JP6265934B2 - Ag−酸化物系電気接点材料の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
この方法に用いられる合金チップを電子顕微鏡で観察すると、Ag中のMeの分散状態にバラつきがあり、1μm〜十数μmの大きさのMeが存在した状態が見られる。そのため、このような分散状態を有する合金チップを内部酸化して接点材料を製造すると、Meの分散状態によって接点材料の消耗度合に差異が生じ、接点材料の寿命が短くなるという問題がある。
しかしながら、従来の内部酸化法では、ガスアトマイズ法によって作製されたAg−Me合金粉末を用いたとしても、縞状にMeOが析出することがあるため、MeOをAg中に微細且つ均一に分散させることが難しく、消耗性が十分でないという問題がある。
そこで、特許文献3は、Ag−ZnO合金粉末にY2O3(酸化イットリウム)を配合して機械的に混合することで、ZnOをAg中に微細且つ均一に分散させる方法を提案している。
また、本発明は、Ag中のMeOの分散性を向上させることによって長寿命化させたAg−酸化物系電気接点材料を備える遮断器及び電磁接触器を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法によって製造されることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料である。
さらに、本発明は、反応炉に水を供給する水供給源と、反応炉に酸素ガスを供給する酸素ガス供給源と、Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子を収容し、且つ前記水供給源及び前記酸素ガス供給源から水及び酸素ガスを受け入れて超臨界状態又は亜臨界状態とし、前記合金からなる粒子の内部酸化を行う反応炉とを備えることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造装置である。
また、本発明によれば、Ag中のMeOの分散性を向上させることによって長寿命化させたAg−酸化物系電気接点材料を備える遮断器及び電磁接触器を提供することができる。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法は、Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子(以下、「Ag−Me合金粒子」という。)を、酸素ガス雰囲気下、超臨界水又は亜臨界水で内部酸化させることによって行われる。
ここで、本明細書において「超臨界水」とは、物質の状態図で温度、圧力、エントロピー線図の臨界点を超え、気体、液体及び固体の三態のいずれでもない超臨界状態の水のことを意味する。ここで、一般に、水の臨界温度は374℃、水の臨界圧力は22.12MPaである。また、本明細書において「亜臨界水」とは、超臨界状態を超えてはいないが、それに近い高温高圧状態であって、気体、液体及び固体の三態から超臨界状態までの過渡的な遷移状態(亜臨界状態)にある水のことを意味する。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法において使用されるAg−Me合金粒子としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いて製造することができる。その中でも、Ag−Me合金粒子は、Ag中にMeを均一に分散させる観点から、ガスアトマイズ法によって製造することが好ましい。
図1は、ガスアトマイズ法に用いられる装置の概略図を示す。また、図2は、図1の装置のノズル先端部近傍の拡大図を示す。図1に示すように、Ag及びMeを溶融した合金(以下、「Ag−Me溶融合金1」という。)を取鍋2の底部に設けられた小孔から流出させて細流とし、この細流にノズル3から不活性気体(例えば、窒素、アルゴンなど)、水などの冷却媒体4を吹き付ける。冷却媒体4が吹き付けられた細流は、真空チャンバー5内で急冷凝固し、Ag−Me合金粒子6が形成される。Ag−Me合金粒子6は、真空チャンバー5の底部から排出され、受け皿7に集められる。集められたAg−Me合金粒子6は、必要に応じて分級(篩分け)して大きさが揃えられる。
ここで、Ag及びZnを含む合金(以下、「Ag−Zn合金」という。)の相図を図3、Ag及びInを含む合金(以下、「Ag−In合金」という。)の相図を図4、Ag及びSnを含む合金(以下、「Ag−Sn合金」という。)の相図を図5にそれぞれ示す(出典:Thaddeus B. Massalski著, Binary Alloy Phase Diagrams, Second Edition Vol.1, 1990)。
図3に示すように、Ag−Zn合金の融点は、Znの含有量に関わらず、Znの融点(419.58℃)よりも高く、且つ水の臨界温度(374℃)よりも高い。そのため、MeがZnである場合、Ag−Zn溶融合金におけるZnの含有量は、特に限定されないが、一般に1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは8〜25質量%、最も好ましくは10質量%超過20質量%以下である。一般的な内部酸化を用いる場合、Znの含有量が高くなると、内部酸化時にAg−Zn合金粒子の表面に厚いZnO層が形成されて内部酸化の進行が阻害されるものの、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法に用いられる内部酸化によれば、酸化力が大きいため、Znの含有量が高くなってもZnを効率的に酸化させることができる。また、Znの含有量が多い合金チップの場合、酸化時のZnOの体積膨張によってクラックが入り、合金チップが砕け易くなるが、ガスアトマイズ法によって得られるAg−Zn合金粒子は小さいため、クラックが入り難く、Znの含有量を高めることが可能になる。なお、図示していないが、Cu、Cr、Ni、Sb、Mg、Mo、Fe又はLaを含むAg合金の融点もまた、これらの元素の融点よりも高く、且つ水の臨界温度よりも高いため、各元素の含有量はZnの場合と同様にすることができる。
