以下、本発明の実施の形態に係る積層型フィルムコンデンサを、図面を参照して説明する。なお、理解を容易にするため、直交座標系のx、y、及びz軸を各図に示すように設定し、適宜参照する。z方向は積層型フィルムコンデンサを構成する各層の積層方向であり、y方向は、後述する内部電極を外部に引き出す方向である。
積層型フィルムコンデンサ100は、図1の断面図(図2および図3に示すA−Aの断面図)に示すように、第1のフィルム20(図1の20a、20bを区別しない時の番号である)と、第2のフィルム21と、第1のメタリコン部(第1の電極)14と、第2のメタリコン部(第2の電極)15とを備える。第1のフィルム20(図1の20a、20bを区別しない時の番号である)と、第2のフィルム21とは交互に、図示するz方向に積層され、その上層に保護用の層として絶縁物である誘電体フィルム11の層を一層積層して積層体が形成される。第1のメタリコン部14は、積層体のy方向の一方の端面に形成され、第2のメタリコン部15は、積層体のy方向の他方の端面に形成される。積層型フィルムコンデンサ100の使用時には、第1のメタリコン部14及び第2のメタリコン部15間には電圧が印加される。この例では偶数層の6層分が第1のフィルム20、奇数層の6層分が第2のフィルム21で構成される。なお、図1では層の番号は最下端の層を第1層目とし、上部の層に行くに従って層の番号を1ずつ増やしている。
第1のフィルム20は第1のフィルム20aと20bの2種類を含む。第1のフィルム20aは、図2(a)に示すように、誘電体フィルム11と、その表面に形成された金属膜である第1の内部電極12aとを備える。第1のフィルム20bは、図2(b)に示すように、誘電体フィルム11と、その表面に形成された金属膜である第1の内部電極12bとを備える。
第2のフィルム21は、図3(a)に示すように、誘電体フィルム11と、その表面に形成された金属膜である第2の内部電極13とを備える。
誘電体フィルム11は、絶縁性の誘電体で形成される。材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、マイカ、ポリスチレン(PS)、又はポリカーボネート(PC)などから選択される。各層の誘電体フィルム11は、互いに厚さを含めて同一サイズの矩形状に形成されている。誘電体フィルム11の厚さは通常数μm程度である。
第1の内部電極12a,12bは、誘電体フィルム11の一主面(図では上面)に形成された金属膜から構成される。この金属膜は、例えばAl、Cu、Ag等の金属の蒸着膜で形成される。厚さは数十nmである。第1の内部電極12a,12bは、図2に示すように、ヒューズ部16を含む。このヒューズ部16を機能させるために必要な抵抗値とするために、蒸着膜のような薄膜を金属膜として使用する。
図1に示すように、第1の内部電極12aは、下層部(第2層、第4層)と上層部(第10層、第12層)の誘電体フィルム11の表面に形成され、第1の内部電極12bは、中層部(第6層、第8層)の誘電体フィルム11の表面に形成されている。
中層部は、積層型フィルムコンデンサ100の積層方向の中央の層を含むあらかじめ定められた第1の層数の連続する層で構成される。上層部は、積層型フィルムコンデンサ100の積層方向の上端の層を含むあらかじめ定められた第2の層数の連続する層で構成される。下層部は、積層型フィルムコンデンサ100の積層方向の下端の層を含むあらかじめ定められた第3の層数の連続する層で構成される。
第2の内部電極13は、誘電体フィルム11の一主面(図では上面)に形成された金属膜から構成される。この金属膜は、Al、Cu、Ag等の金属の箔又は蒸着膜等で形成される。厚さは、箔の場合は数μm、蒸着膜の場合は数十nmである。
第1の内部電極12aと第2の内部電極13、及び第1の内部電極12bと第2の内部電極13とは、それぞれ誘電体フィルム11を介して互いに対向して、コンデンサの対向電極を構成する。
第1のフィルム20a、20bと第2のフィルム21とは、互いにy方向に長さbだけずれ、且つ、それぞれのx方向の両端部が揃った状態でz方向に積層されている。
第1のメタリコン部14は、第1のフィルム20a、20b及び第2のフィルム21の積層体のy方向の一側面に形成され、第1の内部電極12a、12bのそれぞれに共通に接続された導電性の皮膜である。第1のメタリコン部14は、溶射材と呼ばれる導電性の材料を、加熱の後に第1のフィルム20a、20bのy方向の一側面に吹き付ける処理(メタリコン処理)によって形成される。
