以下、絶縁抵抗測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
絶縁抵抗測定装置としての図1に示す絶縁抵抗測定装置1は、一例として、電圧生成部2、電流測定部3、操作部4、処理部5および出力部6を備えて、測定対象11の絶縁抵抗値Rを測定する。
電圧生成部2は、スイッチング電源として構成されて、出力開始信号Sonを入力しているときに、入力された周波数データDfで示される周波数でスイッチング動作することにより、予め規定された複数の電圧値(本例では一例として、DC25V、DC100V、DC500V、DC1000V)のうちから選択された1つの電圧値(以下、選択電圧値ともいう)V1で測定対象11に印加する印加電圧(直流電圧)Vaを生成する。また、電圧生成部2は、測定対象11に実際に印加されている印加電圧Vaの電圧値をモニタして、その電圧値を示す電圧データDvを出力する。
具体的には、電圧生成部2は、一例として図2に示すように、昇圧トランス21、スイッチ素子としての一対の半導体スイッチ素子(バイポーラ型トランジスタや電界効果型トランジスタなど)22a,22b、整流平滑回路23、分圧回路24、基準電圧生成回路25、コンパレータ26、A/D変換器27および制御回路28を備えている。
本例では、昇圧トランス21は、一例として、センタータップを備えた一次巻線、および二次巻線を備え、電圧生成部2の一次側の第1電源電圧Vcc1(入力電圧:例えば、DC12Vなど)がセンタータップに印加される。半導体スイッチ素子22a,22bは、昇圧トランス21の一次巻線の各端部と電圧生成部2の基準電位Gとの間にそれぞれ配置されている。整流平滑回路23は、二次巻線に接続されて、この二次巻線間に誘起する昇圧された交流電圧を入力すると共に整流平滑(整流については全波整流または半波整流)することにより、基準電位Gを基準とする印加電圧Vaを生成する。この構成により、本例の電圧生成部2は、一例として、2石式プッシュプル形のスイッチング電源として構成されている。
分圧回路24は、印加電圧Vaを所定の比率で分圧して電圧Vadとして出力する。基準電圧生成回路25は、可変電源回路(例えば、D/A変換器)で構成されて、処理部5から出力される基準電圧データDrefに対応した電圧値の基準電圧Vrefを基準電位Gを基準として生成する。この場合、基準電圧Vrefの電圧値は、印加電圧Vaの電圧値V1として選択可能な複数の電圧値(本例では、DC25V、DC100V、DC500V、DC1000V)毎に、その電圧値で印加電圧Vaが電圧生成部2から出力されているときに、分圧回路24から出力される電圧Vadと一致するように規定されている。コンパレータ26は、電圧Vadと基準電圧Vrefとを比較して、本例では一例として、電圧Vadが基準電圧Vref以上のときにHレベルとなり、電圧Vadが基準電圧Vref未満のときにLレベルとなるフィードバック信号Sfbを出力する。
A/D変換器27は、電圧生成部2の一次側の第2電源電圧Vcc2の供給を受けて作動して、電圧Vadを入力すると共に所定のサンプリング周波数でサンプリングすることにより、電圧Vadの電圧値(つまり、印加電圧Vaの電圧値)を示す電圧データDvを生成して、処理部5に出力する。
制御回路28は、第2電源電圧Vcc2の供給を受けて作動して、コンパレータ26から出力される上記のフィードバック信号Sfbと、処理部5から出力される周波数データDfおよび出力開始信号Sonとに基づいて、各半導体スイッチ素子22a,22bを駆動する駆動パルスSd1,Sd2を出力する。
本例では制御回路28は、一例として図3に示すように、パルス生成回路31、内部クロック生成回路32、1つのインバータ回路33、4つのフリップフロップ回路(本例では一例として、D形フリップフロップであるが、JK形フリップフロップや、RS形フリップフロップでもよい)34,35,36,37、および4つのAND回路38,39,40,41を備えている。
