上記特許文献1に記載の表面処理装置においては、一対の電極間からガラス基板の表面に供給された処理ガスが当該表面に沿って移動することで、表面処理装置の周囲に拡散する。この際に使用する処理ガスが、上記特許文献1に記載のように、窒素ガスや酸素ガスなどの反応性の低い(実質的に不活性な)ガスである場合には、周囲に拡散しても特に問題はない。しかしながら、上述のように処理ガスによる表面処理によりガラス基板の裏面を粗面化しようとする場合には、ガラスとの反応性の高い(例えば極性の高い)成分を含むガスが必要と考えられる。よって、ガラス基板の粗面化のために、上記特許文献1に記載の構造をなす表面処理装置を使用することは適切でない。
一方、上記特許文献2に記載の表面処理装置においては、電極間の処理空間の搬送上流側にガス供給ノズルを設けると共に、処理空間の搬送下流側にガス排気ノズルを設けており、ガス供給ノズルから処理空間に供給された処理ガスがガス排気ノズルに吸引可能な構造となっているため、反応性の高い成分を含むガスを用いた場合であっても、処理ガスの周囲への拡散を防止しつつ板状ガラスに表面処理を施すことが可能なように思われる。
しかしながら、上記特許文献2に記載の表面処理装置は、一対の電極間に処理ガスの処理空間を形成し、この処理空間内に板状ガラスを導入可能とするものであるから、処理空間内では必然的に非処理面となる板状ガラスの裏面とこの裏面に対向する電極との間に形成される空間に処理ガスが回り込み、裏面が処理ガスに曝される。これでは、表面処理を施すべきでない非処理面にまで表面処理を施す結果となり、当該表面の表面性状や表面精度の悪化、あるいは表面品質の均一性を損なう結果を招くおそれが生じる。
上記特許文献3に記載の表面処理装置によれば、ガラス基板の裏面を基板保持台に保持した状態で、その表面に表面処理(プラズマ処理)が施されるので、例えば非処理面(裏面)を保持台に密着保持させることにより非処理面が処理ガスに曝される事態を防止することができる。しかしながら、この処理装置は、真空容器内の基板保持台にガラス基板をセット(保持)し、周囲を密閉した状態で表面処理を行うものであるから、これを用いた表面処理はバッチ処理となる。これでは、搬送中のガラス基板を連続的に処理することができず、生産性の低下を招く。
以上の事情に鑑み、板状ガラスの表裏一方の面への処理ガスによる表面処理を、表裏他方の面への処理ガスによる表面処理を実質的に防止しつつ連続的に実施することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
前記課題の解決は、本発明の第1の側面に係る板状ガラスの表面処理装置により達成される。すなわち、この表面処理装置は、板状ガラスが通過可能な隙間を形成する一対の隙間形成面と、板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施すための処理ガスを隙間に供給する処理ガス供給部と、隙間に供給された処理ガスを排気する処理ガス排気部とを備えた板状ガラスの表面処理装置において、処理ガス供給部と処理ガス排気部は共に一方の隙間形成面の側に配設されると共に、他方の隙間形成面の側に、隙間の排気を行うことで、隙間に導入された板状ガラスと他方の隙間形成面との間に形成される空間に外気を引込み可能とする外気引込み手段が設けられている点をもって特徴付けられる。なお、本発明の第1の側面に係る板状ガラスの表面処理装置は、本発明の参考例としての発明である。
このように、本発明では、隙間を形成する一方の隙間形成面の側に、処理ガス供給部と処理ガス排気部を配設すると共に、他方の隙間形成面の側に、隙間の排気により、隙間に導入した板状ガラスと他方の隙間形成面との間に形成される空間に外気を引込み可能な外気引込み手段を設けた。これにより、板状ガラスが隙間を通過し始めて、当該隙間が板状ガラスでその表裏方向に分割された状態では、表裏一方の面の側の空間と他方の面の側の空間とで異なる気体の流れが形成される。すなわち、一方の隙間形成面と板状ガラスの表裏一方の面との間に形成される空間(第1の分割空間)においては、処理ガス供給部から隙間に向けて供給された処理ガスが第1の分割空間を流通し、処理ガス排気部で排出される。よって、第1の分割空間に面する板状ガラスの表裏一方の面に処理ガスによる表面処理が施される。これに対して、他方の隙間形成面と板状ガラスの表裏他方の面との間に形成される空間(第2の分割空間)においては、導入された板状ガラスが仕切りとして機能することで、処理ガス供給部により隙間に供給された処理ガスの第2の分割空間への侵入が防止される。また、仮に板状ガラスを導入した時点で第2の分割空間に処理ガスが存在していたとしても、当該処理ガスは、他方の隙間形成面の側に設けた外気引込み手段の排気作用により隙間外へ排出される。または、隙間のうち板状ガラスの未導入の領域から第2の分割空間へ流れ込もうとする処理ガスが存在したとしても、当該処理ガスは、外気の引込み作用により当該分割空間の外へ押戻され、あるいは外気と共に隙間外に排出される。以上の作用により、処理面となる板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施しつつも、非処理面とすべき表裏他方の面が、実質的な表面処理となる程度に処理ガスに曝される事態を回避することができる。従って、表裏一方の面を適度に粗面化することで帯電を抑制または防止することができる。また、表裏他方の面においては、表面処理直前(例えば成形時)の面粗さを維持することで高い表面精度及び所要の表面性状を確保することができる。
また、処理ガス供給部と処理ガス排気部を何れも一方の隙間形成面の側に配設しているので、上述のように板状ガラスが隙間を通過する間においても、処理ガスを隙間内でのみ流通させることができ、これにより隙間外への処理ガスの拡散を防止することができる。よって、搬送中の板状ガラスに対して連続的に上記表面処理を施しつつも、この表面処理工程での清浄性、ひいては安全性を確保することができる。
また、前記課題の解決は、本発明の第2の側面に係る板状ガラスの表面処理装置によっても達成される。すなわち、この表面処理装置は、板状ガラスが通過可能な隙間を形成する一対の隙間形成面と、板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施すための処理ガスを隙間に供給する処理ガス供給部と、隙間に供給された処理ガスを排気する処理ガス排気部とを備えた板状ガラスの表面処理装置において、処理ガス供給部と処理ガス排気部は共に一方の隙間形成面の側に配設されると共に、一方の隙間形成面に、処理ガス供給部の給気口が開口し、他方の隙間形成面に、不活性ガス又は空気である非処理ガスを隙間に向けて供給する非処理ガス供給部の供給口が開口している点をもって特徴付けられる(請求項1)。
