以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、第1の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と表記)について説明する。
図1は、本実施形態に係るX線CT装置の構成を示す。図1に示すように、X線CT装置は、架台10とコンソール20とを備える。
架台10は、X線発生装置11、回転フレーム12、回転フレーム駆動部13、X線検出器14、データ収集ユニット15及び伝送部16を含む。
X線発生装置11は、X線管111、高電圧発生部112及びX線制御部113を備える。
X線管111は、被検体Pに照射されるX線を発生する。具体的には、X線管111は、例えば陰極及び陽極を有し、当該X線管111の陰極−陽極間には管電圧が印加され、またX線管111の陰極のフィラメントにはフィラメント電流が供給される。このような管電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、X線管111の陽極のターゲットからX線が発生する。
高電圧発生部112は、X線制御部113からの制御に応じた高電圧をX線管111に印加し、当該X線制御部113からの制御に応じたフィラメント電流をX線管111に供給する。
X線制御部113は、高電圧発生部112を制御することによって、X線管111からのX線の発生を制御する。
回転フレーム12は、被検体Pを中心にして、高速かつ連続的に回転する円環または円板状のフレームである。この回転フレーム12は、X線管111とX線検出器14とを回転フレーム12の中心軸(回転軸)周りに回転可能に支持している。回転フレーム12の開口の内部には、FOV(field of view)が設定される。回転フレーム12は、回転フレーム駆動部13に接続されている。
回転フレーム駆動部13は、回転フレーム12を一定の角速度で回転させることによって、X線管111とX線検出器14とを回転軸周りに回転させる。なお、回転フレーム駆動部13は、図1に示すZ軸を回転軸として回転フレーム12(X線管111及びX線検出器14)を回転させる。
また、回転フレーム12の近傍には、天板支持機構121が設置されている。天板支持機構121は、天板122をZ軸に沿って移動可能に支持する。天板支持機構121は、天板122の長軸がZ軸に平行するように天板122を支持する。天板122には、被検体Pが載置される。天板支持機構121は、図示しないモータから発生される動力により、天板122をZ軸方向に沿って移動する。
X線検出器14は、X線管111から発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。X線検出器14は、2次元状に配列された複数の検出素子を搭載する。例えば、複数の検出素子は、回転フレーム12の回転軸Zを中心とした円弧に沿って配列される。この円弧に沿う検出素子の配列方向はチャンネル方向と呼ばれる。チャンネル方向に沿って配列された複数の検出素子は、検出素子列と呼ばれる。複数の検出素子列は、回転軸Zに沿う列方向に沿って配列される。各検出素子は、X線管111から発生されたX線を検出し、当該検出されたX線の強度に応じた電気信号(電流信号)を生成する。生成された電気信号は、データ収集ユニット(DASユニット)15に供給される。
データ収集ユニット15は、X線検出器14を介して電気信号をビュー(view)毎に収集する。ビューは、回転軸Z周りの回転フレーム12の回転角度に対応する。また、信号処理的には、ビューは、回転フレーム12の回転時におけるデータのサンプリング点に対応する。データ収集ユニット15は、収集されたアナログの電気信号をデジタルデータに変換する。データ収集ユニット15によって変換されたデジタルデータは、生(row)データと呼ばれる。この生データ(被検体に関するデータ)は、非接触型の伝送部16により、所定ビュー毎にコンソール20に出力(供給)される。
また、データ収集ユニット15は、それぞれ異なる電圧を発生する複数の基準電圧源を備える。データ収集ユニット15は、複数の基準電圧源の各々によって発生された電圧に応じた電気信号に基づいて、コンソール20に対して出力されるデータを補正する。
コンソール20は、前処理部21、再構成部22、表示部23、操作部24、記憶部25、架台制御部26及びシステム制御部27を含む。
前処理部21は、データ収集ユニット15から供給されたデータに対して、例えば対数変換や感度補正等の前処理を実行する。前処理が実行されたデータは、投影データと呼ばれる。
再構成部22は、前処理部21によって前処理が実行されたデータ(投影データ)に基づいて被検体Pに関する画像データを再構成する。
