以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
(1)ハニカム構造体:
図1〜図5に示すように、本発明のハニカム構造体の第一実施形態は、流体(すなわち、排ガスG)の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム基材4を備えたハニカム構造体100である。この隔壁1によって、排ガスGが流入する側の端面である流入端面11から排ガスGが流出する側の端面である流出端面12まで延びる複数のセル2が区画形成されている。ハニカム構造体100において、複数のセル2が、貫通セル2aと、入口目封止セル2bと、を含んでいる。貫通セル2aとは、流入端面11側から流出端面12側まで実質的に貫通するセル2のことである。入口目封止セル2bとは、ハニカム基材4の流入端面11側において当該セル2の端部が目封止部5によって実質的に塞がれたセル2のことである。また、本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム基材4の隔壁1の気孔率が、35〜65%である。また、ハニカム基材4は、ハニカム基材4の流入端面11から、セル2の延びる方向の長さの5〜45%を占める範囲において、当該ハニカム基材4の隔壁1の気孔率が低くなるように構成された低気孔率領域15を有する。また、ハニカム基材4は、低気孔率領域14よりもセル2の延びる方向の流出端面12側の範囲において、当該ハニカム基材4の隔壁1の気孔率が低気孔率領域15よりも高くなるように構成された高気孔率領域16を有する。高気孔率領域16は、ハニカム基材4の流出端面12から、セル2の延びる方向の55%〜95%を占める範囲に設けられている。そして、ハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの73%の部分の気孔率と、ハニカム基材の前記流入端面から、セルの延びる方向の長さの78%の部分の気孔率との平均値である基準気孔率と低気孔率領域15の気孔率との差が、3〜30%である。
なお、気孔率は、セルが形成されている部分を含むハニカム基材の断面の画像から、隔壁の実体部分の気孔の割合を算出して気孔率とした。まず、本実施形態のハニカム構造体を、セルの延びる方向と並行に切断する。次に、その切断面の中央に位置する中央隔壁を測定対象とし、日立製作所社製の走査電子顕微鏡「S−3200N(商品名)」の反射電子(アニュラー検出器)によって撮像し、切断面の画像を得る。中央隔壁の撮像は、測定対象の中央隔壁の厚さ方向が、撮像画面の上下方向となり、中央隔壁のセルの延びる方向が撮像画面の左右方向となるようにし、複数箇所にて撮像を行う。中央隔壁の撮像は、撮像画像の上下方向が、測定対象の中央隔壁が収まるような倍率に設定し、また撮像画像の左右方向が600μmの範囲となるように設定して行う。全長方向においては、ハニカム基材の端面から全長の3%に相当する部分を最初の測定箇所として、その後はハニカム基材の全長の5%に相当する間隔で19箇所、さらに、ハニカム基材端面から全長の5%に相当する部分と、ハニカム基材の端面から全長の45%に相当する部分の2箇所において測定を行う。それぞれの撮像箇所のセル隔壁部と気孔部を画像解析システム(三谷商事社製の「WINROOF」)を用いて二値化し、面積を算出する。ハニカム基材の、流入端面からセルの延びる方向の長さの73%の部分の気孔率と、ハニカム基材の、流入端面からセルの延びる方向の長さの78%の部分の気孔率との平均値を、基準気孔率とした。また、基準気孔率に対して、3〜30%低い気孔率を有し、且つ、ハニカム基材の、流入端面からセルの延びる方向の長さの5〜45%を占める範囲にある測定箇所の測定値を、低気孔率領域の気孔率とした。また、低気孔率領域の気孔率よりも高い気孔率を有し、且つ、ハニカム基材の、流出端面からセルの延びる方向の長さの55〜95%を占める範囲にある測定箇所の測定値を、高気孔率領域の気孔率とした。なお、気孔率の測定はハニカム基材に触媒が担持されていない状態で行うものとする。触媒が担持されたものを測定する場合は触媒部分を除外して気孔率の測定を行う。触媒部分の除外は、画像解析システムにより、触媒部分を除外して気孔率の測定を行ってもよく、また、物理的・化学的に除去しても良い。
ここで、「セルの端部が目封止部によって「実質的」に塞がれる」とは、セルの端部が目封止部によって塞がれ、それにより排ガスが当該セルを通過し難い状態であることを意味する。目封止部形成時にできるわずかな隙間や、目封止部5が多孔体であることにより、目封止部を通過する微量のガス流れがあってもよい。また、「セルが「実質的」に貫通する」とは、排ガスが当該セルを通過することができる状態を意味する。これは、目封止部等がセル内に配設されていても、当該目封止部等に孔が開いている等の状態により、排ガスが当該セルを通過できるような場合も含むものである。また、図1に示すような円柱形のハニカム構造体100において、「セルの延びる方向」とは、円柱形のハニカム構造体100の中心軸方向のことを意味する。以下、高気孔率領域16における隔壁1の気孔率を、単に「高気孔率領域16の気孔率」ということがある。また、低気孔率領域15における隔壁1の気孔率を、単に「低気孔率領域15の気孔率」ということがある。また、隔壁1と目封止部5とが接している部分については、隔壁1の細孔内に目封止部5の一部が入り込み、当該隔壁1の気孔率が減少することがある。本実施形態のハニカム構造体100においては、上述したように目封止部5の影響により隔壁1の気孔率が減少していたとしても、前述の低気孔率領域の考慮対象には含まないこととする。
