以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本実施形態に係るクレーンX1の構成部材のうち主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態に係るクレーンX1は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材または任意の工程を備え得る。
図1は、本発明に係るクレーンX1を示している。図1に示すクレーンX1は、下部走行体1および上部旋回体2を有する機体と、フロントアタッチメント3と、マストユニット4と、ブーム起伏ユニット5と、マスト起伏ユニット6と、カウンタウェイトユニット7と、を備えている。
クレーンX1は、機体によって地面Gを走行および旋回しつつ、ブーム起伏ユニット5により起伏されるフロントアタッチメント3によって吊り荷の吊り上げおよび吊り下げ作業を行う。このとき、フロントアタッチメント3は、マスト起伏ユニット6により所定の角度まで引き起こされたマストユニット4によって後方から支持され、当該マストユニット4を介してカウンタウェイトユニット7とつり合うことにより、地面Gに向けて落下することを抑止される。以下では、図1を参照しながら、クレーンX1が備える各部材について詳細に説明する。
機体は、下部走行体1と、当該下部走行体1上に配置された上部旋回体2と、を有している。下部走行体1は、地面Gを走行可能に構成されており、例えば左右一対のクローラーを備える。上部旋回体2は、下部走行体1が走行する地面Gに垂直な方向に延びる軸回りに旋回可能に構成されている。上部旋回体2は、例えばクレーンX1の作業者が搭乗するキャブ等を含む。キャブに搭乗した作業者は、当該キャブ内において各種の操作を行うことにより、下部走行体1の走行、上部旋回体2の旋回、およびフロントアタッチメント3の起伏等を実現する。
フロントアタッチメント3は、荷物の吊り上げ作業および吊り下げ作業を行う。フロントアタッチメント3は、ブーム31と、吊り具32と、を有している。
ブーム31は、上部旋回体2の前方において起伏可能なように、当該上部旋回体2に取り付けられている。
吊り具32は、フックワイヤーロープ32bと、フック32aと、を有している。フックワイヤーロープ32bは、ブーム31の長手方向に沿って当該ブーム31の基端から先端まで延びるとともに、当該先端から吊り下げられている。フック32aは、ブーム31の先端に吊り下げられたフックワイヤーロープ32bに取り付けられている。フックワイヤーロープ32bは、上部旋回体2上に設けられた図略のウィンチに繋がっており、当該ウィンチが駆動されることによりフック32aの巻き上げおよび巻き下げが行われる。
マストユニット4は、ブーム31が上部旋回体2の前方に倒れないように当該ブーム31を後方から支持する。マストユニット4は、マスト41と、バックストップ42と、を有している。
マスト41は、ブーム31に対して後方に傾斜するように上部旋回体2に対して起伏可能に取り付けられている。
バックストップ42は、マスト41が後方に倒れないように当該マスト41を支持する。バックストップ42の基端は、マスト41のうち上部旋回体2に取り付けられた基端よりも後方に位置しており、当該上部旋回体2に取り付けられている。バックストップ42の先端は、マスト41の長手方向における一部分に取り付けられている。これにより、マスト41は、バックストップ42によって後方から支持される。
ブーム起伏ユニット5は、ブーム31をマスト41に支持させる。ブーム起伏ユニット5は、地面Gに対するブーム31の傾斜角度を変更するように当該ブーム31を起伏させることが可能である。ブーム起伏ユニット5は、マスト41とブーム31とを繋ぐブームワイヤーロープ51と、当該ブームワイヤーロープ51の巻き取りおよび繰り出しを行うブームウィンチ52と、ブームワイヤーロープ51の一部が取り付けられるブームシーブ53と、を有している。