表示部23は、再構成部22によって再構成された画像データを例えば表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が利用可能である。
操作部24は、入力機器を介してユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、スイッチ等が利用可能である。
記憶部25は、上記したデータ収集ユニット15から出力されたデータ、投影データ及び画像データ等を記憶する。また、記憶部25には、制御プログラムが記憶されている。
架台制御部26は、X線CT撮像を実行するために、上記したX線制御部113、回転フレーム駆動部13及びデータ収集ユニット15を制御する。
システム制御部27は、記憶部25に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従って各部を制御する。
図2は、図1に示すデータ収集ユニット15の構成を示す。図2に示すように、データ収集ユニット15は、基準電圧部151、DAS回路152及び温度補正回路153を含む。
基準電圧部151は、複数の基準電圧源(第1〜第xの基準電圧源)を備える。なお、xは、2以上の整数であるものとする。図2に示す例では、基準電圧部151は、第1〜第4の基準電圧源151a〜151d(つまり、4つの基準電圧源)を備えている。この第1〜第4の基準電圧源151a〜151dは、それぞれ異なる電圧を発生する。具体的には、第1〜第4の基準電圧源151a〜151dの各々によって発生される電圧は、当該第1の基準電圧源151aによって発生される電圧が最も小さく、第4の基準電圧源151dによって発生される電圧が最も大きくなるように段階的に設定されているものとする。
また、基準電圧部151は、当該基準電圧部151(第1〜第4の基準電圧源151a〜151d)の温度を測定する温度センサ(温度計)151eを備える。温度センサ151eによって測定された温度は、温度補正回路153に供給される。
DAS回路152は当該DAS回路152において入力された電気信号に対してA/D変換処理を施してコンソール20に出力する。なお、DAS回路152では、A/D変換処理以外に例えば増幅処理等も行われる。
DAS回路152は、X線CT装置において被検体Pに対してスキャンを行っていないとき(以下、非スキャン時と表記)に順次、第1〜第4の基準電圧源151a〜151dと一定期間接続される。一方、X線CT装置において被検体Pに対してスキャンを行うとき(以下、実スキャン時と表記)には、DAS回路152は、X線検出器14と接続される。
DAS回路152は、非スキャン時には、当該DAS回路152に順次接続される第1〜第4の基準電圧源151a〜151dによって発生された電圧に応じた電気信号を入力する。この入力された電気信号は補正データとして順次データ収集ユニット15内部に格納される。
DAS回路152は、実スキャン時には、当該DAS回路152に接続されたX線検出器14によって生成された電気信号(X線管111から発生され、被検体Pを透過したX線の強度に応じた電気信号)を入力する。ここで入力された電気信号(X線検出器14によって生成された電気信号)は、上記したようにデータ収集ユニット15内部に格納された補正データ(第1〜第4の基準電圧源151a〜151dによって発生された電圧に応じた電気信号)を用いて補正される。このように補正された電気信号は、DAS回路152においてデジタルデータに変換されて、コンソール20に対して出力される。
すなわち、本実施形態におけるDAS回路152においては、実スキャン時にデータ収集ユニット152から出力されるデータが第1〜第4の基準電圧源151a〜151dによって発生された電圧に応じた電気信号(補正データ)を用いて補正される。なお、本実施形態におけるDAS回路152において行われる補正は、X線検出器14またはデータ収集ユニット15(DAS)の特性である非直線性の補正である。非直線性とは、第1〜第4の基準電圧源151a〜151dによって発生された電圧とデータ収集ユニットにおける入力である電気信号との各対応関係が直線的となることが理想であるところ、当該理想(直線)に対する誤差が生じることをいう。
温度補正回路153は、基準電圧部151の温度特性に関する補正値を予め保持する。温度補正回路153は、予め保持されている補正値及び温度センサ151eによって供給された温度に基づいて、基準電圧部151の温度変化による当該基準電圧部151に備えられる第1〜第4の基準電圧源151a〜151dによって発生された電圧(に応じた電気信号)の誤差を補正する。
このように温度補正回路153によって補正が行われた場合、DAS回路152は、当該補正された電気信号を補正データとしてデータ収集ユニット15内部に格納する。
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係るX線CT装置におけるデータ収集ユニット15の処理手順について説明する。
