JP6266384B2 - 温度測定装置及び温度測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、温度測定装置、投光モジュール及び温度測定方法に関する。
温度変化に対応してエネルギーギャップが変動する半導体で構成される温度感知素子を利用した光学式温度センサが知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。この光学式温度センサは、第1の発光素子から放射される信号光と第2の発光素子から放射される参照光とを温度感知素子に透過させ、温度感知素子を透過した信号光と参照光との各光強度に基づき外部温度を検知する。
特開昭62−85832号公報 特開昭61−213738号公報 特開昭61−233331号公報 特開平1−242931号公報 特開昭61−232684号公報
しかしながら、上記の光学式温度センサによる検出値は、温度センサの構造上、変動することがある。
また、光学式温度センサによる検出値に基づき測定対象物の温度を測定する温度測定装置においても、温度測定装置の環境温度や部品の個体差に応じて、測定値の精度、応答性及び安定性が悪くなることがある。
上記課題に対して、より精度が高く、応答性及び安定性に優れた光学式温度センサ及び温度測定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、一の態様によれば、第1の波長の測定光を出力する第1の光源と第2の波長の参照光を出力する第2の光源とから光を投光する投光部と、温度に応じて光透過特性が変化する温度感知素子を透過した前記測定光の反射光と前記参照光の反射光とを受光する受光部と、前記温度感知素子と光ファイバを内部に有する光学式温度センサと、前記受光した前記測定光の反射光の光量と前記参照光の反射光の光量とに基づき、前記温度感知素子により感知された温度を測定する制御部と、前記第1の光源と前記第2の光源とをそれぞれ別々に温調する温調部と、を有し、前記温度感知素子と前記光ファイバの先端面とは離間しており、前記離間している距離は調整可能である、ことを特徴とする温度測定装置が提供される。
また、他の態様によれば、第1の光源から第1の波長の測定光を出力し、第2の光源から第2の波長の参照光を出力し、前記測定光と前記参照光とを、光学式温度センサの内部に有する光ファイバを介して、温度に応じて光透過特性が変化する温度感知素子に透過させ、前記透過した前記測定光の反射光と前記参照光の反射光とを受光し、前記受光した前記測定光の反射光の光量と前記参照光の反射光の光量とに基づき、前記温度感知素子により感知された温度を測定し、前記第1の光源と前記第2の光源とをそれぞれ別々に温調し、前記温度感知素子と前記光ファイバの先端面とは離間しており、前記離間している距離は調整可能である、ことを特徴とする温度測定方法が提供される。
一の態様によれば、より精度が高く、応答性及び安定性に優れた光学式温度センサ及び温度測定装置を提供することができる。
一実施形態に係る光学式温度センサの全体構成図。 一実施形態に係る光学式温度センサの製造方法を示した図。 一実施形態に係る温度測定装置のブロック図。 一実施形態に係る投受光モジュールを示した図。 一実施形態に係る温度測定方法を示したフローチャート。 一実施形態に係る投光部を示した他の図。 一実施形態に係る温度測定結果(安定性)の一例。 一実施形態に係る温度測定結果(応答性)の一例。 一実施形態に係る温度測定結果(応答性)の一例。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
[光学式温度センサ]
初めに、本発明の一実施形態に係る光学式温度センサ1について、図1を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る光学式温度センサの全体構成図である。光学式温度センサ1は、光ファイバを用いた温度センサであり、温度により光学的吸収波長が変化する半導体化合物のチップ(感熱体)を用いる。すなわち、光学式温度センサ1は、温度により透過する光の吸収波長が変化する感熱体を利用して温度を検知する半導体吸収波長式の温度センサである。
光学式温度センサ1は、感熱体10、伝熱用アルミ板11、保持筒体12、光ファイバ13、固定部材14及びスプリング15を有している。感熱体10は、ガリウム砒素GaAsの化合物半導体で形成される。感熱体10の上面にはアルミ反射膜が形成され、下面には反射防止膜が形成されている。感熱体10は、温度に応じて光透過特性が変化する温度感知素子の一例である。温度感知素子は、温度に応じて光透過特性が変化する物質であれば、ガリウム砒素GaAsの化合物半導体に限られない。