このように、本発明では、隙間を形成する一方の隙間形成面の側に、処理ガス供給部と処理ガス排気部を配設すると共に、一方の隙間形成面に、処理ガス供給部の給気口を開口させ、他方の隙間形成面に、非処理ガスを隙間に向けて供給する非処理ガス供給部の供給口を開口させた構成とした。一方の隙間形成面から隙間に向けて処理ガスを供給すると共に、他方の隙間形成面から隙間に向けて非処理ガスを供給することで、隙間には、処理ガスのガス溜り(処理ガスが非処理ガスに比べて高濃度に存在するガス領域を含む。)と、非処理ガスのガス溜り(非処理ガスが処理ガスに比べて高濃度に存在するガス領域を含む。)とが共存した状態となる。また、処理ガスと非処理ガスは互いに対向する側の隙間形成面に向けて供給されることになるため、処理ガスのガス溜りは隙間のうち一方の隙間形成面の側に、非処理ガスのガス溜りは他方の隙間形成面の側にそれぞれ偏った状態で形成され易い。ここで、板状ガラスが隙間を通過し始めて、当該隙間が板状ガラスでその表裏方向に分割されることで、表裏一方の面の側の空間(第1の分割空間)には主に処理ガスのガス溜りが存在し、表裏他方の面の側の空間(第2の分割空間)には主に非処理ガスのガス溜りが存在した状態となる。また、第1の分割空間には処理ガス供給部の給気口が開口し、第2の分割空間には非処理ガス供給部の供給口が開口した状態となるので、各分割空間に主に存在するガスの割合がさらに高められる。従って、第1の分割空間に面する板状ガラスの表裏一方の面は主に処理ガスに曝される一方、第2の分割空間に面する板状ガラスの表裏他方の面は主に非処理ガスに曝されることになる。以上の作用により、処理面となる板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施しつつも、非処理面となる表裏他方の面が、実質的な表面処理となる程度に処理ガスに曝される事態を回避することができる。従って、表裏一方の面を適度に粗面化することで帯電を抑制または防止することができる。また、表裏他方の面においては、表面処理直前の面粗さを維持することで高い表面精度及び所要の表面性状を確保することができる。
また、本発明の第1及び第2の側面に係る表面処理装置は、処理ガス供給部が、一方の隙間形成面のうち板状ガラスの通過方向中央に給気口を有するものであってもよい(請求項2)。
上記構成によれば、処理ガスは給気口と対向する他方の隙間形成面の上記方向中央に向けて供給され、板状ガラスが隙間に導入された状態においては、板状ガラスの表裏一方の面の上記方向中央に向けて供給される。これにより、供給された処理ガスは、他方の隙間形成面に沿って又は板状ガラスの表裏一方の面に沿って隙間の両端開口部に向けて分岐するように広がる。よって、処理すべき表裏一方の面に対して偏りなく処理ガスを被曝させることができ、均質な表面処理が可能となる。
また、本発明の第1及び第2の側面に係る表面処理装置は、処理ガス排気部が、一方の隙間形成面のうち板状ガラスの通過方向両端に排気口を有するものであってもよい(請求項3)。
上記構成によれば、隙間に供給された処理ガスを隙間の通過方向両端で排気できるので、例えばこれら排気口の間に処理ガス供給部の供給口を設けることで、処理ガスの隙間外への拡散を確実に防止しつつも、隙間に導入された板状ガラスの処理面をその全域にわたって漏れなく表面処理を施すことができる。特に、処理ガス供給部の供給口を一方の隙間形成面の板状ガラスの通過方向中央に配置するのと併せて、処理ガス排気部の排気口を上述の位置に配することで、処理ガスの隙間内での流通量を極力均等にすることができ、これによりさらに均質な表面処理を図ることが可能となる。
また、本発明の第1の側面に係る表面処理装置は、外気引込み手段が、他方の隙間形成面のうち板状ガラスの通過方向中央に排気口を有するものであってもよい。
一方の隙間形成面の側で処理ガスを適正に流通させることを考えた場合、外気引込み手段による排気力(排気流量、排気圧など)の調整が肝要となる。処理ガス供給部による処理ガスの供給力や処理ガス排気部による排気力に比べて、外気引込み手段の排気力(引込み力)が大き過ぎても、あるいは小さ過ぎても、隙間内における処理ガスの好適な流れを得ることが難しくなるためである。ここで、外気引込み手段の排気口を、他方の隙間形成面の板状ガラスの通過方向中央に設けることで、隙間の両端開口までの距離が等しくなる。これにより、外気の引込みに要する力(排気力)を極端に大きくしなくとも効率良く排気及び外気の引込みを行うことができる。よって、板状ガラスの通過途中や通過完了直前(すなわち、隙間のうち板状ガラスにより分割されていない領域が相当程度存在している期間)においても、隙間における処理ガスの流通状態を所望の状態に維持して、安定かつ均質な表面処理を施すことが可能となる。
また、本発明の第2の側面に係る表面処理装置は、非処理ガスの供給口が、板状ガラスの通過方向に直交する向きに伸びているものであってもよい(請求項4)。あるいは、他方の隙間形成面が、非処理ガスを流通可能な多数の空孔を有する多孔質体で構成され、他方の隙間形成面に露出した空孔で非処理ガスの供給口が構成されているものであってもよい(請求項5)。
このように、非処理ガス供給部の供給口を構成することで、通過方向に直交する方向においても均質な非処理ガスのガス溜りを形成することができる。よって、必要以上に非処理ガスを供給しなくとも効率的に非処理面となる板状ガラスの表裏他方の面を非処理ガスで保護することができる。また、他方の隙間形成面を、非処理ガスの流通可能な多数の空孔を有する多孔質体で構成し、かつ他方の隙間形成面に露出する空孔で非処理ガス供給部の供給口を構成することで、上記供給口をスリットや機械加工穴で構成する場合と比べて、隙間内での気体(処理ガス又は非処理ガス)の流れに与える影響を小さくすることができつつ、均等に非処理ガスを供給できる。従って、板状ガラスの表裏両面側ともに安定したガスの流れを実現することができる。
また、前記課題の解決は、本発明の第1の側面に係る板状ガラスの表面処理方法によっても達成される。すなわち、この表面処理方法は、一対の隙間形成面の間に形成され板状ガラスが通過可能な隙間に処理ガスを供給し、処理ガスを隙間から排気することで、隙間を通過する板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施す板状ガラスの表面処理方法において、処理ガスを、一方の隙間形成面の側から隙間に向けて供給しつつ一方の隙間形成面の側で排気し、他方の隙間形成面の側で隙間の排気を行うことで、隙間への板状ガラスの導入に伴い板状ガラスと他方の隙間形成面との間に形成される空間に外気を引込む点をもって特徴付けられる。なお、本発明の第1の側面に係る板状ガラスの表面処理方法は、本発明の参考例としての発明である。
この表面処理方法によれば、上述した本発明の第1の側面に係る表面処理装置と同様に、板状ガラスが隙間を通過し始めて、当該隙間が板状ガラスでその表裏方向に分割された状態では、他方の隙間形成面と板状ガラスの表裏他方の面との間に形成される空間(第2の分割空間)に存在していた処理ガスは、他方の隙間形成面の側で隙間の排気を行うことにより隙間外へ排出される。また、隙間のうち板状ガラスの未導入の領域から第2の分割空間へ流れ込もうとする処理ガスは、当該分割空間へ外気を引込むことにより当該分割空間の外へ押戻され、あるいは外気と共に隙間外に排出される。以上の作用により、処理面となる板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施しつつも、非処理面とすべき表裏他方の面が、実質的な表面処理となる程度に処理ガスに曝される事態を回避することができる。従って、表裏一方の面を適度に粗面化することで帯電を抑制または防止することができる。また、表裏他方の面においては、表面処理直前(例えば成形時)の面粗さを維持することで高い表面精度及び所要の表面性状を確保することができる。
