以下、絶縁抵抗測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
絶縁抵抗測定装置としての図1に示す絶縁抵抗測定装置1は、一例として、電圧生成部2、電流測定部3、操作部4、処理部5、出力部6および放電部7を備えて、測定対象11の絶縁抵抗値Rを測定する。
電圧生成部2は、一例としてスイッチング電源として構成されて、出力開始信号Sonを入力しているときにスイッチング動作することにより、予め規定された定電圧値(例えば、DC25V、DC100V、DC500V、DC1000Vなどの複数の電圧値のうちから選択された1つの電圧値(以下、選択電圧値ともいう))V1で測定対象11に印加する印加電圧(直流電圧)Vaを生成して、出力端子2aから出力する。また、電圧生成部2は、測定対象11に実際に印加されている印加電圧Vaの電圧値(出力端子2aから実際に出力されている印加電圧Vaの電圧値)をモニタして、その電圧値を示す電圧データDvを出力する。
具体的には、電圧生成部2は、一例として図2に示すように、昇圧トランス21、スイッチ素子としての一対の半導体スイッチ素子(バイポーラ型トランジスタや電界効果型トランジスタなど)22a,22b、整流平滑回路23、分圧回路24、基準電圧生成回路25、コンパレータ26、A/D変換器27および制御回路28を備えている。
本例では、昇圧トランス21は、一例として、センタータップを備えた一次巻線、および二次巻線を備え、電圧生成部2の一次側の第1電源電圧Vcc1(入力電圧:例えば、DC12Vなど)がセンタータップに印加される。半導体スイッチ素子22a,22bは、昇圧トランス21の一次巻線の各端部と電圧生成部2の基準電位Gとの間にそれぞれ配置されている。昇圧トランス21および半導体スイッチ素子22a,22bは、昇圧回路を構成して、第1電源電圧Vcc1に基づいて、昇圧した交流電圧を二次巻線から出力する(交流電圧を二次巻線に誘起させる)昇圧動作を実行する。
整流平滑回路23は、二次巻線に接続されて、この二次巻線に誘起する昇圧された交流電圧を入力すると共に整流平滑(整流については全波整流または半波整流)することにより、基準電位Gを基準とする印加電圧Vaを生成する。具体的には、整流平滑回路23は、二次巻線に接続されて、昇圧された交流電圧を整流する整流回路と、整流回路から出力される脈流を平滑して印加電圧Vaを出力するフィルタ回路(ローパスフィルタ回路)とを備えて構成されている。以上の構成により、本例の電圧生成部2は、一例として、2石式プッシュプル形のスイッチング電源として構成されている。なお、電圧生成部2は、1石フォワード形、ハーフブリッジ形、フルブリッジ形など種々の形式のスイッチング電源で構成することもできる。また、フィルタ回路は、一例としてインダクタおよびコンデンサを備えて、LCフィルタ(1段または多段接続されたフィルタ)として構成されている。
分圧回路24は、印加電圧Vaを所定の比率で分圧して電圧Vadとして出力する。基準電圧生成回路25は、可変電源回路(例えば、D/A変換器)で構成されて、処理部5から出力される基準電圧データDrefに対応した電圧値の基準電圧Vrefを基準電位Gを基準として生成する。この場合、基準電圧Vrefの電圧値は、印加電圧Vaの電圧値V1として選択可能な複数の電圧値(本例では、DC25V、DC100V、DC500V、DC1000V)毎に、その電圧値で印加電圧Vaが電圧生成部2から出力されているときに、分圧回路24から出力される電圧Vadと一致するように規定されている。コンパレータ26は、電圧Vadと基準電圧Vrefとを比較して、本例では一例として、電圧Vadが基準電圧Vref以上のときにHレベルとなり、電圧Vadが基準電圧Vref未満のときにLレベルとなるフィードバック信号Sfbを出力する。
A/D変換器27は、電圧生成部2の一次側の第2電源電圧Vcc2(例えば、DC5Vなど。図3に示す後述の抵抗34に供給される電圧でもある)の供給を受けて作動して、電圧Vadを入力すると共に所定のサンプリング周波数でサンプリングすることにより、電圧Vadの電圧値(つまり、印加電圧Vaの電圧値)を示す電圧データDvを生成して、処理部5に出力する。
制御回路28は、第2電源電圧Vcc2の供給を受けて作動して、コンパレータ26から出力される上記のフィードバック信号Sfbと、処理部5から出力される選択電圧値V1を示す選択電圧データDsvおよび出力開始信号Sonとに基づいて、各半導体スイッチ素子22a,22bを駆動する駆動パルスSd1,Sd2を出力する。