感熱体10の上面は、接着剤により感熱体10は、熱伝導率の高い伝熱用アルミ板11に固定される。光学式温度センサ1の先端部の構造について説明すると、保持筒体12の先端は開口し、その開口には感熱体10が接着された伝熱用アルミ板11が嵌入される。これにより、保持筒体12の開口は閉塞され、感熱体10は保持筒体12内であって、その先端に固定される。
保持筒体12は、筒状であり、内部に光ファイバ13を這わせる。保持筒体12は、温度感知素子を保持する保持体の一例である。保持体は、光ファイバ13を這わせることができる中空の部材であれば筒状でなくてもよい。
光ファイバ13は、2芯構造を有する。光ファイバ13は、光ファイバ13を囲んで接着により保持筒体12に固定する固定部材14により固定される。これにより、光ファイバ13は、光学式温度センサ1の先端部に先端面が位置するように上下に這わせるように配置される。
本実施形態では、静電チャック(ESC)が測温対象物205である。測温対象物205の温度は、伝熱用アルミ板11を通して感熱体10に伝えられる。よって、保持筒体12や光ファイバ13や固定部材14と感熱体10との間で熱交換が行われると、感熱体10により検知した測温対象物205の温度(検出値)に誤差が発生し、温度センサとしての精度が悪くなる。
そこで、本実施形態に係る光学式温度センサ1は、感熱体10と光ファイバ13及び固定部材14の先端面とが接触しない構造を有する。つまり、光ファイバ13の先端面は、感熱体10と所定の距離だけ離隔された位置にて感熱体10に対向して配置される。これにより、光ファイバ13の先端と感熱体10とが対向する面に中空部Sが形成される。感熱体10と光ファイバ13の先端面との距離は、設計上の値(例えば、2.55mm〜2.65mm)を基準として、保持筒体12を回転し、感熱体10と光ファイバ13との対向位置を微調整して適正化する。具体的な製造工程における上記距離の適正化については、光学式温度センサ1の製造方法にて後述する。
また、本実施形態に係る光学式温度センサ1では、感熱体10の温度が、保持筒体12や光ファイバ13側に伝わり難い構造を有する。これにより、精度の向上と、測定対象の温度変化に対する応答速度の向上とを図ることができる。
詳しくは、伝熱用アルミ板11と接着される保持筒体12は、熱伝導率が低く、機械的強度に優れ、高耐熱性を有する素材にて構成される。また、固定部材14も同様に、熱伝導率が低く、機械的強度に優れ、高耐熱性を有する素材にて構成される。例えば、保持筒体12と固定部材14とは、熱伝導率が低い樹脂製構造体(PPS:Polyphenylene sulfide(ポリフェニレンスルファイド))から形成されてもよい。
また、保持筒体12と伝熱用アルミ板11との接触面積は、熱伝達を抑えるために極力小さくする。さらに、保持筒体12及び固定部材14は、その厚さを極力薄く形成して熱伝導が少なくなるようにする。特に、固定部材14は、感熱体10に近い先端部近傍の径(厚さ)を、その下部の径(厚さ)よりも小さく形成する。このようにして、固定部材14には、感熱体10に近い先端部近傍にて厚さを極力薄くした肩落ち部14aが形成される。これにより、固定部材14の側部と保持筒体12との間に空間が設けられ、固定部材14と保持筒体12との接触面積を極力少なくできる。かかる構成により、感熱体10の熱が、保持筒体12及び固定部材14側に伝達される量を低減することで、測定対象物の温度変化に対する応答速度を向上させることができる。
保持筒体12の下部には、保持筒体12の上部よりも径が大きく、外側に出っ張っている突出部12bが形成されている。突出部12bにより形成された、保持筒体12内の光ファイバ13と保持筒体12との間の空間には、例えばスプリング15が設けられている。保持筒体12は、アルミ製のフランジ21に嵌入され、例えばネジ22,23によりフランジ21を載置台200に固定することにより固定される。フランジ21の下側には、アルミ製のブッシュ24が設けられている。スプリング15は、ネジ22,23によりフランジ21を固定することでブッシュ24の上面に固定される。
光学式温度センサ1の先端部は、伝熱用アルミ板11を通して測温対象物205の温度が感熱体10に伝わるようになっている。本実施形態では、スプリング15の伸縮によって保持筒体12が上方に押し上げられ、測温対象物205の下面に光学式温度センサ1の先端部が押し当てられる。これにより、伝熱用アルミ板11を測温対象物205の下面に押し付けることで、測温対象物205と伝熱用アルミ板11との熱伝達を安定的に行い、感熱体10による温度検知を安定して行うことができる。なお、スプリング15の反力の強さは、伝熱用アルミ板11と測温対象物205とに十分な接触面積が得られ、測温対象物205の温度が安定的に測定できる最小の力とし、測温対象物205に過度な力が加わらない強さに設定される。