ブームウィンチ52は、マスト41のうち当該マスト41の基端の近傍に取り付けられている。ブームワイヤーロープ51は、当該ブーム31の先端からマスト41の先端に向かって延びるとともに、当該マスト41の先端からマスト41の長手方向に沿ってブームウィンチ52まで延びている。ブームワイヤーロープ51の第1端は、ブームウィンチ52に繋がっており、ブームワイヤーロープ51の第2端は、ブーム31の先端に繋がっている。これにより、ブーム31は、マスト41に後方から支持される。また、ブームワイヤーロープ51のうちブーム31の先端とマスト41の先端との間の部位は、ブームシーブ53に取り付けられている。
ブーム起伏ユニット5では、ブームウィンチ52が駆動されてブームワイヤーロープ51が当該ブームウィンチ52に巻き取られることにより、ブームシーブ53に取り付けられたブームワイヤーロープ51の長さが短くなり、これによりブーム31が後方へ引き起こされる。
マスト起伏ユニット6は、地面Gに対するマスト41の傾斜角度を変更するように当該マスト41を起伏させることが可能である。マスト起伏ユニット6は、例えばクレーンX1の組立段階において地面Gに倒された状態のマスト41を所定の角度まで引き起こす場合に用いられる。マスト起伏ユニット6は、マスト41よりも後方において上部旋回体2に取り付けられたマストウィンチ62と、マストシーブ63と、マストシーブ63に取り付けられるとともにマストウィンチ62に繋がるマストワイヤーロープ61と、マストワイヤーロープ61とマスト41の先端とを繋ぐマストガイライン67と、を有している。
マスト起伏ユニット6では、マストウィンチ62が駆動されてマストワイヤーロープ61が当該マストウィンチ62に巻き取られることにより、マストワイヤロープ61の長手方向における一対のマストシーブ63間の距離が短くなり、これによりマスト41が後方へ引き起こされる。
カウンタウェイトユニット7は、マスト41を介してフロントアタッチメント3との間でつり合いをとることにより、当該フロントアタッチメント3が地面Gに落下することを抑止する。カウンタウェイトユニット7は、カウンタウェイト71と、カウンタウェイト71を搭載した台車72と、一定の長さを有するとともにカウンタウェイト71とマスト41とを繋ぐガイライン73と、台車72を自走させる走行駆動部74と、を有している。
カウンタウェイト71は、上部旋回体2の後方に配置されている。カウンタウェイト71は、フロントアタッチメント3とのつり合いを保つことが可能な程度の重量を有している。
台車72は、カウンタウェイト71を載せる台車本体72aと、地面Gを転動可能な車輪72bとを有している。カウンタウェイト71は、台車本体72aに載せられることにより地面G上を自走可能に構成される。
カウンタウェイト71は、ガイライン73を介してマスト41の先端に繋がっている。ガイライン73の長さは、カウンタウェイト71とフロントアタッチメント3との間でつり合いをとるように、当該ガイライン73が張った状態でカウンタウェイト71が台車本体72aから浮かない程度の長さに設定される。
走行駆動部74は、カウンタウェイト71に搭載されており、クレーンX1の作業者による各種の操作に応じた方向に車輪72bを向けて当該カウンタウェイト71を自走させる。クレーンX1の作業者が下部走行体1を走行させる操作を行う場合、走行駆動部74は、車輪72bを当該下部走行体1の走行方向に向けるとともに、当該下部走行体1の走行速度に応じた速度でカウンタウェイト71を自走させる。クレーンX1の作業者が上部旋回体2を旋回させる操作を行う場合、走行駆動部74は、車輪72bを当該上部旋回体2の旋回方向に向けるとともに、当該上部旋回体2の旋回速度に応じた速度でカウンタウェイト71を自走させる。また、クレーンX1の作業者が後述する操作部100において上部旋回体2に対するカウンタウェイト71の後端位置を調整する操作を行う場合、操作部100は、下部走行体1および上部旋回体2が停止した状態で、カウンタウェイト71と上部旋回体2とが並ぶ方向に車輪72bを向けるとともに、当該カウンタウェイト71を目的とする後端位置まで自走させる。