また、前記課題の解決は、本発明の第2の側面に係る板状ガラスの表面処理方法によっても達成される。すなわち、この表面処理方法は、一対の隙間形成面の間に形成され板状ガラスが通過可能な隙間に処理ガスを供給し、処理ガスを隙間から排気することで、隙間を通過する板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施す板状ガラスの表面処理方法において、処理ガスを、一方の隙間形成面の側から隙間に向けて供給しつつ一方の隙間形成面の側で排気すると共に、一方の隙間形成面に開口した処理ガスの給気口から隙間に処理ガスを供給し、かつ他方の隙間形成面に開口した供給口から隙間に不活性ガス又は空気である非処理ガスを供給した状態で、隙間に板状ガラスを導入する点をもって特徴付けられる(請求項6)。
この表面処理方法によれば、上述した本発明の第2の側面に係る表面処理装置と同様に、板状ガラスが隙間への導入を開始する時点で、一方の隙間形成面の側には主に処理ガスのガス溜りが形成され、表裏他方の面の側の空間(第2の分割空間)には主に非処理ガスのガス溜りが形成された状態となる。よって、板状ガラスの導入により隙間が分割された状態では、第1の分割空間の側に主に処理ガスのガス溜りが存在し、第2の分割空間の側に主に非処理ガスのガス溜りが存在した状態となる。また、これら分割空間に対応するガスが供給されることで、各分割空間に主成分として存在するガスの濃度がさらに高められる。従って、第1の分割空間に面する板状ガラスの表裏一方の面は主に処理ガスに曝され、第2の分割空間に面する板状ガラスの表裏他方の面は主に非処理ガスに曝される。以上の作用により、処理面となる板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施しつつも、非処理面となる表裏他方の面が、実質的な表面処理となる程度に処理ガスに曝される事態を回避することができる。従って、表裏一方の面を適度に粗面化することで帯電を抑制または防止することができる。また、表裏他方の面においては、表面処理直前の面粗さを維持することで高い表面精度及び所要の表面性状を確保することができる。
また、前記課題の解決は、本発明の第3の側面に係る板状ガラスの表面処理装置によっても達成される。すなわち、この表面処理装置は、板状ガラスが通過可能な隙間を形成する一対の隙間形成面と、板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施すための処理ガスを隙間に供給する処理ガス供給部と、隙間に供給された処理ガスを排気する処理ガス排気部とを備えた板状ガラスの表面処理装置において、処理ガス供給部と処理ガス排気部は共に一方の隙間形成面の側に設けられると共に、他方の隙間形成面は、板状ガラスの表裏他方の面と当接しかつ板状ガラスと同期してその通過方向に移動する同期移動面で形成されている点をもって特徴付けられる。なお、本発明の第3の側面に係る板状ガラスの表面処理装置は、本発明の参考例としての発明である。
このように、本発明では、第1及び第2の側面に係る表面処理装置と同様、処理ガス供給部及び処理ガス排気部を共に一方の隙間形成面の側に設けると共に、他方の隙間形成面を、板状ガラスの表裏他方の面と当接しかつ板状ガラスと同期してその通過方向に移動する同期移動面で形成した。これにより、板状ガラスは、他方の隙間形成面を形成する同期移動面と当接した状態を保って隙間に導入されるので、隙間に導入した状態の板状ガラスの非処理面(表裏他方の面)に処理ガスが入り込む余地(隙間)は生じない。よって、処理面となる板状ガラスの表裏一方の面に表面処理を施しつつも、非処理面となる表裏他方の面が、実質的な表面処理となる程度に処理ガスに曝される事態を確実に防止することができる。また、板状ガラスとの接触面(同期移動面)を板状ガラスと同期して移動可能としたので、板状ガラスの表裏他方の面と同期移動面とが摺動するおそれもない。従って、非処理面となる表裏他方の面の表面精度及び表面性状を確保することができる。
また、本発明の第3の側面に係る表面処理装置は、同期移動面が、板状ガラスを搬送可能とするベルトコンベアの搬送面で構成されている点をもって特徴付けられる。
上記構成によれば、板状ガラスの搬送手段と、同期移動面を有する機構とを共通化することができるので、搬送手段に設けた搬送面から同期移動面への乗り移りを省略することができる。また、搬送手段と同期移動面を有する機構とを1つにすることができるので、全体の構成をコンパクトにすることができる。また、駆動機構も1つに集約することができるので、この点においても全体の構成をコンパクトにすることができる。また、コンパクトにした分のコストダウンを図ることもできる。
以上に述べたように、本発明によれば、板状ガラスの表裏一方の面への処理ガスによる表面処理を、表裏他方の面への処理ガスによる表面処理を実質的に防止しつつ連続的に実施することが可能となる。
以下、本発明の第1の側面に係る表面処理装置及び表面処理方法の一実施形態を図1〜図3を参照して説明する。なお、本実施形態では、板状ガラスとして、成形した帯状板ガラスから所定の寸法に切り出したガラス基板の裏面に表面処理を施す場合を例にとって説明する。
図1は、本発明の第1の側面に係る板状ガラスの表面処理装置10の一実施形態を示している。この表面処理装置10は、ガラス基板Pを搬送するための搬送手段11と、ガラス基板Pがその搬送方向に沿って通過可能な隙間12と、この隙間12を形成する一対の隙間形成面13,14と、これら隙間形成面13,14をそれぞれ有する一対の隙間形成部材15,16と、ガラス基板Pの裏面Pbに表面処理を施すための処理ガスGa(後述する図3を参照)を隙間12に供給する処理ガス供給部17と、隙間12に供給された処理ガスGaを排気する処理ガス排気部18と、外気引込み手段19とを備える。本実施形態では、一方の隙間形成部材15及び他方の隙間形成部材16がともに、ガラス基板Pの搬送方向に沿って複数箇所に対向して配設されており、かつ、各隙間形成部材15,16の間には、搬送手段11が配設されている。
搬送手段11は、例えば図2に示すように複数のローラ20を有するローラコンベアで、各ローラ20の外周面でガラス基板Pの裏面Pbが支持されている。そして、各ローラ20を回転駆動することで、各ローラ20の上方に載置(支持)されたガラス基板Pが所定の方向(図1や図2では左側)に搬送される。
隙間12を形成する一対の隙間形成面13,14は何れもガラス基板Pの表面Pa及び裏面Pbに平行となるように配設されている(図1)。本実施形態では、一方の隙間形成面13はガラス基板Pの下方に位置し、他方の隙間形成面14はガラス基板Pの上方に位置する。また、隙間12を通過する際のガラス基板Pの裏面Pbと一方の隙間形成面13との対向間隔が、ガラス基板Pの表面Paと他方の隙間形成面14との対向間隔よりも小さくなるよう、各々の隙間形成面13,14の隙間幅方向位置(図1でいえば上下方向位置)が設定されている。
処理ガス供給部17と処理ガス排気部18は、本実施形態では、図1に示すように、一方の隙間形成面13を有する一方の隙間形成部材15の内部に配設されている。また、処理ガス供給部17の給気口17aは一方の隙間形成面13のうちガラス基板Pの搬送方向中央に開口して形成されると共に、処理ガス排気部18の排気口18aは一方の隙間形成面13のうちガラス基板Pの搬送方向両端の近傍に開口して形成される。双方の排気口18aは給気口17aと等距離だけ搬送方向に離れた位置に配設されている。ここで、図2に示すように、処理ガス供給部17の給気口17aはスリット形状をなし、ガラス基板Pが隙間12を通過した際、ガラス基板Pの幅方向(ガラス基板Pの搬送方向に直交する向きをいう。以下、同じ。)両端付近に達する位置まで伸びている。また、処理ガス排気部18の2つの排気口18aは何れもスリット形状をなし、給気口17aと同様、ガラス基板Pの幅方向両端付近に達する位置まで伸びている。この図示例では、給気口17aよりも一方の隙間形成面13の幅方向両端に近い位置まで伸びており、かつ、隙間12に導入された状態でガラス基板Pの幅方向両端を超える位置まで伸びている。
