以下、本発明の実施の形態による光学機器の一例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態による光学機器の一例についてその外観を示す図である。そして、図1(a)は背面側から示す図であり、図1(b)は正面側から示す図である。
図示の光学機器は、所謂レンズ交換式の一眼レフカメラ(以下単にカメラと呼ぶ)であり、カメラはカメラ本体100を有している。撮影を開始する際には、ユーザは撮影条件などの設定を行うため、撮影メニューを表示するメニュー釦106を押す。そして、ユーザはダイアル103を用いて各種設定変更を行う。
接眼光学系109を備えるファインダーの上下にはそれぞれ視線検知部110aおよび110bが配置されている。被写体像を確認するため、ユーザ(撮影者ともいう)がファインダーを覗くと、視線検知部110aおよび110bによって撮影者の視線が検知され、撮影者がファインダーを通して被写体のいずれの箇所を目視しているかが判定される。
測距スタート釦101を押すと測距動作が行われるが、測距点選択部(マルチコントローラ:以下MCという)102によって撮影者は測距点(焦点検出領域ともいう)の移動を行うことができる。MC102には、図中上下左右と斜め方向との8方向に操作可能なスイッチ部材が用いられており、その中央部102aを押すことによって測距点の中央部を選択することができる。
レリーズ釦111は2段階の押圧スイッチ機能を有しており、第1の段階で測光スタートおよび測距スタートが行われ、第2の段階でレリーズ動作が行われる。レリーズ動作によって、被写体像をファインダーに反射させる主ミラー116が撮影光路Oから退避して撮影が行われる。
撮影された画像を確認するため再生釦107が押されると、表示モニター108に撮影画像が表示される。また、撮影された画像は外部記憶装置(図示せず)に記録され、操作部材105の操作によって外部記憶装置取り出し蓋104が開き、ユーザは外部記憶装置をカメラ本体100から取り出すことができる。撮影レンズユニット(以下単に撮影レンズ又は交換レンズと呼ぶ)をカメラ本体100に固定するためのマウント部114の周辺にはレンズ着脱釦115が備えられ、ユーザはレンズ着脱釦115の操作によって撮影レンズの交換を行うことができる。
カメラ本体100を右手で保持するグリップ部112の周辺には、測距点優先度変更部113a、113b、および113cが配置され、ユーザはグリップ部112を握った状態で指先によって測距点優先度変更部113a、113b、および113cを操作することができる。
図2は、図1に示すカメラ本体100に交換レンズ200を装着した状態を模式的に示す断面図である。
図示の主ミラー116はその一部が半透過状態となっており、交換レンズ(撮影レンズ)200を通過した被写体像(光学像)は主ミラー116によって反射されて、その反射像はピント板118上に結像する。一方、主ミラー116を透過した光学像(つまり、透過像)はサブミラー117によって反射されて焦点検出装置122に入射する。そして、透過像は焦点検出素子である測距部123に結像する。
ピント板118に結像した像は、ペンタプリズム120および接眼光学系109を介して撮影者の眼球300に入射する。また、接眼光学系109の一部にはダイクロミラー(図示せず)が備えられている。つまり、ペンタプリズム120および接眼光学系109で構成されるファインダーには撮影範囲が表示されることになる。
図1で説明した視線検知部110aおよび110bの各々には赤外発光ダイオード(図示せず)が備えられ、これら視線検知部110aおよび110bから眼球300に向けて赤外光が投光される。視線検知センサー110は上記のダイクロミラーを介して眼球300をモニターして視線を検知する。
視線検知の詳細については、例えば、特開平6−34873号公報に記載されているので、ここでは説明を省略する。
ペンタプリズム120の射出側には、測光部121が配置され、測光部121は被写体像の明るさを検知するとともに、その顔および色なども検知可能なエリアセンサーである。顔検知の詳細については、例えば、特開2001−330882公報に記載されているので、ここでは説明を省略する。
ピント板118とペンタプリズム120との間には、透過型液晶119が配置され、この透過型液晶119には複数の測距点が表示される。これによって、撮影者はピント板118上の被写体像と複数の測距点と重ね合わせて目視することができる。
主ミラー116の後段にはシャッター124が配置され、シャッター124の後段には、CMOSイメージセンサーなどの撮像素子125が配置されている。撮影動作の際、測光部121の出力に応じて、シャッター124および撮影レンズ200の絞りなどによって露出制御が行われて、主ミラー116およびサブミラー117が撮影光路(撮影レンズ200の光軸)Oから退避されて、撮像素子125に被写体像が結像し画像の撮影が行われる。