まず、データ収集ユニット15に含まれるDAS回路152は、非スキャン時において、複数の基準電圧源のうちの例えば第1の基準電圧源151aと接続される(ステップS1)。
この場合、DAS回路152は、当該DAS回路152と接続された第1の基準電圧源151aによって発生された電圧に応じた電気信号(補正データ)を入力する(ステップS2)。なお、DAS回路152によって入力された補正データは、上記したように温度補正回路153において予め保持されている補正値及び温度センサ151eによって測定された温度に基づいて当該温度補正回路153において補正される。
なお、例えば基準電圧部151を一定の温度に保つことで当該温度補正回路153による補正を行わない構成とすることも可能である。この場合には、基準電圧部151に備えられている温度センサ151e及び温度補正回路153は省略可能である。
次に、DAS回路部152は、補正データをデータ収集ユニット15内部に格納する(ステップS3)。
ここで、X線CT装置において実スキャンが開始されるか否かが判定される(ステップS4)。このステップS4の処理は、例えばコンソール20に対する操作者の操作(スキャン開始指示)等に基づいて判定される。
実スキャンが開始されないと判定された場合(ステップS4のNO)、ステップS1に戻って処理が繰り返される。この場合におけるステップS1においては、DAS回路152は例えば第2の基準電圧源151bと接続される。つまり、本実施形態において、非スキャン時には、第1〜第4の基準電圧源151a〜151dが順次DAS回路152と接続され、当該第1〜第4の基準電圧源151a〜151dの各々によって発生された電圧に応じた電気信号が補正データとしてDAS回路152に入力され、当該補正データがデータ収集ユニット15内部に格納される。
一方、実スキャンが開始されると判定された場合(ステップS4のYES)、DAS回路152は、X線検出器14と接続される(ステップS5)。
ここで、図4を参照して、DAS回路152とX線検出器14及び第1〜第4の基準電圧源151a〜151dとの接続状態について説明する。
図4に示すように、実スキャン時には、DAS回路152は、X線検出器14と接続され、当該X線検出器14によって検出されたX線の強度に応じた電気信号を入力する(ステップS11)。
一方、非スキャン時には、DAS回路152は、第1の基準電圧源151aと接続され、当該第1の基準電圧源151aによって発生された電圧に応じた電気信号が入力される(ステップS12)。
次に、DAS回路152は、第2の基準電圧源151bと接続され、当該第2の基準電圧源151bによって発生された電圧に応じた電気信号が入力される(ステップS13)。
更に、DAS回路152は、第3の基準電圧源151cと接続され、当該第3の基準電圧源151cによって発生された電圧に応じた電気信号が入力される(ステップS14)。
また、DAS回路152は、第4の基準電圧源151dと接続され、当該第4の基準電圧源151dによって発生された電圧に応じた電気信号が入力される(ステップS15)。
上記したように第4の基準電圧源151dと接続された後に実スキャンが開始されない場合には、更に、DAS回路152は、第1の基準電圧源151aと接続され、当該第1の基準電圧源151aによって発生された電圧に応じた電気信号が入力される(ステップS16)。
このように非スキャン時においては、DAS回路152と接続される基準電圧源(第1〜第4の基準電圧源151a〜151d)が繰り返し切り替えられる。以下同様に、DAS回路152は、第2及び第3の基準電圧源151b及び151cと順次接続されたものとする(ステップS17,S18)。
ここで、ステップS18の後(つまり、第3の基準電圧源151cと接続された後)、実スキャンが開始されるものとすると、DAS回路152は、X線検出器14と接続される(ステップS19)。
再び図3に戻って説明する。上記したように実スキャンが開始されると、DAS回路152は、X線検出器14からの電気信号を入力する(ステップS6)。以下、ステップS6において入力された電気信号を、便宜的に、対象データと称する。
DAS回路152は、上記したようにデータ収集ユニット15内部に格納された補正データを用いて、対象データを補正する処理を実行する(ステップS7)。なお、このステップS7における補正処理においては、実スキャンの開始直前の補正データ(つまり、最後に入力及び格納された補正データ)が用いられる。具体的に図4に示す例を用いて説明すると、ステップS15〜S18において入力された補正データが用いられる。これにより、経時変化の影響を緩和することができる。
ここで、図5を参照して、DAS回路152によって行われる補正処理の概念について説明する。なお、ここで説明する補正処理によれば、上記したように非直線性の補正が行われる。