図1は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた斜視図である。図3は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた平面図である。図4は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。図5は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態の、排ガスの流れる方向に平行な断面を示す模式図である。図1〜図5に示すハニカム構造体100を構成するハニカム基材4は、隔壁1を囲繞するように配置された外周壁4を有する。
本実施形態のハニカム構造体100によれば、排ガス中に含まれる粒子状物質を良好に捕集することができ、且つ、一旦捕集した粒子状物質の外部への流出を有効に抑制することができる。すなわち、図6Aに示すように、本実施形態のハニカム構造体100によれば、ハニカム基材4の流入端面11から排ガスGを流入させたときに、排ガスG中に含まれる粒子状物質を、貫通セル2aを区画形成する隔壁1によって捕集することができる。すなわち、ハニカム構造体100は、ハニカム基材4の流入端面11における、入口目封止セル2bの端部に目封止部5が配設されている。この構造により、目封止部5が配設されていないセル(すなわち、貫通セル2a)に排ガスGが流入すると、当該貫通セル2a内の圧力が上昇し、貫通セル2aに隣接する入口目封止セル2b内の圧力が貫通セル2a内の圧力に対して相対的に低くなる。このため、排ガスGの一部が、貫通セル2aから多孔質の隔壁1を透過して入口目封止セル2bに流入し、この入口目封止セル2bに流入した排ガスGが、入口目封止セル2bの、目封止部5が配設されていない側(ハニカム基材4における流出端面12側)の端部から排出される。貫通セル2aと入口目封止セル2bとが隣接することにより、貫通セル2aと入口目封止セル2bとの間に位置する多孔質の隔壁1を透過して、排ガスGが「貫通セル2aから入口目封止セル2bへと」移動することができる。そして、このように、排ガスGの一部が隔壁1を透過することにより、貫通セル2a内の隔壁1に、排ガスGに含有される粒子状物質が堆積するため、粒子状物質を捕集することができる。図6Aは、本発明のハニカム構造体の第一実施形態の、排ガスの流れる方向に平行な断面を示す模式図である。
そして、本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム基材4が、流入端面11側に低気孔率領域15を有し、流入端面12側に高気孔率領域16を有している。このように構成することによって、図6Bに示すように、貫通セル2a内の隔壁1に捕集される粒子状物質13が、セル2の流れ方向に比較的に均等に堆積することとなる。すなわち、貫通セル2aでは、目封止部5が配設された部分の隔壁1では排ガスGが殆ど透過できず、隔壁1の目封止部5が配設されていない部分(別言すれば、目封止部5が途切れた箇所)から、粒子状物質13が堆積し始めることとなる。特に、従来のハニカム構造体においては、流入端面側の目封止部が途切れた箇所近傍の排ガスの透過量が多いため、ハニカム基材の流入端面側により多くの量の粒子状物質が堆積することがあった。本実施形態のハニカム構造体100においては、排ガスの透過量が多くなる流入端面11側の5〜45%の範囲に、気孔率の低い低気孔率領域15を設けることにより、流入端面11側の粒子状物質13の堆積量を相対的に少なくすることができる。したがって、貫通セル2aの流入端面11近傍の隔壁1に、粒子状物質が過剰に堆積しなくなり、粒子状物質の隔壁1からの剥がれ落ちを有効に抑制することができる。また、貫通セル2aの流入端面11側が、粒子状物質13の堆積によって狭くなり難くなる。そして、貫通セル2a内の流路を広く確保することができれば、排ガスGの流量が増大しても、堆積した粒子状物質13にかかる圧力を抑制することができ、粒子状物質13の隔壁1からの剥がれ落ちを防止することができる。したがって、本実施形態のハニカム構造体100によれば、一旦捕集した粒子状物質13の外部への流出(別言すれば、ブローオフ)を有効に抑制することができる。このようなブローオフを有効に抑制するという効果は、貫通セル2aを有し、この貫通セル2aを区画する隔壁1にて粒子状物質13を捕集するハニカム構造体100に特有の顕著な効果である。
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム基材の隔壁の気孔率が、35〜65%であることが必要である。このような気孔率とすることで、貫通セルと入口目封止セルとを有するハニカム構造体であっても、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタとして良好に機能するものとなる。ハニカム基材の高気孔率領域及び低気孔率領域の気孔率が、共に35〜65%の範囲内に含まれる。
低気孔率領域は、ハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの5〜45%を占める範囲に存在する。ハニカム基材の「セルの延びる方向の長さ」とは、ハニカム基材の流入端面から流出端面までの長さのことである。低気孔率領域の占める範囲が、セルの延びる方向の長さの5%未満であると、低気孔率領域の占める範囲が短すぎて、ハニカム基材のセルの延びる方向の全域に、粒子状物質を均等に堆積させることが困難となる。一方、低気孔率領域の占める範囲が、セルの延びる方向の長さの45%を超えると、粒子状物質を捕集する捕集効率が低下してしまう。低気孔率領域の占める範囲は、セルの延びる方向の長さの5〜45%であることが好ましく、15〜40%であることが更に好ましく、25〜35%であることが特に好ましい。
