JP6268473B2 - 非水系インクジェットインク組成物およびこれを用いたインクジェット記録方法 - Google Patents

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Description

本発明は、非水系インクジェットインク組成物およびこれを用いたインクジェット記録方法に関する。
従来から、記録ヘッドのノズルからインクの微小な液滴を吐出して記録媒体に付着させて、画像や文字を記録するインクジェット記録装置が知られている。係る記録に用いるインク組成物として、顔料や樹脂などを水に分散あるいは溶解させた水系(水性)のインク組成物が知られている。さらには、水を含有せずに、顔料、樹脂等を有機溶剤に分散あるいは溶解させた非水系(油性)のインク組成物の開発も行われている。
このようなインクジェット記録用のインク組成物のうち、特許文献1には、顔料と、有機溶剤として50質量%以上の五員複素環式化合物(例えばカーボネート化合物等)を含有する非水系インク組成物を用いることで、印刷用紙表面に対する裏抜け等を抑制でき、高い印刷濃度を実現できることが記載されている。
特開2012−107174号公報
特許文献1に記載されているカーボネート系溶剤は、フィルム等の記録媒体に対する濡れ拡がり性に優れつつ、塩化ビニル系樹脂を溶解する作用にも優れている。そのため、カーボネート系溶剤を含有する非水系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂を記録面に有する記録媒体に好適に使用できる。しかしながら、非水系インク組成物に含まれるカーボネート系溶剤の含有量によっては、非水系インク組成物の浸透性と濡れ拡がり性のバランスが崩れてしまうことがある。そうすると、記録される画像に凹凸が生じて、画像の光沢性の低下が生じる場合がある。
一方、非水系インク組成物に使用される有機溶剤の種類によっては、臭気が生じるという不具合が発生したり、粘度が高すぎて取扱いが困難になる場合がある。
本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、光沢性に優れた画像を記録することができ、低臭気かつ低粘度である非水系インクジェットインク組成物およびこれを用いた記録方法を提供することにある。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る非水系インクジェットインク組成物の一態様は、
色材と、
グリコールエーテル系溶剤と、
10質量%以上40質量%以下のカーボネート系溶剤と、
を含有する。
[適用例2]
適用例1において、
前記カーボネート系溶剤が、下記一般式(2)で表される化合物であることができる。
(上記一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。)
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記カーボネート系溶剤が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートから選択される少なくとも1種であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記カーボネート系溶剤の20℃における粘度が、0.3mPa・s以上5mPa・s以下であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記グリコールエーテル系溶剤の含有量が、20質量%以上80質量%以下であることができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
さらに、樹脂および界面活性剤の少なくとも一方を含有することができる。
[適用例7]
適用例6において、
前記樹脂が、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂および塩化ビニル系樹脂から選択される少なくも一種を含むことができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか1例において、
前記非水系インク組成物の20℃における粘度が、2mPa・s以上15mPa・s以下であることができる。
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか1例において、
前記非水系インク組成物の25℃における表面張力が、10mN/m以上40mN/m以下であることができる。
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか1例において、
塩化ビニル系樹脂を含む記録面を有する記録媒体に対する記録に用いることができる。
[適用例11]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例10のいずれか1例に記載の非水系インクジェットインク組成物の液滴を記録ヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を含む。
本実施形態で使用可能なインクジェットプリンターの構成を模式的に示す斜視図。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
本発明において「非水系インク組成物」とは、有機溶剤を主要な溶媒として、水を主要な溶媒としないインクである。好ましくは、インク中の水の含有量が3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましく0.05質量%未満であり、一層好ましくは0.01質量%未満、さらに一層好ましくは0.005質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることをいう。あるいは、実質的に水を含有しないインクとしてもよい。「実質的に含有しない」とは、意図的に含有させないことを指す。
1.インクジェット記録用の非水系インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録用の非水系インク組成物(以下、「非水系インクジェットインク組成物」ともいう。)は、インクジェット記録方法に用いるインク組成物であり、色材と、グリコールエーテル系溶剤と、10質量%以上40質量%以下のカーボネート系溶剤と、を含有することを特徴とする。以下、本実施形態に係る非水系インク組成物に含まれる成分について詳細に説明する。