ここで、クレーンX1は、カウンタウェイト71と上部旋回体2とを繋ぐ伸縮可能な伸縮部材8をさらに備えている。すなわち、カウンタウェイト71は、ガイライン73によってマスト41の先端から吊り下げられるとともに、伸縮部材8によって上部旋回体2に固定されている。
伸縮部材8は、上部旋回体2の後端とカウンタウェイト71とを繋いでいる。伸縮部材8は、地面Gを自走するカウンタウェイト71からの駆動力を受けて、最小長さL1と最大長さL2との間で伸縮可能なように構成されている。図1では、伸縮部材8の長さが最小長さL1に設定されており、これによりカウンタウェイト71が当該カウンタウェイト71と上部旋回体2との離間距離が最も近くなる後端位置E1に位置付けられている。なお、本実施形態では、カウンタウェイト71は、クレーンX1の作業時において各後端位置E1〜E4のいずれかに位置付けられる。各後端位置E1〜E4は、上部旋回体2から遠ざかる方向にこの順に並んでおり、伸縮部材8の長さが最大長さL2に設定された場合にカウンタウェイト71が後端位置E4に位置付けられる。
本実施形態では、伸縮部材8は、上部旋回体2の前後方向に延びており、当該前後方向に伸縮可能なように構成されている。これにより、カウンタウェイト71の前記前後方向の移動が可能になるとともに、カウンタウェイト71の上下方向の移動が伸縮部材8によって規制される。
ここで、図1および図2に示すように、クレーンX1は、カウンタウェイト71の位置調整およびマスト41の傾斜角度調整を行うことを目的として、操作部100と、引き起こしスイッチ200と、距離検出器91と、角度検出器92と、制御装置10と、をさらに備えている。
操作部100は、作業者による当該操作部100の操作に応じて、制御装置10に対してカウンタウェイト71を目的とする後端位置に移動させるための位置信号を送る。本実施形態では、操作部100の操作に応じてカウンタウェイト71の走行およびマスト41の起伏がなされるため、当該操作部100が本発明に係る位置調整方法における伸縮操作部およびマスト操作部の両方の役割を担っている。
引き起こしスイッチ200は、例えばクレーンX1の組立段階において用いられ、作業者による当該引き起こしスイッチ200の操作に応じて、制御装置10に対してマスト41を引き起こすための引き起こし信号を送る。
距離検出器91は、上部旋回体2の後端からカウンタウェイト71までの離間距離を検出し、当該検出した離間距離の情報を制御装置10に送る。
角度検出器92は、地面Gに対するマスト41の傾斜角度を検出し、当該検出した傾斜角度の情報を制御装置10に送る。なお、本実施形態におけるマスト41の傾斜角度は、マスト41の前方において当該マスト41と地面Gとがなす角度である。
制御装置10は、距離検出器91が検出した離間距離および角度検出器92が検出した傾斜角度に基づいて、操作部100および引き起こしスイッチ200の操作を許容するか禁止するかを判定し、当該操作を許容する場合には走行駆動部71c、マストウィンチ62、およびブームウィンチ52に対して信号を送る。
以下では、図2を参照しながら、制御装置10について詳細に説明する。
制御装置10は、図2に示すように、駆動制御部11と、マスト起伏禁止部12と、記憶部13と、マスト起伏許容部14と、を機能的に含んでいる。なお、本実施形態では、制御装置10における各部11〜14の機能は、個別の機能部品によって実現されてもよいし、共通の機能部品によって実現されてもよい。
駆動制御部11は、引き起こしスイッチ200から引き起こし信号を受けた場合に、所定の条件のもとでマストウィンチ62に対して当該引き起こし信号に対応する信号を送ることによりこれを駆動する。また、駆動制御部11は、操作部100から位置信号を受けた場合に、所定の条件のもとで走行駆動部71c、マストウィンチ62、およびブームウィンチ52に対して当該位置信号に対応する信号を送ることによりこれらを駆動する。