第2のメタリコン部15は、第1のフィルム20a、20b、及び第2のフィルム21の積層体のy方向の他側面に形成され、第2の内部電極13のそれぞれに共通に接続された導電性の皮膜である。第2のメタリコン部15は、上述したメタリコン処理によって形成される。
上述の第1のメタリコン部14と第2のメタリコン部15とに、極性の異なる電圧が印加される。
次に、積層型フィルムコンデンサ100を構成する第1のフィルム20a、20b及び第2のフィルム21の詳細を説明する。
第1のフィルム20aは、図2(a)に示すように、矩形状の誘電体フィルム11の表面に、第1の内部電極12aが形成されたものである。
第1の内部電極12aは、容量形成部12a1と、短絡電流が流れることにより溶断するヒューズ部16と、第1のメタリコン部14に接続される引き出し部17と、を備える。
容量形成部12a1も矩形状の金属膜である。容量形成部12a1はヒューズ部16と接続部し、容量形成部12a1は、誘電体フィルム11を介して第1の内部電極13と対向配置されている。
ヒューズ部16は、幅Woの金属膜で構成されている。ヒューズ部16の一端は容量形成部12a1の一辺に接続され、他端は、引き出し部17に接続されている。
引き出し部17は、誘電体フィルム11のy方向の一方の端部から始まる矩形形状を有する。引き出し部17は第1のメタリコン部14と接続される。
ヒューズ部16の幅Woは、図2(a)に示す容量形成部12a1及び引き出し部17の幅Waよりも狭い。短絡電流がヒューズ部16を経由して引き出し部17に流れると、ヒューズ部16は発熱し、溶断する。これにより、容量形成部12a1が、引き出し部17から切り離され、短絡電流が遮断される。
第1のフィルム20bは、図2(b)に示すように、矩形状の誘電体フィルム11の表面に、第1の内部電極12bが形成されたものである。
第1の内部電極12bは、2つの容量形成部12b1と、2つの容量形成部12b1のそれぞれに接続されて短絡電流が流れることにより溶断する2つのヒューズ部16と、2つのヒューズ部16に接続され、且つ第1のメタリコン部14に接続される引き出し部17と、を備える。
容量形成部12b1は矩形状の金属膜であり、容量形成部12a1を、ギャップ部12b2で2つに分割したものに対応する。2つの容量形成部12b1の面積の合計は容量形成部12a1の面積よりもギャップ部12b2の面積分だけ小さい。2つの容量形成部12b1はそれぞれ、誘電体フィルム11を介して第1の内部電極13と対向配置されている。
第2のフィルム21は、図3(a)に示すように、矩形状の誘電体フィルム11に、第2の内部電極13が形成されたものである。
第2の内部電極13は、矩形状の金属膜である。y方向の長さLcは第1の内部電極20aの容量形成部の長さLaとヒューズ部16の長さL0と引き出し部17のy方向の長さLbの合計に等しい。この金属膜は、誘電体フィルム11上の、容量形成部12a1又は12b1の引き出し部17の配置されている側とは反対側のy方向の端部から形成されており、このy方向端部で第2のメタリコン部15と接続される。
図3(a)(b)には、第2のフィルム21の第2の内部電極13が第1のフィルム20aに対してy方向にbだけずれて描かれている。このbは、図1に示すbに対応し、第1のフィルム20aと第2のフィルム21とが互いにy方向に長さbだけずらして積層されることを示す。第2のフィルム21と第1のフィルム20bとの積層時の配置関係も図3(b)の第1のフィルム20bを第1のフィルム20aに置き換えたものになる。積層状態で、第2の内部電極13はこのbに対応する部分が第1のフィルム20a、又は20bからy方向に露出する。第2のメタリコン部15は、図1に示すように、この露出部分に接続される。一方、第1のフィルム20a、又は20bのそれぞれの引き出し部17は、積層状態で、第2の内部電極13からy方向に露出する。第1のメタリコン部14は、図1に示すように、この露出部分に接続される。
次に、上記構成を有する積層型フィルムコンデンサ100の製造方法を説明する。
まず、誘電体フィルム11を準備し、その上に、第1の内部電極12aと第1の内部電極12bと第2の内部電極13とに対応するパターンの金属膜を、蒸着等により形成する。