低気孔率領域の気孔率は、基準気孔率に比して、3〜30%低いことが必要である。そして、低気孔率領域以外の領域を構成する隔壁の気孔率は、低気孔率領域の気孔率よりも大である。基準気孔率と低気孔率領域を構成する隔壁の気孔率との差が3%未満であると、ハニカム基材のセルの延びる方向の全域に、粒子状物質を均等に堆積させることが困難となる。基準気孔率と低気孔率領域を構成する隔壁の気孔率との差が30%を超えると、低気孔率領域以外の領域(別言すれば、高気孔率領域)の気孔率が高くなり過ぎる場合、少なくとも高気孔率領域の一部(別言すれば、基準気孔率の隔壁)の気孔率が高くなりすぎる場合、又は、低気孔率領域の気孔率が低くなり過ぎる場合がある。高気孔率領域の気孔率、又は少なくとも高気孔率領域の一部(別言すれば、基準気孔率の隔壁)の気孔率が高くなり過ぎる場合には、ハニカム構造体の強度が低下したり、捕集効率が低下したりすることがある。低気孔率領域の気孔率が低くなり過ぎる場合には、ハニカム構造体の圧力損失が増大したり、捕集効率が低下したりすることがある。基準気孔率と低気孔率領域の気孔率との差が、3〜30%であることが好ましく、10〜25%であることが更に好ましく、17〜23%であることが特に好ましい。なお、気孔率の測定はハニカム基材に触媒が担持されていない状態で行うものとする。触媒が担持されたものを測定する場合は触媒部分を除外して気孔率の測定を行う。
低気孔率領域の気孔率が、35〜62%であることが好ましい。低気孔率領域は、ハニカム基材の隔壁の細孔内に充填材が充填され、当該隔壁の気孔率が低くなった部位によって形成されたものであることが好ましい。このように構成することにより、単一のハニカム基材に対して、気孔率の異なる低気孔率領域と高気孔率領域とを共存させることができる。
本実施形態のハニカム構造体においては、低気孔率領域が、ハニカム基材の流入端面側からセルの延びる方向に向けて段階的に大きくなるように構成されていてもよい。また、低気孔率領域が、ハニカム基材の流入端面側からセルの延びる方向に当該低気孔率領域の気孔率の値が漸増する気孔率漸増領域を含んでもよい。すなわち、低気孔率領域は、気孔率の値がセルの延びる方向に一定の値でなく、セルの延びる方向に気孔率が変化するものであってもよい。このように構成することにより、低気孔率領域において、粒子状物質がより均等に堆積することとなる。
また、本実施形態のハニカム構造体においては、高気孔率領域は、第一高気孔率領域と、第二高気孔率領域とからなるものであってもよい。第一高気孔率領域とは、低気孔率領域の気孔率よりも隔壁の気孔率が高く、且つ基準気孔率よりも隔壁の気孔率が低い領域である。即ち、第一高気孔率領域の気孔率は、基準気孔率と比して、気孔率が低く、その差が3%未満の領域である。第二気孔率領域とは、隔壁の気孔率が、基準気孔率と同じ気孔率の領域、及び、基準気孔率よりも隔壁の気孔率が高い領域である。高気孔率領域が、第一高気孔率領域と、第二高気孔率領域とからなる場合は、低気孔率領域と第二高気孔率領域との間に、第一高気孔率領域が設けられていることが好ましい。そして、この第一高気孔率領域の気孔率は、第二高気孔率領域と低気孔率領域との気孔率の差を埋めるような値であることがより好ましい。例えば、第一高気孔率領域として、低気孔率領域と第一高気孔率領域との境界における気孔率から、第二高気孔率領域と第一高気孔率領域との境界における気孔率へと、当該第一高気孔率領域の気孔率が段階的又は連続的に変化するような領域を挙げることができる。このような第一高気孔率領域のセルの延びる方向の長さは、ハニカム基材のセルの延びる方向の長さの90%以下であることが好ましい。なお、本実施形態のハニカム構造体においては、高気孔率領域が、上記第二高気孔率領域のみによって構成されていてもよいし、高気孔率領域中に、第一高気孔率領域と第二高気孔率領域とが混在していてもよい。
高気孔率領域の気孔率が、38〜65%であることが好ましい。高気孔率領域の気孔率は、セルの延びる方向において一定であってもよいし、異なっていてもよい。高気孔率領域は、低気孔率領域を形成するための充填材等が隔壁の細孔に充填されておらず、ハニカム基材の隔壁本来の気孔率を有することが好ましい。このように構成することによって、ハニカム基材の構成が簡便なものとなる。
高気孔率領域は、ハニカム基材の流出端面から、セルの延びる方向の長さの55〜95%を占める範囲に設けられている。ハニカム基材の「セルの延びる方向の長さ」とは、ハニカム基材の流入端面から流出端面までの長さのことである。高気孔率領域の占める範囲が、セルの延びる方向の長さの95%を超えると、高気孔率領域の占める範囲が長すぎて、ハニカム基材のセルの延びる方向の全域に、粒子状物質を均等に堆積させることが困難となる。一方、高気孔率領域の占める範囲が、セルの延びる方向の長さの5%未満であると、粒子状物質を捕集する捕集効率が低下してしまう。高気孔率領域の占める範囲は、セルの延びる方向の長さの55〜95%であることが好ましく、60〜85%であることが更に好ましく、65〜75%であることが特に好ましい。
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム基材は、低気孔率領域、及び、低気孔率領域よりも隔壁の気孔率が高い高気孔率領域のみからなり、且つ当該低気孔率領域が、ハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの5〜45%を占める範囲に設けられていることも好ましい。
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム基材に形成されたセルが、貫通セルと、ハニカム基材の流入端面側においてのみ目封止部によって実質的に塞がれた入口目封止セルとのいずれか一方のセルであることが好ましい。このように構成することによって、本実施形態のハニカム構造体を、粒子状物質を捕集するフィルタとして有効に使用することができる。