温度測定装置30から出力されるLEDの光は、光ファイバ13を通り、感熱体10を透過して測温対象物205の下面にて反射し、再び感熱体10を透過して、光ファイバ13を通り温度測定装置30にて受光される。
[光学式温度センサの製造方法]
次に、本実施形態に係る光学式温度センサ1の製造方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、一実施形態に係る光学式温度センサの製造方法を示す。なお、光学式温度センサ1の製造を開始する前に、保持筒体12の先端部の側面に、図2(e)に示した切欠部12aを形成しておく。
まず、ガリウム砒素GaAsの感熱体10を伝熱用アルミ板11に接着した状態で(図2(a))、伝熱用アルミ板11を保持筒体12の先端部の開口を閉塞するように保持筒体12に接着する(図2(b))。次に、固定部材14と一体となった光ファイバ13を保持筒体12に挿入する(図2(c))。
次に、光ファイバ13の先端と感熱体10との距離Dを調整しながら、保持筒体12を回転させる。このとき、温度測定装置30に装着されたLEDから光を出力する。光は、光ファイバ13に通されて先端から出射され、感熱体10を透過する。測定対象(図2には図示せず)にて反射された光は、感熱体10を透過し、光ファイバ13に通されて温度測定装置30にて受光される。受光された反射光の光量(測定値)に基づき、光学式温度センサ1の個体差がほとんど生じない感熱体10の回転方向の適正な位置を探索するとともに、光ファイバ13の先端面と感熱体10との適正な距離Dを探索する。探索した結果適正化された感熱体10と光ファイバ13の先端面との対向位置(距離D)を保持した状態で固定部材14の側壁を保持筒体12に接着する(図2(d))。
以上の製造方法では、光ファイバ13の先端面と感熱体10との間に距離Dの中空部Sが形成される。光ファイバ13の先端面及び感熱体10間の距離Dは、設計上の基準値を持っている。しかし、本実施形態では、以上の製造方法によって、光ファイバ13の先端面を感熱体10と離隔した状態で保持筒体12を回転しながら、光ファイバ13の先端面の位置を上下に微調整する。これにより、保持筒体12の中心軸に対する感熱体10の回転方向の位置を調整するとともに、光ファイバ13の先端面及び感熱体10間の距離Dを設計上の基準値から微調整することができる。これにより、感熱体10と光ファイバ13の先端面との対向位置を適正化する。
感熱体10の回転方向の位置と、光ファイバ13の先端面及び感熱体10間の距離Dとを適正化した光学式温度センサ1の利点を説明する。光学式温度センサ1は、温度により光学的吸収波長が変化する感熱体10を用いて温度を検出する。光学式温度センサの製造時、感熱体10を伝熱用アルミ板11に接着する際(図2(a))の位置や角度が一定とはならない。このため、保持筒体12を回転させながら光ファイバ13の先端面及び感熱体10間の距離Dを微調整することで、感熱体10を通って反射される光の量(測定値)が指定された光量となるようにする。これにより、感熱体10を含む光学式温度センサ1の先端部の構造物としての個体差を低減する。これにより、本実施形態にかかる光学式温度センサ1の製造方法では、光学式温度センサ1の個体差を低減し、光学式温度センサ1により測定される温度の精度を向上させることができる。
(結露防止)
図2(e)は、図2(d)のC−C面から光学式温度センサ1の先端部の側面を見た図である。感熱体10が結露した場合には正確な温度計測が困難になる。そこで、中空部Sにおける結露を防止する必要がある。このために、本実施形態の光学式温度センサ1では、保持筒体12の先端部の側面に切欠部12aが形成されている。切欠部12aは、中空部Sと連通する。これにより、感熱体10が配置された空間は密閉されず、外気が流入できる構造となる。また、切欠部12aから中空部Sにドライエアーを流入させ、感熱体10が取り付けられた位置にドライエアーを循環させる。これにより、中空部Sに水分が混入し、光学式温度センサ1の先端に結露が生じることを回避できる。これにより、測定対象の温度を安定して測定することができる。
以上、本実施形態に係る光学式温度センサ1の構成及びその製造方法について説明した。本実施形態に係る光学式温度センサ1では、光ファイバ13の端面から出射される光を感熱体10に透過させる。透過光は、光ファイバ13の一の面と接触する伝熱用アルミ板11の面の反対側の面(測定対象と接触する面)にて反射する。反射光は、再び感熱体10を透過し、光ファイバ13の端面から光ファイバ13内に入射される。入射された反射光は、光ファイバ13を通って温度測定装置30に出力される。温度測定装置30は、入力した反射光に基づき、感熱体10が吸収した光の波長を測定し、温度に換算する。これにより、測温対象物205の温度が測定される。