1.1.色材
色材としては、染料を用いてもよく、無機顔料および有機顔料等の顔料を用いることもできるが、耐光性等の観点から顔料を用いることが好ましい。これらの色材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等)、多環式顔料(フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等)、染料レーキ(例えば、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、カーボンブラック、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
色材の含有量は、所望に応じて適宜設定でき、特に限定されるものではないが、通常、非水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上10質量%以下である。
また、色材として顔料を使用する場合には、顔料分散剤を含有してもよく、例えば、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、Solsperse20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500、39000(いずれもLUBRIZOL社製)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192、2091、2095(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。顔料分散剤を使用する場合の含有量は、含有される顔料に応じて適宜選択することができるが、非水系インク組成物中の顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上200質量部以下、より好ましくは30質量部以上120質量部以下である。
1.2.グリコールエーテル系溶剤
グリコールエーテル系溶剤は、沸点が高めであるにも関わらず適度な樹脂溶解性、インクジェット用インクに適した粘度であり、記録媒体に対する濡れ性や浸透速度を制御して、記録される画像のムラ等を抑制することができる。また、グリコールエーテル系溶剤は、低臭気であるという性質を備える。
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノエーテルや、アルキレングリコールジエーテル等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
上記のグリコールエーテル系溶剤の中でも、臭気を一層低減できるという点から、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルを用いることが好ましい。
グリコールエーテル系溶剤の含有量は、非水系インク組成物の全質量に対して、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましい。グリコールエーテル系溶剤の含有量が20質量%以上であることで、非水系インク組成物自体やこれを用いて記録される画像の臭気の発生を一層抑制したり、印刷ムラの発生を一層低減できる場合がある。また、グリコールエーテル系溶剤の含有量が80質量%以下であることで、画像の光沢性の低下を抑制できる場合がある。
非水系インク組成物の粘度をインクジェット記録用インクとして適正な範囲に容易に設定しやすくなったり、インクの濡れ拡がり性が向上するという観点から、グリコールエーテル系溶剤の中でも、低粘度のものを使用することが好ましい。具体的には、グリコールエーテル系溶剤は、20℃における粘度が0.5mPa・s以上10mPa・s以下のものを用いることが好ましく、0.5mPa・s以上5mPa・s以下のものを用いることがより好ましい。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
1.3.カーボネート系溶剤
カーボネート系溶剤は、記録面(好ましくは塩化ビニル系樹脂を含む記録面)の一部を溶解して記録媒体の内部に非水系インク組成物を浸透させて、記録媒体に対する非水系インク組成物の密着性を高めることができる。また、カーボネート系溶剤は、記録面(好ましくは塩化ビニル系樹脂を含む記録面)での濡れ拡がり性にも優れているため、画像の平坦性を向上できる結果、画像の光沢性を優れたものにできる。さらに、カーボネート系溶剤は、低臭気であるため、上述したグリコールエーテル系溶剤と併用されることで、臭気の発生を効果的に低減できる。また、カーボネート系溶剤とグリコールエーテル系溶剤を併用することで、非水系インク組成物を低粘度にすることが容易になったり、非水系インク組成物に含まれる樹脂の溶解性を向上することができる。
本発明におけるカーボネート系溶剤とは、カーボネート骨格を備えた化合物のことをいい、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
上記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭化水素基を示し、RおよびRは、互いに結合して環を形成していてもよい。炭化水素基の置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。炭化水素基は、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることができ、例えば、炭素数1以上15以下のものを好ましく用いることができる。
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等の非環状構造のカーボネート化合物や、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、グリセロールカーボネート等の環状構造のカーボネート化合物が挙げられる。
上述一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(2)で表される化合物を用いることがより好ましい。