図3は、図2に示すカメラの制御系の一例を示すブロック図である。
図2に示すカメラには、MPU(制御部)130が備えられている。撮影速度設定部131は、単写又は連写における撮影速度を設定するためのものであり、図1に関連して説明したメニュー釦106およびダイアル103の操作によって撮影速度設定部131は撮影速度を示す撮影速度信号をMPU130に送る。
前述のように、測光部121は、被写体像の明るさ、顔、および色などの被写体に関する検知を行って被写体情報を得る。ここでは、測光部121は顔検知部132としても機能することになり、被写体情報をMPU130に送る。なお、顔判定エリア変更部133によって被写体像(つまり、画像)における顔検知の範囲が変更される。顔検知の範囲の設定および変更については後述する。
視線検知部110(図1に示す視線検知部110aおよび110b)は撮影者の視線を検知して視線検知情報をMPU130に送る。測距部123はカメラから被写体までの距離を示す距離情報をMPU130に送る。前述のように、測距点選択部であるMC102によって測距点の移動が可能であり、測距点の移動量は測距点移動ステップ変更部(測距点移動変更手段)134によって行われる。
ユーザは、図1に示すメニュー釦106の操作によって表示される測距点移動ステップ変更画面(図示せず)を見て、ダイアル103の操作で測距点移動ステップを入力することができる。ここでは、通常の1ステップに対して、例えば、2ステップ又は3ステップなど複数のステップを一度の入力で移動することができる。
なお、測距点優先度変更部(測距点優先度選択部ともいう)113(図1(b)に示す釦113a〜113c)は顔検知部132、視線検知部110、および測距点選択部(MC)102の優先度を決定し、測距点優先度選択部113によって選択される測距点が変更されることになる。測距点優先度選択部113の動作などについては後述する。
測距スタート釦(測距スイッチ)101の操作又はレリーズ釦(レリーズスイッチ)111の第1の段階によって上述のようにして選択された測距点における測距、測光、顔検知、および視線検知が開始され、レリーズ釦111の第2の段階によって、レリーズスイッチ11から撮影開始信号がMPU130に入力される。
タイマー135は、測距スタート釦101のオンからレリーズ釦111がオンされるまでの時間を監視するためのものである。そして、測距スタート釦101のオンから所定の時間が経過してもレリーズ釦がオンされないと、MPU130は、設定された測距点優先度によって顔検知および視線検知をやり直す。その後には、タイマー135のカウント値はリセットされる。
撮影レンズ・絞り駆動部200aは撮影レンズ200に備えられており、MPU130の制御下で、合焦位置に撮影レンズ200(つまり、撮影レンズ200に備えられたフォーカスレンズ)を駆動して絞り制御を行う。前述のように、透過型液晶(つまり、測距点表示部)119には測距点表示枠のうち選択された測距点表示枠が照明されて表示される。
MPU130はレリーズ釦111のオンによって、駆動回路(図示せず)によってシャッター124のシャッター羽根が走行させる。そして、シャッター羽根の走行によって撮像素子125が露光される。これによって、撮像素子125で得られた画像が外部記録装置に記録されるとともに、表示モニター(画像表示部)108に表示される。
図4は、図3に示す測距点優先度選択部113によって切り替えられる撮影モード設定メニューの一例を示す図である。そして、図4(a)はポートレートモードを示す図であり、図4(b)は旅行モードを示す図である。さらに、図4(c)は集合写真モードを示す図であり、図4(d)はスポーツモードを示す図である。また、図4(e)は三脚モードを示す図である。
いま、撮影モードとして、図4(a)に示すポートレートモード(第1の撮影モード)M1が設定されると、測距点優先度選択部113は第1の優先順位を顔検知部132、第2の優先順位を視線検知部110、そして、第3の優先順位を測距点選択部(MC)102とする。
撮影モードとして、図4(b)に示す旅行モード(第2の撮影モード)M2が設定されると、測距点優先度選択部113は第1の優先順位を視線検知部110、第2の優先順位を顔検知部132、そして、第3の優先順位を測距点選択部(MC)102とする。
同様にして、撮影モードとして、図4(c)に示す集合写真モード(第3の撮影モード)M3が設定されると、測距点優先度選択部113は第1の優先順位を顔検知部132、第2の優先順位を測距点選択部(MC)102、そして、第3の優先順位を視線検知部110とする。
また、撮影モードとして、図4(d)に示すスポーツモード(第4の撮影モード)M4が設定されると、測距点優先度選択部113は第1の優先順位を視線検知部110、第2の優先順位を測距点選択部(MC)102、そして、第3の優先順位を顔検知部132とする。