パルス生成回路31は、例えば、ダイレクトデジタルシンセサイザなどで構成されて、周波数データDfで示される周波数で、かつデューティ比が0.5のパルス信号Spを生成して出力する。本例では一例として、印加電圧Vaの電圧値V1として選択可能な4種類の各電圧(DC25V、DC100V、DC500V、DC1000V)に対応して、電圧値V1がDC25Vのときには500kHz、DC100Vのときには400kHz、DC500Vのときには300kHz、DC1000Vのときには200kHzというように、印加電圧Vaの電圧値V1が高くなるに従ってパルス信号Spの周波数(半導体スイッチ素子22a,22bのスイッチング周波数)が低くなるような、言い換えれば、選択電圧値V1として選択した電圧値の周波数が、この選択した電圧値よりも1段低い電圧値のときの周波数よりも低くなるような周波数データDfが、処理部5からパルス生成回路31に出力される。
このパルス信号Spは、駆動パルスSd1,Sd2の元になる信号であるため、印加電圧Vaに発生するリップルの低減という観点からは、DC25V以外の電圧値(DC100V、DC500V、DC1000V)についても、DC25Vと同様にして500kHzにするのが好ましい。しかしながら、上記したように、同じ周波数とした場合において発生する課題(印加電圧Vaの電圧値V1が高くなるほど、印加電圧Vaの立ち上がり時間が長くなるという課題)の改善のため、本例では、DC25Vの500kHzを基準として、印加電圧Vaの電圧値V1が高くなるに従って周波数が上記のように次第に低くなるように規定されている。
内部クロック生成回路32は、パルス信号Spの周波数よりも十分に速い一定周波数の内部クロックSckを生成して出力する。本例では、後述するように、内部クロックSckの1周期が駆動パルスSd1,Sd2間のデッドタイムの長さになる。このため、内部クロックSckの周波数は、これを考慮して予め設定されている。本例では一例として、0.25μsのデッドタイムを確保するために、内部クロックSckの周波数は4MHzに規定されている。
インバータ回路33は、フィードバック信号Sfbを入力すると共に極性を反転して反転フィードバック信号Sfb1として出力する。なお、コンパレータ26が、この反転フィードバック信号Sfb1と同極性でフィードバック信号Sfbを出力する構成のときには、インバータ回路33を省略することができる。
各フリップフロップ回路34,35は、プリセット端子およびクリア端子が共に第2電源電圧Vcc2にプルアップされている。また、各フリップフロップ回路36,37は、プリセット端子が第2電源電圧Vcc2にプルアップされていると共に、クリア端子に出力開始信号Sonが入力されている。また、各フリップフロップ回路34,35,36,37のクロック端子には、内部クロックSckが入力されている。
この構成により、各フリップフロップ回路34,35は、それぞれの入力端子Dに入力される信号を内部クロックSckに同期させて出力する。具体的には、フリップフロップ回路34は、入力されるパルス信号Spを内部クロックSckに同期させて、出力端子Qから第1パルス信号Sp1として、また反転出力端子QBから第1パルス信号Sp1に対して極性の反転した反転第1パルス信号Sp1Bとして出力する。また、フリップフロップ回路35は、入力される反転フィードバック信号Sfb1を内部クロックSckに同期させて、出力端子Qから出力許可信号Senとして出力する。
また、フリップフロップ回路36は、AND回路38から出力される第2パルス信号Sp2を入力して、出力開始信号SonがHレベルのときには、内部クロックSckに同期させて(本例では、内部クロックSckの1周期分だけ遅延させて)、出力端子Qから第2遅延パルス信号Sp2aとして出力する。この場合、AND回路38は、第1パルス信号Sp1と出力許可信号Senとを入力して、出力許可信号Senが有効のとき(本例では一例としてHレベルのとき)にのみ、第1パルス信号Sp1を第2パルス信号Sp2として出力する。したがって、フリップフロップ回路36は、図4(一例として、不図示のパルス信号Spが400kHzのときの図)に示すように、AND回路38から出力されるこの第2パルス信号Sp2を内部クロックSckに同期させて(内部クロックSckの1周期分だけ遅延させて)、第2遅延パルス信号Sp2aとして出力する。一方、フリップフロップ回路36は、出力開始信号SonがLレベルのときには、出力端子QからLレベルの信号を出力する。