次に、金属膜が形成された誘電体フィルム11を切断し、図2(a)に示す第1の内部電極12aを有する第1のフィルム20a、図2(b)に示す第1の内部電極12bを有する第1のフィルム20b、図3(a)に示す第2の内部電極13を有する第2のフィルム21を、複数枚生成する。
第1のフィルム20aと第1のフィルム20bと第2のフィルム21とは同じ大きさである。
次に、第1層目から第5層目までは、第1のフィルム20aと第2のフィルム21とを、交互にz方向に積層し、第6層目から第9層目までは、第1のフィルム20bと第2のフィルム21とを、交互にz方向に積層し、第9層目から第12層目までは、第1のフィルム20aと第2のフィルム21とを、交互にz方向に積層する。
このとき、第1のフィルム20a、20bと第2のフィルム21とは、x方向のそれぞれの両端を揃え、図1及び図3に示すように、y方向については互いに長さbだけずらして積層する。また、最上層には内部電極の絶縁および保護のために、フィルム20a,20b,21と同じ大きさの誘電体フィルム11を積層する。その後、これらを圧着処理して積層体を形成する。
次に、積層体のY方向の両側面に、メタリコン処理によって溶射材を吹き付け、第1のメタリコン部14と第2のメタリコン部15とを形成する。第1のフィルム20a、20bのそれぞれの引き出し部17は積層体のY方向の一側面に形成された第1のメタリコン部14と接続される。第2の内部電極13は積層体のY方向の他の側面に形成された第2のメタリコン部15と接続される。
第1のメタリコン部14は第1の内部電極12a、12bを外部に引き出す第1の電極として機能し、第2のメタリコン部15は第2の内部電極13を外部に引き出す第2の電極として機能する。このようにして、積層型フィルムコンデンサ100が製造される。
次にこの積層型フィルムコンデンサ100の静電容量について説明する。使用時には第1のメタリコン部14と第2のメタリコン部15との間に電圧が印加される。この電圧印加により第1の内部電極12aと第2の内部電極13との間、及び第1の内部電極12bと第2の内部電極13との間に電圧が印加される。静電容量は、誘電体フィルム11を介して対向する容量形成部12a1と第2の内部電極13、及び2つの容量形成部12b1と、第2の内部電極13とで、それぞれの対向する面積に比例して形成される。
2つの容量形成部12b1はそれぞれ対向する第2の内部電極13との間で静電容量を形成する。2つの容量形成部12b1のそれぞれが形成する静電容量の合計は、容量形成部12a1が対向する第2の内部電極13との間で形成する静電容量よりも小さい。その理由は次の通りである。分割により、2つの容量形成部12b1の間にギャップ部12b2が配置される。ギャップ部12b2により、2つの容量形成部12b1の面積の合計が、容量形成部12a1の面積に対して、そのギャップ部12b2の面積分減少する。この面積の減少により静電容量が減少する。内部電極の容量形成部の分割数を増加すると分割に伴い生じるギャップ部の数が増加するため、ギャップ部の合計面積も増加する。従って、分割数が増加すると静電容量も低減する。
誘電体フィルム11を介して、容量形成部12a1とその上下いずれかの層の第2の内部電極13との間で短絡が発生すると、容量形成部12a1に短絡電流が流れる。この短絡電流はヒューズ部16、引き出し部17、第1のメタリコン部14を経由して外部電極に流れる。その結果、容量形成部12a1に接続されたヒューズ部16は、発熱し溶断する。ヒューズ部16が溶断すると、短絡の発生した容量形成部12a1は第1のメタリコン部14から分離される。従って、積層型フィルムコンデンサ100は短絡後も使用可能となる。短絡後の静電容量は、分離された容量形成部12a1の面積に比例する分減少する。
2つの容量形成部12b1の一方とその上下いずれかの層の第2の内部電極13との間で短絡が発生した場合も同様である。このとき、短絡後の静電容量は分離された容量形成部12b1の面積に比例する分減少する。
従って、2つに分割された容量形成部12b1が形成された中層部で短絡が発生したときの静電容量の低下率は、容量形成部12a1が形成された下層部、上層部で短絡が発生したときの静電容量の低下率よりも小さい。
一方、下層部、上層部では容量形成部12a1は分割されていないので、中層部のようにギャップ部12b2の存在により静電容量が低減するということはない。