また、処理ガス供給部17から隙間12に供給可能な処理ガスとしては、酸性、アルカリ性の別なく適当な種類のガスを使用でき、例えばより短時間でのガラス基板P表面(ここでは裏面Pb)の粗面化を図る場合には、HF(フッ化水素)など、ガラスに対する反応性に優れた酸性物質を含むガスを使用することが可能である。
外気引込み手段19は例えば排気ポンプで構成され、他方の隙間形成部材16の内部に配設されると共に、その排気口19aを他方の隙間形成面14のうちガラス基板Pの搬送方向中央に開口形成してなる。このように構成することで、隙間12内部の排気、及び後述する外気の取込みを可能としている。本実施形態では、外気引込み手段19の排気口19aはスリット形状をなし、図示は省略するが、隙間12内に導入されたガラス基板Pの幅方向両端付近に達する位置まで伸びている。また、外気引込み手段19による排気力(例えば排気流量)は、処理ガス供給部17の給気力(例えば給気流量)、処理ガス排気部18の排気力、隙間12にガラス基板Pを導入した際に隙間12を分割することでガラス基板Pの表裏方向にそれぞれ形成される第1及び第2の分割空間21,22の隙間幅寸法(第1の分割空間21でいえば、一方の隙間形成面13とガラス基板Pの裏面Pbとの対向間隔)などを考慮して設定される。すなわち、外気引込み手段19の排気力によっては上方の分割空間(第2の分割空間22)が負圧状態となることも考えられる。隙間12を通過する領域においてガラス基板Pは双方の隙間形成面13,14と原則非接触の状態にあるため、負圧発生により容易に排気口19aの側(他方の隙間形成面14の側)に引き付けられ、そり等の変形を生じるおそれがある。以上より、ガラス基板Pに不要な変形を与えることなく、かつ外気を適当に取り込み可能な程度に外気引込み手段19の排気力、処理ガス供給部17の給気力、処理ガス排気部18の排気力、及び各分割空間21,22の隙間幅方向寸法を適切に設定することが肝要となる。本実施形態では、外気引込み手段19の排気流量は、例えば処理ガス供給部17の給気流量及び処理ガス排気部18の排気流量と同等もしくはそれ以下となるように調整される。
ここで、表面処理の対象となるガラス基板Pには、例えばオーバーフローダウンドロー法に代表されるダウンドロー法や、フロート法などの公知の手段により帯状に成形することができ、帯状に成形した板状ガラス(帯状板ガラス)を所定の長手方向寸法に切断した後、必要に応じて二辺もしくは四辺の研磨加工を施したものが用いられる。
以下、上記構成の表面処理装置10を用いたガラス基板Pの表面処理の流れを図3に基づき説明する。
まず、図3(a)に示すように、ガラス基板Pが隙間12の外にある(すなわち隙間12よりも搬送方向後方側に位置する)状態において、処理ガス供給部17により給気口17aから隙間12に処理ガスGaを供給する。また、処理ガス排気部18により排気口18aから隙間12に供給された処理ガスGaの排気を行う。これにより、隙間12内が処理ガスGaで満たされると共に、隙間12外への処理ガスGaの漏れ出しが防止される。もちろん、この時点(ガラス基板Pの導入前の段階)で外気引込み手段19による排気を開始しても構わない。
そして、この状態から、図3(b)に示すように、ガラス基板Pを隙間12の一端側(図3でいえば右側)から導入する。これにより、隙間12がガラス基板Pの導入領域においてその表裏方向に分割される。このうち、ガラス基板Pの裏面Pbとこの裏面Pbに対向する一方の隙間形成面13との間に形成される第1の分割空間21には引き続き処理ガスGaが充満している。そのため、ガラス基板Pの裏面Pbが隙間12内への導入に伴って順次処理ガスGaに曝され、処理ガスGaによる裏面Pbの表面処理が施される。
一方、ガラス基板Pの隙間12内への導入を開始するのに伴って、外気引込み手段19により隙間12内の排気を行うことで、ガラス基板Pの表面Paとこの表面Paに対向する他方の隙間形成面14との間に形成される第2の分割空間22に外気Gbを引込む(図3(b))。このように、隙間12内の排気を行うことで、その時点で既に第2の分割空間22に充満していた処理ガスGaが排気口19aを通じて排気されると共に、処理ガスGaを排気した空間(第2の分割空間22)が外気Gbで満たされる(図3(b))。これにより、ガラス基板Pの表面Paと接触する気体は、処理ガスGaを全く含まないか、含んだとしても非常に処理ガスGaの濃度の低いもの(相対的に外気Gbの濃度が高いもの)となる。よって、隙間12に導入された領域においては、裏面Pbのみに処理ガスGaによる表面処理が施される一方、表面Paへの処理ガスGaによる表面処理は実質的に回避される。
このようにして隙間12内(正確には第2の分割空間22内)への外気Gbの引込みを伴ってガラス基板Pを隙間12内に導入していき、ガラス基板Pの導入前方側端部が隙間12を通過した時点においては、図3(c)に示すように、隙間12全域がガラス基板Pを介して第1の分割空間21と第2の分割空間22とに分割される。また、この際、第1の分割空間21は処理ガスGaで満たされると共に、第2の分割空間22は両端開口側から引き込まれた外気Gbで満たされる。これにより、裏面Pbに対する処理ガスGaによる表面処理が継続される一方、外気Gbによる表面Paの保護状態が維持あるいは強化される。
このようにして、各対の隙間形成面13,14間(すなわち各隙間12)にガラス基板Pが導入されていき、最も導入方向前方側に位置する隙間12(図1でいえば最も左側の隙間12)をガラス基板Pが通過し終えることで、裏面Pbへの処理ガスGaによる表面処理が完了する。そして、この処理により裏面Pbの粗面化が図られる一方、表面Paの表面性状及び表面精度は処理前後で維持される。一例として、上記粗面化を表面粗さRaの変化で説明すると、上記表面処理の前後で、裏面Pbの表面粗さRa[nm]が0.1nm以上でかつ1.8nm以下の範囲で向上(ここでは粗面化)するように、より好ましくは0.1nm以上でかつ0.8nm以下の範囲で向上するように、処理ガスGaによる裏面Pbへの表面処理条件が設定されるのがよい。上記範囲で、裏面Pbの表面粗さRaが向上することで、表面処理以後の製造工程において、ガラス基板Pが実質的に問題となるレベルの帯電を生じる事態を回避することが可能となる。ここで、裏面Pbに対する表面処理条件は、上述した処理ガスGaの濃度や、処理ガス排気部18と外気引込み手段19との排気力(排気流量、排気圧)のバランスを調整する他、処理ガスGaの供給時温度や雰囲気温度(隙間12内の温度)、あるいはガラス基板Pの搬送速度を調整することによって適宜設定される。なお、ここでいう表面粗さRa[nm]は、JIS R 1683:2007を準用する方法で測定することで得られた値をいう。