マスト起伏禁止部12は、記憶部13に記憶された情報と、距離検出器91において検出される上部旋回体2とカウンタウェイト71との離間距離と、角度検出器92において検出されるマスト41の傾斜角度と、に基づいて、マストウィンチ62の駆動を禁止する禁止信号を駆動制御部11に送る。当該禁止信号を受けた駆動制御部11は、後述するマスト起伏許容部14から禁止解除信号を受けた場合を除いて、操作部100および引き起こしスイッチ200の操作に関わらず走行駆動部71c、マストウィンチ62、およびブームウィンチ52に対して信号を送ることを禁止する。
図3には、記憶部13に記憶された情報をグラフにて示す。記憶部13には、図3に示された複数の設定角度範囲R1〜R4が記憶されている。各設定角度範囲R1〜R4は、伸縮部材8の長さに応じて設定されるマスト41の傾斜角度の許容範囲である。本実施形態では、クレーンX1による作業時においてカウンタウェイト71が各後端位置E1〜E4のいずれかに位置付けられるため、これに応じて各設定角度範囲R1〜R4が設定されている。また、本実施形態では、カウンタウェイト71が上部旋回体2の前後方向に移動するとともにガイライン73の長さが一定であるため、カウンタウェイト71が上部旋回体2から遠ざかる位置に位置付けられるほどマスト41の傾斜角度は大きく設定される必要がある。このため、図3に示すように、各設定角度範囲R1〜R4のそれぞれの最大値は、後端位置が上部旋回体2から遠いほど大きく設定されているとともに、各設定角度範囲R1〜R4のそれぞれの最小値は、後端位置が上部旋回体2に近いほど小さく設定されている。このため、伸縮部材8の長さが最小長さL1である場合、すなわち後端位置E1にカウンタウェイト71が位置付けられる場合における設定角度範囲R1の最小値が、各設定角度範囲R1〜R4において最も小さい角度である最小許容角度C1となる。また、伸縮部材8の長さが最大長さL2である場合、すなわち後端位置E4にカウンタウェイト71が位置付けられる場合における設定角度範囲R4の最大値が、各設定角度範囲R1〜R4において最も大きい角度である最大許容角度C2となる。
マスト起伏禁止部12は、距離検出器91から受けた上部旋回体2とカウンタウェイト71との離間距離の検出情報に基づいて、カウンタウェイト71が各後端位置E1〜E4のいずれに位置付けられているかを判定し、記憶部に記憶された各設定角度範囲R1〜R4のうち当該判定結果に対応する設定角度範囲を読みだす。そして、角度検出器92から受けたマスト41の傾斜角度の検出情報に基づいて、当該傾斜角度が設定角度範囲に収まっているか否かを判定し、当該傾斜角度が設定角度範囲に収まっている場合に、マストウィンチ62の駆動を禁止する制御を行う。
例えば、クレーンX1の組立段階において、引き起こしスイッチ200が操作されると、駆動制御部11がマストウィンチ62に起伏信号を送ることによりマスト41が地面Gから所定の角度まで引き起こされる。引き起こしスイッチ200の操作が終了すると、マスト起伏禁止部12は、カウンタウェイト71が各後端位置E1〜E4のいずれに位置付けられているかを判定し、当該判定結果に対応する設定角度範囲にマスト41の傾斜角度が収まっているか否かを判定する。設定角度範囲にマスト41の傾斜角度が収まっている場合には、マスト起伏禁止部12は、禁止信号を駆動制御部11に送り、これによりマストウィンチ62の駆動が禁止される。これ以降は、引き起こしスイッチ200の操作に関わらず、マスト41の起伏が禁止される。
マスト起伏許容部14は、操作部100から許容信号を受けて、駆動制御装置11に対してマストウィンチ62の駆動の禁止を解除する解除信号を送る。具体的には、操作部13は、作業者が当該操作部13を操作した場合に、駆動制御部11に対して当該操作に対応する位置信号を送るとともに、マスト起伏許容部14に対して駆動制御部11へ解除信号を送るための指令となる許容信号を送る。マスト起伏許容部14から許容信号を受けた駆動制御部11は、記憶部13に記憶された最大許容角度C2と最小許容角度C1との間の許容角度範囲におけるマストウィンチ62の駆動の禁止を解除して、当該許容角度範囲におけるマスト41の起伏を許容する。なお、前記許容角度範囲外においては、マスト起伏禁止部12によるマストウィンチ62の駆動の禁止が継続される。すなわち、駆動制御部11は、マスト起伏禁止部11から禁止信号を受けた場合には、原則としてマストウィンチ62の駆動を禁止する一方、マスト起伏許容部14から解除信号を受けた場合には、禁止信号に関わらず前記許容角度範囲におけるマスト41の起伏のみを許容するように前記禁止を解除する。