次に、下層部、上層部と中層部とで容量形成部の分割数を変える理由について説明する。積層型フィルムコンデンサ100では、積層方向に温度分布ができる。各層の第1の内部電極12a、12b、第2の内部電極13、及び第1のメタリコン部14、及び第2のメタリコン部15では、リップル電流等により使用時に熱が発生する。この熱の発生により積層方向に温度分布が生じ、積層方向の中央の層で最も温度が高く、上端、下端の層に近づくほどその層の温度は低減する。
各層を構成する誘電体フィルム11の絶縁性は温度が高くなるほど低下する。絶縁性が低下すると短絡の発生率は増加する。従って層の温度はその層での短絡の発生率の指標となる。
容量形成部の分割数は、使用時の最高温度に基づいて決定される。しかし、下層部、及び上層部の各層の温度は中央の層の温度よりも低い。そのため、下層部及び上層部の各層での短絡の発生率は中央部の層に比べて低下する。そこで、下層部と上層部では容量形成部12a1の分割数を中層部の分割数2より小さくして(図1−3の例では分割せずに)静電容量の増加を図ることを優先する。
次に、下層部、中層部、上層部の区分位置について説明する。以下、下層部内の中層部との境界に位置する層を下境界層、上層部内の中層部との境界に位置する層を上境界層と呼ぶことにする。
積層方向の温度分布は、通常、積層方向の中央部から上下の積層方向に対して略対称な分布となる。下境界層と上境界層は、両層のそれぞれの温度が実質的に同じになるような位置、すなわち、積層方向の中央部の層からほぼ同じ層数の位置に設定される。更に、温度分布の最高温度での短絡の発生率に対して、上下境界層の温度での短絡の発生率があらかじめ設定した程度(例えば1/10)に小さくなるような温度の層に上下境界層の位置が設定される。短絡の発生率は、その層の温度に対する誘電体フィルム11の、例えば絶縁性に基づいて判定される。
上記のように構成された積層型フィルムコンデンサ100では、全層に対して容量形成部の分割数を一定にした従来の積層型フィルムコンデンサと比較すると、下層部、上層部で短絡が発生した場合の静電容量の低下率は大きい。しかし、下層部、上層部での短絡の発生率は中層部での短絡の発生率よりも小さい(例えば1/10以下である)ため、積層型フィルムコンデンサ100として、短絡により静電容量の低下率が大きくなる可能性は十分に低い。一方、全層の容量形成部の分割数を中層部に合わせた場合と比べて、定格静電容量は大きくなる。すなわち、実施の形態に係る積層型フィルムコンデンサ11では、全層の容量形成部の分割数を中層部に合わせた場合と比べて、短絡時の静電容量の低下率を実質的には維持しつつ、定格静電容量を大きくすることができる。または、実施の形態に係る積層型フィルムコンデンサ11では、全層の容量形成部の分割数を中層部に合わせた場合と比べて、短絡時の静電容量の低下率を実質的には維持しつつ、定格静電容量をより小さいサイズで実現することができる。すなわち積層型フィルムコンデンサ100の小型化が可能である。
なお、図1、2に示す例では中層部で分割数2、下層部、上層部で分割数1としたが、これに限定されない。中層部の分割数が2よりも大きく、下層部、上層部の分割数は中層部の分割数よりも小さいという構成にしても良い。更に、積層数は図1に示す13層に限定されず、任意である。この場合も短絡発生後の静電容量の低下率は上記説明と同様に実質的には維持されうる。定格静電容量は、最高温度で容量取得部の分割数を決定し、その分割数に従って全層の容量形成部を分割した場合に比べて定格静電容量を増加させることができる。換言すれば、より小型の積層型フィルムコンデンサ100で所定の定格静電容量を実現することができる。
図2では下層部、上層部の容量形成部12a1、及び中層部の容量形成部12b1の形状はXY軸に平行な線で形成される矩形とした。しかし、容量形成部12a1、12b1の形状はこのような矩形に限定されず、任意の形状でもよい。
図4(a)(b)は、図2の(a)(b)に示す容量形成部12a1、12b1とは異なるパターンの容量形成部12a1、12b1を示す。容量形成部12a1、12b1はいずれも矩形であるが、図2の場合と異なる向きに配列されている。図4(a)(b)にそれぞれ示された容量形成部12a1、12b1は分割された後のものである。容量形成部12a1は容量形成部12b1よりも分割数が少ない場合に対応している。各容量形成部12a1,12b1の各辺は、誘電体フィルム11の辺に対して、斜めに形成されており、ヒューズ部16で互いに接続されている。ヒューズ部16の近傍には分割に伴うギャップ部12a2、12b2が存在する。