このように、本発明の第1の側面に係る表面処理装置においては、隙間12を形成する一方の隙間形成面13の側に、処理ガス供給部17と処理ガス排気部18を配設すると共に、他方の隙間形成面14の側に、隙間12の排気により、隙間12に導入したガラス基板Pと他方の隙間形成面14との間に形成される空間(第2の分割空間22)に外気Gbを引込み可能な外気引込み手段19を設けた。このように構成した表面処理装置を用いることにより、ガラス基板Pが隙間12を通過し始めて、隙間12の過半がガラス基板Pでその表裏方向に分割された状態では、表面Paの側の空間と裏面Pbの側の空間とで異なる気体の流れが形成される。具体的に言うと、一方の隙間形成面13と板状ガラスの裏面Pbとの間に形成される第1の分割空間21においては、処理ガス供給部17から隙間12に向けて供給された処理ガスGaが第1の分割空間21を流通し、処理ガス排気部18で排出される気体の流れが形成される。これに対して、他方の隙間形成面14とガラス基板Pの表面Paとの間に形成される第2の分割空間22においては、ガラス基板Pが仕切りとなって第1の分割空間21から第2の分割空間22への処理ガスGaの侵入が阻止される。以上の作用により、処理面となるガラス基板Pの裏面Pbに表面処理を施しつつも、当該表面処理の開始時から終了時までの間、非処理面とすべき表面Paが、実質的な表面処理となる程度に処理ガスGaに曝される事態を回避することができる。従って、裏面Pbを適度に粗面化することで帯電を抑制または防止することができる。また、表面Paにおいては、表面処理直前(例えば成形時)の面粗さを維持することで高い表面精度及び所要の表面性状を確保することができる。
また、上記構成によれば、本実施形態のように、ガラス基板Pの通過に伴い隙間12に形成された第2の分割空間22に処理ガスGaが残っているような場合であっても、他方の隙間形成面14の側で隙間12の排気を行うことにより、上記処理ガスGaは隙間12外に排出することができる。また、隙間12のうちガラス基板Pの未導入の領域から第2の分割空間22へ流れ込もうとする処理ガスGaが存在していたとしても、外気引込み手段19により外気Gaを第2の分割空間22に引込むことにより当該分割空間22の外に押戻すことができ、あるいは外気Gaと共に隙間12外に排出することができる。以上の作用は、表面Paの処理ガスGaによる実質的な被曝の防止又は抑制に寄与し得る。
また、本実施形態では、一対の隙間形成部材15,16をガラス基板Pの搬送方向(すなわち隙間12の通過方向)の複数箇所にわたって配設するようにしたので、隙間12(一対の隙間形成面13,14)の搬送方向寸法を小さくすることで、各隙間12をガラス基板Pが通過する前後における処理ガスGaの濃度(割合)のばらつきを小さく抑えることができる。従って、裏面Pbに対する表面処理をより安定的に実施することが可能となり、裏面Pbを漏れなく均等に粗面化することが可能となる。
以上、本発明の第1の側面に係る表面処理装置及び表面処理方法の一実施形態を説明したが、本側面に係る表面処理装置又は表面処理方法は、当然に本側面の範囲内において任意の形態を採ることができる。
例えば、上記実施形態では、外気引込み手段19による排気力(例えば排気流量)を、処理ガス供給部17の供給流量と同等またはそれ以下とした場合に起こり得る隙間12内の各種ガスの流れについて説明したが、もちろん、上記排気流量を上記供給流量より大きく設定することも可能である。以下、その場合の隙間12内における各種ガスの流れを主に図4に基づき説明する。なお、図4では、外気Gbについて、その流れが比較的大きい領域のみを散点模様で表示している。
図4は、本発明の第1の側面に係る板状ガラスの表面処理装置10の他の実施形態を示している。この表面処理装置10は、図1に示す表面処理装置10と同様に、搬送手段11と、隙間12と、一対の隙間形成面13,14と、一対の隙間形成部材15,16と、処理ガスGaを供給する処理ガス供給部17と、処理ガスGaを排気する処理ガス排気部18と、外気引込み手段19とを備える。ここで、外気引込み手段19は、処理ガス供給部17から供給される処理ガスGaを全て排気することが可能なように、その排気流量を調整している。具体的には、外気引込み手段19の排気流量が、処理ガス供給部17の給気流量同等もしくはそれ以上となるように調整されている。
以下、他の実施形態に係る上記構成の表面処理装置10を用いたガラス基板Pの表面処理の流れを図4に基づき説明する。
まず、図4(a)に示すように、ガラス基板Pが隙間12よりも搬送方向後方側に位置する状態において、処理ガス供給部17により給気口17aから隙間12に処理ガスGaを供給すると共に、処理ガス排気部18により排気口18aから隙間12に供給された処理ガスGaの排気を行う。また、同時に、外気取込み手段19により排気口19aから隙間12に供給された処理ガスGaを隙間12外に排出する。ここで、外気引込み手段19は、処理ガス供給部17から供給される処理ガスGaを全て排気することが可能なように、その排気流量を調整しているので、処理ガス供給部17により隙間12に供給された処理ガスGaの全てが、外気取込み手段19により排出される。従って、この時点では、隙間12内に、処理ガス供給部17の給気口17aから外気取込み手段19の排気口19aへ向かう処理ガスGaの流れのみが形成される。当該流れが形成されない隙間12内の他の領域には、実質的に外気Gbのみが存在しており、当該領域には処理ガスGa溜りは生じない。なお、本実施形態のように、全ての処理ガスGaが実質的に外気取込み手段19により排気される場合、後述する図4(c)の段階に至るまでの間、処理ガス排気部18を駆動させないでおくことも可能である。
そして、この状態から、ガラス基板Pの隙間12への導入を開始する。導入開始後、ガラス基板Pの導入前方側端部が未だ処理ガス供給部17の給気口17aの上方(本実施形態では、処理ガス供給部17の給気口17aと、これに隙間12を介して対向する外気取込み手段19の排気口19aとの間)に到達していない状態では、引き続き、処理ガス供給部17の給気口17aから外気取込み手段19の排気口19aへ向かう処理ガスGaの流れのみが隙間12内に形成される。当該流れが形成されない隙間12内の他の領域には、実質的に外気Gbのみが存在しており、当該領域には処理ガスGa溜りは生じない。従って、図4(b)に示すように、ある程度ガラス基板Pの導入が進んだ段階においても、ガラス基板Pの表面Paが処理ガスGaに曝されることはない。
そして、ガラス基板Pの導入前方側端部が給気口17aの上方(給気口17aと排気口19aとの間)を通過すると、隙間12がガラス基板Pの導入領域においてその表裏方向に分割されることによる気体の流れの変化が生じる。すなわち、処理ガス供給部17により供給される処理ガスGaの流れは、給気口17aの上方を通過中のガラス基板Pによって遮られるので、ガラス基板Pの導入に伴いその裏面Pbと一方の隙間形成面13との間に形成される第1の分割空間21には、処理ガスGaの隙間長手方向(図4(c)中左右方向)に向かう流れが生じると共に、当該処理ガスGaは、第1の分割空間21に開口した処理ガス排気部18の排気口18aを介して隙間12外に排出される。そのため、ガラス基板Pの裏面Pbが隙間12内への導入に伴って順次処理ガスGaに曝され、処理ガスGaによる裏面Pbの表面処理が施される。
