JP2005026062A - プラズマプロセス装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全性に優れるとともに、被処理物の表面を所望の状態で効率良く処理することができるプラズマプロセス装置を提供する。
【解決手段】プラズマプロセス装置101は、基板9の被処理面9aに向い合う被覆面25および26を有し、互いに隣り合う電極1および2と、電極1と電極2との間を充填し、かつ被覆面25および26を覆うように設けられる誘電体30とを備える。誘電体30は、第1の対向面31と第2の対向面32とを有する。プラズマプロセス装置101は、第1の対向面31に設けられるガス供給口4を有し、被処理面9aに処理ガスを供給するガス供給ライン15と、第2の対向面32に設けられるガス排出口5を有し、被処理面9aに供給された処理ガスを排出するガス排出ライン16とをさらに備える。
【選択図】 図1
【解決手段】プラズマプロセス装置101は、基板9の被処理面9aに向い合う被覆面25および26を有し、互いに隣り合う電極1および2と、電極1と電極2との間を充填し、かつ被覆面25および26を覆うように設けられる誘電体30とを備える。誘電体30は、第1の対向面31と第2の対向面32とを有する。プラズマプロセス装置101は、第1の対向面31に設けられるガス供給口4を有し、被処理面9aに処理ガスを供給するガス供給ライン15と、第2の対向面32に設けられるガス排出口5を有し、被処理面9aに供給された処理ガスを排出するガス排出ライン16とをさらに備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般的には、プラズマプロセス装置に関し、より特定的には、半導体や、液晶表示素子、エレクトロルミネセンス(EL)およびプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットパネルディスプレイや、太陽電池などの製造工程時において、表面改質、洗浄、加工および成膜などを行なう際に利用されるプラズマプロセス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体、フラットパネルディスプレイおよび太陽電池などの製造プロセスには、減圧下で発生させたプラズマを利用することによって、ガラス基板または半導体ウエハなどに対して、表面改質、洗浄、加工および成膜などを行なってきた。近年、コスト競争の激化に伴って真空チャンバーまたは排気装置などの大掛かりな設備を必要としない大気圧プラズマ技術への注目度が高まってきている。そして、表面改質および洗浄といった一部のプロセスにおいては、大気圧プラズマ技術を利用したプラズマプロセス装置が実用化されつつある。
【0003】
大気圧プラズマ技術を利用した常圧プラズマ処理装置が、特開2002−151494号公報に開示されている(特許文献1)。図15は、特許文献1に開示されている常圧プラズマ処理装置を示す断面図である。図16は、図15中に示す常圧プラズマ処理装置の底面図である。
【0004】
図15および図16を参照して、常圧プラズマ処理装置は、電源(高電圧パルス電源)201と、電極202および203と、固体誘電体204と、ガス吹き出し口205と、処理ガス導入口207と、内周排気ガス筒210と、外周排気ガス筒211と、不活性ガス導入口212と、不活性ガス吹き出し細孔213とを備える。常圧プラズマ処理装置の下方には、搬入ベルト241、処理部ベルト242および搬出ベルト243が設けられている。被処理体214は、処理部ベルト242によって搬送されている際にガス吹き出し口205の下方を通過する。
【0005】
処理ガスは、処理ガス導入口207から固体誘電体204によって形成された容器内に導入される。固体誘電体204の外側に配置された電極202および203にパルス電界を印加することによって、電極202と電極203との間を通過する処理ガスがプラズマ化される。処理ガスは、プラズマガスとしてガス吹き出し口205から被処理体214に向けて吹き付けられる。その後、処理ガスは、内周排気ガス筒210から回収される。
【0006】
また、不活性ガス導入口212から導入された不活性ガスは、不活性ガス吹き出し細孔213から被処理体214が位置する下方に向けて吹き付けられる。不活性ガスがガスカーテンの役割を果たすことによって、被処理体214周りの雰囲気が不活性ガス雰囲気に保たれる。不活性ガスは、主に外周排気ガス筒211から回収される。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−151494号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、最も電界強度が強くなるのは電極202と電極203との間であり、この位置が最もプラズマが発生しやすい位置となる。このため、処理ガスは、電極202と電極203との間を通過する際にプラズマ化され、その後、プラズマガスとして被処理体214に向けて吹き付けられている。このように、処理ガスがプラズマ化される位置と処理対象である被処理体214とが離れている場合、プラズマ処理の処理効率が低下するという問題が発生する。また、電極202および203に導入する電力をプラズマ処理に効率良く利用するという観点からも好ましくない。
【0009】
また、プラズマ処理の処理効率を向上させるために、電極203および204と被処理体214との間の隙間を小さくするという方法が考えられる。しかし、この場合、特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、被処理体214の被処理面がイオンダメージまたはチャージアップダメージなどを受けるという問題が発生する。
【0010】
また、特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、被処理体214を酸化雰囲気などの汚染雰囲気から保護することを目的として、不活性ガスを吹き付けている。このため、常圧プラズマ処理装置のランニングコスト、特にガスにかかるコストが大きくなるという問題が発生する。
【0011】
また、不活性ガスを吹き付けるための装置は、電極周りの構造を大型にしている。このため、複数セットの電極を同時に備えるといった電極のマルチヘッド化を図ることが困難となっている。したがって、電極のマルチヘッド化によってプラズマ処理の処理効率を向上させることもできない。
【0012】
また、特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、電極202および203の周囲に電磁波が漏れ易い構造となっており、その電磁波による周辺機器または人体などへの影響が問題となっている。
【0013】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、安全性に優れるとともに、被処理物の表面を所望の状態で効率良く処理することができるプラズマプロセス装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に従ったプラズマプロセス装置は、大気圧下でプラズマを発生させ、被処理物を処理するプラズマプロセス装置である。プラズマプロセス装置は、被処理物の表面に向い合う被覆面を有し、互いに隣り合う第1および第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間を充填し、かつ被覆面を覆うように設けられる誘電体とを備える。誘電体は、被処理物と第1の電極との間で被処理物の表面と間隔を隔てて位置決めされる第1の対向面と、被処理物と第2の電極との間で被処理物の表面と間隔を隔てて位置決めされる第2の対向面とを有する。プラズマプロセス装置は、第1の対向面に設けられる供給口を有し、供給口を介して被処理物の表面に処理ガスを供給するガス供給手段と、第2の対向面に設けられる排出口を有し、排出口を介して被処理物の表面に供給された処理ガスを排出するガス排出手段とをさらに備える。
【0015】
このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1および第2の電極間に電圧を印加することによって、被処理物の表面と誘電体との間の空間であって、第1の電極と第2の電極とが互いに隣り合う位置においてプラズマが発生する。一方、第1の対向面に設けられた供給口を介して被処理物の表面に供給された処理ガスが、第2の対向面に設けられた排出口を介して被処理物の表面から排出されるまでの間、処理ガスは、被処理物の表面と誘電体との間の空間をガス流路として被処理物の表面上を移動する。上述のプラズマは第1の対向面と第2の対向面との間の領域を中心に発生するため、この際、処理ガスはプラズマが発生している位置を通過することとなる。これにより、処理ガスはプラズマ化され、被処理物の処理が行なわれる。なお、大気圧とは、圧力範囲が、1013.25×10−1(hPa)以上1013.25×10(hPa)以下にある場合を示すものとする。
【0016】
本発明では、誘電体が第1および第2の電極の間を充填するように設けられているため、第1および第2の電極の間でプラズマが発生することがない。また、誘電体は、被処理物の表面に向い合う被覆面を覆うように設けられているため、第1および第2の電極の最も近接した部分において放電が集中することもない。これらの理由から、被処理物の表面上において安定したプラズマを発生させることができる。そして、処理対象となる被処理物の表面に近い位置にプラズマを発生させることによって、プラズマ処理の処理効率を向上させることができる。
【0017】
また好ましくは、ガス供給手段は、第1の電極の内部に設けられており、ガス排出手段は、第2の電極の内部に設けられている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1および第2の電極の内部は、それぞれ同電位であるため、ガス供給手段およびガス排出手段に処理ガスが存在してもプラズマまたは異常放電が発生することがない。このため、第1および第2の電極に投入する電力を、被処理物の表面上におけるプラズマの発生に効率良く利用することができる。また、ガス供給手段およびガス排出手段を電極の外部に設けた場合と比較して、装置の小型化を図ることができる。
【0018】
また好ましくは、ガス供給手段およびガス排出手段の周りには、誘電体材料から形成された内壁が設けられている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、ガス供給手段およびガス排出手段に、プラズマまたは異常放電が発生することをより確実に防止できる。
【0019】
また好ましくは、第1および第2の電極の各々が有する被覆面は、被処理物の表面に平行な平面上において延在している。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1の電極の被覆面から第2の電極の被覆面に向かう被処理物の表面上の位置が、電界強度が最も強くなる位置である。したがって、プラズマは、この位置に最も発生しやすくなる。
【0020】
また好ましくは、第1および第2の電極間に電圧を印加した場合に、第1および第2の電極間を結ぶ電気力線は、被処理物の表面上においてその表面にほぼ平行に延びている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、電気力線に沿って加速する電子またはイオンが被処理物の表面に向かうことがない。このため、被処理物の表面上において発生するプラズマによって、被処理物の表面がイオンダメージまたはチャージアップダメージなどを受けることを抑制できる。
【0021】
また好ましくは、供給口および排出口は、第1の対向面と第2の対向面との間に位置する領域の近傍に設けられている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、プラズマは、第1の対向面と第2の対向面との間に位置する領域を中心に発生する。したがって、この領域の近傍に供給口および排出口を設けることによって、処理ガスをプラズマが発生する位置により確実に供給することができる。