ヒューズ部16をこのように配置することにより、ある箇所で短絡が生じてその容量形成部に接続されたヒューズ部16が溶断し、その容量形成部が引き出し部17から切り離されても、短絡の発生していない他の容量形成部は引き出し部17との接続が維持される。
図4に示す例では同じ層であってもその表面の位置により容量形成部12a1の形状と面積が異なることがある。容量形成部12b1の形状と面積も同様である。このような場合、各層の容量形成部12a1の面積の平均値と容量形成部12b1の面積の平均値とを比べると、分割数が大きくなるほどこの面積の平均値は小さくなる。従って、平均的には、分割数が大きくなるに従って短絡時の静電容量の平均的な低下率は小さくなる。
また、ギャップ部12a2の面積の合計はギャップ部12b2の面積の合計よりも大きい。そのため、容量形成部12a1の面積の合計は容量形成部12b1の面積の合計よりも大きい。従って、分割数を小さくする層を増やすことにより静電容量は増加する。
従って、このような積層型フィルムコンデンサ100においても、全層の容量形成部の分割数を中層部に合わせた場合と比べて、短絡時の静電容量の低下率を実質的には維持しつつ、定格静電容量を大きくすることができる。
図5は、上層部、下層部の容量形成部12a1の形状と中層部の容量形成部12b1の形状とが異なる例である。この場合も、上層部、下層部の分割数は中層部の分割数よりも小さい。なお、容量形成部12b1は同じ層内の位置によりその形状、面積が異なるため、容量形成部12b1の面積は各容量形成部12b1の面積の平均値とする。容量形成部12a1の面積も同様に面積の平均値とする。このとき、容量形成部12a1の面積の平均値は、中層部の容量形成部12b1の面積の平均値よりも大きい。従って、このような層を備える積層型フィルムコンデンサ100であっても、これまでの説明と同様な効果を奏することができる。
図1−3の例では、積層方向に領域を3分割し、下層部、中層部、上層部とした。しかし、積層方向の領域分割は3分割に限定されない。積層総数の範囲内で任意に設定できる。
例えば積層方向に領域を5分割する場合について説明する。分割された領域を、下方から第1の下層部、第2の下層部、中層部、第2の上層部、第1の上層部とする。
5つの領域の区分位置と各領域の容量形成部の分割数は、これまでの説明と同様に、積層方向の温度分布度に基づいて設定される。温度分布の最高温度と最低温度にそれぞれ対応する短絡の発生率が、最高温度を1としたとき、最低温度で、例えば1/20になったとする。このときの短絡発生率を、例えば1、1/4、1/10に区分する。
短絡発生率が1/10となる温度の層を確認する。この層は2箇所ある。積層方向の下端側の層をL1層目とし、積層方向の上端側の層をU1層目とする。第1の下層部は下端の層からL1層目まで、第1の上層部はU1層目から上端の層までの層でそれぞれ構成される。第1の下層部と第1の上層部における短絡発生率は、最高温度に対する短絡発生率の1/10以下である。
次に、短絡発生率が1/4となる温度の層を確認する。この層も2箇所ある。積層方向の下端側の層をL2層目とし、積層方向の上端側の層をU2層目とする。第2の下層部はL1+1層目からL2層目まで、第1の上層部はU2層目からU1−1層目までの層でそれぞれ構成される。第2の下層部と第2の上層部における短絡発生率は、最高温度に対する短絡発生率の1/4以下である。
中層部は、L2+1層目からU2−1層目までの層で構成される。中層部における短絡発生率は積層方向の最高温度に対する短絡発生率以下である。
それぞれの領域での容量形成部の分割数は、各領域の短絡発生率に基づき設定される。中層部での分割数をNaとすると、第2の下層部と第2の上層部での分割数NbはNaよりも小さく設定される。第1の下層部と第2の上層部での分割数NcはNaよりも更に小さく設定される。
