JP6265934B2 - Ag−酸化物系電気接点材料の製造方法及び製造装置 - Google Patents

Ag−酸化物系電気接点材料の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、Ag−酸化物系電気接点材料、その製造方法及び製造装置、並びに遮断器及び電磁接触器に関する。詳細には、本発明は、遮断器(特に、気中用遮断器)、電磁接触器、リレーなどに用いられるAg−酸化物系電気接点材料、その製造方法及び製造装置、並びに当該Ag−酸化物系電気接点材料を備える遮断器及び電磁接触器に関する。
遮断器、電磁接触器、リレーなどに用いられる電気接点材料として、Ag−酸化物系電気接点材料が一般に用いられている。Ag−酸化物系電気接点材料は、耐食性、導電性、熱伝導性、加工性などに優れたAgを主成分とし、電気接点材料に必要な特性である耐溶着性、耐消耗性などを付加するために、易酸化性金属(以下、「Me」と略す。)の酸化物(以下、「MeO」と略す。)をAg中に分散させた材料である。MeOの例としては、ZnO、CdO、In、SnO、CuOなどが挙げられる。
Ag−酸化物系電気接点材料の製造方法としては、内部酸化法、粉末冶金法などの方法が挙げられるが、耐溶着性及び耐消耗性の観点から、内部酸化法を用いることが好ましい。内部酸化法は、Ag及びMeを加熱及び溶融して合金化してAg−Me合金を得た後、Meを選択的に酸化させる方法である。この方法では、Ag−Me合金を接点形状に加工する前に酸化する前酸化法と、Ag−Me合金を接点形状に加工した後に酸化する後酸化法とに一般に分けられる。一方、粉末冶金法は、Ag粉末とMeO粉末とを混合し、成形及び焼結する方法である。
内部酸化法の中でも前酸化法は、Ag−Me合金中のMeを内部まで十分に酸化させるため、数mm〜1cm程度の小さな合金チップに予め加工した後、合金チップを内部酸化する。その後、一次加工(例えば、熱間加工、冷間加工など)によってワイヤー形状、薄板形状に加工し、二次加工(例えば、冷間加工、パンチングなど)によって接点形状に加工する。このようにして得られた接点材料を、ロウ付け、圧接などの方法によって台座に接合する。
この方法に用いられる合金チップを電子顕微鏡で観察すると、Ag中のMeの分散状態にバラつきがあり、1μm〜十数μmの大きさのMeが存在した状態が見られる。そのため、このような分散状態を有する合金チップを内部酸化して接点材料を製造すると、Meの分散状態によって接点材料の消耗度合に差異が生じ、接点材料の寿命が短くなるという問題がある。
そこで、Ag中にMeを微細且つ均一に分散させる方法として、合金チップの代わりに、ガスアトマイズ法によって作製されたAg−Me合金粉末を用いる方法が提案されている。ガスアトマイズ法は、Ag及びMeを含む溶融合金を、取鍋に設けられた小孔から流出させて細流とし、この細流に不活性気体(例えば、窒素、アルゴンなど)、水などの冷却媒体を吹き付けて急冷凝固させることでAg−Me合金粉末を得ることができる。ガスアトマイズ法によって得られるAg−Me合金粉末は、数μm〜数十μmの球状であり、Agの粒界にMeを微細且つ均一に分散させることができる。Ag−Me合金粉末は、内部酸化した後、一次加工及び二次加工を行うことによって接点材料とすることができる。
一方、後酸化法は、溶融合金をインゴットとして取り出し、一次加工によってワイヤー形状、薄板形状に加工し、二次加工によって接点形状に加工する。その後、加工されたAg−Me合金を内部酸化して接点材料とし、得られた接点材料をロウ付け、圧接などの方法によって台座に接合する。後酸化法は、接点形状に加工した後に内部酸化を行うため、前酸化法に比べて、Ag−Me合金中のMeを内部まで均一に酸化させることができず、酸化が不十分な層が中心部に形成される場合がある。
また、従来の内部酸化法は、一般に、酸化炉に合金を入れ、常圧〜10atm程度の酸素雰囲気下で500〜700℃に加熱処理することによって行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかしながら、従来の内部酸化法では、ガスアトマイズ法によって作製されたAg−Me合金粉末を用いたとしても、縞状にMeOが析出することがあるため、MeOをAg中に微細且つ均一に分散させることが難しく、消耗性が十分でないという問題がある。
そこで、特許文献3は、Ag−ZnO合金粉末にY(酸化イットリウム)を配合して機械的に混合することで、ZnOをAg中に微細且つ均一に分散させる方法を提案している。
特開昭51−144966号公報 特開昭52−128555号公報 特開昭61−272338号公報
しかしながら、特許文献3は、Yの配合によってAg中のZnOの分散性を向上させているものの、Yは高価であるため、Ag−酸化物系電気接点材料の製造コストが上昇するという問題がある。また、特許文献3は、機械的な方法によってAg中のZnOの分散性を向上させる技術に関するものであり、内部酸化によってAg中のZnOなどのMeOの分散性を向上させる技術については何ら提案していない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、内部酸化によってAg中のMeOの分散性を向上させたAg−酸化物系電気接点材料、その製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、Ag中のMeOの分散性を向上させることによって長寿命化させたAg−酸化物系電気接点材料を備える遮断器及び電磁接触器を提供することを目的とする。
本発明者らは上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、Ag中にMeOが縞状に析出する原因が、内部酸化時の加熱温度が高いことに起因しており、Ag−Me合金粒子を、酸素ガス雰囲気下において、超臨界水又は亜臨界水で内部酸化させることにより、低温で内部酸化を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子を、酸素ガス雰囲気下において、超臨界水又は亜臨界水で内部酸化させることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造方法である。
また、本発明は、上記のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法によって製造されることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料である。
また、本発明は、上記のAg−酸化物系電気接点材料を備えることを特徴とする遮断器及び電磁接触器である。
さらに、本発明は、反応炉に水を供給する水供給源と、反応炉に酸素ガスを供給する酸素ガス供給源と、Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子を収容し、且つ前記水供給源及び前記酸素ガス供給源から水及び酸素ガスを受け入れて超臨界状態又は亜臨界状態とし、前記合金からなる粒子の内部酸化を行う反応炉とを備えることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造装置である。
本発明によれば、内部酸化によってAg中のMeOの分散性を向上させたAg−酸化物系電気接点材料、その製造方法及び製造装置を提供することができる。
また、本発明によれば、Ag中のMeOの分散性を向上させることによって長寿命化させたAg−酸化物系電気接点材料を備える遮断器及び電磁接触器を提供することができる。
ガスアトマイズ法に用いられる装置の概略図である。 図1の装置のノズル先端部近傍の拡大図である。 Ag−Zn合金の相図である。 Ag−In合金の相図である。 Ag−Sn合金の相図である。 ガスアトマイズ法によって製造されたAg−Me合金粒子の断面模式図である。 実施の形態1のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法によって内部酸化されたAg−MeO合金粒子の断面模式図である。 一般的な内部酸化によって形成されるAg−MeO合金粒子の断面模式図である。 接触子にロウ付けで形成されたAg−酸化物系電気接点材料の断面模式図である。 接触子にリベットかしめで形成されたAg−酸化物系電気接点材料の断面模式図である。 実施の形態2のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図である。 実施の形態3のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図である。 実施の形態4のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図である。 実施の形態5のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図である。 実施の形態6のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図である。
実施の形態1.