さらに、撮影モードとして、図4(e)に示す三脚モード(第5の撮影モード)M5が設定されると、測距点優先度選択部113は第1の優先順位を測距点選択部(MC)102、第2の優先順位を顔検知部132、そして、第3の優先順位を視線検知部110とする。
図示の例では、集合写真モードM3においては、第3の優先順位である視線検知部110は機能を停止される。同様に、スポーツモードM4においては、第3の優先順位である顔検知部132は機能を停止され、三脚モードM5においては、第2および第3の優先順位である顔検知部132および視線検知部110は機能を停止される。
図4に示す撮影モードの設定は、前述のように測距点優先度選択部113によって行われ、例えば、ポートレートモードM1、旅行モードM2、および三脚モードM5に切り替える釦として、図1(b)に示す釦113aが用いられる。そして、ポートレートモードM1から集合写真モードM3に切り替える釦および旅行モードM2からスポーツモードM4に切り替えるための釦として、図1(b)に示す釦103bが用いられる。さらに、後述する撮影動作の際にMC入力が禁止されていると、一時的にMC入力による測距点移動を許可するための釦として釦113cが用いられる。
上述の釦113a〜113cの操作による撮影モードなどの切り替えによって、ユーザはグリップ部112を握った状態で測距点優先度の選択を容易に行うことができる。そして、ユーザがファインダーを覗いている状態において撮影状況が変わった場合にも瞬時に最適な撮影モード設定に切り替えることができる。
図5は、図4に示す撮影モードに応じた顔判定範囲の設定を説明するための図である。
図2で説明した測光部121(エリアセンサー)によって、ピント板118上の被写体像において顔の外形(つまり、顔領域)が検知される。なお、顔領域の検知については、例えば、特開2007−274587号公報に記載の手法が用いられる。
図5においては、ピント板118上に結像した被写体像400と顔判定範囲の大きさ402a、402b、および402c)とが示されており、ピント板118に隣接して配置された透過型液晶119には、複数の測距点401と顔判定範囲402とが表示される。そして、ここでは、顔判定範囲402において視線が検知されると、MPU130は顔判定範囲402の中心近傍の測距点401aを自動的に選択し、透過型液晶119に当該測距点401aを点灯表示する。
MPU130は顔領域の横幅を基準として、撮影速度設定(単写又は連写)および測距点優先度設定(視線検知又は顔検知)に応じて顔判定範囲402を設定する。図6に示す例では、視線優先の場合には、単写および連写で顔判定範囲402はそれぞれ顔の横幅を基準として100%および150%に設定される。一方、顔優先の場合には、単写および連写で顔判定範囲402はそれぞれ顔の横幅を基準として200%および300%に設定される。
図4に示す撮影モードの設定においては、視線検知および顔検知の優先順位に応じて、図5に示すように顔判定範囲が異なることになる。ところで、顔検知に対応して選択された測距点と視線に対応して測距点との位置が完全に一致している場合には問題ないが、一致していない場合にはいずれの測距点を選択すればよいか判断できないという問題が生じる。一方、視線検知に応じた測距点の選定では、測距点の数が多く、これら測距点が密集していると誤検知してしまう可能性がある。このため、視線検知および顔検知の優先順位に応じて顔判定範囲を異ならせている。
さらに、視線は視野内を確認するため移動することが多いので、撮影したい顔から視線が外れてしまう可能性がある。よって、撮影者が意図的に顔から視線を外しているのか否かを適切に判断するため、視線検知および顔検知の優先順位に応じて顔判定範囲を異ならせる。
例えば、顔検知の優先度が視線検知の優先度より高いと、図5に示すように、顔判定範囲は広く設定される。これによって、視線が顔から外れた場合、被写体が小さい場合、被写体が横を向いた場合などに顔判定範囲が小さくなっても、顔判定範囲が拡大されるので被写体の顔に測距点を継続して合わせことができる。
さらに、撮影速度設定が連写に設定されている場合には、単写の場合よりも顔判定範囲を広く設定する。これによって、連写の際に視線が被写体の顔から外れても、顔判定範囲が広く設定されているので、顔領域の中心に測距点を移動できる確率を高くすることができる。
なお、ここでは、顔検知に応じた顔判定範囲および視線検知によって選定された測距点については、測距点表示枠が顔判定範囲に一部でも含まれていれば顔検知による判定とするが、顔検知に応じた顔判定範囲と視線検知による測距点との関係はこれに限定されるものではない。また、顔検知ではなく、被写体の色および目などの特徴点、被写体の形状などによる被写体検知情報を用いて被写体の判定範囲を決定するようにしてもよい。そして、顔検知に応じた顔判定範囲を非表示とするようにしてもよい。
図6は、図2および図3に示すカメラにおける撮影処理を説明するためのフローチャートである。なお、図6に示すフローチャートに係る処理は、MPU130の制御下で行われる。
