JP6260784B2 - スラスト滑り軸受、およびこれに用いるスプリングパッド一体型弾性シール部材 - Google Patents

スラスト滑り軸受、およびこれに用いるスプリングパッド一体型弾性シール部材 Download PDF

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Description

本発明は、上部ケースおよび下部ケースを有して相対的に摺動回転するスラスト滑り軸受に関するものであって、特に、四輪自動車の前輪におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)のスラスト滑り軸受として組み込まれて好適な主要部が合成樹脂製のスラスト滑り軸受に関するものである。
四輪自動車の前輪に用いられるストラット型サスペンションは、一般に、主軸と一体となった外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにダンパーコイルスプリングを組合せた構造をもっている。
ストラット型サスぺンションにおいては、ステアリング操作においてストラットアッセンブリがダンパーコイルスプリングとともに回る際に、ストラットアッセンブリのピストンロッドが回る形式のものと、ピストンロッドが回らない形式のものとがあるが、いずれの形式においてもストラットアッセンブリの円滑な回動を許容するべく、ストラットアッセンブリの車体への取付機構とダンパーコイルスプリングの上端部との間に、ころがり軸受に代えて、合成樹脂製のスラスト滑り軸受が使用される場合がある。
従来、スラスト滑り軸受として、四輪自動車の前輪におけるストラット型サスペンションに用いられるピストンロッドの軸方向において円環状下面を形成した合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに対して軸心の周りで回転自在に重ね合わされるとともに円環状上面を形成した合成樹脂製の下部ケースと、上部ケースの円環状下面と下部ケースの円環状上面との間に配設されて円環状の上面で上部ケースの円環状下面と摺動自在に接触する他方で円環状の下面で下部ケースの円環状上面と接触する合成樹脂製の滑り軸受片と、下部ケースと上部ケースとの間の隙間をシールするために下部ケースの外周に配設されて断面L字状の環状の芯金を覆うように固着されている環状の弾性シール部材とを備えた滑り軸受が知られている(例えば、特許文献1)。
また、下部ケースがダンパーコイルスプリングの上端部と直接接触すると下部ケースが摩耗したり破損したりする虞があるため、下部ケースとダンパーコイルスプリングの上端部との間にゴム製のスプリングパッドを配設することが求められている。
特開2012−097904号公報(特に、図2参照)
しかしながら、上述した従来の滑り軸受では、スプリングパッドと弾性シール部材とがそれぞれ別部材で構成されているため、部品点数が多くなり組立作業が煩雑となったり、更には、スプリングパッドを下部ケースに取付けた後においてスプリングパッドが脱落しないように固定するため、ひっかけ形状等を配置するなど複雑な構造にする必要があるという問題があった。
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、スプリングパッド部材と弾性シール部材の両方の部材を兼ね備えたスラスト滑り軸受において、従来と比べて部品点数を削減するとともに部品相互の組み付けを簡略化するスラスト滑り軸受を提供することである。
本請求項1に係る発明は、ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着する合成樹脂製の上部ケースと、前記ピストンロッドの軸心の回りで前記上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、前記上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片と、前記ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに前記上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止するスプリングパッド一体型弾性シール部材とを備えたスラスト滑り軸受により、前述した課題を解決するものである。
前記上部ケースが、車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部と該上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成され、前記下部ケースが、前記上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部と、該下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部と、該下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成され、前記スプリングパッド一体型弾性シール部材が、前記下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部と、該円環状シール基部から径方向外方へ突出して前記上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、前記円環状シール基部から下方に延設して前記円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、該円環状連結部から下方に延設して前記下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、該スプリングパッド部から延設して前記下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とで一体に構成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたスラスト滑り軸受の構成に加えて、前記スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状連結部の外径が、前記上部ケースの外周側円筒部の内径より大きく設けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたスラスト滑り軸受の構成に加えて、前記スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状シール基部と円環状連結部との間の内周面の一部が、前記下部ケース頭部の外周面から遊離していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載されたスラスト滑り軸受の構成に加えて、前記スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状シール基部が、前記ピストンロッドの軸方向に沿って複数配設され、前記円環状シール基部の相互間の内周面の一部が、前記下部ケース頭部の外周面から遊離していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