したがって、Ag−Me合金粒子としてAg−In合金粒子を用いる場合、Ag−In溶融合金におけるInの含有量は、一般に21質量%以下、好ましくは1〜21質量%、より好ましくは5〜21質量%、さらに好ましくは10〜21質量%、最も好ましくは15質量%超過21質量%以下に制御すべきである。また、Ag−Me合金粒子としてAg−Sn合金粒子を用いる場合、Ag−Sn溶融合金におけるSnの含有量は、一般に24.58質量%以下、好ましくは1〜24.58質量%、より好ましくは5〜19質量%、さらに好ましくは10〜19質量%、最も好ましくは15質量%超過19質量%以下に制御すべきである。In又はSnの含有量を上記の範囲に制御することにより、合金粒子の形状を保持しつつIn又はSnを効率的に酸化させることができる。
Ag−Me合金粒子6は、各種製造条件によって異なるが、一般に数μm〜数十μmの粒径を有する。
ここで、本明細書において「水が超臨界状態となる温度及び圧力」とは、水の臨界温度以上の温度及び水の臨界圧力以上の圧力のことを意味する。また、本明細書において「水が亜臨界状態となる温度及び圧力」とは、水の臨界温度よりも10%低い温度以上水の臨界温度未満の温度、及び水の臨界圧力よりも10%低い圧力以上水の臨界圧力未満の温度のことを意味する。
また、Ag−Me合金粒子6を超臨界水又は亜臨界水と接触させる時間は、特に限定されず、Ag−Me合金粒子6の組成、温度、圧力などの条件に応じて適宜調整すればよい。
また、酸素ガス雰囲気とする方法についても、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法に従って行うことができる。例えば、内部酸化用の反応容器内に酸素ガスを導入することによって酸素ガス雰囲気にすることができる。
本実施の形態の遮断器及び電磁接触器は、実施の形態1のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法によって得られたAg−酸化物系電気接点材料を備える。
本実施の形態の遮断器及び電磁接触器の構成としては、Ag−酸化物系電気接点材料を備えることを除き、特に限定されず、当該技術分野において公知の構成を用いることができる。
本実施の形態の遮断器及び電磁接触器において、Ag−酸化物系電気接点材料は、固定接触子又は可動接触子の一方、好ましくは両方に設けられる。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態1のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法を実施するのに好ましいバッチ式の製造装置である。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。
図11は、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の概略図を示す。本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、反応炉20に水を供給する水供給源21と、反応炉20に酸素ガスを供給する酸素ガス供給源22と、Ag−Me合金粒子6を収容し、且つ水供給源21及び酸素ガス供給源22から水及び酸素ガスを受け入れて超臨界状態又は亜臨界状態とし、Ag−Me合金粒子6の内部酸化を行う反応炉20とを備える。
水供給源21から反応炉20のラインには、高圧ポンプ25及びバルブ26が設けられ、水供給源21の水を高圧ポンプ25で加圧して反応炉20に導入する。高圧ポンプ25としては、特に限定されないが、吐出圧力が20MPa以上の高圧プランジャーポンプを使用することが好ましい。
反応炉20には、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出するためのラインが設けられる。内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水は、熱交換器28で冷却され、汽水分離器29で気体と液体とに分離した後に外部に排出する。反応炉20と熱交換器28との間のライン、熱交換機28と汽水分離器29との間のライン、及び汽水分離器29の後の排出ラインにはバルブ26が設けられる。
まず、Ag−Me合金粒子6又はAg−Me合金粒子6と界面活性剤との混合物、及び必要に応じて純水を収容容器24に収容して反応炉20に配置する。
次に、反応炉20を、ヒーター23を用い、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱する。加熱速度は、特に限定されず、反応炉20の大きさなどに応じて適宜設定すればよい。
なお、上記の手順で行うことが理想ではあるが、製造の容易性などの観点から、反応炉20の加熱前に酸素ガスを反応炉20に導入し、反応炉20の加熱後に酸素ガスの導入を停止してもよい。また、水及び酸素ガスの両方を反応炉20に導入した後に反応炉20を加熱すると、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる前に、内部酸化によって形成されたMeO11がイオンとなって水に溶解し易くなる。そのため、反応炉20を加熱した後に水及び酸素ガスを反応炉20に導入することが望ましい。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態1のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法を実施するのに好ましい連続供給方式の製造装置である。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態3のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
反応炉20の底部には、内部酸化によって生成したAg−MeO合金粒子10を貯留するためのバルブ26が設けられる。
反応炉20の下方側面には、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出するためのラインが設けられる。
まず、反応炉20を、ヒーター23を用い、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱する。