一方、ガラス基板Pの導入に伴いその表面Paと他方の隙間形成面14との間に形成される第2の分割空間22には、ガラス基板Pが妨げとなって、処理ガス供給部17により隙間12内に供給された処理ガスGaが流入する事態が可及的に回避される。また、同時に、外気取込み手段19により、第2の分割空間22の一端部となる隙間12のガラス基板導入後方側端部(図4(c)中右側の端部)から外気Gbが引き込まれることで、第2の分割空間22が外気Gbで満たされる。これにより、ガラス基板Pの表面Paは、依然として、処理ガスGaを実質的に含まない気体、すなわち外気Gbと接触した状態となる。よって、隙間12に導入された領域においては、裏面Pbのみに処理ガスGaによる表面処理が施される一方、表面Paへの処理ガスGaによる表面処理は実質的に回避される。
このようにして隙間12内(正確には第2の分割空間22内)への外気Gbの引込みを伴ってガラス基板Pを隙間12内に導入していくことで、図3(c)に示す状態と同様に、隙間12全域がガラス基板Pを介して第1の分割空間21と第2の分割空間22とに分割される。また、この際、第1の分割空間21は処理ガスGaで満たされると共に、第2の分割空間22は両端開口側から引き込まれた外気Gbで満たされる。これにより、裏面Pbに対する処理ガスGaによる表面処理が継続される一方、外気Gbによる表面Paの保護状態が維持あるいは強化される。
以上の流れに沿って、各対の隙間形成面13,14間(すなわち各隙間12)にガラス基板Pが導入されていき、最も導入方向前方側に位置する隙間12(図1でいえば最も左側の隙間12)をガラス基板Pが通過し終えることで、裏面Pbへの処理ガスGaによる表面処理が完了する。そして、この処理により裏面Pbの粗面化が図られる一方、表面Paの表面性状及び表面精度は処理前後で維持される。この際の上記粗面化の程度は、既述の通りである。
このように、本実施形態に係る表面処理装置10によれば、処理ガス供給部17から供給される処理ガスGaを全て排気することが可能なように、外気取込み手段19の排気流量を調整するようにしたので、ガラス基板Pの過半が隙間12に導入されるまでの段階においては、処理ガス供給部17より隙間12内に供給された処理ガスGaを実質的に全て外気取込み手段19により隙間12外に排出することができる。これにより、ガラス基板Pが隙間12に導入され始めた時点(図4(b))においても、ガラス基板Pの表面Paが処理ガスGaに曝される事態をより確実に回避することができる。これにより、ガラス基板Pの隙間12内への導入開始時(通過開始時)から通過終了時までの間、表面Paが処理ガスGaに曝される事態を確実に回避すると共に、裏面Pbに対しては処理ガスGaによる十分かつ所望の表面処理を施すことができる。従って、ガラス基板Pの表面Pa、裏面Pbともに所望の表面精度及び表面性状にすることが可能となる。
特に、本実施形態では、処理ガス供給部17の給気口17aと隙間12を介して対向する位置に、外気取込み手段19の排気口19aを設けるようにしたので、それほど大幅な排気力(排気流量)の増加を伴わずとも処理ガス供給部17から供給される全ての処理ガスGaを排気することが可能となる。
また、以上説明した2つの実施形態においては、外気引込み手段19の排気口19aは、隙間12のガラス基板P通過方向の中央位置に1つだけ配置する場合を例示したが、もちろんこの例に限らず、上記通過方向の複数箇所にわたって設けることも可能である。処理ガスGaならばその成分濃度の均質化を狙って1つだけにするのがよいが、表面処理を目的とせず外気Gbを流通させる領域(第2の分割空間22)においては、濃度の大小は問題とならないためである。また、排気口19aの形状についても同様の理由で特に制限されることはなく、例示したスリット形状の他、例えば図示は省略するが、排気口19aとしての複数の排気穴をガラス基板Pの幅方向に沿って配列したものが考えられる。
もちろん、外気引込み手段19は、他方の隙間形成面14の側に配設されていればよいので、例えば他方の隙間形成部材16の両側(通過方向、幅方向)に隣接する位置に外気引込み手段19を配して、その排気口19a(排気ノズルなど)を隙間12に向けて配置する構成などが採用可能である。
以下、本発明の第2の側面に係る板状ガラスの表面処理装置及び表面処理方法の一実施形態を図5及び図6を参照して説明する。
本実施形態に係る表面処理装置10は、主に外気引込み手段19に代えて、他方の隙間形成面14の側に、不活性ガスGcを隙間12に向けて供給する不活性ガス供給部23を設けた点において、本発明の第1の側面に係る表面処理装置(図1や図4に示す表面処理装置10)とその構成を異にする。以下、本発明の第1の側面に係る実施形態との相違点を中心に詳述し、同等の構成については本発明の第1の側面に係る実施形態の場合と同じ符号を付して説明を省略する。
不活性ガス供給部23は、例えば給気ポンプで構成され、他方の隙間形成部材16の内部に配設されると共に、その供給口23aを他方の隙間形成面14に開口形成してなる。本実施形態では、不活性ガス供給部23の供給口23aは、一方の隙間形成面13に開口した処理ガス供給部17の給気口17aと隙間12を挟んで対向する位置(この図示例では、いずれも他方の隙間形成面14のうちガラス基板Pの搬送方向中央)に開口形成されている。このように構成することで、隙間12内部に不活性ガスGcを供給可能としている。また、図示は省略するが、不活性ガス供給部23の供給口23aはスリット形状をなし、隙間12内に導入されたガラス基板Pの幅方向両端付近に達する位置まで伸びている。
ここで、不活性ガスとして使用できるガスの種類は特に制限されず、窒素やアルゴンなどの一般的な気体を使用することも可能である。また、不活性ガスに代え、外気(空気)のような混合気体を使用することも可能である。
また、不活性ガス供給部23による不活性ガスGcの給気流量と給気圧の少なくとも一方は、対向する側に給気口17aから供給される処理ガスGaの給気流量や給気圧とのバランスを考慮して設定されるのが望ましい。すなわち、後述する処理ガスGaのガス溜りと不活性ガスGcのガス溜りとがそれぞれ、ガラス基板Pの導入に伴い隙間12内に形成される各分割空間21,22の主成分を占めることになるよう(後述する図6の状態となるよう)、上記バランスを調整することが肝要となる。言い換えると、隙間12の一方の隙間形成面13の側に処理ガスGaのガス溜りが層状に形成され、かつ他方の隙間形成面14の側に不活性ガスGcのガス溜りが同じく層状に形成されるよう、処理ガスGaと不活性ガスGcの供給力をそれぞれ調整することが肝要となる。さらに言えば、図6に示すように、それぞれ層状に形成された処理ガスGaのガス溜りと不活性ガスGcのガス溜りとをガラス基板Pが区画するように、両ガスGa,Gcの供給力又はガラス基板Pの導入位置(鉛直方向位置)を設定するのがよい。
以下、上記構成の表面処理装置10を用いたガラス基板Pの表面処理方法について説明する。
まず、図6(a)に示すように、ガラス基板Pが隙間12よりも搬送方向後方側に位置する状態において、処理ガス供給部17により一方の隙間形成面13の側に設けた給気口17aから隙間12に処理ガスGaを供給する。また、不活性ガス供給部23により他方の隙間形成面14の側に設けた供給口23aから隙間12に向けて不活性ガスGcを供給する。これにより、隙間12のうち主に一方の隙間形成面13の側には、処理ガスGaのガス溜りが形成されると共に、他方の隙間形成面14の側には、不活性ガスGcのガス溜りが形成される。