操作部100から位置信号を受けた駆動制御部11は、距離検出器91からの離間距離の検出情報に基づいて、現在のカウンタウェイト71が各後端位置E1〜E4のいずれに位置付けられているかを判定する。そして、当該判定された現在の後端位置と、操作部100から受けた位置信号に対応する目標とする後端位置と、に基づいて、走行駆動部74に対して当該目標とする後端位置までカウンタウェイト71を自走させるための走行信号を送る。当該走行信号を受けた走行駆動部74は、伸縮部材8の伸縮方向に車輪72bを向けて、当該伸縮方向に沿って目標とする後端位置までカウンタウェイト71を自走させる。これに応じて、伸縮部材8が所定の長さに伸縮する。
このとき、駆動制御部11は、走行駆動部74に対して走行信号を送ると同時に、マストウィンチ62に対して当該マスト41を起伏させる起伏信号を送るとともに、ブームウィンチ52に対してブーム31の先端とマスト41の先端との間のブームワイヤーロープ51の長さを調整する調整信号を送る。
起伏信号を受けたマストウィンチ62は、カウンタウェイト71とフロントアタッチメント3とがつり合うようにガイライン73が張った状態で当該カウンタウェイト71が伸縮部材8の伸縮方向に移動可能なようにマスト41を起伏させる。具体的には、走行信号を受けた走行駆動部74が目標とする後端位置までカウンタウェイト71を自走させる途中において、駆動制御部11は、距離検出器91から離間距離の検出情報を受けて、カウンタウェイト71が自走を継続しつつガイライン73が張った状態を維持できる程度にマスト41を起伏させるように、マストウィンチ62に対して起伏信号を送る。すなわち、駆動制御部11は、カウンタウェイト71を目標とする後端位置まで自走させるに際して、当該カウンタウェイト71の自走に連動してマスト41を起伏させる。
調整信号を受けたブームウィンチ52は、起伏信号を受けたマストウィンチ62がマストを起伏させる途中において、ブーム31が一定の姿勢で維持されるようにブーム31の先端とマスト41の先端との間のブームワイヤーロープ51の長さを調整する。具体的には、起伏信号を受けたマストウィンチ62がマストを起伏させる途中において、駆動制御部11は、角度検出器92から傾斜角度の検出情報を受けて、当該検出情報に基づいてブーム31の先端とマスト41の先端との間のブームワイヤーロープ51の長さを調整するように、ブームウィンチ52に対して調整信号を送る。すなわち、駆動制御部11は、カウンタウェイト71を目標とする後端位置まで自走させるに際して、当該マスト41の起伏に連動してブーム31の先端とマスト41の先端との間のブームワイヤーロープ51の長さを調整する。
次に、図4を参照しながら、クレーンX1のカウンタウェイト71の位置調整方法について説明する。なお、以下では、本実施形態に係るクレーンX1のカウンタウェイト71の位置調整方法のうち、主要な工程のみを説明する。したがって、本実施形態に係るクレーンX1のカウンタウェイト71の位置調整方法は、本明細書において省略する任意の工程を備え得る。
本実施形態では、図1に示すように、カウンタウェイト71が後端位置E1に位置付けられた状態から、当該カウンタウェイト71を後端位置E4へと移動させる位置調整方法について説明する。なお、当該位置調整方法の開始時点では、マスト41の傾斜角度は、後端位置E1に対応する設定角度範囲R1に収まっており、マスト起伏禁止部12が駆動制御部11に対して禁止信号を送ることにより、マスト41の起伏が禁止されているものとする。