次に、水供給源21の水を、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力に高圧ポンプ25で加圧した後、予備加熱配管32においてヒーター23で水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱して反応炉20に導入する。これと同時に、酸素ガス供給源22の酸素ガスを、高圧コンプレッサー27で反応炉20内の水圧以上に加圧して反応炉20に導入する。反応炉20に導入された水は、超臨界水又は亜臨界水となり、反応炉20内に導入された酸素ガスは、反応炉20内で超臨界水又は亜臨界水に溶解する。
反応炉20に導入されたAg−Me合金粒子6は、反応炉20を垂直落下する間に内部酸化されてAg−MeO合金粒子10となり、反応炉20の底部に設けられたバルブ26上に堆積する。
反応炉20の底部に設けられたバルブ26上にAg−MeO合金粒子10が一定量堆積した段階で製造装置を停止し、内部酸化に使用された超臨界水又は亜臨界水を排出する。その後、バルブ26を開放して受け皿33にAg−MeO合金粒子10を収集する。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態4の製造装置の一部を改良した製造装置である。すなわち、実施の形態4の製造装置は、Ag−MeO合金粒子10を取り出すために製造装置を一旦停止させる必要があるが、本実施の形態の製造装置は、内部酸化を行いつつ、Ag−MeO合金粒子10を定期的に取り出すことができる構成を備える。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態4のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
排出用チャンバー34の周囲には、排出用チャンバー34内の温度を制御するためにヒーター23が設けられる。排出用チャンバー34は、反応炉20と同様の材質(例えば、ステンレス、ニッケル基合金など)から形成することが好ましい。水供給源21から排出用チャンバー34のラインには、高圧ポンプ25及びバルブ26が設けられ、水供給源21の水を高圧ポンプ25で加圧して排出用チャンバー34に導入する。高圧ポンプ25としては、特に限定されないが、吐出圧力が20MPa以上の高圧プランジャーポンプを使用することが好ましい。
まず、反応炉20に導入されたAg−Me合金粒子6の内部酸化を実施の形態3の手順と同様にして行う。
次に、反応炉20の底部に設けられたバルブ26上にAg−MeO合金粒子10が一定量堆積した段階で、排出用チャンバー34を、ヒーター23を用い、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱する。また、水供給源21の水を、水が超臨界状態又は亜臨界状態となる圧力に高圧ポンプ25で加圧した後、予備加熱配管32においてヒーター23で水が超臨界状態又は亜臨界状態となる温度に加熱して排出用チャンバー34に導入する。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態4の製造装置の一部を改良した製造装置である。すなわち、実施の形態4の製造装置は、反応炉20が垂直に配置されているため、製造条件によっては内部酸化が十分でないことがあるが、本実施の形態の製造装置は、内部酸化を十分且つ確実に行うことができる構成を備える。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態4のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
反応炉20に傾斜を設けることにより、反応炉20におけるAg−Me合金粒子6の通過速度が遅くなり、Ag−Me合金粒子6の内部酸化を十分且つ確実に行うことができる。
本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置は、実施の形態5の製造装置の一部を改良した製造装置である。すなわち、実施の形態5の製造装置は、反応炉20が垂直に配置されているため、製造条件によっては内部酸化が十分でないことがあるが、本実施の形態の製造装置は、内部酸化を十分且つ確実に行うことができる構成を備える。
以下、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置の基本的な構成は、実施の形態5のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置と同じであるため、相違点のみ説明する。
反応炉20に傾斜を設けることにより、反応炉20におけるAg−Me合金粒子6の通過速度が遅くなり、Ag−Me合金粒子6の内部酸化を十分且つ確実に行うことができる。
なお、排出用チャンバー34に導入される水を加熱しない場合、製造装置を一旦停止する必要があるが、反応炉20の底部に設けられたバルブ26上に堆積したAg−MeO合金粒子10を排出用チャンバー34に移動(落下)させる際に急冷することができるため、降温時の副反応を抑制することができる。
(実施例1)
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、超臨界水を用いた処理中に合金粒子の飛散による圧力計又はバルブなどの目詰まりを防止する観点から、反応炉内部にアルミナ製の内筒を配置した。また、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとZnとの質量割合が80:20のAg−Zn合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−Zn合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。
次に、Ag−Zn合金粒子を20g秤量した後、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中に加えて十分に攪拌した。その後、Ag−Zn合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−Zn合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して400℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は10分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−ZnO合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−ZnO合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。乾燥後のAg−ZnO合金粒子は、Ag−ZnO合金粒子同士が固着して塊になることがない、さらさらな状態であった。また、内部酸化前のAg−Zn合金粒子が黄土色であったのに対し、内部酸化後のAg−ZnO合金粒子は茶色であった。