【0022】
また好ましくは、誘電体は、被処理物の表面から第2の対向面までの距離が被処理物の表面から第1の対向面までの距離よりも大きくなるように形成された凹部を含む。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、排出口を設けた第2の対向面に凹部を形成することによって、処理ガスの排出口側におけるコンダクタンスを大きくすることができる。これにより、供給口から供給された処理ガスをより積極的に排出口側へと導くことができる。
【0023】
また好ましくは、供給口および排出口は、一方向に延在するスリット形状および一方向に複数の孔が並んで配置された形状のいずれかに形成されている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、被処理物の表面の広い範囲に渡って処理ガスを均一に行き渡らせることができる。これにより、被処理物の表面に対してプラズマ処理を均一に行なうことができる。
【0024】
また好ましくは、ガス供給手段およびガス排出手段は、排出口を介して排出されるガスの総流量が、供給口を介して供給される処理ガスの総流量以上となるように形成されている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、排出口からは、被処理物の表面に向けて供給された処理ガスに加えて、被処理物の周りを占める大気も排出される。これにより、被処理物の表面と誘電体との間の空間から処理ガスが漏れ出すことを防止できる。また、被処理物を汚染雰囲気から保護するために、不活性ガスなどを被処理物の表面上に吹き付ける必要がない。このため、装置の小型化を図れるとともに、装置に使用されるガスのコストを削減することができる。
【0025】
また好ましくは、被処理物の表面に向い合う誘電体の部分において、供給口から最短距離に位置する誘電体の端部と供給口との間の距離をL1、供給口と排出口との間の距離をL2、排出口と排出口から最短距離に位置する誘電体の端部との間の距離をL3とする場合、L1、L2およびL3は、4≦L1/L2≦1000および4≦L3/L2≦1000の関係を満たす。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、供給口から見て排出口に向かう方向に存在するプラズマ発生位置により多くの処理ガスを供給するとともに、排出口からより多くの処理ガスを排出することができる。また、同時に第1および第2の電極が必要以上に大きくなることを防止できる。
【0026】
また好ましくは、プラズマプロセス装置は、外部に露出した第1および第2の電極の表面を覆うように設けられ、接地されている導電性カバーをさらに備える。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1および第2の電極から電磁波が漏洩することを防止できる。これにより、安全性に優れたプラズマプロセス装置を実現することができる。
【0027】
また好ましくは、プラズマプロセス装置は、第2の電極に隣り合い、第2の電極に対して第1の電極と反対側に位置決めされた第3の電極をさらに備える。プラズマプロセス装置は、第2の電極の中心線に対して対称形状となるように形成されている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1、第2および第3の電極によって外部に形成される電界が互いに打ち消し合う。このため、さらに安全性に優れたプラズマプロセス装置を実現することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図1を参照して、プラズマプロセス装置101は、基板9の被処理面9aに平行に並べられた電極1、2および3と、電極1、2および3の表面の一部を覆う誘電体30と、電極1および3の内部に形成されたガス供給ライン15と、電極2の内部に形成されたガス排出ライン16とを備える。
【0030】
電極1、2および3は、電極1と電極3との間に電極2が位置するようにそれぞれ隙間を設けて配置されている。電極1、2および3は、電極2の中心線に対して対称形状となるように形成されている。電極1および3は、基板9の被処理面9aに向い合う被覆面25を有し、電極2は、同様に基板9の被処理面9aに向い合う被覆面26を有する。被覆面25および26は、基板9の被処理面9aに平行な平面上に延在している。
【0031】
電極2の頂面側には、電力導入部14が設けられている。電力導入部14は、電力伝送路21を介して高周波電源11に接続されている。電極1および3は、頂面側において接地されている。
【0032】
なお、高周波電源11にかえてパルス電源を設けても良いし、両者をスイッチングまたは重畳しても良い。電力を供給する手段は、周波数および繰り返し周波数に加えて、処理に要求される諸条件、処理ガスの制限、要求される処理能力、および被処理面へのダメージの程度などを考慮して慎重に決定する必要がある。なお、本実施の形態において、高周波電源とは周波数が10(Hz)以上100(GHz)以下のものを指し、パルス電源とは繰り返し周波数が10(MHz)以下、波形の立ち上がり時間が100(μsec)以下、パルス印加時間が100(msec)以下のものを指す。
【0033】
電極1および2の間の隙間と電極2および3の間の隙間とを充填し、被覆面25および26を覆うように誘電体30が設けられている。誘電体30は、基板9に被処理面9aに向い合う対向面30aを有する。対向面30aは、電極1および3と基板9との間に形成された第1の対向面31と、電極2と基板9との間に形成された第2の対向面32とを含む。対向面30aは、基板9の被処理面9aに対して間隔を隔てて平行に位置する平面上に延在している。
【0034】
電極1から3の外部に露出した表面を覆うように導電性材料から形成されたシールドケース8が設けられている。シールドケース8は、接地されている。
【0035】
高周波電源11によって、電極1および2の間ならびに電極2および3の間に電圧を印加すると、基板9の被処理面9aと誘電体30の間の空間であって、第1の対向面31と第2の対向面32との間に位置するプラズマ発生領域6を中心にプラズマが発生する。この際、電極1および2の間ならびに電極2および3の間は誘電体30によって充填されているため、この場所にプラズマが発生することはない。
【0036】
誘電体30は、溶射や陽極酸化などによって、電極1から3の表面に直接形成することもできるが、メンテナンス時の労力およびコストの観点から、電極1から3に脱着可能に設けることが好ましい。電極1および2の間ならびに電極2および3の間における誘電体30の厚みは、高周波電源11の周波数、高周波電源11のかわりに設けたパルス電源の繰り返し周波数、処理ガスの種類、およびプラズマに対する誘電体30の材料特性などを考慮して決定される。一般的には、電極1および2の間ならびに電極2および3の間における誘電体30の厚みは、10mm以下であることが好ましく、特に高周波電源11の周波数が1(MHz)以上となる場合には、2mm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
同様に、被覆面25および26と対向面30aとの間における誘電体30の厚みについて考えてみると、この厚みを出来る限り小さくすることによってプラズマ発生領域6における電界強度を強くすることができる。しかし、この厚みを小さくしすぎた場合、誘電体30の強度を十分に確保できず破損するおそれが生じる。したがって、実用上は、被覆面25および26と対向面30aとの間における誘電体30の厚みは、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、誘電体30を電極1から3に直接形成する場合には、上述の数値範囲より小さい厚みで誘電体30を形成しても良い。
【0038】
図2は、図1中のII−II線上に沿った断面図である。図1および図2を参照して、電極1から3および誘電体30は、基板9の幅よりも20パーセントほど大きい幅で形成されている。電極2の内部には、電極2によって内壁が規定されたガス排出ライン16が形成されている。ガス排出ライン16は、電極2の頂面側から被覆面26まで貫通し、さらに誘電体30の第2の対向面32まで達するように形成されている。ガス排出ライン16は、電極2の内部において、図1の紙面に対して垂直方向に延在するガス溜り部16bと、ガス溜り部16bから2つのルートに枝分かれして第2の対向面32まで達するスリット状流路部16cとを含む。
【0039】
電極1および3の内部には、電極1および3によって内壁が規定されたガス供給ライン15が形成されている。ガス供給ライン15は、電極1および3の頂面側から被覆面25まで貫通し、さらに誘電体30の第1の対向面31まで達するように形成されている。ガス供給ライン15は、電極1および3の内部において、図1の紙面に対して垂直方向に延在するガス溜り部15bと、ガス溜り部16bから第1の対向面31まで達するスリット状流路部15cとを含む。
【0040】
このようにガス供給ライン15およびガス排出ライン16を電極内部に形成することによってプラズマプロセス装置101の小型化を図ることができる。
【0041】
ガス供給ライン15には、電極1および3の頂面側においてガス導入部22が設けられている。ガス導入部22は、図示しないガスボンベまたはガスタンクに接続されている。ガス排出ライン16には、電極2の頂面側においてガス排出部23が設けられている。ガス排出部23は、図示しない吸引ポンプに接続されている。
【0042】
図3は、図1中の矢印IIIに示す方向から見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。図1および図3を参照して、ガス排出ライン16によって、誘電体30の第2の対向面32にはガス排出口5が形成されている。また、ガス供給ライン15によって、誘電体30の第1の対向面31にはガス供給口4が形成されている。ガス排出口5およびガス供給口4は、一方向に延在するスリット形状に形成されている。図2および図3を参照して、ガス排出口5およびガス供給口4は、基板9の幅と同程度かそれ以上の幅で形成されている。このようにガス排出口5およびガス供給口4を形成することによって、処理ガスを被処理面9aの全体に供給するとともに、被処理面9aから処理ガスを確実に回収することができる。
【0043】
図4は、図3中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すためのプラズマプロセス装置の底面図である。図4を参照して、ガス供給口4およびガス排出口5を、一方向に並んで細孔を配置した形状に形成しても良い。この場合、電極1から3には、スリット状流路部15cおよび16cにかえて、ガス供給口4およびガス排出口5が形成された形状と同様の形状を有する細孔が形成される。なお、図3および図4に示す形状を適宜組合せて、ガス供給口4およびガス排出口5を形成しても良い。
【0044】
図1および図2を参照して、電極1から3の内部には、冷媒流路7が形成されている。冷媒流路7によって、電極の頂面側から電極の内部を通り再び頂面側に達する経路が形成されている。冷媒流路7が電極の頂面側に達する位置には、冷媒導入部17および冷媒排出部18が設けられている。冷媒流路7に冷媒を供給するために、冷媒導入部17および冷媒排出部18は図示しないクーラーまたはヒーターに接続されている。冷媒流路7に導入された冷媒は、温度が上昇した電極1から3および誘電体30を冷却する役割を果たす。
【0045】