本請求項5に係る発明は、請求項4に記載されたスラスト滑り軸受の構成に加えて、前記ピストンロッドの軸方向に沿った上方位置に配設された円環状シール基部の第一円環状封止部が、前記上部ケースの外周側円筒部に圧接されて外周側円筒部の下端側に傾斜当接するリップ状断面を有しているとともに、前記ピストンロッドの軸方向に沿った下方位置に配設された円環状シール基部の第二円環状封止部が、前記上部ケースの外周側円筒部に圧接されて外周側円筒部で圧潰する半月状断面を有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載されたスラスト滑り軸受の構成に加えて、前記パッド支持部が、前記ピストンロッドの軸方向の厚みについての肉厚リップ部分と肉薄リップ部分とを周方向に交互に有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
本請求項7に係る発明は、ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着する際に車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部と該上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成された合成樹脂製の上部ケースと、前記上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部と該下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部と該下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成されて前記ピストンロッドの軸心の回りで前記上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、前記上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片とを備えたスラスト滑り軸受に装着して、前記ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに前記上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止するスプリングパッド一体型弾性シール部材であって、前記下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部と、該円環状シール基部から径方向外方へ突出して前記上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、前記円環状シール基部から下方に延設して前記円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、該円環状連結部から下方に延設して前記下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、該スプリングパッド部から延設して前記下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とが、一体に構成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
本発明のスラスト滑り軸受は、ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着する合成樹脂製の上部ケースと、ピストンロッドの軸心の回りで上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片と、ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止するスプリングパッド一体型弾性シール部材とを備え、上部ケースが、車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部とこの上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成され、下部ケースが、上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部とこの下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部とこの下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成されたことにより、上部ケースの外周側円筒部と下部ケースの下部ケース頭部との間の隙間からスラスト滑り軸受の内部への粉塵などの異物の侵入や上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に充填した潤滑油剤の漏出を防止することができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
本請求項1に係る発明のスラスト滑り軸受によれば、スプリングパッド一体型弾性シール部材が、下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部とこの円環状シール基部から径方向外方へ突出して前記上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、円環状シール基部から下方に延設して円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、この円環状連結部から下方に延設して前記下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、このスプリングパッド部から延設して前記下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とで一体に構成されていることにより、シール部材およびスプリングパッド部材それぞれ単体と比べて剛性が高まるため、従来必要だった金属製の補強環(芯金)を必要とせず構造を簡略化することができる。
また、円環状シール基部がスプリングパッドの脱落防止機能を兼ねるため、別途スプリングパッド専用の脱落防止構造を設ける必要がなく取付構造を簡素化することができる。
さらに、従来技術のようなシール部材およびスプリングパッド部材が一体となるため、部品点数を削減することができる。
また、従来技術のようなシール部材およびスプリングパッド部材の2つの部材をスラスト滑り軸受へ組み付けることと比べて、1つの部材を組み付けるだけでよいため、スラスト滑り軸受への組み付けを簡略化することができる。
さらに、従来必要だった金属製の補強環(芯金)を必要とせず1種類の材料のみで形成可能となるため、自動車のサスペンションに使用したときの温度、衝撃、粉塵などについての使用条件の過酷な状況下でも複数種類の材料間における分離によるスプリングパッド一体型弾性シール部材の破損を防止することができる。
本請求項2に係る発明のスラスト滑り軸受によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状連結部の外径が、上部ケースの外周側円筒部の内径より大きく設けられていることにより、自動車のサスペンションに使用して下方から上方へ向かう泥水などの異物が生じた際に下方から上方の上部ケースと下部ケースとの隙間へ向かう異物が円環状連結部でブロックされるため、スラスト滑り軸受の内部への異物の侵入をより確実に防止することができる。
本請求項3に係る発明のスラスト滑り軸受によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状シール基部と円環状連結部との間の内周面の一部が、下部ケース頭部の外周面から遊離していることにより、下部ケースに対する円環状シール基部の装着状態がスプリングパッド部および円環状連結部に拘束されずに独立して安定するため、円環状封止部の圧接状態が安定して上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で確実に封止することができる。