以下では、かかる構成の光学式温度センサ1を使用して測定対象の温度を測定する温度測定装置30の一実施形態について説明する。
[温度測定装置]
図3は、一実施形態に係る温度測定装置のブロック図である。本実施形態に係る温度測定装置30は、投受光モジュール100、測定光用LEDドライバー40、参照光用LEDドライバー41、測定用PD(フォトダイオード)アンプ42、LEDモニター用PDアンプ43、16ビットA/Dコンバータ44、制御部50、LED温度用アンプ52及びヒータドライバ53を有する。
(投受光モジュール)
本実施形態に係る投受光モジュール100について、一実施形態に係る投受光モジュールを示した図4を参照しながら説明する。投受光モジュール100は、測定用及び参照用の光を出力する投光部(投光モジュール)2と、光学式温度センサ1の感熱体10で吸収した波長の反射光(測定光の反射光及び参照用の反射光)を受光する受光部(受光モジュール)3とを有する。
投光部2は、測定用LED31、参照用LED32、ビームスプリッタ33、LED用SiPD(シリコンフォトダイオード)34及び光コネクタ35を有する。受光部3は、測定用SiPD36及び光コネクタ37を有する。
測定用LED31は、第1の波長の測定光を出力する。測定用LED31は、感熱体10の温度変化に応じて感熱体10を透過する光量が変化する波長帯の光を測定光として出力する。
参照用LED32は、第2の波長の参照光を出力する。参照用LED32は、感熱体10の温度にかかわらず感熱体10を透過する光量は一定であり、感熱体10の温度変化に応じて感熱体10を透過する光量が変化しない波長帯の光を参照光として出力する。
ビームスプリッタ33は、入射した測定光及び参照光の一部を透過し、一部を反射する。ビームスプリッタ33で透過した光は、光コネクタ35に接続された光ファイバ13を通して光学式温度センサ1に伝えられる。ビームスプリッタ33の反射光は、LED用SiPD(シリコンォトダイオード)34に入射する。LED用SiPD34は、投光確認用のフォトダイオードであり、測定光の光量及び参照光の光量に応じた電流値がそれぞれ出力される。
測定用SiPD36は、光学式温度センサ1からの反射光を光コネクタ37に接続された光ファイバ13を通して受光する。測定用SiPD36は、入力した反射光の光量に応じた電流値を出力する。
(投受光モジュール以外の構成)
温度測定装置30に含まれる投受光モジュール100以外の構成について、図3を参照しながら、説明を続ける。LEDモニター用PDアンプ43は、LED用SiPD34から出力された電流値を電圧に変換して増幅する。
16ビットA/Dコンバータ44は、LEDモニター用PDアンプ43から出力された電圧のアナログ値をデジタル値に変換し、変換されたデジタル値をモニター値として制御部50に入力する。
制御部50は、モニター値が変動したら、モニター値が変動しているLED(測定用LED31又は参照用LED32)の出力値を変更するように制御する。前記出力値を変更するための制御信号は、制御部50のPWM調光からパルス値として出力される。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。CPUは、ROM等の記憶領域に格納された各種データに従って温度算出及び温度管理を実行する。なお、制御部50の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもよい。
測定光用LEDドライバー40は、制御部50から出力された制御信号のパルス幅に応じて測定用LED31に実際に流す電流をフィードバック制御する。
参照光用LEDドライバー41は、制御部50から出力された制御信号のパルス幅に応じて参照用LED32に実際に流す電流をフィードバック制御する。
これにより、フィードバック制御された電流値に基づき測定用LED31及び参照用LED32から一定の光量の測定光及び参照光が出力される。
かかるモニター機能によれば、光源として使用する測定用及び参照用の2種類のLEDの発光強度を、LED用SiPD34により計測し、常に測定光及び参照光の光量が一定になるようにフィードバック制御される。これにより、測定用LED31及び参照用LED32自体の発光強度が経年変化により低下しても、これに応じてフィードバック制御する電流値を大きくすることで測定用LED31及び参照用LED32から出力される測定光及び参照光の光量を一定に制御することができる。これにより、温度測定装置30としての経年変化を抑制し、精度の高い温度測定を可能とし、温度測定装置30の寿命を長くすることができる。