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法は、Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子(以下、「Ag−Me合金粒子」という。)を、酸素ガス雰囲気下、超臨界水又は亜臨界水で内部酸化させることによって行われる。
ここで、本明細書において「超臨界水」とは、物質の状態図で温度、圧力、エントロピー線図の臨界点を超え、気体、液体及び固体の三態のいずれでもない超臨界状態の水のことを意味する。ここで、一般に、水の臨界温度は374℃、水の臨界圧力は22.12MPaである。また、本明細書において「亜臨界水」とは、超臨界状態を超えてはいないが、それに近い高温高圧状態であって、気体、液体及び固体の三態から超臨界状態までの過渡的な遷移状態(亜臨界状態)にある水のことを意味する。
超臨界水又は亜臨界水の酸素の飽和溶解量は、常温(25℃)常圧(1atm)状態の水に対する酸素の飽和溶解量(約8mg/L)に比べて100倍以上に増加する。そのため、酸素ガス雰囲気下で超臨界水又は亜臨界水を用いて内部酸化を行うことにより、Ag−Me合金粒子の内部酸化を効率的に行うことができる。特に、酸素が溶解した超臨界水又は亜臨界水は、Agを酸化させないため、Meのみを選択的に酸化させることができる。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法に使用される易酸化性金属(Me)としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のもの用いることができる。易酸化性金属の例としては、Zn、In、Sn、Cu、Cr、Ni、Sb、Mg、Mo、Fe、Laなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法において使用されるAg−Me合金粒子としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いて製造することができる。その中でも、Ag−Me合金粒子は、Ag中にMeを均一に分散させる観点から、ガスアトマイズ法によって製造することが好ましい。
図1は、ガスアトマイズ法に用いられる装置の概略図を示す。また、図2は、図1の装置のノズル先端部近傍の拡大図を示す。図1に示すように、Ag及びMeを溶融した合金(以下、「Ag−Me溶融合金1」という。)を取鍋2の底部に設けられた小孔から流出させて細流とし、この細流にノズル3から不活性気体(例えば、窒素、アルゴンなど)、水などの冷却媒体4を吹き付ける。冷却媒体4が吹き付けられた細流は、真空チャンバー5内で急冷凝固し、Ag−Me合金粒子6が形成される。Ag−Me合金粒子6は、真空チャンバー5の底部から排出され、受け皿7に集められる。集められたAg−Me合金粒子6は、必要に応じて分級(篩分け)して大きさが揃えられる。
Ag−Me溶融合金1におけるAg及びMeの含有量は、Ag−酸化物系電気接点材料に適した範囲であれば特に限定されない。
ここで、Ag及びZnを含む合金(以下、「Ag−Zn合金」という。)の相図を図3、Ag及びInを含む合金(以下、「Ag−In合金」という。)の相図を図4、Ag及びSnを含む合金(以下、「Ag−Sn合金」という。)の相図を図5にそれぞれ示す(出典:Thaddeus B. Massalski著, Binary Alloy Phase Diagrams, Second Edition Vol.1, 1990)。
図3に示すように、Ag−Zn合金の融点は、Znの含有量に関わらず、Znの融点(419.58℃)よりも高く、且つ水の臨界温度(374℃)よりも高い。そのため、MeがZnである場合、Ag−Zn溶融合金におけるZnの含有量は、特に限定されないが、一般に1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは8〜25質量%、最も好ましくは10質量%超過20質量%以下である。一般的な内部酸化を用いる場合、Znの含有量が高くなると、内部酸化時にAg−Zn合金粒子の表面に厚いZnO層が形成されて内部酸化の進行が阻害されるものの、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法に用いられる内部酸化によれば、酸化力が大きいため、Znの含有量が高くなってもZnを効率的に酸化させることができる。また、Znの含有量が多い合金チップの場合、酸化時のZnOの体積膨張によってクラックが入り、合金チップが砕け易くなるが、ガスアトマイズ法によって得られるAg−Zn合金粒子は小さいため、クラックが入り難く、Znの含有量を高めることが可能になる。なお、図示していないが、Cu、Cr、Ni、Sb、Mg、Mo、Fe又はLaを含むAg合金の融点もまた、これらの元素の融点よりも高く、且つ水の臨界温度よりも高いため、各元素の含有量はZnの場合と同様にすることができる。
他方、図4に示すように、Ag−In合金においては、Inの融点が156.634℃と低いため、Inの含有量が多いと、水の臨界温度よりも融点が低くなる。また、図5に示すように、Ag−Sn合金においても、Snの融点が231.9681℃と低いため、Snの含有量が多いと、水の臨界温度よりも融点が低くなる。そのため、In又はSnの含有量が多いAg合金からなる粒子では、超臨界水を用いて内部酸化させる際に、水の臨界温度に達する前に合金が溶解してしまうため、合金粒子の形状を保持することができない場合がある。
したがって、Ag−Me合金粒子としてAg−In合金粒子を用いる場合、Ag−In溶融合金におけるInの含有量は、一般に21質量%以下、好ましくは1〜21質量%、より好ましくは5〜21質量%、さらに好ましくは10〜21質量%、最も好ましくは15質量%超過21質量%以下に制御すべきである。また、Ag−Me合金粒子としてAg−Sn合金粒子を用いる場合、Ag−Sn溶融合金におけるSnの含有量は、一般に24.58質量%以下、好ましくは1〜24.58質量%、より好ましくは5〜19質量%、さらに好ましくは10〜19質量%、最も好ましくは15質量%超過19質量%以下に制御すべきである。In又はSnの含有量を上記の範囲に制御することにより、合金粒子の形状を保持しつつIn又はSnを効率的に酸化させることができる。
ガスアトマイズ法によって製造されたAg−Me合金粒子6の断面模式図を図6に示す。この断面模式図は、AgとMeとの質量割合を80:20とした場合に得られたAg−Me合金粒子6のSEM画像を模式化した図である。図6に示すように、Ag−Me合金粒子6は、Ag8の粒界にMe9が微細且つ均一に分散した構造を有する。具体的には、1μm程度の粒径を有するAg8の結晶の周りにMe9が存在しており、Ag−Me合金粒子6におけるMe9の分布も均一である。また、図示していないが、Me9がInである場合、Ag8の結晶中にもInが拡散している。