基板9を搬送するための手段として、搬送用ローラー10が複数設けられている。基板9を搬送する他の手段として、ステージまたは基板ホルダなどを用いても構わない。ステージまたは基板ホルダなどを用いる場合、接地するか、直流または交流のバイアス電圧を印加することによって、イオンを基板9側に引き寄せることが可能となる。これにより、処理の種類によっては、プラズマ処理の高速化および品質向上を図ることが可能となる。また、プラズマ処理中に基板9の搬送を行なわない場合は、局所的な処理も可能である。
【0046】
続いて、図1に示すプラズマプロセス装置を用いて基板9に処理を行なう工程について説明する。
【0047】
図1を参照して、図示しないガスボンベまたはガスタンクから導入された複数種類のガスが、マスフロー、場合によってはミキサーによって混合される。このように混合されたガスが、処理ガスとして高圧な状態でガス導入部22からガス供給ライン15に導入される。処理ガスは、ガス溜り部15bにおいて図1の紙面の垂直方向に行き渡る。そして、処理ガスは、断面積が小さく形成されたスリット状流路部15cを通過することによって流速が加速され、その後、ガス供給口4から基板9の被処理面9aに向けて吹き出される。
【0048】
この際、処理ガスは電極1および3の内部を通過することとなるが、電極1および3の内部には電位差が生じていない。このため、原理的にはガス供給ライン15にプラズマまたは異常放電が発生することはない。しかし、ガス供給ライン15の経路を滑らかに設定した上で、ガス溜り部15b付近の角部に丸みをつけることによって、ガス供給ライン15の内部でプラズマまたは異常放電が発生することを確実に防止することができる。
【0049】
基板9に表面改質のプラズマ処理を行なう場合を想定すると、処理ガスには、たとえば、ヘリウム、アルゴン、酸素および空気の混合ガスが使用される。但し、使用される処理ガスは行なう処理の種類によって異なり、その都度、混合するガスの種類および混合比を適切に選択する必要がある。
【0050】
基板9の被処理面9aに向けて吹き出された処理ガスは、第1の対向面31側からプラズマ発生領域6上を移動し、ガス排出口5が設けられた第2の対向面32側へと達する。その後、処理ガスは、ガス排出口5からガス排出ライン16を通って図示しない吸引ポンプへと回収される。
【0051】
この際、電極2の内部においても電位差は生じていないため、ガス排出ライン16にプラズマまたは異常放電が発生することはない。また、ガス供給ライン15と同様にガス排出ライン16においても、経路を滑らかに設定した上で、ガス溜り部16b付近の角部に丸みをつけることが好ましい。
【0052】
一方、高周波電源11から出力された高周波電力は、電力伝送路21および電力導入部14を介して電極2に印加される。高周波電力が印加された電極2と接地された電極1および3との間で電界が形成される。その電界は、基板9の被処理面9aと誘電体30の間の空間であって、第1の対向面31と第2の対向面32との間に位置するプラズマ発生領域6において最も強くなる。これにより、基板9の被処理面9a上を移動中の処理ガスは、プラズマ発生領域6を中心にした位置においてプラズマ化される。
【0053】
プラズマは、搬送用ローラー10によって搬送されてきた基板9の被処理面9aに接触する。そして、活性種による反応促進効果またはイオンによる物理的エッチング効果によって、表面改質、洗浄、加工または成膜などのプラズマ処理が基板9に行なわれる。なお、プラズマを被処理面9aに接触させない場合であっても、拡散してきた活性種またはイオンによってプラズマ処理を行なうことができる。しかし、プラズマを被処理面9aに接触させた場合、被処理面9aとプラズマとの境界にシース(空間電荷層)を形成することができる。これにより、プラズマ処理をさらに高速に行なうことができる。
【0054】
一般的にプラズマ処理においては、基板9の被処理面9aへの物理的ダメージまたはチャージアップダメージなどが懸念される。しかし、本実施の形態におけるプラズマプロセス装置101の場合、電極1および3の被覆面25と電極2の被覆面26とが被処理面9aに平行な平面上に延在している。このため、電極1および2の間ならびに電極2および3の間に形成される電気力線が、被処理面9a上で被処理面9aに平行に延びる。
【0055】
このため、電気力線に沿って加速するイオンまたは電子が被処理面9aに向かうことがない。これにより、被処理面9aに対するイオンまたは電子のアタックがソフトになり、チャージアップダメージが生じにくくなる。また、処理速度を犠牲にしてもさらにダメージの少ない処理を行ないたい場合には、プラズマを被処理面9aに接触させないで処理を行なえば良い。
【0056】
このように行なうプラズマ処理において、プラズマを安定して発生させること、および処理ガスの利用効率を上げることは、処理能力の向上およびランニングコストの低減を図る上で重要である。したがって、プラズマ発生領域6に効率良く処理ガスを供給し、プラズマ発生領域6から効率良く処理ガスを排出するために、処理ガスの流量および流速を適切に制御することが必要となる。
【0057】
図5は、図1中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。図5を参照して、電極1および2の間に位置するプラズマ発生領域6が示されている。図5では、誘電体30が、対向面30aにおいて、第1の対向面31側に端部30bを有し、第2の対向面32側に端部30cを有する場合を想定している。また、端部30bからガス供給口4までの距離をL1、ガス供給口4からガス排出口5までの距離をL2、ガス排出口5から端部30cまでの距離をL3、対向面30aから被処理面9aまでの距離をdとする。
【0058】
ガス供給口4から被処理面9aに向けて供給された処理ガスは、端部30bが位置する方向とプラズマ発生領域6が位置する方向とに分かれて移動する。より多くの処理ガスをプラズマ発生領域6に向かわせるとともに、さらに処理ガスを効率良くガス排出口5から回収するためには、処理ガスが被処理面9a上において通過する空間の断面積Sおよび距離Lの決め方が重要となる。大気圧下における処理ガスの流れは粘性流と考えられるので、これらのパラメータと、処理ガスの流れやすさの指標であるコンダクタンスUとは、(1)式に表わす関係を有する。但し、図5の紙面に垂直方向における空間の長さは無限長であるものとする。
【0059】
U=A・S2/L (1)
(1)式中のAは、処理ガスの粘性係数および圧力により決まる定数である。
【0060】
対向面30aから被処理面9aまでの距離dはどの位置においても一定であるため、コンダクタンスUを決定する要因が距離Lであることが(1)式から分かる。
【0061】
より多くの処理ガスをプラズマ発生領域6に供給するためには、距離L2に対して距離L1を大きくする必要がある。この際、電極1のサイズが必要以上に大きくならないよう考慮しなければならない。具体的には、距離L1およびL2が、4≦L1/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。また、さらに効率良く処理ガスをプラズマ発生領域6に供給するためには、距離L1およびL2が、10≦L1/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。
【0062】
また、処理ガスを効率良くガス排出口5から回収するためには、距離L2に対して距離L3を大きくする必要がある。この際においても、電極2のサイズが必要以上に大きくならないよう考慮しなければならない。具体的には、距離L2およびL3が、4≦L3/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。また、処理ガスをさらに効率良くガス排出口5から回収するためには、距離L2およびL3が、10≦L3/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。
【0063】
図1を参照して、本実施の形態では、1箇所のプラズマ発生領域6に対してガス供給口4およびガス排出口5をそれぞれ設けている。また、ガス供給口4およびガス排出口5は、プラズマ発生領域6の近傍に設けられている。このため、より多くの処理ガスをプラズマ発生領域6に向かわせるとともに、処理ガスを効率良くガス排出口5から回収することができる。
【0064】
また、ガス排出ライン16によって排出するガスの総流量は、ガス供給ライン15によって基板9の被処理面9aに供給する処理ガスの総流量以上であることが好ましい。この場合、ガス排出ライン16から、被処理面9a上に供給した処理ガスに加えて被処理面9a周りの大気も排出することとなる。これにより、対向面30aと被処理面9aとの隙間から処理ガスが漏れ出すことを防止できる。
【0065】
なお、プラズマ発生領域6を通過する処理ガスの流速と、印加する高周波電力の周波数との間には密接な関係がある。たとえば、高周波電力の周波数が小さい場合、処理ガスの流速が速すぎると、十分なプラズマ励起が行なわれない。また逆に流速が遅すぎると、誘電体の冷却効果が不十分となり、プラズマが不安定になったりアーク放電に移行したりするおそれが生じる。
【0066】
この発明の実施の形態1に従ったプラズマプロセス装置101は、大気圧下でプラズマを発生させ、被処理物としての基板9を処理するプラズマプロセス装置である。プラズマプロセス装置101は、基板9の表面としての被処理面9aに向い合う被覆面25および26を有し、互いに隣り合う第1および第2の電極としての電極1および2と、電極1と電極2との間を充填し、かつ被覆面25および26を覆うように設けられる誘電体30とを備える。誘電体30は、基板9と電極1との間で基板9の被処理面9aと間隔を隔てて位置決めされる第1の対向面31と、基板9と電極2との間で基板9の被処理面9aと間隔を隔てて位置決めされる第2の対向面32とを有する。プラズマプロセス装置101は、第1の対向面31に設けられる供給口としてのガス供給口4を有し、ガス供給口4を介して基板9の被処理面9aに処理ガスを供給するガス供給手段としてのガス供給ライン15と、第2の対向面32に設けられる排出口としてのガス排出口5を有し、ガス排出口5を介して基板9の被処理面9aに供給された処理ガスを排出するガス排出手段としてのガス排出ライン16とをさらに備える。
【0067】
ガス供給ライン15は、電極1の内部に設けられており、ガス排出ライン16は、電極2の内部に設けられている。電極1および2の各々が有する被覆面25および26は、基板9の被処理面9aに平行な平面上において延在している。電極1および2の間に電圧を印加した場合に、電極1および2の間を結ぶ電気力線は、基板9の被処理面9a上において被処理面9aにほぼ平行に延びている。
【0068】
ガス供給口4およびガス排出口5は、第1の対向面31と第2の対向面32との間に位置する領域としてのプラズマ発生領域6の近傍に設けられている。ガス供給口4およびガス排出口5は、一方向に延在するスリット形状および一方向に複数の孔が並んで配置された形状のいずれかに形成されている。
【0069】
ガス供給口4およびガス排出口5は、ガス排出口5を介して排出されるガスの総流量が、ガス供給口4を介して供給される処理ガスの総流量以上となるように形成されている。
【0070】
プラズマプロセス装置101は、外部に露出した電極1および2の表面を覆うように設けられ、接地されている導電性カバーとしてのシールドケース8をさらに備える。プラズマプロセス装置101は、電極2に隣り合い、電極2に対して電極1と反対側に位置決めされた第3の電極としての電極3をさらに備える。プラズマプロセス装置101は、電極2の中心線に対して対称形状となるように形成されている。
【0071】
このように構成されたプラズマプロセス装置101によれば、処理対象である被処理面9aの近くに位置するプラズマ発生領域6を中心にプラズマを発生させることができる。これにより、基板9を効率良くプラズマ処理することができる。また、プラズマプロセス装置101は、電力が導入される電極2の両側を接地された電極1および3で挟む対称構造となっている。これにより、電極1から3の外部に形成される電界が互いに打ち消し合うため、電磁波の漏洩が少ないプラズマプロセス装置を実現することができる。また、電極1から3の周りには、接地されたシールドケース8が設けられているため、電磁波の漏洩をさらに防止することができる。