本請求項4に係る発明のスラスト滑り軸受によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状シール基部がピストンロッドの軸方向に沿って複数配設され、円環状シール基部の相互間の内周面の一部が下部ケース頭部の外周面から遊離していることにより、下部ケースに対する円環状シール基部の装着状態が相互に拘束されずに独立して安定するため、それぞれの円環状封止部の圧接状態が安定して上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側でより一段と確実に封止することができる。
本請求項5に係る発明のスラスト滑り軸受によれば、請求項4に係る発明が奏する効果に加えて、ピストンロッドの軸方向に沿った上方位置に配設された円環状シール基部の第一円環状封止部が、上部ケースの外周側円筒部に圧接されて外周側円筒部の下端側に傾斜当接するリップ状断面を有しているとともに、ピストンロッドの軸方向に沿った下方位置に配設された円環状シール基部の第二円環状封止部が、上部ケースの外周側円筒部に圧接されて外周側円筒部で圧潰する半月状断面を有していることにより、リップ形状の円環状封止部をピストンロッドの軸方向に2つ設けた場合と比べて、半月状断面を有する下方位置に配設された円環状シール基部の円環状封止部が、強い圧接力で封止するとともに耐久性を高めるため、過酷な状況下でも確実に封止することができる。
本請求項6に係る発明のスラスト滑り軸受によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、パッド支持部が、前記ピストンロッドの軸方向の厚みについての肉厚リップ部分と肉薄リップ部分とを周方向に交互に有していることにより、肉薄リップ部分が円周方向に伸び易いため、下部ケースの下部ケース頭部に対するパッド支持部のフィット性を高めることができる。
また、スプリングパッド一体型弾性シール部材をスラスト滑り軸受に組み付ける際に、肉薄リップ部分が円周方向に伸び易いため、複数の縦リブによりパッド支持部を下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌させながらスプリングパッド一体型弾性シール部材をスラスト滑り軸受に容易に組み付けることができる。
そして、本発明のスプリングパッド一体型弾性シール部材は、ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着する際に車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部とこの上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成された合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部とこの下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部とこの下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成されてピストンロッドの軸心の回りで上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片とを備えたスラスト滑り軸受に装着して、ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止することにより、上部ケースの外周側円筒部と下部ケースの下部ケース頭部との間の隙間からスラスト滑り軸受の内部への粉塵などの異物の侵入や上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に充填した潤滑油剤の漏出を防止するばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
本請求項7に係る発明のスプリングパッド一体型弾性シール部材によれば、下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部と、この円環状シール基部から径方向外方へ突出して上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、円環状シール基部から下方に延設して円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、この円環状連結部から下方に延設して下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、このスプリングパッド部から延設して下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とが、一体に構成されていることにより、従来のようなシール部材およびスプリングパッド部材それぞれ単体と比べて剛性が高まるため、従来必要だった金属製の補強環(芯金)を必要とせず構造を簡略化することができる。
また、円環状シール基部が、従来のようなスプリングパッドの脱落防止構造を兼ねるため、別途スプリングパッド専用の脱落防止構造を設ける必要がなく構造を簡素化することができる。
さらに、従来技術のようなシール部材およびスプリングパッド部材が一体となるため、部品点数を削減することができる。
また、従来のようなシール部材およびスプリングパッド部材の2つの部材をスラスト滑り軸受へ組み付けることと比べて、1つの部材を組み付けるだけでよいため、スラスト滑り軸受への組み付けを簡略化することができる。
さらに、従来必要だった金属製の補強環(芯金)を必要とせず1種類の材料のみで形成可能となるため、自動車のサスペンションに使用したときの温度、衝撃、粉塵などについての使用条件の過酷な状況下でも複数種類の材料間における分離によるスプリングパッド一体型弾性シール部材の破損を防止することができる。
本発明の第1実施例であるスラスト滑り軸受の一部断面斜視図。 (A)は図1に示す符号2Aから視た平面図、(B)は図2(A)に示す符号2Bから視た側面図。 (A)は図2(A)に示す符号3A−3Aで視た断面図、(B)は本発明のスラスト滑り軸受をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図。 本発明の第1実施例であるスラスト滑り軸受の分解斜視図。 図3(A)に示す符号5の箇所の拡大断面図。 図2(B)に示す符号6から視た底面図。 本発明の第2実施例であるスラスト滑り軸受の要部を示す拡大断面図。 本発明の第3実施例であるスラスト滑り軸受の要部を示す拡大断面図。