隔壁の厚さは、100〜450μmであることが好ましく、120〜410μmであることが更に好ましい。100μmより薄いと、ハニカム基材の強度が低下することがある。450μmより厚いと、捕集性能が低下し、圧力損失が増大することがある。また、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中のPM量が比較的多いため、通常、セル数を少なくする(セル密度を小さくする)傾向がある。そのため、隔壁1の厚さを203〜407μmとすることが、強度と捕集性能のバランスをよくするために好ましい。また、ガソリンエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、ガソリンエンジンから排出される排ガス中のPM量が比較的少ないため、通常、セル数を多くする(セル密度を大きくする)傾向がある。そのため、隔壁の厚さを120〜203μmとすることが、強度と捕集性能のバランスをよくするために好ましい。隔壁の厚さは、ハニカム基材の軸方向の断面を顕微鏡観察する方法で測定した値である。
ハニカム基材のセル密度(ハニカム基材のセルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数)は、15.5〜150セル/cm2であることが好ましく、15.5〜62.2セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度が小さ過ぎると、捕集性能が低下することがある。セル密度が大き過ぎると、ハニカム基材の流入端面付近にPMが堆積し、セルがPMによって閉塞していくため、圧力損失が大きくなることがある。また、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、30〜70セル/cm2であることが更に好ましい。30セル/cm2より小さいと、捕集性能が低くなることがある。70セル/cm2より大きいと、圧力損失が大きくなることがある。また、ガソリンエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、45〜150セル/cm2であることが更に好ましい。ガソリンエンジンから排出される排ガスは、PM量が少ないため、セルが閉塞するリスクが低いため、セル密度を高くすることが可能であり、セル密度を高くすることにより捕集性能を高くすることができる。また、セルが閉塞し難いため、連続再生も行い易い。45セル/cm2より小さいと、捕集性能が低くなることがあり、150セル/cm2より大きいと、PM捕集時の圧力損失が大きくなることがある。
ハニカム基材のセルの形状は、特に限定されないが、セルの延びる方向に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましく、その他不定形であってもよい。
ハニカム基材の外周壁の厚さは、特に限定されないが、0.5〜6mmが好ましい。0.5mmより薄いと、外周近傍のセルが欠けやすく、強度が低下することがある。6mmより厚いと、圧力損失が増大することがある。
ハニカム基材の形状(別言すれば、ハニカム構造体の形状)は、特に限定されないが、円柱形状、底面が楕円形の柱状、底面が四角形、五角形、六角形等の多角形の柱形状等が好ましい。ハニカム構造体は、セルの延びる方向を中心軸方向とする柱形状であることが好ましい。また、ハニカム基材(別言すれば、ハニカム構造体)の大きさは、特に限定されないが、セルの延びる方向における長さが15〜200mmであることが好ましい。ハニカム基材の長さがこのような範囲であるため、ハニカム構造体によって、圧力損失を増大させずに、優れた捕集性能で排ガスを処理することができる。15mmより短いと、捕集性能が悪化することがある。また、200mmより長いと、捕集性能向上はあまり期待できず、むしろ、圧力損失が増大することがある。捕集性能と圧力損失のバランスを考えると、ハニカム基材の長さは、50〜120mmが更に好ましい。特に複数個のハニカム構造体を、収納容器内に直列に配置する場合において、効果的である。また、例えば、ハニカム基材(別言すれば、ハニカム構造体)の外形が円柱形の場合、その底面(端面)の直径は、80〜400mmであることが好ましい。ハニカム基材の底面の直径は、上記範囲内において、エンジン排気量や出力に合わせて、適宜選定される。
ハニカム基材の隔壁及び外周壁は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁及び外周壁の材質としては、具体的には、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱伝導率に優れた炭化珪素、及び、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライトが好ましい。通常のDPFでは、PM堆積量を増やし、再生間隔を長くすることが必要であるため、炭化珪素のように熱容量の大きい材質が好ましいが、本発明においては、連続再生しやすい熱容量の比較的小さいコージェライトが特に好ましい。隔壁と外周壁の材質は、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。また、「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の90質量%以上含有することを意味する。