そして、この状態から、図6(b)に示すように、ガラス基板Pを隙間12の一端側(図6(b)でいえば右側)から導入する。これにより、隙間12がガラス基板Pの導入領域においてその表裏方向に分割されると共に、隙間12内に分在する処理ガスGaのガス溜りと不活性ガスGcのガス溜りとが分割され、一方の隙間形成面13の側に処理ガスGaの豊富な第1の分割空間21が形成され、他方の隙間形成面14の側に不活性ガスGcの豊富な第2の分割空間22が形成される。そのため、ガラス基板Pの裏面Pbが隙間12内への導入に伴って順次処理ガスGaに曝され、処理ガスGaによる裏面Pbの表面処理が施される。特に、ガラス基板Pにより分割された領域のうち処理ガス供給部17の給気口17aが開口する側に位置する第1の分割空間21においては、分割が成された後も、継続して処理ガスGaが供給されるので、時間の経過と共に、同分割空間21における処理ガスGaの割合はさらに高まる。
一方、第2の分割空間22は上述のようにして主に不活性ガスGcで満たされるので、ガラス基板Pの表面Paと接触する気体は、処理ガスGaをほとんど含まず、含んだとしても実質的に影響のないレベル(濃度)に抑えられる。また、不活性ガス供給部23の供給口23aが開口する側に位置する第2の分割空間(第2の分割空間22)においては、分割が成された後も、継続して不活性ガスGcが供給されるので、時間の経過と共に、同分割空間22における不活性ガスGcの割合はさらに高まる。よって、隙間12に導入された領域においては、ガラス基板Pの表面Paへの処理ガスGaによる表面処理は実質的に回避される。
このようにしてガラス基板Pを隙間12内に導入していき、ガラス基板Pの導入前方側端部が隙間12を通過した時点においては、図6(c)に示すように、隙間12全域がガラス基板Pを介して第1の分割空間21と第2の分割空間22とに分割される。また、この際、第1の分割空間21と第2の分割空間22との間での気体の流動はガラス基板Pによって完全に遮断される。これにより、裏面Pbに対する処理ガスGaによる表面処理が継続される一方、外気Gbによる表面Paの保護状態が確保される。
このようにして、各対の隙間形成面13,14間(すなわち各隙間12)にガラス基板Pが導入されていき、最も導入方向前方側に位置する隙間12(図5でいえば最も左側の隙間12)をガラス基板Pが通過し終えることで、裏面Pbへの処理ガスGaによる表面処理が完了する。そして、この処理により裏面Pbの粗面化が図られる一方、表面Paの表面性状及び表面精度は処理前後で維持される。この場合も、上記粗面化を表面粗さRaの変化で説明した場合、上記表面処理の前後で、裏面Pbの表面粗さRa[nm]が0.1nm以上でかつ1.8nm以下の範囲で向上(ここでは粗面化)するように、より好ましくは0.1nm以上でかつ0.8nm以下の範囲で向上するように、処理ガスGaによる裏面Pbへの表面処理条件が設定されるのがよい。上記範囲で、裏面Pbの表面粗さRa向上することで、表面処理以後の製造工程において、ガラス基板Pが実質的に問題となるレベルの帯電を生じる事態を回避することが可能となる。ここで、裏面Pbに対する表面処理条件は、上述した処理ガスGaの濃度や、処理ガス供給部17と不活性ガス供給部23との給気力(給気流量、給気圧)のバランスを調整する他、処理ガスGaの供給時温度や雰囲気温度(隙間12内の温度)、あるいはガラス基板Pの搬送速度を調整することによって適宜設定される。
このように、本発明の第2の側面に係る表面処理装置では、隙間12を形成する一方の隙間形成面13の側に、処理ガス供給部17と処理ガス排気部18を配設すると共に、一方の隙間形成面13に、処理ガス供給部17の給気口17aを開口させ、他方の隙間形成面14に、不活性ガスGcを隙間12に向けて供給する不活性ガス供給部23の供給口23aを開口させた構成とした。一方の隙間形成面13から隙間12に向けて処理ガスGaを供給すると共に、他方の隙間形成面14から隙間12に向けて不活性ガスGcを供給することで、隙間12には、処理ガスGaのガス溜りと不活性ガスGcのガス溜りとが共存した状態となる。また、処理ガスGaと不活性ガスGcは互いに対向する側の隙間形成面13,14に向けて供給されることになるため、処理ガスGaのガス溜りは隙間12のうち一方の隙間形成面13の側に、不活性ガスGcのガス溜りは他方の隙間形成面14の側にそれぞれ偏った状態で形成される。ここで、ガラス基板Pが隙間12を通過し始めて、隙間12がガラス基板Pでその表裏方向に分割されることで、裏面Pbの側の分割空間(第1の分割空間21)には主に処理ガスGaのガス溜りが存在し、表面Paの側の分割空間(第2の分割空間22)には主に不活性ガスGcのガス溜りが存在した状態となる。また、第1の分割空間21には処理ガス供給部17の給気口17aが開口し、第2の分割空間22には不活性ガス供給部23の供給口23aが開口した状態となるので、各分割空間21,22に主に存在するガスGa,Gcの割合がさらに高められる。従って、第1の分割空間21に面するガラス基板Pの裏面Pbは主に処理ガスGaに曝される一方、第2の分割空間22に面するガラス基板Pの表面Paは主に不活性ガスGcに曝されることになる。以上の作用により、処理面となるガラス基板Pの裏面Pbに表面処理を施しつつも、非処理面となる表面Paが実質的な表面処理となる程度に処理ガスGaに曝される事態を回避することができる。従って、裏面Pbを適度に粗面化することで帯電を抑制または防止することができる。また、表面Paにおいては、表面処理直前の面粗さを維持することで高い表面精度及び所要の表面性状を確保することができる。
特に、本実施形態では、不活性ガス供給部23の供給口23aを、処理ガス供給部17の給気口17aと隙間12を挟んで対向する位置に配設したので、隙間12に供給された不活性ガスGcと処理ガスGaとが正面で衝突する。これにより、各々のガスGa,Gcが衝突部を境にして分岐することになるので、図6(a)に示す状態、すなわち、ガラス基板Pの導入位置を境界として、一方の隙間形成面13の側に処理ガスGaのガス溜り、他方の隙間形成面14の側に不活性ガスGcのガス溜りが分在した状態を比較的容易にかつ安定的に作り出すことができる。
以上、本発明の第2の側面に係る表面処理装置及び表面処理方法の一実施形態を説明したが、本側面に係る表面処理装置又は表面処理方法は、当然に本側面の範囲内において任意の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、不活性ガス供給部23の供給口23aをスリット形状とし、他方の隙間形成面14に開口させた場合を例示したが、もちろんこれ以外の構成を採ることも可能である。図7はその一例を示すもので、同図に係る表面処理装置10は、他方の隙間形成面14の一部又は全面が、不活性ガスGcを流通可能な多数の空孔25を有する多孔質体で構成され、他方の隙間形成面14に露出した空孔25で不活性ガスGcの供給口(拡大表示は省略)が構成されている点で図4に示す表面処理装置10とその構成を異にする。
このように、他方の隙間形成面14を、不活性ガスGcの流通可能な多数の空孔25を有する多孔質体で構成し、かつ他方の隙間形成面14に露出した空孔25で不活性ガスGcの供給口を構成することで、不活性ガスGcの供給口が、他方の隙間形成面14の全域又は非常に広範囲にわたって設けられた状態となる。ここで、空孔25個々の大きさは非常に小さいので、不活性ガスGcの供給口をスリット(図5)や加工穴で構成する場合と比べて、隙間12内における気体(処理ガスGa又は不活性ガスGc)の流れに与える影響を小さくすることができる。従って、ガラス基板Pの表裏両面Pa,Pb側ともに安定したガスGa,Gcの流れを実現することができる。