【0072】
(実施の形態2)
図6は、この発明の実施の形態2におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図7は、図6中のVII−VII線上に沿った断面図である。図6および図7を参照して、プラズマプロセス装置102は、実施の形態1におけるプラズマプロセス装置101と基本的に同様の構造を備える。以下において、プラズマプロセス装置101と重複する構造の説明は省略する。
【0073】
誘電体30には、第2の対向面32に位置して掘り込み部41が設けられている。基板9の被処理面9aから掘り込み部41の底面に位置する第2の対向面32までの距離は、被処理面9aから第1の対向面31までの距離よりも大きい。ガス排出ライン16は、掘り込み部41の底面に位置する第2の対向面32に達している。
【0074】
図8は、図6中の矢印VIII−VIIIから見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。図8を参照して、ガス排出口5およびガス供給口4が一方向に延在するスリット形状に形成されている。掘り込み部41は、ガス排出口5およびガス供給口4が延在する方向に沿って形成されている。
【0075】
図9は、図8中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すプラズマプロセス装置の底面図である。図9を参照して、実施の形態1と同様に、ガス供給口4およびガス排出口5を、一方向に並んで細孔を配置した形状に形成しても良い。
【0076】
図10は、図6中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。図10は、実施の形態1における図5に対応する図である。図10を参照して、図6において規定した距離L1、L2、L3およびdに加えて、掘り込み部41の底面に位置する第2の対向面32から被処理面9aまでの距離をDとする。
【0077】
実施の形態1において説明した(1)式から明らかなように、対向面30aから被処理面9aまでの距離を大きくすることによって、処理ガスのコンダクタンスUを増大させることができる。この際、コンダクタンスUを増大させる効果は、距離Lを大きくする場合よりも顕著に現われる。
【0078】
したがって、第2の対向面32から被処理面9aまでの距離がdよりも大きいDとなる掘り込み部41を形成することによって、ガス排出口5側における処理ガスのコンダクタンスUを大幅に増大させることができる。
【0079】
図11は、処理ガスが被処理面上を移動する様子を示す断面図である。図11を参照して、掘り込み部41によってガス排出口5側における処理ガスのコンダクタンスUが増大するため、ガス供給口4から被処理面9a上に供給された処理ガスは、効率良くプラズマ発生領域6へと導かれる。処理ガスは、矢印51に示す方向に沿って掘り込み部41の内部を進み、その後ガス排出口5から回収される。
【0080】
この発明の実施の形態2に従ったプラズマプロセス装置102では、誘電体30は、基板9の被処理面9aから第2の対向面32までの距離が基板9の被処理面9aから第1の対向面31までの距離よりも大きくなるように形成された凹部としての掘り込み部41を含む。
【0081】
このように構成されたプラズマプロセス装置102によれば、実施の形態1に記載に効果を奏することができる。加えて、被処理面9a上に供給された処理ガスをより積極的にプラズマ発生領域6に導くことができる。これにより、プラズマ発生領域6においてより多くの処理ガスをプラズマ化させて、プラズマ処理の処理効率を向上させることができる。
【0082】
(実施の形態3)
図12は、この発明の実施の形態3におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図12を参照して、プラズマプロセス装置103は、実施の形態2におけるプラズマプロセス装置102と基本的に同様の構造を備える。以下において、プラズマプロセス装置102と重複する構造の説明は省略する。
【0083】
電極1は、ガス供給ライン15に対して電極2側に位置する部分1mと、ガス供給ライン15に対して電極2と反対側に位置する部分1nとによって構成されている。電極3は、ガス供給ライン15に対して電極2側に位置する部分3mと、ガス供給ライン15に対して電極2と反対側に位置する部分3nとによって構成されている。部分1mおよび3mは、導電性材料によって形成されており、部分1nおよび3nは、誘電性材料によって形成されている。これにより、ガス供給ライン15の一部は、誘電体である部分1nおよび3nによって規定されている。
【0084】
電極2は、電極1および3に隣り合う部分2mと、ガス排出ライン16のガス溜り部16bおよびスリット状流路部16cに囲まれる部分2nとによって構成されている。部分2mは、導電性材料によって形成されており、部分2nは、誘電性材料によって形成されている。これにより、ガス排出ライン16の一部は、誘電体である部分2nによって規定されている。
【0085】
このように構成されたプラズマプロセス装置103によれば、実施の形態2に記載の効果を奏することができる。加えて、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16において、プラズマまたは異常放電が発生することをより確実に防止することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図13は、この発明の実施の形態4におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図13を参照して、プラズマプロセス装置104は、実施の形態2におけるプラズマプロセス装置102と基本的に同様の構造を備える。以下において、プラズマプロセス装置102と重複する構造の説明は省略する。
【0087】
ガス供給ライン15およびガス排出ライン16を規定する電極1から3の表面には、誘電性材料から形成された内壁71が設けられている。したがって、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16は、電極1から3の内部において完全に誘電体によって覆われている。
【0088】
この発明の実施の形態4に従ったプラズマプロセス装置104では、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16の周りには、誘電体材料から形成された内壁71が設けられている。
【0089】
このように構成されたプラズマプロセス装置104によれば、実施の形態2に記載の効果を奏することができる。加えて、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16において、プラズマまたは異常放電が発生することをより確実に防止することができる。
【0090】
(実施の形態5)
図14は、この発明の実施の形態5におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図14を参照して、プラズマプロセス装置105は、実施の形態1におけるプラズマプロセス装置101を複数備える。基板9の被処理面9a上には、広い面積に渡って誘電体30の対向面30aが延在している。
【0091】
電力は一台の電源から供給してもよいし、各プラズマプロセス装置101ごとに供給しても構わない。各プラズマプロセス装置101ごとに電力を供給した場合、プラズマ処理の制御を各プラズマプロセス装置101ごとに行なえるという利点がある。また、プラズマプロセス装置101の各々に供給する処理ガスの組成を変えることによって、各プラズマプロセス装置101で種類の異なる処理を行なうことができる。
【0092】
このように構成されたプラズマプロセス装置105によれば、プラズマが発生する領域の実効面積を増加させることによって、プラズマ処理の処理速度を向上させることができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に従えば、安全性に優れるとともに、被処理物の表面を所望の状態で効率良く処理することができるプラズマプロセス装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図2】図1中のII−II線上に沿った断面図である。
【図3】図1中の矢印IIIに示す方向から見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。
【図4】図3中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すためのプラズマプロセス装置の底面図である。
【図5】図1中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図7】図6中のVII−VII線上に沿った断面図である。
【図8】図6中の矢印VIII−VIIIから見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。
【図9】図8中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すプラズマプロセス装置の底面図である。
【図10】図6中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。
【図11】処理ガスが被処理面上を移動する様子を示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図13】この発明の実施の形態4におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図15】特許文献1に開示されている常圧プラズマ処理装置を示す断面図である。
【図16】図15中に示す常圧プラズマ処理装置の底面図である。
【符号の説明】
1,2,3 電極、1m,1n,2m,2n,3m,3n 部分、24 ガス供給口、5 ガス排出口、6 プラズマ発生領域、8 シールドケース、9 基板、9a 被処理面、15 ガス供給ライン、16 ガス排出ライン、25,26 被覆面、30 誘電体、31,32 対向面、41 掘り込み部、71 内壁、101,102,103,104,105 プラズマプロセス装置。
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般的には、プラズマプロセス装置に関し、より特定的には、半導体や、液晶表示素子、エレクトロルミネセンス(EL)およびプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットパネルディスプレイや、太陽電池などの製造工程時において、表面改質、洗浄、加工および成膜などを行なう際に利用されるプラズマプロセス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体、フラットパネルディスプレイおよび太陽電池などの製造プロセスには、減圧下で発生させたプラズマを利用することによって、ガラス基板または半導体ウエハなどに対して、表面改質、洗浄、加工および成膜などを行なってきた。近年、コスト競争の激化に伴って真空チャンバーまたは排気装置などの大掛かりな設備を必要としない大気圧プラズマ技術への注目度が高まってきている。そして、表面改質および洗浄といった一部のプロセスにおいては、大気圧プラズマ技術を利用したプラズマプロセス装置が実用化されつつある。
【0003】