上記一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1以上4以下の炭化水素基を示す。炭素数1以上4以下の炭化水素基は、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基であることができる。炭素数1以上4以下の炭化水素基の置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物は、非環式構造のカーボネート化合物であり、上記のRおよびRの炭素数が少ない。そのため、低粘度であるという性質を備えていることから、インクの濡れ拡がり性を向上でき、画像の光沢性を一層向上できるという点で好ましく用いられる。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、画像の光沢性をより一層向上できるという観点から、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートから選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
カーボネート系溶剤の含有量は、非水系インク組成物の全質量に対して、10質量%以上40質量%以下である必要があるが、15質量%以上35質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。カーボネート系溶剤の含有量が上記範囲内にあることで、記録される画像の光沢性が優れたものになる。特に塩化ビニル系樹脂の記録面を有する記録媒体を用いる際に、非水系インク組成物の浸透性と濡れ拡がり性のバランスが優れたものとなるため、光沢の向上、筋状ムラの低減、線幅の確保、印刷ムラの低減等を高いレベルで満たすことができる。一方、カーボネート系溶剤の含有量が10質量%未満であると、インクの濡れ拡がり性が不十分となって、画像の光沢性が低下する。また、カーボネート系溶剤の含有量が40質量%を超えると、インクの浸透性と濡れ拡がり性のバランスが崩れてしまって、画像の光沢性が低下したり、印刷ムラが発生したりする。
なお、本明細書中、「印刷ムラ」とは、記録媒体にインク滴を付着させた際に発生する
局所的な濃度斑のことを意味し、固形成分(樹脂成分、色材成分等)の膜厚が不均一になることで観察される現象である。また、本明細書中、「筋状ムラ」とは、記録媒体上でのインク滴の埋まり不良に伴って、記録媒体の表面においてインク滴で被覆されないもしくは被覆が不均一な部分が筋状に残る現象を意味する。
カーボネート系溶剤は、20℃における粘度が0.3mPa・s以上5mPa・s以下のものを用いることが好ましく、下限は0.5mPa・s以上がより好ましく、上限は、4mPa・s以下がより好ましく、3mPa・s以下がさらに好ましく、2mPa・s以下が特に好ましい。なお、カーボネート系溶剤の粘度は、上述したグリコールエーテル系溶剤の粘度と同様の装置および方法により測定できる。カーボネート系溶剤の粘度が上記範囲内にあると、非水系インク組成物の粘度をインクジェット記録用インクとして適正な範囲に設定しやすくなったり、濡れ拡がりやすくなって光沢性が向上するという利点がある。
非水系インク組成物自体やこれを用いて記録される画像の臭気を一層低減できたり、更なる低粘度化が可能であったり、樹脂溶解性が向上するという観点から、カーボネート系溶剤と、上述したグリコールエーテル系溶剤と、の含有量の合計は、非水系インク組成物の全質量に対して、40質量%以上90質量%以下であることが好ましく、45質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
1.4.樹脂
本実施形態に係る非水系インク組成物は、樹脂を含有することが好ましい。樹脂の機能としては、皮膜を形成して、非水系インク組成物により得られた画像を保護することが挙げられる。当該樹脂は、定着用樹脂と呼ばれることがある。
樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂など)、塩化ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂など)、ポリエステル系樹脂(例えば、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルなど)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、エチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン系樹脂、石油樹脂、塩素化ポリプロピレン、ポリオレフィン、テルペン系樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、NBR・SBR・MBR等の各種合成ゴム、およびそれらの変性体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本実施形態に係る非水系インク組成物は、上記の樹脂の中でも、画像の耐擦性を一層向上させるという観点から、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂および塩化ビニル系樹脂から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
ポリエステル系樹脂は、ポリオールとポリカルボン酸とを重縮合させて得られるポリマーである。エステル系樹脂を含む樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えば、エリーテル KA−5034、KA−5071S、KZA−1734、KZA−6034、KZA−3556(以上全て商品名、ユニチカ株式会社製)、TP290、TP249、TP219(以上全て商品名、日本合成化学工業株式会社)、等が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂とは、従来公知のモノマー成分から得られるポリマーである。このようなモノマー成分には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチルなどのカルボキシル基含有モノマーの他、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、アミド基含有モノマー類、グリシジル基含有モノマー類、シアノ基含有モノマー、水酸基含有アリル化合物、三級アミノ基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマーなどを単独または複数組合せて用いることができる。本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味するものとし、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味するものとする。