まず、クレーンX1の作業者が操作部100の操作を行うことにより、操作部100が当該操作に応じた位置信号をマスト起伏許容部14へと送信する(ステップST1にてYes)。本実施形態では、各後端位置E1〜E4のうち後端位置E4に対応する位置信号を操作部100からマスト起伏許容部14へと送信する。このとき、操作部100は、マスト起伏許容部14に対して許容信号を送り、これにより当該マスト起伏許容部14から駆動制御部11に対してマスト41の起伏の禁止を解除するための解除信号が送られる。
マスト起伏許容部14から解除信号を受けた駆動制御部11は、記憶部13から読みだした各設定角度範囲R1〜R4における最小許容角度C1と最大許容角度C2に基づいて、当該最小許容角度C1と最大許容角度C2との間の許容角度範囲にマスト41が収まる状態において当該マスト41の起伏が許容されるように、マストウィンチ62の駆動の禁止を一部解除する(ステップST2)。
また、駆動制御部11は、位置信号を受けた時点において距離検出器91から受けた離間距離の検出情報に基づいて、カウンタウェイト71が位置付けられた現在の後端位置を特定する。本実施形態では、駆動制御部11は、位置信号を受けた時点における上部旋回体2とカウンタウェイト71との離間距離に基づいて、現在のカウンタウェイト71が後端位置E1に位置付けられていることを特定する。
カウンタウェイト71が位置付けられた現在の後端位置を特定した駆動制御部11は、当該現在の後端位置と、位置信号によって特定される目標とする後端位置と、に基づいて、カウンタウェイト71を当該目標とする位置まで自走させるための走行信号を走行駆動部74に送る。本実施形態では、駆動制御部11は、カウンタウェイト71を後端位置E1から後端位置E4へと自走させるための走行信号を走行駆動部74に送る。そして、走行信号を受けた走行駆動部74は、伸縮部材8の伸縮方向に車輪72bを向けて、目標とする後端位置に向けてカウンタウェイト71を自走させつつ(ステップST3)、当該目標とする後端位置に対応する長さに伸縮部材8を伸縮させる。
走行駆動部74に走行信号を送った駆動制御部11は、カウンタウェイト71の自走に伴って距離検出器91から離間距離の検出情報を受け、当該離間距離に基づいて、カウンタウェイト71とフロントアタッチメント3とがつり合うようにガイライン73が張った状態で伸縮部材8の伸縮方向に沿ってカウンタウェイト71が自走を継続するようにマスト41を起伏させる起伏信号をマストウィンチ62に送る。起伏信号を受けたマストウィンチ62は、マストワイヤーロープ61の巻き取りあるいは繰り出しを行い、これによりカウンタウェイト71の自走に連動するように前記許容角度範囲においてマスト41を起伏させる(ステップST4)。
マストウィンチ62に起伏信号を送った駆動制御部11は、マスト41の起伏に伴って角度検出器92から傾斜角度の検出情報を受け、当該傾斜角度に基づいて、ブーム31を一定の姿勢に維持されるようにブーム31の先端とマスト41の先端との間のブームワイヤーロープ51の長さを調整する調整信号をブームウィンチ52に送る。調整信号を受けたブームウィンチ52は、ブームワイヤーロープ51の巻き取りあるいは繰り出しを行い、これによりブーム31を一定の姿勢に維持させつつブーム31の先端とマスト41の先端との間のブームワイヤーロープ51の長さを調整する(ステップST5)。
なお、ステップST3〜ステップST5については、全て連動して行われるものであり、その順序は特に限定されない。
その後、駆動制御部11は、距離検出器91からの離間距離の検出情報に基づいて、カウンタウェイト71が目標とする後端位置に至ったか否かを判定する。本実施形態では、駆動制御部11は、距離検出器91から離間距離の検出情報を受けて、当該離間距離が伸縮部材8の最大長さL2に至った場合に、カウンタウェイト71が目標とする後端位置E4に位置付けられたと判定する。
カウンタウェイト71が目標とする後端位置に至ったと判定した駆動制御部11は、その時点において角度検出器92から傾斜角度の検出情報を受けて、当該傾斜角度が目標とする後端位置における設定角度範囲に収まっているか否かを判定する(ステップST6)。本実施形態では、駆動制御部11は、角度検出器92から傾斜角度の検出情報を受けて、当該傾斜角度が設定角度範囲R4に収まっているか否かを判定する。
