電極17が形成されており、その一例を示せば、半導体基板2に近い方から以下のような構成となっている。すなわち、アルミニウムドープ領域30の不純物ソースであるアルミニウム裏面メタル膜17a(たとえば、厚さ600nm程度)、チタン裏面メタル膜17b(たとえば、厚さ100nm程度)、ニッケル裏面メタル膜17c(たとえば、厚さ600nm程度)および金裏面メタル膜17d(たとえば、厚さ100nm程度)である。
次に、製法を簡単に説明する。セクション3における図26のプロセス、すなわち、スパッタリング成膜の際に、前記のアルミニウム裏面メタル膜17a、チタン裏面メタル膜17b、ニッケル裏面メタル膜17c、および金裏面メタル膜17dを順次、スパッタリング成膜し、この際に発生する熱により、アルミニウムがシリコン基板中に導入され、アルミニウムドープ領域30が形成される。その後、ダイシング等により、半導体ウエハ1のチップ領域に分割すると、図8のようになる(図8には詳細構造は明示していない)。
本願の各実施の形態では、オン状態でエミッタ側にホールを蓄積して、電子の注入を促進する構造としている。一方で、裏面コレクタ側のPNダイオードは、逆に低注入効率となるダイオードにして、低スイッチング損失化を図っている。ここで、低注入効率の裏面ダイオードを形成するためには、P+型コレクタ領域18のキャリア濃度QpとN型フィールドストップ領域19のキャリア濃度Qnの比(以下「キャリア濃度比」という)、すなわち(Qp/Qn)を小さくすることが有効である。しかし、そのために、P+型コレクタ領域18のキャリア濃度Qpを下げ過ぎると、裏面メタルコンタクトの特性が劣化する。そこで、この例では、裏面のアルミニウム膜から導入されるP+型コレクタ領域18の不純物濃度よりも高いアルミニウムドープ領域30を設けている。キャリア濃度比としては、たとえば、1.5程度(範囲としては、たとえば、1.1から4程度)を好適なものとして例示することができる。本願の各実施の形態では、オン状態でエミッタ側にホールを蓄積して電子の注入を促進するための構造としている。このとき、表面側から注入された電子は裏面コレクタ側に到達し、裏面PNダイオードからのホールの注入を促進する。さらに、この注入されたホールは表面に到達して表面側からの電子の注入を促進する。本願の各実施の形態を用いると、このような正帰還現象によって、N―ドリフト領域20の伝導度変調が起こりやすくなるため、裏面コレクタ側のPNダイオードをより低注入効率となる仕様にしても、オン電圧の増大が起こりにくいデバイスを実現することが可能となる。
14.本願の実施の形態12(セル領域周辺構造:ダミーセル&周辺接合コンタクト構造)のデバイス構造の説明(主に図50から図52)
セクション14から16では、図2等で説明したセル領域10の端部構造の各種の例を示す。まず、このセクションでは、図2にほぼ対応した例を説明する。
図50は本願の実施の形態12(セル領域周辺構造:ダミーセル&周辺接合コンタクト構造)のデバイス構造を説明するための図6のセル領域コーナ部切り出し領域R4の拡大上面図である。図51は図50のG−G’断面に対応するデバイス断面図である。図52は図50のH−H’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態12(セル領域周辺構造:ダミーセル&周辺接合コンタクト構造)のデバイス構造を説明する。
図50に示すように、セル領域10の端部に於いては、線状単位セル領域40(図4)の幅方向(線状アクティブセル領域40a、線状インアクティブセル領域40i等の幅方向)に1個から数個のダミーセル領域34(線状ダミーセル領域)が設けられている。ダミーセル領域34には、線状アクティブセル領域40aと同様に、P+型ボディコンタクト領域25dが設けられている。