まず、補正処理において用いられる補正データとして、補正データ101〜104がDAS回路152内部に格納されているものとする。補正データ101は、第1の基準電圧源151aによって発生された電圧に応じた電気信号である。補正データ102は、第2の基準電圧源151bによって発生された電圧に応じた電気信号である。補正データ103は、第3の基準電圧源151cによって発生された電圧に応じた電気信号である。補正データ104は、第4の基準電圧源151dによって発生された電圧に応じた電気信号である。
この場合、DAS回路152は、第1〜第4の基準電圧源151a〜151dによって発生された電圧のうち最も大きな電圧に応じた電気信号である補正データ104とDAS回路152において予め保持されているオフセット値とに基づいて、図5に示すような理想直線を算出(定義)する。なお、この理想直線によれば、基準電圧源の電圧と電気信号との理想的な対応関係が示される。これに対して、補正データ101〜104は、図5に示すような非直線性を有する。
このような場合、DAS回路152は、図5に示すように、補正データ101〜104に基づく非直線性において対象データに対応する電圧を特定し、上記した理想直線において当該特定された電圧に対応する電気信号を補正後の対象データとする。
これにより、本実施形態においては、補正データ101〜104を用いて対象データの非直線性の補正を行うことができる。
再び図3に戻ると、DAS回路152は、補正後の対象データに対してA/D変換処理を行い、コンソール20に出力する(ステップS8)。
上記したように本実施形態においては、データ収集ユニット15が複数の基準電圧源(第1〜第4の基準電圧源151a〜151d)の各々によって発生された電圧に応じた電気信号(補正データ)に基づいて当該データ収集ユニット15から出力されるデータを補正する構成により、X線検出器14またはデータ収集ユニット15(DAS)の特性(である非直線性)を考慮して当該データ収集ユニット15の出力を補正することが可能となる。
なお、本実施形態においては基準電圧部151がデータ収集ユニット15に含まれるものとして説明したが、図6に示すように、基準電圧部151は、データ収集ユニット15の外部に設けられる構成としてもよい。
また、本実施形態においてはX線CT装置を例として説明したが、本実施形態において説明したデータ収集ユニット15において実行される補正処理は、例えばA/D変換を行うものであれば適用可能である。なお、以下の各実施形態についても同様である。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るX線CT装置の構成は、前述した第1の実施形態と同様であるため、適宜、図1を用いて説明する。
前述した第1の実施形態においてはX線検出器14またはデータ収集ユニット15(DAS)の特性である非直線性の補正を行うものとして説明したが、本実施形態は、X線検出器14またはデータ収集ユニット15の特性である温度によるドリフト(ゲイン)を補正する点が、前述した第1の実施形態とは異なる。
ここで、図7を参照して、温度によるドリフト(ゲイン)の概念について簡単に説明する。図7に示すように、データ収集ユニット15においてX線検出器14からの電気信号を所定ゲインで増幅する際の入力(電流/電圧)と出力との対応関係は直線201のようになることが理想であるところ、例えばデータ収集ユニット15の温度に応じて直線202または203のようなゲインドリフトが生じる場合がある。本実施形態では、データ収集ユニット15においてこのような温度によるゲインドリフトを補正する。
以下、図8を参照して、本実施形態に係るX線CT装置に含まれるデータ収集ユニット15の構成について説明する。図8に示すように、データ収集ユニット15は、基準電圧源154及びデータ収集部155を含む。
なお、本実施形態において、X線検出器14(を含むX線検出器部)には、当該X線検出器14の温度を測定する温度センサ(温度計)141が備えられている。温度センサ141によって測定された温度は、データ収集部155に供給される。
基準電圧源154は、後述するDAS回路に接続され、電圧を発生する。なお、データ収集ユニット15においてX線CT装置における被検体Pの撮影領域等に応じて複数のゲインが用意されている場合、データ収集ユニット15には、当該ゲインの数と同数の基準電圧源が備えられる。図8に示す例では、便宜的に、データ収集ユニット15が、1つの基準電圧源154のみを備えているものとする。
データ収集部155は、DAS回路155a、温度補正回路155b、温度センサ(温度計)155c及び温度補正回路155dを含む。