ステップST6にてマスト41の傾斜角度が目標とする後端位置における設定角度範囲に収まっていないと判定した場合(ステップST6にてNo)、駆動制御部11は、ステップST4へと戻りマスト41の傾斜角度が設定角度範囲に収まるように当該マスト41の起伏を継続させる。
一方、ステップST6にてマスト41の傾斜角度が目標とする後端位置における設定角度範囲に収まっていると判定した場合(ステップST6にてYes)、駆動制御部11は、マスト起伏許容部14から受けた解除信号をリセットし、これにより許容角度範囲におけるマスト41の起伏を再び禁止する(ステップST7)。
このようにして、クレーンX1のカウンタウェイト71の位置調整が終了する。
本実施形態に係るクレーンX1では、カウンタウェイト71の自走に伴ってマスト41を起伏させることにより、コストの増大を抑止しつつ、ガイライン73の長さを一定に保ったままカウンタウェイト71の位置を調整できる。
本実施形態では、マスト41は、例えばクレーンX1の組立段階において地面Gに倒れた状態から、後端位置E1に応じた設定角度範囲R1に収まるように引き起こされる。そして、設定角度範囲R1に収まるように引き起こされたマスト41は、クレーンX1による作業時において当該設定角度範囲R1から逸脱することを抑止する目的でマスト起伏禁止部12によってその起伏を禁止される。
本実施形態に係るクレーンX1は、操作部100の操作時にマスト起伏禁止部12によるマスト41の起伏の禁止を解除して当該マスト41を起伏させつつ伸縮部材8を伸縮させることにより、ガイライン73の長さを一定に保ったままカウンタウェイト71の位置を調整することができる。具体的には、本実施形態に係るクレーンX1では、操作部100の操作時にマスト41の起伏の禁止を解除して、カウンタウェイト71とフロントアタッチメント3とがつり合うようにガイライン73が張った状態でカウンタウェイト71が伸縮部材8の伸縮方向に移動可能なようにマスト41を起伏させるため、ガイライン73が一定の長さであってもカウンタウェイト71を伸縮部材8の伸縮方向に移動させることができる。
しかも、本実施形態に係るクレーンX1では、カウンタウェイト71の位置調整に特別な部品を必要としないため、コストが増大することを抑止できる。具体的には、本実施形態に係るクレーンX1では、当該クレーンX1の組立段階において必要なマスト41の起伏機能を利用してカウンタウェイト71の位置を調整するため、コストが増大することを抑止できる。
さらに、本実施形態に係るクレーンX1では、伸縮部材8の伸縮方向に沿ってカウンタウェイト71を自走させるのに伴って、最小許容角度C1と最大許容角度C2との間の許容角度範囲においてのみマスト41の起伏が許容されるため、当該マスト41の傾斜角度が適切な範囲から大きくずれることを抑止することができる。
特に、本実施形態では、最大許容角度C2は、伸縮部材8の長さが最大長さL2である場合における設定角度範囲R4の最大値であり、最小許容角度C1は、伸縮部材8の長さが最小長さL1である場合における設定角度範囲の最小値である。そして、本実施形態に係るクレーンX1では、前記最大値と前記最小値との間の許容角度範囲においてのみマスト41の起伏が許容されるとともに、カウンタウェイト71が目標とする後端位置に至ったときにマスト41の傾斜角度が目標とする後端位置に対応する設定角度範囲に収まるように制御されるため、カウンタウェイト71の位置調整の前後においてマスト41の傾斜角度を適切なものとすることができる。
さらに、本実施形態に係るクレーンX1のカウンタウェイト71の位置調整方法では、マスト41の傾斜角度を調整しつつ伸縮部材8が伸縮するようにカウンタウェイト71を自走させるため、上述したとおりコストの増大を抑止しつつガイラインの長さを一定に保ったままカウンタウェイトの位置を調整できる。
さらに、本実施形態に係るクレーンX1のカウンタウェイト71の位置調整方法では、最大許容角度C2と最小許容角度C1との間の許容範囲内にマスト41の傾斜角度が収まるように当該傾斜角度を調整するため、上述したとおりマスト41の傾斜角度が適切な範囲から大きくずれることを抑止することができる。