本例では一例として、制御回路28は、出力開始信号Sonを入力しているとき(例えば、出力開始信号SonがHレベルのとき)であって、フィードバック信号SfbがLレベルのとき(電圧Vadが基準電圧Vref未満のときに)にのみ、周波数が一定で、かつ選択電圧データDsvで示される選択電圧値V1に対応したデューティ比(選択電圧値V1が高くなるに従って数値が高くなるデューティ比)の駆動パルスSd1,Sd2を、互いの位相が180°ずれた位相状態で出力する。
以上の構成により、電圧生成部2では、フィードバック信号SfbがLレベルで、かつ出力開始信号SonがHレベルのときに、制御回路28が、所定の周波数で、かつ選択電圧値V1に対応したデューティ比の第1駆動パルスSd1および第2駆動パルスSd2を上記のような位相状態で出力し、各半導体スイッチ素子22a,22bが、対応する駆動パルスSd1,Sd2で駆動されてスイッチング動作することにより、電圧生成部2は、選択電圧値V1の印加電圧Vaを出力する。また、電圧生成部2は、フィードバック信号SfbがHレベルであるか、または出力開始信号SonがLレベルのときには、制御回路28が第1駆動パルスSd1および第2駆動パルスSd2の出力を停止するため、印加電圧Vaの出力を停止する。
電流測定部3は、電圧生成部2から測定対象11に印加電圧Vaが印加されている状態において、測定対象11に流れる電流(直流電流)Iaの電流値I1を測定する。また、電流測定部3は、測定した電流値I1を示す電流データDiを処理部5に出力する。
操作部4には、予め規定された上記の複数の電圧値(一例として、DC25V、DC100V、DC500V、DC1000V)のうちの1つを印加電圧Vaの電圧値V1として選択するための不図示の電圧選択スイッチと、測定対象11の絶縁抵抗値Rについての測定を実行させるための開始スイッチ(オン・オフスイッチ)とを少なくとも備えている。また、操作部4は、複数の電圧値のうちの電圧選択スイッチによって選択されている電圧値(選択電圧値)V1を示す選択信号Sseを処理部5に出力すると共に、開始スイッチが操作されてオン状態になっているときにのみスタート信号Sstを処理部5に出力する。
処理部5は、例えば、不図示のコンピュータを備えて構成されている。また、処理部5は、電圧生成部2による印加電圧vaの電圧生成動作および放電部7の放電動作に対する制御処理、絶縁抵抗値Rを測定する抵抗測定処理、並びに測定した絶縁抵抗値Rを出力部6に出力する出力処理を実行する。出力部6は、一例としてLCDなどの表示装置で構成されて、処理部5で測定された絶縁抵抗値Rを画面上に表示する。なお、出力部6を外部インタフェース回路や無線回路などで構成して、処理部5で測定した上記の絶縁抵抗値Rを外部装置に伝送する構成を採用することもできる。
放電部7は、電圧生成部2の出力端子2aと基準電位Gとの間に配設されて、測定対象11の容量成分に充電されている電荷を放電させる放電動作、および出力端子2aから測定対象11に流れる電流Iaの一部を基準電位Gに放電させる放電動作を実行する。この放電動作は処理部5によって制御可能に構成されている。本例では一例として、放電部7は、処理部5から出力される第1制御信号Sc1に基づいて、予め規定された放電能力で放電動作を実行する(予め規定された後述の電流値Idi1で放電電流Idiを発生させる)第1放電状態と、この第1放電状態よりも低い放電能力で放電動作を実行する(予め規定された後述の電流値Idi2で放電電流Idiを発生させる)第2放電状態の少なくとも2つの放電状態に選択的に移行可能に構成されている。また、放電部7は、処理部5から出力される第2制御信号Sc2に基づいて、放電動作を停止可能に構成されている。
具体的には、放電部7は、一例として図3に示すように接続された2つのスイッチ素子(本例では一例として、n型の電界効果型トランジスタ)31,32、1つのトランジスタ(バイポーラ形トランジスタ)33、および5つの抵抗34,35,36,37,38を備えて、放電電流Idiを定電流として発生させると共に、第1制御信号Sc1に基づいて、放電電流Idiの電流値をIdi1,Idi2(Idi1>Idi2)の2段階に変更可能に構成された定電流回路で構成されている。
この放電部7では、トランジスタ33のベース−エミッタ間電圧Vbe(以下、単に電圧Vbeともいう)が印加された状態でスイッチ素子31の基準電位G側の端子(本例では電界効果型トランジスタのソース端子)と基準電位Gとの間に配置されている抵抗37に対して、スイッチ素子32をオン状態にする(第1制御信号Sc1をHレベルにする)ことで抵抗38を並列接続して、電圧生成部2の出力端子2aから基準電位Gに流す放電電流Idiの電流値をIdi1(一例として、十数mA〜数十mA程度)に規定し、またスイッチ素子32をオフ状態にする(第1制御信号Sc1をLレベルにする)ことでこの並列接続を解除して、電圧生成部2の出力端子2aから基準電位Gに流す放電電流Idiの電流値をIdi2(一例として、数百μA程度)に規定する。なお、抵抗34〜36は、各トランジスタへの電流を制限するなどして、各トランジスタを保護するためのものである。