上記の(メタ)アクリル系樹脂には、市販品を用いてもよく、例えば、アクリペットMF(商品名、三菱レイヨン社製、アクリル樹脂)、スミペックスLG(商品名、住友化学社製、アクリル樹脂)、パラロイドBシリーズ(商品名、ローム・アンド・ハース社製、アクリル樹脂)、パラペットG−1000P(商品名、クラレ社製、アクリル樹脂)などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂は、樹脂の合成時に使用したモノマー成分として少なくとも塩化ビニルを含むものであり、塩化ビニルと、他のモノマー(例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル、マレイン酸、ビニルアルコール等)との共重合体を用いることができる。これらの中でも、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合させて得られる塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。
上記の塩化ビニル系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、カネビニールHM515、S−400(商品名、株式会社カネカ製)、ソルバインC、C5R(商品名、日信化学株式会社)等が挙げられる。
樹脂は、固形状、溶液状、エマルジョン状態としたもの等、いずれのタイプの樹脂を用いてもよい。
樹脂を含有する場合の含有量としては、非水系インク組成物の全質量に対して、固形分換算で、0.5質量%以上10質量%以下とすることができる。樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、画像の耐擦性が良好となったり、インクの粘度をインクジェット記録に適した範囲に容易に設定することができる。
1.5.界面活性剤
本実施形態に係る非水系インク組成物は、表面張力を低下させ記録媒体上での濡れ拡がり性を向上させる観点から、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体等が挙げられる。
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)や、サーフロンS−211、S−131、S−132、S−141、S−144、S−145(旭硝子株式会社製)、フタージェント100、150、251(株式会社ネオス製)、メガファックスF477(DIC株式会社製)、FC−170C、FC−430、フロラード・FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(Dupont社製);FT−250、251(株式会社ネオス製)などを例示することができる。
ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
界面活性剤を含有する場合の含有量は、非水系インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下とすることができる。
1.6.上記以外の有機溶剤
本実施形態に係る非水系インク組成物は、上記以外の有機溶剤(すなわち、グリコールエーテル系溶剤およびカーボネート系溶剤を除く溶剤)を含有してもよい。このような有機溶剤としては、例えば、ラクトン、ピロリドン誘導体等が挙げられる。
ラクトンは、記録面(好ましくは塩化ビニル系樹脂を含む記録面)の一部を溶解して記録媒体の内部に非水系インク組成物を浸透させて、記録媒体に対する非水系インク組成物の密着性を高めることができる。本発明において「ラクトン」とは、環内にエステル基(−CO−O−)を有する環状化合物の総称をいう。ラクトンとしては、上記定義に含まれるものであれば特に制限されないが、炭素数2以上9以下のラクトンであることが好ましい。このようなラクトンの具体例としては、α−エチルラクトン、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナンチオラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、2−ブチル−2−エチルプロピオラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン等が挙げられるが、これらの中でもγ−ブチロラクトンが特に好ましい。上記例示したラクトンは、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
ラクトンを含有する場合には、その含有量は、非水系インクの全質量に対して、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。ラクトンの含有量が10質量%以上であることで、画像の耐擦性が一層向上する傾向にあり、40質量%以下であることで、画像の光沢性が向上する傾向にある。
ピロリドン誘導体は、塩化ビニル系樹脂の溶解性に優れるという性質を備える。ピロリドン誘導体としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。ピロリドン誘導体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
1.7.その他の成分
本実施形態に係る非水系インク組成物は、必要に応じて、pH調整剤、エチレンジアミ
ン四酢酸塩(EDTA)等のキレート化剤、防腐剤・防かび剤、及び防錆剤など、所定の性能を付与するための物質を含有することができる。
1.8.非水系インク組成物の製造方法
本実施形態に係る非水系インクは、前述した成分を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.9.非水系インク組成物の物性