Ag−Me合金粒子6は、各種製造条件によって異なるが、一般に数μm〜数十μmの粒径を有する。
内部酸化は、上記のようにして製造されたAg−Me合金粒子6を、酸素ガス雰囲気下、超臨界水又は亜臨界水と接触させることによって行う。超臨界水又は亜臨界水は、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度及び圧力に設定することによって得ることができる。
ここで、本明細書において「水が超臨界状態となる温度及び圧力」とは、水の臨界温度以上の温度及び水の臨界圧力以上の圧力のことを意味する。また、本明細書において「水が亜臨界状態となる温度及び圧力」とは、水の臨界温度よりも10%低い温度以上水の臨界温度未満の温度、及び水の臨界圧力よりも10%低い圧力以上水の臨界圧力未満の温度のことを意味する。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法に使用するのに最適な超臨界水は、使用する易酸化性金属(Me)の種類に応じて、温度及び圧力の範囲を制御することによって得ることができる。例えば、易酸化性金属がZnである場合、温度を、好ましくは水の臨界温度以上Znの融点(419.46℃)以下、より好ましくは375℃〜415℃、さらに好ましくは380〜410℃、最も好ましくは380〜400℃、且つ圧力を、好ましくは臨界圧力以上50MPa以下、より好ましくは23〜45MPa、さらに好ましくは24〜40MPaに設定することによって内部酸化に最適な超臨界水を得ることができる。温度がZnの融点よりも高いと、内部酸化時に溶融したZnが移動し、酸化されたZn(すなわち、ZnO)が凝集してAg8中にZnOが不均一に生成することがあるが、温度をZnの融点以下に設定することにより、この問題を防止することができる。
易酸化性金属がInである場合、温度を、好ましくは水の臨界温度以上670℃以下、より好ましくは375℃〜600℃、さらに好ましくは380〜500℃、最も好ましくは380〜450℃、且つ圧力を、好ましくは臨界圧力以上50MPa以下、より好ましくは23〜45MPa、さらに好ましくは24〜40MPaに設定することによって内部酸化に最適な超臨界水を得ることができる。また、易酸化性金属がSnである場合、温度を、好ましくは水の臨界温度以上724℃以下、より好ましくは375℃〜600℃、さらに好ましくは380〜500℃、最も好ましくは380〜450℃、且つ圧力を、好ましくは臨界圧力以上50MPa以下、より好ましくは23〜45MPa、さらに好ましくは24〜40MPaに設定することによって内部酸化に最適な超臨界水を得ることができる。温度及び圧力を上記の範囲に制御することにより、合金粒子の溶解を防止することができる。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法に使用するのに最適な亜臨界水は、温度を、好ましくは335℃以上374℃未満、より好ましくは340℃以上374℃未満、さらに好ましくは345℃以上374℃未満、且つ圧力を、好ましくは20MPa以上22.12MPa未満、より好ましくは20.5MPa以上22.12MPa未満、さらに好ましくは21MPa以上22.12MPa未満に設定することによって得ることができる。
超臨界水は、亜臨界水に比べて、酸素の飽和溶解量が大きいため、酸化力も高い。したがって、内部酸化を迅速且つ効率的に行う観点から、超臨界水を用いることが好ましい。
また、Ag−Me合金粒子6を超臨界水又は亜臨界水と接触させる時間は、特に限定されず、Ag−Me合金粒子6の組成、温度、圧力などの条件に応じて適宜調整すればよい。
また、酸素ガス雰囲気とする方法についても、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法に従って行うことができる。例えば、内部酸化用の反応容器内に酸素ガスを導入することによって酸素ガス雰囲気にすることができる。
なお、超臨界水の酸化力を向上させる方法として、塩酸、硫酸などの無機酸を添加する方法が知られているが、酸性領域下では、Me9などの金属が溶解してしまうことがある。また、無機酸に起因するイオンが、合金中に取り込まれてしまう結果、接点材料の寿命が短くなることがある。そのため、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法では、無機酸を使用しないことが好ましい。
上記のようにして内部酸化されたAg−MeO合金粒子の断面模式図を図7に示す。この断面模式図は、Ag8とMe9との質量割合を80:20とした場合に得られたAg−Me合金粒子6を内部酸化して得られたAg−MeO合金粒子のSEM画像を模式化した図である。図7に示すように、Ag−MeO合金粒子10は、Ag8の粒界にMeO11が微細且つ均一に分散した構造を有し、MeO11の凝集が抑制されている。
また、Ag−Me合金粒子6は、内部酸化の前に、界面活性剤と混合することが好ましい。Ag−Me合金粒子6を界面活性剤と混合した後に内部酸化を行うことにより、生成するAg−MeO合金粒子10同士の固着を防止することができる。これは、界面活性剤の存在により、個々のAg−Me合金粒子6が界面活性剤に囲まれた状態で分散し、その状態のままでAg−Me合金粒子6の内部酸化が行われるためである。
界面活性剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。その中でも、好ましい界面活性剤としては、超臨界水又は亜臨界水によって酸化分解してCO及びHOとなり、且つハロゲン化物イオン(例えば、塩化物イオン)、硫化物イオン、金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)などの無機イオンを含有しない非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンオレエートなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
他方、一般的な内部酸化によって形成されるAg−MeO合金粒子10の断面模式図を図8に示す。図8に示すように、一般的な内部酸化によって形成されるAg−MeO合金粒子10は、内部酸化時の高温加熱によってMe9が溶融して移動するため、Ag8の粒界にMeO11が縞状に析出し、MeO11が微細且つ均一に分散しない。さらに、一般的な内部酸化によって形成されるAg−MeO合金粒子10には空隙12も発生する。さらに、内部酸化後は、Ag−MeO合金粒子10同士が固着する。