前述したように、測定用SiPD36は、光学式温度センサ1からの反射光を光コネクタ37に接続された光ファイバ13を通して受光する。測定用SiPD36は、入力した反射光の光量に応じた電流値を出力する。測定用PDアンプ42は、測定用SiPD36から出力された電流値を電圧に変換して増幅する。
16ビットA/Dコンバータ44は、測定用PDアンプ42から出力された電圧のアナログ値をデジタル値に変換し、変換されたデジタル値を光学的温度センサ1により検出された測定値として制御部50に入力する。制御50は、測定値から温度を換算する。
[温度測定方法]
次に、温度測定装置30を使用した一実施形態に係る温度測定方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、一実施形態に係る温度測定方法を示したフローチャートを示す。なお、図6の温度測定方法を開始する前に、図3の下図に示した時間T1では、測定用LED31又は参照用LED32のいずれからも光を出力していない状態における測定用SiPD36の出力値(初期値)を計測する。次に、時間T2では、測定用LED31(LED1)から光を出力したときに戻ってくる反射光(戻り光)を測定用SiPD36により計測する。次に、時間T3では、参照用LED32(LED2)から光を出力したときに戻ってくる反射光を測定用SiPD36により計測する。時間T1、T2,T3は繰り返し実行されるが、以下では、時間T1、T2,T3を一回実施したときの温度制御について説明する。
また、時間T1で測定用SiPD36により測定される出力値(初期値)は、通常ほぼ「0」に近い値になるが、所定の閾値以上になった場合、時間T2で測定用LED31から出力された光に対する反射光の測定値から出力値(初期値)を減算することで測定光の測定値を補正する。同様に、参照用LED32から出力された光に対する反射光の測定値から出力値(初期値)を減算することで参照光の測定値を補正する。以下に説明する温度測定方法では、この補正が発生しない場合の温度測定方法について説明し、補正が発生した場合についての説明は省略する。
まず、ステップS31にて、測定用LED31(LED1)から第1の波長の測定光を出力する。測定光は、光ファイバ13を通り、光ファイバ13の先端面から出射され、感熱体10を透過する。測定光は、感熱体10の温度が変わると透過する光量が変化する波長帯(第1の波長)の光である。透過された測定光は、伝熱用アルミ板11(測定対象との接触面)にて反射する。測定光の反射光は、再び感熱体10を透過し、光ファイバ13の先端面から光ファイバ13内に入射される。
次に、ステップS32にて、測定用SiPD36は、光ファイバ13を通って受光した温度センサ1からの反射光(戻り光)を受光する。測定用SiPD36は、その光量に応じた電流値I1を出力する。
次に、ステップS33にて、参照用LED32(LED2)から第2の波長の参照光を出力する。参照光は、光ファイバ13を通り、光ファイバ13の先端面から出射され、感熱体10を透過する。参照光は、感熱体10の温度が変わっても透過する光量が変化しない波長帯(第2の波長)の光である。透過された測定光は、伝熱用アルミ板11(測定対象との接触面)にて反射する。参照光の反射光は、再び感熱体10を透過し、光ファイバ13の先端面から光ファイバ13内に入射される。
次に、ステップS34にて、測定用SiPD36は、光ファイバ13を通って受光した温度センサ1からの反射光(戻り光)を受光する。測定用SiPD36は、その光量に応じた電流値I2を出力する。
次に、ステップS35にて、制御部50は、測定光の反射光から測定された電流値I1と、参照光の反射光から測定された電流値I2との比率を求め、温度に換算し、出力する。
以上に説明したように、本実施形態の温度測定装置30によれば、測定光の反射光及び参照光の反射光に基づき、光学式温度センサ1によって検出された測温対象物205の温度が算出される。
その際、実験により、本実施形態の温度測定装置30によれば、約8.3ミリ秒周期で温度測定ができることがわかった。一般的な温度測定が40ミリ秒周期程度で測定が可能であるのと比較して短時間で温度測定が可能である。
[温調部]