本実施形態に係る非水系インク組成物は、記録品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、非水系インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上5mPa・s以下であることがより好ましく、2mPa・s以上4.0mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
2.記録方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記の非水系インク組成物の液滴を記録ヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程(以下、「工程(a)」ともいう。)を含む。これにより、記録媒体上に画像の形成された記録物が得られる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、上記の非水系インク組成物を用いるので、低粘度であることから吐出安定性に優れ、さらには、低臭気であって光沢性に優れた画像を記録することができる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法において、前記工程(a)は、30℃以上60℃以下に加熱された記録媒体に対して行われてもよい。このように加熱された記録媒体上に上述のインク組成物を付着させることでインクの乾燥性を向上させることができる。
また、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、前記工程(a)の後、記録媒体をさらに加熱する後加熱(アフターヒート)(以下、「工程(b)」ともいう。)を備えていてもよい。工程(b)をさらに備えることで、インクの乾燥性をより一層向上させることができる。
上述したような工程を備えることができるインクジェット記録装置としては、記録ヘッドの微細なノズルより上述したインク組成物を液滴として吐出し、該液滴を記録媒体に付着させていかなる装置も使用することができる。以下、本実施形態で使用可能なインクジェット記録装置として、記録媒体を加熱することができる機構を有するインクジェットプリンターを例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態で使用可能なインクジェットプリンター(以下、単に「プリンター
」という。)の構成を示す斜視図である。図1に示すプリンター1は、いわゆるシリアルプリンターと呼ばれているものである。シリアルプリンターとは、所定の方向に移動するキャリッジに記録ヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴って記録ヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を吐出するプリンターのことをいう。
図1に示すように、プリンター1は、記録ヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設され記録媒体Pが搬送されるプラテン5と、記録媒体を加熱するための加熱機構6と、キャリッジ4を記録媒体Pの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録媒体Pを媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。また、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
インクカートリッジ3は、独立した4つのカートリッジからなる。4つのカートリッジのそれぞれに、上述した非水系インク組成物が充填される。なお、図1の例では、カートリッジの数が4つであるが、これに限定されず、所望の数のカートリッジを搭載することができる。
インクカートリッジ3は、図1に示すようなキャリッジ4に装着するものに限らず、これに替えて例えば、プリンター1の筐体側に装着しインク供給チューブを介してヘッド2に供給するタイプのものであってもよい。
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられたものである。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するものである。なお、図1の例では、キャリッジ4が主走査方向に移動するものを示したが、これに限定されず、主走査方向の移動に加えて、副走査方向に移動するものであってもよい。
加熱機構6は、記録媒体Pを加熱できる位置に設けられていれば、その設置位置は特に限定されるものではない。図1の例では、加熱機構6は、プラテン5上であって、ヘッド2と対向する位置に設置されている。このように、加熱機構6がヘッド2と対向する位置に設置されていると、記録媒体Pにおける液滴の付着位置を確実に加熱できるので、記録媒体Pに付着した液滴を効率的に乾燥できる。
加熱機構6には、例えば、記録媒体Pを熱源に接触させて加熱するプリントヒーター機構や、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長をもつ電磁波)などを照射する機構や、温風を吹き付けたりするドライヤー機構などを用いることができる。
加熱機構6による記録媒体Pの加熱は、ノズル孔(図示せず)から吐出された液滴が記録媒体Pに付着する前または付着する時に行われる。このようにすれば、記録媒体Pに付着した液滴を迅速に乾燥できる。なお、加熱の諸条件の制御(例えば、加熱実施のタイミング、加熱温度、加熱時間等)は、制御装置CONTによって行われる。
加熱機構6による記録媒体Pの加熱は、インクの乾燥性の向上、記録媒体の変形防止等の観点から、記録媒体Pが35℃以上50℃以下の温度範囲を保持するように行われることが好ましい。なお、本願発明において記録媒体を加熱する温度とは、加熱時における記録媒体の記録面の表面の温度を意味する。
プリンター1は、加熱機構6の他に、さらに、図示しない第2の加熱機構を有していて
もよい。プリンター1が第2の加熱機構を備えることで、上述の工程(b)をプリンター1で行うことができる。第2の加熱機構は、加熱機構6よりも記録媒体Pの搬送方向の下流側に設置される。第2の加熱機構は、加熱機構6によって記録媒体Pを加熱した後、つまり、ノズル孔(図示せず)から吐出された液滴が記録媒体Pに付着した後に、当該記録媒体Pの加熱を行うものである。これにより、記録媒体Pに付着したインク組成物の液滴の乾燥性をより一層向上できる。第2の加熱機構には、加熱機構6で説明したいずれかの機構(例えば、ドライヤー機構等)を用いることができる。