大気圧プラズマ技術を利用した常圧プラズマ処理装置が、特開2002−151494号公報に開示されている(特許文献1)。図15は、特許文献1に開示されている常圧プラズマ処理装置を示す断面図である。図16は、図15中に示す常圧プラズマ処理装置の底面図である。
【0004】
図15および図16を参照して、常圧プラズマ処理装置は、電源(高電圧パルス電源)201と、電極202および203と、固体誘電体204と、ガス吹き出し口205と、処理ガス導入口207と、内周排気ガス筒210と、外周排気ガス筒211と、不活性ガス導入口212と、不活性ガス吹き出し細孔213とを備える。常圧プラズマ処理装置の下方には、搬入ベルト241、処理部ベルト242および搬出ベルト243が設けられている。被処理体214は、処理部ベルト242によって搬送されている際にガス吹き出し口205の下方を通過する。
【0005】
処理ガスは、処理ガス導入口207から固体誘電体204によって形成された容器内に導入される。固体誘電体204の外側に配置された電極202および203にパルス電界を印加することによって、電極202と電極203との間を通過する処理ガスがプラズマ化される。処理ガスは、プラズマガスとしてガス吹き出し口205から被処理体214に向けて吹き付けられる。その後、処理ガスは、内周排気ガス筒210から回収される。
【0006】
また、不活性ガス導入口212から導入された不活性ガスは、不活性ガス吹き出し細孔213から被処理体214が位置する下方に向けて吹き付けられる。不活性ガスがガスカーテンの役割を果たすことによって、被処理体214周りの雰囲気が不活性ガス雰囲気に保たれる。不活性ガスは、主に外周排気ガス筒211から回収される。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−151494号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、最も電界強度が強くなるのは電極202と電極203との間であり、この位置が最もプラズマが発生しやすい位置となる。このため、処理ガスは、電極202と電極203との間を通過する際にプラズマ化され、その後、プラズマガスとして被処理体214に向けて吹き付けられている。このように、処理ガスがプラズマ化される位置と処理対象である被処理体214とが離れている場合、プラズマ処理の処理効率が低下するという問題が発生する。また、電極202および203に導入する電力をプラズマ処理に効率良く利用するという観点からも好ましくない。
【0009】
また、プラズマ処理の処理効率を向上させるために、電極203および204と被処理体214との間の隙間を小さくするという方法が考えられる。しかし、この場合、特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、被処理体214の被処理面がイオンダメージまたはチャージアップダメージなどを受けるという問題が発生する。
【0010】
また、特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、被処理体214を酸化雰囲気などの汚染雰囲気から保護することを目的として、不活性ガスを吹き付けている。このため、常圧プラズマ処理装置のランニングコスト、特にガスにかかるコストが大きくなるという問題が発生する。
【0011】
また、不活性ガスを吹き付けるための装置は、電極周りの構造を大型にしている。このため、複数セットの電極を同時に備えるといった電極のマルチヘッド化を図ることが困難となっている。したがって、電極のマルチヘッド化によってプラズマ処理の処理効率を向上させることもできない。
【0012】
また、特許文献1に開示された常圧プラズマ処理装置では、電極202および203の周囲に電磁波が漏れ易い構造となっており、その電磁波による周辺機器または人体などへの影響が問題となっている。
【0013】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、安全性に優れるとともに、被処理物の表面を所望の状態で効率良く処理することができるプラズマプロセス装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に従ったプラズマプロセス装置は、大気圧下でプラズマを発生させ、被処理物を処理するプラズマプロセス装置である。プラズマプロセス装置は、被処理物の表面に向い合う被覆面を有し、互いに隣り合う第1および第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間を充填し、かつ被覆面を覆うように設けられる誘電体とを備える。誘電体は、被処理物と第1の電極との間で被処理物の表面と間隔を隔てて位置決めされる第1の対向面と、被処理物と第2の電極との間で被処理物の表面と間隔を隔てて位置決めされる第2の対向面とを有する。プラズマプロセス装置は、第1の対向面に設けられる供給口を有し、供給口を介して被処理物の表面に処理ガスを供給するガス供給手段と、第2の対向面に設けられる排出口を有し、排出口を介して被処理物の表面に供給された処理ガスを排出するガス排出手段とをさらに備える。
【0015】
このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1および第2の電極間に電圧を印加することによって、被処理物の表面と誘電体との間の空間であって、第1の電極と第2の電極とが互いに隣り合う位置においてプラズマが発生する。一方、第1の対向面に設けられた供給口を介して被処理物の表面に供給された処理ガスが、第2の対向面に設けられた排出口を介して被処理物の表面から排出されるまでの間、処理ガスは、被処理物の表面と誘電体との間の空間をガス流路として被処理物の表面上を移動する。上述のプラズマは第1の対向面と第2の対向面との間の領域を中心に発生するため、この際、処理ガスはプラズマが発生している位置を通過することとなる。これにより、処理ガスはプラズマ化され、被処理物の処理が行なわれる。なお、大気圧とは、圧力範囲が、1013.25×10−1(hPa)以上1013.25×10(hPa)以下にある場合を示すものとする。
【0016】
本発明では、誘電体が第1および第2の電極の間を充填するように設けられているため、第1および第2の電極の間でプラズマが発生することがない。また、誘電体は、被処理物の表面に向い合う被覆面を覆うように設けられているため、第1および第2の電極の最も近接した部分において放電が集中することもない。これらの理由から、被処理物の表面上において安定したプラズマを発生させることができる。そして、処理対象となる被処理物の表面に近い位置にプラズマを発生させることによって、プラズマ処理の処理効率を向上させることができる。
【0017】
また好ましくは、ガス供給手段は、第1の電極の内部に設けられており、ガス排出手段は、第2の電極の内部に設けられている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1および第2の電極の内部は、それぞれ同電位であるため、ガス供給手段およびガス排出手段に処理ガスが存在してもプラズマまたは異常放電が発生することがない。このため、第1および第2の電極に投入する電力を、被処理物の表面上におけるプラズマの発生に効率良く利用することができる。また、ガス供給手段およびガス排出手段を電極の外部に設けた場合と比較して、装置の小型化を図ることができる。
【0018】
また好ましくは、ガス供給手段およびガス排出手段の周りには、誘電体材料から形成された内壁が設けられている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、ガス供給手段およびガス排出手段に、プラズマまたは異常放電が発生することをより確実に防止できる。
【0019】
また好ましくは、第1および第2の電極の各々が有する被覆面は、被処理物の表面に平行な平面上において延在している。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1の電極の被覆面から第2の電極の被覆面に向かう被処理物の表面上の位置が、電界強度が最も強くなる位置である。したがって、プラズマは、この位置に最も発生しやすくなる。
【0020】
また好ましくは、第1および第2の電極間に電圧を印加した場合に、第1および第2の電極間を結ぶ電気力線は、被処理物の表面上においてその表面にほぼ平行に延びている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、電気力線に沿って加速する電子またはイオンが被処理物の表面に向かうことがない。このため、被処理物の表面上において発生するプラズマによって、被処理物の表面がイオンダメージまたはチャージアップダメージなどを受けることを抑制できる。
【0021】
また好ましくは、供給口および排出口は、第1の対向面と第2の対向面との間に位置する領域の近傍に設けられている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、プラズマは、第1の対向面と第2の対向面との間に位置する領域を中心に発生する。したがって、この領域の近傍に供給口および排出口を設けることによって、処理ガスをプラズマが発生する位置により確実に供給することができる。
【0022】
また好ましくは、誘電体は、被処理物の表面から第2の対向面までの距離が被処理物の表面から第1の対向面までの距離よりも大きくなるように形成された凹部を含む。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、排出口を設けた第2の対向面に凹部を形成することによって、処理ガスの排出口側におけるコンダクタンスを大きくすることができる。これにより、供給口から供給された処理ガスをより積極的に排出口側へと導くことができる。
【0023】
また好ましくは、供給口および排出口は、一方向に延在するスリット形状および一方向に複数の孔が並んで配置された形状のいずれかに形成されている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、被処理物の表面の広い範囲に渡って処理ガスを均一に行き渡らせることができる。これにより、被処理物の表面に対してプラズマ処理を均一に行なうことができる。
【0024】
また好ましくは、ガス供給手段およびガス排出手段は、排出口を介して排出されるガスの総流量が、供給口を介して供給される処理ガスの総流量以上となるように形成されている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、排出口からは、被処理物の表面に向けて供給された処理ガスに加えて、被処理物の周りを占める大気も排出される。これにより、被処理物の表面と誘電体との間の空間から処理ガスが漏れ出すことを防止できる。また、被処理物を汚染雰囲気から保護するために、不活性ガスなどを被処理物の表面上に吹き付ける必要がない。このため、装置の小型化を図れるとともに、装置に使用されるガスのコストを削減することができる。
【0025】
また好ましくは、被処理物の表面に向い合う誘電体の部分において、供給口から最短距離に位置する誘電体の端部と供給口との間の距離をL1、供給口と排出口との間の距離をL2、排出口と排出口から最短距離に位置する誘電体の端部との間の距離をL3とする場合、L1、L2およびL3は、4≦L1/L2≦1000および4≦L3/L2≦1000の関係を満たす。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、供給口から見て排出口に向かう方向に存在するプラズマ発生位置により多くの処理ガスを供給するとともに、排出口からより多くの処理ガスを排出することができる。また、同時に第1および第2の電極が必要以上に大きくなることを防止できる。
【0026】