上記例では、第2の下層部と第2の上層部での短絡発生率は最大の短絡発生率の25%以下で、第1の下層部と第1の上層部での短絡発生率は最大の短絡発生率の10%以下である。第1の下層部と第1の上層部でNcをNa/3としたとき、その領域での短絡時の静電容量の低下率は中層部のときの3倍となる。しかし、短絡の発生率は10%以下なので静電容量の低下率の期待値はもともとの1に対して1.3以下になる。第2の下層部と第2の上層部でNbをNa/2とすると、その領域での短絡時の静電容量の低下率は中層部のときの2倍となる。しかし、短絡の発生率は25%以下なので静電容量の低下率の期待値はもともとの1に対して1.5以下になる。従って、トータルした期待値は1.4以下になる。この期待値が別途定める許容範囲内にあれば、短絡時の静電容量の低下率を実質的に維持できていると評価することができる。
一方、容量形成部の分割数を低減することにより、既に説明したように静電容量が増加するという効果が得られる。
本実施の形態に係る積層型フィルムコンデンサでは、積層方向の領域分割数に依らず、短絡時の静電容量の低下率を実質的に維持しつつ、定格静電容量を増加させることができる、又は小型化した積層型フィルムコンデンサで定格静電容量を実現できる。比較対象は使用時の最高温度に基づき内部電極の容量形成部の分割数を設定し、全層にこの分割数を適用する場合である。
図6に、積層型フィルムコンデンサ100を使って形成されたコンデンサモジュール200を示す。図6(a)は、第1の外部電極30と第2の外部電極31とが、積層型フィルムコンデンサ100のそれぞれ第1のメタリコン部14と第2のメタリコン部15(第2のメタリコン部15については図の下面に隠れていて描かれていない)とに接触するように取り付けられた積層型フィルムコンデンサ100の斜視図である。
第1の外部電極30は一方の先端部に第1の外部電極端子30aを備え、第2の外部電極31は一方の先端部に第2の外部電極端子31aを備える。第1の外部電極端子30a及び第2の外部電極端子31aは、それぞれ、バスバーなどへの取り付け穴を有する。第1の外部電極30と第2の外部電極31とは積層型フィルムコンデンサ100に、例えば圧着、又は図示を省略したメッキ部を介して圧着されている。なお、図6(a)で、積層型フィルムコンデンサ100の第1のフィルム、及び第2のフィルムの積層方向は矢印で示す方向である。
C−C断面上に第1のフィルム10の第1の内部電極12bが位置するとして、図6(a)では、C−C断面上に位置する第1の内部電極12bのみを破線で示した。第1の内部電極12bは第1のメタリコン部14と接続され、第2のメタリコン部15とは離れている。図示していないが第1の内部電極12aも同様に第1のメタリコン部14と接続されている。第2の内部電極13は、図示した第1の内部電極12bと平行に誘電体フィルム11を介して積層方向に配置され、第2のメタリコン部15と接続され、第1のメタリコン部14とは離れている(図示されていない)。図6(a)では、このように第1の内部電極2と第2の内部電極3が誘電体フィルム1を介して積層方向に交互に配置されている。
図6(b)は、コンデンサモジュール200の断面図を示す。断面位置は、図6(a)のC−Cに対応する。コンデンサモジュール200は、第1の外部電極30と第2の外部電極31とが取り付けられた積層型フィルムコンデンサ100と、これを収納する容器110と、容器110内を封止する封止材120とを備える。図6(a)で説明したように、C−C断面には第1の内部電極12bが位置しており、第1のメタリコン部14と接続している。なお、図6(b)では、積層型フィルムコンデンサ100、第1の外部電極30、第2の外部電極31及び容器110については見やすくするためにハッチングを付していない。第1のメタリコン部14、第2のメタリコン部15についてはハッチングに代え黒く塗りつぶした。
容器110は、各種樹脂などの電気絶縁材で構成され、第1の外部電極30と第2の外部電極31とが取り付けられた積層型フィルムコンデンサ100を収納するための、取り外し可能な蓋部(図示略)と、第1の外部電極端子30aと第2の外部電極端子31aのそれぞれの先端部を外部に露出させるためのスリット状の穴(図示略)とを備える。
封止材120は、容器110内に充填し、第1の外部電極30と第2の外部電極31とが取り付けられた積層型フィルムコンデンサ100を容器110内で固定する。封止材120は、外部から容器110へ衝撃が加わったときの積層型フィルムコンデンサ100に対する緩衝材としても機能する。