本発明は、ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部に挿着する合成樹脂製の上部ケースと、ピストンロッドの軸心の回りで上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片と、ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止するスプリングパッド一体型弾性シール部材とを備えたスラスト滑り軸受であって、上部ケースが、車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部とこの上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成され、下部ケースが、上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部とこの下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部とこの下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成され、スプリングパッド一体型弾性シール部材が、下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部と、この円環状シール基部から径方向外方へ突出して上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、円環状シール基部から下方に延設して円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、この円環状連結部から下方に延設して下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、このスプリングパッド部から延設して下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とで一体に構成されていることにより、部品点数を削減するとともに部品相互の組み付けを簡略化するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
また、本発明のスプリングパッド一体型弾性シール部材は、ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着する際に車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部とこの上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成された合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部とこの下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部とこの下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成されてピストンロッドの軸心の回りで前記上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片とを備えたスラスト滑り軸受に装着して、ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止するものであって、下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部と、この円環状シール基部から径方向外方へ突出して上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、円環状シール基部から下方に延設して円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、この円環状連結部から下方に延設して前記下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、このスプリングパッド部から延設して下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とが、一体に構成されていることにより、部品点数を削減するとともに部品相互の組み付けを簡略化するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
例えば、スプリングパッド一体型弾性シール部材の材料は、スラスト滑り軸受の隙間を封止するとともに、ダンパーコイルスプリングの上端部に着座してパッドとしてスラスト滑り軸受を保護するものであれば、天然ゴムであっても良く、NBRなどのエラストマー系樹脂であってもよい。
また、滑り軸受片は、少なくとも上部ケース基部の円環状下面と下部ケース頭部の環状上面との間に配置されてスラスト方向に配設された部材間を円滑に滑らせるものであれば、側視断面形状がL字状などに形成されて、径方向に配設された部分間をも円滑に滑らせるものであっても構わない。
以下に、本発明の第1実施例であるスラスト滑り軸受100について、図1乃至図6に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例であるスラスト滑り軸受100の一部断面斜視図であり、図2(A)は、図1に示す符号2Aから視た平面図であり、図2(B)は、図2(A)に示す符号2Bから視た側面図であり、図3(A)は、図2(A)に示す符号3A−3Aで視た断面図であり、図3(B)は、本発明のスラスト滑り軸受100をストラット型サスペンションに組み込んだ状態を示す断面図であり、図4は、本発明の第1実施例であるスラスト滑り軸受100の分解斜視図であり、図5は、図3(A)に示す符号5の箇所の拡大断面図であり、図6は、図2(B)に示す符号6から視た底面図である。
本発明の第1実施例であるスラスト滑り軸受100は、図1乃至図6に示すように、合成樹脂製の上部ケース110と、合成樹脂製の下部ケース120と、合成樹脂製の滑り軸受片130と、弾性素材で形成された内側シール部材150と、弾性素材の一例としてゴムで形成されたスプリングパッド一体型弾性シール部材140とを備えている。
このうち、上部ケース110は、ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッド(図示せず)の上方先端部を挿着するように構成されている。
本実施例では、上部ケース110は、ピストンロッドの軸方向Yにおいて円環状下面111aを形成して車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部111と、この上部ケース基部111の円環状下面111aの径方向Xの内周端111bから垂下した内周側円筒部112と、円環状下面111aの径方向Xの外周端111cから垂下した外周側円筒部113とを夫々一体的に有している。
また、下部ケース120は、ピストンロッドの軸心の回りで上部ケース110に対して回動自在に重ね合うように構成されている。
本実施例では、下部ケース120は、上部ケース110に対して軸心の回りで回転自在に上部ケース110に重ね合わされる円環状の下部ケース顎部121と、この下部ケース顎部121から上部ケース基部111の円環状下面111aに向かって突出した下部ケース頭部122と、下部ケース顎部121の円環状下面121aから垂下するとともに下部ケース頭部122の外径より小さい外径を有する下部ケース頸部123とを夫々一体的に有している。
すなわち、下部ケース120は、上部ケース110内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部122と、この下部ケース頭部122に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部121と、この下部ケース顎部121の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部123とで一体に構成されている。