上記のようにして得られたAg−MeO合金粒子10は、当該技術分野において公知の方法に従い、一次加工(例えば、熱間加工、冷間加工など)によってワイヤー形状、薄板形状に加工し、二次加工(例えば、冷間加工、パンチングなど)によって接点形状に加工することによって、Ag−酸化物系電気接点材料とすることができる。そして、このようにして得られたAg−酸化物系電気接点材料は、ロウ付け、圧接などの方法によって台座に接合される。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法によれば、Ag−Me合金粒子6を、酸素ガス雰囲気下、超臨界水又は亜臨界水で内部酸化させることにより、低温で内部酸化を行うことができるため、内部酸化によってAg8中のMeO11の分散性を向上させたAg−酸化物系電気接点材料を得ることができる。
実施の形態2.
本実施の形態の遮断器及び電磁接触器は、実施の形態1のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法によって得られたAg−酸化物系電気接点材料を備える。
本実施の形態の遮断器及び電磁接触器の構成としては、Ag−酸化物系電気接点材料を備えることを除き、特に限定されず、当該技術分野において公知の構成を用いることができる。
本実施の形態の遮断器及び電磁接触器において、Ag−酸化物系電気接点材料は、固定接触子又は可動接触子の一方、好ましくは両方に設けられる。
Ag−酸化物系電気接点材料を固定接触子又は可動接触子(以下、これらをまとめて「接触子」と略す。)に設ける方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、図9に示すように、Ag−酸化物系電気接点材料40を、ロウ材41を用いて接触子42にロウ付けすればよい。また、図10に示すように、リベットかしめを用いてもよい。具体的には、接触子42に穴45を予め形成し、リベット43の頭部にAg−酸化物系電気接点材料40を設けたリベット接点材料44の胴部を穴45に挿入した後、加圧変形させればよい。加圧変形の方法としては、特に限定されないが、例えば、リベット接点材料44の上下方向から金型を用いて加圧すればよい。
本実施の形態の遮断器及び電磁接触器に用いられるAg−酸化物系電気接点材料は、内部酸化によってAg8中のMeO11の分散性を向上させているため、消耗度合の不均一性を防止し、長寿命化を図ることができる。したがって、本実施の形態の遮断器及び電磁接触器は、長寿命化させたAg−酸化物系電気接点材料を備えているため、長期信頼性が高い。
実施の形態3.
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態1のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法を実施するのに好ましいバッチ式の製造装置である。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。
図11は、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図を示す。本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、反応炉20に水を供給する水供給源21と、反応炉20に酸素ガスを供給する酸素ガス供給源22と、Ag−Me合金粒子6を収容し、且つ水供給源21及び酸素ガス供給源22から水及び酸素ガスを受け入れて超臨界状態又は亜臨界状態とし、Ag−Me合金粒子6の内部酸化を行う反応炉20とを備える。
反応炉20の周囲には、反応炉20内の温度を制御するためにヒーター23が設けられる。反応炉20は、耐食性の観点から、ステンレス、ニッケル基合金などの耐食性に優れた材質から形成することが好ましい。反応炉20内には、Ag−Me合金粒子6の収容容器24が設けられる。収容容器24は、融点が高く、超臨界状態又は亜臨界状態においてAg−Me合金粒子6と反応しない材質(例えば、ニッケル基合金、アルミナなど)から形成されることが好ましい。
水供給源21から反応炉20のラインには、高圧ポンプ25及びバルブ26が設けられ、水供給源21の水を高圧ポンプ25で加圧して反応炉20に導入する。高圧ポンプ25としては、特に限定されないが、吐出圧力が20MPa以上の高圧プランジャーポンプを使用することが好ましい。
酸素ガス供給源22から反応炉20のラインには、高圧コンプレッサー27及びバルブ26が設けられ、酸素ガス供給源22の酸素ガスを高圧コンプレッサー27で加圧して反応炉20に導入する。
反応炉20には、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出するためのラインが設けられる。内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水は、熱交換器28で冷却され、汽水分離器29で気体と液体とに分離した後に外部に排出する。反応炉20と熱交換器28との間のライン、熱交換機28と汽水分離器29との間のライン、及び汽水分離器29の後の排出ラインにはバルブ26が設けられる。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いたAg−酸化物系電気接点材料の製造は、以下の手順にて行われる。
まず、Ag−Me合金粒子6又はAg−Me合金粒子6と界面活性剤との混合物、及び必要に応じて純水を収容容器24に収容して反応炉20に配置する。
次に、反応炉20を、ヒーター23を用い、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱する。加熱速度は、特に限定されず、反応炉20の大きさなどに応じて適宜設定すればよい。
次に、水供給源21の水を、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力に高圧ポンプ25で加圧して反応炉20に導入すると共に、酸素ガス供給源22の酸素ガスを、高圧コンプレッサー27で反応炉20内の水圧以上に加圧して反応炉20に導入する。反応炉20に導入された水は、超臨界水又は亜臨界水となる。また、反応炉20内に導入された酸素ガスは、反応炉20内で超臨界水又は亜臨界水に溶解し、内部酸化を加速させる役割をする。超臨界水又は亜臨界水に対する酸素ガスの溶解量は、特に限定されないが、内部酸化を効率的に行う観点から、800mg/L以上であることが好ましい。