また好ましくは、プラズマプロセス装置は、外部に露出した第1および第2の電極の表面を覆うように設けられ、接地されている導電性カバーをさらに備える。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1および第2の電極から電磁波が漏洩することを防止できる。これにより、安全性に優れたプラズマプロセス装置を実現することができる。
【0027】
また好ましくは、プラズマプロセス装置は、第2の電極に隣り合い、第2の電極に対して第1の電極と反対側に位置決めされた第3の電極をさらに備える。プラズマプロセス装置は、第2の電極の中心線に対して対称形状となるように形成されている。このように構成されたプラズマプロセス装置によれば、第1、第2および第3の電極によって外部に形成される電界が互いに打ち消し合う。このため、さらに安全性に優れたプラズマプロセス装置を実現することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図1を参照して、プラズマプロセス装置101は、基板9の被処理面9aに平行に並べられた電極1、2および3と、電極1、2および3の表面の一部を覆う誘電体30と、電極1および3の内部に形成されたガス供給ライン15と、電極2の内部に形成されたガス排出ライン16とを備える。
【0030】
電極1、2および3は、電極1と電極3との間に電極2が位置するようにそれぞれ隙間を設けて配置されている。電極1、2および3は、電極2の中心線に対して対称形状となるように形成されている。電極1および3は、基板9の被処理面9aに向い合う被覆面25を有し、電極2は、同様に基板9の被処理面9aに向い合う被覆面26を有する。被覆面25および26は、基板9の被処理面9aに平行な平面上に延在している。
【0031】
電極2の頂面側には、電力導入部14が設けられている。電力導入部14は、電力伝送路21を介して高周波電源11に接続されている。電極1および3は、頂面側において接地されている。
【0032】
なお、高周波電源11にかえてパルス電源を設けても良いし、両者をスイッチングまたは重畳しても良い。電力を供給する手段は、周波数および繰り返し周波数に加えて、処理に要求される諸条件、処理ガスの制限、要求される処理能力、および被処理面へのダメージの程度などを考慮して慎重に決定する必要がある。なお、本実施の形態において、高周波電源とは周波数が10(Hz)以上100(GHz)以下のものを指し、パルス電源とは繰り返し周波数が10(MHz)以下、波形の立ち上がり時間が100(μsec)以下、パルス印加時間が100(msec)以下のものを指す。
【0033】
電極1および2の間の隙間と電極2および3の間の隙間とを充填し、被覆面25および26を覆うように誘電体30が設けられている。誘電体30は、基板9に被処理面9aに向い合う対向面30aを有する。対向面30aは、電極1および3と基板9との間に形成された第1の対向面31と、電極2と基板9との間に形成された第2の対向面32とを含む。対向面30aは、基板9の被処理面9aに対して間隔を隔てて平行に位置する平面上に延在している。
【0034】
電極1から3の外部に露出した表面を覆うように導電性材料から形成されたシールドケース8が設けられている。シールドケース8は、接地されている。
【0035】
高周波電源11によって、電極1および2の間ならびに電極2および3の間に電圧を印加すると、基板9の被処理面9aと誘電体30の間の空間であって、第1の対向面31と第2の対向面32との間に位置するプラズマ発生領域6を中心にプラズマが発生する。この際、電極1および2の間ならびに電極2および3の間は誘電体30によって充填されているため、この場所にプラズマが発生することはない。
【0036】
誘電体30は、溶射や陽極酸化などによって、電極1から3の表面に直接形成することもできるが、メンテナンス時の労力およびコストの観点から、電極1から3に脱着可能に設けることが好ましい。電極1および2の間ならびに電極2および3の間における誘電体30の厚みは、高周波電源11の周波数、高周波電源11のかわりに設けたパルス電源の繰り返し周波数、処理ガスの種類、およびプラズマに対する誘電体30の材料特性などを考慮して決定される。一般的には、電極1および2の間ならびに電極2および3の間における誘電体30の厚みは、10mm以下であることが好ましく、特に高周波電源11の周波数が1(MHz)以上となる場合には、2mm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
同様に、被覆面25および26と対向面30aとの間における誘電体30の厚みについて考えてみると、この厚みを出来る限り小さくすることによってプラズマ発生領域6における電界強度を強くすることができる。しかし、この厚みを小さくしすぎた場合、誘電体30の強度を十分に確保できず破損するおそれが生じる。したがって、実用上は、被覆面25および26と対向面30aとの間における誘電体30の厚みは、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、誘電体30を電極1から3に直接形成する場合には、上述の数値範囲より小さい厚みで誘電体30を形成しても良い。
【0038】
図2は、図1中のII−II線上に沿った断面図である。図1および図2を参照して、電極1から3および誘電体30は、基板9の幅よりも20パーセントほど大きい幅で形成されている。電極2の内部には、電極2によって内壁が規定されたガス排出ライン16が形成されている。ガス排出ライン16は、電極2の頂面側から被覆面26まで貫通し、さらに誘電体30の第2の対向面32まで達するように形成されている。ガス排出ライン16は、電極2の内部において、図1の紙面に対して垂直方向に延在するガス溜り部16bと、ガス溜り部16bから2つのルートに枝分かれして第2の対向面32まで達するスリット状流路部16cとを含む。
【0039】
電極1および3の内部には、電極1および3によって内壁が規定されたガス供給ライン15が形成されている。ガス供給ライン15は、電極1および3の頂面側から被覆面25まで貫通し、さらに誘電体30の第1の対向面31まで達するように形成されている。ガス供給ライン15は、電極1および3の内部において、図1の紙面に対して垂直方向に延在するガス溜り部15bと、ガス溜り部16bから第1の対向面31まで達するスリット状流路部15cとを含む。
【0040】
このようにガス供給ライン15およびガス排出ライン16を電極内部に形成することによってプラズマプロセス装置101の小型化を図ることができる。
【0041】
ガス供給ライン15には、電極1および3の頂面側においてガス導入部22が設けられている。ガス導入部22は、図示しないガスボンベまたはガスタンクに接続されている。ガス排出ライン16には、電極2の頂面側においてガス排出部23が設けられている。ガス排出部23は、図示しない吸引ポンプに接続されている。
【0042】
図3は、図1中の矢印IIIに示す方向から見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。図1および図3を参照して、ガス排出ライン16によって、誘電体30の第2の対向面32にはガス排出口5が形成されている。また、ガス供給ライン15によって、誘電体30の第1の対向面31にはガス供給口4が形成されている。ガス排出口5およびガス供給口4は、一方向に延在するスリット形状に形成されている。図2および図3を参照して、ガス排出口5およびガス供給口4は、基板9の幅と同程度かそれ以上の幅で形成されている。このようにガス排出口5およびガス供給口4を形成することによって、処理ガスを被処理面9aの全体に供給するとともに、被処理面9aから処理ガスを確実に回収することができる。
【0043】
図4は、図3中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すためのプラズマプロセス装置の底面図である。図4を参照して、ガス供給口4およびガス排出口5を、一方向に並んで細孔を配置した形状に形成しても良い。この場合、電極1から3には、スリット状流路部15cおよび16cにかえて、ガス供給口4およびガス排出口5が形成された形状と同様の形状を有する細孔が形成される。なお、図3および図4に示す形状を適宜組合せて、ガス供給口4およびガス排出口5を形成しても良い。
【0044】
図1および図2を参照して、電極1から3の内部には、冷媒流路7が形成されている。冷媒流路7によって、電極の頂面側から電極の内部を通り再び頂面側に達する経路が形成されている。冷媒流路7が電極の頂面側に達する位置には、冷媒導入部17および冷媒排出部18が設けられている。冷媒流路7に冷媒を供給するために、冷媒導入部17および冷媒排出部18は図示しないクーラーまたはヒーターに接続されている。冷媒流路7に導入された冷媒は、温度が上昇した電極1から3および誘電体30を冷却する役割を果たす。
【0045】
基板9を搬送するための手段として、搬送用ローラー10が複数設けられている。基板9を搬送する他の手段として、ステージまたは基板ホルダなどを用いても構わない。ステージまたは基板ホルダなどを用いる場合、接地するか、直流または交流のバイアス電圧を印加することによって、イオンを基板9側に引き寄せることが可能となる。これにより、処理の種類によっては、プラズマ処理の高速化および品質向上を図ることが可能となる。また、プラズマ処理中に基板9の搬送を行なわない場合は、局所的な処理も可能である。
【0046】
続いて、図1に示すプラズマプロセス装置を用いて基板9に処理を行なう工程について説明する。
【0047】
図1を参照して、図示しないガスボンベまたはガスタンクから導入された複数種類のガスが、マスフロー、場合によってはミキサーによって混合される。このように混合されたガスが、処理ガスとして高圧な状態でガス導入部22からガス供給ライン15に導入される。処理ガスは、ガス溜り部15bにおいて図1の紙面の垂直方向に行き渡る。そして、処理ガスは、断面積が小さく形成されたスリット状流路部15cを通過することによって流速が加速され、その後、ガス供給口4から基板9の被処理面9aに向けて吹き出される。
【0048】
この際、処理ガスは電極1および3の内部を通過することとなるが、電極1および3の内部には電位差が生じていない。このため、原理的にはガス供給ライン15にプラズマまたは異常放電が発生することはない。しかし、ガス供給ライン15の経路を滑らかに設定した上で、ガス溜り部15b付近の角部に丸みをつけることによって、ガス供給ライン15の内部でプラズマまたは異常放電が発生することを確実に防止することができる。
【0049】
基板9に表面改質のプラズマ処理を行なう場合を想定すると、処理ガスには、たとえば、ヘリウム、アルゴン、酸素および空気の混合ガスが使用される。但し、使用される処理ガスは行なう処理の種類によって異なり、その都度、混合するガスの種類および混合比を適切に選択する必要がある。
【0050】
基板9の被処理面9aに向けて吹き出された処理ガスは、第1の対向面31側からプラズマ発生領域6上を移動し、ガス排出口5が設けられた第2の対向面32側へと達する。その後、処理ガスは、ガス排出口5からガス排出ライン16を通って図示しない吸引ポンプへと回収される。
【0051】
この際、電極2の内部においても電位差は生じていないため、ガス排出ライン16にプラズマまたは異常放電が発生することはない。また、ガス供給ライン15と同様にガス排出ライン16においても、経路を滑らかに設定した上で、ガス溜り部16b付近の角部に丸みをつけることが好ましい。
【0052】
一方、高周波電源11から出力された高周波電力は、電力伝送路21および電力導入部14を介して電極2に印加される。高周波電力が印加された電極2と接地された電極1および3との間で電界が形成される。その電界は、基板9の被処理面9aと誘電体30の間の空間であって、第1の対向面31と第2の対向面32との間に位置するプラズマ発生領域6において最も強くなる。これにより、基板9の被処理面9a上を移動中の処理ガスは、プラズマ発生領域6を中心にした位置においてプラズマ化される。