DAS回路155aは、当該DAS回路155aにおいて入力された電気信号に対して増幅処理及びA/D変換処理を施してコンソール20に出力する。
DAS回路155aは、非スキャン時に基準電圧源154と一定期間接続される。一方、実スキャン時には、DAS回路155aはX線検出器14と接続される。
DAS回路155aは、非スキャン時にデータ収集ユニット15の温度を予め定められた値(当該データ収集ユニット15が正常に動作する温度)とした状態において、基準電圧源154によって発生された電圧に応じた電気信号を入力とした場合におけるゲイン(以下、補正収集時のゲインと表記)を、当該DAS回路155a内部に予め格納する。
また、DAS回路155aは、例えばスキャン開始直前(非スキャン時)にデータ収集ユニット15の温度を実スキャン時と同一とした状態において、基準電圧源154によって発生された電圧に応じた電気信号を入力とした場合におけるゲイン(以下、スキャン直前のゲインと表記)を取得し、当該DAS回路155a内部に格納する。
一方、DAS回路155aは、実スキャン時に、当該DAS回路155aと接続されたX線検出器14によって生成された電気信号(X線管111から発生され、被検体Pを透過したX線の強度に応じた電気信号)を入力する。
DAS回路155aは、入力された電気信号(つまり、X線検出器14によって検出されたX線の強度に応じた電気信号)に基づいて出力されるデータ(つまり、DASの出力)を、当該DAS回路155aの内部に格納されている補正収集時のゲイン及びスキャン直前のゲインに基づいて補正する。なお、このように補正された電気信号は、DAS回路155aにおいてデジタルデータに変換されて、コンソール20に対して出力される。
温度補正回路155bは、X線検出器14の温度特性に関する補正値を予め保持する。温度補正回路155bは、当該温度補正回路155bにおいて予め保持されている補正値及び温度センサ141によって供給された温度(X線検出器14の温度)に基づいて、X線検出器14の温度変化による誤差を補正する。
温度センサ155cは、データ収集部155の温度を測定する。温度センサ155cによって測定された温度は、温度補正回路155dに供給される。
温度補正回路155dは、データ収集部155の温度特性に関する補正値を予め保持する。温度補正回路155dは、当該温度補正回路155dにおいて予め保持されている補正値及び温度センサ155cによって供給された温度(データ収集部155の温度)に基づいて、当該データ収集部155の温度変化による誤差を補正する。
次に、図9のフローチャートを参照して、本実施形態に係るX線CT装置におけるデータ収集ユニット15の処理手順について説明する。ここでは、データ収集ユニット15に含まれるDAS回路155aは、上記した補正収集時のゲインを予め内部に格納しているものとする。
まず、データ収集ユニット15に含まれるDAS回路155aは、例えばスキャン開始直前に、基準電圧源154と接続される(ステップS21)。なお、この基準電圧源154によって発生される電圧(値)としては、フルスケール値に近い値(例えば、フルスケール値の90%)が設定されている。
次に、DAS回路155aは、当該DAS回路155aと接続された基準電圧源154によって発生された電圧に応じた電気信号を入力する。
この場合、DAS回路155aは、スキャン直前のゲインを取得する(ステップS22)。
DAS回路155aによって取得されたスキャン直前のゲインは、当該DAS回路155aの内部に格納される(ステップS23)。
ここで実スキャンが開始されるものとすると、DAS回路155aは、X線検出器14と接続される(ステップS24)。
この場合、DAS回路155aは、X線検出器14からの電気信号を入力する(ステップS25)。
ここで、DAS回路155aは、入力された電気信号を所定ゲインで増幅する処理を行う。
次に、DAS回路155aは、この増幅処理の出力に対して補正処理を実行する(ステップS26)。このステップS26における補正処理においては、上記したようにDAS回路155a内部に格納されている補正収集時のゲイン及びスキャン直前のゲインが用いられる。
ここで、図10を参照して、DAS回路155aによって行われる補正処理の概念について説明する。なお、ここで説明する補正処理によれば、上記したように温度によるドリフト(ゲイン)の補正が行われる。
まず、DAS回路155aは、補正収集時のゲインとDAS回路155aにおいて予め保持されているオフセット値とに基づいて、図10に示すような理想直線211を算出(定義)する。
また、DAS回路155aは、スキャン直前のゲインとDAS回路155aにおいて予め保持されているオフセット値とに基づいて、図10に示すような直線212を算出(定義)する。
このような場合、DAS回路155aは、図10に示すように、直線212において増幅後の出力(実出力値)に対応する入力を特定し、上記した理想直線211において当該特定された入力に対応する出力値を補正後の出力とする。