図1〜図5に示すように、本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム基材4の流入端面11側における、一部のセル2の端部を塞ぐように目封止部5が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100においては、目封止部5が配設される一部のセル(入口目封止セル2b)と、目封止部が配設されない残余のセル(貫通セル2a)とは、隣接して配置されている。更に、入口目封止セル2bと、貫通セル2aとが交互に並び、ハニカム基材4の流入端面11において、貫通セル2aの開口部と、入口目封止セル2bの端部に配設された目封止部とにより市松模様が形成されることが好ましい。
目封止部5の材質は、ハニカム基材4の隔壁1の材質と同じであることが好ましい。
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の少なくとも一部に触媒、例えば、酸化触媒が担持されたものであってもよい。更に詳細には、ハニカム構造体を構成するハニカム基材の隔壁に触媒が担持されていることが好ましい。触媒の、単位体積当りの担持量は、0.1〜150g/リットルであることが好ましく、10〜80g/リットルであることが更に好ましい。「g/リットル」は、ハニカム構造体1リットル当たりの触媒のグラム数(g)を示す。0.1g/リットルより少ないと、触媒効果が発揮され難くなることがある。150g/リットルより多いと、隔壁の細孔が閉塞することにより、圧力損失が大きくなり、捕集効率が著しく低下することがある。また、ウォッシュコート層を形成する酸化触媒の場合、触媒の単位体積当たりの担持量は、10〜150g/リットルであることが好ましい。触媒担持量が10g/リットルより少ないと、ウォッシュコート層を形成し難くなることがある。なお、ハニカム基材の隔壁に触媒が担持されている場合には、隔壁に担持された触媒により、ハニカム基材の気孔率を変化させることができる。更に、触媒の種類や触媒の粒径を変えたり、触媒のコート量に差を設けたりすることで、ハニカム基材に気孔率差をつけることもできる。
酸化触媒としては貴金属を含有するものを挙げることができ、具体的には、Pt、Rh及びPdからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。貴金属の合計量は、ハニカム構造体の単位体積当り、0.1〜5g/リットルであることが好ましい。
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体を製造する方法について、以下に説明する。
まず、多孔質の隔壁を有するハニカム基材を作製する。具体的には、まず、成形原料を混練して坏土とする。次に、得られた坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る。
成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト化原料が好ましい。
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、5〜25質量部であることが好ましい。
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜20質量部であることが好ましい。
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組合せて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましい。
分散媒の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
使用するセラミック原料(骨材粒子)の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材の粒子径及び配合量を調整することにより、所望の気孔率、平均細孔径の多孔質基材(ハニカム基材)を得ることができる。
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。押出成形は、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて行うことができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
次に、得られたハニカム成形体の一方の端面(流入端面)における一部のセルの開口部を目封止する。セルの開口部を目封止する方法としては、セルの開口部に目封止材を充填する方法を挙げることができる。目封止材を充填する方法としては、まず、ハニカム成形体の一方の端面に、貫通セルとなるセルの開口部を塞ぐようにマスクを施す。ここで、マスクの施し方には、特に制限はないが、ハニカム構造体の一方の端面(流入端面)において、端部が目封止された所定のセルと端部が目封止されない残余のセルとが交互に配置されて、市松模様を形成するようにマスクを施すことが好ましい。
また、別途、セラミック原料、水又はアルコール、及び有機バインダを含むスラリー状の目封止材を、貯留容器に貯留しておく。セラミック原料としては、ハニカム成形体の原料として用いられるセラミック原料と同じであることが好ましい。セラミック原料は、目封止材全体の68〜90質量%であることが好ましい。また、水又はアルコールは、目封止材全体の8〜30質量%であることが好ましく、有機バインダは、目封止材全体の0.1〜2.0質量%であることが好ましい。有機バインダとしては、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
そして、上記マスクを施した方の端部を、貯留容器中に浸漬して、マスクが施されていないセルの開口部に目封止材を充填して目封止部を形成する。マスクに開ける孔の大きさを変えた場合には、浸入する目封止材の量が、各孔毎に変化し、目封止材の充填深さを調節することができる。