【0053】
プラズマは、搬送用ローラー10によって搬送されてきた基板9の被処理面9aに接触する。そして、活性種による反応促進効果またはイオンによる物理的エッチング効果によって、表面改質、洗浄、加工または成膜などのプラズマ処理が基板9に行なわれる。なお、プラズマを被処理面9aに接触させない場合であっても、拡散してきた活性種またはイオンによってプラズマ処理を行なうことができる。しかし、プラズマを被処理面9aに接触させた場合、被処理面9aとプラズマとの境界にシース(空間電荷層)を形成することができる。これにより、プラズマ処理をさらに高速に行なうことができる。
【0054】
一般的にプラズマ処理においては、基板9の被処理面9aへの物理的ダメージまたはチャージアップダメージなどが懸念される。しかし、本実施の形態におけるプラズマプロセス装置101の場合、電極1および3の被覆面25と電極2の被覆面26とが被処理面9aに平行な平面上に延在している。このため、電極1および2の間ならびに電極2および3の間に形成される電気力線が、被処理面9a上で被処理面9aに平行に延びる。
【0055】
このため、電気力線に沿って加速するイオンまたは電子が被処理面9aに向かうことがない。これにより、被処理面9aに対するイオンまたは電子のアタックがソフトになり、チャージアップダメージが生じにくくなる。また、処理速度を犠牲にしてもさらにダメージの少ない処理を行ないたい場合には、プラズマを被処理面9aに接触させないで処理を行なえば良い。
【0056】
このように行なうプラズマ処理において、プラズマを安定して発生させること、および処理ガスの利用効率を上げることは、処理能力の向上およびランニングコストの低減を図る上で重要である。したがって、プラズマ発生領域6に効率良く処理ガスを供給し、プラズマ発生領域6から効率良く処理ガスを排出するために、処理ガスの流量および流速を適切に制御することが必要となる。
【0057】
図5は、図1中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。図5を参照して、電極1および2の間に位置するプラズマ発生領域6が示されている。図5では、誘電体30が、対向面30aにおいて、第1の対向面31側に端部30bを有し、第2の対向面32側に端部30cを有する場合を想定している。また、端部30bからガス供給口4までの距離をL1、ガス供給口4からガス排出口5までの距離をL2、ガス排出口5から端部30cまでの距離をL3、対向面30aから被処理面9aまでの距離をdとする。
【0058】
ガス供給口4から被処理面9aに向けて供給された処理ガスは、端部30bが位置する方向とプラズマ発生領域6が位置する方向とに分かれて移動する。より多くの処理ガスをプラズマ発生領域6に向かわせるとともに、さらに処理ガスを効率良くガス排出口5から回収するためには、処理ガスが被処理面9a上において通過する空間の断面積Sおよび距離Lの決め方が重要となる。大気圧下における処理ガスの流れは粘性流と考えられるので、これらのパラメータと、処理ガスの流れやすさの指標であるコンダクタンスUとは、(1)式に表わす関係を有する。但し、図5の紙面に垂直方向における空間の長さは無限長であるものとする。
【0059】
U=A・S2/L (1)
(1)式中のAは、処理ガスの粘性係数および圧力により決まる定数である。
【0060】
対向面30aから被処理面9aまでの距離dはどの位置においても一定であるため、コンダクタンスUを決定する要因が距離Lであることが(1)式から分かる。
【0061】
より多くの処理ガスをプラズマ発生領域6に供給するためには、距離L2に対して距離L1を大きくする必要がある。この際、電極1のサイズが必要以上に大きくならないよう考慮しなければならない。具体的には、距離L1およびL2が、4≦L1/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。また、さらに効率良く処理ガスをプラズマ発生領域6に供給するためには、距離L1およびL2が、10≦L1/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。
【0062】
また、処理ガスを効率良くガス排出口5から回収するためには、距離L2に対して距離L3を大きくする必要がある。この際においても、電極2のサイズが必要以上に大きくならないよう考慮しなければならない。具体的には、距離L2およびL3が、4≦L3/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。また、処理ガスをさらに効率良くガス排出口5から回収するためには、距離L2およびL3が、10≦L3/L2≦1000の関係を満たすことが好ましい。
【0063】
図1を参照して、本実施の形態では、1箇所のプラズマ発生領域6に対してガス供給口4およびガス排出口5をそれぞれ設けている。また、ガス供給口4およびガス排出口5は、プラズマ発生領域6の近傍に設けられている。このため、より多くの処理ガスをプラズマ発生領域6に向かわせるとともに、処理ガスを効率良くガス排出口5から回収することができる。
【0064】
また、ガス排出ライン16によって排出するガスの総流量は、ガス供給ライン15によって基板9の被処理面9aに供給する処理ガスの総流量以上であることが好ましい。この場合、ガス排出ライン16から、被処理面9a上に供給した処理ガスに加えて被処理面9a周りの大気も排出することとなる。これにより、対向面30aと被処理面9aとの隙間から処理ガスが漏れ出すことを防止できる。
【0065】
なお、プラズマ発生領域6を通過する処理ガスの流速と、印加する高周波電力の周波数との間には密接な関係がある。たとえば、高周波電力の周波数が小さい場合、処理ガスの流速が速すぎると、十分なプラズマ励起が行なわれない。また逆に流速が遅すぎると、誘電体の冷却効果が不十分となり、プラズマが不安定になったりアーク放電に移行したりするおそれが生じる。
【0066】
この発明の実施の形態1に従ったプラズマプロセス装置101は、大気圧下でプラズマを発生させ、被処理物としての基板9を処理するプラズマプロセス装置である。プラズマプロセス装置101は、基板9の表面としての被処理面9aに向い合う被覆面25および26を有し、互いに隣り合う第1および第2の電極としての電極1および2と、電極1と電極2との間を充填し、かつ被覆面25および26を覆うように設けられる誘電体30とを備える。誘電体30は、基板9と電極1との間で基板9の被処理面9aと間隔を隔てて位置決めされる第1の対向面31と、基板9と電極2との間で基板9の被処理面9aと間隔を隔てて位置決めされる第2の対向面32とを有する。プラズマプロセス装置101は、第1の対向面31に設けられる供給口としてのガス供給口4を有し、ガス供給口4を介して基板9の被処理面9aに処理ガスを供給するガス供給手段としてのガス供給ライン15と、第2の対向面32に設けられる排出口としてのガス排出口5を有し、ガス排出口5を介して基板9の被処理面9aに供給された処理ガスを排出するガス排出手段としてのガス排出ライン16とをさらに備える。
【0067】
ガス供給ライン15は、電極1の内部に設けられており、ガス排出ライン16は、電極2の内部に設けられている。電極1および2の各々が有する被覆面25および26は、基板9の被処理面9aに平行な平面上において延在している。電極1および2の間に電圧を印加した場合に、電極1および2の間を結ぶ電気力線は、基板9の被処理面9a上において被処理面9aにほぼ平行に延びている。
【0068】
ガス供給口4およびガス排出口5は、第1の対向面31と第2の対向面32との間に位置する領域としてのプラズマ発生領域6の近傍に設けられている。ガス供給口4およびガス排出口5は、一方向に延在するスリット形状および一方向に複数の孔が並んで配置された形状のいずれかに形成されている。
【0069】
ガス供給口4およびガス排出口5は、ガス排出口5を介して排出されるガスの総流量が、ガス供給口4を介して供給される処理ガスの総流量以上となるように形成されている。
【0070】
プラズマプロセス装置101は、外部に露出した電極1および2の表面を覆うように設けられ、接地されている導電性カバーとしてのシールドケース8をさらに備える。プラズマプロセス装置101は、電極2に隣り合い、電極2に対して電極1と反対側に位置決めされた第3の電極としての電極3をさらに備える。プラズマプロセス装置101は、電極2の中心線に対して対称形状となるように形成されている。
【0071】
このように構成されたプラズマプロセス装置101によれば、処理対象である被処理面9aの近くに位置するプラズマ発生領域6を中心にプラズマを発生させることができる。これにより、基板9を効率良くプラズマ処理することができる。また、プラズマプロセス装置101は、電力が導入される電極2の両側を接地された電極1および3で挟む対称構造となっている。これにより、電極1から3の外部に形成される電界が互いに打ち消し合うため、電磁波の漏洩が少ないプラズマプロセス装置を実現することができる。また、電極1から3の周りには、接地されたシールドケース8が設けられているため、電磁波の漏洩をさらに防止することができる。
【0072】
(実施の形態2)
図6は、この発明の実施の形態2におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図7は、図6中のVII−VII線上に沿った断面図である。図6および図7を参照して、プラズマプロセス装置102は、実施の形態1におけるプラズマプロセス装置101と基本的に同様の構造を備える。以下において、プラズマプロセス装置101と重複する構造の説明は省略する。
【0073】
誘電体30には、第2の対向面32に位置して掘り込み部41が設けられている。基板9の被処理面9aから掘り込み部41の底面に位置する第2の対向面32までの距離は、被処理面9aから第1の対向面31までの距離よりも大きい。ガス排出ライン16は、掘り込み部41の底面に位置する第2の対向面32に達している。
【0074】
図8は、図6中の矢印VIII−VIIIから見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。図8を参照して、ガス排出口5およびガス供給口4が一方向に延在するスリット形状に形成されている。掘り込み部41は、ガス排出口5およびガス供給口4が延在する方向に沿って形成されている。
【0075】
図9は、図8中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すプラズマプロセス装置の底面図である。図9を参照して、実施の形態1と同様に、ガス供給口4およびガス排出口5を、一方向に並んで細孔を配置した形状に形成しても良い。
【0076】
図10は、図6中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。図10は、実施の形態1における図5に対応する図である。図10を参照して、図6において規定した距離L1、L2、L3およびdに加えて、掘り込み部41の底面に位置する第2の対向面32から被処理面9aまでの距離をDとする。
【0077】
実施の形態1において説明した(1)式から明らかなように、対向面30aから被処理面9aまでの距離を大きくすることによって、処理ガスのコンダクタンスUを増大させることができる。この際、コンダクタンスUを増大させる効果は、距離Lを大きくする場合よりも顕著に現われる。
【0078】
したがって、第2の対向面32から被処理面9aまでの距離がdよりも大きいDとなる掘り込み部41を形成することによって、ガス排出口5側における処理ガスのコンダクタンスUを大幅に増大させることができる。
【0079】