これにより、本実施形態においては、補正収集時のゲイン及びスキャン直前のゲインを用いて温度によるドリフト(ゲイン)の補正を行うことができる。
再び図9に戻ると、DAS回路152は、補正後の出力値に対してA/D変換処理を行い、コンソール20に出力する(ステップS27)。
上記したように本実施形態においては、補正収集時のゲインとスキャン直前のゲインとをDAS回路155a内部に格納し、データ収集ユニット15(に含まれるDAS回路155a)が補正収集時のゲイン及びスキャン直前のゲインに基づいて実スキャン時にX線検出器14によって検出されたX線の強度に応じた電気信号に基づいて出力されるデータを補正する構成により、X線検出器14またはデータ収集ユニット15(DAS)の特性(である温度によるドリフト)を考慮して当該データ収集ユニット15の出力を補正することが可能となる。
なお、本実施形態において、前述した第1の実施形態において説明した温度センサ151e及び温度補正回路153を備え、基準電圧源154の温度変化による誤差を補正する構成としても構わない。
また、本実施形態においては基準電圧源154がデータ収集ユニット15に含まれるものとして説明したが、当該基準電圧源154がデータ収集ユニット15の外部に設けられる構成としてもよい。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態に係るX線CT装置の構成は、前述した第1の実施形態と同様であるため、適宜、図1を用いて説明する。
前述した第2の実施形態においてはX線検出器14またはデータ収集ユニット15の特性である温度によるドリフト(ゲイン)を補正するものとして説明したが、本実施形態は、X線検出器14またはデータ収集ユニット15の特性である湿度によるドリフト(ゲイン)を補正する点が、前述した第2の実施形態とは異なる。
ここで、湿度によるドリフト(ゲイン)の概念について説明する。ここでは、便宜的に前述した図7を用いて説明する。図7に示すように、データ収集ユニット15においてX線検出器14からの電気信号を所定ゲインで増幅する際の入力と出力との対応関係は直線201のようになることが理想であるところ、例えばデータ収集ユニット15の湿度に応じて直線202または203のようなゲインドリフトが生じる場合がある。本実施形態では、データ収集ユニット15においてこのような湿度によるゲインドリフトを補正する。
以下、図11を参照して、本実施形態に係るX線CT装置に含まれるデータ収集ユニット15の構成について説明する。なお、前述した図8と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図8と異なる部分について主に述べる。なお、図11においては、図8と同様に、便宜的にデータ収集ユニット15が1つの基準電圧源154のみを備えているものとする。
図11に示すように、データ収集ユニット15は、データ収集部156を含む。なお、本実施形態において、X線検出器14(を含むX線検出器部)には、当該X線検出器部内の湿度を測定する湿度センサ(湿度計)142が備えられている。湿度センサ142によって測定された湿度は、データ収集部156に供給される。
データ収集部156は、DAS回路156a、湿度補正回路156b、湿度センサ(湿度計)156c及び湿度補正回路156dを含む。
DAS回路156aは、当該DAS回路156aにおいて入力された電気信号に対して増幅処理及びA/D変換処理を施してコンソール20に出力する。
DAS回路156aは、非スキャン時に基準電圧源154と一定期間接続される。一方、実スキャン時には、DAS回路156aはX線検出器14と接続される。
DAS回路156aは、非スキャン時にデータ収集ユニット15の湿度を予め定められた値(当該データ収集ユニット15が正常に動作する湿度)とした状態において、基準電圧源154によって発生された電圧に応じた電気信号を入力とした場合におけるゲイン(以下、補正収集時のゲインと表記)を、当該DAS回路156a内部に予め格納する。
また、DAS回路156aは、例えばスキャン開始直前(非スキャン時)にデータ収集ユニット15の湿度を実スキャン時と同一とした状態において、基準電圧源154によって発生された電圧に応じた電気信号を入力とした場合におけるゲイン(以下、スキャン直前のゲインと表記)を取得し、当該DAS回路156a内部に格納する。
一方、DAS回路156aは、実スキャン時に、当該DAS回路156aと接続されたX線検出器14によって生成された電気信号(X線管111から発生され、被検体Pを透過したX線の強度に応じた電気信号)を入力する。