下部ケース頭部122は、滑り軸受片130が載置される環状上面122aと、スプリングパッド一体型弾性シール部材140が取付けられる円筒外面122cと、円筒外面122cにおいて円周方向Rに延設された軸方向上方の嵌合溝122dと、円筒外面122cにおいて円周方向Rに延設された軸方向下方の嵌合溝122eとを有している。
さらに、滑り軸受片130は、上部ケース110と下部ケース120との間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受けるように構成されている。
本実施例では、滑り軸受片130は、上部ケース基部111の円環状下面111aと下部ケース頭部122の環状上面122aとの間の環状空間および内周側円筒部112の外周面112aと下部ケース頭部122の円筒内面122fとの間の環状空間に配設されている。
そして、滑り軸受片130は、円環状のスラスト滑り軸受片部131と、円筒状のラジアル滑り軸受片部132と、径方向外方へ突出した径方向突板片部133とを有している。
スラスト滑り軸受片部131は、上部ケース基部111の円環状下面111aと摺動自在に接触する上面131aと、下部ケース120の下部ケース頭部122の環状上面122aと接触する下面131bとを有している。
他方、ラジアル滑り軸受片部132は、上部ケース110の内周側円筒部112の外周面112aと摺動自在に接触する内周面132aと、下部ケース120の下部ケース頭部122の円筒内面122fと接触する外周面132bとを有している。
ここで、径方向突板片部133は、下部ケース120の下部ケース頭部122において軸方向上方へ突出した複数の突起122bの間の凹所122gと係合することにより滑り軸受片130が下ケース130に固定されるため、滑り軸受片130は、下部ケース120に対して摺動せず、上部ケース110に対してのみ摺動する。
なお、上面131aには、径方向溝131cおよび円環状溝131dが形成され、内周面132aには、軸方向溝132cが形成されて、それぞれがグリース等の潤滑油剤の溜まり部となっている。
内側シール部材150は、内部に金属製の補強環151aを有してゴムで形成された内側円環状シール基部151と、ゴムで形成されて内側円環状シール基部151から径方向内方へ延設された内側円環状封止部152とを有している。
内側円環状シール基部151は、下部ケース120の下部ケース頭部122の円筒内面122fに配設されている。
また、内側円環状封止部152は、下端側に傾斜当接するリップ状断面、すなわち、フランジ型である所謂、リップ状に形成されて上部ケース110の内周側円筒部112の外周面112aと接触する。
そして、内側シール部材150が、上部ケース110の内周側円筒部112の外周面112aと、下部ケース120の下部ケース頭部122の円筒内面122fとの間の隙間を封止するように構成されている。
スプリングパッド一体型弾性シール部材140は、ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに上部ケース110と下部ケース120との環状空間をケース外周側で封止するように構成されている。
本実施例では、スプリングパッド一体型弾性シール部材140は、円環状シール基部141としての軸方向上方の円環状シール基部141Aおよび軸方向下方の円環状シール基部141Bと、円環状シール基部141から径方向外方へ突出して上部ケース110の外周側円筒部113に圧接する円環状封止部142としての軸方向上方の円環状封止部142Aと、円環状のスプリングパッド部143と、円環状のパッド支持部144と、円環状シール基部141から下方に延設して円環状シール基部141の内径より大きい内径で下部ケース顎部121を囲繞する円環状連結部145とを備えている。
このうち、軸方向上方の円環状シール基部141Aは、下部ケース120の下部ケース頭部122に圧入外嵌するように構成されている。
本実施例では、軸方向上方の円環状シール基部141Aは、下部ケース120の下部ケース頭部122の円筒外面122cに形成された軸方向上方の嵌合溝122dに配設され、軸方向上方の嵌合溝122dの外径より小さい内径を有してこの軸方向上方の嵌合溝122dに圧接している。
同様に、軸方向下方の円環状シール基部141Bは、下部ケース120の下部ケース頭部122の円筒外面122cに形成された軸方向下方の嵌合溝122eに配設され、軸方向下方の嵌合溝122eの外径より小さい内径を有してこの軸方向下方の嵌合溝122eに圧接している。
また、軸方向上方の円環状封止部142Aは、円環状シール基部141から径方向外方へ突出して上部ケース110の外周側円筒部113に圧接するように構成されている。
本実施例では、軸方向上方の円環状封止部142Aは、軸方向上方の円環状シール基部141Aから径方向外方へリップ状に延設されて上部ケース110の外周側円筒部113の内周面113aと接触する。
そして、軸方向上方の円環状シール基部141Aおよび軸方向上方の円環状封止部142Aが、上部ケース110の外周側円筒部113の内周面113aと下部ケース120の下部ケース頭部122の円筒外面122cとの間をシールするように構成されている。
さらに、スプリングパッド部143は、円環状連結部145から下方に延設して下部ケース顎部121の顎底面である円環状下面121aに添装するように構成されている。
本実施例では、スプリングパッド部143は、下部ケース顎部121の円環状下面121aに配設されてダンパーコイルスプリングSSの上端部と当接自在に形成されている。
また、パッド支持部144は、スプリングパッド部143から延設して下部ケース120の下部ケース頸部123に圧接被嵌するように構成されている。
本実施例では、パッド支持部144は、スプリングパッド部143から径方向内方へ延設されて下部ケース120の下部ケース頸部123と当接自在に形成されている。
さらに、円環状連結部145は、円環状シール基部141とスプリングパッド部143との中間に配設されて軸方向上方の円環状シール基部141Aおよび軸方向下方の円環状シール基部141Bの内径より大きい内径を有している。
ここで、本実施例のスラスト滑り軸受100は、図3(B)に示すように、四輪自動車におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)のスラスト滑り軸受100として組み込まれるものである。
ストラット型サスペンション(マクファーソン式)において、スラスト滑り軸受100は、車体側の取付部材VAの車両側座面VA1に上部ケース110の円環状上面である台座111dを当接させ、他方、ダンパーコイルスプリングSSの上端部にスプリングパッド部143を当接させて、スラスト滑り軸受100を車体側の取付部材VAの車体側座面とダンパーコイルスプリングSSとの間に配設して、組み込まれる。
ストラット型サスペンションでは、車体側の取付部材VAに対するダンパーコイルスプリングSSの円周方向Rの相対回転は、スラスト滑り軸受100の上部ケース基部111の円環状下面111aに対するスラスト滑り軸受片部131の上面131aおよび内周側円筒部112の外周面112aに対するラジアル滑り軸受片部132の内周面132aの夫々の円周方向Rの相対的な摺動で許容される。
本実施例では、スプリングパッド部143が、円環状連結部145および軸方向下方の円環状シール基部141Bを介して軸方向上方の円環状シール基部141Aと一体に連結されている。
これにより、従来技術のシール部材およびスプリングパッド部材それぞれ別部品として単体として取り付けていた場合と比べて剛性が向上する。
また、円環状シール基部141がスプリングパッド部143の脱落防止機能を兼ねているため、別途脱落防止機能を付与する必要がなくなる。
さらに、従来技術のシール部材およびスプリングパッド部材が一体となる。