第2の加熱機構による記録媒体Pの加熱は、上記加熱機構6と同様の理由により、記録媒体Pが35℃以上50℃以下の温度範囲を保持するように行われることが好ましい。
リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出するものである。この検出された信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいて記録ヘッド2の走査位置を認識し、記録ヘッド2による記録動作(吐出動作)などを制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
記録媒体Pとしては、特に限定されないが、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、低吸収性記録媒体を使用した場合であっても記録された画像の光沢性等が良好となる。ここで「低吸収性記録媒体」とは、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体のことをいい、少なくとも記録面がこの性質を備えていればよい。この定義によれば、本発明における「低吸収性記録媒体」には、水を全く吸収しない非吸収性記録媒体も含まれる。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
低吸収性記録媒体としては、具体的には、低吸収性の材料を含むシート、フィルム、繊維製品等が挙げられる。また、低吸収性記録媒体は、基材(例えば、紙、繊維、皮革、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等)の表面に、低吸収性の材料を含む層(以下、「低吸収性層」ともいう)を備えたものであってもよい。低吸収性の材料としては、特に限定されないが、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、低吸収性記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含む記録面を有するものを好ましく用いることができる。上述の非水系インク組成物にはカーボネート系溶剤が含まれており、この化合物が塩化ビニル系樹脂を含む記録面を溶解することで記録媒体の内部にインク組成物を浸透させることができる。これにより、塩化ビニル系樹脂を含む記録面に記録した画像や文字の耐擦性を一層向上させることができる。塩化ビニル系樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体等が挙げられる。なお、低吸収性記録媒体の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性については特に制限されない。
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれ
らの実施例のみに限定されるものではない。
3.1.非水系インク組成物の調製
容器に、表1に記載の濃度に相当する量の有機溶剤のみをそれぞれのインクごとに攪拌して、混合溶剤を得た。得られた混合溶剤の一部を取り分けて、顔料分散剤と、顔料と、を所定量添加して、ホモジナイザーを用いて予備分散した後に、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより顔料分散体を得た。そして、混合溶剤の一部を取り分けていたものに、樹脂を加えて攪拌して、完全に溶解させた樹脂溶液を得た。上記の顔料分散剤に、混合溶剤の残部、界面活性剤および上記の樹脂溶液を混ぜ入れて、1時間攪拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、実施例および比較例に係る非水系インク組成物を得た。
なお、表中で使用した成分のうち、商品名または略称で記載した成分は、下記の通りである。また、使用した溶剤の20℃における粘度を表1に示す。溶剤の20℃における粘度は、Physica社製の粘度計(商品名「MCR−300」)を用いて、コーン(径75mm、角度1°)、Shear Rate200の条件で測定した。
・MEDG(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル)
・ソルバインC5R(商品名、日信化学株式会社、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体)
・PB15:3(C.I.ピグメントブルー15:3)
・SS39000(商品名「Solsperse 39000」、日本ルーブリゾール社製、顔料分散剤)
・フタージェント251(商品名、株式会社ネオス製、フッ素系界面活性剤)
3.2.評価試験
3.2.1.物性評価
<非水系インク組成物の粘度>
上記のようにして得られた各非水系インク組成物の20℃における粘度を測定した。具体的には、Physica社製の粘度計(商品名「MCR−300」)を用いて、コーン(径75mm、角度1°)、Shear Rate200の条件で測定を行った。
<非水系インク組成物の表面張力>
上記のようにして得られた各非水系インク組成物の25℃における粘度を測定した。具体的には、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、ウィルヘミー(Wilhelmy)法に従って、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を測定した。
3.2.2.印刷品質の評価
以下の各評価を行うにあたって、空調設備と加湿器を利用して、環境試験室の温度および湿度がそれぞれ、25℃,65%RHとなるように調整し、当該環境試験室内に設置したセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンター「SC−S30650」(商品名)を用いて行った。なお、温度および湿度は、ヒーター等のインクジェットプリンター自身の発熱の影響を受けない筐体の上に設置した温湿度センサーによって測定した。また、記録時の記録媒体の表面温度は、25℃とした。