なお、上記の手順で行うことが理想ではあるが、製造の容易性などの観点から、反応炉20の加熱前に酸素ガスを反応炉20に導入し、反応炉20の加熱後に酸素ガスの導入を停止してもよい。また、水及び酸素ガスの両方を反応炉20に導入した後に反応炉20を加熱すると、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる前に、内部酸化によって形成されたMeO11がイオンとなって水に溶解し易くなる。そのため、反応炉20を加熱した後に水及び酸素ガスを反応炉20に導入することが望ましい。
超臨界水又は亜臨界水によるAg−Me合金粒子6又はAg−Me合金粒子6と界面活性剤との混合物の処理時間(すなわち、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度及び圧力となってからの時間)は、特に限定されず、Ag−Me合金粒子6又はAg−Me合金粒子6と界面活性剤との混合物の量などに応じて適宜設定すればよい。処理時間は、一般に0.5分〜5時間、好ましくは1分〜3時間、より好ましくは3分〜2時間、最も好ましくは5分〜1時間である。
超臨界水又は亜臨界水による内部酸化処理の後、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出する。また、反応炉20内を減圧し、次いで降温させる。ここで、反応炉20内の圧力及び温度を上記のように制御することができない場合、ヒーター23を停止して反応炉20内を降温させた後、反応炉20等の内部に滞留した気体を排出することによって反応炉20内を減圧させる。その後、内部酸化によって得られたAg−MeO合金粒子10を反応炉20から取り出し、乾燥させる。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、装置の構成が単純であるため低コストであり、また、この装置を用いることにより、内部酸化によってAg8中のMeO11の分散性を従来よりも向上させたAg−酸化物系電気接点材料を簡単に製造することができる。
実施の形態4.
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態1のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法を実施するのに好ましい連続供給方式の製造装置である。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態3のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
図12は、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図を示す。本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、反応炉20、水供給源21及び酸素ガス供給源22に加えて、反応炉20にAg−Me合金粒子6又はAg−Me合金粒子6と界面活性剤との混合物(以下、「原料」と略す。)を連続的に供給する原料供給源30を備える。原料供給源30を設けることにより、反応炉20内の圧力制御が容易になる。また、反応炉20に原料を少量ずつ導入することができるため、反応の制御も容易になる。さらに、超臨界水又は亜臨界水中に原料を直接導入することができるため、副反応を抑制することもできる。
原料供給源30において原料は水に分散される。また、原料供給源30は、攪拌プロペラ31を備えており、反応炉20に供給する前に十分に攪拌される。原料供給源30から反応炉20のラインには、高圧ポンプ25及びバルブ26が設けられ、原料供給源30の原料を含む水を高圧ポンプ25で加圧して反応炉20に連続的に導入する。高圧ポンプ25としては、特に限定されないが、吐出圧力が20MPa以上の高圧プランジャーポンプを使用することが好ましい。
水供給源21から反応炉20のラインには、高圧ポンプ25、バルブ26、及びヒーター23が周囲に設けられた予備加熱配管32が設けられる。水供給源21の水は、高圧ポンプ25で加圧し、次いで予備加熱配管32で加熱した後に反応炉20に導入する。
反応炉20の底部には、内部酸化によって生成したAg−MeO合金粒子10を貯留するためのバルブ26が設けられる。
反応炉20の下方側面には、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出するためのラインが設けられる。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いたAg−酸化物系電気接点材料の製造は、以下の手順にて行われる。
まず、反応炉20を、ヒーター23を用い、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱する。
次に、水供給源21の水を、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力に高圧ポンプ25で加圧した後、予備加熱配管32においてヒーター23で水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱して反応炉20に導入する。これと同時に、酸素ガス供給源22の酸素ガスを、高圧コンプレッサー27で反応炉20内の水圧以上に加圧して反応炉20に導入する。反応炉20に導入された水は、超臨界水又は亜臨界水となり、反応炉20内に導入された酸素ガスは、反応炉20内で超臨界水又は亜臨界水に溶解する。
次に、原料供給源30の原料を含む水を、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力に高圧ポンプ25で加圧して反応炉20に導入する。
反応炉20に導入されたAg−Me合金粒子6は、反応炉20を垂直落下する間に内部酸化されてAg−MeO合金粒子10となり、反応炉20の底部に設けられたバルブ26上に堆積する。
反応炉20の底部に設けられたバルブ26上にAg−MeO合金粒子10が一定量堆積した段階で製造装置を停止し、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出する。その後、バルブ26を開放して受け皿33にAg−MeO合金粒子10を収集する。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、Ag−Me合金粒子6を連続的に供給して内部酸化させることができるため、バッチ式の装置に比べて効率的であり、また、この装置を用いることにより、内部酸化によってAg8中のMeO11の分散性を従来よりも向上させたAg−酸化物系電気接点材料を簡単に製造することができる。
実施の形態5.