すなわち、部品点数を削減して、製造コストを削減することができる。
また、従来技術のシール部材およびスプリングパッド部材の2つの部材をスラスト滑り軸受100へ組み付けることと比べて、本発明では1つの部材を組み付けるだけでよいため、作業性が向上する。
さらに、スプリングパッド一体型弾性シール部材140は、従来必要だった金属製の補強環(芯金)を必要とせず1種類の材料のみで形成可能となる。
すなわち、自動車のサスペンションに使用したときの温度、衝撃、粉塵などについての使用条件の過酷な状況下でも複数種類の材料間における分離によるスプリングパッド一体型弾性シール部材140の破損を防止する。
さらに、本実施例では、円環状連結部145が、径方向外方に突出しているとともに円周方向Rに延設された環状突起145aを有している。
そして、環状突起145aの外径が、上部ケース110の外周側円筒部113の下端部113bの内径より大きく設けられている。
これにより、自動車の走行中、サスペンションで下方から上方へ向かう泥水などの異物が生じた際に上部ケース110と下部ケース120との隙間からスラスト滑り軸受100内に進入しようとする泥水等の異物が環状突起145aによりブロックされる。
また、本実施例では、円環状連結部145と軸方向上方の円環状シール基部141Aとの間の内周面の一部である軸方向上方の離間箇所146および軸方向下方の離間箇所147が、下部ケース120の下部ケース頭部122の外周面である円筒外面122cから遊離して環状隙間CL1、CL2を形成している。
これにより、下部ケース120に対する軸方向上方の円環状シール基部141Aの姿勢がスプリングパッドおよび中間部の影響を殆ど受けなくなって安定し、軸方向上方の円環状封止部142Aの姿勢も安定する。
さらに、本実施例では、図4および図6に示すように、パッド支持部144が、軸方向Yの厚みについての肉厚リップ部分144aと肉薄リップ部分144bとを円周方向Rに交互に有している。
これにより、肉薄リップ部分144bが円周方向Rに伸びやすく、下部ケース120の下部ケース頸部123に対するパッド支持部144のフィット性が高まる。
また、スプリングパッド一体型弾性シール部材140をスラスト滑り軸受100に組み付ける際に肉薄リップ部分144bが円周方向Rに伸びやすい。
すなわち、容易にスプリングパッド一体型弾性シール部材140をスラスト滑り軸受100に組み付けることができる。
なお、本実施例では、円環状シール基部141として軸方向上方の円環状シール基部141Aおよび軸方向下方の円環状シール基部141Bを設けたが、軸方向上方の円環状封止部142Aが軸方向上方の円環状シール基部141Aから径方向外方に延設された所謂、1重シール構造であるので、軸方向下方の円環状シール基部141Bを省略してよい。
また、本実施例のスラスト滑り軸受100は、ストラット型サスペンションに用いられるものとして説明したが、他の用途に用いられてもよいのは勿論である。
このようにして得られた本発明の第1実施例であるスラスト滑り軸受100では、スプリングパッド一体型弾性シール部材140が、下部ケース120の下部ケース頭部122に圧入外嵌する円環状シール基部141である軸方向上方の円環状シール基部141Aと、この軸方向上方の円環状シール基部141Aから径方向外方へ突出して上部ケース110の外周側円筒部113に圧接する円環状封止部142である軸方向上方の円環状封止部142Aと、円環状シール基部141から下方に延設して円環状シール基部141の内径より大きい内径で下部ケース顎部121を囲繞する円環状連結部145と、この円環状連結部145から下方に延設して下部ケース顎部121の顎底面である円環状下面121aに添装する円環状のスプリングパッド部143と、このスプリングパッド部143から延設して下部ケース120の下部ケース頸部123に圧接被嵌する円環状のパッド支持部144とで一体に構成されていることにより、スプリングパッド一体型弾性シール部材140については従来必要だった金属製の補強環(芯金)を必要とせず構造を簡略化することができ、別途スプリングパッド専用の脱落防止構造を設ける必要がなく構造をシンプルにすることができ、部品点数を削減することができ、スラスト滑り軸受100への組み付けを簡略化することができ、自動車のサスペンションに使用したときの温度、衝撃、粉塵などについての使用条件の過酷な状況下でも複数種類の材料間における分離によるスプリングパッド一体型弾性シール部材140の破損を防止することができる。
また、円環状連結部145の環状突起145aの外径が、上部ケース110の外周側円筒部113の下端部113bの内径より大きく設けられていることにより、スラスト滑り軸受100の内部への異物の侵入をより確実に防止することができる。
さらに、円環状連結部145と軸方向上方の円環状シール基部141Aとの間の内周面の一部である軸方向上方の離間箇所146および軸方向下方の離間箇所147が、下部ケース120の下部ケース頭部122の外周面である円筒外面122cから遊離して環状隙間CL1、CL2を形成していることにより、軸方向上方の円環状封止部142Aが安定して上部ケース110と下部ケース120との間の隙間を封止することができる。
また、パッド支持部144が、ピストンロッドの軸方向Yの厚みについての肉厚リップ部分144aと肉薄リップ部分144bとを円周方向Rに交互に有していることにより、下部ケース120の下部ケース頸部123に対するパッド支持部144のフィット性を高めることができるとともに、容易にスプリングパッド一体型弾性シール部材140をスラスト滑り軸受100に組み付けることができる。
また、本発明の第1実施例であるスプリングパッド一体型弾性シール部材140が、下部ケース120の下部ケース頭部122に圧入外嵌する円環状シール基部141である軸方向上方の円環状シール基部141Aと、この軸方向上方の円環状シール基部141Aから径方向外方へ突出して上部ケース110の外周側円筒部113に圧接する円環状封止部142である軸方向上方の円環状封止部142Aと、円環状シール基部141から下方に延設して円環状シール基部141の内径より大きい内径で下部ケース顎部121を囲繞する円環状連結部145と、この円環状連結部145から下方に延設して下部ケース顎部121の顎底面である円環状下面121aに添装する円環状のスプリングパッド部143と、このスプリングパッド部143から延設して下部ケース120の下部ケース頸部123に圧接被嵌する円環状のパッド支持部144とで一体に構成されていることにより、従来必要だった金属製の補強環(芯金)を必要とせず構造を簡略化することができ、別途スプリングパッド専用の脱落防止構造を設ける必要がなく構造をシンプルにすることができ、部品点数を削減することができ、スラスト滑り軸受100への組み付けを簡略化することができ、自動車のサスペンションに使用したときの温度、衝撃、粉塵などについての使用条件の過酷な状況下でも複数種類の材料間における分離によるスプリングパッド一体型弾性シール部材140の破損を防止することができるなど、その効果は甚大である。
続いて、本発明の第2実施例であるスラスト滑り軸受200について、図7に基づいて説明する。
ここで、図7は、本発明の第2実施例であるスラスト滑り軸受200の要部を示す拡大断面図である。
第2実施例のスラスト滑り軸受200は、第1実施例のスラスト滑り軸受100のスプリングパッド一体型弾性シール部材140に軸方向下方の円環状封止部242Bを追加したものであり、多くの要素について第1実施例のスラスト滑り軸受100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