以下、本発明の第3の側面に係る表面処理装置及び表面処理方法の一実施形態を図8及び図9に基づき説明する。
本実施形態に係る表面処理装置10は、図8に示すように、主に他方の隙間形成面14を、ガラス基板Pの裏面Pbと当接するベルトコンベア26の搬送面(ベルト外表面)で構成した点において、第1及び第2実施形態とその構成を異にする。詳述すると、このベルトコンベア26は、ガラス基板Pの裏面Pbと当接しかつガラス基板Pと同期してその通過方向に移動する同期移動面27を有するもので、この場合、裏面Pbと当接するベルトコンベア26の搬送面が同期移動面27となる。すなわち、同期移動面27が他方の隙間形成面14として対向する一方の隙間形成面13との間に隙間12を形成する。本実施形態では、同期移動面27は、一方の隙間形成面13よりもガラス基板Pの通過方向に長く設定されており、これにより一方の隙間形成面13と対向する領域を越えて隙間12の両端側に延長配置されている。
また、本実施形態では、ベルトコンベア26がガラス基板Pを下方から支持しているため、このベルトコンベア26が搬送手段11を兼ねている。
このように構成することで、ガラス基板Pは、他方の隙間形成面14を形成する同期移動面27と当接した状態を保って隙間12に導入されるので、隙間12に導入した状態のガラス基板Pの非処理面(裏面Pb)に処理ガスGaが入り込む余地(隙間)は生じない。よって、処理面となるガラス基板Pの表面Paに表面処理を施しつつも、非処理面となる裏面Pbが実質的な表面処理となる程度に処理ガスGaに曝される事態を確実に防止することができる。また、ガラス基板Pとの接触面をガラス基板Pと同期して移動可能としたので、ガラス基板Pの裏面Pbとその接触面(同期移動面27)とが摺動するおそれもない。従って、非処理面となる裏面Pbの表面精度及び表面性状を確保することができる。また、この構成によれば、外気引込み手段19や不活性ガス供給部23も不要となるので、表面処理装置10を簡素化して、コストダウンにつなげることもできる。
特に、本実施形態のように、同期移動面27を、一方の隙間形成面13と対向する領域を越えて隙間12の両端側に延長配置することで、隙間12の導入開始時及び通過完了時においてもガラス基板Pの裏面Pbと同期移動面27との当接状態が維持される。よって、裏面Pbと処理ガスGaとが接触する事態を確実に防止して、当該表面処理直前の面粗さを維持することができ、裏面Pbの表面性状及び表面精度を確保することができる。
なお、ベルトコンベア26は必ずしも搬送手段11を兼ねる必要はなく、例えば図9に示すように、ガラス基板Pの裏面Pbをローラコンベア等の搬送手段11で支持及び搬送し、搬送状態にあるガラス基板Pの表面Paとベルトコンベア26の同期移動面27(搬送面)とを当接可能とし、かつガラス基板Pと同期してその通過方向に移動可能に構成してもよい。この場合、同期移動面27は、図8の場合と同様、他方の隙間形成面14を構成する。この構成によれば、ガラス基板Pの裏面Pbが処理ガスGaによる表面処理を受けて粗面化される一方で、表面Paの処理ガスGaによる実質的な被曝は回避される。なお、図8と図9何れの場合にしても、処理ガスGaは一方の隙間形成面13に開口形成された排気口18aを通じて隙間12外に排出されるように構成されているので、ガラス基板Pの表面Paのうちベルトコンベア26の搬送面と接触していない領域が生じたとしても問題ない。
以下、本発明の第4の側面に係る表面処理装置及び表面処理方法の一実施形態を図10に基づき説明する。
本側面に係る表面処理装置10は、主に他方の隙間形成部材16を一方の隙間形成部材15に対して近接自在に移動可能とすることで、隙間12の隙間幅方向寸法を調整するための隙間幅調整部28を有する点で、上述した本発明の第1〜第3の側面に係る表面処理装置10とその構成を異にする。
詳述すると、隙間幅調整部28は、図10(a)に示すように、各他方の隙間形成部材16と、その上方に配され、各他方の隙間形成部材16を懸架支持する懸架部29との間に配設されている。そして、他方の隙間形成部材16を昇降させることで、所定の高さ位置において搬送されるガラス基板Pの表面Paと他方の隙間形成面14との対向間隔を調整可能としている。すなわち、この対向間隔は、ガラス基板Pの隙間12への導入に伴い形成される第2の分割空間22の隙間幅方向寸法に等しい(図10(b))。
そして、この隙間幅調整部28は、図10(b)に示すように、隙間12へのガラス基板Pの導入に伴い、ガラス基板Pの表面Paに引っ張られて第2の分割空間22に流れ込む外気Gbの流れが生じるように、第2の分割空間22の隙間幅方向寸法wが調整される。一例として、隙間幅方向寸法wを2mm以下とすることで、上記外気Gbの流れ込み作用を得ることが可能となる。
このように構成すれば、ガラス基板Pの厚みや搬送速度が変更された場合であっても、設備に大幅な改良、変更を施すことなく容易に表面Paと処理ガスGaとの接触を回避することができる。また、懸架部29と他方の隙間形成部材16との間に隙間幅調整部28を設けるだけで足りるので、本発明の上記第1〜第3実施形態と比べて設備の簡素化を図ることができる。
以下、本発明の第5の側面に係る表面処理装置及び表面処理方法の一実施形態を図11に基づき説明する。
本側面に係る表面処理装置10は、主に搬送手段11により搬送される複数のガラス基板Pの間に閉塞板30を介在させた点で、上述した本発明の第1〜第4の側面に係る表面処理装置とその構成を異にする。
本実施形態では、さらに、閉塞板30の端面とガラス基板Pの端面とを当接させ、かつ当接させた状態で両部材30,Pを固定している。これにより、互いに隣接するガラス基板P同士はその間に介在させた閉塞板30と一体的に搬送される。なお、当接によるガラス基板Pの破損を防止する目的で、閉塞板30のガラス基板Pとの当接部を緩衝材などで構成したものを使用してもよい。
この構成によれば、搬送方向で互いに隣接するガラス基板Pの間が閉塞板30で閉塞された状態となるので、この状態を保ってガラス基板Pを隙間12に導入することで、ガラス基板Pの裏面Pbのみが処理ガスGaに曝される一方、処理ガスGaの表面Pa側への回り込みは防止される。よって、裏面Pbの粗面化を図りつつも、表面Paの表面性状及び表面精度を確保することができる。また、この構成によれば、ガラス基板Pの搬送準備段階における調整のみで実施することができるので、設備自体の変更は一切不要となる。
なお、裏面Pbが実質的な表面処理となる程度に処理ガスGaに曝される事態を回避できれば足りることを考慮すれば、必ずしも、上述の如き構成である必要はない。例えば、端面間に若干の隙間を持たせてガラス基板Pと閉塞板30とを固定してもよい。あるいは、固定することなくガラス基板Pの間に閉塞板30を配置するだけであってもよい。
また、以上の説明では、帯状板ガラスから切り出したガラス基板Pの表面Pa又は裏面Pbに対して所定の表面処理を施す場合を説明したが、もちろん帯状板ガラスの表面又は裏面に上記第1〜第5の側面に係る本発明を適用することも可能である。すなわち、図示は省略するが、帯状に成形して幅方向に切断した後、その長手方向一端又は両端を巻き取ったガラスフィルム表裏一方の面のみに表面処理を実施する場合にも上記第1〜第5の側面に係る本発明を適用することが可能である。