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態4の製造装置の一部を改良した製造装置である。すなわち、実施の形態4の製造装置は、Ag−MeO合金粒子10を取り出すために製造装置を一旦停止させる必要があるが、本実施の形態の製造装置は、内部酸化を行いつつ、Ag−MeO合金粒子10を定期的に取り出すことができる構成を備える。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態4のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
図13は、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図を示す。本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態4の製造装置の構成に加えて、生成したAg−MeO合金粒子10を排出し易くするための排出用チャンバー34を反応炉20の底部に備える。排出チャンバー34を設けることにより、反応炉20内の反応を停止させずに、生成したAg−MeO合金粒子10を排出することができる。
排出用チャンバー34には、反応炉20と同様に、排出用チャンバー34に水を供給する水供給源21が接続される。
排出用チャンバー34の周囲には、排出用チャンバー34内の温度を制御するためにヒーター23が設けられる。排出用チャンバー34は、反応炉20と同様の材質(例えば、ステンレス、ニッケル基合金など)から形成することが好ましい。水供給源21から排出用チャンバー34のラインには、高圧ポンプ25及びバルブ26が設けられ、水供給源21の水を高圧ポンプ25で加圧して排出用チャンバー34に導入する。高圧ポンプ25としては、特に限定されないが、吐出圧力が20MPa以上の高圧プランジャーポンプを使用することが好ましい。
排出用チャンバー34には、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出するためのラインが設けられる。内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水は、熱交換器28で冷却され、汽水分離器29で気体と液体とに分離した後に外部に排出する。排出用チャンバー34と熱交換器28との間のライン、熱交換機28と汽水分離器29との間のライン、及び汽水分離器29の後の排出ラインにはバルブ26が設けられる。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いたAg−酸化物系電気接点材料の製造は、以下の手順にて行われる。
まず、反応炉20に導入されたAg−Me合金粒子6の内部酸化を実施の形態3の手順と同様にして行う。
次に、反応炉20の底部に設けられたバルブ26上にAg−MeO合金粒子10が一定量堆積した段階で、排出用チャンバー34を、ヒーター23を用い、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱する。また、水供給源21の水を、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力に高圧ポンプ25で加圧した後、予備加熱配管32においてヒーター23で水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱して排出用チャンバー34に導入する。
次に、排出用チャンバー34内の温度及び圧力が、反応炉20内の温度及び圧力と同等になった段階で、反応炉20の底部に設けられたバルブ26を開放し、堆積したAg−MeO合金粒子10を排出用チャンバー34に移動(落下)させる。その後、反応炉20の底部に設けられたバルブ26を閉じ、排出用チャンバー34及び排出用チャンバー34に接続された予備加熱配管32のヒーター23を停止させ、排出用チャンバー34内の温度及び圧力を低下させる。また、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を、排出ラインから排出する。その後、排出用チャンバー34の底部に設けられたバルブ26を開放し、受け皿33にAg−MeO合金粒子10を収集する。
排出用チャンバー34からAg−MeO合金粒子10を取り出した後は、排出用チャンバー34の底部に設けられたバルブ26を閉じ、水供給源21の水を、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力に高圧ポンプ25で加圧した後、予備加熱配管32においてヒーター23で水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱して排出用チャンバー34に導入し、Ag−MeO合金粒子10の次回の収集の準備を行う。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、製造装置を停止することなくAg−MeO合金粒子10を定期的に取り出すことができるため、Ag−MeO合金粒子10を効率的に得ることができ、また、この装置を用いることにより、内部酸化によってAg8中のMeO11の分散性を従来よりも向上させたAg−酸化物系電気接点材料を簡単に製造することができる。
なお、上記の手順は、排出用チャンバー34及び排出用チャンバー34に接続された予備加熱配管32の周囲に設けられたヒーター23によって排出用チャンバー34に導入される水を加熱する場合を説明したが、排出用チャンバー34に導入される水は加熱しなくてもよい。この場合、排出用チャンバー34内の圧力が、反応炉20内の圧力と同等になった段階で、反応炉20の底部に設けられたバルブ26を開放し、堆積したAg−MeO合金粒子10を排出用チャンバー34に移動(落下)させる。このとき、原料供給源30からの原料の供給を一旦停止する。その後、反応炉20の底部に設けられたバルブ26を閉じ、反応炉20内が超臨界状態又は亜臨界状態となった段階で、原料供給源30からの原料の供給を再開する。
このような手順で行うことにより、反応炉20の底部に設けられたバルブ26上に堆積したAg−MeO合金粒子10を排出用チャンバー34に移動(落下)させる際に急冷することができるため、降温時の副反応を抑制することができる。
実施の形態6.
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態4の製造装置の一部を改良した製造装置である。すなわち、実施の形態4の製造装置は、反応炉20が垂直に配置されているため、製造条件によっては内部酸化が十分でないことがあるが、本実施の形態の製造装置は、内部酸化を十分且つ確実に行うことができる構成を備える。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態4のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
図14は、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図を示す。本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、反応炉20が傾斜している点以外は、実施の形態4の製造装置と同じである。なお、図14では、反応炉20が傾斜しているため、傾斜部の反応炉20の周囲に設けられるヒーター23と、底部の反応炉20の周囲に設けられるヒーター23とを別々に設けたが、可撓性を有するヒーター23であれば1つにしてもよい。また、ヒーター23を分ける場合、設定温度は同一にすることが好ましい。
反応炉20の傾斜角は、原料供給源30から供給される原料が反応炉20の途中で堆積しない角度であれば特に限定されないが、水平面に対して、一般に40度以上、好ましくは45〜85度である。
反応炉20に傾斜を設けることにより、反応炉20におけるAg−Me合金粒子6の通過速度が遅くなり、Ag−Me合金粒子6の内部酸化を十分且つ確実に行うことができる。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、Ag−MeO合金粒子10を連続的に供給して内部酸化させることができるため、バッチ式の装置に比べて効率的であり、しかもAg−Me合金粒子6の内部酸化を十分且つ確実に行うことができる。また、この装置を用いることにより、内部酸化によってAg8中のMeO11の分散性を従来よりも向上させたAg−酸化物系電気接点材料を簡単に製造することができる。
実施の形態7.