光学式温度センサ1を用いた半導体吸収波長による温度測定では、投光部モジュール100の内部の温度によって測定値に誤差が出る。これは、測定用LED31及び参照用LED32の近傍の温度である環境温度の変動により測定値が変動するために発生する測定値の誤差である割合が高い。つまり、LEDの中心波長は温度によりシフトするため、LEDの環境温度を一定に保つことで環境温度の影響を受けずに安定した温度測定が可能となる。また、LEDの個体によってもLEDの中心波長は若干異なる。よって、LEDの個体差を吸収するためにLEDの環境温度を制御すれば、より安定した温度測定が可能となり、温度センサとしての個体差が低減できる。このため、本実施形態では、測定用LED31及び参照用LED32をそれぞれ別々に温調する機構を設けた。以下に、測定用LED31及び参照用LED32をそれぞれ別々に温調する機構を含む温調部について、図3及び図6を参照しながら説明する。
まず、図3を参照すると、温調部は、投受光モジュール100に含まれる温度センサ38及び温調機構6と、LED温度用アンプ52と、ヒータドライバ53と、制御部50とを含み、測定用LED31の温調と、参照用LED32の温調とをそれぞれ別々に行う。
次に、図6を参照すると、図6(a)に示したように、投光部2の内部には測定用LED31と参照用LED32とが配置されている。測定用LED31と参照用LED32のそれぞれには、別々に温調機能が設けられている。具体的に温調機能を説明すると、測定用LED31の外周は筒状部材60によって覆われている。参照用LED32の外周も同様に筒状部材63によって覆われている。筒状部材60、63は、例えば、アルミニウムで形成されている。
筒状部材60、63の上部には、厚さが1mm程のアルミ板62、64を挟んでペルチェ素子61、65が置かれている。図6(b)に示したように、ペルチェ素子61(ペルチェ素子65も同様であるため説明は省略)は、2種類の金属の接合部に電流を流すと一方の金属から他方の金属へ熱が移動する性質を有し、これにより、一方の面で吸熱が生じ、他方の面で発熱が生じる。なお、筒状部材60、アルミ板62及びペルチェ素子61は、図3の温調機構6の一例であり、第1の光源の温度に基づき、前記第1の光源を加熱又は冷却する第1の温調機構に相当する。筒状部材63、アルミ板64及びペルチェ素子65は、図3の温調機構6の一例であり、第2の光源の温度に基づき、前記第2の光源を加熱又は冷却する第2の温調機構に相当する。温調機構6は、アルミ板62、64を有しなくてもよい。
例えば、図6(b)に示したように、測定用LED31の近傍に設けられた温度センサ38によって検出された温度に基づきペルチェ素子61に流す電流を制御し、図6(b)に示したペルチェ素子61の下面を発熱させた場合、熱伝導のよいアルミ板62及び筒状部材60を通して測定用LED31が加熱される。温度センサ38により検出された温度に基づきペルチェ素子37に流す電流を制御し、ペルチェ素子61の下面を吸熱させた場合、アルミ板62及び筒状部材60を通して測定用LED31が冷却される。参照用LED32も同様にして、ペルチェ素子65に流す電流を制御することで、参照用LED32の加熱及び冷却が可能である。
従来の投光モジュールでは、筐体全体を温度調整するために高出力のヒータが必要であった。一方、本実施形態にかかる温調部では、測定用LED31及び参照用LED32を局所的に温調する。このため、測定用LED31及び参照用LED32を少ない熱量で温調することができる。
また、筒状部材60、63の熱が外部に逃げないように、筒状部材60、63とその外周の筐体Hとは断熱するように設計されている。つまり、筒状部材60、63の周辺に空間を設け、筒状部材60、63と筐体Hとの接触面を少なくしている。筒状部材60、63と筐体Hとの間に図示しない断熱リングを挿入してもよい。
ペルチェ素子61の置き方は、図6(c)の上図に示したようにアルミ板62上に置いてもよいし、図6(c)の下図に示したように筒状部材60の上部にフラットな面60aを形成し、その上に置いてもよい。ペルチェ素子65も同様にアルミ板64を介さずに筒状部材63上に置いてもよい。
図3に戻り、温度センサ38により検出された電流値は、LED温度用アンプ52に入力される。LED温度用アンプ52は、電流値を電圧値に変換して増幅し、制御部50に出力する。制御部50は、入力した電圧値に応じてヒータに出力する電流値を制御する制御信号を出力する。ヒータドライバ53は、制御信号に基づき、ペルチェ素子61、65に所望の電流を流す。これにより、測定用LED31及び参照用LED32の温度が、それぞれ所望の温度に制御される。また、測定用LED31及び参照用LED32の温度制御は別々に独立して行われる。
波長の分布は、LED毎に個体差を有している。本実施形態によれば、測定用LED31及び参照用LED32のそれぞれに設けられた温調部により、各LEDをそれぞれ温度調整する。これにより、測定用LED31及び参照用LED32の個体差及び環境温度を吸収することができる。
[LEDの経時変化]