積層型フィルムコンデンサ100をこのようなコンデンサモジュール200にして使用することにより、積層型フィルムコンデンサ100に関する上記効果に加え、積層型フィルムコンデンサ100を外部に対して保護することができる。更に、取り付け穴を有する外部端子を備えることにより、積層型フィルムコンデンサ100を回路に容易に取り付けることができるようになる。
なお、コンデンサモジュール200は、積層型フィルムコンデンサ100を複数個、例えば3個、容器110に収納して構成されてもよい。このとき第1の外部電極30は各積層型フィルムコンデンサ100のそれぞれの第1のメタリコン部14に接続され、第2の外部電極31は各積層型フィルムコンデンサ100のそれぞれの第2のメタリコン部15に接続される。また、第1の外部電極30は、例えば、それぞれの積層型フィルムコンデンサ100に対応して第1の外部電極端子30aを備え、第2の外部電極31は、例えば、それぞれの積層型フィルムコンデンサ100に対応して第2の外部電極端子31aを備える。すなわち、第1の外部電極端子30a及び第2の外部電極端子31aは積層型フィルムコンデンサ100の収納数に対応してそれぞれ3個装備される。この場合のコンデンサモジュール200も、積層型フィルムコンデンサ100を1個収納したときと同様の効果を奏することができる。
図7に、実施形態1に係る積層型フィルムコンデンサ100を利用した電力変換システム300の例を示す。図11に示す電力変換システム300は、直流電源310からの直流電力を三相交流電力に変換し、三相電力供給線350を介してモータ360に供給する。
電力変換システム300は、直流電源310と、DC/DCコンバータ320と、DCリンクコンデンサ330と、三相インバータ340と、を備える。また、DC/DCコンバータ320は、入力コンデンサ321と、電圧変換回路322と、を備える。
直流電源310は、例えばバッテリ(二次電池)である。
DC/DCコンバータ320は、直流電源310から直流電力が供給されている場合、入力コンデンサ321を介して直流電圧を入力し、電圧変換回路322で昇圧して出力する。入力コンデンサ321は、直流電源310から供給された直流電圧に重畳するサージを低減するための平滑化コンデンサであり、コンデンサモジュール200から構成されている。
DC/DCコンバータ320の出力である昇圧された直流電圧は、DCリンクコンデンサ330を介して三相インバータ340に印加される。DCリンクコンデンサ330は、DC/DCコンバータ320から出力された直流電圧に重畳するサージを低減するための平滑化コンデンサであり、コンデンサモジュール200から構成されている。三相インバータ340は入力された直流電力を三相交流電力に変換して出力する。出力された三相交流電力は、三相電力供給線350を介してモータ360に供給される。
一方、三相インバータ340は、モータ360の回転に伴って発電された三相交流電力を入力した場合、入力された三相交流電力を直流電力に変換してDCリンクコンデンサ330に出力する。DCリンクコンデンサ330は、三相インバータ340から出力された直流電圧に重畳するサージを低減する。
そして、DC/DCコンバータ320は、DCリンクコンデンサ330から出力された直流電圧を電圧変換回路322で降圧して、その降圧した直流電圧を入力コンデンサ321で平滑化する。そして、DC/DCコンバータ320は、直流電力を、直流電源310に供給して、バッテリである直流電源310を充電する。
実施形態1に係る積層型フィルムコンデンサ100は既に説明したとおり、従来品に比べて、短絡時の静電容量の低下率を実質的に悪化させることなく、小型化が可能である。そのため、入力コンデンサ321及びDCリンクコンデンサ330に、実施形態1に係る積層型フィルムコンデンサ100を含むコンデンサモジュール200を使用することにより、電力変換システム300の小型化を図ることが出来る。
本発明は、本発明の広義の思想と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態および変形が可能である。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、上述した実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。