さらに、本実施形態に係るクレーンX1のカウンタウェイト71の位置調整方法では、目的とする後端位置にカウンタウェイト71が位置付けられた場合の設定角度範囲にマスト41の傾斜角度が収まるように、当該傾斜角度を調整するため、上述したとおりカウンタウェイト71の位置調整の前後においてマスト41の傾斜角度を適切なものとすることができる。
以上説明した上記の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記の実施形態では、カウンタウェイト71は、台車72に搭載されることにより地面Gを自走可能に構成されているが、これに限らない。カウンタウェイト71は、地面Gから浮いた状態で伸縮部材8に固定されていてもよい。この場合、例えば伸縮部材8が上部旋回体2から駆動力を受けて伸縮することにより、カウンタウェイト71が各後端位置E1〜E4のいずれかに移動することになる。
また、本実施形態では、カウンタウェイト71は、走行駆動部71cの駆動力によって自走するが、これに限らない。カウンタウェイト71は、自走不能に構成されていてもよい。この場合、例えば車輪72bがロックされた状態で下部走行体1が伸縮部材8の伸縮方向に沿って走行することにより、当該伸縮部材8が伸縮し、これによりカウンタウェイト71が各後端位置E1〜E4のいずれかに移動することになる。
また、本実施形態では、クレーンX1の作業時におけるカウンタウェイト71の後端位置は、予め設定された4位置E1〜E4のみであるが、これに限らない。カウンタウェイト71の後端位置は、最小長さL1に対応する後端位置E1と最大長さL2に対応する後端位置E4との間で作業者が適宜決定すればよい。
また、本実施形態では、距離検出器91の離間距離の検出情報に基づいてカウンタウェイト6の後端位置が特定されたが、これに限らない。例えば、本実施形態のようにカウンタウェイト6が各後端位置E1〜E4のいずれかに位置付けられることが予め設定されている場合であれば、カウンタウェイト6が各後端位置E1〜E4のいずれかに至った段階で伸縮部材8から駆動制御部11およびマスト起伏禁止部12へ信号を送ることにより、カウンタウェイト6の後端位置を特定してもよい。
また、本実施形態では、操作部100から受けた位置信号に基づいて駆動制御部11が走行駆動部71cおよびマストウィンチ62を連動させて制御することにより、上述した効果が達成されるが、これに限らない。例えば、駆動制御部11に対して走行駆動部71cの駆動を制御する信号を送る伸縮操作部と、駆動制御部11に対してマストウィンチ62の駆動を制御する信号を送るマスト起伏操作部と、をそれぞれ用意し、クレーンX1の作業者がこれらの操作部を操作することによっても、上述した効果を達成することができる。すなわち、伸縮部材8の伸縮とマスト41の起伏との連動は、機械的に行われてもよい、人的に行われてもよい。
また、本実施形態では、マスト起伏許容部14から解除信号を受けた駆動制御部11は、最小許容角度C1と最大許容角度C2との間の許容角度範囲においてのみマスト41を起伏可能なようにマストウィンチ62の駆動の禁止を解除するが、これに限らない。例えば、駆動制御部11は、マスト起伏許容部14から解除信号を受けた場合に全角度範囲においてマスト41を起伏可能なようにマストウィンチ62の駆動の禁止を解除してもよい。この場合、例えば、クレーンX1の作業者が搭乗するキャブ内に表示モニターを設け、当該表示モニターに前記許容角度範囲と現在のマスト41の傾斜角度とを表示することにより、作業者自身が前記許容角度範囲に傾斜角度が収まっているか否かを判断しつつ当該マスト41を起伏させる。これにより、機械的な制限がなくともマスト41を安全に起伏させることができる。なお、マスト41の傾斜角度が前記許容角度範囲から逸脱する場合には、表示モニターに対して警告表示を行うこと、あるいはキャブ内に取り付けたスピーカーを通じて警告音を発生させることにより、安全性がより確保される。