<光沢性>
上記プリンターを用いて、各非水系インク組成物を光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV−G−1270G)上に、画素あたりのインク塗布量4ng、記録解像度1440×1440dpiの100%濃度でベタ印刷をした後、25℃65%RH(相対湿度)にて1日間、乾燥させて記録物を作成した。そして、ベタ印刷部の20°光
沢をMULTI GLOSS 268(コニカミノルタ株式会社製)にて測定した。光沢性の評価基準は、次の通りである。
◎:25以上
○:20以上25未満
△:15以上20未満
×:15未満
<筋状ムラ>
上記の光沢性の評価と同様にして得られた記録物のベタ印刷部を目視およびルーペ(5倍)にて観察し、ヘッドの主走査方向に延びる白い筋の有無を確認した。筋状ムラの評価基準は、次の通りである。
○:ルーペ観察でも白い筋が見えない
△:目視では白い筋が見えないが、ルーペ観察では白い筋が見える
×:目視で白い筋が見える
<線幅>
ベタ印刷をしたことに代えて、1440dpi×1dpiのヘッドの主走査方向に延びる線を記録した以外は、上記の光沢性の評価と同様の条件で記録物を作製した。得られた記録物の印刷部をルーペ(5倍)にて観察し、以下の評価基準にしたがって線幅の評価を行った。
○:線の輪郭が一定の形状で連続して形成されている
△:線の輪郭が一定の形状になっていないが、途切れは見られない
×:線が途切れている部分が見られる
<印刷ムラ>
上記の光沢性の評価と同様にして得られた記録物のベタ印刷部を目視およびルーペ(5倍)にて観察し、印刷ムラの有無を確認した。印刷ムラの評価基準は、次の通りである。
○:ルーペ観察でも印刷ムラが目立たない
△:目視では印刷ムラが目立たないが、ルーペ観察では印刷ムラが目立つ
×:目視でも印刷ムラが目立つ
<臭気>
上記の光沢性の評価と同様にして得られた記録物のベタ印刷部の匂いを嗅ぎ、臭気の有無を判定した。
○:臭気あり
×:臭気なし
3.3.評価結果
以上の評価結果を表1に示す。
表1の評価結果の通り、実施例に係る非水系インク組成物は、いずれも、臭気が無く、光沢性に優れた画像を記録できることが示された。また、実施例に係る非水系インク組成物に含まれるカーボネート系溶剤は、粘度が低く、インクジェット記録用のインクとして適した粘度に調整することが容易であった。
一方、比較例1の非水系インク組成物には、カーボネート系溶剤を含有していないため、記録される画像の光沢性が著しく低下することが示された。比較例2の非水系インク組成物は、カーボネート系溶剤の含有量が10質量%未満であったため、記録される画像の光沢性が著しく低下することが示された。また、比較例1および比較例2の非水系インク組成物は、インクの濡れ拡がり性に優れず、筋状ムラの発生や線の途切れ等のある画像を記録した。
比較例3および比較例4の非水系インク組成物には、40質量%を超えるカーボネート系溶剤が含有されているため、記録される画像の光沢性が低下することが示された。また、比較例3および比較例4の非水系インク組成物は、印刷ムラの発生が顕著になることが確認できた。この理由として、カーボネート系溶剤の含有量の増加に伴って、非水系インク組成物の浸透性と濡れ拡がり性のバランスが崩れたことによるものと考えらえる。
比較例4に係る非水系インク組成物は、グリコールエーテル系溶剤を含有せず、1,4−ジオキサンを含有するため、記録される画像に臭気があった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…プリンター、2…記録ヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…加熱機構、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…ガイドロット、10…リニアエンコーダ、P…記録媒体

Claims (9)

  1. 色材と、
    グリコールエーテル系溶剤と、
    10質量%以上40質量%以下のジメチルカーボネートと、
    を含有する、非水系インクジェットインク組成物。
  2. 請求項において、
    前記ジメチルカーボネートの20℃における粘度が、0.3mPa・s以上5mPa・s以下である、非水系インクジェットインク組成物。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記グリコールエーテル系溶剤の含有量が、20質量%以上80質量%以下である、非水系インクジェットインク組成物。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
    さらに、樹脂および界面活性剤の少なくとも一方を含有する、非水系インクジェットインク組成物。
  5. 請求項において、
    前記樹脂が、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂および塩化ビニル系樹脂から選択される少なくも一種を含む、非水系インクジェットインク組成物。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
    前記非水系インク組成物の20℃における粘度が、2mPa・s以上15mPa・s以下である、非水系インクジェットインク組成物。
  7. 請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
    前記非水系インク組成物の25℃における表面張力が、10mN/m以上40mN/m以下である、非水系インクジェットインク組成物。
  8. 請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
    塩化ビニル系樹脂を含む記録面を有する記録媒体に対する記録に用いる、非水系インクジェットインク組成物。
  9. 請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の非水系インクジェットインク組成物の液滴を記録ヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程を含む、インクジェット記録方法。
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