いま、カメラの電源がオンされて、撮影者が撮影速度設定を行う(ステップS1)。続いて、撮影者は図4に示す撮影モード、つまり、測距点優先度の選択を行う(ステップS2)。これによって、MPU130は、図5で説明したようにして顔判定エリア(顔判定領域)を設定する(ステップS4)。続いて、撮影者が測距点移動ステップ変更部134によって測距点移動ステップを設定する(ステップS4)。
次に、MPU130は測距スイッチ101がオンとなったか否かを判定する(ステップS5)。測距スイッチ101がオンとならないと、つまり、測距スイッチ101がオフであると(ステップS5において、NO)、MPU130はステップS1の処理に戻って、ユーザによる撮影速度設定を待つ。なお、上記の各設定値が予めカメラに設定されている設定値から変更が無ければ、ステップS1〜S4の設定変更は行われない。
測距スイッチ101がオンとなると(ステップS5において、YES)、タイマー135がカウントを開始する。そして、MPU130は、後述する測距点優先別の選択フロー処理を行う(ステップS6)。タイマー135がカウントアップすると(ステップS7)、MPU130はレリーズ釦がオンされたか否かを判定する(ステップS8)。
レリーズ釦がオンされないと(ステップS8において、NO)、MPU130はステップS5の処理に戻って、測距スイッチ101がオンであるか否かを判定する。レリーズ釦がオンされると(ステップS8において、YES)、MPU130は絞りおよびシャッター速度を制御して露出制御を行う(ステップS9)。そして、MPU130は撮像素子125を露光して撮像を行って(ステップS10)、撮影処理を終了する。
なお、図示はしないが、撮影速度設定が連写の場合には、MPU130はステップS5の処理に戻る。また、ステップS8において、所定のタイマー時間までにレリーズ釦がオンされないと、前述のように、MPU130はステップS5の処理に戻ることになる。
上述のタイマー135がカウントアップする所定のタイマー時間は、例えば、測距点優先度設定に応じて任意に設定することができる。例えば、被写体が移動している場合に、測距スタート釦101を押して測距しつつ被写体を追尾するようなときには、タイマー時間を短く設定して顔検知および視線検知の周期を短くして追従性を良好にする。具体的には、MPU130がカメラのパンニングを検知した場合や、撮影速度設定が連写に設定されている場合に、自動的にタイマー時間を短くする。
また、撮影モード設定においてポートレートモードが設定されているか又は撮影速度設定が単写に設定されていると、MPU130はタイマー時間を長くして顔検知および視線検知の周期を長くして測距点が次々と移動することを防止する。
図7は、撮影モードおよび撮影速度設定に応じたタイマー時間の比率を示す図である。なお、図7においては、予め定められたタイマー時間(つまり、標準時間)に対する比率が示されている。
図7において、撮影速度設定が単写の場合には、撮影モードが集合写真モードであると比率が最も大きくなり、スポーツモードであると比率が最も小さくなる。同様に、撮影速度設定が連写の場合においても、撮影モードが集合写真モードであると比率が最も大きくなり、スポーツモードであると比率が最も小さくなるが、連写の場合には、単写よりも比率が小さくされる。
ポートレートモードと集合写真モード、そして、旅行モードとスポーツモードとを比較すると、顔検知および視線検知の双方による判定を行う場合には、タイマー時間を長くして測距点がゆっくりと切り替わるようにする。これによって、MCによる操作も行えるようにする。
一方、ポートレートモードと旅行モード、そして、集合写真モードとスポーツモードとを比較すると、視線検知の優先度が高い撮影モードにおいてはタイマー時間を短くして次々に測距点が切り替わるようにする。さらに、単写から連写に撮影速度設定を切り替えると、前述のようにして、各撮影モードにおけるタイマー時間を短くして追従性を向上させる。
なお、図7に示す撮影モード設定におけるタイマー時間の比率は一例であり、例えば、比率ではなく秒の単位とするようにしてもよい。また、連写において駒速設定に応じてタイマー時間を異ならせるようにしてもよい。
図8は、図6に示す測距点優先別の選択フローの第1の例を説明するためのフローチャートである。
図8においては、撮影モード設定でポートレートモードが選択設定されたとする。ポートレートモードが開始されると、MPU130は顔検知部132によって顔領域が検知されたか否かを判定する(ステップS101)。顔領域が検知されると(ステップS101において、YES)、MPU130は視線検知部110によって視線が検知されたか否かを判定する(ステップS102)。
視線が検知されると(ステップS102において、YES)、MPU130は顔判定範囲において視線が検知されているか否かを判定する。つまり、MPU130は顔と視線とが一致しているか否かを判定する(ステップS103)。ここでは、図5で説明したように、顔優先であるので、MPU130は単写モードの場合には顔の幅の200%、連写モードの場合には顔の幅の300%までの矩形範囲(顔判定範囲)で視線が検知されているか否かを判定する。