次に、目封止材をセルの開口部に充填したハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得る。焼成温度は、ハニカム成形体の材質よって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、3〜10時間程度とすることが好ましい。
ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
また、ハニカム成形体に目封止部を形成する前に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得、得られたハニカム焼成体の一方の端面における一部のセルの開口部に目封止部を形成した後、更に焼成してもよい。
次に、得られたハニカム焼成体に、スラリー状の気孔充填剤を浸漬させて低気孔率領域を作製する。一例として、まず、タルクやアルミナ、シリカ、カオリンなどのコージェライト原料とセルベンを水と増粘剤、分散剤と混合し、低気孔率領域作製用のスラリーを調製する。そして、この低気孔率領域作製用のスラリーに、得られたハニカム焼成体の流入端面側を浸漬させる。これにより、低気孔率領域作製用のスラリーに含まれる充填材が、隔壁の細孔内に侵入し、ハニカム焼成体の流入端面側の気孔率が低くなる。ハニカム焼成体の流入端面からセルの延びる方向の長さの5〜45%の範囲を、低気孔率領域作製用のスラリーに浸漬させることが好ましい。その後、低気孔率領域作製用のスラリーから取り出し、スラリーへの浸漬終了後のハニカム焼成体を再度乾燥させ、質量を測定し、所望の気孔率となっているかを確認する。気孔率の確認は、原料の配合などにより予測されるハニカム焼成体の気孔率と、スラリー中の固形成分の密度と、及びハニカム焼成体の質量増加等から、ハニカム焼成体におけるスラリー処理部分の気孔率の減少量を予測することにより行う。所望の気孔率になっていないと予測される場合、ハニカム焼成体の低気孔領域作製用のスラリーへの浸漬、乾燥を所望の気孔率が得られるまで繰り返す。最後に焼成して、本実施形態のハニカム構造体を得ることができる。焼成後のハニカム構造体では、スラリー中の成分はハニカム基材に焼結している。また、ハニカム焼成体のスラリーへの浸漬、乾燥は一回で所望の気孔率となるように作製してもよい。また、ハニカム焼成体のスラリーへの浸漬時間は、乾燥後の質量増加量などを目安として、適宜調整することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(ハニカム構造体)
まず、コージェライト化原料100質量部に、造孔材を13質量部、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径1〜10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。造孔材の粒子径と量をコントロールすることにより、隔壁の細孔径及び気孔率をコントロールした。
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、ハニカム成形体の一方の端面全域を覆うようにシートを被せ、当該シートの、入口目封止セルとなるセルの開口部分に該当する箇所に孔を開ける方法にて、ハニカム成形体の一方の端面(流入端面)の一部のセルの開口部にマスクを施した。マスクを施した側の端部を、コージェライト化原料を含有する目封止スラリーに浸漬することによって、流入端面における所定のセル(マスクが施されていないセル)に目封止スラリーを充填した。実施例1においては、貫通セルと入口目封止セルとが隔壁を隔てて交互に配置されるように、流入端面側のセルの開口部に目封止スラリーを充填した。
次に、目封止部を形成したハニカム成形体を熱風乾燥機で乾燥し、更に、1410〜1440℃で、5時間、焼成した。このようにして、複数のセルが多孔質の隔壁によって区画形成されたハニカム基材を備え、貫通セルと入口目封止セルとが隔壁を挟んで隣接したハニカム構造体を得た。ハニカム基材の隔壁の気孔率は65%であった。気孔率は画像解析システムにより測定した。
次に、ハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの30%を占める範囲に、コージェライト原料とセルベンをスラリー状にしたものを浸漬させたのち、乾燥させて、質量を測定し、気孔率が30%低減すると予測される質量になるまで、ハニカム基材のスラリーへの浸漬と、ハニカム基材の乾燥と、質量測定とを、繰り返した。その後、ハニカム構造体を焼成して、実施例1のハニカム構造体を製造した。実施例1のハニカム構造体は、ハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの30%を占める範囲において、ハニカム基材の気孔率が35%となると質量測定から予測される低気孔率領域が形成されている。
得られたハニカム構造体のハニカム基材は、中心軸に直交する断面の直径が143.8mmであり、中心軸方向の長さが152.4mmの円筒形であった。隔壁の厚さは、305μmであり、セル密度は、46.5セル/cm2であった。セルの形状は、四角形であった。表1に、隔壁の厚さ(μm)、セル密度(セル/cm2)、ハニカム基材の直径(mm)及び長さ(mm)を示す。