LEDの光量は経時変化し、徐々に減っていく。そのため、実際にLEDから出力される光量を監視し、LEDから出力される光量を一定に制御することで、温度をより精度良く測定することができる。そこで、LEDの光量を監視するために、本実施形態に係る温度測定装置30では、図3及び図4に示したLED用SiPD34が設けられる。
LED用SiPD34は、投光確認用のフォトダイオードであり、測定用LED31から出力された測定光の光量に応じた電流値を出力する。LEDモニター用PDアンプ43は、LED用SiPD34から出力された電流値を電圧に変換して増幅し、制御部50に出力する。
制御部50は、入力した電圧値に応じてLED用SiPD34から出力された光量を測定し、光量の減少に応じて測定用LED31に流す電流を増やすように制御する。
測定光用LEDドライバー40は、制御部50から出力された制御信号のパルス幅に応じて測定用LED31に流す電流値をフィードバック制御する。
同様にして、LED用SiPD34は、参照用LED32から出力された参照光の光量に応じた電流値を出力する。LEDモニター用PDアンプ43は、LED用SiPD34から出力された電流値を電圧に変換して増幅し、制御部50に出力する。
制御部50は、入力した電圧値に応じてLED用SiPD34から出力された光量を測定し、光量の減少に応じて参照用LED32に流す電流を増やすように制御する。
参照光用LEDドライバー41は、制御部50から出力された制御信号のパルス幅に応じて参照用LED32に流す電流値をフィードバック制御する。
以上の構成により、測定用LED31及び参照用LED32から出力される光量を監視することで、LEDの経時変化に応じてLEDから出力される光量を一定に制御することができる。
なお、LED用SiPD34は、測定光及び参照光の光量をモニターするモニター部に相当する。測定用LED31は、第1の波長の測定光を出力する第1の光源に相当する。参照用LED32は、第2の波長の測定光を出力する第2の光源に相当する。
[効果の例]
図7〜図9に、本実施形態に係る温度測定結果の一例を示す。図7〜図9では、横軸が時間(秒)、縦軸が測温対象物の表面の温度(℃)を示す。図7では、測温対象物の表面の温度を変えずに横軸に示す時間が経過したときの本実施形態及び比較例1,2の各温度センサが検出した検出値を示す。
これによれば、本実施形態に係る光学式温度センサ1は、比較例1,2の温度センサと比べて温度のバラツキが最も少ない。比較例1の温度センサは、本実施形態に係る光学式温度センサ1の2倍程度のバラツキがあり、比較例2の温度センサは、本実施形態に係る光学式温度センサ1の3倍程度のバラツキがある。以上から、本実施形態に係る光学式温度センサ1は、出力特性及び安定性に優れていることがわかる。
また、図8では、測温対象物の表面の温度を20℃から70℃に制御したときに、横軸に示す時間が経過したときの本実施形態及び比較例1,2の各温度センサが検出した検出値を示す。これによれば、本実施形態の光学式温度センサ1及び比較例2の温度センサは、比較例1の温度センサよりも応答性が高い。また、右の拡大図に示した温度変化の立ち上がり近傍での温度センサの検出値を見ると、本実施形態の光学式温度センサ1は、比較例2の温度センサよりもバラツキが少ないことがわかる。以上から、本実施形態の光学式温度センサ1は、出力特性、安定性及び応答性に優れることがわかる。
また、図9では、測温対象物の表面の温度を70℃から80℃に制御したときに、横軸に示す時間が経過したときの本実施形態及び比較例1,2の各温度センサが検出した検出値を示す。これによれば、本実施形態の光学式温度センサ1及び比較例2の温度センサは、比較例1の温度センサよりも応答性が高い。また、右の拡大図に示した温度変化の立ち上がり近傍での温度センサの検出値を見ると、本実施形態の光学式温度センサ1は、比較例2の温度センサよりもバラツキが少ない。以上から、本実施形態の光学式温度センサ1は、比較的高い温度の領域における温度変動に対しても出力特性、安定性及び応答性に優れることがわかる。
以上、本実施形態によれば、光ファイバ先端面と感熱体とは所定距離離隔された位置にて対向配置される。これにより、精度、応答性及び安定性において優れた光学式温度センサを提供することができる。また、本実施形態によれば、所定の性能を満たす低コストの光学式温度センサの製造方法を提供することができる。
また、本実施形態の温度測定装置30によれば、短時間で温度測定が可能である。また、本実施形態の温度測定装置30によれば、測定用LED31及び参照用LED32から出力される測定光及び参照光の光量を一定に制御することができる。これにより、温度測定装置30としての経年変化を抑制し、精度の高い温度測定を可能とし、温度測定装置30の寿命を長くすることができる。