また、この放電部7では、スイッチ素子31の電圧生成部2側の端子(本例では電界効果型トランジスタのドレイン端子)と、電圧生成部2の出力端子2aとの間に、第2制御信号Sc2によってオン・オフ状態が切り替えられる他のスイッチ素子39(例えば、スイッチ素子31,22と同じように電界効果型トランジスタで構成することができる)が配設されている。この構成により、この放電部7は、第2制御信号Sc2がオン状態に制御されることで(電圧生成部2の出力端子2aに接続されることで)、出力端子2aから基準電位Gへの放電電流Idiを発生させ、一方、第2制御信号Sc2がオフ状態に制御されることで(電圧生成部2の出力端子2aから切り離されることで)、放電電流Idiを停止させることが可能になっている。なお、放電部7は、上記のような定電流回路で構成する以外に、図示はしないが、電圧生成部2の出力端子2aと基準電位Gとの間に、抵抗値の異なる2種類の固定抵抗(第1放電状態用の低抵抗値の抵抗、および第2放電状態用の高抵抗値の抵抗)を切り替えて接続することで、第1放電状態と第2放電状態とを作り出す構成とすることもできる。
次に、絶縁抵抗測定装置1の動作について図面を参照して説明する。なお、電圧生成部2および電流測定部3は、不図示のプローブを介して測定対象11に予め接続されているものとする。また、絶縁抵抗測定装置1の各構成要素は作動状態にあるものとする。
この状態において、操作者によって操作部4の電圧選択スイッチに対する操作が行われて、印加電圧Vaの電圧値V1が選択され、さらに開始スイッチをオン状態にする操作が行われたときには、操作部4は、上記の複数の電圧値のうちの電圧選択スイッチによって選択されている選択電圧値V1を示す選択信号Sseと、スタート信号Sstとを処理部5に出力する。
処理部5は、選択信号Sseとスタート信号Sstとを入力して、電圧生成部2および放電部7に対する制御処理を実行する。以下では、主として電圧生成部2に対する制御処理について説明しつつ、必要に応じて放電部7に対する制御処理について説明する。
まず、処理部5は、第2制御信号Sc2を放電部7に出力して、放電部7のスイッチ素子29をオフ状態に移行させることにより、電圧生成部2の出力端子2aから放電部7を切り離す処理(放電電流Idiの流出を停止させる処理)を実行する。
次いで、処理部5は、選択信号Sseで示される選択電圧値V1に基づいて、この選択電圧値V1に予め対応づけられていた基準電圧データDrefと選択電圧データDsvとを電圧生成部2に出力する。具体的には、処理部5は、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC25Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref1を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧を示す選択電圧データDsvとを出力し、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC100Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref2(=Vref1×4)を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧を示す選択電圧データDsvとを出力する。
また、処理部5は、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC500Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref3(=Vref1×20)を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧を示す選択電圧データDsvとを出力し、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC1000Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref4(=Vref1×40)を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧を示す選択電圧データDsvとを出力する。