一方、線状単位セル領域40(図4)の長さ方向の端部に於いては、端部トレンチゲート電極14pおよび比較的幅の狭い(線状アクティブセル領域40aと同程度の幅)N+型エミッタ領域12等(この例では、N型ホールバリア領域24も形成されていない)が形成されていない領域が、先のダミーセル領域34が設けられた領域も含めて端部緩衝領域として設けられている。これらの端部緩衝領域の外部には、これらを取り巻くように、リング状のP型セル周辺接合領域35(第2導電型セル周辺接合領域)が設けられており、このP型セル周辺接合領域35を構成するP型セル周辺領域16pは、たとえば、P型フローティング領域16と同一のプロセスで、同時に形成される。
このP型セル周辺接合領域35上には、セル領域10からトレンチゲート電極14がゲート引き出し部14wとして延びており、P型セル周辺接合領域35内には、セル領域10と類似の構造を有する多数のP+型ボディコンタクト領域25pが設けられている。
次に、図50のG−G’断面を図51に示す。図51に示すように、線状単位セル領域40については、図8頭に説明したところと同じである。一方、セル周辺部分についても、図2等に説明したところと基本的に同じであるが、更に詳しく説明すると、ダミーセル領域34およびP型セル周辺接合領域35(図2に示すフローティングフィールドリングの部分まで含めて)における半導体基板2の表面1aには、P型ボディ領域15が設けられている。ダミーセル領域34には、コンタクト溝11(またはコンタクトホール)等が設けられ、エミッタコンタクトも設けられている。更に、ダミーセル領域34には、P+型ボディコンタクト領域25dおよびP+型ラッチアップ防止領域23も設けられており、この例では、N型ホールバリア領域およびN+型エミッタ領域12がない以外、線状アクティブセル領域40aと同じ構造である。
P型セル周辺接合領域35に於いては、同様にコンタクト溝11(またはコンタクトホール)等が設けられ、P+型ボディコンタクト領域25pおよびP+型ラッチアップ防止領域23pも設けられており、P型ボディ領域15下には、P型セル周辺領域16pも設けられている。このP型セル周辺領域16pは、たとえば線状単位セル領域40におけるP型フローティング領域16と同一のプロセスによって、同時に形成される。
次に、図50のH−H’断面を図52に示す。図52に示すように、図51の場合とほぼ同様に、線状インアクティブセル領域40iおよびP型セル周辺接合領域35等における半導体基板2の表面1aには、P型ボディ領域15が設けられている。線状インアクティブセル領域40iのP型セル周辺接合領域35との境界近傍には、端部トレンチゲート電極14pが設けられており、端部緩衝領域の一部となっている。また、線状インアクティブセル領域40i下のP型ボディ領域15の下側には、P型フローティング領域16が設けられており、その深さは他の部分と同様に、トレンチ21よりも深く、端部トレンチゲート電極14pが収納されたトレンチ21の下端部をカバーしている。
更に、図51と同様に、P型セル周辺接合領域35の部分にも、コンタクト溝11(またはコンタクトホール)等が設けられ、エミッタコンタクトも設けられている。このエミッタコンタクト下の半導体基板2の表面領域には、P+型ボディコンタクト領域25pおよびP+型ラッチアップ防止領域23pが設けられており、その下部には、他の部分と同様に、P型セル周辺領域16pが設けられている。
15.本願の実施の形態13(セル領域周辺構造:広域周辺接合構造)のデバイス構造の説明(主に図53および図54)
このセクションで説明する例は、セクション14で説明した例の一つの変形例である。
このセクションで説明する例は、セクション14で説明した例の変形例で、ダミーセル領域下まで、セル周辺接合領域下のP型フローティング領域が延びている点が特徴となっている。
図53は本願の実施の形態13(セル領域周辺構造:広域周辺接合構造)のデバイス構造を説明するための図6のセル領域コーナ部切り出し領域R4の拡大上面図である。図54は図53のK−K’断面に対応するデバイス断面図である。これらに基づいて、本願の実施の形態13(セル領域周辺構造:広域周辺接合構造)のデバイス構造を説明する。
図53に平面レイアウトを示すが、これは図50とほぼ同様である。異なる部分は、図53のK−K’断面を表した図54(図51に対応)にある。すなわち、図51と異なり、セル周辺接合領域35下のP型フローティング領域16pがダミーセル領域34下まで延びてきている。