また、フリップフロップ回路37は、AND回路39から出力される第3パルス信号Sp3を入力して、出力開始信号SonがHレベルのときには、内部クロックSckに同期させて(本例では、内部クロックSckの1周期分だけ遅延させて)、出力端子Qから第3遅延パルス信号Sp3aとして出力する。この場合、AND回路39は、反転第1パルス信号Sp1Bと出力許可信号Senとを入力して、出力許可信号Senが有効のときにのみ、反転第1パルス信号Sp1Bを第3パルス信号Sp3として出力する。したがって、第3パルス信号Sp3は、その位相が第2パルス信号Sp2の位相を基準として180°ずれた信号となる。フリップフロップ回路37は、図4に示すように、AND回路39から出力されるこの第3パルス信号Sp3を内部クロックSckに同期させて(内部クロックSckの1周期分だけ遅延させて)、第3遅延パルス信号Sp3aとして出力する。一方、フリップフロップ回路36は、出力開始信号SonがLレベルのときには、出力端子QからLレベルの信号を出力する。
AND回路40は、AND回路38から出力される第2パルス信号Sp2と、フリップフロップ回路36の出力端子Qから出力される第2遅延パルス信号Sp2aとを入力して、図4に示すように、第2パルス信号Sp2および第2遅延パルス信号Sp2aの論理積となる信号、すなわち、第2パルス信号Sp2および第2遅延パルス信号Sp2aが共にHレベルのときにのみHレベル(オン期間Ton)となり、これ以外のときにLレベルとなる第1駆動パルスSd1を出力する。この場合、第1駆動パルスSd1は、周波数がパルス信号Spと同一で、かつHレベルの期間がLレベルの期間に対して内部クロックSckの2周期分だけ短いパルス信号として出力される。
また、AND回路41は、AND回路39から出力される第3パルス信号Sp3と、フリップフロップ回路37の出力端子Qから出力される第3遅延パルス信号Sp3aとを入力して、図4に示すように、第3パルス信号Sp3および第3遅延パルス信号Sp3aの論理積となる信号、すなわち、第3パルス信号Sp3および第3遅延パルス信号Sp3aが共にHレベルのときにのみHレベル(オン期間Ton)となり、これ以外のときにLレベルとなる第2駆動パルスSd2を出力する。
この場合、第2駆動パルスSd2は、周波数がパルス信号Spと同一で、かつHレベルの期間がLレベルの期間に対して内部クロックSckの2周期分だけ短いパルス信号として出力される。また、図4に示すように、第1駆動パルスSd1と第2駆動パルスSd2とは、互いに位相が180°ずれた信号、具体的には、第1駆動パルスSd1がHレベルからLレベルに移行した時点から内部クロックSckの1周期分だけ遅れて第2駆動パルスSd2がLレベルからHレベルに移行し、かつ第2駆動パルスSd2がHレベルからLレベルに移行した時点から内部クロックSckの1周期分だけ遅れて第1駆動パルスSd1がLレベルからHレベルに移行する位相状態の信号となる。
以上の構成により、制御回路28は、出力許可信号Senの元信号となるフィードバック信号SfbがLレベルで、かつ出力開始信号SonがHレベルのときに、パルス信号Spと同じ周波数の第1駆動パルスSd1および第2駆動パルスSd2を上記のような位相状態、すなわち、相互のHレベルの期間の間に、内部クロックSckの1周期分のデッドタイム(最小限のデッドタイム)が確保された位相状態、言い換えれば、相互間に最小限のデッドタイムのみが確保された最大のデューティ比で出力する。また、制御回路28は、フィードバック信号SfbがHレベルであるか、または出力開始信号SonがLレベルのときには、第1駆動パルスSd1および第2駆動パルスSd2の出力を停止する。
なお、制御回路28の上記構成は一例であり、上記の動作を実行可能であれば、他の構成であってもよい。例えば、AND回路40,41を上記の2入力形に代えて3入力形として、各AND回路40,41に出力許可信号Senを入力する構成とすることもできる。この場合、フリップフロップ回路36には、第2パルス信号Sp2として第1パルス信号Sp1を入力し、フリップフロップ回路37には、第3パルス信号Sp3として反転第1パルス信号Sp1Bを入力する。したがって、AND回路38,39を省略することが可能となる。また、各フリップフロップ回路36,37のクリア端子に入力されている出力開始信号Sonについても、反転フィードバック信号Sfb1と同様にして、不図示のフリップフロップ回路で内部クロックSckに同期させるようにしてもよい。