また、処理部5は、基準電圧データDrefおよび選択電圧データDsvの電圧生成部2への出力が完了した後に、出力開始信号Sonを電圧生成部2に出力することにより、電圧生成部2に対して印加電圧Vaの生成を開始させる。
この場合、電圧生成部2では、分圧回路24が、印加電圧Vaを分圧して電圧Vadを出力する。また、基準電圧生成回路25が、基準電圧データDrefに基づいて、この基準電圧データDrefで示される電圧値の基準電圧Vrefを生成して、コンパレータ26に出力する。また、コンパレータ26が、電圧Vadと基準電圧Vrefとを比較して、フィードバック信号Sfbを出力する。また、A/D変換器27が、電圧Vadを入力して、電圧データDvを出力する。
ところで、処理部5から電圧生成部2への出力開始信号Sonの出力直後は、電圧生成部2から出力されている印加電圧Vaがゼロボルトに近い電圧値であるため、分圧回路24から出力される電圧Vadもゼロボルトに近い電圧値である。このため、基準電圧Vrefは電圧Vadを上回った状態となっている。したがって、コンパレータ26は、基準電圧Vrefと電圧Vadとを比較することにより、フィードバック信号SfbをLレベルで出力する。
これにより、制御回路28は、フィードバック信号SfbがLレベルで、かつ出力開始信号SonがHレベルであるため、一定周波数で、かつ選択電圧データDsvで示されるデューティ比の第1駆動パルスSd1および第2駆動パルスSd2を出力する。したがって、半導体スイッチ素子22aは第1駆動パルスSd1により、また半導体スイッチ素子22bは第2駆動パルスSd2により、同じデューティ比で交互にオン・オフを繰り返すスイッチング動作を実行する。
電圧生成部2では、各半導体スイッチ素子22a,22bがこのようにスイッチング動作することにより、昇圧トランス21の二次巻線には昇圧された交流電圧が発生する。整流平滑回路23は、この交流電圧を整流平滑することにより、印加電圧Vaの電圧値を上昇させる。このとき、上記したように放電部7は放電電流Idiの基準電位Gへの流出を停止させている。このため、電圧生成部2は、放電電流Idiによる妨げを受けることなく、印加電圧Vaの電圧値を上昇させる。なお、この印加電圧Vaの電圧値の上昇に伴い、測定対象11に電流Iaが流れ始めるため、電流測定部3は、この電流Iaの電流値I1を測定して、測定した電流値I1を示す電流データDiを処理部5に出力する。
電圧生成部2では、分圧回路24が、この印加電圧Vaを分圧して電圧Vadをコンパレータ26に出力する。印加電圧Vaが、上昇して選択電圧値V1に達するまでは、電圧Vadは基準電圧Vrefよりも低い状態になっている。このため、コンパレータ26はLレベルでのフィードバック信号Sfbの出力を継続することから、制御回路28は、各駆動パルスSd1,Sd2の出力を続行する。
その後、印加電圧Vaが選択電圧値V1に達したときには、分圧回路24から出力される電圧Vadも基準電圧Vrefに達する。この場合、コンパレータ26は、Hレベルでフィードバック信号Sfbを出力するため、制御回路28は各駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止する。したがって、半導体スイッチ素子22a,22bもスイッチング動作を停止する。電圧生成部2における分圧回路24から、コンパレータ26、制御回路28、半導体スイッチ素子22a,22bおよび昇圧トランス21を介して整流平滑回路23に至るフィードバックループには、フィードバック制御を実行する通常の回路と同様にして、遅延が存在している。このため、印加電圧Vaが選択電圧値V1に達した後、制御回路28が各駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止するまでに若干のタイムラグがあることから、印加電圧Vaは選択電圧値V1よりも若干高い電圧まで上昇した後に、上昇から下降に転じる。
また、下降した印加電圧Vaが選択電圧値V1に達し、さらに選択電圧値V1を下回ったときには、分圧回路24から出力される電圧Vadも基準電圧Vref以上の状態から基準電圧Vref未満の状態に移行する。この場合、コンパレータ26は、Lレベルでフィードバック信号Sfbを出力するため、制御回路28は各駆動パルスSd1,Sd2の出力を再開する。したがって、半導体スイッチ素子22a,22bもスイッチング動作を再開することから、印加電圧Vaは、上記したフィードバックループの遅延に起因して、選択電圧値V1よりも若干低い電圧まで一旦下降した後に、下降から上昇に転じる。
以降は、電圧生成部2は、以上の動作を繰り返すことにより、選択電圧値V1を中心とする一定の目標電圧範囲(各選択電圧値V1毎に予め規定された電圧範囲)内で電圧値が安定している状態に印加電圧Vaを移行させる(制御する)。