顔判定範囲において視線が検知されると(ステップS103において、YES)、MPU130は顔中心測距点を選択する(ステップS104)。続いて、MPU130はMCによる測距点移動指示があると測距点を点滅状態として1ステップずつ測距点の移動ができるようにする(ステップS105)。
ここでは、測距点の移動が許可される時間がタイマー設定されて、当該設定されたタイマー時間以下でMCによる測距点の移動が可能となる。なお、測距点を点滅させるのは一時的な移動許可であることを撮影者に知らせるためであって、一時的な移動許可であることを報知できれば、点滅以外の手法を用いてもよい。
測距点が確定すると、MPU130は測距部123による測距および測光部121による測光を行って(ステップS106)、測距結果に応じてフォーカスレンズを駆動して被写体に焦点を合わせる(ステップS107)。そして、MPU130は図6に示すステップS7の処理に戻る。
顔領域が検知されないと(ステップS101において、NO)、MPU130は、後述するスポーツモードに移行する(ステップS108)。また、視線が検知されないと(ステップS102において、NO)、MPU130は、後述する集合写真モードに移行する(ステップS109)。顔判定範囲において視線が検知されないと(ステップS103において、NO)、MPU130は視線位置に至近の測距点を選択して(ステップS110)、ステップS106の処理に進む。
図9は、図8に示すポートレートモード処理においてファインダー内の測距点の移動の様子について一例を説明するための図である。そして、図9(a)は測距点移動の一例を示す図であり、図9(b)は測距点移動の他の例を示す図である。
図9(a)に示す例では、撮影範囲において2つの顔領域が検知されており、これら顔領域についてそれぞれ顔判定範囲M101aおよびM101bが設定されている。ここで、視線検知による至近測距点が測距点M102aであるとすると、当該測距点M102aは顔判定範囲M101aに含まれるので、MPU130は測距点として顔中心近傍の測距点M104aを選択される。
一方、顔判定領域M101bに関して、視線検知による至近測距点が測距点M102bであるとすると、当該測距点M102bは顔判定範囲M101bに含まれないので、MPU130は測距点を移動せず、測距点M102bを選択することになる(つまり、測距点は測距点M102bから移動しない)。
このようにして、視線検知および顔検知を用いれば、的確に主要被写体を測距することができる。
図9(b)に示す例では、撮影範囲において複数の測距点を含む大きな顔領域が検知され、顔判定範囲M101cが設定されている。ここで、視線検知による至近測距点が測距点M102cであるとすると、当該測距点M102cは顔判定範囲M101cに含まれるので、MPU130は顔中心近傍の測距点M104cを選択する。この際、MCによる測距点移動指示が右上方向に行われると、MPU130は測距点を測距点M105cに移動して点滅状態とする。
このようにして、複数の測距点を含む場合には、視線検知と合わせて顔検知によって狙いの被写体の顔中央部近傍の測距点を選択するが、眼などの特徴点にさらに移動したい場合があるので、MPU130はMCによる移動を1ステップずつに限定して許可する。
なお、MCによる移動指示の位置が顔判定範囲外となる場合には、MPU130は測距点の移動を許可しない。つまり、測距点優先度設定が顔検知優先となっているので、MCによる移動指示の位置が顔判定範囲外となる場合には、MPU130は測距点の移動を許可しない。このことは、MPU130が測距点の移動範囲を制限することを意味する。
また、顔判定範囲M101cに複数の測距点を含む場合には、MPU130は、図8に示すステップS105においてタイマー時間を長く設定して、MCによる測距点移動の時間を確保する。さらに、MPU130は図6に示すステップS7においてもタイマー時間を長く設定して、図8に示すステップS104又はステップS110において選択される測距点がゆっくりと切り替わるようにする。これによって、被写体をじっくりと測距できる。
図10は、図8に示すポートレートモード処理においてファインダー内の測距点の移動の様子について他の例を説明するための図である。なお、図10においては被写体が移動しており、撮影速度設定が連写モードであるものとする。
図10に示す例では、単写モードにおいては顔判定範囲として顔判定範囲M101dが設定される。一方、連写モードにおいては顔判定範囲が広げられて顔判定範囲M101eが設定される。