電流測定部3は、電圧生成部2から測定対象11に印加電圧Vaが印加されている状態において、測定対象11に流れる電流(直流電流)Iaの電流値I1を測定する。また、電流測定部3は、測定した電流値I1を示す電流データDiを処理部5に出力する。
操作部4には、予め規定された上記の複数の電圧値(一例として、DC25V、DC100V、DC500V、DC1000V)のうちの1つを印加電圧Vaの電圧値V1として選択するための不図示の電圧選択スイッチと、測定対象11の絶縁抵抗値Rについての測定を実行させるための開始スイッチ(オン・オフスイッチ)とを少なくとも備えている。また、操作部4は、複数の電圧値のうちの電圧選択スイッチによって選択されている電圧値(選択電圧値)V1を示す選択信号Sseを処理部5に出力すると共に、開始スイッチが操作されてオン状態になっているときにのみスタート信号Sstを処理部5に出力する。
処理部5は、例えば、不図示のコンピュータを備えて構成されている。また、処理部5は、電圧生成部2に対する制御処理、絶縁抵抗値Rを測定する抵抗測定処理、および測定した絶縁抵抗値Rを出力部6に出力する出力処理を実行する。出力部6は、一例としてLCDなどの表示装置で構成されて、処理部5で測定された絶縁抵抗値Rを画面上に表示する。なお、出力部6を外部インタフェース回路や無線回路などで構成して、処理部5で測定した上記の絶縁抵抗値Rを外部装置に伝送する構成を採用することもできる。
次に、絶縁抵抗測定装置1の動作について図面を参照して説明する。なお、電圧生成部2および電流測定部3は、不図示のプローブを介して測定対象11に予め接続されているものとする。また、絶縁抵抗測定装置1の各構成要素は作動状態にあるものとする。
この状態において、操作者によって操作部4の電圧選択スイッチに対する操作が行われて、印加電圧Vaの電圧値V1が選択され、さらに開始スイッチをオン状態にする操作が行われたときには、操作部4は、上記の複数の電圧値のうちの電圧選択スイッチによって選択されている選択電圧値V1を示す選択信号Sseと、スタート信号Sstとを処理部5に出力する。
処理部5は、選択信号Sseとスタート信号Sstとを入力して制御処理を実行する。この制御処理では、処理部5は、選択信号Sseで示される選択電圧値V1に基づいて、この選択電圧値V1に予め対応づけられていた基準電圧データDrefと周波数データDfとを電圧生成部2に出力する。具体的には、処理部5は、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC25Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref1を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧に対応する500kHzを示す周波数データDfとを出力し、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC100Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref2(=Vref1×4)を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧に対応する400kHzを示す周波数データDfとを出力する。
また、処理部5は、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC500Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref3(=Vref1×20)を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧に対応する300kHzを示す周波数データDfとを出力し、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC1000Vのときには、この電圧に対応する基準電圧Vrefとしての基準電圧Vref4(=Vref1×40)を出力するための基準電圧データDrefと、この電圧に対応する200kHzを示す周波数データDfとを出力する。
また、処理部5は、基準電圧データDrefおよび周波数データDfの電圧生成部2への出力が完了した後に、出力開始信号Sonを電圧生成部2に出力することにより、電圧生成部2に対して印加電圧Vaの生成を開始させる。