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態5の製造装置の一部を改良した製造装置である。すなわち、実施の形態5の製造装置は、反応炉20が垂直に配置されているため、製造条件によっては内部酸化が十分でないことがあるが、本実施の形態の製造装置は、内部酸化を十分且つ確実に行うことができる構成を備える。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態5のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
図15は、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図を示す。本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、反応炉20が傾斜している点以外は、実施の形態3の製造装置と同じである。なお、図15では、反応炉20が傾斜しているため、傾斜部の反応炉20の周囲に設けられるヒーター23と、底部の反応炉20の周囲に設けられるヒーター23とを別々に設けたが、可撓性を有するヒーター23であれば1つにしてもよい。また、ヒーター23を分ける場合、設定温度は同一にすることが好ましい。
反応炉20の傾斜角は、原料供給源30から供給されるAg−Me合金粒子6が反応炉20の途中で堆積しない角度であれば特に限定されないが、水平面に対して、一般に40度以上、好ましくは45〜85度である。
反応炉20に傾斜を設けることにより、反応炉20におけるAg−Me合金粒子6の通過速度が遅くなり、Ag−Me合金粒子6の内部酸化を十分且つ確実に行うことができる。
上記のような構成を有するAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、製造装置を停止することなくAg−MeO合金粒子10を定期的に取り出すことができるため、Ag−MeO合金粒子10を効率的に得ることができ、しかもAg−Me合金粒子6の内部酸化を十分且つ確実に行うことができる。また、この装置を用いることにより、内部酸化によってAg8中のMeO11の分散性を従来よりも向上させたAg−酸化物系電気接点材料を簡単に製造することができる。
なお、排出用チャンバー34に導入される水を加熱しない場合、製造装置を一旦停止する必要があるが、反応炉20の底部に設けられたバルブ26上に堆積したAg−MeO合金粒子10を排出用チャンバー34に移動(落下)させる際に急冷することができるため、降温時の副反応を抑制することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例に限定されるものではない。
(実施例1)
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、超臨界水を用いた処理中に合金粒子の飛散による圧力計又はバルブなどの目詰まりを防止する観点から、反応炉内部にアルミナ製の内筒を配置した。また、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとZnとの質量割合が80:20のAg−Zn合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−Zn合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。
次に、Ag−Zn合金粒子を20g秤量した後、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中に加えて十分に攪拌した。その後、Ag−Zn合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−Zn合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して400℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は10分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−ZnO合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−ZnO合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。乾燥後のAg−ZnO合金粒子は、Ag−ZnO合金粒子同士が固着して塊になることがない、さらさらな状態であった。また、内部酸化前のAg−Zn合金粒子が黄土色であったのに対し、内部酸化後のAg−ZnO合金粒子は茶色であった。
(実施例2)
内部酸化の処理時間を60分に変えたこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
(実施例3)
反応炉の加熱温度を450℃に変えたこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
(実施例4)
ガスアトマイズ法によって作製したAg−Zn合金粒子をアルミナ製の収容容器に入れて反応炉内に配置したこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
(実施例5)
反応炉の加熱温度を350℃に変えたこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例1)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
上記の実施例及び比較例で得られたAg−ZnO合金粒子について、赤外線吸収法、紫外線吸収法などを用いて酸素含有量を測定した。得られた酸素含有量から、Ag−ZnO合金粒子中に含まれるZnのうちZnOとなったZnの質量割合(以下、「ZnOの質量割合」という。)を算出した。その結果を表1に示す。
Figure 0006265934
表1に示されているように、実施例1〜5で得られたAg−ZnO合金粒子は、比較例1で得られたAg−ZnO合金粒子に比べて、ZnOの質量割合が高かった。
また、内部酸化の前にAg−ZnO合金粒子を界面活性剤と混合した場合(実施例1〜3、5)、Ag−Zn合金粒子を界面活性剤と混合しなかった場合に比べてAg−ZnO合金粒子の固着が少なかった。
さらに、得られたAg−ZnO合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界にZnOが微細且つ均一に分散した構造を有することが確認された。
次に、実施例2のAg−ZnO合金粒子を金型に入れ、プレス機で1000MPaの圧力をかけ、直径12mm、厚さ1.5mmのタブレット形状に成形した。その後、得られた成形体を酸素雰囲気(1atom)中で600℃の炉に1時間入れて焼結させた。得られた焼結体の導電率(IACS換算)は45%であった。
次に、得られた焼結体から5mm×5mm×1.5mmの正方形チップ及び4mm×6mm×1.5mmの長方形チップを切り出した後、表面を50μm程度研磨することによって接点材料を得た。次に、長方形の接点材料を遮断器の可動接触子、正方形の接点材料を遮断器の固定接触子にAg−Cu系のロウ材を用いてロウ付けした。
上記のようにして得られた可動接触子及び固定接触子を1極遮断器に組み込み、6000回の機械開閉試験を行った。試験条件は、1サイクルを3秒としてON時間1秒/OFF時間2秒で実施した。その結果、接点材料の脱落、クラックなどが発生しないことが確認された。
次に、AC200Vの電源を用いて、60Aの電流値の通電開閉耐久試験を6000回実施した。通電条件は1サイクルを7秒としてON時間1秒/OFF時間6秒で実施した。その結果、接点材料の脱落、クラック、接点材料間の溶着が発生しないことが確認された。
(実施例6)
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとInとの質量割合が85:15のAg−In合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−In合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。得られたAg−In合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、InはAgの結晶の粒界だけでなくAgの結晶中にも分散していた。
次に、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中にAg−In合金粒子20gを入れて十分に攪拌した。その後、Ag−In合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−In合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して450℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は20分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−In合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−In合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。
(実施例7)
内部酸化の処理時間を120分に変えたこと以外は実施例6と同様にしてAg−In合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例2)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例6と同様にしてAg−In合金粒子の内部酸化を行った。
上記の実施例及び比較例で得られたAg−In合金粒子について、紫外線吸収法を用いて酸素含有量を測定した。得られた酸素含有量から、Ag−In合金粒子中に含まれるInのうちInとなったInの質量割合(以下、「Inの質量割合」という。)を算出した。その結果を表2に示す。
Figure 0006265934