これによって、視線検知による至近測距点が測距点M102eで示すように、被写体と大きくずれている場合であっても、顔中心の測距点が選択されることになる。この結果、移動する被写体に対しても測距点を被写体に合わせ続けることができるようになる。そして、被写体が遠ざかって小さくなる場合および被写体が横を向いて顔判定範囲が狭くなったとしても、顔判定範囲を広げたことによって的確に測距点を選択することができる。
但し、運動会などにおいて、複数の人が走っている状態を連写モードで撮影する場合には、視線検知および顔検知によって特定の人物を追尾し易くなるものの、顔判定範囲を広げすぎると目標とする人物とは異なる人物に測距点が移ってしまう可能性がある。よって、顔判定範囲を任意に設定できるようにしてもよい。
また、図8に示すステップS105におけるタイマー時間を短く設定して、MCによる測距点移動を単写モードよりも制限するとともに、図6に示すステップS7におけるタイマー時間を短く設定して、顔検知および視線検知による測距点判定を速く行うようにする。
図11は、図6に示す測距点優先別の選択フローの第2の例を説明するためのフローチャートである。
図11においては、撮影モード設定で旅行モードが選択設定されたとする。旅行モードが開始されると、まず、MPU130は視線検知部110によって視線が検知されたか否かを判定する(ステップS201)。視線検知部110によって視線が検知されると(ステップS201において、YES)、MPU130は顔検知部132によって顔領域が検知されたか否かを判定する(ステップS202)。
顔領域が検知されると(ステップS202において、YES)、MPU130は顔判定範囲において視線が検知されているか否かを判定する(ステップS203)。ここでは、図5で説明したように、視線優先であるので、MPU130は単写モードの場合には顔の幅の100%、連写モードの場合には顔の幅の150%までの矩形範囲(顔判定範囲)で視線が検知されているか否かを判定する。
顔判定範囲において視線が検知されると(ステップS203において、YES)、MPU130は顔中心測距点を選択する(ステップS204)。続いて、MPU130はMCによる測距点移動を禁止する(ステップS205)。
旅行モードにおいては、顔判定範囲と視線検知位置との一致率の判定を厳しくしているので、MCによる測距点移動は不要であるとして、MPU130はMCによる測距点移動を禁止する。これによって、MPU130は不用意な測距点移動を防止する。
一方、撮影者がMCによる測距点移動を行いたいこともあるので、ここでは、MPU130は解除釦がオンされたか否かを判定する(ステップS206)。なお、図2に示すグリップ部113に配置された釦113cがMCによる測距点の移動禁止を解除する解除釦とされる。
解除釦がオンされないと、つまり、オフであると(ステップS206において、NO)、MPU130は測距部123による測距および測光部121による測光を行って(ステップS207)、測距結果に応じてフォーカスレンズを駆動して被写体に焦点を合わせる(ステップS208)。そして、MPU130は図6に示すステップS7の処理に戻る。
視線が検知されないと(ステップS201において、NO)、MPU130は、後述する集合写真モードに移行する(ステップS209)。また、顔領域が検知されないと(ステップS202において、NO)、MPU130は、後述するスポーツモードに移行する(ステップS210)。
顔判定範囲において視線が検知されないと(ステップS203において、NO)、MPU130は視線位置に至近の測距点を選択する(ステップS211)。そして、MPU130はMCによる(つまり、ユーザ操作による)測距点移動指示があると測距点を点滅状態(つまり、識別状態)として1ステップずつ測距点の移動ができるようにする(ステップS212)その後、MPU130はステップS207の処理に進む。
なお、解除釦がオンされると(ステップS206において、YES)、MPU130はステップS212の処理に進む。
図12は、図11に示す旅行モード処理においてファインダー内の測距点の移動の様子を説明するための図である。そして、図12(a)は測距点移動の一例を示す図であり、図12(b)は測距点移動の他の例を示す図である。
図12(a)に示す例では、2つの顔領域が検知されており、これら顔領域についてそれぞれ顔判定範囲M202aおよびM202bが設定されている。ここで、視線検知による測距点が測距点M201aであるとすると、当該測距点M201aはいずれの顔判定範囲M202aおよび202bにも含まれないので、MPU130は測距点を測距点M201aから移動しない。
図12(b)に示す例では、複数の測距点を含む大きな顔領域が検知され、顔判定範囲M202cが設定されている。ここで、視線検知による至近測距点が測距点M201cであるとすると、当該測距点M201cは顔判定範囲M202cに含まれるので、MPU130は顔中心近傍の測距点M204を選択する。
一方、視線検知による至近測距点が測距点M212であると、当該測距点M212は顔判定範囲M202cに含まれないので、MPU130は測距点を測距点M212から移動しないが、MCによる測距点移動が可能となると、移動した測距点を点滅状態とする。