内部酸化の処理時間を60分に変えたこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
(実施例3)
反応炉の加熱温度を450℃に変えたこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
ガスアトマイズ法によって作製したAg−Zn合金粒子をアルミナ製の収容容器に入れて反応炉内に配置したこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
(実施例5)
反応炉の加熱温度を350℃に変えたこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例1)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例1と同様にしてAg−Zn合金粒子の内部酸化を行った。
また、内部酸化の前にAg−ZnO合金粒子を界面活性剤と混合した場合(実施例1〜3、5)、Ag−Zn合金粒子を界面活性剤と混合しなかった場合に比べてAg−ZnO合金粒子の固着が少なかった。
さらに、得られたAg−ZnO合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界にZnOが微細且つ均一に分散した構造を有することが確認された。
次に、得られた焼結体から5mm×5mm×1.5mmの正方形チップ及び4mm×6mm×1.5mmの長方形チップを切り出した後、表面を50μm程度研磨することによって接点材料を得た。次に、長方形の接点材料を遮断器の可動接触子、正方形の接点材料を遮断器の固定接触子にAg−Cu系のロウ材を用いてロウ付けした。
上記のようにして得られた可動接触子及び固定接触子を1極遮断器に組み込み、6000回の機械開閉試験を行った。試験条件は、1サイクルを3秒としてON時間1秒/OFF時間2秒で実施した。その結果、接点材料の脱落、クラックなどが発生しないことが確認された。
次に、AC200Vの電源を用いて、60Aの電流値の通電開閉耐久試験を6000回実施した。通電条件は1サイクルを7秒としてON時間1秒/OFF時間6秒で実施した。その結果、接点材料の脱落、クラック、接点材料間の溶着が発生しないことが確認された。
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとInとの質量割合が85:15のAg−In合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−In合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。得られたAg−In合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、InはAgの結晶の粒界だけでなくAgの結晶中にも分散していた。
次に、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中にAg−In合金粒子20gを入れて十分に攪拌した。その後、Ag−In合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−In合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して450℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は20分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−In2O3合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−In2O3合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。
内部酸化の処理時間を120分に変えたこと以外は実施例6と同様にしてAg−In合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例2)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例6と同様にしてAg−In合金粒子の内部酸化を行った。
また、得られたAg−In2O3合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界及びAg中にIn2O3が微細且つ均一に分散した構造を有することが確認された。
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとSnとの質量割合が85:15のAg−Sn合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−Sn合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。
次に、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中にAg−Sn合金粒子20gを入れて十分に攪拌した。その後、Ag−Sn合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−Sn合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して500℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は40分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−SnO2合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−SnO2合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。