本発明の第2実施例であるスラスト滑り軸受200では、図7に示すように、軸方向Yに2つの円環状シール基部241として軸方向上方の円環状シール基部241Aおよび軸方向下方の円環状シール基部241Bが設けられている。
同様に、軸方向Yに2つの円環状封止部242である第一円環状封止部としての軸方向上方の円環状封止部242Aおよび第二円環状封止部としての軸方向下方の円環状封止部242Bが設けられ、所謂、2重シール構造となっている。
さらに、軸方向上方の円環状封止部242Aおよび軸方向下方の円環状封止部242Bが、径方向外方へ延設されて下端側に傾斜当接するリップ状断面、すなわち、リップ構造を有している。
また、軸方向上方の円環状シール基部241Aと軸方向下方の円環状シール基部241Bとの間の内周面の一部である軸方向上方の離間箇所246が、下部ケース220の下部ケース頭部222の外周面である円筒外面222cから遊離して環状隙間CL3を形成している。
これにより、下部ケース220に対する軸方向上方の円環状シール基部241Aおよび軸方向下方の円環状シール基部241Bの装着状態が互いの軸方向上方の円環状シール基部241Aおよび軸方向下方の円環状シール基部241Bそれぞれの影響を殆ど受けなくなって安定して、軸方向上方の円環状封止部242Aおよび軸方向下方の円環状封止部242Bそれぞれの装着状態も安定する。
このようにして得られた本発明の第2実施例であるスラスト滑り軸受200は、円環状シール基部241が軸方向上方の円環状シール基部241Aおよび軸方向下方の円環状シール基部241Bとして軸方向Yに複数設けられ、円環状封止部242が軸方向上方の円環状封止部242Aおよび軸方向下方の円環状封止部242Bとして軸方向Yに複数設けられ、軸方向上方の円環状封止部242Aおよび軸方向下方の円環状封止部242Bが、径方向外方へ延設されたリップ構造を有しているとともに、軸方向上方の円環状シール基部241Aおよび軸方向下方の円環状シール基部241Bとの間の内周面の一部である軸方向上方の離間箇所246が、下部ケース220の下部ケース頭部222の外周面である円筒外面222cから遊離していることにより、軸方向上方の円環状封止部242Aおよび軸方向下方の円環状封止部242Bが上部ケース210と下部ケース220との間の隙間をそれぞれ安定して封止してシール性を向上させることができるなど、その効果は甚大である。
続いて、本発明の第3実施例であるスラスト滑り軸受300について、図8に基づいて説明する。
ここで、図8は、本発明の第3実施例であるスラスト滑り軸受300の要部を示す拡大断面図である。
第3実施例のスラスト滑り軸受300は、第2実施例のスプリングパッド一体型弾性シール部材240の第二円環状封止部としての軸方向下方の円環状封止部242Bの形状を変更したものであり、多くの要素について第2実施例のスラスト滑り軸受200と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
本発明の第3実施例であるスラスト滑り軸受300では、図8に示すように、軸方向Yに2つの円環状シール基部341として軸方向上方の円環状シール基部341Aおよび軸方向下方の円環状シール基部341Bが設けられている。
同様に、軸方向Yに2つの円環状封止部342である第一円環状封止部としての軸方向上方の円環状封止部342Aおよび第二円環状封止部としての軸方向下方の円環状封止部342Bが設けられている。
この2つの軸方向上方の円環状シール基部341Aと軸方向下方の円環状シール基部341Bとの間の内周面の一部である軸方向上方の離間箇所346が、下部ケース320の下部ケース頭部322の円筒外面322cから離間して環状隙間CL4を形成している。
また、軸方向上方の円環状封止部342Aが、軸方向上方の円環状シール基部341Aから径方向外方へ延設され、上部ケース110の外周側円筒部113に圧接されて外周側円筒部113の下端側に傾斜当接するリップ状断面を有している。
他方、軸方向下方の円環状封止部342Bが、上部ケース110の外周側円筒部113に圧接されて外周側円筒部113で圧潰する半月状断面を有している。
すなわち、軸方向下方の円環状シール基部341Bと一体にOリング状に形成されて上部ケース310の外周側円筒部313の内周面313aと接触して封止するように構成されている。
これにより、下部ケース320に対する半月状断面の軸方向下方の円環状シール基部341Bおよび軸方向下方の円環状封止部342Bの装着状態が変化した場合であっても下部ケース320に対する軸方向上方の円環状シール基部341Aの装着状態が隣接する軸方向下方の円環状シール基部341Bの影響を殆ど受けなくなって安定してリップ構造である軸方向上方の円環状封止部342Aの装着状態も安定する。
また、リップ構造である軸方向上方の円環状封止部342Aを軸方向Yに2つ設けた上記第2実施例と比べて、強い力で封止されるとともに耐久性が高まる。
このようにして得られた本発明の第3実施例であるスラスト滑り軸受300は、円環状シール基部341が軸方向上方の円環状シール基部341Aおよび軸方向下方の円環状シール基部341Bとして軸方向Yに複数設けられ、円環状封止部342が軸方向上方の円環状封止部342Aおよび軸方向下方の円環状封止部342Bとして軸方向Yに複数設けられているとともに、この2つの軸方向上方の円環状シール基部341Aと軸方向下方の円環状シール基部341Bとの間の内周面の一部である軸方向上方の離間箇所346が、下部ケース320の下部ケース頭部322の外周面である円筒外面322cから遊離して環状隙間CL4を形成し、軸方向上方の円環状封止部342Aが、上部ケース110の外周側円筒部113に圧接されて外周側円筒部113の下端側に傾斜当接するリップ状断面を有しているとともに、軸方向下方の円環状封止部342Bが、上部ケース110の外周側円筒部113に圧接されて外周側円筒部113で圧潰する半月状断面に形成されていることにより、リップ構造である軸方向上方の円環状封止部342Aが上部ケース310と下部ケース320との間の隙間を安定して封止してシール性を向上させることができ、過酷な状況下でも確実に封止することができるなど、その効果は甚大である。
100、 200、 300 ・・・ スラスト滑り軸受
110、 210、 310 ・・・ 上部ケース
111、 211、 311 ・・・ 上部ケース基部
111a、211a、311a・・・ 円環状下面
111b ・・・ 内周端
111c ・・・ 外周端
111d ・・・ 台座
112、 212、 312 ・・・ 内周側円筒部
112a ・・・ 外周面
113、 213、 313 ・・・ 外周側円筒部
113a、213a、313a・・・ 内周面
120、 220、 320 ・・・ 下部ケース
121 ・・・ 下部ケース顎部
121a ・・・ 円環状下面
122、 222、 322 ・・・ 下部ケース頭部
122a ・・・ 環状上面
122b ・・・ 突起
122c、222c、322c・・・ 円筒外面
122d ・・・ 軸方向上方の嵌合溝
122e ・・・ 軸方向下方の嵌合溝
122f ・・・ 円筒内面
123 ・・・ 下部ケース頸部
130、 230、 330 ・・・ 滑り軸受片
131 ・・・ (円環状の)スラスト滑り軸受片部
131a ・・・ (円環状の)上面
131b ・・・ (円環状の)下面
131c ・・・ 径方向溝
131d ・・・ 円環状溝
132 ・・・ (円筒状の)ラジアル滑り軸受片部
132a ・・・ (円筒状の)内周面
132b ・・・ (円筒状の)外周面
132c ・・・ 軸方向溝
133 ・・・ 径方向突板片部