実施例1のハニカム構造体の気孔率を、画像解析システムにより以下のように測定した。まず、実施例1のハニカム構造体を、セルの延びる方向と並行に切断した。次に、その切断面の中央に位置する中央隔壁を測定対象とし、日立製作所社製の走査電子顕微鏡「S−3200N(商品名)」の反射電子(アニュラー検出器)によって撮像し、切断面の画像を得た。中央隔壁の撮像は、測定対象の中央隔壁の厚さ方向が、撮像画面の上下方向となり、中央隔壁のセルの延びる方向が撮像画面の左右方向となるようにし、複数個所にて撮像を行った。中央隔壁の撮像は、撮像画像の上下方向が、測定対象の中央隔壁が収まるような倍率に設定し、また撮像画像の左右方向が600μmの範囲となるように設定して行った。全長方向においては、ハニカム基材の端面から全長の3%に相当する部分を最初の測定箇所として、その後はハニカム基材の全長の5%に相当する間隔で19箇所、さらにハニカム基材端面から全長の5%に相当する部分と、ハニカム基材の端面から全長の45%に相当する部分の2箇所において測定を行った。それぞれの撮像箇所のセル隔壁部と気孔部を画像解析システム(三谷商事社製の「WINROOF」)を用いて二値化し、面積を算出した。
上記画像解析システムにより測定した実施例1のハニカム構造体は、ハニカム基材の流入端面から全長の3、5、8、13、18、23、及び28%に相当する部分の隔壁の気孔率が、35%であった。また、ハニカム基材の流入端面から全長の33、38、43、45、48、53、58、63、68、73、78、83、88、及び93%に相当する部分の隔壁の気孔率が65%であった。
実施例1のハニカム構造体は、上述したように、ハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの30%を占める範囲において、ハニカム基材の気孔率が35%となる低気孔率領域が形成されるように、作製された。そして、少なくともハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの3%から28%を占める範囲において低気孔率領域が形成されていることが確認された。表1の「低気孔率領域A」の欄に、低気孔率領域の気孔率を示す。また、ハニカム基材の流入端面から、セルの延びる方向の長さの33%を超える範囲については、隔壁の気孔率が65%であった。この隔壁の気孔率が65%の部分が、実施例1のハニカム構造体における高気孔率領域となる。また、水銀ポロシメータにより測定した高気孔率領域(ハニカム基材へのスラリーを用いた処理をしていない領域に相当する)の平均細孔径は20μmであった。表1の「高気孔率領域」の欄に、高気孔率領域の気孔率を示す。実施例1のハニカム構造体において、高気孔率領域の気孔率と低気孔率領域の気孔率との差は、30%であった。表1の「気孔率の差」の欄に、高気孔率領域の気孔率と低気孔率領域の気孔率との差の値を示す。また、表1の「流入端面からの低気孔率領域の長さの比率」の欄に、ハニカム基材のセルの延びる方向の長さに対する、低気孔率領域が形成されるように処理をした長さが占める範囲の比率(百分率)を示す。気孔率は、画像解析システムにより測定した。
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の評価を行った。結果を、表2に示す。また、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の評価をもとに、以下の方法で、「総合評価」を行った。結果を、表2に示す。
(煤の漏れ量)
ディーゼルエンジン(3.0リットル、直噴コモンレール、直列6気筒)から排出される排気ガスをハニカム構造体に流入させて、ハニカム構造体に10.0g/Lの煤を堆積させる。次に、エンジン始動後アイドリング運転を行い、5秒後に回転数2000rpm、トルク178N・mとし2分間運転した。運転開始後、AVL製のスートセンサーにて、ハニカム構造体の流出端面から排出されるガス中の煤の量を測定する。スートセンサーに計測された最大値を、煤の漏れ量(mg/m3)とする。また、測定された煤の漏れ量(mg/m3)から、以下の判定基準により、A〜Dの判定を行った。
評価A:煤の漏れ量が250mg/m3以下の場合を、評価Aとする。
評価B:煤の漏れ量が250mg/m3を超え、500mg/m3以下の場合を、評価Bとする。
評価C:煤の漏れ量が500mg/m3を超え、1000mg/m3以下の場合を、評価Cとする。
評価D:煤の漏れ量が1000mg/m3を超える場合を、評価Dとする。
(強度)
ハニカム構造体の外周に、厚さ0.5mmのウレタンゴム製のシートを巻き付けた。ハニカム構造体の両端部にも円形のウレタンゴム製のシートを当て、さらに、このウレタンゴム製のシートに厚さ20mmのアルミニウム製の円板を当てた状態で、アルミニウム製の円板とウレタンゴム製のシートの周りをビニールテープで巻くことによりハニカム構造体の両端部を封止した。この両端部を封止したハニカム構造体を試験用サンプルとした。なお、アルミニウム製の円板や円形のウレタンゴム製のシートの半径はハニカム構造体の端部の半径と同じにした。試験用サンプルを圧力容器に入れ、0.3〜3.0MPa/分の速度で圧力を上昇させ、ハニカム構造体に破壊あるいはクラックを生じたか否かを調べた。クラックの発生は、圧力をかけていた時の破壊音の有無、及びハニカム構造体の外観を目視することにより確認した。ハニカム構造体に破壊あるいはクラックを生じた際の圧力を、ハニカム構造体の機械的強度(MPa)とした。また、測定された機械的強度の値から、以下の評価基準により、A〜Dの判定を行った。
評価A:強度が5.0MPa以上の場合を、評価Aとする。
評価B:強度が3.0MPa以上、5.0MPa未満の場合を、評価Bとする。
評価C:強度が1.5MPa以上、3.0MPa未満の場合を、評価Cとする。
評価D:強度が1.5MPa未満の場合を、評価Dとする。
(圧力損失)
ディーゼルエンジン(3.0リットル、直噴コモンレール、直列6気筒)から排出される排気ガスをハニカム構造体に流入させて、ハニカム構造体の体積に対する煤の堆積量が4g/Lとなるように、ハニカム構造体の隔壁にて煤を捕集する。そして、煤の堆積量が4g/Lとなった状態で、200℃のエンジン排ガスを3.0Nm3/minの流量で流入させてハニカム構造体の流入端面側と流出端面側との圧力を測定し、その圧力差を算出することにより、圧力損失(kPa)を求める。測定された圧力損失(kPa)から、以下の判定基準により、A〜Dの判定を行った。