DAS回路156aは、入力された電気信号(つまり、X線検出器14によって検出されたX線の強度に応じた電気信号)に基づいて出力されるデータ(つまり、DASの出力)を、当該DAS回路156aの内部に格納されている補正収集時のゲイン及びスキャン直前のゲインに基づいて補正する。なお、このように補正された電気信号は、DAS回路156aにおいてデジタルデータに変換されて、コンソール20に対して出力される。
湿度補正回路156bは、X線検出器14の湿度特性に関する補正値を予め保持する。湿度補正回路156bは、当該湿度補正回路156bにおいて予め保持されている補正値及び湿度センサ142によって供給された湿度に基づいて、X線検出器14の湿度変化による誤差を補正する。
湿度センサ156cは、データ収集部156内の湿度を測定する。湿度センサ156cによって測定された湿度は、湿度補正回路156dに供給される。
湿度補正回路156dは、データ収集部156の湿度特性に関する補正値を予め保持する。湿度補正回路156dは、当該湿度補正回路156dにおいて予め保持されている補正値及び湿度センサ156cによって供給された湿度(データ収集部156の湿度)に基づいて、当該データ収集部156の湿度変化による誤差を補正する。
なお、本実施形態に係るX線CT装置におけるデータ収集ユニット15の動作(処理手順)は、前述した第2の実施形態において説明したデータ収集ユニット15の動作において温度を湿度としたものと同様であるため、その詳しい説明を省略する。
上記したように本実施形態においては、補正収集時のゲインとスキャン収集時のゲインとをDAS回路156a内部に格納し、データ収集ユニット15(に含まれるDAS回路156a)が補正収集時のゲイン及びスキャン収集時のゲインに基づいて実スキャン時にX線検出器14によって検出されたX線の強度に応じた電気信号に基づいて出力されるデータを補正する構成により、X線検出器14またはデータ収集ユニット15(DAS)の特性(である湿度によるドリフト)を考慮して当該データ収集ユニット15の出力を補正することが可能となる。
なお、本実施形態において、基準電圧源154(を備える基準電圧部内)の湿度を測定する湿度センサと当該基準電圧源154の湿度特性に関する補正値を予め保持する湿度補正回路を備え、当該湿度センサによって測定された湿度及び当該補正値に基づいて基準電圧源154の湿度変化による誤差を補正する構成としても構わない。
また、本実施形態においては、基準電圧源154がデータ収集ユニット15に含まれるものとして説明したが、当該基準電圧源154がデータ収集ユニット15の外部に設けられる構成としてもよい。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。本実施形態に係るX線XCT装置の構成は、前述した第1の実施形態と同様であるため、適宜、図1を用いて説明する。
前述した第3の実施形態においてはX線検出器14またはデータ収集ユニット15の特性である湿度によるドリフト(ゲイン)を補正するものとして説明したが、本実施形態は、X線検出器14またはデータ収集ユニット15の特性である湿度によるドリフト(オフセット)を補正する点が、前述した第3の実施形態とは異なる。
ここで、図12を参照して、湿度によるドリフト(オフセット)の概念について簡単に説明する。図12の直線401に示すように、データ収集ユニット15において予め保持されているオフセット値は湿度の差(補正収集時からの湿度の差)にかかわらず一定であることが理想であるところ、例えば破線402に示すようにデータ収集ユニット15の湿度に応じてオフセットドリフトが生じる場合がある。本実施形態では、データ収集ユニット15においてこのような湿度によるオフセットドリフトを補正する。
以下、図13を参照して、本実施形態に係るX線CT装置に含まれるデータ収集ユニット15の構成について説明する。なお、前述した図11と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図11と異なる部分について主に述べる。
図13に示すように、データ収集ユニット15は、DAS回路157を含む。
DAS回路157は、予め収集されたオフセット値及び上記した図12の破線402に示すようなオフセット値が収集された際の湿度の差に応じたオフセットドリフトに関するデータ(以下、補正データと表記)を保持している。
DAS回路157は、実スキャン時に、当該DAS回路157と接続されたX線検出器14によって生成された電気信号(X線管111から発生され、被検体Pを透過したX線の強度に応じた電気信号)を入力する。
DAS回路157は、当該DAS回路157において保持されているオフセット値を、上記した補正データに基づいて補正する。
DAS回路157は、入力された電気信号(つまり、X線検出器14によって検出されたX線の強度に応じた電気信号)に対して増幅処理及びA/D変換処理を施したデータをコンソール20に対して出力する際に、補正されたオフセット値を用いて補正する。