140、 240、 340 ・・・ スプリングパッド一体型弾性シール部材
141、 241、 341 ・・・ 円環状シール基部
141A、241A、341A・・・ 軸方向上方の円環状シール基部
141B、241B、341B・・・ 軸方向下方の円環状シール基部
142、 242、 342 ・・・ 円環状封止部
142A、242A、342A・・・ 軸方向上方の円環状封止部
242B、342B・・・ 軸方向下方の円環状封止部
143、 243、 343 ・・・ スプリングパッド部
144、 244、 344 ・・・ パッド支持部
144a ・・・ 肉厚リップ部分
144b ・・・ 肉薄リップ部分
145、 245、 345 ・・・ 円環状連結部
145a、245a、345a・・・ 環状突起
146、 246、 346 ・・・ 軸方向上方の離間箇所
147、 247、 347 ・・・ 軸方向下方の離間箇所
150、 250、 350 ・・・ 内側シール部材
151 ・・・ 内側円環状シール基部
151a ・・・ 補強環
152 ・・・ 内側円環状封止部
R ・・・ 円周方向
SS ・・・ ダンパーコイルスプリング
VA ・・・ 車体側の取付部材
VA1 ・・・ 車両側座面
X ・・・ 径方向
Y ・・・ 軸方向

Claims (7)

  1. ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着する合成樹脂製の上部ケースと、前記ピストンロッドの軸心の回りで前記上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、前記上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片と、前記ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに前記上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止するスプリングパッド一体型弾性シール部材とを備えたスラスト滑り軸受であって、
    前記上部ケースが、車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部と該上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成され、
    前記下部ケースが、前記上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部と、該下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部と、該下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成され、
    前記スプリングパッド一体型弾性シール部材が、前記下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部と、該円環状シール基部から径方向外方へ突出して前記上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、前記円環状シール基部から下方に延設して前記円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、該円環状連結部から下方に延設して前記下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、該スプリングパッド部から延設して前記下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とで一体に構成されていることを特徴とするスラスト滑り軸受。
  2. 前記スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状連結部の外径が、前記上部ケースの外周側円筒部の内径より大きく設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスラスト滑り軸受。
  3. 前記スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状シール基部と円環状連結部との間の内周面の一部が、前記下部ケース頭部の外周面から遊離していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスラスト滑り軸受。
  4. 前記スプリングパッド一体型弾性シール部材の円環状シール基部が、前記ピストンロッドの軸方向に沿って複数配設され、
    前記円環状シール基部の相互間の内周面の一部が、前記下部ケース頭部の外周面から遊離していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のスラスト滑り軸受。
  5. 前記ピストンロッドの軸方向に沿った上方位置に配設された円環状シール基部の第一円環状封止部が、前記上部ケースの外周側円筒部に圧接されて外周側円筒部の下端側に傾斜当接するリップ状断面を有しているとともに、
    前記ピストンロッドの軸方向に沿った下方位置に配設された円環状シール基部の第二円環状封止部が、前記上部ケースの外周側円筒部に圧接されて外周側円筒部で圧潰する半月状断面を有していることを特徴とする請求項4に記載のスラスト滑り軸受。
  6. 前記パッド支持部が、前記ピストンロッドの軸方向の厚みについての肉厚リップ部分と肉薄リップ部分とを周方向に交互に有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のスラスト滑り軸受。
  7. ストラット型サスペンションのショックアブソーバに用いたピストンロッドの上方先端部を挿着する際に車体側に取付けられる円環状の上部ケース基部と該上部ケース基部の内周端側から下方に向けて垂設した内周側円筒部と前記上部ケース基部の外周端側から下方に向けて垂設した外周側円筒部とで一体に構成された合成樹脂製の上部ケースと、前記上部ケース内に嵌入する円筒状の下部ケース頭部と該下部ケース頭部に連続して形成した円筒状の下部ケース顎部と該下部ケース顎部の顎底面から縮径して垂設した円筒状の下部ケース頸部とで一体に構成されて前記ピストンロッドの軸心の回りで前記上部ケースに対して回動自在に重ね合う合成樹脂製の下部ケースと、前記上部ケースと下部ケースとの間に形成された環状空間内に介在してピストンロッドのスラスト荷重を受ける合成樹脂製の滑り軸受片とを備えたスラスト滑り軸受に装着して、前記ピストンロッドの軸心の回りに巻回したダンパーコイルスプリングのコイル上端部を着座させるとともに前記上部ケースと下部ケースとの環状空間をケース外周側で封止するスプリングパッド一体型弾性シール部材であって、
    前記下部ケースの下部ケース頭部に圧入外嵌する円環状シール基部と、該円環状シール基部から径方向外方へ突出して前記上部ケースの外周側円筒部に圧接する円環状封止部と、前記円環状シール基部から下方に延設して前記円環状シール基部の内径より大きい内径で下部ケース顎部を囲繞する円環状連結部と、該円環状連結部から下方に延設して前記下部ケース顎部の顎底面に添装する円環状のスプリングパッド部と、該スプリングパッド部から延設して前記下部ケースの下部ケース頸部に圧接被嵌する円環状のパッド支持部とが、一体に構成されていることを特徴とするスプリングパッド一体型弾性シール部材。
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