内部酸化の処理時間を240分に変えたこと以外は実施例8と同様にしてAg−Sn合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例3)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例8と同様にしてAg−Sn合金粒子の内部酸化を行った。
また、得られたAg−SnO2合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界にSnO2が微細且つ均一に分散した構造を有することが確認された。
図11に示すAg−酸化物系電気接点材料の製造装置を用いてAg−酸化物系電気接点材料の製造を行った。なお、反応炉内の温度は、反応炉内に設けた熱電対によって測定し、各圧力は、接続配管に設けた圧力計によって測定した。
AgとSnとInとの質量割合が85:12:3のAg−Sn−In合金粒子をガスアトマイズ法によって作製した。得られたAg−Sn−In合金粒子は分級して10〜20μmの粒径の大きさに揃えた。
次に、20質量%のアルキルアミンオキシド及び80質量%のポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミドからなる界面活性剤の混合物を3質量%の濃度で含む水溶液中にAg−Sn−In合金粒子20gを入れて十分に攪拌した。その後、Ag−Sn−In合金粒子を取り出して水気をきり、アルミナ製の収容容器に入れ、Ni、Cr、Moを主成分とするニッケル基合金製の反応炉(容積500mL)内に配置した。次に、収容容器内に純水を加え、Ag−Sn−In合金粒子の全てを純水で浸した後、反応炉の蓋を閉めた。純水としては、イオン交換樹脂で濾過することによって比抵抗を0.1MΩ・cm以上にした純水を用いた。
次に、反応炉を10℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温した。次に、純水を22.5MPaに高圧ポンプで加圧して反応炉に導入すると共に、酸素ガスをコンプレッサーで23.0MPaに加圧して反応炉に導入した後、純水及び酸素ガスの導入を停止し、昇温を再開して500℃に加熱し、内部酸化を行った。内部酸化の処理時間は40分とした。内部酸化の終了後、反応炉からAg−SnO2−In2O3合金粒子を含む純水ごと取り出した。次に、Ag−SnO2−In2O3合金粒子を含む純水をフラスコに移し替えた後、ロータリーエバポレータを用い、減圧しながら80℃で2時間乾燥させた。
内部酸化の処理時間を240分に変えたこと以外は実施例10と同様にしてAg−Sn−In合金粒子の内部酸化を行った。
(比較例4)
酸素ガスを反応炉に導入しなかったこと以外は実施例10と同様にしてAg−Sn−In合金粒子の内部酸化を行った。
また、得られたAg−SnO2合金粒子についてSEMを用いて観察した結果、Agの粒界にSnO2及びIn2O3が微細且つ均一に分散しており、またIn2O3についてはAg中にも分散した構造を有することが確認された。
Claims (13)
- Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子を、酸素ガス雰囲気下において、超臨界水又は亜臨界水で内部酸化させることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記内部酸化時の加熱温度が、前記易酸化性金属の融点以下であることを特徴とする請求項1に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記合金からなる粒子が、ガスアトマイズ法によって製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記内部酸化の前に、前記合金からなる粒子を界面活性剤と混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記合金が、水の臨界温度よりも高い融点を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記易酸化性金属がZnであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記合金中の前記Znの含有量が1〜40質量%であることを特徴とする請求項6に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記易酸化性金属が、In、Sn又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 前記合金中の前記Inの含有量が1〜21質量%、前記合金中の前記Snの含有量が1〜24.58質量%であることを特徴とする請求項8に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造方法。
- 反応炉に水を供給する水供給源と、
反応炉に酸素ガスを供給する酸素ガス供給源と、
Ag及び易酸化性金属を含む合金からなる粒子を収容し、且つ前記水供給源及び前記酸素ガス供給源から水及び酸素ガスを受け入れて超臨界状態又は亜臨界状態とし、前記合金からなる粒子の内部酸化を行う反応炉と
を備えることを特徴とするAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。 - 前記合金からなる粒子を連続的に供給する原料供給源をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。
- 内部酸化された合金からなる粒子を排出する排出用チャンバーを前記反応炉の底部にさらに備えることを特徴とする請求項10又は11に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。
- 前記反応炉が傾斜していることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のAg−酸化物系電気接点材料の製造装置。
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