さらに、本実施形態の温度測定装置30によれば、測定用LED31及び参照用LED32のそれぞれに設けられた温調部により、各LEDをそれぞれ温度調整する。これにより、測定用LED31及び参照用LED32の個体差及び環境温度を吸収することができる。
以上、光学式温度センサ及び光学式温度センサの製造方法を、上記実施形態により説明した。また、温度測定装置、投光モジュール及び温度測定方法を、上記実施形態により説明した。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。また、上記実施形態及び変形例を矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
例えば、本発明に係る光学式温度センサ、温度測定装置及び温度測定方法は、エッチング処理装置、アッシング処理装置、成膜処理装置に設置される静電チャックや、それ以外の部品の温度検知に適用可能である。
1:光学式温度センサ
2:投光部
3:受光部
6:温調機構
10:感熱体
11:伝熱用アルミ板
12:保持筒体
12a:切欠部
12b:突出部
13:光ファイバ、
14:固定部材
14a:肩落ち部
15:スプリング
30:温度測定装置
31:測定用LED
32:参照用LED
33:ビームスプリッタ
34:LED用SiPD
35:光コネクタ
36:測定用SiPD
37:光コネクタ
38:温度センサ
40:測定光用LEDドライバー
41:参照光用LEDドライバー
42:測定用PDアンプ
43:LEDモニター用PDアンプ
44:16ビットA/Dコンバータ
50:制御部
52:LED温度用アンプ
53:ヒータドライバ
60,63:筒状部材
61,65:ペルチェ素子
62、64:アルミ板
100:投受光モジュール

Claims (5)

  1. 第1の波長の測定光を出力する第1の光源と第2の波長の参照光を出力する第2の光源とから光を投光する投光部と、
    温度に応じて光透過特性が変化する温度感知素子を透過した前記測定光の反射光と前記参照光の反射光とを受光する受光部と、
    前記温度感知素子と光ファイバを内部に有する光学式温度センサと、
    前記受光した前記測定光の反射光の光量と前記参照光の反射光の光量とに基づき、前記温度感知素子により感知された温度を測定する制御部と、
    前記第1の光源と前記第2の光源とをそれぞれ別々に温調する温調部と、
    を有し、
    前記温度感知素子と前記光ファイバの先端面とは離間しており、
    前記離間している距離は調整可能である、
    ことを特徴とする温度測定装置。
  2. 前記第1の光源から出力される測定光の光量と前記第2の光源から出力される参照光の光量とをモニターするモニター部を更に有し、
    前記制御部は、
    前記モニターされた測定光の光量と参照光の光量とに基づき、前記第1の光源が出力する測定光の光量と前記第2の光源が出力する参照光の光量とをそれぞれ制御する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
  3. 前記温調部は、
    前記第1の光源の温度と前記第2の光源の温度とをそれぞれ検知する複数の温度センサと、
    前記検知された前記第1の光源の温度に基づき、前記第1の光源を加熱又は冷却する第1の温調機構と、
    前記検知された前記第2の光源の温度に基づき、前記第2の光源を加熱又は冷却する第2の温調機構と、
    を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の温度測定装置。
  4. 前記投光部は、前記第1の光源と前記第2の光源とを収容する筐体を有し、
    前記筐体と前記第1の温調機構及び第2の温調機構との間の少なくとも一部には空間が設けられている、
    ことを特徴とする請求項3に記載の温度測定装置。
  5. 第1の光源から第1の波長の測定光を出力し、
    第2の光源から第2の波長の参照光を出力し、
    前記測定光と前記参照光とを、光学式温度センサの内部に有する光ファイバを介して、温度に応じて光透過特性が変化する温度感知素子に透過させ、前記透過した前記測定光の反射光と前記参照光の反射光とを受光し、
    前記受光した前記測定光の反射光の光量と前記参照光の反射光の光量とに基づき、前記温度感知素子により感知された温度を測定し、
    前記第1の光源と前記第2の光源とをそれぞれ別々に温調し、
    前記温度感知素子と前記光ファイバの先端面とは離間しており、
    前記離間している距離は調整可能である、
    ことを特徴とする温度測定方法。
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