16.本願の実施の形態14(セル領域周辺構造:ダミーセル下ホールバリア構造)のデバイス構造の説明(主に図55)
このセクションで説明する例は、セクション14で説明した例の他の一つの変形例で、ダミーセル領域にもN型ホールバリア領域が設けられている点が特徴となっている。
図55は本願の実施の形態14(セル領域周辺構造:ダミーセル下ホールバリア構造)のデバイス構造を説明するための図50のG−G’断面に対応するデバイス断面図である。これに基づいて、本願の実施の形態14(セル領域周辺構造:ダミーセル下ホールバリア構造)のデバイス構造を説明する。
この例の断面構造の特徴を図53のK−K’断面を現した図55(図51に対応)に示す。図55に示すように、この例では、ダミーセル領域34下にN型ホールバリア領域24dが付加されている。
17.本願の全般に関する考察並びに各実施の形態に関する補足的説明
本願発明者らは、IE型トレンチゲートIGBTにおける更なるホール蓄積効果向上を図るための検討の中で、以下の設計指針(本願の実施の形態においては、これらの少なくとも一つを実行している)を明らかにした。以下、N−型ドリフト領域(N−ベース領域)を有するデバイスについて具体的に説明する。すなわち、
(1)狭アクティブセルIE型トレンチゲートIGBTにおいては、インアクティブセル領域下のP型ボディ領域よりも深いP型領域をフローティングにすることにより、ホールが蓄積しやすいようにする。すなわち、「ディープフローティングP領域」の導入である。
(2)チャネル領域、すなわち、P型ボディ領域を浅くすることにより、チャネル最深部からトレンチ最深部までの距離を長くすることにより、ホールの退路を長くする(ホール電流の制限)。オン抵抗の低いデバイスを実現するには、電子注入効率を向上させる必要があるが、そのためには、ホール電流を下げてやる必要がある。すなわち、Nベース領域の上端部に蓄積されたホールがエミッタ方向へ排出されないようにする必要がある。
(3)(2)と同じ理由で、トレンチを深くする。(2)、(3)を合わせて、すなわち、「ディープトレンチ化(ホール電流の制限)」である。
(4)アクティブセル領域の両側のトレンチ間隔を狭くすることにより、ホールの退路を狭くする。すなわち、「狭アクティブセル化(ホール電流の制限)」である。これは、ある意味では、「広インアクティブセル化」でもある。
(5)アクティブセル領域下にN型ホールバリアを導入することにより、エミッタを通したホールの退出を阻害する。すなわち、「ホールバリアの導入(ホール電流の制限)」である。
(6)N−型ドリフト領域の厚さを薄くすることにより、ホール濃度を向上させる。すなわち、「チップ薄膜化」である(なお、薄膜化によってもトレンチの底への電界集中が増加する)。
(7)アクティブセル領域の長さ方向を実質的に制限する(アクティブセクションおよびインアクティブセクションの導入)。すなわち、「アクティブセル2次元間引き構造の導入(ホール電流の制限)」である。
(8)セル周辺のコンタクト等の改善により、耐圧の低下を防止する。すなわち、「セル周辺コンタクト等構造の導入」である。
(9)裏面のコンタクト特性を確保しつつ、裏面ダイオードのホール注入効率を下げる。すなわち、「アルミニウム高濃度ドープ層の導入および裏面低注入効率化」である。
これらのうち、ディープフローティングP領域の導入によって、耐圧の変化が緩やかになる(これは、インアクティブセル領域40iの幅等のパラメータを広げると急速に電界強度が上昇するトレンチ下端部がディープフローティングP領域で覆われることで、電界集中が緩和されているからである)。これにより、ディープトレンチ化、狭アクティブセル化、広インアクティブセル化、ホールバリアの導入、チップ薄膜化、アクティブセル2次元間引き構造の導入等の内部構造によるホール蓄積効率向上等の設計自由度が増加する。従って、これらの内部構造によるホール蓄積効率向上は、ディープフローティングP領域の導入と独立でも適用できるが、組み合わせることによって、デバイス特性を効率的に向上させることができる。