このようにして、旅行モードが選択された場合には、顔判定範囲を狭くして安易に顔領域に測距点が移動しないようにしている。これによって、風景など人物以外の被写体を視線で決定しつつ、特定の人物又は家族などと視線が高い確率で一致した場合に、人物に焦点が合うようにすることができる。
図13は、図6に示す測距点優先別の選択フローの第3の例を説明するためのフローチャートである。
図13においては、撮影モード設定で集合写真モードが選択設定されたとする。集合写真モードが開始されると、まず、MPU130は顔検知部132によって顔領域が検知されたか否かを判定する(ステップS301)。顔検知部132によって顔領域が検知されると(ステップS301において、YES)、MPU130は検知された顔領域(つまり、顔判定範囲)のうち最大の顔領域を選択する(ステップS302)。
ここでは、最大の顔領域に限らず、例えば、至近に位置する顔領域又は画像において中央に位置する顔領域を選択するようにしてもよい。
続いて、MPU130はMCの操作による測距点移動があるか否かを判定する(ステップS303)。MCの操作があると(ステップS303において、YES)、MPU130はMC操作によって移動する測距点の移動方向(変更方向ともいう)に顔領域が存在するか否かを判定する(ステップS304)。
測距点の移動方向に顔領域が存在すると(ステップS305において、YES)、MPU130は当該移動方向において移動前の測距点に至近の顔中心に測距点を移動する(ステップS305)。そして、MPU130は測距部123による測距および測光部121による測光を行って(ステップS306)、測距結果に応じてフォーカスレンズを駆動して被写体に焦点を合わせる(ステップS307)。そして、MPU130は図6に示すステップS7の処理に戻る。
顔検知部132によって顔領域が検知されないと(ステップS301において、NO)、MPU130は、後述する三脚モードに移行する(ステップS308)。また、MCの操作がないと(ステップS303において、NO)、MPU130はステップS306の処理に進む。
測距点の移動方向に顔領域が存在しないと(ステップS305において、NO)、MPU130は予め設定された移動ステップ量で測距点をMC操作によって指定された移動方向に測距点を移動させる(ステップS309)。この際、MPU130は測距点を点滅させて、顔領域が検知されずに測距点を移動したこと撮影者に知らせる。その後、MPU130はステップS306の処理に進む。
なお、測距点の移動が許可される時間は、タイマーによって設定され、タイマーに設定された時間以下であればMCによる測距点移動を行うことができる。
図14は、図13に示す集合写真モード処理においてファインダー内の測距点の移動の様子を説明するための図である。
図14に示す例では、3つの顔領域が検知されており、これら顔領域についてそれぞれ顔判定範囲M301a、M301b、およびM301cが設定されている。ここでは、顔判定範囲M301aが最大の顔判定範囲であるので、MPU130は顔検知範囲M301aにおける中心測距点を測距点M302として選択する。
ここで、MC操作によって右方向の移動が指示されると、MPU130は移動方向において至近の顔判定範囲は顔判定範囲M301bであるので、測距点M305を選択する。また、MC操作によって下方向の移動が指示されると、MCの指示方向には顔検知範囲が存在しないので、MPU130は予め設定されたステップ量(例えば、3ステップ)で測距点M310を移動させて、当該測距点を点滅状態とする。
このようにして、集合写真モードが選択された場合には、MC操作に応じて顔判定範囲を選択できるようにして、多人数を撮影する場合又は人ごみの中で特定の人物を撮影する場合において顔判定範囲の選択を容易とする。
図15は、図6に示す測距点優先別の選択フローの第4の例を説明するためのフローチャートである。
図15においては、撮影モード設定でスポーツモードが選択設定されたとする。スポーツモードが開始されると、まず、MPU130は視線検知部110によって視線が検知されたか否かを判定する(ステップS401)。視線検知部110によって視線が検知されると(ステップS401において、YES)、MPU130は、検知された視線に至近の測距点を選択する(ステップS402)。
続いて、MPU130はMCの操作による測距点移動があるか否かを判定する(ステップS403)。MCの操作があると(ステップS403において、YES)、MPU130は測距点を点滅状態として1ステップずつ測距点の移動ができるようにする(ステップS404)。
ステップS404においては、MPU130は測距点を点滅させて、測距点が視線検知位置と異なる位置に移動したことを撮影者に知らせる。この際には、測距点の移動が許可される時間は、タイマーによって設定され、設定されたタイマー時間以下であればMC操作による測距点の移動を行うことができる。なお、ここで許可されるタイマー時間は他の撮影モードに比べて最も短い時間に設定される。