この場合、電圧生成部2では、分圧回路24が、印加電圧Vaを分圧して電圧Vadを出力する。また、基準電圧生成回路25が、基準電圧データDrefに基づいて、この基準電圧データDrefで示される電圧値の基準電圧Vrefを生成して、コンパレータ26に出力する。また、コンパレータ26が、電圧Vadと基準電圧Vrefとを比較して、フィードバック信号Sfbを出力する。また、A/D変換器27が、電圧Vadを入力して、電圧データDvを出力する。また、制御回路28のパルス生成回路31が、周波数データDfに基づいて、この周波数データDfで示される周波数で、パルス信号Spの生成および出力を開始する。
ところで、処理部5から電圧生成部2への出力開始信号Sonの出力直後は、電圧生成部2から出力されている印加電圧Vaがゼロボルトに近い電圧値であるため、分圧回路24から出力される電圧Vadもゼロボルトに近い電圧値である。このため、基準電圧Vrefは電圧Vadを上回った状態となっている。したがって、コンパレータ26は、基準電圧Vrefと電圧Vadとを比較することにより、フィードバック信号SfbをLレベルで出力する。
これにより、制御回路28は、出力許可信号Senの元信号となるフィードバック信号SfbがLレベルで(つまり、出力許可信号SenがHレベルで)、かつ出力開始信号SonがHレベルであるため、パルス信号Spと同じ周波数の第1駆動パルスSd1および第2駆動パルスSd2を、相互のHレベルの期間の間に、内部クロックSckの1周期分のデッドタイム(最小限のデッドタイム)が確保された位相状態、言い換えれば、相互間に最小限のデッドタイムのみが確保された最大のデューティ比で出力する。
したがって、半導体スイッチ素子22aは第1駆動パルスSd1により、また半導体スイッチ素子22bは第2駆動パルスSd2により、相互間に内部クロックSckの1周期分(本例では一例として、0.25μs)のデッドタイムのみが確保されたデューティ比が最大の状態(オン時間が最長となる状態)で、交互にオン・オフを繰り返すスイッチング動作を実行する。
具体的には、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC25Vのときには、各駆動パルスSd1,Sd2の周波数は500kHzであり、1周期が2μsであることから、各駆動パルスSd1,Sd2のオン時間は0.75μs(=1−0.25。デューティ比は0.375)となる。このため、各半導体スイッチ素子22a,22bは、この最大のデューティ比0.375で(つまり、0.75μsという最長のオン時間)で、交互にオン・オフを繰り返すスイッチング動作を実行する。
また、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC100Vのときには、各駆動パルスSd1,Sd2の周波数は400kHzであり、1周期が2.5μsであることから、各駆動パルスSd1,Sd2のオン時間は1μs(=1.25−0.25。デューティ比は0.4)となる。このため、各半導体スイッチ素子22a,22bは、この最大のデューティ比0.4で(つまり、1μsという最長のオン時間)で、交互にオン・オフを繰り返すスイッチング動作を実行する。
また、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC500Vのときには、各駆動パルスSd1,Sd2の周波数は300kHzであり、1周期が3.3μsであることから、各駆動パルスSd1,Sd2のオン時間は1.42μs(=1.67−0.25。デューティ比は0.43)となる。このため、各半導体スイッチ素子22a,22bは、この最大のデューティ比0.43で(つまり、1.42μsという最長のオン時間)で、交互にオン・オフを繰り返すスイッチング動作を実行する。
また、選択信号Sseで示される選択電圧値V1がDC1000Vのときには、各駆動パルスSd1,Sd2の周波数は200kHzであり、1周期が5μsであることから、各駆動パルスSd1,Sd2のオン時間は2.25μs(=2.5−0.25。デューティ比は0.45)となる。このため、各半導体スイッチ素子22a,22bは、この最大のデューティ比0.45で(つまり、2.25μsという最長のオン時間)で、交互にオン・オフを繰り返すスイッチング動作を実行する。このように、各半導体スイッチ素子22a,22bは、各選択電圧値V1でのオン時間が1段低い電圧値のときのオン時間よりも長くなる状態でスイッチング動作する。