図11は、処理ガスが被処理面上を移動する様子を示す断面図である。図11を参照して、掘り込み部41によってガス排出口5側における処理ガスのコンダクタンスUが増大するため、ガス供給口4から被処理面9a上に供給された処理ガスは、効率良くプラズマ発生領域6へと導かれる。処理ガスは、矢印51に示す方向に沿って掘り込み部41の内部を進み、その後ガス排出口5から回収される。
【0080】
この発明の実施の形態2に従ったプラズマプロセス装置102では、誘電体30は、基板9の被処理面9aから第2の対向面32までの距離が基板9の被処理面9aから第1の対向面31までの距離よりも大きくなるように形成された凹部としての掘り込み部41を含む。
【0081】
このように構成されたプラズマプロセス装置102によれば、実施の形態1に記載に効果を奏することができる。加えて、被処理面9a上に供給された処理ガスをより積極的にプラズマ発生領域6に導くことができる。これにより、プラズマ発生領域6においてより多くの処理ガスをプラズマ化させて、プラズマ処理の処理効率を向上させることができる。
【0082】
(実施の形態3)
図12は、この発明の実施の形態3におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図12を参照して、プラズマプロセス装置103は、実施の形態2におけるプラズマプロセス装置102と基本的に同様の構造を備える。以下において、プラズマプロセス装置102と重複する構造の説明は省略する。
【0083】
電極1は、ガス供給ライン15に対して電極2側に位置する部分1mと、ガス供給ライン15に対して電極2と反対側に位置する部分1nとによって構成されている。電極3は、ガス供給ライン15に対して電極2側に位置する部分3mと、ガス供給ライン15に対して電極2と反対側に位置する部分3nとによって構成されている。部分1mおよび3mは、導電性材料によって形成されており、部分1nおよび3nは、誘電性材料によって形成されている。これにより、ガス供給ライン15の一部は、誘電体である部分1nおよび3nによって規定されている。
【0084】
電極2は、電極1および3に隣り合う部分2mと、ガス排出ライン16のガス溜り部16bおよびスリット状流路部16cに囲まれる部分2nとによって構成されている。部分2mは、導電性材料によって形成されており、部分2nは、誘電性材料によって形成されている。これにより、ガス排出ライン16の一部は、誘電体である部分2nによって規定されている。
【0085】
このように構成されたプラズマプロセス装置103によれば、実施の形態2に記載の効果を奏することができる。加えて、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16において、プラズマまたは異常放電が発生することをより確実に防止することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図13は、この発明の実施の形態4におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図13を参照して、プラズマプロセス装置104は、実施の形態2におけるプラズマプロセス装置102と基本的に同様の構造を備える。以下において、プラズマプロセス装置102と重複する構造の説明は省略する。
【0087】
ガス供給ライン15およびガス排出ライン16を規定する電極1から3の表面には、誘電性材料から形成された内壁71が設けられている。したがって、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16は、電極1から3の内部において完全に誘電体によって覆われている。
【0088】
この発明の実施の形態4に従ったプラズマプロセス装置104では、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16の周りには、誘電体材料から形成された内壁71が設けられている。
【0089】
このように構成されたプラズマプロセス装置104によれば、実施の形態2に記載の効果を奏することができる。加えて、ガス供給ライン15およびガス排出ライン16において、プラズマまたは異常放電が発生することをより確実に防止することができる。
【0090】
(実施の形態5)
図14は、この発明の実施の形態5におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。図14を参照して、プラズマプロセス装置105は、実施の形態1におけるプラズマプロセス装置101を複数備える。基板9の被処理面9a上には、広い面積に渡って誘電体30の対向面30aが延在している。
【0091】
電力は一台の電源から供給してもよいし、各プラズマプロセス装置101ごとに供給しても構わない。各プラズマプロセス装置101ごとに電力を供給した場合、プラズマ処理の制御を各プラズマプロセス装置101ごとに行なえるという利点がある。また、プラズマプロセス装置101の各々に供給する処理ガスの組成を変えることによって、各プラズマプロセス装置101で種類の異なる処理を行なうことができる。
【0092】
このように構成されたプラズマプロセス装置105によれば、プラズマが発生する領域の実効面積を増加させることによって、プラズマ処理の処理速度を向上させることができる。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に従えば、安全性に優れるとともに、被処理物の表面を所望の状態で効率良く処理することができるプラズマプロセス装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図2】図1中のII−II線上に沿った断面図である。
【図3】図1中の矢印IIIに示す方向から見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。
【図4】図3中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すためのプラズマプロセス装置の底面図である。
【図5】図1中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図7】図6中のVII−VII線上に沿った断面図である。
【図8】図6中の矢印VIII−VIIIから見たプラズマプロセス装置を示す底面図である。
【図9】図8中のガス供給口およびガス排出口の変形例を示すプラズマプロセス装置の底面図である。
【図10】図6中のプラズマ発生領域の近傍を模式的に拡大した断面図である。
【図11】処理ガスが被処理面上を移動する様子を示す断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図13】この発明の実施の形態4におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図14】この発明の実施の形態5におけるプラズマプロセス装置を示す断面図である。
【図15】特許文献1に開示されている常圧プラズマ処理装置を示す断面図である。
【図16】図15中に示す常圧プラズマ処理装置の底面図である。
【符号の説明】
1,2,3 電極、1m,1n,2m,2n,3m,3n 部分、24 ガス供給口、5 ガス排出口、6 プラズマ発生領域、8 シールドケース、9 基板、9a 被処理面、15 ガス供給ライン、16 ガス排出ライン、25,26 被覆面、30 誘電体、31,32 対向面、41 掘り込み部、71 内壁、101,102,103,104,105 プラズマプロセス装置。
Claims (12)
- 大気圧下でプラズマを発生させ、被処理物を処理するプラズマプロセス装置であって、
被処理物の表面に向い合う被覆面を有し、互いに隣り合う第1および第2の電極と、
被処理物と前記第1の電極との間で被処理物の表面と間隔を隔てて位置決めされる第1の対向面と、被処理物と前記第2の電極との間で被処理物の表面と間隔を隔てて位置決めされる第2の対向面とを有し、前記第1の電極と前記第2の電極との間を充填し、かつ前記被覆面を覆うように設けられる誘電体と、
前記第1の対向面に設けられる供給口を有し、前記供給口を介して被処理物の表面に処理ガスを供給するガス供給手段と、
前記第2の対向面に設けられる排出口を有し、前記排出口を介して被処理物の表面に供給された処理ガスを排出するガス排出手段とを備える、プラズマプロセス装置。 - 前記ガス供給手段は、前記第1の電極の内部に設けられており、前記ガス排出手段は、前記第2の電極の内部に設けられている、請求項1に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記ガス供給手段および前記ガス排出手段の周りには、誘電体材料から形成された内壁が設けられている、請求項2に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記第1および第2の電極の各々が有する被覆面は、被処理物の表面に平行な平面上において延在している、請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記第1および第2の電極間に電圧を印加した場合に、前記第1および第2の電極間を結ぶ電気力線は、被処理物の表面上においてその表面にほぼ平行に延びている、請求項1から4のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記供給口および前記排出口は、前記第1の対向面と前記第2の対向面との間に位置する領域の近傍に設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記誘電体は、被処理物の表面から前記第2の対向面までの距離が被処理物の表面から前記第1の対向面までの距離よりも大きくなるように形成された凹部を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記供給口および前記排出口は、一方向に延在するスリット形状および一方向に複数の孔が並んで配置された形状のいずれかに形成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記ガス供給手段および前記ガス排出手段は、前記排出口を介して排出されるガスの総流量が、前記供給口を介して供給される処理ガスの総流量以上となるように形成されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 被処理物の表面に向い合う前記誘電体の部分において、前記供給口から最短距離に位置する前記誘電体の端部と前記供給口との間の距離をL1、前記供給口と前記排出口との間の距離をL2、前記排出口と前記排出口から最短距離に位置する前記誘電体の端部との間の距離をL3とする場合、L1、L2およびL3は、4≦L1/L2≦1000および4≦L3/L2≦1000の関係を満たす、請求項1から9のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 外部に露出した前記第1および第2の電極の表面を覆うように設けられ、接地されている導電性カバーをさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
- 前記第2の電極に隣り合い、前記第2の電極に対して前記第1の電極と反対側に位置決めされた第3の電極をさらに備え、前記第2の電極の中心線に対して対称形状となるように形成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載のプラズマプロセス装置。
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JP2007227296A (ja) * | 2006-02-27 | 2007-09-06 | Noritsu Koki Co Ltd | ワーク処理装置 |
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