処理部5は、電圧生成部2から出力される電圧データDvに基づいて、印加電圧Vaの電圧値をリアルタイムで算出しつつ、この印加電圧Vaの電圧値が選択電圧値V1についての上記の目標電圧範囲内に移行したか否かを検出する。処理部5は、印加電圧Vaの電圧値のこの目標電圧範囲内への移行を検出したときには、第2制御信号Sc2を放電部7に出力して、放電部7のスイッチ素子29をオフ状態からオン状態に移行させることにより、電圧生成部2の出力端子2aに放電部7を接続する処理(放電電流Idiの基準電位Gへの流出を開始させる処理)と、第1制御信号Sc1を放電部7に出力して放電部7を第2放電状態に移行させることにより、この放電電流Idiの電流値をIdi2に規定する処理とを実行する。
本例の絶縁抵抗測定装置1では、絶縁抵抗値の測定終了後にのみ放電手段を作動させて被測定物の容量成分に残存している電荷を放電させる(つまり、絶縁抵抗値の測定中は放電手段を作動させない)という従来の絶縁抵抗測定装置とは異なり、印加電圧Vaの電圧値が選択電圧値V1についての上記の目標電圧範囲内に移行した状態(後述するように、抵抗測定処理の実行中)においても放電部7を作動させて、この放電部7を介して電圧生成部2の出力端子2aから基準電位Gに、絶縁抵抗値Rの測定終了後の作動時での電流値Idi1よりも小さい電流値Idi2で放電電流Idiを流出させている。
このため、印加電圧Vaの電圧値を選択電圧値V1に維持(具体的には、選択電圧値V1を含む上記の目標電圧範囲内に維持)させるために、制御回路28が各駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止させたときの印加電圧Vaの下降の度合い(下降率)が、従来の絶縁抵抗測定装置と比較して大きくなる。これにより、従来の絶縁抵抗測定装置では、例えば図4に示すように、目標電圧範囲(同図において2本の破線で挟まれた電圧範囲)の上限値から下限値まで印加電圧Vaが下降するのに数ms(同図では一例として、7〜8ms程度)の時間がかかっていたのに対して、本例の絶縁抵抗測定装置1では、例えば図5に示すように、目標電圧範囲(同図において2本の破線で挟まれた電圧範囲)の上限値から下限値まで印加電圧Vaが下降する時間が数百μs(同図では一例として、190〜200μs程度)にまで短縮されている。
一方、印加電圧Vaの電圧値を選択電圧値V1に維持(具体的には、選択電圧値V1を含む上記の目標電圧範囲内に維持)させるために、制御回路28が各駆動パルスSd1,Sd2を出力させているときの印加電圧Vaの上昇の度合い(上昇率)は、測定対象11に供給される電流Iaの電流値I1に対して電流値Idi2が十分に小さい値に規定されることにより、従来の絶縁抵抗測定装置とほぼ同じになる。
したがって、この絶縁抵抗測定装置1では、印加電圧Vaの電圧値を目標電圧範囲内に維持させる際に図5に示すように印加電圧Vaに生じるリップルの周波数を、図4に示す従来の絶縁抵抗測定装置において同様にして印加電圧Vaに生じるリップルの周波数と比較して十分に高くすることができる。このため、この絶縁抵抗測定装置1では、このリップルを低減させるために、電圧生成部2の整流平滑回路23内に設けられるフィルタ回路(ローパスフィルタ回路)のカットオフ周波数を従来の絶縁抵抗測定装置と比較して十分に高めることができる結果、フィルタ回路を構成するインダクタのインダクタンス値やキャパシタのキャパシタンス値を小さくできるため(つまり、外形の小さなインダクタやキャパシタを使用できるため)、フィルタ回路、ひいては整流平滑回路23が小型化されている。
処理部5は、この状態(印加電圧Vaの電圧値の目標電圧範囲内に維持され、かつ放電部7が第2放電状態に移行している状態)において、抵抗測定処理を実行する。
この抵抗測定処理では、処理部5は、算出した印加電圧Vaについての最新の電圧値と、電流測定部3から出力されている電流データDiに基づいて算出した電流Iaについての最新の電流値I1とに基づいて、測定対象11の絶縁抵抗値Rを算出する。次いで、処理部5は、出力処理を実行して、算出した絶縁抵抗値Rを出力部6に出力する。本例では出力部6は、一例として表示装置で構成されているため、絶縁抵抗値Rを画面上に表示する。
続いて、処理部5は、出力開始信号Sonの電圧生成部2への出力を停止する。これにより、電圧生成部2では、制御回路28が駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止するため、印加電圧Vaが下降を開始する。また、処理部5は、出力開始信号Sonの電圧生成部2への出力と同時に、第1制御信号Sc1を放電部7に出力して、放電部7を第1放電状態に移行させることにより、この放電電流Idiの電流値をより大きな電流値Idi1に規定する処理を放電制御処理の一部として実行する。これにより、印加電圧Vaは急速にゼロボルトまで下降する(測定対象11の容量成分に充電されていた電荷が短時間に放電される)。