一方、ホール蓄積効率向上策は、スイッチング特性の劣化を招くことがあるので、アルミニウム高濃度ドープ層の導入および裏面低注入効率化等により、これらのデメリットを補完すると、デメリットを回避しつつ、ホール蓄積効率を大幅に改善することが可能となる。もっとも、このようなアルミニウム高濃度ドープ層の導入および裏面低注入効率化等は、必須ではないことは言うまでもない。従って、アルミニウム高濃度ドープ層の導入および裏面低注入効率化は、ディープフローティングP領域の導入や、これ以外の内部構造によるホール蓄積効率向上等とは、独立して実行することもできる。
18.材料ウエハに関する補足的説明(主に図56および図57)
図56は図6から図8に対応するIE型トレンチIGBTデバイス”X”と、それと同等のオン抵抗等を有する非IE型トレンチIGBTデバイス”Y”(比較例)の深さ方向のホール濃度分布(縦軸は対数メモリ)である。図57は図56のデバイス”X”および”Y”の結晶抵抗率を変化させた場合のスイッチング損失の比率(それぞれのデバイスの結晶が低濃度の場合を基準とする)の変化を示すプロット図である。これらに基づいて、材料ウエハに関する補足的説明を行う。
一般に、IGBT用のシリコン単結晶ウエハとしては、FZ(Floating Zone)法によるものが使用されている。これは、スイッチング特性が重要なIGBTデバイスでは、ドリフト領域に於いて空乏層が延びやすい高抵抗の結晶であって、且つ、抵抗率のウエハ間ばらつきの少ないインゴットが要求されるからである。すなわち、ウエハ径を大きくしやすい反面、インゴットの主軸に沿って、抵抗率(不純物濃度)が比較的大きく変化するCZ(Czochralski)法では、デバイスの設計が難しく、インゴットの実質的全長を活用することは一般に困難と考えられている。
たとえば、図57に示すデータプロットは、図6から図8に対応するIE型トレンチIGBTデバイス”X”(たとえば、耐圧600ボルト程度)と、それと同等のオン抵抗(耐圧)を有する非IE型トレンチIGBTデバイス”Y”のスイッチング損失の比を比較したものである。図57に示すように、IE型トレンチIGBTデバイス”X”では、抵抗率が27%程度変化したとき(CZ結晶インゴットの軸方向の抵抗率のばらつきに対応)、スイッチング損失が、30%程度の変化であるのに対して、非IE型トレンチIGBTデバイス”Y”では、その3倍程度の90%程度の変化となっている。このような振れ幅は、一般に製品としては、許容されがたいものとされている。
これは、図56に示すように、非IE型トレンチIGBTデバイス”Y”では、オン抵抗を下げるために、裏面ダイオードの注入効率を上げなければならないのに対して、IE型トレンチIGBTデバイス”X”では、表側のホール蓄積効果のために、全体のホール分布が比較的平坦になっているからである。このように、裏面ダイオードの注入効率を上げると、各種特性の結晶濃度依存性が急峻になるというデメリットがある。
従って、本願の各実施の形態のIE型トレンチゲートIGBTにおいては、CZ法による結晶によっても、一般に製品として許容されデバイス設計が可能となる。しかし、CZ結晶を摂氏450度前後でアニールすると、サーマルドナー(Thermal Donor)が発生して、実質的なN型不純物能が上昇するという問題がある。従って、この場合、CZ結晶の中でも酸素濃度の比較的低いMCZ(Magnetic Fiield Applied CZ)法によるものを使用するのが好適である。MCZ結晶の中でも、特に、HMCZ(Horizontal MCZ)法、CMCZ(Cusp MCZ)法等による結晶が特に好適である。これらの低酸素MCZ結晶の酸素濃度は、通常、3x1017/cm3から7x1017/cm3程度である。これに対して、FZ(Floating Zone)結晶の酸素濃度は、通常、1x1016/cm3程度であり、磁場を使用しない通常のCZ結晶の酸素濃度は、通常、1x1018/cm3程度である。
なお、IGBTに特に適合した高抵抗CZ結晶の抵抗率の範囲としては、たとえば、耐圧が600ボルトから1200ボルト程度の範囲を想定すると、20Ωcm程度から85Ωcm程度の範囲である。