評価A:圧力損失が6kPa以下の場合を、評価Aとする。
評価B:圧力損失が6kPaを超え、9kPa以下の場合を、評価Bとする。
評価C:圧力損失が9kPaを超え、13kPa以下の場合を、評価Cとする。
評価D:圧力損失が13kPaを超える場合を、評価Dとする。
(総合評価)
まず、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」のA〜Dの評価について、以下の方法で、点数付けを行った。評価Aの場合を、4点とする。評価Bの場合を、3点とする。評価Cの場合を、2点とする。評価Dの場合を、1点とする。そして、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の各評価に基づく点数を合計した点数を、「総合評価」の「点数」とする。また、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の各評価結果と、「総合評価」とから、以下の判定基準により、優、良、不可の3段階の評価を行った。
評価「優」:点数が、9点以上で、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の各評価において、「評価D」の判定がない場合を、評価「優」とする。
評価「良」:点数が、8点以上で、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の各評価において、「評価D」の判定がない場合を、評価「良」とする。
評価「不可」:点数が、8点未満であるか、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の各評価において、「評価D」がある場合を、評価「不可」とする。
(実施例2〜11、比較例1〜6)
低気孔率領域、及び高気孔率領域の構成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。表1における「流入端面からの低気孔率領域の長さの比率」欄には、低気孔率領域が形成されるように処理をした長さの比率を示す。得られたハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の評価を行った。結果を、表2に示す。また、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」の評価をもとに、実施例1と同様の方法で、「総合評価」を行った。結果を、表2に示す。実施例2〜11、比較例1〜6において、低気孔率領域の気孔率の調節は、コージェライト原料とセルベンをスラリー状にしたものをハニカム基材に浸漬させ、乾燥させる工程の回数を調整することにより行った。また、実施例3のハニカム構造体においては、低気孔率領域の気孔率が2段階に変化するものとした。具体的には、ハニカム構造体の流入端面から10%までを占める範囲の気孔率が、45%となり、ハニカム構造体の流入端面から10〜30%までを占める範囲の気孔率が、55%となるように製造した。画像解析システムにより測定した気孔率は、ハニカム基材の流入端面から全長の3〜8%を占める範囲の気孔率が、45%であり、ハニカム基材の流入端面から全長の13〜28%を占める範囲の気孔率が55%であった。実施例3のハニカム構造体について、表1の「低気孔率領域A」の欄に、低気孔率領域の気孔率のうちの気孔率の低い値(すなわち、45%)と記し、表1の「低気孔率領域B」の欄に、低気孔率領域の気孔率のうちの気孔率の高い値(すなわち、55%)と記す。
(結果)
表2に示すように、実施例1〜11のハニカム構造体は、「煤の漏れ量」、「強度」、及び「圧力損失」のすべての評価において良好な結果を得ることができた。このため、総合評価も良好な結果を得ることができた。
比較例1のハニカム構造体は、低気孔率領域の気孔率が30%であるため、低気孔率領域の気孔率が低すぎたため、圧力損失が大きくなり、総合評価の結果が不可であった。
比較例2のハニカム構造体は、低気孔率領域の気孔率が30%であり、気孔率の差が35%であった。このため、比較例2のハニカム構造体は、圧力損失が大きく総合評価の結果が不可であった。
比較例3のハニカム構造体は、流入端面からの低気孔率領域が形成されるように処理をした長さの比率が50%であり、画像解析システムにより、ハニカム基材の流入端面から全長の3〜48%を占める範囲において少なくとも低気孔率領域が形成されていることが確認された。比較例2のハニカム構造体は、煤の漏れ量が多く、また圧力損失も高いため、総合評価の結果不可であった。
比較例4のハニカム構造体は、高気孔率領域の気孔率が高すぎて、ハニカム構造体の強度が著しく低下してしまった。このため、比較例4のハニカム構造体は、強度の評価がDとなり、総合評価の結果が不可であった。
比較例5のハニカム構造体は、ハニカム基材の気孔率が、セルの延びる方向に一定の値となるものであった。すなわち、比較例5のハニカム構造体は、低気孔率領域及び高気孔率領域のような気孔率の値の異なる領域を有さないものであった。このため、煤がハニカム基材の流入端面側に堆積してしまい、煤の漏れ量が多くなった。このため、比較例5のハニカム構造体は、煤の漏れ量の評価がDとなり、総合評価の結果が不可であった。
比較例6のハニカム構造体は、高気孔率領域及び低気孔率領域の気孔率がともに低すぎたため、ハニカム構造体の圧力損失が著しく高くなってしまった。このため、比較例6のハニカム構造体は、圧力損失の評価がDとなり、総合評価の結果が不可であった。