処理部5は、電圧生成部2から出力される電圧データDvに基づいて、印加電圧Vaの電圧値をリアルタイムで算出しつつ、この印加電圧Vaの電圧値がゼロボルトに達したか否かを検出する。処理部5は、印加電圧Vaの電圧値のゼロボルトに達したことを検出したときには、放電部7による印加電圧Vaの放電が完了したと判別して、第2制御信号Sc2を放電部7に出力して、放電部7のスイッチ素子29をオフ状態に移行させることにより、電圧生成部2の出力端子2aから放電部7を切り離す処理(放電電流Idiの流出を停止させる処理)を実行する。これにより、測定対象11についての絶縁抵抗値Rの測定が完了する。
このようにして、この絶縁抵抗測定装置1では、処理部5は、抵抗測定処理の完了後に電圧生成部2に対して印加電圧Vaの電圧生成動作を停止させるときには、放電部7を第1放電状態(電圧生成部2から基準電位Gに電流値Idi1で放電電流Idiを流出させる状態)に移行させ、抵抗測定処理の実行のために電圧生成部2に対して印加電圧Vaの電圧生成動作を実行させているときには、放電部7を第2放電状態(電圧生成部2から基準電位Gに電流値Idi2(<Idi1)で放電電流Idiを流出させる状態)に移行させる。
したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、抵抗測定処理の実行のために印加電圧Vaの電圧値を選択電圧値V1に維持(具体的には、選択電圧値V1を含む上記の目標電圧範囲内に維持)させているときに、制御回路28が各駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止させたときの印加電圧Vaの下降の度合いを、従来の絶縁抵抗測定装置と比較して大きくできるため(目標電圧範囲の上限値から下限値まで印加電圧Vaが下降するのに要する時間を短縮できるため)、印加電圧Vaに生じるリップルの周波数を、従来の絶縁抵抗測定装置と比較して十分に高くすることができる。このため、この絶縁抵抗測定装置1によれば、この印加電圧Vaに生じるリップルを低減させるために、電圧生成部2の整流平滑回路23内に設けられるフィルタ回路(ローパスフィルタ回路)のカットオフ周波数を従来の絶縁抵抗測定装置と比較して十分に高めることができることができる結果、フィルタ回路を構成するインダクタのインダクタンス値やキャパシタのキャパシタンス値を十分に小さくでき、これにより、フィルタ回路、ひいては整流平滑回路23を十分に小型化することができる。
また、この絶縁抵抗測定装置1では、処理部5は、電圧生成部2に対して印加電圧Vaの電圧生成動作を開始させてから印加電圧Vaが目標電圧範囲内に移行する(選択電圧値V1に達する)までの間は、放電部7に対して放電動作を停止させ、印加電圧Vaが選択電圧値V1に一旦達してから電圧生成部2に対して印加電圧Vaの電圧生成動作を停止させるまでの間は、放電部7を第2放電状態に移行させる。
したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、上記のようにして、フィルタ回路、ひいては整流平滑回路23の小型化を図りつつ、さらに、印加電圧Vaをより短時間に選択電圧値V1まで上昇させる(目標電圧範囲内に移行させる)ことができ、これにより、絶縁抵抗値Rの測定完了までに要する時間を大幅に短縮することができる。
なお、上記の例では、処理部5は、電圧生成部2に対して印加電圧Vaの電圧生成動作を実行させる制御処理を開始してから印加電圧Vaが目標電圧範囲内に移行する(選択電圧値V1に達する)までの間は、放電部7に対して放電動作を停止させているが、この構成に代えて、処理部5が、電圧生成部2に対して印加電圧Vaの電圧生成動作を開始させた当初から、第1制御信号Sc1を放電部7に出力して放電部7を第2放電状態に移行させる(電流値Idi2で放電電流Idiを基準電位Gに流出させる)構成を採用することもできる。この構成によれば、印加電圧Vaが目標電圧範囲内に移行する(選択電圧値V1に達する)までに要する時間が若干長くなるものの、放電部7からスイッチ素子29を省略すること(スイッチ素子31の電圧生成部2側の端子(本例では電界効果型トランジスタのドレイン端子)を電圧生成部2の出力端子2aに直接接続すること)ができるため、放電部7の構成と共に、放電部7に対する制御を簡略化することができる。