このように、IGBTにおいて、CZ結晶を使用すると、酸素濃度の低いFZ結晶と相違して、機械的強度が強く、熱歪に強いというメリットがある。また、FZ結晶と比較して、CZ結晶は、ウエハの大口径化が比較的容易というメリットもある。また、大口径化するほど、熱応力の問題は重要になるので、ますます、CZ結晶を使用するほうが有利となる。また、同一口径のウエハの単価を比較すると、CZ結晶の方がはるかに安い(たとえば、8インチでFZ結晶の50%程度)。
また、必須ではないが、CZ結晶を使用したIE型トレンチIGBTデバイスでは、裏面ダイオードの注入効率を下げた方が、スイッチング特性上、有利であるので、セクション13(図49)で説明した裏面アルミニウム系コンタクト構造が有利である。すなわち、P+型コレクタ領域18(図49)の濃度を下げても、アルミニウムドープ領域30とアルミニウム裏面メタル膜17aの組み合わせによって良好なコンタクトが確保できる。
なお、このセクションで説明したCZ結晶の適用は、本願で説明した全ての実施の形態に於いて適用することができる。
19.セル領域周辺構造に関する補足的説明(主に図58および図59)
このセクションの説明は、基本的にセクション14に関する補足的説明である。
図58は図50とほぼ同じ部分(特にセル領域外の周辺部分)をより詳しく図示した図6のセル領域コーナ部切り出し領域R4および、その周辺の拡大上面図である。図59は図50のH−H’断面に対応するデバイス断面図(ほぼ図52に対応する)である。これらに基づいて、セル領域周辺構造に関する補足的説明を行う。
図58に示すように、図50と同様に、セル領域10の端部に於いては、線状単位セル領域40(図4)の幅方向(線状アクティブセル領域40a、線状インアクティブセル領域40i等の幅方向)に1個から数個のダミーセル領域34(線状ダミーセル領域)が設けられている。ダミーセル領域34には、線状アクティブセル領域40aと同様に、P+型ボディコンタクト領域25dが設けられている。
一方、線状単位セル領域40(図4)の長さ方向の端部に於いては、端部トレンチゲート電極14pおよび比較的幅の狭い(線状アクティブセル領域40aと同程度の幅)N+型エミッタ領域12等(この例では、N型ホールバリア領域24も形成されていない)が形成されていない領域が、先のダミーセル領域34が設けられた領域も含めて端部緩衝領域として設けられている。これらの端部緩衝領域の外部には、これらを取り巻くように、リング状のP型セル周辺接合領域35(第2導電型セル周辺接合領域)が設けられており、このP型セル周辺接合領域35を構成するP型セル周辺領域16p(周辺第2導電型領域)は、たとえば、P型フローティング領域16と同一のプロセスで、同時に形成される。
このP型セル周辺接合領域35上には、セル領域10からトレンチゲート電極14がゲート引き出し部14wとして延びており、P型セル周辺接合領域35内には、セル領域10と類似の構造を有する多数のP+型ボディコンタクト領域25p(この部分は、周辺コンタクト部41にも対応している)が設けられている。
メタルエミッタ電極8は、セル領域10の周辺外部まで覆っており、周辺コンタクト部41において、P型セル周辺領域16pとの電気的接続がとられている。メタルエミッタ電極8の周辺部には、メタルゲート配線7が延びており、ゲート引き出し部14wとは、メタルゲート配線−トレンチゲート電極接続部13に於いて、相互接続されている。
次に、図58のH−H’断面を図59に示す。図59に示すように、図52と同様に、線状インアクティブセル領域40iおよびP型セル周辺接合領域35等における半導体基板2の表面1aには、P型ボディ領域15が設けられている。線状インアクティブセル領域40iのP型セル周辺接合領域35との境界近傍には、端部トレンチゲート電極14pが設けられており、端部緩衝領域の一部となっている。また、線状インアクティブセル領域40i下のP型ボディ領域15の下側には、P型フローティング領域16が設けられており、その深さは他の部分と同様に、トレンチ21e(21)よりも深く、端部トレンチゲート電極14pが収納されたトレンチ21e(21)の下端部をカバーしている。