次に、図14のフローチャートを参照して、本実施形態に係るX線CT装置におけるデータ収集ユニット15の処理手順について説明する。ここでは、データ収集ユニット15に含まれるDAS回路157は、上記したオフセット値及び補正データを予め保持しているものとする。
まず、データ収集ユニット15に含まれるDAS回路157は、実スキャン時に、X線検出器14からの電気信号を入力する(ステップS31)。
次に、DAS回路157は、当該DAS回路157において保持されているオフセット値及び補正データに基づいて、当該オフセット値を補正する(ステップS32)。
ここで、図15を参照して、DAS回路157によって行われる補正処理の概念について説明する。
図15に示すように、DAS回路157は、補正データ(破線402)において湿度センサ156cによって供給された湿度(実スキャン時のデータ収集ユニット15の湿度)と上記したオフセット値が収集された際の湿度との差に対応するオフセット値を補正後のオフセット値とする。
これにより、本実施形態においては、上記した補正データを用いて湿度によるドリフト(オフセット)の補正を行うことができる。
再び図14に戻ると、DAS回路157は、入力された電気信号に対して補正されたオフセット値を用いて補正を行い、データをコンソール20に出力する(ステップS33)。
上記したように本実施形態においては、DAS回路157において保持されている補正データ(オフセットドリフトに関するデータ)に基づいてオフセット値を補正する構成により、X線検出器14またはデータ収集ユニット15(DAS)の特性(である湿度によるドリフト)を考慮して当該データ収集ユニット15の出力を補正することが可能となる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。本実施形態に係るX線CT装置の構成は、前述した第1の実施形態と同様であるため、適宜、図1を用いて説明する。
本実施形態においては、X線検出器14に搭載されている検出素子間の信号の乗り越え(以下、クロストークと表記)の補正を行う点が、前述した第1〜第4の実施形態とは異なる。
以下、図16を参照して、本実施形態に係るX線CT装置に含まれるデータ収集ユニット15の構成について説明する。図16に示すように、データ収集ユニット15は、DAS回路158及びクロストーク補正回路159を含む。
DAS回路158は、当該DAS回路158において入力された電気信号に対して増幅処理及びA/D変換処理等を施してコンソール20に出力する。
クロストーク補正回路159は、DAS回路158において入力された電気信号に対してクロストーク補正を行う。
ここで、図17を参照して、クロストーク補正回路159によって行われる補正処理(クロストーク補正)の概念について説明する。
クロストークは全ての信号に少なからず影響を与えるが、X線CT装置の場合、近傍のch(チャンネル)、row(列)の信号にクロストークがのったとしても、これらの多くの場合は似通ったレベルの信号であるため、その影響は少ない。これに対して、クロストークの影響があるのは、遠方のch、rowの信号にクロストークがのった場合である。
この場合、図17に示すように、クロストーク補正回路159は、クロストークを与えてしまう信号に関する情報(直線501)及び遠方のch、rowの実際の信号に関する情報(直線502)、つまり、電気信号とクロストーク補正量との対応関係を示す情報に基づいて、X線検出器14からの電気信号からクロストーク補正量を得ることができる。
これにより、クロストーク補正回路159は、得られたクロストーク補正量に基づいて電気信号に対してクロストーク補正を行うことが可能となる。
上記したように本実施形態においては、データ収集ユニット15(に含まれるクロストーク補正回路159)が電気信号とクロストーク補正量との対応関係を示す情報に基づいてX線検出器14によって検出されたX線の強度に応じた電気信号に基づいて出力されるデータを補正する構成により、X線検出器14またはデータ収集ユニット15(DAS)の特性(であるクロストーク)を考慮して当該データ収集ユニット15の出力を補正することが可能となる。
以上説明したこれらの実施形態によれば、X線検出器またはデータ収集ユニットの特性を考慮して当該データ収集ユニットの出力を補正することが可能となる。
なお、上述した第1〜第5の実施形態は、適宜組み合わせてもよい。具体的には、第1〜第5の実施形態において説明した補正処理の全てが実行されるような構成であってもよいし、当該補正処理のうちのいくつかが実行されるような構成であっても構わない。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。