電圧生成部2では、各半導体スイッチ素子22a,22bがこのようにスイッチング動作することにより、昇圧トランス21の二次巻線には昇圧された交流電圧が発生する。整流平滑回路23は、この交流電圧を整流平滑することにより、印加電圧Vaの電圧値を上昇させる。なお、この印加電圧Vaの電圧値の上昇に伴い、測定対象11に電流Iaが流れ始めるため、電流測定部3は、この電流Iaの電流値I1を測定して、測定した電流値I1を示す電流データDiを処理部5に出力する。
電圧生成部2では、分圧回路24が、この印加電圧Vaを分圧して電圧Vadをコンパレータ26に出力する。印加電圧Vaが、上昇して選択電圧値V1に達するまでは、電圧Vadは基準電圧Vrefよりも低い状態になっている。このため、コンパレータ26はLレベルでのフィードバック信号Sfbの出力を継続することから、制御回路28は、各駆動パルスSd1,Sd2の出力を続行する。
その後、印加電圧Vaが選択電圧値V1に達したときには、分圧回路24から出力される電圧Vadも基準電圧Vrefに達する。この場合、コンパレータ26は、Hレベルでフィードバック信号Sfbを出力するため、制御回路28は各駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止する。したがって、半導体スイッチ素子22a,22bもスイッチング動作を停止する。電圧生成部2における分圧回路24から、コンパレータ26、制御回路28、半導体スイッチ素子22a,22bおよび昇圧トランス21を介して整流平滑回路23に至るフィードバックループには、フィードバック制御を実行する通常の回路と同様にして、遅延が存在している。このため、印加電圧Vaが選択電圧値V1に達した後、制御回路28が各駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止するまでに若干のタイムラグがあることから、印加電圧Vaは選択電圧値V1よりも若干高い電圧まで上昇した後に、上昇から下降に転じる。
また、下降した印加電圧Vaが選択電圧値V1に達し、さらに選択電圧値V1を下回ったときには、分圧回路24から出力される電圧Vadも基準電圧Vref以上の状態から基準電圧Vref未満の状態に移行する。この場合、コンパレータ26は、Lレベルでフィードバック信号Sfbを出力するため、制御回路28は各駆動パルスSd1,Sd2の出力を再開する。したがって、半導体スイッチ素子22a,22bもスイッチング動作を再開することから、印加電圧Vaは、上記したフィードバックループの遅延に起因して、選択電圧値V1よりも若干低い電圧まで一旦下降した後に、下降から上昇に転じる。
以降は、電圧生成部2は、以上の動作を繰り返すことにより、選択電圧値V1を中心とする一定の目標電圧範囲(各選択電圧値V1毎に予め規定された電圧範囲)内で電圧値が安定している状態に印加電圧Vaを移行させる(制御する)。
処理部5は、電圧生成部2から出力される電圧データDvに基づいて、印加電圧Vaの電圧値をリアルタイムで算出しつつ、この印加電圧Vaの電圧値が選択電圧値V1についての上記の目標電圧範囲内に移行したか否かを検出する。処理部5は、印加電圧Vaの電圧値のこの目標電圧範囲内への移行を検出したときには、抵抗測定処理を実行する。
この抵抗測定処理では、処理部5は、算出した印加電圧Vaについての最新の電圧値と、電流測定部3から出力されている電流データDiに基づいて算出した電流Iaについての最新の電流値I1とに基づいて、測定対象11の絶縁抵抗値Rを算出する。次いで、処理部5は、出力処理を実行して、算出した絶縁抵抗値Rを出力部6に出力する。本例では出力部6は、一例として表示装置で構成されているため、絶縁抵抗値Rを画面上に表示する。最後に、処理部5は、出力開始信号Sonの電圧生成部2への出力を停止する。これにより、電圧生成部2では、制御回路28が駆動パルスSd1,Sd2の出力を停止するため、印加電圧Vaがゼロボルトに下降する。