更に、P型セル周辺接合領域35の部分にも、コンタクト溝(またはコンタクトホール)等が設けられ、エミッタコンタクト(周辺コンタクト部41)も設けられている。このエミッタコンタクト下の半導体基板2の表面領域には、P+型ボディコンタクト領域25pおよびP+型ラッチアップ防止領域23pが設けられており、その下部には、他の部分と同様に、P型セル周辺領域16p(周辺第2導電型領域)が設けられている。
周辺コンタクト部41が設けられている理由は、図1および図6に示すように、セル領域10の外部周辺には、リング状にセル周辺接合領域35が設けられており、その部分の基板領域には、P型セル周辺領域16p(周辺第2導電型領域)が設けられている。このセル周辺接合領域35の面積は、相当に広いものであり、周辺コンタクト部41を設けないと、この部分にホールが溜まりやすいからである。周辺コンタクト部41を設けないと、溜まったホールは、必然的にセル領域に流れて行き(ホールの不所望な流れ)、ラッチアップ耐性を低下させることとなる。これに関して、図59に示すように、セル周辺接合領域35のP型セル周辺領域16p(周辺第2導電型領域)と、セル領域10のP型フローティング領域16が電気的に分離されていることは、ホールの不所望な流れを阻止するのに有効である。また、端部トレンチ21eの存在もこれに寄与している。なお、この例では、端部トレンチ21eよりも外側に於いて、ゲート引き出し部14wを相互に連結するようなトレンチを設けていない。これは、そのようなトレンチ(端部トレンチ21eと同等かそれよりも深いもの)があると、その部分でホールの流れにより電圧降下を生じ、ラッチアップ耐性を下げることになるからである。また、周辺コンタクト部41をセル周辺接合領域35の幅方向に延長することは、通常存在するメタルゲート配線7の存在により制限される。これは、通常、メタルエミッタ電8極とメタルゲート配線7は、同層のメタル層から構成されているからである。
20.代表的実施の形態の一つのアウトラインに関する補足的説明または考察(主に図60)
ここでは、代表的実施の形態の一例として、セクション7の例に関して、補足的説明または考察を行う。なお、デバイス構造に関しては、すでに、詳しく説明しているので、ここでは繰り返さない。
図60は代表的実施の形態の一つのアウトラインを説明するための図30に対応する拡大上面図である。
この例の特徴は、図60に示すように、図7の場合と異なり、線状アクティブセル領域40aの長手方向のほぼ全長に亘って、N+型エミッタ領域12が設けられているのではなく、アクティブセクション40aaに対応する部分にのみN+型エミッタ領域12が設けられているところに有る。
21.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前記各実施の形態では、ゲートポリシリコン部材として、ドープトポリシリコン(Doped Poly−silicon)等を用いた例を具体的に説明したが、本願発明はそれに限定されるものではなく、ノンドープポリシリコン(Nondoped Poly−silicon)膜を適用して、成膜後にイオン注入等により、必要な不純物を添加するようにしてもよい。
更に、前記実施の形態では、非エピタキシャルウエハを使用して、バックグラインディング後に、裏面から高濃度不純物層を形成する例を説明したが、本願の発明はそれに限定されるものではなく、エピタキシャルウエハを使用して製造するものにも適用できることは言うまでもない。
前記実施の形態では、主にパンチスルー型のIGBTを例に取り具体的に説明したが、本願の各実施の形態の各特長部分は、セクション13の構造を含め、ノンにパンチスルー型のIGBTにも適用できることは言うまでもない。
また、前記実施の形態では、主に単体のIGBTを例に取り具体的に説明したが、本願の各実施の形態はそれに限定されるものではなく、集積回路の一部としてチップ内に集積されたものにも適用できることは言うまでもない。