表2に示されているように、実施例6〜7で得られたAg−In合金粒子は、比較例2で得られたAg−In合金粒子に比べて、Inの質量割合が高かった。
また、得られたAg−In合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界及びAg中にInが微細且つ均一に分散した構造を有することが確認された。
(実施例8)
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとSnとの質量割合が85:15のAg−Sn合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−Sn合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。
次に、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中にAg−Sn合金粒子20gを入れて十分に攪拌した。その後、Ag−Sn合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−Sn合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して500℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は40分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−SnO合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−SnO合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。
(実施例9)
内部酸化の処理時間を240分に変えたこと以外は実施例8と同様にしてAg−Sn合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例3)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例8と同様にしてAg−Sn合金粒子の内部酸化を行った。
上記の実施例及び比較例で得られたAg−SnO合金粒子について、紫外線吸収法を用いて酸素含有量を測定した。得られた酸素含有量から、Ag−SnO合金粒子中に含まれるSnのうちSnOとなったSnの質量割合(以下、「SnOの質量割合」という。)を算出した。その結果を表3に示す。
Figure 0006265934
表3に示されているように、実施例8〜9で得られたAg−SnO合金粒子は、比較例3で得られたAg−SnO合金粒子に比べて、SnOの質量割合が高かった。
また、得られたAg−SnO合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界にSnOが微細且つ均一に分散した構造を有することが確認された。
(実施例10)
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとSnとInとの質量割合が85:12:3のAg−Sn−In合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−Sn−In合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。
次に、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中にAg−Sn−In合金粒子20gを入れて十分に攪拌した。その後、Ag−Sn−In合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−Sn−In合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して500℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は40分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−SnO−In合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−SnO−In合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。
(実施例11)
内部酸化の処理時間を240分に変えたこと以外は実施例10と同様にしてAg−Sn−In合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例4)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例10と同様にしてAg−Sn−In合金粒子の内部酸化を行った。
上記の実施例及び比較例で得られたAg−SnO−In合金粒子について、紫外線吸収法を用いて酸素含有量を測定した。得られた酸素含有量から、Ag−SnO−In合金粒子中に含まれるSn及びInのうちSnO及びInとなったSn及びInの質量割合(以下、「SnO及びInの質量割合」という。)を算出した。その結果を表4に示す。
Figure 0006265934
表4に示されているように、実施例10〜11で得られたAg−SnO−In合金粒子は、比較例4で得られたAg−SnO−In合金粒子に比べて、SnO及びInの質量割合が高かった。
また、得られたAg−SnO合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界にSnO及びInが微細且つ均一に分散しており、またInについてはAg中にも分散した構造を有することが確認された。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、内部酸化によってAg中のMeOの分散性を向上させたAg−酸化物系電気接点材料、その製造方法及び製造装置を提供することができる。また、本発明によれば、Ag中のMeOの分散性を向上させることによって長寿命化させたAg−酸化物系電気接点材料を備える遮断器及び電磁接触器を提供することができる。
1 Ag−Me溶融合金、2 取鍋、3 ノズル、4 冷却媒体、5 真空チャンバー、6 Ag−Me合金粒子、7 受け皿、8 Ag、9 Me、10 Ag−MeO合金粒子、11 MeO、12 空隙、20 反応炉、21 水供給源、22 酸素ガス供給源、23 ヒーター、24 収容容器、25 高圧ポンプ、26 バルブ、27 高圧コンプレッサー、28 熱交換器、29 汽水分離器、30 原料供給源、31 攪拌プロペラ、32 予備加熱配管、33 受け皿、34 排出用チャンバー、40 Ag−酸化物系電気接点材料、41 ロウ材、42 接触子、43 リベット、44 リベット接点材料、45 穴。

Claims (13)

  1. Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子を、酸素ガス雰囲気下において、超臨界水又は亜臨界水で内部酸化させることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  2. 前記内部酸化時の加熱温度が、前記易酸化性金属の融点以下であることを特徴とする請求項1に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  3. 前記合金からなる粒子が、ガスアトマイズ法によって製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  4. 前記内部酸化の前に、前記合金からなる粒子を界面活性剤と混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  5. 前記合金が、水の臨界温度よりも高い融点を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  6. 前記易酸化性金属がZnであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  7. 前記合金中の前記Znの含有量が1〜40質量%であることを特徴とする請求項6に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  8. 前記易酸化性金属が、In、Sn又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  9. 前記合金中の前記Inの含有量が1〜21質量%、前記合金中の前記Snの含有量が1〜24.58質量%であることを特徴とする請求項8に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
  10. 反応炉に水を供給する水供給源と、
    反応炉に酸素ガスを供給する酸素ガス供給源と、
    Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子を収容し、且つ前記水供給源及び前記酸素ガス供給源から水及び酸素ガスを受け入れて超臨界状態又は亜臨界状態とし、前記合金からなる粒子の内部酸化を行う反応炉と
    を備えることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。
  11. 前記合金からなる粒子を連続的に供給する原料供給源をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。
  12. 内部酸化された合金からなる粒子を排出する排出用チャンバーを前記反応炉の底部にさらに備えることを特徴とする請求項10又は11に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。
  13. 前記反応炉が傾斜していることを特徴とする請求項1012のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。
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