このようにして、この絶縁抵抗測定装置1では、電圧生成部2が、選択電圧値V1が高くなるに従い、各駆動パルスSd1,Sd2の周波数を下げて(つまり、各駆動パルスSd1,Sd2の1周期内でのオン時間Tonが長くなるようにして)、半導体スイッチ素子22a,22bをスイッチングする。したがって、電圧生成部2は、各駆動パルスSd1,Sd2の周波数を一定としたPWM制御によって測定対象11に印加する印加電圧Vaを生成する従来の絶縁抵抗測定装置での電圧生成部とは異なり、特に、高い選択電圧値V1で印加電圧Vaを出力するときの印加電圧Vaの立ち上がり時間(DC0Vから選択電圧値V1に到達して、目標電圧範囲内に移行するまでの時間)を大幅に短縮することが可能になっている。
実験で求めた絶縁抵抗測定装置1での印加電圧Vaの各選択電圧値V1と、各選択電圧値V1における立ち上がり時間との関係を、各選択電圧値V1でのスイッチング周波数(各駆動パルスSd1,Sd2の周波数)と共に、図5に示す。また、比較例として、実験で求めたPWM制御を採用した従来の絶縁抵抗測定装置での印加電圧Vaの各選択電圧値V1と、各選択電圧値V1における立ち上がり時間との関係を、各選択電圧値V1でのスイッチング周波数(各駆動パルスSd1,Sd2の周波数)と共に、図6に示す。
各図5,6に示す結果から明らかなように、この絶縁抵抗測定装置1によれば、従来の絶縁抵抗測定装置と比較して、すべての選択電圧値V1において印加電圧Vaの立ち上がり時間を大幅に短縮することが可能であり、特に、DC500VおよびDC1000Vの高い選択電圧値V1における印加電圧Vaの立ち上がり時間を極めて短くすることが可能になっている。したがって、絶縁抵抗測定装置1によれば、測定対象11についての絶縁抵抗値Rの測定をより短時間に完了させることが可能になっている。
このように、この絶縁抵抗測定装置1では、電圧生成部2が、印加電圧Vaの電圧値が選択電圧値V1まで上昇するまでの間(目標電圧範囲内に移行するまでの間)、各半導体スイッチ素子22a,22bのスイッチング周波数を、選択電圧値V1として選択可能な複数の電圧値のうちの現在選択されている選択電圧値V1よりも1段低い電圧値のときの周波数よりも低い周波数に設定することにより、スイッチング周期内での各半導体スイッチ素子22a,22bのオン時間を1段低い電圧値のときのオン時間よりも長くする。
したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、PWM制御によって印加電圧を生成する従来の絶縁抵抗測定装置と比較して、もともと立ち上がり時間の短い低い選択電圧値V1では各半導体スイッチ素子22a,22bのスイッチング周波数を従来の絶縁抵抗測定装置のときと同じ周波数として印加電圧Vaのリップルを同等に抑制しつつ、従来の絶縁抵抗測定装置では立ち上がり時間が次第に長くなる高電圧側の選択電圧値V1においては、各半導体スイッチ素子22a,22bのスイッチング周波数を従来の絶縁抵抗測定装置のときとは異なり、電圧値が1段高くなるに従い低くすることで、印加電圧Vaのリップルの増加を極力抑えながら、印加電圧Vaをより短時間に選択電圧値V1まで上昇させる(目標電圧範囲内に移行させる)ことができる。これにより、この絶縁抵抗測定装置1によれば、印加電圧Vaのリップルの増加を極力抑えつつ(つまり、測定精度の低下を極力抑えつつ)、絶縁抵抗値Rの測定完了までに要する時間を大幅に短縮することができる。
なお、上記の例では、電圧生成部2は、印加電圧Vaの電圧値を選択電圧値V1まで上昇させた後においても、印加電圧Vaの電圧値を選択電圧値V1まで上昇させるまでの周波数と同じ周波数で各半導体スイッチ素子22a,22bをスイッチング動作させるという構成を採用しているが、印加電圧Vaの電圧値を選択電圧値V1まで上昇させた後に、各半導体スイッチ素子22a,22bのスイッチング周波数を、最も低い選択電圧値V1での周波数以上の周波数に上昇させる構成、つまり、最も低い選択電圧値V1での周波数(上記の例では500kHz)に揃えたり、この周波数(500kHz)を超える所定の周波数(500kHzよりも高い550kHzや600kHzなどの周波数に揃えたりする構成を採用することもできる。
この構成の絶縁抵抗測定装置1によれば、印加電圧Vaをより短時間に選択電圧値V1まで上昇させる(目標電圧範囲内に移行させる)と共に、印加電圧Vaのリップルを各選択電圧値V1において同じ電圧範囲内に抑えることができる。