その後、MPU130は測距部123による測距および測光部121による測光を行って(ステップS405)、測距結果に応じてフォーカスレンズを駆動して被写体に焦点を合わせる(ステップS406)。そして、MPU130は図6に示すステップS7の処理に戻る。
視線検知部110によって視線が検知されないと(ステップS401において、NO)、MPU130は、後述する三脚モードに移行する(ステップS407)。また、MCの操作がないと(ステップS403において、NO)、MPU130はステップS405の処理に進む。
図16は、図15に示すスポーツモード処理においてファインダー内の測距点の移動の様子を説明するための図である。
図16に示す例では、視線検知に応じて測距点M402が選択されている。ここで、MC操作によって測距点を左下方向に移動させる指示があると、MPU130は測距点402を測距点M404に移動して、当該測距点を点滅状態とする。
このようにして、スポーツモードが選択された場合には、顔又は特定の被写体の検知による測距点選択を許可せずに、撮影モード別のタイマー設定においても最短時間を設定する。これによって、視線およびMC操作による瞬時の測距点移動が可能となって、例えば、カーレース、鉄道、サッカー、又は陸上競技など高速移動被写体を撮影する場合に適している。
図17は、図6に示す測距点優先別の選択フローの第5の例を説明するためのフローチャートである。
図17においては、撮影モード設定で三脚モードが選択設定されたとする。三脚モードが開始されると、まず、MPU130はMCの操作による測距点移動があるか否かを判定する(ステップS501)。MCの操作があると(ステップS501において、YES)、MPU130は予め設定された移動ステップ量で測距点をMC操作によって指定された移動方向に測距点を移動させる(ステップS502)。この際、MPU130は測距点を点滅させて、顔領域が検知されずに測距点を移動したこと撮影者に知らせる。
その後、MPU130は測距部123による測距および測光部121による測光を行って(ステップS503)、測距結果に応じてフォーカスレンズを駆動して被写体に焦点を合わせる(ステップS504)。そして、MPU130は図6に示すステップS7の処理に戻る。
MCの操作がないと(ステップS501において、NO)、MPU130は測距点を自動選択とする(ステップS505)。この際には、MPU130は予め設定されたアルゴリズムに応じて測距点を決定する。例えば、MPU130は至近合焦被写体を選択するか又は無限遠に合わせる。そして、MPU130はステップS503の処理に進む。
このようにして、三脚モードが選択された場合には、顔検知および視線検知による測距点移動を許可せず、MC操作による任意のステップ数で測距点移動を可能とする。この結果、風景などを撮影する際、カメラを三脚に固定して撮影する場合に適している。
上述の実施の形態では、光学機器としてデジタルカメラなどの1眼レフカメラを例に挙げて説明したが、カメラ機能を備える電子機器であれば、同様にして本発明を適用することができる。
なお、図13および図17においては、MC操作による任意のステップ数で測距点を移動する例について説明したが、MC操作による移動指示方向に移動可能な測距点が存在しない場合には、画面の端点まで測距点を移動する。
さらに、本発明の実施の形態では、レンズ交換式の一眼レフカメラを例に挙げて説明したが、撮影レンズがカメラ本体と一体となったカメラについても同様にして本実施の形態を適用することができる。
また、本発明の実施の形態では、ペンタプリズムなどを用いた光学ファインダーを備えるカメラを例に挙げて説明したが、例えば、EVF装置に対して視線入力装置を取り付けたカメラにおいても同様にして本実施の形態を適用することができる。
加えて、本発明の実施の形態では、位相差方式による焦点検出および測光素子による被写体検出を例に挙げて説明したが、撮像素子の出力を用いて焦点検出および被写体検出を行うカメラについても同様にして本実施の形態を適用することができる。
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を光学機器に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを制御プログラムとして、当該制御プログラムを光学機器が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。つまり、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種の記録媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPUなど)がプログラムを読み出して実行する処理である。